はらりと布の落ちるのさえ一筋縄ではいかなかった。何度もそれは宙づりになり、 彼女は思い通りにならぬ己の服に、やきもきとした表情を浮かべるのである。 そしてまた思い通りにならぬのは、少女自身の肉体と同じことであった。 急速に変化した重心は、これまでの慣れ親しんだあらゆる所作と調和せず、 日に何度も彼女はよろける――男は支え、さながら踊るように抱き上げさえもした。 かつて彼の腕に包まれていたとき、少女は自分がこの世で一番幸福な存在だと疑わなかった。 けれど今や、桁あふれを起こした幸福は彼女自身の幼い心身をじわじわと蝕んでいる。 外観からその歳を十代半ば――に、入ったばかりと見抜くことのできるものはそうはいまい。 そこには、彼女自身の落ち着いた振る舞い、丁寧な言葉遣いの影響もあろう。 銀色に艶々とした髪の色もまた、見ようによっては白髪と黒髪の中間と取れなくもない。 それでもなお、彼女は若い。いや、幼い、とさえ言ってよかった。 姉妹に向ける視線は年相応のものであったし、発育を続ける身体を支えるための食欲もまた、 時には微笑ましささえ纏っていた――そこに彼が惹かれた側面もないではない。 男というものは、年齢不相応に成熟した肉体に未成熟な心身の載っている存在を好む。 ――本能的に、己の色に染めやすい雌を探して目をぎらつかせているからだ。 大丈夫だよ、と彼は言うのだった。これまでなら言葉一つで角砂糖のように甘く蕩けた不安は、 上官の――所属する鎮守府の統括者のお手付きになるという棚ぼたのために、 少女の内心を温かくした。だが彼女の眉は八の字を描いたまま平行に戻る気配もなく、 青い瞳は今にも泣き出してしまいそうなほどの不安を溜め込んで震えている。 そしてそれを男は彼女本人よりも深く理解するがゆえに、その一言だけを投げたあとで、 自身の白い軍服を、几帳面に四角に折り畳んで脇机の上に置くのだった。 武官ゆえの、固く引き締まった肢体。整然と割れた腹筋、隆起の明らかな二の腕と腿。 少しく日焼けした肌に、白い歯と短く刈られた髪はいくらか不調和ではあったものの、 彼に懸想する女の少なくない理由は、おおよそそこに一揃い並んでいた。 少女が彼の誘うままに閨に引き込まれたのも――つまりはそういうことである。 男は自分だけ、寝床に腰を下ろして彼女に微笑みかける。歯列がちらりと覗く。 少女は立ったまま彼を見た。二本しかない腕で両乳首と股間とを隠そうとしながら。 そこには異性に肌を晒すことへの葛藤が見て取れた――無論肌を幾夜も重ねた相手である。 互いの性器の形状までをも、粘膜を通じて相互理解しあっているのだから、羞恥ではない。 彼が自分のこんな身体に興奮していることが、まるで信じられぬかのような不安。 裸体を差し出すだけで既にむくむくと起き上がりかけた雄の鈴口を向けられてなお、 少女はそれが、彼のほんの気まぐれで――いつ梯子を外されてもおかしくない、と感じていた。 また男は大丈夫、と唇を動かせて、彼女に手をどけるように大げさな手ぶりをした。 そう命じられたからには断ることはできない。おずおずと、丸みを帯びた柔らかな両腕は、 さらに遥かに柔らかな乳房の上に、両手首を載せる格好でずらされた。 拳が対比物として付け根近くにあるがゆえに、なおさらその大きさは強調される―― 実際、彼女の乳房は片乳だけで頭と同じぐらいの巨大さを有しており、 それが歩くたびにゆさ、ゆさ、と左右に好き勝手に動くのだからたまったものではあるまい。 だが何より少女を悩ませるのは、その乳房を下から押し上げている、より大きくて重いもの。 かつての彼女が安易にそれを望む言葉を吐き――その意味をようやく理解したもの。 男は唇から三度、同じ言葉を吐き――腰を上げて、至近まで有無を言わせず歩み寄る。 自ら戦場に立つことがないとはいえ、彼は軍属である。六尺を超える上背は、 小柄な彼女を上から押し潰しかねない圧迫感さえ与えるのだった。 そしてそのまま、雷の落ちるような口付け――いつの間にか顎に回された指は、 彼女が顔を背ける暇さえ許さず、赤い舌を無防備に雄の舌へと差し出させる。 