二次元裏@ふたば

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54119 B26/10/31(土)22:13:55No.1483057011+ 23:43頃消えます
察して女、世にはびこる。
察して女とはあえて口に出さずに態度と表情だけで人を操ろうとする悪女のことである。
当然蛇蝎のごとく嫌われている……かと思えば一部界隈では礼賛されてもいるのだ!
「強い女ほど口に出さずに耐えてしまう。恥じることはない。察して力、高めていけ」
この意見を受けてサトノグループが察して女専用の装置を開発した。
それこそが「百面相マシン」である。
化粧に使われるファンデーションの形をしていて、顔面に塗布することにより内部のナノマシンが電極として機能する。
外部コントローラーで「喜怒哀楽」を設定することにより、表情筋が刺激され任意の表情に早変わりするという仕組みだ。
これにより、普段は表情に乏しいウマ娘でも「察して力」を格段に高めることができる。
…126/10/31(土)22:14:27No.1483057235+
「へー、それでフジさんがテスターにねえ。寮長ってのも何かと大変っすね」
ジャングルポケットは外部コントローラーをしげしげと眺めていた。
見た目は作曲家の使うサンプリングパッドに似ている。4つのつまみが「喜怒哀楽」に対応しており、その他のボタンで細かなプリセットの感情パターンを出力するようだ。
「でもフジさんって確かに顔に出ないというか、『儚い女』って感じだからな〜。『察して女』とは対極にありそうな存在とゆーか」
「ふふふ、ポッケ、褒めてくれてるのかな? ところで、もうファンデーションは塗ってあるんだ。いくつか試してみなよ」
「あ、いーっすか? じゃ遠慮なく……この『喜』で!」
ジャングルポケットは『喜』のつまみをMAXまでひねった。
ぴりっと電流のようなものが流れて、無理矢理に顔の形を変えられる。自分の顔で福笑いしているような奇妙な感覚だ。
その時のフジキセキはニコちゃんマークのような満面のスマイルだったらしい。
「ぶはっ! フジさんその顔……ぶははっ!! 超可愛いー!!」
…226/10/31(土)22:14:49No.1483057373+
フジキセキは早速百面相マシンを日常生活に役立てようとした。
寮長として門限を守らない生徒には注意する義務がある。
しかしフジキセキは優しいので強く言えないという弱点があった。結果、門限破りが横行してしまう。
フジキセキは試しに『怒』のつまみをMAXまで上げた状態で、深夜に帰ってきたルーラーシップを迎えた。
「ちぃーっす。へへっ。フジ寮長、やっちまいまし……た……」
そこでルーラーシップは顔面蒼白になった。
後から聞いた話によると、仁王のような形相で全身から殺意が漏れ出ていたのだという。
「え、あ、ひっ……すみま、すみませぇん! すみませぇん! もうしませんから!!」
ルーラーシップは泣き叫んで、隣の寮からヒシアマゾンがなだめにやってくる騒ぎになった。
「フジ、あんたすごい顔しているよ。小便ちびっちまうよ、そんな怖い顔してたら」
実際ルーラーシップは少し漏らしていた。
…326/10/31(土)22:15:13No.1483057536+
また別の機会では『哀』の感情も威力を発揮した。
栗東寮の生徒たちを前にマジックを披露する機会があり、シルクハットから鳩を飛ばして観客を沸かせていたが、最前列に座るエアシャカールだけは無反応であった。
「すげェけど、まあ子供だましだな。もういいだろファイン、オレは先に帰って――」
舞台上でコントローラーを操作するのもどうかと思ったが、好奇心が勝り『哀』の表情を使ってみた。
「まるで、十年連れ添った愛犬に癌が見つかった時のような」
それはもうすごい表現力であった。ここにきてフジキセキは察して女として覚醒した。
生徒たちからは次々にブーイングが上がり、エアシャカールは窮地に陥った。
