二次元裏@ふたば

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71951 B26/02/03(火)17:57:47No.1398485520+ 19:50頃消えます
「仮に会場を変えるとしたら、候補はどこがあります?」
「立地的には今がベストなんですよね。ただ設備の点では……」
 都内某所、地酒が豊富な居酒屋。
 月一回のURAとのミーティングの後はここで彼と、打ち上げを兼ねて今後の相談をするのが定例になってもうだいぶたつ。
「旭川に大きなスタジアムができるそうじゃないですか、あそことか。あ、都留岐さん次何飲まれますか」
「あんな鳴り物入りのハコ、三年先まで埋まってますよ。一応キャンセル待ちは入れてますけど……『真稜』の山廃純米お願いします」
「すみませーん、『真稜』と『富士大観』を冷やで一合ずつ」
「大丈夫ですか?」
「水も飲んでますから。でも僕はこれで最後にします」
 すこし前まで飲み会のたびに潰れていた彼だが、最近は随分といけるようになった。私としょっちゅう呑んでいるせいかもしれないと、少し申し訳なくも思う。
「しかし、どうにも決め手を欠きますね」
「ううん…………」
 ここ数回、酒の席の話題は決まっている。U.A.F.(ウマ娘アスレチックフェスティバル)第三回大会のことだ。
このスレは古いので、もうすぐ消えます。
126/02/03(火)17:58:16No.1398485625+
 昨年末に開催された第二回大会は競技的にも興行的にも、第一回を上回る大成功に終わった。現役でトゥインクルシリーズを走っているトレセン学園のウマ娘達がU.A.F.に関心を持ってくれたことで、大会の知名度とレベル、双方が跳ね上がったのが最大の理由なのは間違いない。トレセン学園とのパイプ役件アドバイザーとして、準備委員会の段階からずっと協力してくれていたこの人にはいくら感謝してもし足りない。
 しかし同時に、第二回では今後の大きな課題が浮き彫りになった。端的に言えば、トレセン学園生が上位をほぼ独占するようになってしまったのだ。
「結局もっと戦略性のある、複雑な種目を導入するほかないんですかね」
「でも既存のスポーツに寄せすぎても仕方ないでしょ。競技内容を頻繁にいじると参加者も混乱しますし……」
 考えてみれば当然のことだ。ウマ娘スポーツといえばレース、という社会通念が厳然と存在する以上、身体能力の優れたウマ娘はまずレースの世界を目指す。国内最高峰のレースであるトゥインクルシリーズを走っているウマ娘は、すなわち全国から選び抜かれた最高のフィジカルエリートでもあるのだ。
226/02/03(火)17:59:18No.1398485823+
「U.A.F.の理念の一つは『ウマ娘の身体能力の高さを魅せる』ことですから。トレセンの子が強いのはある意味当たり前でもあるのですが……」
「なんか、すみません」
「いえいえ」
 申し訳なさそうに頭を下げる彼のお猪口に酒をそそぐ。もちろんこの人が悪いわけではない、そんなことはお互いわかっている。
 しかし、「レースの世界以外でもウマ娘が輝けることを示す」ことがU.A.F.のもう一つの理念だ。そのために開催した大会で現役レースウマ娘が無双したのでは、開催の意義自体が瓦解してしまう。
「そうなると、なんとかしてレースウマ娘の参加枠を絞る方向でしょうか。でも今のまま、ただ枠を減らしても『格付けが済んだ』みたいな感じが出ちゃいませんか」
「出ちゃいますね……殿堂入りみたいな感じで、ライバルというかちょっとヒール寄りのチャンピオン枠にするのは?」
「面白いですが、レースの世界での印象もありますからね。そのポジションでやっていける子は限られますよ」
「なんとかトレセン生に一矢報いた上で、今後は別の道を進む、みたいな流れに持っていければねえ……」
326/02/03(火)17:59:46No.1398485938+
 続けられる言葉がなくなり、お互いの沈黙が店内の喧噪に飲み込まれてゆく。
 しばらく黙々と杯を口にはこんだ後、いくらか据わった目で彼が言った。
「……これは、ただの思いつきなんですが。ソノンエルフィーを、うちのチームに預けてみませんか」
「トレセン学園に!?」
 私は目をまるくした。彼がぐっと身を乗り出してくる。
「そもそも、U.A.F.のトレーニングがレースにも有効だというのが事の発端じゃないですか。その逆もあるかもしれないでしょう」
「エルフィーを鍛えてくださるということですか? でも……」
 確かに、エルフィーは今なおU.A.F.アスリート側のトップ選手の一人だ。さっき私が口走った「トレセン生に一矢報いる流れ」を実現するなら、あの子が第一候補になるだろう。
426/02/03(火)18:00:16No.1398486054+
 まだU.A.F.が準備段階だった頃、コラボ企画の一環として一日だけエルフィーにトレセンのトレーニングを受けてもらったことがあった。その時担当してくれたのも彼だ。あの一日で、エルフィーのパフォーマンスは目に見えて向上した。確かに本気で鍛えてくれたらあるいは……と思いはするが。今や押しも押されもしないトレセンの主力トレーナーである彼に、レースに出るわけでもないウマ娘の面倒を見る余裕などあるのだろうか。
「おかげさまでうちのチームも大きくなったので。サブトレーナーもいるし、リッキーも一山越えてくれたし、今なら多少の余裕はあります。それに、“紺さん”覚えてますか。あの人いま学園の嘱託になって、うちのサポートに入ってくれてるんです」
「紺さんが?」
526/02/03(火)18:00:38No.1398486143+
 私はもう一度驚いた。いつも紺色のハット帽とジャンパーを身につけて、皆から“紺さん”というあだ名で呼ばれていたベテラントレーナー。エルフィーの現役当時のトレーナーだった彼もまた、引退前の最後の仕事だと言ってU.A.F.開催に尽力してくれた。紺さんと彼の二人がいなかったら、U.A.F.をこの規模で、この時期に開催することなどできなかっただろう。
「エルフィーが来たら、紺さんも喜びますよ」
 彼は自分の思いつきに、ひどく乗り気のようだった。酔った時はたいていそうなのだ。本人の意志を確かめてから……ということにしたものの、
「トレセンで鍛えてもらえるんですか!? 面白そうじゃないですか、ぜったい行きます行きます!」
 行動力と好奇心の塊のエルフィーが断るはずもなく、エルフィーは研修生という名目でトレセン学園の彼のチームに加わることになった。
626/02/03(火)18:01:38No.1398486351+
 * * *

