サンク=マスグラード帝国・帝都内の路地の一角、そこに二人の軍服を着た男女がベンチに座っていた…。 「なぁ…本当にこんなところで大丈夫なのかよ…」 左目に眼帯をした少女が不安げに問いかける。 「しょうがねぇだろ、人目のあるところじゃまずいし…」 赤髪の少年が照れくさげに返す。 「でもさ、もっとこう雰囲気とかムードとかあるだろ…」 「わかったよ…これでいいんだろ…」 眼帯の少女のダメ出しを聞いて、赤髪の少年が少女の肩を抱き寄せる。肩を寄せた瞬間、二人の視線が重なる。息遣いも届くような突然の距離に緊張が走る…。 しかし五分十分経っても彼らに動きはなかった。その時物陰から躍動するような動きで一人の男が動き出した。 「フッ!ハッ!ラーバル!どうしてチューしない!」 声の主は覆面姿の大男、レンハートマンホーリーナイトであった。 「出やがったな!この変態仮面! こうやってイチャついてる感じを出したら食いついてくるかと思ったら案の定だ! 神妙にお縄につけ! 治安維持部隊のみなさーんお願いしまーす!」 赤髪の少年ラーバルが呼子を吹くと、周囲の建物や路地から白い制服を着た治安維持部隊の隊員たちがゾロゾロと出てくる。 大勢の隊員に囲まれたレンハートマンホーリーナイトはラーバルに向かってこう叫ぶ。 「いいかラーバル!まずお前に言っておく。私が着けているのは仮面ではない!覆面だ!」 「そんなことどうでもいいわ!変態は否定しないのかよ! 捕まえてそのお面をひん剥いてやるからおとなしくしろ!」 「貴様らごときにまだ捕まるわけにはいかない!」 覆面男はそう言うとパルクールの要領で建物の壁面を登り始める。 屋上まで登り切ったと安心した瞬間、何者かに突き落とされる。こんなこともあろうかと屋上にも人員を配置していたのだった。 地面に向かって落下する彼を何者かがピックアップする、それは背中に翼を生やした少年ブラックライト改めホワイトライト。レンハートマンホーリーナイトことコージン=ミレーンの相棒である。 「あっ!ライト!余計な真似しやがって! 待ちやがれー!お前ら二人とも逮捕だー!」 ラーバルが覆面男を追いかけようと走り出す。続いて眼帯の少女ジーニャも走り出すと大勢の治安維持部隊員もそれに付いて行く。 空中からその光景を見ているとライトはル覇ン三世の魔ニメでこんなシーンあったなぁ…とふと思い出すのであった。 *  *  *  *  * ラーバルは焦っていた、この千載一遇のチャンスを逃してはなるかと…。 ラーバルたち訓練兵も訓練期間も終盤を迎え、実地訓練として第6班には治安維持部隊での研修が行われている。 かつての大粛清時代においては逆臣やそのシンパを炙り出すべく、異世界における新●組やゲシュ●ポばりの苛烈な捜査摘発を行っていたがそれも今は昔。 一応ではあるが平穏を取り戻した今は町のお巡りさん的な存在として民からの信頼も取り戻しつつある。 全員が王家親衛隊を目指す彼らからすると不本意な派遣先ではあるが、元々親衛隊は完全実力主義で新人が入らない年があることも珍しくはない。 だったらこの研修期間内に成果を出して親衛隊に抜擢してもらおうと、第6班のメンバー同士で誓ったのであった。 ラーバルは成果を出そうと焦る余り、やらかしも多く生んでしまった。 だがそのやらかしが原因で例のレンハートマンホーリーナイトと幸か不幸か出会うのであった…。 彼との出会いはラーバルが商店主に因縁をつける荒くれ者を捕縛しようとした時であった。 ラーバルが荒くれ者の腕を取りねじ伏せようとしたところ、荒くれ者は仲間を呼び囲まれることとなった。この多勢に無勢の状況へ乱入してきたのが件の覆面男であった。 「囲まれたぐらいでなぜ攻撃を止める!ラーバル!お前は甘い!」 彼はそう叫ぶと荒くれ者たちをなぎ倒し、そして去って行った。 短時間の内に突然起きた怒涛の展開にラーバルは呆然としたが、気を取り直すと何でアイツ俺の名前知ってんだ?!怖っ!と一抹の不安を感じた。 その予感は不幸にも的中し以後も幾度となく現れては彼から理不尽なダメ出しをされ、同僚のジーニャと一緒にいるとまるでどこぞの気ぶり仮面かのごとく煽ってくるので、終いには彼の姿を見るとうわ…出たよ…と嘆くまでになった。 そんな状況が一変したのが初めての出会いから1カ月ほど経った頃。 レストロイカ帝とレンハート姉妹とのお見合いイベントをレンハートマンホーリーナイトが強襲し台無しにしたことである。 自分の預かり知らぬところで計画された縁談であったが、ラーバル自身はこの話に大いに期待もしていた。 両親よりも尊敬するレストロイカ帝が自分の義兄弟になるかもしれない。 