「違っ、違ェって! マジックはすごい! 認める! 誤解すんじゃねェよ!」
このままだと石を投げられそうな勢いだったので、フジキセキがすぐに助け船を出してその場はなんとか収まった。
しかしそれ以降、フジキセキは百面相マシンに恐怖を抱くようになったのである。
…426/10/31(土)22:15:41No.1483057699+
このマシンが強力すぎるのではない。自分があまりに察して女に適性がありすぎるのだ。
表情に出すとまるで世界が自分の意思を代弁するかのように動いてくれる。
もし、もしトレーナーに対してこのマシンを使うことになったら。どうなってしまうのか。
好奇心と恐れの間で心は揺れ動き、結局好奇心が勝利した。
その日、フジキセキは勝負服でトレーナーを出迎えた。
「あれ? 勝負服? 今日なんか撮影会とかあったっけ?」
「ううん。私が着たかっただけ。気にすることないよ」
逡巡したのちに、『寂しい』表情を作って見せる。
「まるで、親からはぐれた子供が祭りの後で一人取り残されているような」壮絶な表情だ。
しかも勝負服。トレーナーにとってはいかにも訳アリに見えたのだろう。スマホを床に取り落としフジキセキの両肩を掴んだ。
「ど、どうした!? フジ、何か辛いことでもあったのか!?」
ありえないくらいに効き目が強い。すでに手のひらの上で踊らされている。
…526/10/31(土)22:16:08No.1483057858+
「ううん。ただね。私は4戦しか走ることができなかった。現役時代は短い。それを思うとこみ上げてくるものがあって」
コントローラーは遠隔操作にしている。『寂しい』から『切ない』感情へと移行する。
「こうして勝負服を着てひそかに在りし日を思い出してるんだ……」
この千変万化の表情にはさすがのトレーナーも驚いた。
普段は儚げに微笑むばかりのフジキセキが、これほど露骨に落ち込んでいるのだ。
「だ、だだ大丈夫! 俺がいる! 俺がそばにいるよ!」
そこで『切ない』から『期待』に変化させる。やや紅潮した頬になり、上目遣いでわずかに瞳は潤んでいる。
「そっか、トレーナーさんがいてくれるんだね。ふふ、今日ばかりはちょっとわがままを言ってもいいかな?」
『期待』の眼差しが雄弁に告げている。そのまま抱きしめろと、たくましい腕の中に導き入れろと。
フジキセキはウインクした。トレーナーはごくりと生唾を飲み込んだ。
――気づいて。
…626/10/31(土)22:16:34No.1483057997+
フジキセキの脳内にもう一人の自分がいた。それは本心とでも言うべきものだった。
――気づいて。トレーナーさん。全部嘘だよ。作り物だよ。私じゃないよ。装置がやらせているんだよ。
フジキセキはただの察して女ではなかった。超超超超超超超超ド級の究極完全体察して女であった。
百面相マシンを使ってあれこれとトレーナーを弄んでおきながら、さらにその裏、マシンを使った欺瞞までトレーナーに暴いてもらおうと『察して』もらいたがっていたのだ。
――トレーナーさん、抱きしめて。ううん、ダメ。やっぱり抱きしめないで。本当の私がどこにいるのか見つけ出して。
「……あれ? おかしい、おかしいぞ」
トレーナーは違和感に気づいたようだった。マジックのトリックを暴いた時の鋭い顔だ。
「フジはウインクできないんだってこの間言ってなかったか? 片耳だけ動かすのも筋肉的に無理だって聞いたような……なんでそんな顔ができるんだ?」
雲が晴れたらしく、トレーナー室の窓から明るい日差しが見えた。
「これ、何かに操られているんじゃないか? 絶対にそうだ」
…726/10/31(土)22:17:01No.1483058177+
「すごいね。すごい、トレーナーさんは本当にすごいよ」
フジキセキは拍手しながらマジックの種明かしをした。百面相マシンと説明書を見せる。
『喜』のつまみや『怒』のつまみを動かしながらトレーナーはしきりに感心していた。
