二次元裏@ふたば

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133747 B26/08/12(水)00:06:39No.1457701619+ 02:20頃消えます
アタシは嘘が嫌いだった。
世界が綺麗な青空だとしたら、嘘はそれを覆い隠す雲のようなものだと思っていたからだ。やりたいことを諦めたり、悪いことを隠すために嘘をひとつつくたびに、アタシの世界は翳っていく。
そのときのアタシはまだ、世の中のことを知らない子供だったのだ。世界はアタシが思うほどきれいなものばかりじゃなかったし、そこから目を背けたいと思うひとの弱さも、今なら少し解る。
それでもアタシは世界を愛している。変わったことは、愛すべき嘘もあるということがわかったことだ。
このスレは古いので、もうすぐ消えます。
126/08/12(水)00:06:58No.1457701716+
「アタシ、匂いで嘘がわかるんだよね」
そう言ったとき、トレーナーは背伸びする子供を見るように面映ゆげに笑った。
「あ、信じてないでしょ」
「ううん?だったら大変だなって。
俺、ちっちゃい嘘を結構ついちゃうからさ」
その言葉通りにアタシを煙に巻くための小さな嘘をついた彼は、まだ随分と余裕がありそうだった。続きを聞かせてほしいと言うように、アタシの目を見つめ続けている。
「ふーん。
じゃあ、何か嘘ついてみてよ。どんな匂いがするか教えてあげる」
彼はもうすっかりごまかすのもやめて、くすくすと笑い出していた。それでもアタシに付き合って適当な嘘をつくために見得を切る前のように神妙にしている姿も負けず劣らず可笑しいが、それを言うと拗ねてしまいそうだから心の内にしまっておく。
226/08/12(水)00:07:16No.1457701815+
「ごめん、シービーが買っておいてたシュークリームなんだけど、お腹空いてたから食べちゃった」
どこからでもどうぞ、と言うように、彼は余裕そうな笑みを浮かべている。もし本当だったら一大事だけれど。
膝の上に座ってわざとらしく鼻を鳴らすと、彼はくすぐったげに身体を引こうとするのだが、そんなものを見せられては余計に楽しくなってしまう。
「ふふふっ。うそつき。
ほんとは同じ店の別の味を買ってあるんでしょ。一緒に食べるためにさ」
彼は感心したように口笛を吹いた。だが、まだアタシが嘘を匂いで見抜けるとは信じていないらしい。
「すごいな。こっそり買ってきたつもりだったんだけど、匂いでバレてたか」
「もう、ちがうよ。シュークリームの匂いじゃなくて、嘘の匂いがわかるの。
そういう楽しい嘘は、焼きたてのパンみたいな美味しそうな匂いがするんだ」
326/08/12(水)00:07:31No.1457701888+
彼とアタシのにらめっこは、ぐう、というお腹の音で水入りになった。
「匂いの話してたらお腹空いちゃったな。
シュークリーム食べよう?アタシのと半分こにしてさ」
「ああ。
でも、俺のは嘘の味がするかもよ」
ティーポットを出す彼の横顔から、また美味しそうな嘘の匂いがしていた。
426/08/12(水)00:08:12No.1457702130+
ある日の朝は、憂鬱な雨が降っていた。
アタシは雨も好きだ。けれどその日の雨は、冷たくて重苦しい感触がした。
「おはよう」
「ああ…おはよう。今日は雨が強いからな。屋内トレーニングにしよう」
彼の顔も、なんだか湿って見える。目の下にうっすらと隈ができていて、髪は急いで直したのか、ところどころが跳ねたままだ。そんな有り様なのに笑顔だけはいつも通りなのが、余計に違和感を煽る。
「…なんかあった?」
「…ううん?何のこと?」
そして、はっきりと嗅ぎ取れるくらいに濃い、嘘の匂いがする。
綺麗なのに悲しい嘘。
胸がきゅっと締め付けられる、しょっぱい匂いの嘘だ。
526/08/12(水)00:08:51No.1457702338+
普通のひとは、こういうときにひとりにしておくという選択肢が取れるのかもしれない。自分が傷つかないように、相手を傷つけないようにする選択は、きっと間違ってはいないだろうから。
けれど、アタシはどこまでいっても不器用なのだ。アタシの大事なひとが、アタシの前で苦しくないふりをしようとしているのが、どうしようもなく我慢ならない。
「言いたくないなら言わなくてもいいよ。なんでも話せっていうのも、きっと窮屈だから。
でも、苦しいのに苦しくないっていうのはやめてよ。そうやって守ってもらわないといけないほど、アタシは弱くないから」
626/08/12(水)00:09:26No.1457702529+
きみの顔は見ない。いま、きみがアタシを見ないのは、見られたくないからだとわかっているから。
きっと、これは優しさじゃない。アタシに嘘をついてまで、きみが自分をごまかすのが許せないだけ。子供のわがままだ。
「助言もしないし、否定もしない。ただ、黙って聞いてるから。だから、言いたい分だけ言ってよ。
アタシはここにいる。どこにも行かないから」
きみには泣いていてほしくない。そういうわがままだと思って、諦めてほしい。
726/08/12(水)00:09:41No.1457702605+
「…ちょっと、身内に不幸があって」
「…仲、よかったの?」
「…うん」
「そっか」
雨はまだ止みそうにない。外の景色も、窓を伝う雫でぼやけている。
彼の肩にそっと頭を乗せる。冬の海のような匂いは、まだ消えずに残っているけれど。
「…今日は寒いね」
「…うん」
何も言わない。ただ、寒くなくなるまでそばにいたい。
しょっぱい匂いが、薄らいでいくまで。
826/08/12(水)00:10:07No.1457702759+
実のところ、彼は嘘をつくのがそれほど上手くない。
嘘が下手というよりも、隠し事が苦手なのだろう。けれど、どうしようもないくらいまっすぐな性根のまま格好をつけてくれるのがうれしいから、照れ隠しの嘘をつくのは辞めてほしくない。
「ん…おはよう、シービー」
「おはよう。今日は帰るの遅かったね」
アタシと違って彼はしっかりしているから、家に帰る時間が極端にずれることはめったにない。だが昨日はなかなか彼が帰ってこなくて、彼の顔を見る前に眠ってしまったのだった。
「ああ。ごめんな、ちょっと仕事が長引いて」
彼は澱みなくそう言った。まるでそう聞かれるのがわかっていて、予め回答を用意していたかのように。
そんな彼から知らない香水の匂いでもしていれば、不機嫌にもなったかもしれない。だが、今の彼からはクッキーのようなほんのり甘い香りがする。
926/08/12(水)00:10:21No.1457702858+
知らないふりをしてあげるのが、大人のやさしさというものなのかもしれない。
「そっか。じゃあ、持って帰ってきたあの箱は開けないでおくね。
大事な仕事の道具が入ってるかもしれないし」
でも、アタシはいつまで経ってもどうしようもなく子供なのだ。いつまでもきみを、アタシの言葉で転がしていたい。