誰が結ばれるかは分からないがきっと彼なら姉妹を幸せにしてくれるだろうと…。 だがその期待は乱入者の仕業によってもろくも崩れ去った。しかもその犯人は自分に付き纏っていた不審人物である。 これはもう腹を切って詫びるしかないと悲壮な覚悟を抱きレストロイカ帝に謝罪へ行くも、帝からは「気にするな。こちらとしてはむしろ結果オーライだ。ドンマイドンマイ」と、機嫌が良かったのか今まで見たことないような軽いノリで済まされてしまったのでやり場のない気持ちだけが残された。 だが複雑な感情を抱えていたのはラーバルだけはでなかった、お見合いイベントの首謀者であった参謀クァン=ヴェイクロードもその一人である。 帝に無理やりにでも縁談を結ばせる必勝の策を潰されたとして、憎きレンハートマンホーリーナイトを捕えるべく彼を不敬罪の咎人として国内全域に指名手配をしたのであった。 この措置を知り喜び勇んだのはラーバルであった。奴を捕まえれば汚名返上できるだけでなく参謀からの評価も間違いなく上がる。 アイツはまた自分の元にノコノコ現れるだろうと予想し、自分をエサとして仕掛けたのが冒頭のシーンだった…。 *  *  *  *  * 「まったくいい加減にして下さいよ。完全にお尋ね者になっているんですから、その恰好でうろつかないで下さい」 帝都の外れにある貧民街の一角、元倉庫であったであろう廃屋にレンハートマンホーリーナイトことコージン=ミレーンと彼の相棒ブラックライト改めホワイトライトがいた。 どうやらここは彼らのアジトのようであった。 「とは言ってもなぁ。素顔で動き回るにもレンハートからは俺の捜索願の手配状が回っているので、見つかれば国に強制送還されるから…」 覆面を脱ぎながらコージンが言う。 「だからといって覆面被って余計に危ない橋渡る必要ないでしょ。大体何度僕がその尻ぬぐいしてあげたと思うんですか! おかげで僕までラーバルくんに顔と名前覚えられちゃったじゃないですか」 最初の旅を終え人間に戻った二人だったが、今度はミレーンの中にある忌器を完全に破壊すべく再度旅を開始した。 その最初の目的地に選んだのはミレーンの弟であるラーバルが滞在するマスグラ。 当初の目的はライトに弟を紹介することであったが、先述の素顔を出せない理由のせいで覆面姿にて行動することとなり、様々なやらかしもあり紹介するどころではない状況となっている。 最も度々ライトがミレーンの後フォローをしているせいで、当のラーバルには顔と名前は覚えられてしまったようではあるが…。 「でも兄弟なんだから素顔で会いに行って、周りには内緒にしてくれって頼めばいいだけじゃないですか」 「それがなぁ…。距離感を測るためにラーバルの奴に兄について聞いてみたら『兄は死んだ。仮に生きていても二度と見たくない』とうんざりした顔で言われてなぁ…。名乗るに名乗れん状況なのだよ…」 ダメだこりゃというテンションでライトはため息をつく。 「とりあえず買い出しに行ってきます。ミレーンさんはここでジッとしていて下さいよ。暇だったら新しい変装でも考えていて下さい」 ライトは前の旅でも愛用していた外套を纏い、フードを目深に被り出て行く。 「せっかく人間に戻れたのに、何でまた顔隠してこそこそしなきゃいけないんだろ…」 筋向いにある廃屋の一室から双眼鏡でミレーンとライトのアジトを覗き込む者がいる。 「竜の少年とその相棒にレンハートの第一王子。なるほど確かに報告書の通りでしたな…」 *  *  *  *  * 買い出しを終えたライトは川沿いにある公園のベンチに腰かけている。夕刻の陽が落ちかけて始める時間帯、心地よい川風を浴びているライトに声をかける者がいる。 「よぉライト!どうやら無事だったみたいだな!」 声の主はイワン。訓練兵第6班所属でラーバルの同僚。彼もまた治安維持部隊の研修生でもある。 「あぁイワンくんか。うちの相棒がまた騒ぎを起こしてゴメンね。そっちは結局どうなったの?」 「お前らが空飛んでブッチ切って行っちまったからラーバルの奴もうおかんむりだよ。ジーニャの奴は『せっかく協力してやったのに、詰めが甘いんだよお前は!』って鬼の首取ったかのようにガン詰めしてたし」 「まぁ今更なんだけどイワンくんは僕のこと捕まえなくてもいいの?」 「お前には借りがあるからな。それに表向きにはお前はまだ指名手配されていないから、俺は捕まえなくても大丈夫ってわけだ。最もそれも時間の問題かもしれないけどな!」 イワンがにやけながら笑えない冗談を飛ばす。 イワンとの出会いはライトがマスグラに来たばかりの頃に遡る。 観光気分で街をぶらついていたところ、ひったくり犯を追いかけているイワンと遭遇。 身体強化を使って猛ダッシュで追跡し逮捕に協力してあげたのが縁であった。 