【ディズニーツムツムの日】 かの有名なウァリト・ディズニー氏が創立者の、ウァリトヒロイ最大のテーマパークウァリト・リゾート。そこにアリシアとフレイの姿があった。 「今日は遊ぶよ。ペアチケットで入場料はタダだし」「う、うん」 『福引でペアチケットが当たったんで遊びに行こ』とアリシアに誘われ来園したフレイ、様々なアトラクションに驚嘆しつつも一つの疑問を解消できずにいた。 「どうして僕を誘ったの?」 夕刻、最後にと乗り込んだ観覧車の中でフレイはアリシアに尋ねる。困ったように笑いながらアリシアは語りだした。 「銭ゲバって二つのタイプに分かれると思うの」 突然な話に困惑しつつも黙ってフレイは頷く。 「一つはお金が好きで仕方ない人」 フレイの頭にドアンとクロウの姿が浮かぶ。 「…そしてもう一つは、お金が何としても必要な人」 そう語るアリシアが悲しそうだとフレイは感じた。 「理由は聞かない。でも、お金を手にした時のフレイの顔…まるでノルマを解消したような安堵のように思えて、なんとなく私と一緒だと思ったんだ」 「こんな理由でごめん」と頭を下げるアリシアの手にフレイが触れる。 「僕を誘ってくれて有難うアリシア。今日は楽しかったよ」 【おつなの日】 勤務中の昼飯の弁当を開けるのが楽しみになる、というのは何時ぶりだろうか、とギャンは包みを開けながらふと考えた。 「お、今日はサンドイッチか」 弁当にキッチリと入ったツナ、たまご、ハムの三種のサンドイッチにギャンの強面な相貌が緩む。 「ツナマヨなんて普段食べないからな……と」 久々に食したツナサンドを堪能しながらギャンは自分の食生活を振り返る。 外食、市販の弁当やカップ麺、あまり褒められた食生活じゃなかったとギャンは苦笑する。 ふと、煙草の事がギャンの頭をよぎる。以前は食事中も煙草を構わず吸っていた。紫煙をくゆらせながら食べるラーメンの味も、健康に中指立てる振舞だが中々乙な物だった。 ギャンはポケットからタバコケースを出し、煙草を取り出そうとして、 「やめるか」 苦笑いしながらポケットにしまった。 お弁当の味はどうだったか、毎度サトーはギャンに確認してくる。煙草で味がよくわかってませんでした、なんて言ったら面倒なことになるのが目に見えていた。 「はぁ…気楽に煙ふかしてた日々が遠い昔のようだぜ」 ごめんな、とポケットのタバコケースをポンポンと叩くと、ギャンはたまごサンドに手を伸ばした。 【結婚相談・トゥルーハートの日】 サカエトルの結婚相談所にユーリエ=アッテンボローの姿があった。 「とうとうこんな所を活用する立場になってしまった…」 自分の境遇に思わず嘆くユーリエだが、ここまで追い詰められたのは理由ががあった。 『ギャンさん肉と魚どっちがいいです?』『肉、更に言うなら牛』 某新米刑事とハードボイルド風刑事のこんなやり取りを見せられておかしくならない独り身がどこにいようか? 特にユーリエは男運の悪さで知られた女。このままだといよいよ己は駄目になると、彼女は結婚相談所の利用を決心した。 (ん?あれは…) 参加者の中に一人の銀髪の美女の姿が彼女の目をひいた。どこかで見たような、でもどこで…。 「およ?ワシに気があるのか?」 ユーリエの視線に気づいた美女が、話しかけてきた。 「すいません!綺麗な方だと」「そうじゃろう!わしはまだぴちぴち美女じゃからのう!」 上機嫌な美女にほっとしながらユーリエは相槌を打つ。 「実はの、ワシは気乗りせんのじゃが、職場の者どもが婿探せと煩くてのう。ま、これもいい経験じゃ」 ここまで一気に話すと、「邪魔したの」と詫びて美女は離れていった。 「ワシはティア!縁があればまた会おうぞ」 【肉の日】 今日は肉の日。バーベキュー大会の主催者、レッドバーニングライオンことレバニラ先輩は人一倍暑苦しかった。 「おめえら!肉食ってるかーー!」 おお!っと場に集う肉好き酒好きな魔族たちが、トングやジョッキを掲げて応えると、レバニラ先輩は満足げに笑い声をあげた。 