二次元裏@ふたば

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28440 B26/08/20(木)17:48:53No.1460432102そうだねx2 19:55頃消えます
Ev1-1 トリアイナ探検隊(おおよそ)南へ

 ――――シザーリオ、もう何もかも知っているな。お前には心の秘密の書物も開いて見せた。そこでだ、いいか、あの人のところへ行ってくれ。断られても門前に立ち続け、お目にかかるまでは足に根が生えても動きませんと言うのだ。――――
126/08/20(木)17:49:18No.1460432194+
 砂色をした、水アメのように重たげな水面をボートの舳先がゆるやかに割っていく。
 葉ずれの音と息づかい。鳥とも獣ともわからない甲高い鳴き声が、遠く近く、絶え間なくひびく。左右にはどこまでも続く濃い緑の木々。その合間をぬって吹き付ける生ぬるい風は、南国の果実の香りをふくんでいる。
 ここは地上最後の秘境。アマゾン大密林。

「行く手に待つのは古代の財宝か、はたまた危険なUMAか、しかし、勇敢なトリアイナ隊長はなにものも恐れはしない。探検隊は見た! 密林の奥にあやしくうごめく……」
「お姉ちゃん、うるさい!」

 ディオネはキャビンの窓から首を伸ばして怒鳴った。「そこに立ってたら前が見えないでしょ!」
「ごめんごめーん!」
 クルージングボートの舳先に仁王立ちしていたトリアイナはぺろりと舌を出す。そして少しだけ横にずれてまた仁王立ちし、満面の笑顔で密林の風を受けた。「だって、アマゾンだよ。地上最後の秘境、全探検家の憧れだよ! 盛り上がるなって方が無理じゃない!?」
「邪魔にならないところで盛り上がってよね、もう」
226/08/20(木)17:49:47No.1460432321+
 ぼやきながらも、ディオネも笑う。確かに南米アマゾンのジャングルといえば、ディオネでも「探検」と連想するほどの土地ではある。思えばディオネがオルカに合流したその時から、トリアイナは「いつかジャングル探検に一緒に行こうね!」と言い続けていた。
 しかし実際には、南米の熱帯雨林の大半は鉄虫の支配領域であり、まずは制圧作戦を展開してからでなければのんきに探検などできるものではない。その上なにしろ密林であるから重要な工業インフラがあるわけでもなく、大規模な火力展開もしづらく、さらに地球環境の面からもむやみに開発すべき地域ではないため、制圧の優先度はかぎりなく低かった。何度も要望書や企画書を提出し、時には軍部に協力して水先案内を務めたりして、ようやくある程度安全性の見積もりがとれた上で、偵察を兼ねた探索行の許可が下りたのだ。慣れない書類仕事にも弱音一つ吐かずコツコツ頑張っていた姉の姿を思い出せば、怒る気にもなれない。
「隊長隊長トリアイナ隊長! すっごいの見つけた! 世紀の大発見かも!!」
326/08/20(木)17:50:05No.1460432395+
 そして今回は、新しい隊員も加わっている。屋根の上を騒々しい足音が駆け抜けたと思うと、目の前のデッキにひらりと飛び降りたミニスカートは080機関のエージェント、トモだ。
「ピンクよ! ピンク色のイルカ! お酒を飲むと見える幻覚だって聞いてたけど、実在したのよ! 私触ったもん、ほらほら!」
「あはは! それはアマゾンカワイルカっていってね、幻覚じゃないよ。アマゾンに昔からいるイルカなの」
「えー、そうなの!? なーんだ」
「あと、アルコール幻覚として有名なのはピンクの象だよ〜」
 舷側からのんびりした声が投げられる。もう一人の新人隊員、ドクターはさっきから船べりにいくつもの網やら機械やらを垂らしては、時折引き上げて興味深そうに眺めている。
「それは何してるの?」
「んー、水質とか、微生物とか調べてる」おだやかな、ほとんど眠たげな顔でドクターは答える。「ここんとこ調査やらなにやらで忙しかったからさー、こういうのんびりした仕事したかったんだ。あー、やっぱり水質だいぶよくなってるなあ」
「そうなんだ」
426/08/20(木)17:50:21No.1460432460+
「人間活動がなくなると、やっぱり効くね。北米に比べてPECSの手もそれほど入ってないみたいだし……」試験管の中のうす茶色く濁った水にレーザー光を当てて、ドクターは機械の数値を読み取っている。「あ、この先上流に行くと鉄虫がいるかも」
「水でそんなことまでわかるんだ!?」ディオネは目を丸くした。
「まだ研究中だけどね」ドクターは手元のパネルに何かの数値を打ち込んで、「だから確実じゃないけど、用心はしといてね」
「大丈夫大丈夫! この私がいるからには鉄虫なんて天地無用よ!」
 トモがカラカラと笑う。スパイというのはもっと知的でクールなものだと思っていたが、と失礼なことを考えるディオネを尻目に、トモとトリアイナはよほど気が合ったのか二人で船首から船尾へとせわしなく駆け回ってははしゃいでいる。
「みてみてあれ、青いオウム! 熱帯っぽーい!」
「ほんとだ、捕まえて帰ったら幸せになれたりして」
「おっ、スミレコンゴウインコじゃない。絶滅危惧種だったはずだけど、あんなのも復活したんだねー」
526/08/20(木)17:50:42No.1460432560+
「あっワニ、ワニがいるわ! いっぱい泳いでる、すごい目がでっかい!」
「メガネカイマンだね。夜行性だから昼間は大人しいはずだけど、気をつけてね」