前回の旅もそうであったが出会う人間は大抵自分よりも離れた年上の人間ばかりで、同年代の人間と語らうことは珍しい。 いつの間にか時折会ってはどうでもいい世間話をするようになった。 ライト自身はイワンのことは友人と呼んでも差し支えない間柄だと思っている。 ただ言われているだけでは口惜しくなったライトが反撃の糸口を切り出す。 「あっ、そういえば前に言ってたあの子とはどうなったの? 同じ班にいる同僚の子だっけ。デートに誘おうとか言ってたじゃん」 突っ込まれたくない話題を言われてイワンが動揺する。 「おまっ、よくそんなこと覚えてるな?! いや、まぁ、全然かな…。相手の子がさぁそういうことに興味がないって言うか、雰囲気作ろうと思ってもスカされちゃうっていうか…」 会話のイニシアティブを取れたせいかライトは上機嫌になりさらにたたみかける。 「デートじゃなくまずは買い物付き合ってもらうとかでいいんじゃない。これは僕と一緒に旅をしていたゴウさんって人が言ってたんだけど、女の子って自分から行くのは恥ずかしいって気持ちがあるから、時には無神経なぐらいに押してやる方がいいんだってさ」 「マジかよ?! でもそうなのかなぁ…。もし押してダメだったらどうすんだよ!」 「その時は素直にごめんなさいして、またの機会に再度押す。そんでダメならもう諦めろって言ってた」 「何のアドバイスにもなってねぇぞそれ! ふざけんな!こっちは真剣なんだよ!」 「ごめんごめん。でも待ってるだけじゃ何も始まらないってのは本当だから…」 「ん~やっぱそうだよなぁ…。あっいけね!もうこんな時間だ。サボってるのがバレたら大目玉食らうから、じゃあまたな!」 職場に帰って行くイワンを見送ると、ライトは買い出しの荷物を抱えて家路へと急いだ。 ライトがアジトに戻ると見知らぬ出で立ちをした男が中にいた。新たな変装姿をしたミレーンであった。 どこで手に入れたのかは分からないが赤いノースリーブのジャケットに赤い革の長手袋を身に着け、顔はサングラスで隠している。 「いったいどうしたんですかその恰好?」 「見ればわかるだろう。俺の新しい変装だ!」 「コージン、ミレーン、レンハートマンホーリーナイトに次ぐ四番目の顔だから、名はクワト…「あぁもうわかりました!こっちはツッコむ気力もないんで終わりにしますよ!」 *  *  *  *  * 数日後ライトはいつもの時刻いつもの川沿いの公園で、いつものようにイワンと与太話に興じている。 会話の途中イワンが何かに気づいたように視線を外した。 「どうしたのイワンくん?」 「いやあの子、さっきから木を見上げたままずーっと動かないなって…」 そう言われると妙に気になり出したので、二人はその女性の元に行ってみた。 近づいてみると一人の少女が高く生えた木の上の方を見上げながら、何か困っている様子であった。 「あのどうかしたんですか?」 ライトが恐る恐る問いかけると少女が申し訳なさそうに答える。 「風で帽子が木の上の方まで飛ばされてしまいまして…」 「マジかよ…。俺高いとこ苦手なんだよ…」 イワンが先手を打って高所恐怖症アピールをする。これは明らかにライトお前がやれよという無言の圧力であった。 「えぇ…しょうがないなぁ…」 ライトが自分の身の丈から一番近い太めの枝を掴むとまるで猿のように登っていく。 「(飛んだ方が楽だけど、さすがに知らない人の前で羽を出したらドン引きされちゃうからな…)」 ライトは帽子を回収するとそのままスルスルと降りて来た。 「はいどうぞ。この辺川沿いだから風が強いんで気を付けてね」 ライトが少女に帽子を渡す。少女がお礼でもと言いたげな様子を見て、ライトは気にしないでいいですよと言い、イワンと共にその場を去って行った。 翌日ライトがいつもの時間いつもの川沿いの公園のベンチに座っている。 待ち人のイワンはまだ来ない。特に約束をしているわけでもないから当然なのではあるが。 「イワンくん遅いな。今日は仕事忙しいのかな…」 ライトが諦めて帰ろうとした時、彼に声をかける者がいた。 それは帽子を被った金髪の少女、昨日この場所で出会った女性であった…。 *  *  *  *  * 時間は数日前に遡る。マスグラード帝国皇城内の通路を二人の軍服姿の男女が歩いている。 軍服を窮屈そうに着ている大柄の少年と対照的に小柄な金髪の少女であった。 「なぁナタリア、俺さぁ今履いてるブーツがもうボロボロになってきたから、今度買い換えようと思うんだよ。できればカッコいいのが欲しいから、よかったら一緒に見立てに行ってくれないか」 「イワンくん、訓練兵が身に着けていいのは支給品だけよ。