「カラレアじゃねえか!珍しいじゃねえか!」 珍しく参加している、魔伝令…という名の遣いッ走り役なハーピー族の女魔族を見つけ、嬉し気にレバニラ先輩が駆け寄る。 「あ、どうも…」 「よく来てくれたな食え食え!」 トングで皿に勢いよく肉を持っていくレバニラ先輩にカラレアはあたふたする。無造作に肉を摘まんでいるようで鳥肉は器用に避けているのは、さすが気遣いのできるレバニラ先輩という所か。 その余った鳥肉に怪鳥、コカトリスが目を光らせる。 「おおっと」 だが、彼(?)が嘴でついばむよりも一瞬早く、レバニラ先輩がひょいと鶏肉をコカトリスから遠ざけた。 「これは鶏肉だぜ、あんたが食ったら同族食いになっちまうぜ!」 代わりにどんと置かれた山盛りの肉の皿(鳥肉抜き)を、礼を言ってコカトリスはついばんでいく。 心なしかその姿はどこかしょんぼりしていた。 【フルートの日】 花畑の中、横笛を吹く少女の姿があった。彼女の吹く横笛からは美しい旋律を紡ぐ。色とりどりの花が咲き誇る花畑の中で笛を吹く彼女の姿は。幻想的な儚さと可憐さを漂わせていた。 「アルルの女のメヌエットだな。上手えじゃねぇか」 腕組みをしながら三下な笑みをして魔術師が近寄ってくる。演奏を止め、少女、マインは話し出した。 「笛は好きです。私の言葉とは違い、人を傷つけませんから」 マインは優秀なヒーラーでありながら、PTに定着することができなかった。理由は、彼女が引き起こす舌禍であった。 「私が喋ると誰かが傷つく。わかっているのに話題選びが下手で」 「まあしゃあねぇな」 フルートを取り上げ、しげしげと眺めながらマーリンは独り言のように話しだす。 「誰だって知られたくないことはあるもんだ。それを知られて平気なのはまあ少数派だ」 悔し気に俯くマインを眺めていたマーリンはフルートを口につけ吹き出す。 「…"白鳥"?」 「勘のいい女は嫌いじゃねえ」 演奏を終えると、マーリンはマインを勧誘する。 「俺と来いよ。貴重なヒーラーだ」 俺の秘密を知れるもんなら知ってみろと嗤うマーリンを、マインは呆然と見つめていた。 「Welcome to the concert!クリスト!」 音楽ホールを訪れた、旧友のクリストをシスターの“ダイハード"スウィリィ=ブルーは笑顔で出迎えた。 「また会えて嬉しいですよ!」 「動くんじゃねー!色男野郎!」 猛ダッシュで駆け寄るとタックルをかますブルーを、クリストは腰を低くして受け止める。暫く押し合っていたが、やがて二人とも笑顔を浮かべて抱き合う。 「練習はしてきた?」「はい」 フルートを取り出しブルーが笑うと、クリストも笑いながらヴァイオリンを取り出す。 「今日はゴキブリよりしぶとい聖都関係者を集めての演奏会。刺激的にいこうね」 「勿論そのつもりです」 クリストとブルーが入館すると、親密な二人の仲を揶揄う野次が飛んできた。 「うるさい!motherfucker!」 中指を立てて応戦するブルーに、思わずクリストは吹き出す。そこは確かに聖都の日常の風景の一端があった。 クリストは思わず潤んだ目を慌てて腕で拭う。まだ、始まる前なのだから。 「一曲目はフルート協奏曲!皆、気合入れていくよ!」 ブルーが周りを見渡しながら叫ぶ。クリストは勢いよく腕を上げて彼女に応えた。 【建国記念の日】 「バニランド女王バンザーイ!」 「ホロヴィッタ再興バンザーイ!」 ホロヴィッタ再興一周年、各地で盛大にお祝いが開かれ、各地で女王バニラの善政をたたえる声が聞こえた。 「バニラ女王の益々のご活躍を祈って!」 元帥ボーリャックが乾杯の音頭をとる。その顔は真っ赤で完全に出来上がっていた。 「元帥、少し飲みすぎですよ」「ボーリャック。大丈夫?」 ボーリャックの右腕、イザベル(妹)と知恵袋のバリスタが左右からふらつくボーリャックを支える。二人の視線が一瞬会うとプイッと同時に顔を背けた。 「コージン。