「この位の仄かな甘みなら良いわね」 アーモンドロシェを食べながら言うフリックルはそんな事を言いながら 食べる手を止めずにそのまま一箱完食してしまった ピコラを初め松葉粥のような苦みの強い食べ物を多くの魔女は好むが 妖精国で常食されるような強い甘みは一部の例外を除いて苦手としている 砂糖の比率を下げてカカオを多めにしたのが正解だったな そんな事を考えていると何やらそっと立ち上がった魔女の二番手は 何をするかと思いきや背伸びをしてこちらに身を乗り出し頬を抓った 「まさか貴方、使徒毎に味の調整とかしてやいないでしょうね」 「答えるまでも無いだろうが」 はぁ〜〜〜とクソデカ溜息が宴会場に響く そんなに吐いていたら幸せが逃げてしまいやしないだろうか? こっちに来て座れ、とうジェスチャーに促され 宴会場の椅子に座ると彼女はそのまま私の膝の上に乗ってきた おっとこれはガチの奴だな? 「貴方ね…仮にも一国の重要な立場のある人間が普段の業務もある中で 自分からタスクを増やして部下に良い顔をするのにも限度があるんじゃないかしら」 こちらのクマを指で触りながらいってくる まあそう言われてしまえばそうにないのだが 大体部下でもないし、どちらかといえば迷惑をかけられまくる事も多いし ついでに素行も言動も怪しい連中が殆どだとは思うのだが、まあ それでも折角の機会だし親しくしてる相手には美味しく食べて貰いたいだろう 「限度!」 はい。そうですね気を付けます とはいえ指摘して満足したのかフリックルが私の膝の上から降りる 「で?貴方みたいな人間の好みのロシェの味を知りたいのだけど」 フリックルがお菓子作りをするというのである 友人として、共通の趣味を持てるのは悪くない だが教えるには生憎宴会場の調理場は私に最適化されており彼女には不向きだろう かといって妖精国の誰かのキッチンを借りるにはよからぬ噂を立てられそうだし そんな理由から私はフリックルの家に向かう事にした 「あ。ちょっと私は半日程フリックルの家にいるから」 宴会場の入口で出会ったエレナなどはそれを伝えるとそのまま棒のようにパタリと倒れたが 恐らくは徹夜の疲れがきたのだろう。駆け寄って来た秘書に任せその場を後にする 結局の所頭が良く要領が良い者というのは何をしても上手いもので 数時間の格闘であっという間にアーモンドロシェを物にしてしまった そして完成品をフィリックルが私に突き出し勢い余って指までも咥えさせられる 「味はどうかしら」 「うん、上出来だな」 私の口元から出た指にはまだチョコレートがついていたが 勿体無かったのかフリックルはそのまま指を舐めとり綺麗にしていた はしたない。ピコラが見てたらどうするんだ 「甘いわね」 「だろうな。私好みの味だから」 「悪くないわ」 そんな風に、最初にロシェを食べた時と同じ感想を魔女は満足げに漏らしていた。