新しいのは配属が決まってから買いに行って下さいねっ」 「(相変わらずのらりくらりとガード固いなぁ。何か上手く行く気しねぇ…。でも押せ押せで行くのがいいんだよな!)」 イワンが改めて押そうと思った時、ナタリアが不安げな様子で話題を変えた。 「6班全員じゃなくて私たち二人だけ呼び出しって何があったのかしら…。しかも参謀室にだなんて…」 ナタリアの不安はもっともではある。呼び出しの主は帝国の黒梟の異名を持つ参謀クァン=ヴェイクロード。 優秀な軍師であり政務官でもある彼はかの大粛清時代に謂れなき罪で投獄されていたのをレストロイカ帝により救出され、その恩に報いるべく逆臣たちを様々な策を用いて打ち破り多くの屍を積み上げた功労者でもあった。 勝つためにはどのような手管でも使うという彼の信条は、時に味方の犠牲を前提とした策を取ることもあり、配下の者からは自分たちがいつ捨て駒にされるのではという疑心を生むことも少なくなかった。 「まさか…人間爆弾になれとか言われないよな…」 イワンが恐る恐るこぼす。 人間爆弾。人間に大量の爆弾を巻き付け敵陣に突っ込み自爆する特攻作戦。実際に行ったのはウァリトヒロイの反社会組織であったが、ヴェイクロードならやり兼ねないという最悪の予想が頭をよぎったのである。 二人は参謀室の前に到着しノックをして部屋に入る。中には参謀クァン=ヴェイクロードが机で事務作業を行っていた。 「あぁ君たちか…。立ち話もなんだから席に座り給え」 ヴェイクロードは応接セットのソファに二人を座らせ、自分もそこに移動する。 「単刀直入に言おう。君たち二人に任務を頼みたい。これは極秘の作戦なので他言を禁ずるが良いか」 一体何をさせられるんだ?と不安がる二人の前にヴェイクロードは一枚の写真を渡す。 それを見てイワンは声にならない驚きの表情を見せる。その写真に写っていたのはライトであったからだ。 「(ひょっとして俺が見逃していたのがバレた?! まさか本当に人間爆弾コース?!)」 「知り合いの写真を見て驚いたかね? 君がこの少年と付き合いがあるのは知ってはいるが別にそれを咎めようというのではない。むしろ彼との友好を大いに深めてもらいたいのだよ」 不安から解放され拍子抜けしたイワンにヴェイクロードはさらに畳みかける。 「このホワイトライトという少年はレンハートマンホーリーナイトという男と共に邪竜オジ=ダハーカを討伐したPTのメンバーであり、強力な力を持つ冒険者でもある。知っての通り我が国は大粛清の混乱以後、国軍の戦力は数質共に大いに疲弊している。よって彼のような強力な戦力を引き込むために、君たちには引き留めるための工作を行ってもらいたいのだ。どのような手段を使ってもね…」 「でも彼には何とかマンとかいう相棒がいるんですよね。そっちがこの国から出ると言ってしまえば、我々が何をしても付いて行ってしまうのではないのでしょうか?」 「そちらに関してはラーバル訓練兵に任せている。あの二人は主従関係ではなく対等なパートナーのようだから、本人が留まる意思を表明すればすんなり解消できるはすだ」 「すみません…私は一体何をすればいいのですか…?」 会話の蚊帳の外にいたナタリアが恐る恐る声をかける。 「先ほど私は言ったはずだ。彼を引き留めるためならどんな手でも使えと…」 「真っ正直に誠心誠意説得するも良い。情に訴えるのも良い。何なら女の武器を最大限に使うのも効果的だ。以上だ。他に何か質問は?」 女の武器を使うという言葉を聞いてナタリアの顔が引きつる。まずい空気を察したイワンが間に入る。 「失礼ですが参謀、そういうのってコンプライアンスとかハラスメントとか今の時代色々まずいんじゃないのかな…って…」 ヴェイクロードはハァとため息をつくと二人に言い聞かせるように話す。 「君たちは確か王家親衛隊に配属希望だったな。親衛隊とはただの腕自慢や技自慢が集まっている組織ではない。時には暗殺や篭絡といった汚れ仕事を顔色変えずこなす者が集まる鉄の組織だ。少年一人を我々に取り込むぐらいの簡単な仕事ができないようでは、とても親衛隊には向いているとは思わないがね…」 「親衛隊に入るためなら、いかに身を持ち崩そうがいかに穢されようが構わないという者は他にいくらでもいる。返事はできるできないではなく、やるやらないで答えて欲しい。やらないのであれば他の者に頼むだけだ」 王家親衛隊という言葉を聞いてナタリアが決意を固める 「わかりました。やります…」 「イワン訓練兵、君は?」 「えっ、あの、やります…」 二人の返事を聞くとヴェイクロードは執務席に戻り事務仕事を再開する。部屋を出ようとする二人に励ますような言葉をかける。 