二次元裏@ふたば

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141390 B26/08/16(日)23:56:37No.1459384572そうだねx1 01:52頃消えます
「――恋って、どんなものか知ってますか?」
「……え? なんて?」
トレーニングを終えて、トレーナー室でゆっくりとしていたある日の夕頃。おれは、ふと気になっていた疑問をなんの気もなしにトレーナーさんに投げかけました。

「あ、その。ヘンなこと、聞いちゃいましたね。すみません……」
「ぁ、いや。それは全然良いんだけど……どうして急にそんなことを?」
困惑の色をふつと浮かべて、トレーナーさんは尋ねてきます。えっと、それは――。

「――ふむ。お話ではよく見るけど、自分ではよく分かってない、か」
「そう、ですね。おれ、その。今まで生きてきて、恋とか、誰かを好きになるとか、そういうのとは……縁が無かったので」

「例えば、姫に恋した騎士のお話、とか。王子様に心を惹かれたお姫様のお話とか。そういうのは、何度も読んだことがあります。だから、“恋”が素敵なことっていうのは、おれも知ってます」
お話とか絵本の中には、素敵な相手と恋に落ちるようなストーリーがたくさんあります。それは、幸せいっぱいなモノとか、愛で救われるお話とか。あるいは、人魚姫のお話みたいに恋したから悲しい目に合ってしまうお話とかも。
126/08/16(日)23:58:25No.1459385116+
「――でも、そういう経験がミラクルには無いから、いまいちハッキリ理解できない、ということか」
「……はい。……あ、でもその。何も、無かったってわけじゃないんです。例えば、こんなおれのとこにも、素敵な王子様が現れたり、とか……考えたこともありますから」
「そうなのか?」
「はい。……けど、ずっと小さい頃の話なので。今は思ってないですよ? ぜんぜん」
そんな都合の良い人が、突然おれの前にあらわれるとか――そういうのがあり得ないことは、おれがいちばん分かっていますし。

でも、例えば――絵本の中のお話の主人公たちみたいに、ある日突然そういう素敵なヒトが現れて、人生がいっぺんに変わるなんて、そんなドラマチックなことが、もしかしたらあるのかも――って。

「――そう、か。……恋、恋かぁ。うーん、難しい話だなぁ」
「……トレーナーさんでも、難しいんですか……?」
「そりゃあ、まあ」
そう、答えるトレーナーさんに、どこか意外に思う。トレーナーさんは大人で、何でも知ってる人だから。恋のことだって、簡単だと思ってたけど……。
226/08/17(月)00:00:23No.1459385697+
「……トレーナーさんでも、難しいんだ……」
「恋ってのは、そう単純な物でもないからな」
うーん、と困り眉をしたままのトレーナーさんがそう溢します。
「恋に理屈は無い、というのかな。何かが正しいというわけじゃないから、どうすれば良いか分からなくなるときもある。間違っていると分かっていても、止められないっていうのはよくある話だしな」
「あっそれならおれ、読んだことあります。……その、身分違いの恋とか、兄妹同士での禁じられた恋、みたいなお話……ダメと言われても、恋するものなんですよね?」

「……ん? ……あ、いや。まあ、そうだな。そういうお話もあるな」
……? 一瞬、トレーナーさんが戸惑ったような顔をして、それからすこしだけ早い口でそう返してきました。
何かおれ、ヘンなこと言ったかな……?

「ま、まあとにかく。……まだ、君が理解できてないのは、仕方ないことだと俺は思うよ。誰かが一緒に君の隣で歩いてくれるとか。入院中はあんまり考えたことなかっただろう?」
「そう、ですね……おれは、おれのことで手いっぱいで」
326/08/17(月)00:02:32No.1459386400+
「――でも、今はもう違う。君は自分の人生を好きに歩めるようになったんだから。だから、これから先……君の隣で一緒に歩いてくれる人も現れると思うよ。そうなったら、もしかしたら。恋っていうのが君にも分かるようになる……かも?」
真面目な顔でそのまま言い切る……というわけではなく、すこし緩んだ表情で最後に“かも”と付け加えるトレーナーさん。

……でも、そっか。
あんまり考えたことなかったけど。おれにも……現れるかもしれないのか。おれの隣で、一緒に歩いてくれる、そんな人が。

――あれ、でも待てよ……?