レンハートからの親善の使節がまた来たよ」「よし、私は各地の視察に2週間ほど出かけるから後は頼む」 テーブルを挟んで、ウラヴレイとコージンが何やら談合している。バニラはウラヴレイの出した名前を聞かなかったことにした。 「エクレール殿~大臣やる気はござらんか~?」「目立つわけにはいかないって言ったろ…って酒くさ!」 大臣の関超がエクレールにウザ絡みしていた。とりあえずバニラは城内にアルハラ撲滅のお触れを出すことにした。 宴を見渡してバニラは思う。 「これ、私いります?」 「「「「「「絶対いる」」」」」」 【育児の日】 「子供、ですか…?」 イザベラが呟くと、ティアはビシッと指さして弁じる。 「うむ、そなた。子を産むつもりはあるか?勿論、クから始まりトで終わる名の男のじゃ」 顔を赤くしたイザベラが俯くと、ティアは陽気に笑いながら一つの提案をした。 「子育てなら、ウァリトヒロイに居を構えては如何と思ってのう!今、あの国は様々な育児支援制度を講じておっての」 だが、イザベラは彼女の言葉に難しい顔をする。 「どうでしょうか。あの…クリ、あの人のいた、聖都に行くのが当然では、と思ってましたが」 「だが、今は敵地じゃ」 「必ずクリストは解放します。私も全力を尽くします」 (ガチ惚れじゃのう)と、苦笑いしながらティアは言葉を続ける。 「だが、考えてみよ。あそこは宗教的な要素が濃い。お主は闇の元素の魔法も使うのじゃろう?ワシはよくわからんが、子に魔法を伝授する時にちと不便なことにならんかの?」 その言葉にはイザベラも考え込む表情をする。 「ウァリトヒロイは人材を大いに募集しておる。決して、お主たちに不満を抱かせるようなことはないと誓おうぞ」 考え込むイザベラに「長居したな」と告げると、ティアは立ち去って行った。 【NISAの日】 「ふん…マチちゃんめ調子乗っておるのう…」 マチ王女の書簡を広げ、ティアは口を歪める。書状には、己が発案した新しい政策について誇らしげに記されていた。 それは投資信託における非課税制度の拡充による投資促進政策であった。 書簡には如何に人間とは欲深く、夢追い人で、子孫のために汲々とする生き物か嘲りを込めて書かれており、己の信頼性を利用して必ず軌道に乗せると決意で締めくくられている。 はっ、とティアは吐き捨てる。何とも邪知で、強欲で、奸智で── 「名君よのう」 と、ティアは呟いた。 人間の心理、株式市場、金融資産、いったいマチはどれだけの情報をかき集めてこの政策を練り上げたのか。これは一代でダスタブを強国に作り替えたマチでしかできない芸当であろう。 この乱世で人間、魔物両方に甘い顔をして立ち回り、己のカリスマで国民を心酔させ、その極めて高い知能と、それに溺れぬ慎重さと勤勉さで一国を統治する彼女は、まさしくティアとは違うスタイルの統治者の理想形と言える。 「だが、無茶がすぎるぞ」 多種多様な人材を集め、熟議でもって政治を行う。一人でできることは限りがあるのだから。 「負けんぞ、マチちゃん」 【次に行こうの日】 (どうしてこうなった) 目の前にはイザベル(聖)が縋り付くような目でマリアンを凝視している。 マリアンは右を見る。バリスタが難しい顔をで視線を送ってくる。左を見る。イザベル(妹)が無表情でイザベル(聖)を見ている。 「一体何が」「口添えをお願いします!」マリアンが言い終える前にイザベル(聖)が叫んだ。 「マリアン殿、これは難しき状況かと」 「マリアン殿、聖都からイザベル殿に関する書簡が来てる」 「おい、何で私に判断を求める」 左右の美女はすらすらと口上を述べる。 「私は魔王軍の出。高度な判断が求められる分野での発言は慎むべきです」 「聖都の出であるマリアン殿の意見が第一かと」 苦い顔でマリアンは頷く。ここはホロヴィッタの会議室。ボーリャック将軍に仕えたいと聖都を飛び出したイザベル(聖)の対応で大いに揉めていた。 面倒なことにバリスタ、イザベル(妹)両名がマリアンをボーリャックの側近と尊重する姿勢を崩さないため、知らねえと突き返すこともしにくい。 (クソ!次の職場をここにしたのは外れだったか) マリアンは心中で親善大使を命じられ、ウァリトヒロイに赴いているボーリャックにFu〇kと叫んだ。 【バレンタイン】 ポーン=プライマルは一人ワインとチョコを口に笑う。 「ふ、酔ったか?」 このワインとチョコはシュティアイセからのプレゼントだった。チョコはバレンタインだから意図はわかるが、だがワインは何を意味するか。瓶を眺めたポーンは一つの決断に至った。 「私に休めというか」 なんて事はない。以前投資促進政策に関する書簡を送ったことがある。あの文面から自分の激務を察したのかあの女は。 「ふふ…」 ポーンはワイン瓶を掴むと、直に口を付け一気に飲み干す。 「だから馬鹿なのだあの女は!」 そして空になった瓶を投げ捨てた。 「貴様の国と我が国の国土、人口、経済規模がどれだけ開きがあると思っておる!?一日休めば一日格差が広がる!大国の王はそれも分からんか!」 地図を睨み叫ぶ。大国ウァリトヒロイに隣接するダスタブは、貿易の多くをあの国に依存した形の経済として成り立つ。もし何もしなければこの国は産業は衰退し、ウァリトヒロイの下請け人材の供給源としての価値しか持たなくなるであろう。それは国家の衰退である。 「私は負けん、この国は私の作品、私の国だ」 窓を開け彼は天を睨む。その姿は歪だが正しく一国の王の姿だった。 【トロの日】 「中トロお代わり、あと穴子」 その華奢な体からは想像できない、旺盛な食欲で寿司をお代わりする傭兵アリシアを、必中のスナイプは啞然と見守る。 「驚いた?有難くゴチになります」 「う~ん!惚れ惚れする食べっぷりだね!」 全く悪びれもせず食べ勧めるアリシアに、スナイプはむしろ感心を抱いた。 「どうも」と、軽く会釈して応じたアリシアは店員を呼び、赤身とサーモンとイカを頼んだ。 「お、急に可愛いのいくじゃない」「可愛い連れが来るからね」「うん?」 「連れが近くにきててね。可愛さは保証するよ」 アリシアが笑いながら説明する。スナイプは話の内容より、その人物の話をする時の彼女の笑みに惹かれた。 「大切な子なんだな。今日で一番いい表情をしてるよあんた」 「そう?」 やがて、訪れたアリシアの連れが現れるとスナイプはヒュー!っと口笛を吹いた。 「なんだよ連れってアリシアの妹かい!お姉ちゃんに似て可愛いじゃない!」 その言葉にキョトンと二人は顔を見交わすと、揃ってクスクス笑いだす。笑みを抑えながら連れの子が首を傾げるスナイプに挨拶をした。 「初めまして、僕はシーフのフレイ。アリシアの仲間の一人です」 【似合う色の日】 ファッション誌を読んでいたイザベラはある情報に笑顔を浮かべた。 「黒と黄色って相性いいんだ…」 イザベラが思い浮かべるのは仲間のクリストのタンポポのような金髪。とにかく誤解されやすい自分のイメージの黒色も、彼と相性がいいなら前向きになれるとテンションが上がる。 だが、その時予想外の人物が彼女に絡んだ。 「へえ、相性のいい色特集ねえ」「えっ…?」 必中のスナイプがイザベラの肩の上からファッション誌を覗き込んだ。 「お、茶色と黒って相性いいじゃん。これって、運命だったりする?」 ニヤリと笑ってイザベラの顔を覗きこむスナイプに、イザベラは体を強張らせる。 (こ、断らなきゃ…でも体が竦んで動けない…) その時だった。 「銀色と茶色ってどうか調べてもらってええ?色男はん」 「おや、ジュダちゃんじゃん。俺とお話しする?」 イザベラの仲間のジュダが、背後からスナイプの肩を叩いた。スナイプの視線が逸れた隙に慌ててイザベラが逃げ出す。 「あん人はソールドアウトや。お触りはあかんよ」 ニコニコと笑いながら話すがジュダだが、彼女の細目は怒りの炎が燃えている。それに気づいたスナイプはあちゃー…っと頭を掻いた。 【減塩の日】 「らっしゃっせー!」 何かを恐れるかのように周囲を警戒しながら入店したヤン・デホムは、ホッとした顔を浮かべながらカウンター席に座ると開口一番注文した。 