〈坂路のトレーニング終わりました。昔からちょっと苦手でしたが、やっぱりきついですね!〉

 「頑張ってね」のスタンプリストの中から、今日まだ使っていないやつを選んで送信する。
 研修生はトレーナー寮に部屋を与えられる。あちらへ泊まり込むようになってからというもの、エルフィーからは毎日二時間に一本ペースでLANEが来る。学園での生活がよほど刺激に満ちているのだろう。
 トレーナーさんのチームには今、ドリームトロフィーリーグのウマ娘も何人か在籍しているという。学園のOGで、しかもレースの世界では目立った成績を残せなかったエルフィーがどういう目で見られるのか不安だったが、基本的にそちらに交じってトレーニングをしているというのなら一応は安心できる。
 などと思っていたら、

〈高等部の子たちに誘われて、一緒に筋トレをした写真です。くー、みんな若い! まぶしい!〉
〈今日はクラスメイトだったフラッシュさんが遊びに来てくれました! 当時はあまり話しませんでしたが、なんと私のチャンネルを見てくれているそうです!〉
726/02/03(火)18:01:57No.1398486434+
 現役の子ばかりか学生時代の同期とも当たり前に交流しているようで、ちょっと拍子抜けしたりする。大抵の相手と心から仲良くできるエルフィーの明るい社交力は天性のもので、ウマチューバーとしては得がたい資質だ。スキルとして人付き合いを身につけただけの私にはちょっとまぶしく感じられることもある。
 本人の自己申告だけでは不安もあるので、一応トレーナーさんにもエルフィーの様子を聞いているが、

