二次元裏@ふたば

画像ファイル名:1771231412515.jpg-(28440 B)
28440 B26/02/16(月)17:43:32No.1402624207そうだねx5 19:31頃消えます
 リヨン、ブロン空港。
 リヨン市街のはずれに広がるこの小さな空港の、一番端の整備用駐機スポットに、白く大きな葉巻型の船体がゆったりと浮いていた。
 秋の午後のおだやかな陽を受けて、地上に長い長い影が落ちている。風が吹くたびゆったりと揺れるその影の中から、四人のバイオロイドが見上げている。
「地上で見ると、結構でかいわね」
 見上げすぎて後ろに倒れそうになったメイの頭を、ナイトエンジェルが無造作に支えた。
「これで先代ハーカの何分の一かのサイズだそうですよ。あらためてイカれてましたね、あの船は」
「色はこれで決定なんでしょうか?」
 ストラトエンジェルが大きな胸の下で腕を組み、首をひねる。「いささかゴージャスさに欠けるような」
「電波攪乱か何か機能性のある塗料でしょうから、そうは変えられないかと」ダイカがくるりと日傘を回した。
「せめてどこかに、私たちのエンブレムを印刷しませんか?」
「我が姉ながら自己顕示欲が強いですね」
「それくらいはいいかもね。せっかくうちの船になるんだし」
126/02/16(月)17:44:13No.1402624364+
 この船の名をハーカMk2という。
 かつてファフニールが拠点としていた超大型飛行船の技術を解析し、大幅にダウンサイジングした高速真空飛行船である。
 なかば新技術のテスト、なかば技術部の趣味によって建造された機体だが、スカイナイツのレーダーさえ欺けるほどのステルス能力は戦闘にも十分役立つ可能性がある。最も有効に使えるのは爆撃部隊だろうということで、ハーカMk2は操縦士のスターリングともども、お試しでドゥームブリンガーに配属されることになった。
「で、わざわざ視察に来たってのに、操縦士はどこにいるのよ」
「中じゃないですか」
 ナイトエンジェルが指さした先には、地面から数メートルの高さに浮かぶハーカMk2のキャビン。その側面のハッチは開け放たれ、はしごが下ろされている。
「この私にこんなものを登らせるなんて……」
「どっちにしろ登る必要はあるでしょうが」
226/02/16(月)17:44:31No.1402624443+
 停泊している飛行船の視察にきただけなので、誰も飛行装備は持ってきていない。全員ではしごをよじ登った先は狭いエアロック状の部屋で、それを抜けると空っぽの広い部屋があり、さらにドアを隔てて操縦室がある。その操縦室に入ると前面の操舵盤が開いて、中から大きな尻がにょっきり突き出していた。
「……スターリング少尉?」
「はい!? あ、お、お早うございます!」
 尻が飛び出してきて敬礼した。短く刈った藍色の髪、はしばみ色の瞳。意外と上背があり、メイは気持ちのけぞらないと目が合わない。
「ドゥームブリンガーの技術少尉を拝命しました、スターリングです! すみません、配線に気になるところがあったので……」
「仕事熱心なのは結構だけど、上官の迎えにくらい出なさい。今まではどうだったか知らないけど、うちに入ったからには……」
 メイはふと言葉を止め、眉を寄せた。
「あんた、なんかずいぶん印象変わったわね?」
「え、そうですか」
 メイの記憶にあるスターリングは、きっちりしたアテンダントスーツに身を包み、品良く切りそろえたセミロングのいかにも大型航空機の管理者といった雰囲気のある女性だった。
326/02/16(月)17:45:01No.1402624566+
 しかし、今彼女が身につけているのは下着だか水着だかわからない、局部だけを隠す黒いラバーのビキニと無骨なワークシューズ。半裸、というか八割方裸だ。髪もバサッとしたショートヘア。そして、何よりも違う点がある。
「あー……」
「スターリングさん。いえ、少尉」メイが言葉を選んでいるのを察したのか、ストラトエンジェルが代わって口を開いた。「オルカに加わる前は、ちゃんとしたスーツを着ていましたよね?」
「髪型もずいぶんイメチェンなさって」ダイカもそっと言い添える。
「というか、あなたもっと細かったでしょう。ずいぶん肉が付きましたね」一番言うべきか迷っていたところへナイトエンジェルがずばりと切り込んだ。やはり頼れる副官である。
「あ、いや、あはは……」
 スターリングは赤くなって髪をくしゃくしゃとかき回した。決まり悪げにちらちら左右を見てから、
