「おーっす、生きてる?」 彼女の言葉はひどく軽い。宛名を書き忘れた風船のように。 顔だけは知っているような知人に、ふと町中で声を掛けた風でもあった。 少なくともそんな関係性の相手の後頭部を、こぶができるほどがつんと殴ることは普通はない。 装具から爪のように飛び出した電極を突き立てられていないだけ、マシというものだろうか。 表と、裏。ミュージシャンと、殺し屋。そのどちらが本質なのか―― そんなことを問うのは無意味だった。彼女は頭の中のスイッチを切り替えるまでもなく、 ごく自然に、“やるべきこと”をやれる。たとえそれが、ボスに与えられた暗殺指令でも。 痛む身体を引き起こして向き直った俺のすぐ前に、彼女は中腰でいる。 そしてその赤い瞳が、じっと、目の前の男を見ているのだった――血のような、赤。 「またレコたちに痛い目に遭わされたん?」 ひどいねー、とまた軽い口調で同情するフリだけしながら、腰を下ろし、座る。 こちらから肌が見えようが見えまいが、もとより、何も気にしていないようだった。 むしろ――反応を返すこと自体を、自分の外見の良さを再確認する材料にしている。 キュー、と呼ばれ――自称もする――あの青髪の少女に比べて、“可愛さ”よりも、 男の懐にするりと入り込んで、友達としての関係性を作り上げてくるような、怖さがあった。 「――見たいんでしょ」 片側だけが裾の短いホットパンツ――それは当然、しゃがみ、座れば左右の不均衡によって、 若々しい肌を、直接的に見るものの視界に届ける。汗の薄っすら浮いた、張りのある肌。 「見ても怒んないの、ウチだけだよ?」 にたにた笑いながら、指が裾をさらにまくる。下着ごと、その存在が証明されてしまう―― なのに、ぎりぎりのところで、手は静かにすっと下に降りていき、 内心に期待していた俺を嘲笑うかのように、蝶めいてひらひらと踊るのだ。 「ウチが一番かわいいってみんなの前で言ってくれたら――」 顔を寄せての、悪魔の囁き。表情は見えない。だが、目が笑っていないのは、わかる。 もし、彼女の言葉を否定したら――その結果は、言うまでもないことだろう。 俺は脂汗が腋にじんわり浮くのをひどく不快に思いながら、言葉をゆっくりと探す――