彼がすぐ近くに寄ってきた時点で、当然少女はこうなることを半ば予測していた――けれど、 幼い身体は年上の男の操るままに流され、震わされ、否応なしに仕上げられていく。 息継ぎで漏れる声すらも、不安と驚きとに引きつった高いものから、 あっという間に、落ち着いた、甘えたようなものへと作り替えられていってしまう。 そこには口付けの間中、彼の両掌の添えられていた場所が関係しているのは言うまでもない。 男は彼女の口腔から唾液と酸素を搾取しながら――左手を首から肩にかけて巻くように回し、 彼女自身の左手を、ぎゅっ、と優しく、強く、握っていた。 かつん、かつん、と音が鳴る。少女の手が身体ごとびくんびくんと震えるためである。 それは今や、不安や恐怖でなく――彼によって身体に刻まれた快楽の予兆を感じて、 脳が先走って幸福の信号を吐き出し始めているからに他ならなかった。 同時に、右手は彼女の臍下から鼠径部までの立体をうろうろしていた。 時に親指の爪が臍に触れようものなら、さらに彼女の身体はびくびくと震える。 彼自身の掌に、自ら腹を押し付けようとするかのような衝動に駆られて。 しつこくしつこく、男は彼女の腹部を撫でる。大きく膨らみ、前に突き出した腹。臨月の胎。 まんまと新鮮な卵子をものにし、己の子を仕込んでやった若い子宮の屈服の証―― それを撫で回していると、彼の性器はより一層固く熱くなり始め、 先端を、その側面を、少女の腿や腰との境にべちべちと当ててしまうのであった。 彼のものが興奮に打ち震えているのを――その脈動を皮膚越しに微かながらに感じるごとに、 彼女の心中にあった後ろ向きな感情は、ゆっくりとほぐされていってしまう。 いまだ眉は逆八の字にならず。けれど、そこには当初ほどの畏れはない。 永劫にも感じられるような永い永い口付けはようやく終わり――舌が天へと還ると、 たっぷりとかき混ぜられた唾液はぼたぼたと遠慮なく、少女の乳房の上に落ちる。 乳房は臨月胎によって持ち上げられているから左右に垂れるように分かれるほかなく、 そうして生み出された深い谷間で乳汗と合流しながら正中を降りていく―― 熱された淫猥なる雫は、雄と雌の興奮した臭いを撒き散らしながら垂れ、彼の手に触れた。 男はそれを啜るように、先程まで丹念に撫で回していた少女の腹部に顔を近付ける。 背の高い彼は必然的に、彼女の下半身に向けて跪くように姿勢を下げるのであった。 耳を当てる。皮を隔てたその内で、一年前に放った一粒の精が、ここまで大きく育っている。 すっかり母体へと作り変わった少女の肉体は、幼なげな顔つきとはあまりに不釣り合いだ。 成熟した雌の備えるべき乳と、腹と、腿、尻。子を孕み、産む心身の準備が万端に整い、 ようやく仕込まれて辿り着くはずの、この夜で一番醜く崩れ、美しく仕上がった女体の極致。 それを、年端もいかない少女にやらせている――そして彼女の寄る辺は自分しかいない。 その事実を思うたびに、男は内心に下卑た悦びと、子を得る純粋な喜びに浸るのである。 彼女が青い顔をして妊娠検査薬を持参し、こちらの顔色を伺ってきた際も、 堕胎などはちらりとも匂わせなかった――あまりにもったいないことではないか。 かくして彼の予期通りに、少女は彼の前に孕みあがった肢体を晒すことになったのである。 新たな唾液の膜を何度も何度も全体に塗りたくったのち――男は、胎のすぐ上で、 ふるふると自然に震える二つの暗い花を見た。少女特有の白い肌にはなおさら似合わぬそれは、 下品な程に黒く、かつての桜色の――元から広く大きくはあった――乳輪を思い出させない。 ぷっくり盛り上がった立体感ある乳首は、彼女の口よりもはっきりと言葉を吐いていた。 吸ってほしい、虐めてほしい、貴方の好きなように弄くり回してほしい―― 男はそれを耳聡く聞きつけて、少女の返答を待たずして乳首にしゃぶりついた。 ずろろろと、わざとらしく音を立てながら舌先を乳輪の境の凹凸に跳ねさせて、 歯先をこつん、こつんと乳頭にぶつけて刺激を絶え間なく与え続ける。 