「実は……あの時は、オルカの人達に会うからってよそ行きの格好をしてました。普段の船内ではわりと、みんなこんな格好で……」
426/02/16(月)17:45:33No.1402624698+
「まあ、そうなのですか。では、お髪(ぐし)は?」
「あ、これはハーカから飛び降りた時にちょっと焦げちゃいまして。せっかくだから髪型も変えようかと」
「肉は」
「……オルカのご飯、おいしくて…………」
「…………」
「……すみません」
 大きな体を縮こめてかしこまるスターリングに、メイはつい笑う。「別にいいわよ。オルカに来て太る子は珍しくないわ」
「そ、そうなんですか」
 実際、外部のバイオロイドがオルカに合流して体重が増えるのはよくあることだ。ただでさえバイオロイドは人間よりも必要なカロリーが多い。たいていの共同体では常に食糧が不足気味だし、そもそも美味いものを腹一杯食べた経験など一度もないバイオロイドの方が普通なのだ。ソワンやアウローラが監修した一級品の料理を好きなだけ食べられるオルカで食欲のタガが外れるのを責めることなど誰にもできない。
「でもさすがに、もうちょっと何か着た方がいいわね」
「やっぱりだらしないでしょうか……」スターリングは申し訳なさそうに、むき出しの尻や胸元をさする。
526/02/16(月)17:46:06No.1402624841+
「いや半裸の隊員なんていくらでもいるので、それは別にいいんですが」ナイトエンジェルが何やらタブレットを叩きながら、「試験配備とはいえ実戦にも出てもらいます。この船やあなたが戦闘に巻き込まれることもありえますから、最低限の防弾装備はしないと」
「そっか……そうですね。不注意でした。ありがとうございます」
「ま、それはおいおい考えましょ」メイもタブレットを取り出した。「仕様書には目を通したけど、ざっと案内してもらえる?」
「あ、はい!」スターリングがぱっと明るい顔になり、先に立って歩き出す。
「ここはメインキャビン、上がラウンジで、向こうが発着艦デッキになってます。このハーカMk2はオリジナルのハーカをおよそ1/6にスケールダウンして再設計されたもので、ご存じの通り飛行船の積載能力は気嚢の体積に比例しますので、単純計算でオリジナルの1/200になるはずなんですが、オルカ技術部の皆さんはすごくて1/100ちょっとまで抑えちゃいました。イオノクラフトエンジンと……」
「細かい理屈はあとでいいわ。つまり輸送能力は70トンくらいってことで合ってる?」
「あ、はい、そうです」
626/02/16(月)17:46:28No.1402624909+
「大型輸送機一機分くらいですか。基地代わりにするには、ちょっと物足りませんね」
「ステルス性能があって高高度で静止待機できるのは、通常の輸送機にはない強みでしょう。できるんですよね?」
「もちろんです! 電磁熱制御によるクローキングフィールドを二基の核融合炉によって……」
「理屈はいいってば。なるほど、前線補給所と考えればいいのか。今までそういう装備はなかったから、ちょっと研究する必要があるわね」
「デッキはけっこう広いですね。このへん、カタパルトやクレーンを取り付けられますか?」
「可能ですが、簡易的なものだけです。積載重量のほかに重心の問題もあるので……」
「一万メートルから二千メートルまで降下するのにどれくらいかかりますか。上昇する場合は?」
「えっと、気象条件によりますがスペック表のここんとこの数字がですね……」
「被弾時のダメージコントロールはどうしていますか? 気嚢は何層構造に?」
「離着陸に必要な地上要員は最低何人ですか」
「推進機を失った場合、どれくらいの高度まで安全滑空できます?」
726/02/16(月)17:46:53No.1402625004+
 船内をめぐりながら矢継ぎ早に繰り出される質問に次々答えていくスターリングが、ふいに目頭を押さえてうつむいた。
「…………っ」
「どうしたのよ」メイが慌てて肩に手を置く。「そんなに聞かれたくないことだったかしら、機密部位の自爆プロセスって?」
「いえ違うんです……ちゃんとした上司っていいなあって……」
 鼻をすすり上げながら答えたスターリングに、四人はしばし言葉を失う。
「あのバカ……ファフニールは私がどれだけ説明しても、ハーカの性能も構造もこれっぽっちも理解しなくて……そのくせ無茶振りばっかりしてくるもんだから本当に、本当にどれだけ苦労したか……!」
