二次元裏@ふたば

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53256 B26/10/10(土)22:10:39No.1476645935そうだねx2 23:35頃消えます
謙遜とは。
日本文化が作り出した奥ゆかしきアティテュード、礼儀作法のことである。
「いえ、それほどでもありません」
一流のレディには一流の振る舞いが求められる。
時は春、学園では慎ましさを重視した一大謙遜ブームが巻き起こった。デュランダルも当然、例外ではない。
外部で開催されるセミナーに強制的に参加させられ、騎士たる矜持と淑女の礼節を基礎からみっちり叩き込まれた。
謙遜のマインドが洗脳めいて脳内に浸透し、常識はいともたやすく改ざんされた。
デュランダルはレベルアップし、慎ましガールとして再臨したのだ。
このスレは古いので、もうすぐ消えます。
…126/10/10(土)22:11:28No.1476646216+
「我が君、お戯れを。私にはそのような言葉はふさわしくありません」
研鑽の成果を発揮するときは、意外にも早く来た。
川で溺れている小学生女児を助けたことで、警察から表彰されたのだ。
正確にはカルストンライトオが真っ先に川に飛び込んだところを、後からデュランダルが通報して連係プレーで救出したという経緯なのだが、お手柄であることには変わりない。
トレーナーはいたく感心してデュランダルのことをしきりに褒めた。その時の反応こそが、「お戯れを」なのである。
しかしデュランダルは今にも口元が綻んで笑みがこぼれそうになるのを必死にこらえていた。
(あっ、ひょっとして褒められるの嫌だったのかな)
トレーナーはバカであった。言葉を言葉のまま受け取る男であった。
ウマ娘との距離感はきちんと考えなくてはいけないな、などと内省する始末であった。
…226/10/10(土)22:11:51No.1476646347+
次の機会もすぐに訪れた。トレーナーが知恵の輪に苦戦していたのだ。
二つのねじくれた金属が複雑に絡み合っている。
しかしデュランダルは知っていた。その知恵の輪は前日にビリーヴが買っていたものとまったく同じだったのである。
(カルストンライトオは知恵の輪を放り投げて「致死量の曲線で目眩がする」と言っていた)
「あー俺にはとても無理だ。デュランダルにもできっこないよ。こんなの」
ちょっと鼓動が早くなった。かちゃかちゃとパズルのピースをはめるように的確に動かしていく。
自分でも驚くぐらいスムーズに、あっさりと知恵の輪が解けてしまった。
「えっ! すごっ!!」
実際、一回見ただけなのに忠実にその手順を再現できることはすごい。ほとんど魔法であった。
「すごすぎるよデュランダル!! 天才か!?」
…326/10/10(土)22:12:15No.1476646508+
くっ。ダメだ……笑うな……自分は騎士! 謙遜と礼節こそが我が信条!!
ここで破顔一笑して甘んじて褒めを受け入れるなどとは騎士の恥!
「いえ、それほどではありません。日々の訓練のたまものです」
知恵の輪を捧げて、直立不動でつーんとしているデュランダルを見てトレーナーは思った。
(あっ、こういう感じでおだてられるのあんまり好きじゃない?)
トレーナーはバカであった。
反省力だけは人一倍あったので、次からはもう褒めないようにしようという間違った学習をしてしまった。
謙遜ブームはとどまることを知らず、ツインターボが「ありがとうございます。もっと精進いたします」というセリフを発したなどという根も葉もない噂まで流れ始めた。
そしてブームの加速と反比例するように、トレーナーがデュランダルを褒める頻度は減っていった。
…426/10/10(土)22:12:38No.1476646673+
やがて、げっそりしたデュランダルが虚ろな目で学園を徘徊している姿が観測されるようになった。
ついにトレーナーからの褒めがゼロになったのである。
デュランダルはぶつぶつと「いえ、そんなことはありません」「それほどでもないです」「我が君、それは過言というものです」と教科書に載っている謙遜の言葉を繰り返していた。
その言葉を使う機会をほとんど永遠に奪われたまま……。
「デュランダル、何だその薄汚い顔は」
「放っておいて、貴方には関係ないでしょ……」
事実、カルストンライトオには全然関係ない話であった。このウマ娘にとっては直線こそが最優先事項であって、それ以外のことはほとんど視界にすら入っていない。
だが、目の前でハリガネムシのようにうにょうにょ煩悶しているデュランダルはさすがに腹に据えかねたらしい。
「よくない。謙遜ブームなど回りくどいことはやめろ、猫ちゃんを見習え」
…526/10/10(土)22:13:03No.1476646832+
びしっと木漏れ日の中で眠る猫を指差して、カルストンライトオは走って行ってしまった。
励ましてくれるのだろうかなどと一瞬でも期待した自分がバカだった。デュランダルは猫を見た。
……確かに、猫の世界には謙遜などという概念はないのかもしれない。
食べたいときに食べて、寝たいときに寝る。いや、野良の猫は縄張り争いだとか、日々の食料の調達だとか面倒なことがたくさんあるのかもしれないが、それでも今の自分よりはるかに本能に正直に、自由に生きている気がした。
そもそも、自分がそれほどまでに守りたい尊厳とはいったい何だったのだろうか。
やがて猫が起き上がってデュランダルの足に頭をこすりつけてきた。
撫でろ、ということなのである。このわがままでふてぶてしい感じが私にもあれば――。
デュランダルは一人、我が身を振り返った。
…626/10/10(土)22:13:27No.1476646996+
褒めがなくなってから、トレーナーはなんとなくよそよそしい。
「あっ、デュランダル。帰ってきてたのか……」
トレーナー室でコーヒーを淹れる仕草一つとっても遠慮がちに見える。デュランダルは臍を噛んだ。
「我が君。私は今日、一つ善行を積みました」