「チャーシュー麵とチャーハン」 「あいよぉ!」 元気よく中華鍋を振るう親父の姿にヤンは遠い目をする。思えばあの日(12/17減塩の日)からヤンの苦難は始まった。 「へいお待ち!」 お出しされたのは如何にも旨そうなラーメン。まずヤンは箸で麺を一気に啜った。 (美味い) 醤油味のスープがヤンの濃い味に飢えた舌を癒す。叉焼を一口で一枚食べると、その食感と香ばしい味に思わずため息が漏れる。 次いでヤンは炒飯に蓮華を伸ばす。肉厚の叉焼、ヤン好みのパラパラご飯。笑顔で頷くとヤンは蓮華を口に含む。 「美味い」 ヤンは堪らず呟いた。この調味料をガッツリ使った味付け。何日も恋焦がれたガッツのある味。スープも含め瞬く間にヤンは完食する。 元気のいい親父の声を背にヤンは上機嫌で店を出る。途端に彼は目の前にいる笑顔のスパーデ・ディ・レンハートの姿に凍り付いた。 「随分とご機嫌だなヤンよ。何を食べたか教えてくれないか」 その目は笑っていなかった。 【ガチャの日】 「ふぇへへへ…ガチャ大当たりって気分ですよ」 ユーコは舞い上がっていた。ユーザー人気の高い男性キャラ、聖盾のクリストを仲間にできたのだから。 「宜しくお願いします」 爽やかスマイルでクリストに告げられユーコがにやける。この後の彼の代表イベントである離脱騒動へのフラグ管理もしっかりせねば。そうユーコが決意した時だった。 「PTはあと二人ですね」 「?はい…」 キョトンとしながらもユーコが頷くと、クリストは席を外し、2人の人物を連れて戻ってきた。 「イザベラ様と、マーリンです。あ、マーリンは呼び捨てで結構です」 「よ、よろしく」「世話なるぜ!あと覚えてろよテメー」 ユーコの頭に?マークが乱舞する。漆黒の勇者イザベラはお辛い設定と人気ヴィランの妹との関係性で人気が出たキャラ、魔術師マーリンはコミカルな言動が人気のキャラだが、クリストと原作で関係性はない筈。 「えへへ…クリストとのコンビは、自身あるの」 (あ、笑顔可愛い…ていうか原作でそんな関係だった!?確かに戦闘のシナジーは高いけど二人!) 「マーリン貸し一つですよ」「おう!次の競馬で当てて返すぜ」 (何でこの二人仲良さそうなの!?) 【方言の日】 「よろしくお願いしますは?」 「よろしゅうたのみあげもす、という」 営業のユリの言葉をシュバルツキリシマが翻訳すると、それをユリはメモにしっかりと記録する。 「しかし、意外だな。サツマハンの言葉を覚えたいなどと」 「あら、そうかしら?」 勉強の休憩中、感心したように商会自慢のお茶菓子を堪能しながらキリシマが言うと、フフンとユリが笑った。 「普通、会長が現地の方言まで覚えようとはしない。部下を派遣して終わりだ」 「何ごとも自分の目と耳で情報を捉えることが大事、血の通ってない情報で商いはできないわ」 その言葉に感心したふうに頷くが、なおもキリシマは質問を重ねる。 「でも、もし翻訳の必要がなくなればどうする」「?どういう意味よ」 「全ての言語に通じた悪魔もこの世にはいると聞く。もしその能力を分析出来たら、翻訳の努力などいらなくなろう」 ユリは少し考え込むが、直ぐにキリシマに笑みを向ける。 「それでも私は学びたい。なぜなら学ぶということは相手を知りたいということだから」「…完敗だ」 クスっと笑うとカップを置き、再びユリがメモとペンを手にした。 「さ、勉強を再開するわよキリシマ!」 【プロレスの日】 イーンボウは複雑な顔でリングをリング上の試合を見つめている。 「これは真剣勝負とは言えん」 レンハートマンホーリーナイトVSダイナミック・ザ・マーシャルロードの試合は熱戦となった。 バックドロップでホーリーナイトを投げ飛ばしたマーシャルロードが、追撃でダイビングセントーンを放つ。カウント2.9 「今、ホーリーナイトはわざとらしく転がった。