「……まあ、なんだ。あんたも大変だったのね」
 メイが差し出したハンカチで、スターリングは盛大に鼻をかんだ。
「ええと、あと見ていただいてないのは……そうだ、バラストルームは船体キールに沿って6箇所設置されてます。このデッキの床下にも一つあって、緊急時には中身を投棄すれば積載量をさらに……」
「あ」
「え」
 床のハッチを引き開けたスターリングの動きが止まった。
826/02/16(月)17:47:13No.1402625074+
 ハッチの下はバラスト水を入れる小部屋になっているが、今は水は入っていない。そのかわり何だかわからない彫刻や、絵画や、食べ物や、玩具や、そういったものがごちゃごちゃと積み上げられており、その上に寝そべったファフニールが大きなクッキーを口に運びかけた姿勢でこっちを見ていた。
「…………」
 沈黙の中、ファフニールがクッキーをかじり、残った方の欠片をそっと差し上げた。
「……食べる?」
「何やってんのアンタはあーーー!!」
 青筋を立ててスターリングが飛び降りる。「昨日試験飛行を終えたばっかなのに、どうやって入り込んだの!? どっから持ってきたのこれ!? 何自分の部屋みたいな顔してくつろいでんの!? ああもう突っ込みが追いつかない!!」
「だ、だってこれハーカなんでしょ」若干たじろぎながらもファフニールが抗弁する。「ハーカは私の船だもん。だったらこれも私の船みたいなものじゃない。ちょっとくらいいいでしょ」
「いいわけあるか! ハーカMk2はオルカの船で、これからドゥームブリンガーの船になるんです! アホのドラゴンを飼う部屋なんかどこにもないの! こんなガラクタまで持ち込んで!」
926/02/16(月)17:47:47No.1402625230+
「ガラクタじゃないわよ! 見てわからないの、新しいお宝よ!」
「わかるかあ!! 明日の朝までに全部空っぽにしなさい! いい!? 何か残っててもバラストと一緒に投棄するからね!」
「ケチー!!」

「本っ当にすみません、お見苦しいところを……!」
 いったん駐機場へ下りてから、スターリングは土下座せんばかりに深く深く頭を下げた。
「あんたが上司で苦労してたってのはよくわかったわ」メイは愉快そうに言った。
「仲がよくていいことじゃないですか」ダイカがコロコロと笑う。
「ツッコミを入れずにはいられない上官がいると大変ですよね。あなたとは仲良くできそうです」
「何か含みを感じる言い方ね?」
「おや何か心当たりでも?」
「あの……」
「本音でぶつかり合える上下関係はいいものだ、という実演です。お気になさらず」
「はあ」
 どういう顔で見ていればいいのかわからず、所在なくあたりを見回すスターリングの頭上から、甲高いエンジン音が降ってきた。
1026/02/16(月)17:49:08No.1402625538+
「お待たせしました、隊長」
 レイス、バンシー、シルフィード、ジニヤー。噴射炎の尾を引いて軽やかに舞い降りてきたのは、ドゥームブリンガーの下士官四名だ。
「悪いわね、非番の日に。全員で来ることなかったのに」
「いいえ、みんな新型を見てみたかったので。こちら、頼まれた品です」
 シルフィードが差し出した大きなアタッシュケースを受け取り、中身を確かめたメイはそれをそのままスターリングに渡した。
「着てみなさい」
「え?」

 レモンイエローと黒のフード付きテックジャケットに、黒いエナメル仕上げのソール一体型ラバーストッキング。
「わは……!」スターリングは戸惑ったような笑顔で、両手を広げてくるくると回った。「これ、いいですね! 腕の動きを邪魔しないし、軽くてあったかい」
「懐かしい! あのジャケット、昔何かのキャンペーンに出たときの儀礼装ですよね。でもストッキングなんてありましたっけ?」
「あれはフェニックス大佐がドゥームにいた時の制服の一部です。よく残ってましたね」
「両方とも防弾・防爆仕様です。特にジャケットは小型パラシュート内蔵ですから、作戦中はずっと着ていてくださいね」
1126/02/16(月)17:49:33No.1402625645+
 まだ回っているスターリングの上着のすそをダイカが直してやる。その姿を上から下まで眺めて、メイは満足そうに頷いた。
「やっぱり、うちの隊員になったからにはうちのマークが入ったものを着てないとね」
 ジャケットの肩とストッキングの留め具には、ドゥームブリンガーのエンブレムがあしらわれている。その双方をそっと撫でて、スターリングは幸せそうに目を細めた。