「そうだったのか、こんなものが……」
「ふふふ、喜怒哀楽はっきりした私も魅力的だったかな?」
「新鮮でよかったけど、やっぱりフジは自然体で微笑んでいるのが一番好きだな。それで十分、感情を察することができるよ」
「!! ありがとう、トレーナーさん……」
ほんわかした空気が流れる。しかしこの時、フジキセキはひそかに裏コマンドを百面相マシンに入力していた。
『喜』のつまみを10時の方向に、『怒』のつまみを5時の方向に、『哀』のつまみを2時の方向に回す。すると裏コマンドが承認される。
なぜそんなことをしたのかと言われると答えることができない。
とても安心して嬉しくなったがゆえの「試し行動」だったのか。
それともフジキセキが生粋の「エンターテイナー」だったがゆえなのか。
…826/10/31(土)22:17:27No.1483058330+
その感情の名前は『ドエロ』。『エロ』を超えた、正真正銘の『エロ』であった。
顔面に塗られたナノマシンが微細な電気信号を流し、フジキセキの表情筋を魅惑的な形状に変えていく。
まるでスピリタスを一本一気飲みしたかのような蕩けた顔で、両眉は重力方向にだらりと垂れ下がっている。
ナノマシンは眼光すらも変える。虹彩の中には大きなピンク色のハートマークが浮かび上がり、電光掲示板のように好き好き大好きと愛のメッセージを表示する。
フジキセキはその場でネクタイを解いた。ただでさえ視線が集中してしまう勝負服の胸元が、丸見えになってしまう。
「フジさん。ぜってーにそのコマンドだけは見せちゃダメだぜ」
ジャングルポケットの言葉が思い出される。
「フジさんがサキュバス仕草したら、地球が終わっちまうよ」
ごめんね、ポッケ。でも大丈夫だよね。
トレーナーさんはすべてを「察して」くれるから。
…926/10/31(土)22:17:54No.1483058475+
百面相マシンは察して女を大量生産した。
アドマイヤベガがテイエムオペラオーとともに「はーっはっはっは!」と叫ぶなど、異様な光景が各所で見られるようになり、学園は混迷を極めた。
ラッキーライラックが「ほんま、トレーナーさんはおもろいなあ」と言った時の複雑な表情が話題になり、「マジで笑っている」「これはキレている」「京女と察して女の相性が良すぎる」と侃侃諤諤の議論になった。
フジキセキとトレーナーは表面上変わらなかった。フジキセキは百面相マシンを破棄し、以前の穏やかな生活を取り戻していた。
ここはトレーナー室。カーテンの隙間から冬の日が差し込んできて、細かな埃が浮かび上がる。
移動式のハンガーラックにフジキセキの勝負服がかけられていた。
糊のきいたシャツに折り目のついたスラックス。そこに小さな札が取り付けられている。
『シミ取りクリーニング済』。
…1026/10/31(土)22:22:34No.1483060195そうだねx3
>電光掲示板のように好き好き大好きと愛のメッセージを表示する。
そこまでいったらもうギャグだろ!
…1126/10/31(土)22:24:30No.1483060917+
いかん!!会長が周囲のダイヤルを爆笑最強に!!!
…1226/10/31(土)22:33:49No.1483064203+
おもらしルラち…
…1326/10/31(土)22:36:39No.1483065141そうだねx2
見破ったトレーナーさん凄いのにそこから試し行為を重ねがけするなや!
…1426/10/31(土)22:48:51No.1483069016+
>フジキセキはただの察して女ではなかった。超超超超超超超超ド級の究極完全体察して女であった。
酷い…
…1526/10/31(土)23:32:43No.1483083011+
言われてみるとわりとフジさん気付いてオーラ出してるな


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