「……その、おれ。もういるかもしれません……」「――え? 何が……?」
「その、おれの隣で、一緒に歩いてくれる人――」

それは、誰よりもおれのこと、いっぱい考えてくれて。ずっと、おれのゆっくりな歩幅に合わせて歩いてくれて。おれの隣で、一緒に歩いてくれる人――。

「……その、トレーナーさんが、もう――おれの隣で歩いてくれる人、かもなって」
「えっ、あっ……! 言われてみればそうか、今の言い方だとそうなるのか……すっ、すまん――」
426/08/17(月)00:04:29No.1459386965+
「えっ、いやいや! 謝らないでください、というかなんで謝ってるんですか……?」
「えっと、それは、その」
トレーナーさんは、とってもとっても、今日見た顔の中でいちばん、困った顔をして。

「と、とにかく! 俺以外で、たぶんそういう人も現れるだろうから……!」
「そう、ですか……? そういうもの、なんですか」
よく分からないけれど、トレーナーさんが言うにはそういうことらしい。……おれの中では、どうしてトレーナーさんは違うのか、よく分かっていないけど……。

「でも、そうか。トレーナーさんの言うとおりなら、トレーナーさんが隣に居てくれるのに、おれが恋をまだ分かってないのも、理由がつくのか……」
「……ま、まあ、そうなるな」
そう考えれば、不思議と納得がいく。どうやら、トレーナーさんは一緒に歩いてくれる人とはまた違うということらしい。

……でも。

「――おれ、良くない子かもしれません」「……え?」
526/08/17(月)00:06:46No.1459387640+
「だっておれ……トレーナーさん以上に、隣で一緒に歩いてくれて嬉しい人……思いつかないから。トレーナーさんがそうだったら、安心なのになって……トレーナーさん以外の人ちゃんと探さないとなのに、おれ、こんな考えじゃ良くないですよね」
「えっと、そ、そうだな? これは、えぇっと……」
またまた、トレーナーさんはさっきよりももっといちばん困った顔をして。……けど、今回はなんだか、それ以外の色もあるような?

「ま、まあ! ミラクルにはまだ恋は早いってことで……!」
「そう、ですね……。はい、おれもっとゆっくり、その時がきたら、考えてみます」
おれがそう答えると、トレーナーさんはホッと安心したような表情を浮かべて。……や、やっぱりその、今日はヘンなこと聞いちゃったかもしれないな。トレーナーさん、いっぱい困らせちゃったみたいだし……。

「そ、その……ヘンなこと聞いてごめんなさ――あっ、いや。……おれの相談、聞いてくれてありがとうございます、トレーナーさん」
「ああ。どういたしまして!」
626/08/17(月)00:08:11No.1459388047+
おれの悪いクセで、咄嗟に出かけたごめんなさいを引っ込めて。トレーナーさんにありがとうを伝えると、トレーナーさんはあったかい笑顔でそう応えてくれて。

――ああ、やっぱり。トレーナーさんが隣で歩いてくれるの。嬉しいから、しばらくはずっと甘えちゃいそうだなって。
すこし悪い子なおれは、そう思うのでした。
726/08/17(月)00:09:50No.1459388513そうだねx2
おわり
ケイちゃんには漠然と“恋”をドラマチックで純粋で素敵なものだと信じていて欲しいな
826/08/17(月)00:57:27No.1459401385+
ケイちゃんいい…
926/08/17(月)01:13:32No.1459404971+
本当は知ってるんだろ?
1026/08/17(月)01:13:47No.1459405024+
悪魔が
1126/08/17(月)01:18:18No.1459405883そうだねx3
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読みづれ〜
1226/08/17(月)01:26:48No.1459407441+
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