「…そうだな。そうしてくれると助かる」
少し恥ずかしそうに頬を染めて目をそらす彼を逃がしたくなくて、追いかけるように彼の胸に鼻をうずめる。甘いクッキーの匂いは、さっきよりもっとはっきりしていた。
きみが祝ってくれるから覚えた、アタシの誕生日。いつもきみはこっそりプレゼントを選んで、アタシを喜ばせてくれるのだ。
1026/08/12(水)00:10:35No.1457702955+
きみに想いを伝えたあとも、秘密にしていることがたくさんある。
「ふふっ、いいよ。
楽しみにしておくから」
照れ隠しのかわいい嘘は、クッキーの匂いがするんだって。
1126/08/12(水)00:10:50No.1457703043+
待つ、というのは昔から苦手だ。
けれど、ついこの前二週間ほど出張に行っていた彼の帰りを待つときには、今までにないくらいやけに心が昂ぶった。
「どう?」
「美味しいよ。毎回思うけど、どうやって見つけてくるんだ?」
「匂いだよ。いいにおいがしてふらっと脚を伸ばして見つけたお店は、だいたいアタシの好きな店なんだ」
もう、こんなことを言っても疑わしそうな顔をしなくなったのが、うれしいようで少しさみしくもある。きみと過ごした時間の間に、きみは随分とアタシのことをわかってくれるようになった。
「さみしくなかった?」
「ううん、って言いたいところだけど流石に慣れたよ。いちいち出張の度に寂しがってたら、トレーナーなんて務まらないだろ?」
だからシービーも気にせず好きにしていい、という言葉にしない気持ちは、ちゃんと伝わっている。アタシが残したままの子供の心も、彼はきちんと汲み取ってくれるのだ。
1226/08/12(水)00:11:06No.1457703127+
「いいよ。それでも」
「えっ」
出会ってもう何年も経つけれど、きみの横顔は本当に格好良くなった。
でも、きちんと着こなしたスーツの裏には、子供みたいにアタシに恋をするきみがいてほしい。アタシが何年経っても、好きなものを諦められないのと同じように。
「いつまでもさみしがりやなきみがいても、アタシは別にいいよ」

