GM
[大浴場]
星が輝く夜
ここはとある町にある大浴場
近場に似たような施設もなく、癒しを求めるならここ一択
多人数で入ると落ち着かないという客層向けに個室風呂まで完備
美容や傷病に効く薬湯を揃えていることで近頃人気です
GM
[大浴場]
"そういう"サービスも質が高い
GM
[大浴場]
君たちはいずれかを求めてここにやってきたのでしょう
また、君たちは当然お分かりでしょうが混浴です
入り口の混浴を示す看板は湯気かなにかで見えづらくなっていますが
混浴は常識ですし特に問題はないはずです!
シラルカ
[大浴場]
「ふー……」
大きく溜めた吐息が、静かな浴場に溶ける。
他の客の姿は見えない、貸し切り状態の大浴場に、赤毛のリカントが一人でいた。
ここの湯は気に入っている。定期的に入りに来る。鍛錬の後の湯浴みは心地よく、肉体を内側からほぐすように癒してくれる。
手早く汗と汚れを流し、湯に身を沈め……一息。悪くない気分だ。
サンスベリア=ソロモン
[大浴場]
濡れたタイルの上を金髪の人間が歩いてくる
かけ湯は済ませているらしく、肌から水滴が滴り落ちていた
サンスベリア=ソロモン
[大浴場]
「おや」
湯に入る前に、知った顔がいることに気付いて
シラルカ
[大浴場]
「む」声に視線が動く
サンスベリア=ソロモン
[大浴場]
「久しいのう、シラルカや」
「隣、いいかの?」
単刀直入にして率直な相手だ
こちらも合わせよう
シラルカ
[大浴場]
「構わない」
以前に少し話した相手だ。名は確かソロモン……だったか
サンスベリア=ソロモン
[大浴場]
「では失礼して」
一人分ほどの間隔を開けて沈む
サンスベリア=ソロモン
[大浴場]
「…ふう~………」
両腕を広げて全身で薬湯を堪能する
老いた声が静かな浴場に響いた
シラルカ
[大浴場]
横目でソロモンの様子を窺いつつ、湯の温かさを感じている。
「……調子はどうだ?」
サンスベリア=ソロモン
[大浴場]
「うむ。だいぶ良いの」
「ただ、腕を戻すにあたって…この老体に多少の無茶をさせてしまった」
筋肉の柔らかさやしなやかさは前と比べてもかなり良くなっているが
その代償か、肌に薄い傷などが目立つ
シラルカ
[大浴場]
「……そうか」目を細める。肌の様子を見れば多少の苦労があったことは伺える
「何かに向けて励んでいる、といった様子か」
サンスベリア=ソロモン
[大浴場]
「まあのう。この|年齢《とし》にもなってやりたい事ができてしまってな」
「そのために年甲斐もなく動いているところよ」
サンスベリア=ソロモン
[大浴場]
「そちらはどうじゃ?」
以前の話から、明確な目標はなかった記憶があるが
シラルカ
[大浴場]
「今のところ満たされている」
ゆっくりと、湯を掬うように片手を持ち上げる。
シラルカ
[大浴場]
「依頼を受け、戦い、日銭を稼ぐ。あるいは鍛錬して技を維持し、磨き、そして食事を取り、床に入る」
「贅沢が出来るほどではないが、生活に困るほどでもない。健全な習慣だと自認している」
サンスベリア=ソロモン
[大浴場]
「満たされていると思えるか」
「カカッ!良い人生を送れておるのう」
気になったので調子を伺ってみたが、余計なおせっかいだったようだ
シラルカ
[大浴場]
「……そうだな」
「そのはずだ」
サンスベリア=ソロモン
[大浴場]
「うむ?」
サンスベリア=ソロモン
[大浴場]
「なんぞ気にかかることでもあるのか?」
シラルカ
[大浴場]
「ない」
指の隙間から湯がすり抜け、残った雫が湯面に波紋を広げた。
シラルカ
[大浴場]
「ない……ことが気にかかっている」
「些か妙な言い回しになるがな」
サンスベリア=ソロモン
[大浴場]
「ほう」
「この老体に話してみるか?かかし程度には役に立つかもしれん」
シラルカ
[大浴場]
「助かる。と言っても……私自身よく分かってはいないんだ」
「今の生活には満足している。不満はない。誰かに強制されることもない。拳を握れば食うには困らない。多少の楽しみもある」
「だが、何だろうな……」
サンスベリア=ソロモン
[大浴場]
言語化が終わるまで無言で話を聞く
シラルカ
[大浴場]
「私は自由に生きているはずだし、困っていることも足りていないこともないはずだが……」
「妙な話だ。何も困っていないのに、これでいいのかと思っている自分がいる」
「自分自身でも何を考えているのか分からない」
サンスベリア=ソロモン
[大浴場]
「なるほど、のう……」
その"悩み"に若いなぁ…と
サンスベリア=ソロモン
[大浴場]
「満ちておるはずなのに、足りておるはずなのに」
「漠然とした不安を感じておると」
シラルカ
[大浴場]
「不安……不安なのか? 私は」
サンスベリア=ソロモン
[大浴場]
「"不足"と言い換えてもよい」
「必要なものはあるのに、満足に穴があるのじゃろ?」
本当に幸せなら、これでいいのかという疑問はない
シラルカ
[大浴場]
「む……そうなのかもしれない。満足していると思ってはいるのだが、実は違ったのか」
