二次元裏@ふたば

画像ファイル名:1786194155751.png-(159718 B)
159718 B26/08/08(土)22:02:35No.1456645753+ 23:23頃消えます
私はラモーヌ姉様ほど愛に篤いウマ娘を他に知りませんし、今後一切知ることもないでしょう。
あの日、姉様はその愛で、運命そのものを書き換えてしまったのです。
あれはまだ、姉様のトレーナーが健在であった頃の話です。
そのころメジロ家の一室は応接間、つまりサロンとして開放されていました。
毎週、週末になると姉様のトレーナーがやってきて(本当は、姉様のトレーナー”さん”と書くべきなのですが、ややこしくなるかと思い省略させていただいています)、熱心にレースのことをお話するのです。
彼はとても剽軽な方で、身振り手振りを交えて感情豊かにお話をされるので、思わずこちらもつられて笑ってしまうことがよくありました。
姉様がとても物静かに、言葉少なに会話をされるのでなおのこと対比が際立っていました。
126/08/08(土)22:02:57No.1456645891+
私はよくお二人のお茶会に同席させてもらいました。
「ええ」「そう」「よくってよ」「あら、あなたはそう思うのね」
姉様はいつも簡潔で無駄のない相槌を打つので、私のフォローが必要でした。
「ラモーヌ姉様はトレーナーさんのご意見に非常に感銘を受けているようです」
「とてもいいと思います。でも一点だけ。姉様はこの点が気になっているのだと思います」
ささやかながら姉様のお力になれて、内心得意だったことを覚えています。
純白のテーブルクロスを敷いた円形のテーブルに、紅茶とスコーンだけを置いて、何時間も何時間も飽きることなく話し続ける。
春の日差しのような語らいはずっと続くものだと信じて疑いませんでした。
私よりもきっと姉様こそが、その永遠性を強く信じていたのだと思います。
226/08/08(土)22:03:18No.1456646047+
姉様のトレーナーがちょうど愛知の御実家に帰られている時、中部太平洋沖大地震が起きました。
熊野灘を震源とするマグニチュード9.0の低角逆断層地震は、各地に猛烈な被害を及ぼしました。
特に愛知県の太平洋側は壊滅的な打撃を受け、高速道路が割れて家屋が倒壊しました。
姉様のトレーナーは、被災しましたが当初は無事が確認されていました。
むしろ近隣の元気な若者たちを集めて、率先して救助にあたっていたのだと言います。
瓦礫の中から少年を救い出したトレーナーは、直後の第二波、震度7の余震を受けて行方不明になりました。
現在になってもまだ、その身元は確認されていません。
326/08/08(土)22:03:38No.1456646190+
悲しみに沈んだのはラモーヌ姉様ではありませんでした。
彼の人となりを知るメジロ家の関係者、同期のトレーナー、そして私の動揺が激しかったのです。
「姉様……トレーナーさまが……トレーナーさまが……!!」
「落ち着きなさい、アルダン」
姉様は取り乱すでもなく、毅然としてメジロ家の代表者としての務めを果たしました。
社交界への助力を請い、義援金の呼びかけを行い、メジロ家としての声明を出しました。
誰よりも強いショックを受けているはずなのに、少しも冷静さを失わなかったのです。
すべてのほとぼりが冷めたころ、また姉様はサロンに顔を出しました。
以前と同じように、テーブルについて、紅茶のカップを手にしました。
そしてそこで、「完全に静止」したのです。
426/08/08(土)22:04:02No.1456646351+
人には愛の力が備わっている。姉様から聞いた言葉です。
それは自分の周囲の物理現象をまるごと書き換えられるほどの驚異的な力だと。
始めはただの戯れだと思い、真面目に受け取ることをしませんでした。