「これはアドバイスだが、イワン訓練兵のようにまずは友達になるところから始めると良いと思うぞ。若い男は単純だから同じ言葉でも女性から言われる方が効く。それも女の武器のひとつだと思ってくれ…」 参謀室を出るとイワンがナタリアに大丈夫かと声をかける。 「大丈夫…。私だけ取り残されるわけにいかないから…」 *  *  *  *  * イワンとナタリアが出て行った後、入れ替わるように参謀室に一人の男が入る。皇帝レストロイカの執事長を務めるヴィクトールである。 「アドバイスとは若者には大分お優しいではないですか参謀…」 「そうでもないよ。いつまで経っても煮え切らないから少し背中を押してあげただけさ。ヴィクトール、君は男女の友情というものが成立するとは思うかね?」 「唐突にこれは何ですかね…。まぁいいでしょう答えはNOです」 「さすがだね正解だよ。男女というものは最初友人だと思っていても、付き合いを深めて行けばいずれ相手に異性を感じてしまう。そうなれば一気に性の対象へと移行して対等な友人関係というものは破綻する」 「唯一の例外はお互いが利害の対象外だった場合だな。双方がこいつとは無理と思う悪い意味での均衡が取れていることで友情が辛うじて成立する。よく女性が言うあなたとはお友達でいたいという言葉は、裏を返せばお前を性的に見ることは無理だという拒絶と受け取っていい」 「では先ほどの友達になればいいという言葉は?」 ヴィクトールが興味深げに質問する。 「ナタリア訓練兵は見た目も愛想も良い。交際を深めて行けば自分ではそう思ってなくてもターゲットの方から入れ込んでくるはずだ。そうなった時に彼女がどう転ぶかは見ものだな。何せ任務という立場で退路を断っているわけなのだから。拒絶をしてご破算にするのか?それとも割り切って受け入れて兵士として一皮剥けるのか? 私としては後者になる方を期待しているがね…」 「なかなか意地の悪い。そのような色仕掛けでしたらウチの娘でも使えばよろしかったのでは? 人を誑かすのは得意だし好きとも言っておりましたよ」 「残念だが君の娘では無理だな。どんなに表情や言動を取り繕っても底意地の悪さが透けて見える。そこらの若造やスケベ親父ならコロっと騙せるが、いくつも修羅場を潜り抜けた強者には通じんよ。彼らは自分の身を守るために他人の悪意には敏感だ。だから先ほどの二人みたいな嘘もつけないような人間に任せたのだよ…」 「なるほど確かに…」 透けて見える底意地の悪さという言葉を聞いてヴィクトールは苦笑した。 「そういえば君の娘には大いに助けてもらったよ。あのレンハートマンホーリーナイトに繋がる情報をね…」 例の覆面男の名に含まれるレンハートという言葉に注目したヴェイクロードは、同地に留学中のヴィクトールの娘ペルフェにレンハートマンホーリーナイトと空を飛ぶ少年ホワイトライトについての情報収集を依頼した。返ってきた報告には予想外の内容が書かれていた。 『そのレンハートマンなんたらとかいう奴の情報は特にありません。でも空を飛ぶホワイトライトとかいう子は、ひょっとしたらクラスの同級生だったライトくんかもしれません。めちゃめちゃ強い竜と合体したとかで、この国の王子様だった人と一緒に邪竜なんとかを討伐して世界を救ったそうです。この話はレンハートだと子供でも知ってるぐらい有名です。そういえば一緒に戦った王子様も最近見かけないから、また家出でもしたんじゃねってみんな言ってました。かしこ』 「そのホワイトライトが君の娘の言うライト少年だとしたら、その相棒であるレンハートマンホーリーナイトは第一王子コージンという可能性が高い。それを確かめるためにラーバル訓練兵に罠を仕掛けさせ、同時にお前に後をつけさせて特定が確認されたというわけだ。まったく、子供でも知ってるような情報を何でよこさなかったんだお前の娘は?!」 「そりゃ報告しろという命令がなかったからでしょうな」 ヴィクトールは娘の底意地の悪さにまた苦笑した。 「ですがそのレンハートマンホーリーナイトとやらを捕らえたとして、どう処分するおつもりですか? 仮にも他国の王族ですから処刑などしようものなら国際問題になりますよ」 「死罪が無理と言うなら通常は国外追放だが、あれだけの実力者を放逐するのも惜しい。なのでできれば我が国に取り込みたくはある」 「ふーむ、ならばその両名をいっそのこと他国が行っているように勇者にでも任命すれば良いのでは」 「その案は私も考えたよ。しかし陛下は首を縦には振らないだろう。陛下は幼少のみぎりに勇者ユーリンと行動を共にしたこともあって、勇者と言うものには非常に厳しい見方をしている。悪い言い方をすれば頭レンハートというやつだな」 「では参謀は第一王子をどのように取り込むつもりですか?」 