「で、二度手間になって悪いんだけど。あの連中に、もういっぺん案内してやってくれる?」」
 さっきから目を輝かせてハーカMk2の周囲を歩き回っているジニヤー達を。メイは親指で示す。
「はい……はい! お任せ下さい! 皆さん、どうぞこちらへ! このハーカMk2はオリジナルのハーカからおよそ……」
 喜び勇んで四人を引率し、船内へ消えていくスターリング。それを見送ってから、四人の上官は顔を見合わせて小さく笑った。
「大丈夫かしら、あいつ。どう感じた?」
「私は気に入りましたよ。素直で勤勉な子に見えます」ストラトエンジェルが大きく頷く。
1226/02/16(月)17:50:26No.1402625877+
「若干、ヴァルハラのグレムリン軍曹と似た匂いがするのが気になりますが……まあ根性はありそうで、いいんじゃないですか」ナイトエンジェルも肩をすくめる。
「私もスターリング少尉は心配ないと思いますが……ファフニールさんが気にかかりますね。やや、懲りるということを知らないタイプのお方かと見受けます」
 小首をかしげたダイカの言葉を裏付けるように、
「出てけって言ったでしょうが!!」
「明日までって言ったじゃないのー!」
 怒鳴り声がハッチの奥から聞こえてきて、四人はまた小さく笑った。
1326/02/16(月)17:50:42No.1402625938+
 なおダイカの懸念は的中した。結局粘りに粘って初出動前日まで居座り続けたばかりか、実戦配備されてからもあの手この手でハーカMk2に上がり込んではあちこちの隙間を私物化し続けたファフニールの影響で、バラストルームを物置にする風習はすっかりドゥームブリンガーに根付いてしまいスターリングは日々キレ散らかすことになる。が、新しい配属先と新しいユニフォームに心浮き立つ彼女にとって、それはまだ遠い未来の話である。

End
1426/02/16(月)17:52:17No.1402626342+
バラストルームの捨てるの嫌だから内装剥がして捨てるとかそんなんになって重心狂って操縦士が苦労するやつ
1526/02/16(月)17:52:29No.1402626397そうだねx4
まとめ
fu6304319.txt
スターリングのあれはシルエット詐欺じゃなく昔は本当にああだったのかも?という話です
1626/02/16(月)17:53:54No.1402626743+
ソワンの飯が食えるって他所のバイオロイドからしたらありえん福祉だろうしなあ
1726/02/16(月)17:54:21No.1402626853+
スターリングのアクティブ1で捨ててるゴミの中に
ハングルで「バストアップ体操参加者名簿」って書いてある紙があって
ナエンさん…!?ってなってる
1826/02/16(月)18:00:37No.1402628390+
プリントスクリーン!でやんす!
1926/02/16(月)18:04:03No.1402629236そうだねx3
初出と本実装で姿違いすぎ!問題無理矢理解決しててダメだった
2026/02/16(月)18:04:28No.1402629329そうだねx8
毎度面白いss助かる…
2126/02/16(月)18:04:47No.1402629414+
>初出と本実装で姿違いすぎ!問題無理矢理解決しててダメだった
でも本人もオルカに来る前は引き締まってたって言ってるし…
2226/02/16(月)18:31:28No.1402637499そうだねx4
バイオロイドが美味しいご飯食べるのいいよね…
2326/02/16(月)18:34:52No.1402638626+
メカニックのダッチちゃんマイナーチェンジっぽい子らも来ないかな…
2426/02/16(月)18:38:22No.1402639693+
スレッドを立てた人によって削除されました
みんな!
おまんこすぴきについてくるし!
2526/02/16(月)18:40:02No.1402640207+
いい…食え…幸せをかみしめろ…
2626/02/16(月)19:02:41No.1402647829+
>バイオロイドが美味しいご飯食べるのいいよね…
ヨーロッパ南米に続きオメガの北米もゲットしたので
「こ、こんな美味しいご飯を食べていいんですか…!?」
みたいな光景が無限に繰り広げられていると思われる
見たい


1771231412515.jpg fu6304319.txt