サンスベリア=ソロモン
[大浴場]
それに直接は答えを返さず
サンスベリア=ソロモン
[大浴場]
「シラルカや。これは老体の経験から来る個人的な考えじゃが…」
「お主は、自身を"世界"に問う必要があるのかもしれん」
サンスベリア=ソロモン
[大浴場]
「お主の知らぬ、お主自身を。探しにの」
シラルカ
[大浴場]
「世界……?」 小首を傾げる
サンスベリア=ソロモン
[大浴場]
「シラルカ。お主が生きて、満足し、しかしそれでもなお不足を感じているのなら」
「それを解消したいと欲するなら…自己理解が必要じゃ」
「"生きがい"か"目的"のどちらかでもいいがのう」
シラルカ
[大浴場]
「……ふむ」僅かに視線を落として、しばし考えこみ
「ソロモンにはそれがあるのか」
サンスベリア=ソロモン
[大浴場]
「実を言えば、最近までは薄い"それ"しかなかった」
「どちらも達成してしまっておったから」
サンスベリア=ソロモン
[大浴場]
「生存するだけでいいなら、食事と寝床を確保さえすればよい」
「だからワシも生存するだけの、寿命までの暇つぶしで生きておった」
シラルカ
[大浴場]
「今は違う……と?」
サンスベリア=ソロモン
[大浴場]
「余人にとってはつまらん事かもしれんが」
「そうじゃ。大げさに言うなれば、"生きる目的"ができた」
サンスベリア=ソロモン
[大浴場]
「…いるんじゃよ。ただ生きて、少しの楽しみがある生活で足りる者と」
「納得ができない者が」
サンスベリア=ソロモン
[大浴場]
「ただ、自身がどちらなのかが分からぬ者もいる」
「そういう時は…」
シラルカさんに向かい合って
シラルカ
[大浴場]
「?」 視線が正面から重なる
サンスベリア=ソロモン
[大浴場]
「旅じゃ。ただ国を回るもよし、冒険をしてみるもよし」
サンスベリア=ソロモン
[大浴場]
「いろんな景色を、人を。見て回り…見聞を広げる」
サンスベリア=ソロモン
[大浴場]
「そうしたら、"生きる"に足る何かが見つかる…こともある」
サンスベリア=ソロモン
[大浴場]
「見つからなくとも、”見つからなかった”を知れば、案外納得できる…そうじゃよ?」
後半部分は自身の言葉ではないようだ
シラルカ
[大浴場]
「そういうものか」
返答はいつものように、端的だったが。どこか納得したような声色だった。
「ソロモンは今、生きるに足る理由を見つけたんだな」
サンスベリア=ソロモン
[大浴場]
「ああ、そうじゃ」
少しだけ照れ臭そうに
シラルカ
[大浴場]
「そうか、それは……羨ましいな」
サンスベリア=ソロモン
[大浴場]
「なあに。お主は若く、時間はたっぷりある」
サンスベリア=ソロモン
[大浴場]
「探すのならば、見つけられるさ」
シラルカ
[大浴場]
「だといいが」
シラルカ
[大浴場]
もう一度、ソロモンの身体を見やる。薄く浮いた傷痕。あぁ、なるほど、そういうことか。妙に気にかかっていたのはさっきも言った通りだ。
羨ましかったのだろう。
彼女は今、戦いの中にいる。至るべき場所があり、乗り越えるべき壁がある。そのために今、闘志を燃やしているのだろう。つまりは――――何のことはない。
シラルカ
[大浴場]
「……我ながら呆れたものだな」
サンスベリア=ソロモン
[大浴場]
「おう?」
シラルカ
[大浴場]
「拳を向ける先を無くしていたというだけのことだ、分かれば少々肩透かしだ」
「今までは生きることを考えていたが、それが叶った今どこへ行けばいいのか分からなくなったということなのだろう」
シラルカ
[大浴場]
「自由というのは案外不便だな」
サンスベリア=ソロモン
[大浴場]
「……カカッ!」
「シラルカや。お主は今、自分をひとつ理解した」
サンスベリア=ソロモン
[大浴場]
「旅などせずともな。ふふ…老体の心配なぞ無用じゃったな」
「これだから年は取りたくないのう…」
シラルカ
[大浴場]
「そうでもない。一人では解決するのにどれだけかかったかは分からなかった」
「いてくれて助かったと思っている」
サンスベリア=ソロモン
[大浴場]
「気にすることはない。ワシのただのお節介じゃからの」
「じゃが…ま。どういたしまして、じゃ」
シラルカ
[大浴場]
「……まぁ、だからと言ってこれからすることも変わらないような気もするが」
サンスベリア=ソロモン
[大浴場]
「悩みが分かっているのじゃから、する事が変わらなくてもええじゃろ」
道が見えているならば明後日の方向に行くこともない
シラルカ
[大浴場]
「そうだな……気長に探してみるとしよう」
「案外、思いもしないところで見つけるかもしれないしな……」
サンスベリア=ソロモン
[大浴場]
「じゃな。ワシも|大浴場《ここ》で見つけたしの」
サンスベリア=ソロモン
[大浴場]
「意外に身近に転がっているかもしれんさ」
サンスベリア=ソロモン
[大浴場]
この娘なら、探し物に迷走することもないだろう
短い付き合いだが賢明なのは分かっているからの!