「そうだな…。意趣返しというわけではないが彼にはお見合いでもしてもらおうかと思う。相手はそうだな…ヴェーチェとかどうであろう。我が国最高の魔法使いだから相手にとって不足はないというやつだな」 「取り込むつもりなど最初からないようですな…。参謀も底意地が悪い」 ヴィクトールが苦笑しながら言う。 「そんなもん言われなくても分かっているよ…」 *  *  *  *  * 時は戻り、いつもの川沿いの公園。イワンを待つライトの元に一人の少女が声をかける。 「また会いましたね。昨日はありがとうございます」 声の主は昨日ライトが帽子を取ってあげた少女であった。 「いやっ!別にお礼なんていいですよ!困った時はお互い様ですっ!」 ライトは気持ち少し焦っていた。同年代の少女から声をかけられるなんていつぶりだろうと思うぐらいのレア経験だからである。 前の旅では異形の姿を隠し人目を忍ぶような生活をしていたので、女性と会話どころか奇異な目で見られることも多かった。 「あのここよろしいですか?」 少女がベンチの隣に座ってよいかと尋ね、ライトが了承すると彼女は隣に座る。 「(なんだろ…めっちゃ緊張する…)」 思わぬ展開にライトの心拍数が上がっていく。とりあえず何か話題を振らないと…。 「あっ、あの!今日もその帽子被っているんですね? 気に入っているんですか?」 ライトは二人の共通項であるアイテムに切り口を求めた。 「ええ。これは私の大切な人…姉のような人からもらった物なんです。今はもう形見になっちゃったけど…」 大粛清時代。新皇帝と各地で悪逆の限りを尽くした逆臣たちとの血で血を洗う混乱の時期、逆臣たちの悪政や皇帝との抗争で多くの民が傷つき死んでいったという。 周りを見渡せばのどかに日常を送る市民の皆も、当時は辛い現実に涙し大切な人との別れを経験していたのかもしれないと思うとライトは心が痛む思いをした。 ライトの居たたまれぬ顔を見て少女が言う。 「あの…良かったらお菓子食べませんか?」 少女がカバンの中から袋に入った焼き菓子を出す。 ライトはそれを一つ摘んで口に運ぶ。甘くて素朴な味わいだがそれがいい。ライトは夢中になって食べるとあっという間に平らげてしまった。 「あっ全部食べちゃった?! ごめんなさい…」 ライトは申し訳なさそうに目を伏せる。 「いいんですよ。それ私が作ったお菓子ですから。本当はお礼をしたかったんですけど、きっと断られるんじゃないかと思って気を使わせないような物を持ってきたんです」 「えっ!わざわざ作って来てくれたんですか! なんか悪いなぁ…」 「気にしないで下さい。私お菓子作るの好きですから。それに食べてくれる人がいるというのもうれしいんですよ」 少女が遠い目をして川面を見つめる。 「僕で良かったらいつでも食べますよ! 旅をしていると他人の手作りお菓子なんてめったに味わえないですから」 「旅をされているんですの…? ここにはいつまでいるんですか?」 「うーんとりあえずは未定って感じかな…。でも当分ここにいるとは思います。ぶっちゃけ僕はやることなくて暇なんで、この時間帯には大体います」 「そうですか。だったらまた作ってきますね。明日は別の物を作ってきます。そういえばお名前は何ていうんですか?」 「僕はホワイトライト。長ったらしいからみんなライトって呼んでます。君もよかったらそう呼んで下さい」 「わかりましたライトくん。私はナタリア。また明日会いましょうね」 思いがけず訪れた暖かな時間をライトは反芻する。 こんなところゴウさんが見ていたら抱けー!抱けー!って気ぶってたんだろうな…と思うと、何だかおかしさがこみ上げてきた。 その日結局イワンくんは現れなかった。 *  *  *  *  * 翌日、ライトは同じ場所でナタリアと会った。 彼女はマフィンとポットにお茶を入れて持ってきた。取り合わせも良くライトは夢中になって食べた。 その日はお互いの自己紹介のような感じで身の回りのことについて話した。 ナタリアからは帝都内の役場勤めということ、周りの友人のこと、休日は特に予定もないのでお菓子作りに励んでいるということ、元修道女であったこと、大粛清時代に神父や先輩修道女と辛い別れがあったということ… ライトも自分の過去や旅の思い出について話す。しかしあまりにも荒唐無稽過ぎてナタリアには冗談が上手いんですねと笑われた。 3日目、二人は帝都内の繁華街へウインドウショッピングに出かける。 こういう時は男の方からリードしてあげないと…思うあまり空回りしてしまうライトであったが、ナタリアは笑顔で受け止めてくれた。ええ子や…。 4日目、ナタリアの食材の買い出しに付き合う。