「あれ何!? 金ぴかのサナギみたいのが木の枝からいっぱい下がってる! 新種の鉄虫!?」
「トラフトンボマダラっていう蝶の蛹だよ。金属光沢がまわりの色を映して隠れやすくするんだって」

「水の中に納豆みたいなのが浮いてるわ。誰かの食べ残しかな?」
「それたぶんカピバラのうんち」

「ドクターちゃん、何でも知ってるのね!」トリアイナが感心して大きな声を出した。「探検隊の科学担当にならない?」
「へへへー。嬉しいけど、私はもう080機関の科学担当で、オルカの科学顧問も兼ねてるからねー。これ以上の兼任は難しいかな」
「そう、残念……あっ、ほらほらあれは? あの岸辺の変なの」
「んー? あれはオオオニバスの葉」
「それじゃなくて、そこにくっついてる白い、溺れた子供みたいな形したやつ! あれ何?」
626/08/20(木)17:51:02No.1460432651+
「え? うーん、あれは……」
 しばらく目をこらしていたドクターが、ぴょんと飛び跳ねる。「溺れた子供だ!」
「ええ!?」
 騒然となる船内。ディオネはすぐさまキャビンを飛び出し、救命浮き輪を手にして舷側へ駆けよる。
「お姉ちゃん、舵お願い!」
「危ないよ! ワニがいるのよ!?」
「だったらなおさら急がないとでしょ!」そのまま川へ飛び込んだディオネは、生ぬるい水をかき分けて岸へ泳ぎだした。

 ボートに引き上げられたのは、端整な顔立ちの少年だった。少なくとも、そのように見えた。
「いやー、危ないところだったわ。そりゃあ男の子は元気な方がいいけど、夏の水場には気をつけないと……」お姉さんぶって説教をはじめたトモがふと怪訝な顔をする。
「……ん? 男の子?」
 トモの疑問に誰かが答える前に、少年が身じろぎし、咳き込んで少しの水を吐いた。
「大丈夫?」
726/08/20(木)17:51:21No.1460432733+
「オ……ル…………カ……」
「!?」
「オルカの……司令官……に……」
 それだけ言うと、少年はふたたび意識を失った。
826/08/20(木)17:51:36No.1460432803+
Ev1-2 局長閣下の少年スパイ

