二次元裏@ふたば

画像ファイル名:1775486124384.jpg-(330590 B)
330590 B26/04/06(月)23:35:24No.1417977563そうだねx12 01:12頃消えます
興味も惹かれないSNSの投稿が指先から滑っていく。
キラキラした写真を眺めたって、冷凍庫に突っ込んだみたいに心が動かない。
眼の前の、足も着かない高い椅子に座っているムーコをじろりと見つめる。
返ってきたのはただの視線。

「おはようございます」

はぁ、と溜息を吐きそうになったところで、階段を降りてきたウミコが顔を覗かせた。
澄ましたようでなにも考えていないような表情のまま、アタシ達の居る半地下の部屋を見渡す。

「まだお二人だけですか」
「そ〜。仕事が押してるんじゃない?」

残る二人から遅れるという連絡は来ていたから、テキトーに答える。
まあウミコも流石にちょっと遅れたくらいで取り乱すようなことも無いだろうし。
126/04/06(月)23:35:37No.1417977634そうだねx3
ふむ、と頷くと、ウミコは重そうなハードケースを床に置いた。見た目通りの音がする。
パチンパチンとケースのロックを外して取り出したベースを、黙々とチューニングしていく。
アタシはその様子をただぼうっと眺めていた。
ふいに、ウミコと視線がかち合う。

「祐天寺さんもいかがですか?」
「へ?」

素っ頓狂な声が出てしまった。
なにが?って返すよりまず、話しかけられると思っていなかった。

「いかがってなにが〜?」
「待っているのも暇なので。よければどうぞ。若葉さんも」
「私は、いい」
「ちょっと、だからなにが…」
226/04/06(月)23:35:53No.1417977706そうだねx3
──♫
ウミコがベースを弾き始めた。アタシのことなんてもう眼中にないように。
弾いている曲はすぐに分かった。
「顔」。
ベースイントロがよほど気に入っているらしく、練習の合間にたまに一人で弾いているのは知っている。
誰になにを言うでもなく、澄ましたような何も考えてないような顔のまま、手慰みのように弾いていた。
ウミコは練習中はずっと楽器に触っている気がする。まあ元々バンドをいくつも掛け持ちしてたくらいだし、音楽自体が好きなんだろうなとは思う。
ただ今日は様子が違った。
アタシをじっと見つめたまま、ウミコはベースを弾く。
なにかを訴えかけられているようで、とんでもなく居心地が悪い。
ウミコが突拍子もないのは今に始まったことじゃないけど、今日はまた一段と強烈に感じた。

「遊びませんか?」
326/04/06(月)23:36:04No.1417977751そうだねx1
その言葉で、ウミコがアタシを誘っているんだってようやく気付いた。
セッションなんて、そんなの楽しめると思えない。
アタシがバンドをやっているのは、ドラムを叩いているのは、全部仕事のためだ。
もっと言えば、女優って夢のためにこのバンドを、この音楽を踏み台にしてやろうとすら思っていた。

「──ッ!」

アタシはキックペダルを踏んだ。踏んで、踏んで、リズムを刻む。
上等。売られた喧嘩は買ってやる。ただそれだけだ。
スティックを振るってハイハットをスネアを小気味よく叩く。
途中から入って少し遅れ気味だから、気持ち先走るように。
ウミコがにやりと笑った。
かちんと来た。嬉しそうな顔するな。
アタシは今日ぜんぜんやる気がないし。全然ちっとも、楽しいだなんて思えない。
違うテンポで揺れていた振り子が合わさるみたいに、アタシ達の音が重なる。ムカつく。
426/04/06(月)23:36:18No.1417977824そうだねx2
ふつふつと湧き上がるイライラをぶつける。
音が鳴る。リズムが生まれる。テンポが形になる。
ドラムを初めて1年も経ってないけど、自然と頭で意識できてしまうのが嫌になる。

──遊びやなかと、アタシのドラムは!

またオーディションに落ちた。今度もやっぱり、箸にも棒にもかからない。
なにが悪かったのか、どうして選ばれないのか。言われなくたって分かってる。分かってるだけ。
だと言うのに、アタシはバンド練習のためにムーコの家に来た。
落ち込んでるから練習サボりますだなんてアタシ自身が許せないから、ただそれだけの理由。
でもそうやって意地を張っても、ほかになんにも手につかなくて。
アタシはそんな「仕事」にさえ縋ってさえいるように思えてしまう惨めな気持ち。
趣味じゃない音楽だから、楽しいなんてこれっぽっちも感じない。
なのに。
なのに、眼の前でベースを弾くウミコは楽しそうで。
526/04/06(月)23:36:34No.1417977913そうだねx3
いつもすっとぼけた顔をしているくせに、ベースを弾いている時は素顔を覗かせたように笑う。
ピンと張った糸が緩んだような、そんな笑み。
理解なんてしたくない。
アタシたちに馴れ合いなんていらない。契約で縛り付けた関係のほうが、アタシには楽なんだ。
このまま、ウミコのペースで叩いてやるもんか。
アタシは脚を引っ掛けるみたいに、アドリブを入れる。本番じゃないんだしいいでしょ。
ウミコは少し目を見開いた。
でもそれは、躓いて驚いた顔じゃなかった。

