街の喧騒が静まり返る夜。 街灯が瞬く大都市の中心部。 カイブツの咆哮が響き渡る。 カイブツ、正体不明にして人々の存在を消す人類の敵。 粘つく触手と毒々しい体液をまき散らし、街を蹂躙する世界の異物。 「こっちです! オブシディウスさん!」 「よっしゃぁ! 俺に任せな!」 「バトル、開始します!」 闇を照らすように現れたのは、ヒーロー・オブシディウスだった。身長2メートルを超える巨躯は、鍛え抜かれた筋肉で覆われ、二対に紅く光る角が戦意を燃やしている。愛用のドリル。それは彼の夢を形にした武器で、雄牛の決意がカイブツたちの甲殻を砕く。 オブシディウスの声は豪快で、現地で、遠隔で、ヒーローを待つ人々を勇気づけた。彼はいつもそうだった。戦いの合間に後輩ヒーローたちを励まし、民衆の不安を包容力で包み込む。どんなに困難な壁も正面からぶち当たり、貫く姿は皆の兄貴分として慕われ、誰もが彼を頼りにしていた。 「…! 10時方向! 巨大なエーテル反応来ます!」 「大ボスのお出ましか!」 暗闇から這い出したスライム状のカイブツ。ヒトガタを模した体は透明なゼリーのように揺れ、溶け落ちた体液が異色の煙を上げている。 オブシディウスはドリルを構え、突進した。 「オラァ! てめぇみたいな軟弱モン、俺のドリルでブチ抜いてやらぁ!」 「……! オブシディウスさん待ってください! このカイブツ……」 ドリルの回転音が響き、スライム型カイブツに突き刺さる。ゼリー状の体が裂け、飛沫が飛び散る。カイブツは咆哮とともに身悶えし、触手を伸ばして反撃してきた。紙一重で回避し、パラレルウェポンを紅く輝かせる。轟音と共に回転する刃がカイブツに大穴を空けた。だがすぐに粘液が補充され、異臭とともに触手が繰り出される。 戦いは一進一退。オブシディウスは汗をぬぐい、獰猛に笑みを浮かべた。 「チッ! 観測者! コアはどこだ!」 「変です……反応が一帯に拡がっていて……」 「どういうことだ……?」 「…!?オブシディウスさん! 離れ……!!!」 カイブツの攻撃は触手だけではなかった。体から噴出する煙――別宇宙では『魂を物質化する』禁呪の産物。触れた者の精神を溶かし、人格を体外に排泄させるという恐ろしい毒『人格排泄ゼリー』既に霧状に散布されたそれは、取り返しのつかない濃度でヒーローを包み込んでいた。 「ぐっ……何だこれ? 体が……熱い……」 オブシディウスが感じた異変。皮膚に染み込み、体内に侵入する。最初はただの熱だったが、次第に頭の中が混濁し始める。紅く光る角が、徐々に輝きを失っていく。 「くそっ、こんなもんで……俺が……」 彼はドリルを振り回すが、動きは明らかに精彩を欠いていた。カイブツはチャンスを逃さず、触手をオブシディウスの体に絡みつける。鍛え抜かれた筋肉が、皮膚を這い回る毒に弛緩し始める。ヒーローのピンチを、宇宙の人々は遠くで見守っていた。 「オブシディウスさん! 今、助けを……!」 観測者が駆けつけようとするが、オブシディウスは手を上げて止める。 「来るな!」 救援が来るまで何分かかるか、正体不明の攻撃にどれだけ耐えればいいか。今、中継を切るわけにはいかない。パラレルウェポンを解除したオブシディウスの体は、またたく間に消化され、この宇宙から存在ごと消えてしまうだろう。それは、最も近くにいる観測者も同様だ。 「俺だけで……片付ける……!」 しかし、それは虚勢だった。カイブツが散布した毒の効果が本格化し始める。人格排泄――それは精神をゼリー状の物質として体外に排出させる。オブシディウスは腹部に激痛を感じ、拘束された四肢を捩った。 「うぐっ……あ、あぁ……何が……起きてやがる……」 人格が、溶け出そうとしている。 過去、抱いた夢、培った性格、築き上げた信頼、ヒーローとしてのプライド…それらがゼリーとなって、腸内へ剥がれ落ちていく感覚。オブシディウスは顔を歪め、必死に耐える。だが、ゼリーは容赦なく雄牛の体内を蝕んだ。腸壁が溶け落ち、精神の欠片が粘つく液体に変わる。腹が膨張し、ガスが溜まるような不快感が襲う。 カイブツはオブシディウスの膨らんだ腹を愛おしげに撫で、すでに腹筋を失った中心、臍からさらなる体液を流し込んだ。ヒーローの口から、泡立つような粘液が溢れ出す。 「げほっ……おえっ……」 喉から逆流する苦味が吐き気を誘う。紅く光る角が、完全に色褪せていく。ドリルが手から滑り落ち、地面に転がった。オブシディウスは地面に這いつくばり、尻を高く上げて悶絶した。筋肉質の尻が震え、肛門周りが熱く痙攣する。 「く、くそ……こんな……」 彼は歯を食いしばるが、腸内の圧力が限界を超える。人々に安心感を与えていた声が、情けない喘ぎに変わる。 「あっ……出る……出ちまうよぉ……!」 