しかしその瞬間を目の当たりにしたとき、私は自分の過ちに気が付きました。
「完全に静止」した姉様の周りが、陽炎のようにぼんやりと歪み、膨張していくのです。
それは地中に根を張る植物のように、じんわりと、しかし確実に勢力を拡大していきました。
私が悲鳴を上げる暇もなく、サロン全体が、姉様の固有領域に飲み込まれました。
「姉様……いったい何を……何をなさろうとしているの!?」
紅茶のカップを持ち上げたまま、姉様は微動だにしません。
紅茶の水面も、完全な凪のままであり、波が立つことはありませんでした。
526/08/08(土)22:04:24No.1456646500+
それは恐ろしき力の奔流でした。
姉様は自分を中心として、球状にその固有領域を拡大しているのでした。
やがて領域の辺縁は府中市全体を包み込み、東京都全体を包み込み、日本全体を包み込みました。
その後、自分でも試してみて、これがどこまで途方もない出来事かを知りました。
そこまで拡大するためには、尋常ではない集中力と、底知れぬ体力、そして何より強い意志力が必要となるのです。
姉様はそれを表情一つ変えずにやってのけました。
のみならず、日本全体に延ばした領域をさらに広げて、地球をそっくり包み込もうとしたのです。
「姉様、いけません! 姉様が壊れてしまう……!」
無論、私の忠告を聞くような姉様ではありませんでした。
626/08/08(土)22:04:49No.1456646658+
とても不思議な出来事が立て続けに起きました。
夜、星空と共に満月が現れましたが、月は二つあり互いの周りを回っていました。
そして朝になると、西の方角から太陽が上がり奇妙に蛇行した軌跡を取りました。
サロンの窓から見える景色が万華鏡のように移り変わります。
ある時はサハラ砂漠となり、草一つない砂漠の丘陵が視界を満たしました。
ある時はウユニ塩湖となり、鏡のような湖面に満天の星空を映していました。
ある時には香港の中心街となり、エアーズロックの頂上となり、渋谷のスクランブル交差点になりました。
私は気が遠くなりましたが、必死に自分を奮い立たせて世界を観察することに努めました。
ラモーヌ姉様は、今、運命と闘っている。私がここで見守らないでどうするの?
726/08/08(土)22:05:01No.1456646743+
うnn?
826/08/08(土)22:05:10No.1456646791+
ひとしきり風景が移り変わったのち、純粋なる闇がサロン全体を満たしました。
上下左右の感覚がなくなってしまうくらいの漆黒で、衣擦れの音一つ聞こえません。
姉様と私、そして姉様が持つ紅茶のカップだけが空中に取り残されたようになっています。
おそらく、私の方が先にその存在を知覚しました。
おぉーーん、おぉーーんという鳴き声とともに、名状しがたき異形の生命体が近づいてくるのです。
それは三つの頭を持ち、四つの眼を備え、五つの腕を生やし、六つの脚で駆動する化け物でした。
重そうな体をずるずると引きずりながら、解読できない呪詛を振りまいて前進してきます。
神、なのでしょうか? あるいは、異界から来た超越存在? 運命の使者?
私にはわかりません。全身が麻痺したように硬直し動けなくなっていたからです。
926/08/08(土)22:05:31No.1456646950+
化け物はラモーヌ姉様に接近して、ぐわりと大口を開けてかぶりつこうとしました。
四つのぎょろぎょろした眼が、奇妙に歪んで愉悦に狂った男のようになっていました。
その時、姉様は――。
そっと、うつむき加減に閉じられていた目を開けて、正面から化け物を見据えました。
その目、なんという、曇りのない双眸!!
恐れもなく、迷いもなく、確信に満ちて、己の未来を信じているものにしかできない、澄み渡った目!!