「バイオロイドの男の子が救助された!?」
「いえ、それは誤認でした。女性バイオロイドです。ただし、男装の」
 思わず立ち上がって大声を出した俺に、レモネードベータが冷静に答えた。
「なんだそうか……男装?」
 俺はすとんと腰を下ろし、報告書の続きを読んだ。ディオネが来てからというもの、トリアイナ探検隊の報告書が格段に読みやすくなって助かる。
「ふんふん、大きな怪我はなく疲労と衰弱のみ。重大な発見と判断し、探索を中断してカラカスまで連れ帰ってきた、と……今はどこに?」
「この大統領宮の一階に待機させています」ベータが自分のパネルで情報を確認する。「治療と身体検査、予備尋問は済んでおり、危険性は低いとのこと。お会いになりますか?」
「ああ、行こう」
 報告によれば、そのバイオロイドは俺の名を口にして気を失ったという。合流を希望するどこかの共同体のメンバーだろうか。あるいは、またぞろPECSの仕掛けた罠なのだろうか? いずれにせよ、この目で確かめてみなければ始まらない。俺は立ち上がって執務室を出た。
926/08/20(木)17:52:00No.1460432892+
「で、どうして男装?」
「私にもわかりませんが、シラユリさんが説明して下さると思います。080機関のモデルとのことでしたので」