「なるほど、やりますね」

ペースはすぐに取り返される。
今までは、勝手に推し量られていたアタシの実力に合わせていただけだった。
目を見開いたのは、アタシがその推量より少し上回った程度のこと。
器の水位を上から眺めているような、その目線が気に入らない。ウミコのくせに。
626/04/06(月)23:36:49No.1417977991そうだねx2
こっちが追いつこうとしてもすぐにいなされる。先走りすぎですよ、と言わんばかりに戻される。
こっちはアンタのペースを崩したくてやってるのに。
まるで首輪に付けられたリードを引っ張られてるような気分。
ああ、ほんなこつ腹が立つ!

「──ふむ」

ウミコはベースを弾く手を止めた。
突発に始まった合わせは、曲の終わりと同時にすっぱり終わった。
時間にして4分。体感はもっと。
アタシは額に浮かぶ汗を拭う。
対してウミコは涼しい顔のまま。少しは汗をかいているようだけど、その程度。
結局最後までウミコに追いつくことなんて出来なかった。余裕を崩せなかった。
こっちの気持ちなんて全然分かってないだろうウミコが、アタシに向かって軽く拍手する。
726/04/06(月)23:37:01No.1417978061そうだねx2
「最高でした」
「…はいはい」
「本当です。信じてください」
「分かったって!」

緩みそうになった顔を引き締めると、眉間にシワが寄った。
なにが嬉しくて練習前にこんなにマジになってしまったんだか。
こっちはずっとイライラしてたのに。
私は乱れた呼吸を整えるために大きく息を吸って吐いた。

「次は祐天寺さんからでいいですよ」
「もうやらないです〜!」
「若葉さんもどうですか?」
826/04/06(月)23:37:20No.1417978155そうだねx2
黙って座っていたムーコは、やっぱり頭を横に振った。
足も着かない高い椅子に座って、こちらを見下ろすようにポツリと呟いた。

「二人が楽しそうだから、見ていたい」

楽しそう? ウミコはともかく、アタシが?
虚を突かれたアタシを他所に、ふむ、とウミコがまた頷いた。

「そう言うことでしたら仕方ありませんね。見せつけてしまったようです」
「…いや、なにが〜?」
「私達の息の合ったセッションのことですが」
「自分で言ってて恥ずかしくないの、それ」

あまりにもしょうもない表現。息が合った、なんてよく言える。
アタシは楽しくなかったし、ウミコに合わせる気なんてなかった。
926/04/06(月)23:37:39No.1417978232そうだねx2
今日はまたオーディションに落ちて気分最悪だったのに。

「……はぁ〜あ」

手元のボロボロのスティック。傷だらけのヘッド。小さく固くなった指のタコ。
これは「仕事」だ。楽しむものじゃない。自分を売り込むための道具だ。
音楽なんてアタシが目指してた夢じゃない。その途中の、踏み台なんだ。
だけどそんな考えは、今は。

「? どうされましたか」
「…どうも。しょうもないな〜って思っただけ!」
「え」

もやが晴れたみたいな心地。気持ちいいって感じ。
ウミコとのセッションは、色んなものを叩いて壊しちゃったらしい。
1026/04/06(月)23:37:57No.1417978324そうだねx5
ま、どうせすぐに復活してくるんだろうけど。
でも今は、この心地に浸ってもいいかな、なんて……

「ちょっと!? なんでウミコ泣きそうなの!?」
「…お気に召しませんでしたか」
「にゃむが、しょうもないって言ったから」
「あ〜、もう分かったって! ほら次、次やるから!」

やっぱり、馴れ合いだけはいらん!
1126/04/06(月)23:43:18No.1417979836そうだねx2
うみにゃむきてる
1226/04/06(月)23:47:20No.1417981071+
カタみなにゃむ
開いて綺麗なにゃむうみだった
1326/04/06(月)23:49:02No.1417981565+
>──遊びやなかと、アタシのドラムは!
遊びを軽んじると道着の男がセガサターンを投げ付けてくるぞ
1426/04/06(月)23:49:38No.1417981751+
両利きの時点でもうドラマーは天職なんすよね
1526/04/06(月)23:52:13No.1417982503+
ネタ方面じゃない海鈴は貴重ですわね
1626/04/06(月)23:54:58No.1417983329+
ベースとドラムは夫婦といいますからね
1726/04/06(月)23:57:14No.1417984003+
音楽で語り合うか…
1826/04/07(火)00:05:57No.1417986656+
>カタみなにゃむ
なんなんにゃむ…
1926/04/07(火)00:28:22No.1417993512+
このスレ画でみなにゃむじゃないのか
2026/04/07(火)00:33:13No.1417994827+
>>──遊びやなかと、アタシのドラムは!
>遊びを軽んじると道着の男がセガサターンを投げ付けてくるぞ
刹那の快楽追い続けても
虚しい余生が残るだけ…


1775486124384.jpg