シラルカ
[大浴場]
一度、頷き。「……しかし」
「なんだ……妙な気分だな、自分のことを他者に話すというのは」
サンスベリア=ソロモン
[大浴場]
「慣れておらなんだか」
シラルカ
[大浴場]
「何とも言えない心持ちだ……」僅かに視線が逸れ、頭上の耳がへたる
サンスベリア=ソロモン
[大浴場]
「カカッ!」
「なんじゃなんじゃ、可愛いところもあるではないか」
サンスベリア=ソロモン
[大浴場]
「おっと…失礼じゃったかの?」
シラルカ
[大浴場]
「む、可愛いというのは……私のことか?」
サンスベリア=ソロモン
[大浴場]
「お主以外にこの場に誰もおらんじゃろ」
意外なかわいらしさに笑顔
シラルカ
[大浴場]
「む……いや、しかし、私はそういうものではないのだが……」
「大体可愛いかどうかで言えばソロモンの方がずっとそうじゃないか?」
サンスベリア=ソロモン
[大浴場]
「ワシか?ワシはカワイイより綺麗系じゃから」
ボケて
シラルカ
[大浴場]
「ああ、美人だな」真顔
サンスベリア=ソロモン
[大浴場]
クックックと喉で笑う
サンスベリア=ソロモン
[大浴場]
「お主は本当にもう…」
何がもうなのかは言わず
シラルカ
[大浴場]
「……本心だが」
「華奢で小柄だ、女性として綺麗だと思う。顔立ちは整っていて美人だし、表情も愛嬌がある。笑顔も魅力的だ。男性が放っておかないだろう」
サンスベリア=ソロモン
[大浴場]
「……これ、意識してやっとらんのじゃろうなぁ……」
しんみり
シラルカ
[大浴場]
「……?」←素
サンスベリア=ソロモン
[大浴場]
「ワシがもう100年若くて、お主が男じゃったら口説かれておったのう!」
カカッ!
シラルカ
[大浴場]
「そうだな。私が男性だったら大変だったかもしれない」
サンスベリア=ソロモン
[大浴場]
「ま、ま、ま。ワシの魅力よりシラルカ、お主の可愛さじゃ」
サンスベリア=ソロモン
[大浴場]
「お主のその真っ直ぐな言動と眼差しと健康的な肉体。そしてその心にある純朴さと仕草」
「お主は十分に可愛く、魅力的じゃ。自覚を持つといい」
サンスベリア=ソロモン
[大浴場]
「世辞ではないぞ」
シラルカ
[大浴場]
「む……」釘を刺されてしまった
「そこまで言うのなら……心に留めておこう」とはいえ、いまひとつ納得はしていない様子
サンスベリア=ソロモン
[大浴場]
綺麗や格好いいを目指しているわけでもなかろうに、可愛いに納得がいかんか
自己評価が低い…というよりは生まれ育った環境と価値観の影響かのう
サンスベリア=ソロモン
[大浴場]
「うむ。留めておくといい」
じゃが、その辺りも時間が解決するじゃろう
シラルカ
[大浴場]
「あぁ……今回は随分と世話になってしまったな。感謝する」
サンスベリア=ソロモン
[大浴場]
「こちらこそ、老体の長話に付き合ってくれてありがとうよ」
「楽しかった」
シラルカ
[大浴場]
「それはよかった。では……私はそろそろ失礼する」
「また会えれば嬉しい」
サンスベリア=ソロモン
[大浴場]
「うむ。達者での」
「機会があれば、また」
シラルカ
[大浴場]
ゆっくりと湯から身を引き上げ、浴場から立ち去る。
浮かぶ表情は相変わらずだが、心なしか尻尾が上機嫌に揺れているようにも見えたかもしれない。
サンスベリア=ソロモン
[大浴場]
「カカッ。やはり若者との会話は活力を得られるのう…」
一人になった大浴場で存分に湯を堪能し
サンスベリア=ソロモン
[大浴場]
薬湯漬けになったあと、十分に癒されて去る老体だった
GM
[大浴場]
そうして大浴場は健全も不健全も飲み込んで、閉館時間まで稼働したのだった…