〈熱心なだけじゃなく色々と手伝ってくれて、かえってこちらが助かっているくらいです。正直サブトレーナーにスカウトしたい〉

 とのこと。U.A.F.の競技種目は今ではオプショナルトレーニングとして学園の教本にも載っているほどだから、エルフィーがアドバイスできることも色々あるのだろう。お世話になるばかりでは申し訳ないから、そういうところで役に立っているのならこちらも嬉しい。

〈あげませんよ〉

 とだけ返事して、私はノートPCにもどる。
826/02/03(火)18:02:10No.1398486479+
 メッセージだけでなく、エルフィーからは動画も次々送られてくる。トレセン学園での鍛錬の様子もコンテンツとして配信するためだ。一緒に映っているウマ娘の配信許可なども確認しないといけないので、普段より手間がかかる。エルフィーにはトレーニングに専念してほしいので、編集は私の仕事だ。
 トレーナーさんから資格取得の誘いなんか受けたら注意するよう念を押しておこうか。などと冗談交じりに考えていた昼下がり、

〈コパノリッキーさんと会いました。 〉

 そんな一言が、エルフィーから送られてきた。
 その日のメッセージはそれで終わりで、夕方も、夜も、彼女は何も言ってこなかった。
 翌日にはまた明るい普段の調子に報告が届き、週末に会った時も特に変わりはなかったので、私は聞くことができなかった。句点の後の空白に、何を書こうとしてやめたのか。
926/02/03(火)18:03:49No.1398486849そうだねx2
すごい長くなったので続きです
fu6250575.txt

涼ソノ前提のトレ涼交流というか
トレーナーに恋愛感情はないけど仕事仲間としてはめちゃくちゃ心を許している都留岐さんが突然無性に書きたくなった
1026/02/03(火)18:13:27No.1398489279そうだねx2
都留ソノ怪文書初めて見た
1126/02/03(火)18:44:34No.1398497367そうだねx1
>〈あげませんよ〉
湿度〜
1226/02/03(火)18:47:36No.1398498242+
ちなみになんでリッキーなの?
1326/02/03(火)18:52:22No.1398499499そうだねx1
こういう強かな涼花さんもいいね…
1426/02/03(火)18:56:47No.1398500696+
>ちなみになんでリッキーなの?
エルフィーの元ネタであるオースミイレブンより若いダートウマ娘が
タルマエ(二歳下)とリッキー(三歳下)しかいなかったからです
UAF開始時点でエルフィーが大学生なのを考えるとリッキーの方がいいかなと
1526/02/03(火)19:00:23No.1398501654+
なお最後に出てきた越後武士ってお酒は46度あるという冗談みたいな日本酒である
1626/02/03(火)19:12:10No.1398505039+
>>ちなみになんでリッキーなの?
>エルフィーの元ネタであるオースミイレブンより若いダートウマ娘が
>タルマエ(二歳下)とリッキー(三歳下)しかいなかったからです
>UAF開始時点でエルフィーが大学生なのを考えるとリッキーの方がいいかなと
なるほどなあ
1726/02/03(火)19:12:20No.1398505087+
元戦争マシンなのは確定うんちよ
1826/02/03(火)19:12:24No.1398505109+
>なお最後に出てきた越後武士ってお酒は46度あるという冗談みたいな日本酒である
エルフィーを酔い潰してどうするつもりなの…
1926/02/03(火)19:36:26No.1398512578+
リビングに日本酒セラー置いてるのはなかなかの酒カス力


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