相手の落下を受け止めやすい場所にだ」 「それがプロレスというものだ」 苦笑いしながらボーリャックが応えるが、イーンボウの顔は難しいままだ。 ラリアットを躱したホーリーナイトがフライングボディアタックをマーシャルロードに決めたのを見て、イーンボウが呟く。 「今も、マーシャルロードの技、よけ易くしていたように見えたが」 「それを言うのは野暮というものだ、だが周りを見てみろイーンボウ」 観客の熱気は最高潮になっている。それを見てイーンボウは口を噤む。 互いに膝つきながらエルボーを繰り出すホーリーナイトとマーシャルロード。その姿は壮絶そのものだ。 「さて、フィニッシュは近いぞ!」 エルボー勝負に勝ち、雄叫びをあげるホーリーナイトを見ながらボーリャックは叫んだ。 【アイラブミ―の日】 魔王軍残党を掃討中、その記念日をボーリャックから聞いた時、審判の勇者イザベルは思わず笑ってしまった。 「アイラブミーなんて、私達に一番縁のない日だね」 「ああ、でもお前が嫌いなお前を愛している人もいる。姉のようにな」 手紙を握りしめイザベルが俯く。クリストと結婚しないのかと、イザベルが送った手紙の返書にはこう記されていた。 “イザベルが前を向けられないまま、私だけ幸せになることはできない“ 「どうすればいいんですか。前を向くって」 絞り出すようなイザベルの声に、ボーリャックも言葉が見つからない。彼も悩んでいるのだから当然である。 「俺にも気にかけてくれる人がいてな」 イザベルの隣にボーリャックが腰を降ろす。 「クリストのやつ俺がいつまでも己を苛み続けるなら、世間から身を隠し隠者として祈りの日々に生きる、って脅すんだよ」 直後、イザベルの右ストレートでボーリャックが勢いよく吹っ飛んだ。 「はあああ!?つまり貴方が前向かないと姉が結婚できなくなるという事ですか!!」 「お、おちつ」 「ふざけるな!お姉ちゃんあの人逃したらたぶん一生結婚できないから!前を向いて生きろいや私がさせてやる!!」 【漱石の日】 "吾輩は猫である。名前はまだない" トロス伯はこのフレーズが好きだった。ある日社交パーティーで、オンケーン、フライクィンと同席になり、二人のご高説を散々聞かされた彼が帰宅後「頼むから死んでくれ」と呟くのが666回目に至った時、見かねた執事が気分転換に勧めたのがこの本だった。 実にこの本は示唆に富む。何度読んでも飽きさせないこの本は猫を主人公にするという大胆さによって、飼い主の人間たちの愚かさ、滑稽さを滑稽味溢れる文章で見事に描き切っている。 だが、一つの事実が頭に浮かびトロスは本を置く。それは、これで作者が猫ではなく人間ということであった。 トロス伯は人間の文字を知らない。この本も翻訳である。いや、人間の文学作品に触れたのもこれが初であった。 トロス伯は自問する。 (理解なき愛にどれだけ価値があるのか?) トロス伯はさらに思案に耽る。最愛のペットであったハナちゃん。己はこの猫の飼い主の滑稽さを笑えるほどに、あの子にとってよき飼い主であったのかと。 猫の視点から辛辣な批評を下した吾輩のように、ハナちゃんも人間の視点から魔族の己に強い批判を持ってなかったと、どうして言い切れようか、と。 【猫の日】 「こ、これは…!」 「に、にゃー…」 ジュダとヴリッグズはイザベラの反応にガッツポーズをした。 リーダーのイザベラを労わる慰労会ということで、ドキドキしながら散策を終え宿に戻ったイザベラはそこにある光景に硬直した。 クリストが、猫耳メイドになっていた。 「ウチの自作や!どうどう!?」 黒いドレスに純白のエプロン。くるぶし丈の長さのドレスが奥ゆかしい彼に見事に合っている。純白の清潔なエプロンが、黒の美しさを最大限に引き出している。肩や裾の方に飾られたフリルと、彼の金髪に装着したカチューシャが、イザベラの理性に痛撃を与える。最早それは。 「国宝だねジュダ」 「おおきに!」「イザベラ様!?」 黒い猫耳と首輪をつけたクリストが真っ赤な顔で叫んだ。深い理性と知性を伺わせる碧眼が涙目になっている。