何を、とは言わない。
「あ、そう……」
目も合わせてくれない。謙遜ブームの前は真っ先に反応してくれたのに。
泣きそうになるのを必死にこらえながら、プルプル震える手を握り言葉を継ぐ。
「私の行いは今後百年間たたえられてもおかしくない偉業です。褒めるなら今しかありません」
「でも、褒められるの嫌なんだろ? 前だって嫌がってたじゃ――」
…726/10/10(土)22:13:51No.1476647141+
「嫌では! ありません!!」
がしゃーん、とコーヒーのカップが床に落ちた。
「嫌じゃありません!! 王、誤解なさらないでください! 私は! 常に! 褒めを! 求めています! というか、褒めが生きがいです!!」
デュランダルはだんだんと何度も地団駄を踏んで反論した。
「謙遜? なるほど、素晴らしい文化ですね! ですが、そんなものは味噌っかすです! ご命令とあらば、燃えるゴミと一緒に焼却炉に放り込んでみせましょう!」
ようやく脳内に巣食っていた謙遜の呪縛から解き放たれた。
こうなるともうデュランダルはリードから解き放たれた柴犬である。
「褒め! 褒め! 褒め! 私はやりました。私はやりましたよ。我が君! I need 褒め! プリーズプリーズ褒め褒め!」
騎士の礼儀を重んじるならば王の前に片膝をついて返礼を待つべきであるがそのような理性は残っていない。
がっちりとトレーナーの胸にすがりついてドリルめいて頭をこすりつけた。目は潤んでいる。
…826/10/10(土)22:14:18No.1476647314+
「ひえっ……わかったから、ちょっと待って、デュランダル」
主人の「待て」には本能的な反応をしてしまうところもまるきり犬である。
ぴたっと頭ドリルがやみ、半歩後ろに下がって、上目遣いで期待の眼差しを送った。
その様子を見て、トレーナーも調子を取り戻したのか、コホンと咳ばらいして言った。
「あー……よくやった。すごいよ、デュランダル。此度の働き、見事であった。褒めて遣わす」
過剰かとも思ったが、求められている気がしたので、頭も撫でてやった。
わしわしと少し強めに、頭がちょっと振られるくらいの力で、何度も何度も撫でる。
その表情、まさしく恍惚。これまでため込んできた鬱屈が解放され、カタルシスとなって全身を駆け巡った。
「ふ……ふふ、ふふふふ……ああ、夢のような心地……至上の悦楽……!」
…926/10/10(土)22:14:44No.1476647464+
デュランダルは謙遜ブームのことを話した。これまで学園の洗脳下にあったことを説明した。
「何事も行き過ぎは良くないな。謙遜し過ぎると慇懃無礼に見えるからな」
「はい、反省しています」
「俺ももっと察するようにするよ。今後は俺の前では敬語も使わなくていいから」
「いえ、そういうわけにはいきません。騎士と王との忠節は変わりません。しかし私は必要以上に自分を卑下しないことにします」
「うん。そういえば結局、今日やった善行って何だったんだ?」
デュランダルはそこで返答に詰まった。まさか言えるはずもないのである。
「自らの欲望を解放してあげる善行を積んだ」などとは――。
…1026/10/10(土)22:15:13No.1476647622そうだねx3
次第に謙遜ブームの洗脳は次のステージに移行しようとしていた。
ウマ娘たちは言葉の上では謙遜しながらも、担当トレーナーたちに理想の反応を求めるようになっていたのだ。
「いや、なんていうかさ、俺なんてまだまだダッセーよ(かっけーって言え……!)」
ウオッカのトレーナーはバカなので普通に「ダッセーな」と返した。
「優しいこと言わはりますけど、うちではトレーナーさんとは釣り合いません(わかっとるやろな……!)」
ラッキーライラックのトレーナーはこれが京都風の受け答えかあと感心し、「そうだね」とだけ言った。
このように謙遜ブームは奥深い心理戦を兼ね備えた文化人の嗜みとなったのである。
一方でオルフェーヴルが「いえ結構です。悪いです」というセリフを口走り、ドリームジャーニーが口から紅茶を吹き出す事態が起こるなどした。
…1126/10/10(土)22:16:23No.1476648038そうだねx3
お前のトレーナーは謙ちゃんだろ
…1226/10/10(土)22:18:12No.1476648674そうだねx1
なんだこのバカどもは...
…1326/10/10(土)22:18:52No.1476648900+
これがほめメテオちゃんですか
…1426/10/10(土)22:19:51No.1476649305+
草
…1526/10/10(土)22:20:04No.1476649392+
>ラッキーライラックのトレーナーはこれが京都風の受け答えかあと感心し、「そうだね」とだけ言った。
クソボケがぁ!
…1626/10/10(土)22:23:12No.1476650591+
>お前のトレーナーは謙ちゃんだろ
誰が上手いこと言えと
…1726/10/10(土)22:26:42No.1476651895+
可愛いなこのわんこ
…1826/10/10(土)22:33:43No.1476654517+
こいつ本当に騎士?
…1926/10/10(土)23:09:49No.1476666943+
オルフェの敬語で俺もダメだった
…2026/10/10(土)23:15:52No.1476669050+
紅茶を勧められた時即座に受け取るとヨクバリと見なされムラハチの処遇となり最後はセプクでケジメをするしかなくなるのだが
「いや結構です、悪いです」と一度断ることにより十分な奥ゆかしさが付与されている
…2126/10/10(土)23:28:26No.1476673570+
このホメラニアン可愛すぎる
…2226/10/10(土)23:29:59No.1476674090+
また自分で感想書いてる…


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