ナタリアからは市場の穴場の店を色々教えてもらう。 大荷物になったので家まで持って行くよと提案したが、彼女からは職場の寮に住んでいるからごめんねと断られた。 女性の部屋に入るのはまだ時期尚早か…と自分に納得させた。 5日目、今日は映画を見ることにした。内容はベタベタの恋愛映画。 バトルもヒーローもモンスターも出てこないのであまりにも退屈である。 なのでライトの視線は横に座るナタリアばかりに向かっていた。肘掛に添えてあるナタリアの手に目が行く。 偶然を装い手を重ねようとすると、彼女はビクッとした反応で手を引いた。 ライトはやり場のない手を戻し、映画のラストまでその肘掛にどちらの手も置かれることはなかった。 6日目、今日は二人で美術館へ行く。芸術品の良し悪しは判らないが、こういう空間にいるとまるで自分が知的な人間になったような気がする。 魔獣や魔王軍や邪竜教団との殺伐とした今までと比べると雲泥の差である。 隣にいたナタリアの手に触れるとスムーズに手を握ることができた。もっともナタリアの方は手袋着用であったが…。 美術館を出ると、昨日はごめんなさいねとナタリアが言う。 彼女曰く自分は緊張しいで手汗が凄いから準備なしに触れられるのが怖いとのことであった。 この次は直に触れたいなとライトは思った。 恋に浮かれる様子を表現するという言葉に『春』という単語がある。 相手を思うだけで幸せな気分に満たされ、心が暖かくなりそこから起きた気流で舞い上がりふわふわするような感情。 かつてのPTメンバーであったゴウがライトに常々言っていた内容であったが、今ならその気持ちがよく理解できる。 もっとも当時は生きるか死ぬかの明日をもしれぬ状況だったので考えたこともなかったのだが… ライトがアジトに戻るとミレーンがまだ例のグラサンノースリーブの恰好でいた。意外と気に入っていたみたいだった。 「よく似合ってますよ~。ミレーンさんはセンスがいいから何でも着こなせますね~。その変装が通じるかどうか今度街に出てみたらどうですか~」と浮かれるあまり心にもないことを口走ってしまうほどであった。 *  *  *  *  * 7日目、この日ナタリアは仕事の都合で来られないということで、いつもの川沿いの公園で時間を潰していたライトに声をかける者がいた。イワンである。 「久しぶりだねイワンくん。仕事忙しかったの?」 「忙しかったのはお前の方だろ。見たぞ!この前の帽子の子と一緒にいたのを。いい雰囲気だったから声掛けるのもまずいと思ってスルーしてやったんだからな」 いつもならからかってくる場面なのに、今日のイワンは少し浮かない顔をしている。 「で、どうなんだよ進展は?」 イワンの問いにライトは何とも解せないという表情で答える。 「ぼちぼちって感じかな…。友達ぐらいにはなれたと思うんだけど、そこから先がね…。何か心の壁を感じるっていうかさぁ…」 ライトの返答にイワンはだろうなという表情を見せる。 「でもお前この前言ってたろ! こういう時は押せ押せだって!そんでダメならごめんないってさ! 人に言うんだったらまず自分でやってみろよ!」 「ありがとうイワンくん。ちょっとだけ勇気が湧いてきたよ」 そう言うとライトはアジトへと戻って行く。 そしてそれを見送るイワンがつぶやく。 「何やってんだ俺…。どっちに転んでもらいたいんだよアイツらに…。あー!何か訳わかんね!」 8日目、今日はナタリアと一緒に夕食を取る。 帝都市街にある大衆食堂ではあるが、店の雰囲気は良く値段も手ごろでボリュームもある。 デート関係なしにまた来たいなと思うような店であった。 少し歩いて帝都の中心にある公園へと行く。そこは有名なデートスポットのようで周りには沢山のカップルがいた。 ベンチに座りとりとめのない話をする。ライトがふとナタリアの方を見ると視線が重なり合う。 これは行ける!ライトはナタリアに向かって顔を近づけて行く。 ナタリアも覚悟を決めたように見えたが、突然過去の記憶がフラッシュバックした。 「おいでナタリア…」 ナタリアの脳裏に浮かぶのは父のように温かく接してくれた神父の顔。 その次に浮かんだのは異形化して瞳が真っ赤に血走る神父の顔であった。 彼はナタリアが姉のように思っていた年上の修道女たちを凌辱し異形の苗床へと変えていた。 神父は以前と変わらぬ優しい声色でナタリアに迫る。 「おいでナタリア…お前も姉さんたちと同じように神の子を産むんだ…」 生殖器が変形した長い触手を振りかざし近寄ってくる。苗床から割って出て来た多数の異形たちと共に… もう終わりだと思った瞬間ドアをぶち破り二人の間に入ったのはレストロイカ帝であった… ナタリアはヒッ!と息を飲みライトを突き放す。 