そんな責め方をされては、授乳経験の未熟な彼女に抗う術はない。 乳腺の内に巡る熱い存在感、それが、彼の唇に作り出される陰圧によって、 吸い上げられていく感覚が途切れもしない――男に母乳を飲ませているのは、 彼女の意思によってではなく、単なる物理法則の結果なのであると、 少女の困惑や羞恥に塗れた声は主張していた。だがそれは明確な嘘である。 彼の唇の吸い付いていないもう一つの乳頭からは、搾られもせずに同じだけの乳が噴いていた。 卵子を、子宮を差し出した相手に乳を吸われ――彼女の肉体は疼き、火照り、 赤子に与えるはずの母乳さえも全て、彼に貢ごうとしているのである。 そしてその、与える悦びは――ねとねととした実体を持って、彼女の腿を垂れていた。 男はそれも見逃さず、指でくちくちと膣口を練り拡げて愛液の立てる水音を大きくし、 雄に媚びる仕草ばかり上手くなるはしたない雌の耳に、その卑猥な音を届ける。 再び彼の顔が少女の肉体から離れたとき――彼女の頬には、涙が幾筋か流れていた。 悲しみのためではない。脳内をうねる快楽と興奮とに涙袋から押し出されただけだ。 頬は赤く、息は荒い。既に制御不可能になった肉欲は幼い理性を完全に破壊し、 身重というのに――そして上官相手というのに、少女は自ら身体を彼の胸板に押し付け、 柔らかな乳房を変形させ、臨月胎の弾力を教えていた――ほとんど忘我のうちに。 男は彼女の理性が再構築される猶予をも与えずに、自身の性器をそり立たせて見せつける。 少女の舌は、犬のように下唇を跨いていた。これもまた、無意識下でのことである。 幼い肉体を、ここまで快楽と生殖のために破壊し尽くした満足感が彼の胸を満たす。 そして彼女の一年間の労に報いるように、手早く彼女を寝床に連れ込んで、押し倒した。 みちみちと肉の盛り上がり、浅くなった膣道――やがての産道に向けて、一息に。 締め切っているはずなのに、外に漏れてしまうのではないかと思えるほどの高く蕩けた声―― 一突きごとに胎が、乳が、ゆさゆさと重たく揺れ、形を変える。 その変化に魅入られた彼もまたは、産婦相手というのに我慢が利かなくなっていた。 自分の子を宿した雌を、種付けの時と同じように犯す合理的意義などないというのに、 細い――細かった、腰を掴んで、激しく腰を打ち付け、奥へ、奥へ奥へと、掘り進めていく。 抽挿を受けている少女自身、彼を制止することなどすっかり忘れているのだ―― 二人は完全に、ただの一対の雌雄、二匹の獣と成り果てて互いの身体を貪っていた。 両手は相手の身体を捕まえるように、思い思いの場所に回っては、 より激しい性交の可能となるように――時に力を込め、寝床の布地を千切れんばかりに握る。 また偶然の接触にて、両者の左手の金属環は衝突し、高い音を立てるのであった。 無数の擦過痕によって、表面が薄っすら削られた二つの環は――外されることもなく、 彼らの興奮をより強くする装置として機能する。あるいは相手に対する共依存の証、 呪いそのものであったかもしれないが――その区別をすることは無意味だ。 仮の、という前置きは形骸化した。愛する雌に子を仕込み、送ったものであるならば、 それは“本物”のそれと、何が違うだろう?ただ雌が若く、民法ごときが邪魔をしているだけだ。 もしくは、戦闘のために作られた彼女のような存在が――人とつがうことを拒む思想の顕れか。 少なくとも、こうして愛する雄に甘え、媚び、その子を胎の中で育てながらも快楽に溺れる様は、 彼女がこの世に生まれ落ちてからの時間の短さなどとは無関係に、雌のそれであった。 一人きりの時に、不安と期待とがないまぜになった顔で服の上から腹を撫でる姿も―― 彼はその憂鬱なる横顔に、一層独占欲を煽られる。一度きりではもったいない。 胎の空くたびに孕ませてやらねば、世の全てに申し訳の立たぬような気のするのである。 少女が夜伽の折、心配事を漏らすたびに――男は何度も耳元で囁くのだった。 大丈夫、愛している、ずっと一緒だ――そして決まって、左手を握る。 色のくすんだ指輪の色は、ちょうど、彼女の髪の色によく似ていた。