姉様の視線は光芒となって空間全体を照らし出し、化け物を内部から破壊しました。
とても文字には表せないような断末魔を上げて、さらさらとした細かい灰に帰っていきます。
あとにはいつものサロンの光景が戻っていました。窓の外の景色も、もとの世界と一緒にです。
1026/08/08(土)22:05:53No.1456647061+
ことん、と姉様が「完全な静止」を解いてソーサーにカップを戻しました。
外では鳥たちが楽しそうにちゅんちゅんと鳴いています。秋の日差しが斜めに窓から差し込んでいました。
私は弾かれたようにポケットを探り、スマホを取り出してあるワードを検索しました。
「中部太平洋沖大地震 いつ」
Google検索窓がAIからの回答を掲載していました。
「中部太平洋沖大地震は現在のところ発生していません。今後20年の間に発生する確率は80%を超えており、今後も注視が必要です。普段からの備えを――」
顔を上げて姉様を見つめると、姉様は微動だにせず「どう?」という視線を送ってきました。
「姉様、あなたという方は、どこまで、どこまで……」
姉様の愛はすべてを書き換えてしまった。歴史も、災害も、運命も――。
1126/08/08(土)22:06:07No.1456647159+
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ひとしきり風景が移り変わったのち、純粋なる闇がサロン全体を満たしました。
上下左右の感覚がなくなってしまうくらいの漆黒で、衣擦れの音一つ聞こえません。
姉様と私、そして姉様が持つ紅茶のカップだけが空中に取り残されたようになっています。
おそらく、私の方が先にその存在を知覚しました。
おぉーーん、おぉーーんという鳴き声とともに、名状しがたき異形の生命体が近づいてくるのです。
それは三つの頭を持ち、四つの眼を備え、五つの腕を生やし、六つの脚で駆動する化け物でした。
重そうな体をずるずると引きずりながら、解読できない呪詛を振りまいて前進してきます。
神、なのでしょうか? あるいは、異界から来た超越存在? 運命の使者?
私にはわかりません。全身が麻痺したように硬直し動けなくなっていたからです。
1226/08/08(土)22:06:17No.1456647250+
「ラモーヌ! 先週のレースをまとめてきたよ! めちゃくちゃ面白い発見をしたんだ、きっと君も喜ぶと……」
サロンに飛び込んできた男の人の顔を見たときの、私の衝撃。
恥ずかしくなるくらいに、ぐちゃぐちゃに顔が歪んでしまいました。
「アルダン? なんで泣いて……ら、ラモーヌ、どうしよう」
ラモーヌ姉様はその時、微笑みました。
あれほどまでに過酷な経験をしても、一切その表情を変えなかった、紅茶の水面を波立てることがなかった姉様が、ただトレーナーが現れて、おろおろと狼狽えただけで微笑んだのです。
「ちょうどよかったわ」
姉様は足を揃えて背筋を伸ばして座っていました。私の自慢の姉様でした。
「今、愛の話をしていたの」
私はラモーヌ姉様ほど愛に篤いウマ娘を他に知りません。
1326/08/08(土)22:06:21No.1456647275+
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姉様は自分を中心として、球状にその固有領域を拡大しているのでした。
やがて領域の辺縁は府中市全体を包み込み、東京都全体を包み込み、日本全体を包み込みました。
その後、自分でも試してみて、これがどこまで途方もない出来事かを知りました。
そこまで拡大するためには、尋常ではない集中力と、底知れぬ体力、そして何より強い意志力が必要となるのです。
姉様はそれを表情一つ変えずにやってのけました。
のみならず、日本全体に延ばした領域をさらに広げて、地球をそっくり包み込もうとしたのです。
「姉様、いけません! 姉様が壊れてしまう……!」
無論、私の忠告を聞くような姉様ではありませんでした。
1426/08/08(土)22:06:23No.1456647284そうだねx4
ちょっと待てよ!