そして立ち上がるとごめんなさい気分が悪くなっちゃったから帰るねと言うと小走りで出口へと向かって行った。 やっちまったー!という後悔の念で、ライトは頭を抱えてしばらくベンチから動けなかった…。 *  *  *  *  * 9日目、ライトは朝から心ここにあらずといった感じで放心状態になってた。昨日のやらかしが相当堪えているようであった。 「これはもうダメかな…。いや!でもゴウさんはとりあえずごめんなさいして次に繋げろって言ってたし…前向きに考えないと!」 ライトはそう思うとおもむろに立ち上がり、服を着替えて街へと出かけて行った。 市場へ行くとライトは店を回る。5軒目の店でようやく探していた商品を見つけた。 「あったあった。前にミレーンさんのために見つけた薬草のハーブティー。気持ちが落ち着いてよく眠れるらしいから、ナタリアさんもきっと喜んでくれるはずだ…」 仲直りのきっかけが掴めそうな気がしたので、ライトは浮かれながらいつもの川沿いの公園に向かう。 時間はいつもよりも相当早いのでナタリアもイワンも来ないだろうが、そんなことは今のライトにはお構いなかった。 いつものベンチに近づくと一組の男女が座っている。よく見るとそれはイワンとナタリアであった。不穏な空気を感じライトは物陰に身を隠す。 「えっ?!何であの二人一緒にいるの? ひょっとしてNTRやんけー!案件?」 二人は何か話をしている様子だったので不躾ではあるが聞かせてもらうことにした。 「(頼むがーすけ、聴力を上げてくれないか…)」 「―――なぁナタリア、お前本当に大丈夫なのか?大分無理をしているようだが…」 イワンがうつむいているナタリアに向かって話しかけている。 「仕方ないじゃない。参謀直々から頼まれた任務なのよ…」 「それはわかっているが心を削ってまでやるようなことじゃないだろ。俺はいつも班の…いやお前のことを見ているから明らかにおかしいのはわかるんだ」 「過去に一体何があったのか知らないが、お前が男嫌いというのは何となく理解している。ライトには俺から謝ってこの国に留まるよう誠心誠意説得をする。だからお前はこの件からもう降りろナタリア!」 「それはダメ! 私だけみんなに置いて行かれたくはない…」 「ライトくんはとってもいい子…優しくて気遣いで…。でも彼が私のことを女として見てくると昔の嫌な思い出がぶり返しちゃうの…。そしてその気持ちを隠して彼を騙しているのも辛いの…。」 ナタリアはイワンに簡潔ではあるが過去の事情を話し出す。 「色々厳しいけどこれは私が乗り越えなければならない問題…。だから黙って見守ってイワン」 「わかった。でもなナタリア、どうしても無理だとなったら俺に言ってくれ。俺はお前のためなら何でもするよ…」 「ありがとうイワン。そろそろライトくんが来る頃合いだから離れていて。もう覚悟は決めたから…」 イワンが離れ、ナタリアは一人でベンチに座っている。 ライトは両手で顔を伏せながら物陰にへたり込む。 「がーんだなぁ…。これじゃ僕めっちゃ悪者じゃん…。NTRやんけー!どころか僕の方が間男じゃん…。おいは恥ずかしかー!もう生きておられんごつ…」 ライトはナタリアに見つからないように、こそこそとアジトへと帰って行った。 アジト内でライトは寝床に横になっている。気分が落ち着くというハーブティーをがぶ飲みしたが、落ち着くどころか鬱々とした気分は全く晴れない。 そうこうしていると外出していたミレーンが帰ってくる。もちろん例のグラサンノースリーブ姿でだ。 「今日試しに街を歩いてみたが、俺のセンスが光っているのかみんなから注目されたよ。色男というのは辛いもんだな。ハッハッハッ!」 それはトンチキな恰好してるから遠巻きにジロジロ見られてるだけですよとツッコミたかったが、今のライトにはそんな気力はなかった。 彼の落ち込んだ様子を見てミレーンは何があったのかライトに問いただす。 ライトは今までの経緯を淡々と述べる。 「なるほどその二人はこの国の参謀クァン=ヴェイクロードの仕込みの美人局だったというわけか…」 「普通それを言うなら美人局じゃなくてハニートラップでしょ。ナタリアさんには何かおかしい感じがしたけど、イワンくんまでそうだったと思いたくなかったぁ…」 「もう僕ここには居たくはないです。とっとと離れましょうミレーンさん…」 「確かにそれもそうだな。俺の方もラーバルとは仲直りできなさそうだし、ここにいる必要はもうないか…」 「でもなライト、このままやられっぱなしというのも悔しくないか? どうせ出て行くというのなら、これを企んだ奴にガツンと文句の一つでも言ってやろうぜ!」 腹が決まると二人は早速行動を開始した