二次元裏@ふたば

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143688 B26/08/09(日)03:12:23No.1456724217+ 09:22頃消えます
「お待たせしました」
ソーサーが机の上に置かれる乾いた音を合図に、キーボードを叩く音が止まります。鈍く光沢を放つ黒いコーヒーがなみなみと入ったカップを渡すと、トレーナーさんは優しく目を細めて、こちらに微笑んでくれました。
「ありがとう、いつも悪いな」
「そんな。私もコーヒーの香りは好きですから」
決してコーヒーに詳しいわけでも、コーヒーを淹れるのが特段上手なわけでもないのですけれど、以前から残業のお供にしているコーヒーをこんなにじっくり味わって飲んだことはないというトレーナーさんの言葉は、たとえお世辞だとしてもうれしいものでした。
このスレは古いので、もうすぐ消えます。
126/08/09(日)03:13:00No.1456724262+
私がコーヒーを淹れると、必ず手を止めて匂いまで味わうように丁寧に飲んでくださるトレーナーさんに応えたいと思うようになるのに、そう時間はかかりませんでした。抽出の腕前は一朝一夕で上がるものではありませんが、ただコーヒーを飲む以上の時間を、トレーナーさんには過ごしていただきたいのです。
「すごく立派だね。これは…ランでいいのかな?」
「はい、和蘭といいます。とても元気なお花で、きちんとお手入れしてあげれば切り花でも数週間も保つんですよ」
今日のお花は、白く清楚な佇まいの和蘭です。いつもトレーナーさんの机に活けている切り花を、最近はコーヒーを淹れるときに替えることにしました。
シンビジュームは香りのない花ですが、和蘭は東洋蘭の血を引いています。甘すぎない爽やかな香りは、コーヒーの香ばしい匂いとも相性がいいと思って選んだものでしたが、深く息を吸い込んではほっと一息つくトレーナーさんを見ていると、それが間違いではなかったのだとわかってほっとしました。
226/08/09(日)03:13:24No.1456724292+
「…もしかして、コーヒーに合わせて選んでくれた?
レモンみたいで、すごくすっきりする」
「…はい。こういう花の選び方をしたことはなかったので、少し、不安だったのですけれど」
ともすれば誰かのために頑張りすぎてしまうトレーナーさんに、少しでも安らぎを差し上げたい。そう思って初めた試みであることは、紛れもない事実です。けれど今となっては、トレーナーさんに笑っていてほしいと願うのが誰のためなのか、自信を持って答えられないのです。

トレーナーさんはその指先で蘭の花びらをなぞりながら、ゆったりと目を細めました。
「ブーケの選んでくれた花を好きにならなかったことなんて、ないよ。
この花のことも、もうきっと忘れないから」
今までに贈った花たちのことを思い出してくれているのかな、と思うと、どうしようもなく胸が高鳴ってしまいます。
ただあなたが報われるなら、それでよかったはずなのに。
机の上の白い花のような、そのやわらかくて優しい笑顔をもっと見ていたい、だなんて。
326/08/09(日)03:13:41No.1456724309+
その日の夜、私はトレーナー室に活けていた和蘭と、お見合いでもしているかのように見つめ合っていました。
どうして、こんなことをしようと思ったのでしょう。本当はもっとトレーナーさんと話していたかったからといって、この子を連れて帰ってきてもその代わりになるはずがないのに。
花は花であるだけで美しくて、誰かの心を癒すものだと思っていたのに。その花びらの向こうに誰かの顔を思い浮かべる日が来るだなんて、思っていなかったのです。

和蘭の花は、その真ん中の蕊からまだ甘やかな香りを漂わせています。その匂いに惹かれる蝶のように、私はその花びらにそっと顔を埋めました。
「…っ」
甘く優しい匂いの中に、ほんのりと混じるコーヒーの香ばしい香りを感じたとき、自分の心臓の音がはっきりと聞こえた気がしました。
426/08/09(日)03:13:57No.1456724336+
トレーナーさんを癒してあげたかった。それは間違いなく本心です。
でも、本当は少しさみしかったのです。私の顔を見るといつも頑張ってしまうトレーナーさんを見ていると、私はトレーナーさんを追い立てることしかできないのだろうかと、その背中を見守りながら思うことしかできなかったからです。
けれどこの花の香りに浸っていると、私の喜びの中にトレーナーさんの安らぎが入っているような気がして、どこか救われるような気がしました。
526/08/09(日)03:14:21No.1456724363+
あなたを幸せにできれば、それでよかったはずでした。
けれど、あなたが幸せでいることが、いつの間にか私の幸せとひとつになってしまったのです。それを切り離すことは、私にはもうできそうにありません。
一度混じったふたつの香りを、綺麗に元に戻すことができないように。
626/08/09(日)03:14:32No.1456724376+
「おやすみなさい。
…また明日も、一緒にコーヒーを飲みましょう」
枕元の和蘭の花を瞳に焼き付けながら、そっと瞼を閉じました。
私の幸せと、トレーナーさんの幸せ。
それが同じ木に生っていてほしいと、心から願いながら。
726/08/09(日)03:15:16No.1456724441そうだねx1
おわり
自分の気持ちをいけないことだと思いながらそれでも想うことをやめられないブーケちゃんを見ていたいだけの人生だった
826/08/09(日)03:21:47No.1456724906+
クラスメイトにコーヒーのいい匂いするねって言われてどこか嬉しそうなブーケちゃん
926/08/09(日)03:31:12No.1456725570+
月下香の匂いを一緒に味わいたいからと言ってトレーナーと夜にふたりきりになる口実を作るブーケちゃん
1026/08/09(日)03:38:04No.1456726115+
ブーケちゃんもブーケトレもお互いに深く想い合ってるのにそれがいけないことだとも思ってそうなのがいい
1126/08/09(日)03:48:20No.1456726822+
登録完了
1226/08/09(日)04:05:47No.1456727854+
お小遣いでサイフォンを買おうとするブーケちゃん
流石に悪いからとブーケトレに止められてちょっと寂しそうだけど結局トレーナーが買うときに一緒に選ぶことになって満足げなブーケちゃん
1326/08/09(日)04:10:33No.1456728128+
1426/08/09(日)06:50:13No.1456735314+
>シンビジュームの花言葉は「飾らない心」
1526/08/09(日)07:33:47No.1456738244+
コーヒーを淹れる練習をしてて寝不足なブーケちゃんがブーケトレに寝かしつけてもらうところが見たい
1626/08/09(日)08:54:08No.1456751396+
距離感が担当じゃないのよ…


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