人格排泄の真の恐怖が始まった。腸内が激しく蠕動し、ゼリー状の人格が後孔に向かって押し出される。オブシディウスは両手で地面を掻き、顔を赤らめて耐えるが、無駄だ。肛門が緩み、ぷくっと膨らんだ。粘つく音が響き、最初の一滴が滴り落ちる。それは紅い角の輝きを帯びた、どろどろのゼリー。続いて、大量の塊が噴出。べちゃっ、ぴちゃっと地面に落ち、臭気を立てて広がる。 「うあぁぁぁ! 出てる……俺が……ケツから……!」 オブシディウスは叫び、幼児がむずがるように尻を振った。排出されるゼリーは、彼の記憶を映すように幻影を放つ。後輩を励ます豪快な笑い、子供達を抱きしめる包容力。それらがゼリーとなって、汚らしく地面に溜まる。甘酸っぱい腐敗臭が周囲を満たす。カイブツは嘲笑うように触手を伸ばし、オブシディウスの尻穴を塞いだ。さらなる体液を注入し、腸内を掻き回す。 「ひゃあっ……やめろ……そんなとこ……!」 オブシディウスは情けない声を上げ、肛門の隙間から再びゼリーを飛び散らせた。ぷしゅっと音を立て、噴水のように散ったオブシディウスの人格排泄が、宇宙中に拡散される。小山のように鍛え抜かれた体が、排泄の快楽に震え、産まれたての赤子のように震えている。その姿を、人々は呆然と見つめていた。 『ヒーローが……あんなに無様に……尻から……』 人々は顔を覆う。慕っていた兄貴分が、肛門を晒して人格を垂れ流す姿。ゼリーの塊は地面で蠢き、本来の排泄物と混ざって鈍く光った。雄牛は虚ろな目で自分の排泄物を見つめた。プライドが崩壊し、理性をなくした目尻に涙が混じる。 「見ないでくれ……俺は……ヒーローなのに……こんな……うんこみたいに……」 オブシディウスが空になるまで排泄は続いた。最後の一塊が落ち、身体が脱力する。抜け殻となったヒーローは、やすやすと怪物に抱え上げられた。 「あ……あぁ……」 白痴のうめき声を上げたヒーローの残骸は、抵抗もせずカイブツに飲み込まれていった。 ヒーロー連合が、オブシディウスの救助に成功したのは、それから2日後のことだった。 カイブツは下水網に潜伏し、オブシディウスを玩具にしている。抜け殻の体は、ゼリーの影響で敏感になり、触手が体を這うたび、無意識に反応する。 (あ……うぅ……) 朦朧とした意識で呻く。人格を排泄された後、残ったのは本能だけ。怪物はさらに体液を注入し、腸内を刺激する。オブシディウスは再び尻を突き出し、ゼリーを噴出させる。 (出……出るぅ……!) 誰にも観測されない暗闇で、ヒーローは無様に排泄する。腸内が掻き回され、ぴちゃぴちゃと音を立てた。ゼリーは粘つく糸を引き、毛深い尻周りを汚す。かつてのヒーローが、こんな屈辱を味わうとは。カイブツはそれを楽しむように、触手で肛門を広げ、排出を促進する。注入と排泄を繰り返した粘膜は赤黒くめくれ上がり、門番の役目を果たさなくなっていた。口・両目・両耳・両鼻・尿道・肛門・腹腔に至るまで触手が侵入し、ヒーローを犯し尽くした。 混濁した意識が享受するのは快楽だけ。紅い角は折れ曲がり、体はただの排泄器官。オブシディウスご自慢の巨大な陰茎から、力無く排出された精液が、ゆっくりとカイブツに取り込まれていった。 カイブツは進化を遂げていた。オブシディウスの人格を吸収し、遺伝子を模倣し、紅く光る角を生やして、ドリルを模した触手を獲得していた。抜け殻と化した雄牛を素体に、赤いゼリーを纏った異形。下水網は雄牛カイブツの縄張り。充満する『人格排泄ゼリー』は容赦なく近づくヒーローを捉え、オブシディウスの長大な勃起を納めるオナホールへと変えていった。 「オブシディウスさん……目を覚まして!」 観測者の叫びは届かない。オブシディウスは怪物に操られ、ヒーロー達に攻撃を仕掛ける。 (あぁ……出る……尻が……熱い……) カイブツの中で、素体の緩みきったから肛門から、ゼリーが滴る。触手で尻を叩かれ、排出を強制される。 「ぱんっ」 意味を成さない音が響き、オブシディウスは嬌声を上げる。 (あぁっ……もっと……出させて……) 意識は摩滅し、雄牛の最後のひとかけらが流れ出ていく。体は排泄の玩具。オブシディウスの声がカイブツから響いた。 「来るな……俺は……もう……」 それは幻聴だったか。 ヒーロー達の総攻撃を受けた雄牛カイブツが溶けるように消えていく。残されたのは、尻からゼリーを垂れ流し、地面に転がる肉塊。締まりをなくした肛門は排泄が止まらず、腸内が空になるまでカイブツの残滓をひりだし続けた。 「オブシディウスさん……!」 観測者が雄牛の体を抱き起こすが、かつてオブシディウスだったものは虚ろに笑みを浮かべるだけだった。 ……その後のヒーローがどうなったのか、この宇宙には記録されていない。