ドレスの裾を掴んでモジモジする姿の威力は、何らかの法に触れるのでは。 「逮捕しなきゃ」「イザベラ様…?」 イザベラは反省し思考を切り替える。如何に自分のためとはいえこれはやりすぎだ。イザベラは顔を引き締めて毅然とヴリッグズの方を向いた。 「有効時間何時まで?」 「0時ジャストだ大将!」「イザベラ様ぁ!?」 「ラーバルの耳モフモフしてえ」 「どうしたの?発情期?」 訓練生寮の寮室で、ベッドの上で後頭部に手を回して寝転んでいたジーニャの呟きを、自習中のナタリアが勉強机から目を離さないままばっさり切り捨てる。 「ちげーよ、今日は猫の日なんだって」 むくっと起き上がったジーニャにナタリアも仕方なく勉強を中断し、後ろを振り向いてジーニャの話を聞く姿勢をとる。 「アイツ、猫じゃん」 ナタリアがラーバルの姿を思い浮かべる。あのケモミミは、確かに猫と言えるかも知れない。 「…それで?」 「猫の日くらいアタシにモフらせる責任がアイツにはあると思わね?」 ナタリアは天を仰いで時間を稼ぐことに決める。そっと深呼吸して頭を落ち着かせると、ソワソワして返事を待つ友に顔を向けた。 「…うん!」 ナタリアは匙を投げた。あの赤毛の少年の尊い犠牲で自分の心の平穏が保たれるのなら、安いものである。 「そうか!じゃあいっちょラーバルの耳モフモフしてくる!」 ユキヒョウを思わせる俊敏性でベッドから飛び降りると、ジーニャはラーバルの寮室に駆けていく。 嵐のような彼女の気配が完全に消えた後、また勉強机に向き直るナタリアであった。 「ダンジョンの魔法陣トラップを踏んだギルが猫になっちゃった…」 「はい状況説明ありがとさん」 現実逃避して漫才してるアズライールことハナコとスナイプを放って、メトリは目の前の猫の様子を観察する。目の前にはサイベリアンが一匹。転移の可能性もあるが、毛の色がサーヴァイン・ヴァーズギルトの髪色と一緒なのでほぼギルだろうとメトリは判断した。 「しっかし旦那もこうなっちまえば可愛いのになあ」 ギルを撫でようとスナイプを手を伸ばした瞬間。 「ぬああ!」「あだ!」 怒りのギルに引っかかれ慌てて手を引っ込めた。 「ふん、あんたナンパ好きなのに猫の扱いは駄目なのね」 「猫とナンパ関係あるかなぁ!?」 「私がギルと一番古い関係なのよ」とハナコが自信満々で手を伸ばすが。 がぶっ、とギルに嚙みつかれ無言で手を引っ込める。 「…この駄猫があ!」「躾の時間だぜ!」 激高したハナコと悪ノリしたスナイプがギルを捕まえようとするが、ギルは凄腕の冒険者二人相手に猫特有の軽い身のこなしで巧みに逃げる。 「にゃあん」「「あ」」 ギルがメトリの股の間に潜り込む。チラリと下を見たメトリは無言で股下のギルを抱き上げた。 【カツカレーの日】 「ギャンさん夕飯できましたよー」 「おうっ…お、今日はカツカレーか」 「ただのカレーじゃつまらないかなってカツ付け足してみました」 「「いただきます」」 「…そういやカツカレーで思い出したんだけどよ、昨日お昼にカツカレー弁当買ったんだ。やっすいやつの」 「えっ、じゃあカレーまずかったですか?」 「いや、そこは問題じゃねえ。というかこのカツカレーがいい。…って話が逸れたな。そしたらよ…ソースがついてねえのよ!カツカレーなのに」 「私はソースのないカツカレーもいける口ですけどねえ」 「想像してみろ。具なしカレー、べちゃついたカツ、うっすくて硬い肉、更にソースなしのカツカレー弁当を手にした光景を」 「えぐいなんてもんじゃない!」 「だろ!なんかの法律に触れてて逮捕してえなあ、って本気で思ったぞ俺は!」 「うわ、すっごい器小さい人が目の前にいる」 「おいおいサトー、お前刑事だろ社会正義を追う正義心はどーした」 「安かろう悪かろうでババ引いた自己責任に燃やせる正義心はありませーん。…というか、そんな弁当買うぐらいなら私が用意しますのに」 「あんな角の丸まってる弁当箱俺が持ち歩けるかバカヤロー」