1526/08/08(土)22:06:54No.1456647482+
スレッドを立てた人によって削除されました
悲しみに沈んだのはラモーヌ姉様ではありませんでした。
彼の人となりを知るメジロ家の関係者、同期のトレーナー、そして私の動揺が激しかったのです。
「姉様……トレーナーさまが……トレーナーさまが……!!」
「落ち着きなさい、アルダン」
姉様は取り乱すでもなく、毅然としてメジロ家の代表者としての務めを果たしました。
社交界への助力を請い、義援金の呼びかけを行い、メジロ家としての声明を出しました。
誰よりも強いショックを受けているはずなのに、少しも冷静さを失わなかったのです。
すべてのほとぼりが冷めたころ、また姉様はサロンに顔を出しました。
以前と同じように、テーブルについて、紅茶のカップを手にしました。
そしてそこで、「完全に静止」したのです。
1626/08/08(土)22:07:18No.1456647625+
スレッドを立てた人によって削除されました
私はよくお二人のお茶会に同席させてもらいました。
「ええ」「そう」「よくってよ」「あら、あなたはそう思うのね」
姉様はいつも簡潔で無駄のない相槌を打つので、私のフォローが必要でした。
「ラモーヌ姉様はトレーナーさんのご意見に非常に感銘を受けているようです」
「とてもいいと思います。でも一点だけ。姉様はこの点が気になっているのだと思います」
ささやかながら姉様のお力になれて、内心得意だったことを覚えています。
純白のテーブルクロスを敷いた円形のテーブルに、紅茶とスコーンだけを置いて、何時間も何時間も飽きることなく話し続ける。
春の日差しのような語らいはずっと続くものだと信じて疑いませんでした。
私よりもきっと姉様こそが、その永遠性を強く信じていたのだと思います。
1726/08/08(土)22:07:58No.1456647880+
スレッドを立てた人によって削除されました
上下左右の感覚がなくなってしまうくらいの漆黒で、衣擦れの音一つ聞こえません。
姉様と私、そして姉様が持つ紅茶のカップだけが空中に取り残されたようになっています。
おそらく、私の方が先にその存在を知覚しました。
おぉーーん、おぉーーんという鳴き声とともに、名状しがたき異形の生命体が近づいてくるのです。
それは三つの頭を持ち、四つの眼を備え、五つの腕を生やし、六つの脚で駆動する化け物でした。
重そうな体をずるずると引きずりながら、解読できない呪詛を振りまいて前進してきます。
神、なのでしょうか? あるいは、異界から来た超越存在? 運命の使者?
私にはわかりません。全身が麻痺したように硬直し動けなくなっていたからです。
1826/08/08(土)22:08:03No.1456647918+
愛ね。
1926/08/08(土)22:08:18No.1456648017+
スレッドを立てた人によって削除されました
上下そして姉様が持つ紅茶のカップだけが空中に取り残されたようになっています。
おそらく、私の方が先にその存在を知覚しました。
おぉーーん、おぉーーんという鳴き声とともに、名状しがたき異形の生命体が近づいてくるのです。
それは三つの頭を持ち、四つの眼を備え、五つの腕を生やし、六つの脚で駆動する化け物でした。
重そうな体をずるずると引きずりながら、解読できない呪詛を振りまいて前進してきます。
神、なのでしょうか? あるいは、異界から来た超越存在? 運命の使者?
私にはわかりません。全身が麻痺したように硬直し動けなくなっていたからです。
2026/08/08(土)22:11:40No.1456649270+
よくってよ。
2126/08/08(土)22:13:57No.1456650116+
スティルに愛を説くくらいだからこれくらい出来なくちゃな…
2226/08/08(土)22:16:58No.1456651320+
やはり牝馬三冠ウマ娘は何かがおかしい…
2326/08/08(土)22:26:36No.1456654994+
アルダンがこの結界貼るタイミングは何が起きたんだろう…
2426/08/08(土)22:35:27No.1456658220+
地震より厄介な三角関係が勃発しそうな気がする
2526/08/08(土)22:48:57No.1456663228+
愛で過去改変すんな
2626/08/08(土)22:51:05No.1456664005+
>その後、自分でも試してみて、これがどこまで途方もない出来事かを知りました。
>そこまで拡大するためには、尋常ではない集中力と、底知れぬ体力、そして何より強い意志力が必要となるのです。
ここまでの規模は無理でもアルダンもできんの!?
2726/08/08(土)23:10:54No.1456670832+
急にアクセル踏みこんでくるじゃん
2826/08/08(土)23:12:52No.1456671569+
熊本地震の後にこういうものをお出ししてくるのはなんというか挑戦的だな…


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