きみの顔が、少し困ったように綻ぶ。好きな人の前では格好よくいたかったのに、と言いたそうだ。
大丈夫だよ。心配しないで。
きみがどんなアタシも好きでいてくれるように、アタシもきみのぜんぶを愛してあげたいから。
1326/08/12(水)00:11:31No.1457703292+
嘘の匂いを嗅ぎ分けながら、月日は流れて。
アタシはいま、きみの胸に耳をあてて、きみが作ったやさしい嘘を聞いている。
「さみしくないんじゃなかったの?」
「…ごめん。
ほんとは寂しかったよ。シービーに会いたいし、声も聞きたかったけど、電話したら我慢できなくなるかなって思ってさ。
帰ったら何しようって考えて、なんとか誤魔化してたよ」
きみの気持ちはいつまでも変わらないけれど、きみはそれを嘘で飾ることを覚えた。そしてアタシは、その嘘を取り払って本当の気持ちに会いに行く愉しみが増えた。
いつまでも変わらない素直な想いを顕にして、きみは少し坐りが悪そうにしている。格好いいきみはもちろん好きだが、最後にはアタシが入れるだけの隙を空けていてほしいのだ。
こうやって、胸に飛び込んでいけるように。

きみの胸の奥から、甘くて幸せな香りがする。
「さみしかったんでしょ。
埋め合わせしようよ」
隠すてのひらから大きすぎて零れ落ちた、変わらない愛の匂いだ。
1426/08/12(水)00:11:49No.1457703426+
彼の大きな手に撫でられていると、すぐに眠たくなってしまう。もう少し起きて、もっとたくさん話をしていたいのに。
「アタシ、きみの匂いが好き。
アタシのためについてくれた、幸せな嘘の匂いがいっぱいする」
古い悲しみがほんのり混ざった、幸せで楽しい嘘の匂い。アタシが知っている、素敵な大人にしか纏えない匂いだ。
「幸せな嘘の匂いなら、俺もわかるよ」
見上げると、彼の笑顔がある。
「外の風の匂い。いつもシービーが纏ってる、すごくいい匂い。
…俺を優しく騙してくれる、幸せな嘘の匂いだよ」

嘘つきなきみが好きだ。
素敵な嘘の中に、宝石みたいに輝く本当の気持ちを隠してくれるきみのことが好きだ。
なんだ。きみもとっくに気づいていたんじゃないか。
誰かを好きになったなら、嘘は幸せに添える香ばしいスパイスに変わるんだって。
1526/08/12(水)00:12:15No.1457703572+
きみと愛し合うときには、何の匂いもしない。
これから言う言葉は、絶対に本当だとわかっているから。
「…シービー」
「ん?」
「大好き」
でも、せっかくなら、その言葉の匂いも知りたかったかな。
「何の匂いもしないよ。
…嘘じゃないもん」
一度嗅いだら忘れられないような、素敵な香りがするだろうから。
1626/08/12(水)00:12:25No.1457703615+
これからも、嘘つきなきみでいてよ。
その嘘ごと、きみを愛してあげたいから。
1726/08/12(水)00:12:55No.1457703774そうだねx2
おわり
CBのために素敵な嘘をつけるようになりたいだけの人生だった
1826/08/12(水)00:15:37No.1457704644+
嘘や適当なごまかしが嫌いなCBにキミの嘘は優しいから好きって言われたいよね
1926/08/12(水)00:20:29No.1457706240+
ウソホントクイズで「ネッシーを見たことがある」とか「北極まで自力で行ったことがある」みたいな明らかなガセを言われたあとに「実はきみが初恋だって言ったら、信じる?」みたいなこと言われて心をぐちゃぐちゃにされたい
2026/08/12(水)00:24:23No.1457707594+
シービーのために徹夜したのにちゃんと寝たとか無理してないとかいう嘘をつくと怒る
2126/08/12(水)00:26:52No.1457708397+
バチクソにいい顔で上目遣いで覗き込まれるみたいな身も蓋もない嘘の見分け方もされたい
2226/08/12(水)00:29:16No.1457709079そうだねx2
2326/08/12(水)00:31:28No.1457709717+
真珠はみんな海のさかなの涙だったんだみたいなセンチメンタルな嘘をつきたいよね
2426/08/12(水)00:45:23No.1457713587+
悲しいことがあると何も言わずにそばにいてくれる猫みたいな女
2526/08/12(水)01:13:54No.1457720251+
「好き」って言われるとすぐにドキドキするわかりやすい心臓でいたいよね
2626/08/12(水)02:04:45No.1457729321+
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