「ご足労をおかけして申し訳ありません」
 とにかくだだっ広いこの大統領宮に無数に存在する、使われていない客間のひとつに入ると、シラユリとニッキーが一礼して俺を出迎えた。部屋のすみにはサディアスが腕を組んで待機している。そして、中央にぽつんと置かれた椅子に「彼女」は座っていた。
 白い半袖のシャツに半ズボンとスニーカー。栗色の髪を長く伸ばして、うしろで無造作に束ねている。キリッとした顔立ちは、服装とあわさって確かに男の子にしか見えない。
 大きな切れ長の目が、警戒するように俺をじっと見上げている。
「装備は取り上げていますが、あまり近寄らないようお願いします」シラユリは小声でささやいてから、彼女の方へ向き直った。
「こちらが私たちの主人、オルカの司令官様です。ヴァイオラ、もう一度自己紹介を」
 ヴァイオラ、と呼ばれたその子は、口をちょっともごもご動かして、何度か咳払いをしてから口を開いた。
1026/08/20(木)17:52:15No.1460432943+
「ジャン=ジャック・ヴァイオラ、h307号機。080機関本部所属のエージェントだ……です」
 少しハスキーな声も少年っぽい。
「ジャン=ジャックは任務コード、ヴァイオラがモデル名です」シラユリが補足した。「ヴァイオラモデルはご覧の通り、少年に偽装したエージェントです。男子校や男子寮など、女性が入りにくい場所への潜入任務のため開発されました、旧時代にはそれなりの数が出ましたが、滅亡戦争で一機も残らなかったはず……あなたは一体、どこから来たのです? 本部とは?」
「おれ……オレ、あの」
 ヴァイオラは一生懸命に言葉を探しているように見える。俺はシラユリと、背後にぴったり付き添っているリリスに目で同意をとると、しゃがみ込んでヴァイオラのすぐ前まで移動し、彼女と視線を合わせた。
「慣れない言葉遣いはしなくていい。俺に会いに来たんだって?」
 ヴァイオラはしばらくの間、きょとんとして俺を見つめていた。
 それからぶるっと身震いをし、ぎゅっと目をつぶってから、前よりずっとハキハキした声で話し始めた。
1126/08/20(木)17:52:38No.1460433042+
「そうだ。オレは080機関の局長命令で、オルカの司令官に会いに来た。局長があんたに会いたがってる。オレと一緒に本部まで来てほしいんだ」
「!?」
 シラユリが身体をこわばらせるのがわかった。
「……いきなり言われても、すぐにハイとは言えないな」俺は慎重に答えた。「局長っていうのは、080機関のトップって意味か?」
 ヴァイオラが頷く。
「それは、何者なんだ?」
「わからない。オレは一度も会ったことないんだ。ただ命令を伝えてくるだけで」
 俺は背後のシラユリに目をやった。彼女も同じく首を振る。
「080機関の局長が何者なのかは、私も知りません。……だからといって、その子の言う局長が本物だとは限りませんが」
「疑うのかよ!」ヴァイオラが声を荒らげた。「局長は本物だ。オレを復元したのも局長なんだ」
「なぜ俺に会いたいんだ?」
「敵がいる」
 そこだけは奇妙にしずかな声で、ヴァイオラは言った。「この南米のどこかに、あんた達オルカの敵が眠っていて、もうじき目覚めようとしてる。その話をしたいんだって」
「フワッとした話だな……オルカの敵って、どういう意味だ? 鉄虫はいるけど、奴らは別に眠ってなんかないよ」
1226/08/20(木)17:52:52No.1460433099そうだねx1
「オレは知らない。詳しいことを知ってるのは局長だけだ」
「どうしてその局長が、自分でここへ来て話さないのですか?」
「本部から出られないんだ。前にそう言ってた」
「どうして?」
「わからない」
「私、旧時代からずっとヨコハマ支部にいたんだけど」ニッキーが一歩前へ出た。「滅亡戦争からこっち、本部から連絡があったことなんて一度もないわ。本部と局長が本当に健在なら、今まで何をしていたの?」
「……わからない。オレが復元されたのは三年前だから」
「あれも知らない、これもわからない。それで私達の信用を得られると思っているんですか?」シラユリが冷たい声を出した。「本部所属という割には、インテリジェンスの基本がなっていませんね」
「教えられてないんだよ、本当に」ヴァイオラは強情に言い張った。「あんたみたいな上級エージェントなら、嘘を言ってるかどうかわかるだろ。時には正直に話すのが一番のインテリジェンスだって、オレは習ったぜ」
「ふん」シラユリはそれ以上何も言わなかった。
1326/08/20(木)17:53:08No.1460433159そうだねx1
「もう少し話を聞かせてくれ。君自身はその局長の下で、何をやってたんだ? つまり、今回の命令を受けるより前は」
「いろいろだけど……まあ、情報収集だ。ドローンを飛ばして、集めてきたデータの整理をしてた。鉄虫とか、あんた達とか、レモネード達のな」
「俺たちの? たとえば、どんな情報?」
「レモネードベータがあんた達の傘下に入ったこと。カラカスに来ていたレモネードオメガが、ケス……なんとかいう装備を奪って北米へ逃げ帰ったこと。それにレモネードゼータが絡んでること」
「…………」
 俺はシラユリ達と目を見交わした。彼女と、彼女のバックにいる何者かが、こちらの詳細な情報を持っていることは間違いなさそうだ。
「君の言う本部ってのは、どこにあるんだ?」
 ヴァイオラは俺の目をまっすぐ見て答えた。
「ジャブローだ」
1426/08/20(木)17:53:53No.1460433365そうだねx1
めちゃくちゃ長いので続き
fu7140681.txt

新規イベがないなら自分で書けばいいじゃない!の精神で書きました
第2部・第3部も近日中に投下します
1526/08/20(木)17:55:10No.1460433695そうだねx1
>新規イベがないなら自分で書けばいいじゃない!の精神で書きました
ありがとう…
>第2部・第3部も近日中に投下します
なそ
1626/08/20(木)18:06:11No.1460436567そうだねx1
今回バイオロイド公募展に応募した自作の戦闘員クターをメインに出しています
いつのもやつよりオリキャラ成分が強いのでそこはどうかご容赦下さい
1726/08/20(木)18:45:48No.1460447140そうだねx1
ラスオリでカラカスの名前を知ったあと
現実でカラカスがやべえことになってこれ知ってた…!ってなったよね
1826/08/20(木)18:56:24No.1460450161+
いつもありがとう


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