二次元裏@ふたば

画像ファイル名:1767805678760.jpg-(69372 B)
69372 B26/01/08(木)02:07:58No.1390460170そうだねx5 09:34頃消えます
「おや、奇遇ですね。」
「自分から呼び出しといてなにそれ…。」

橋の標識、フェンスのそば。こちらに気づいたのか、いつもの涼しく整った顔がこちらをのぞむ。相変わらずの気取った語り口に、何故かやけに気合の入った格好──黒のレザーで上下揃えたセットアップに、ヒールの高いロングブーツ。イカついボストンバッグを小脇に抱えている──が、その端正な目鼻立ちを嫌味なほど引き立たせている。すっぴんのまま、着膨れした厚着で来た自分が滑稽に思えるほどに。
126/01/08(木)02:09:33No.1390460322+

“今日の0時、面影橋のあたりで会いませんか?”

翌日の始業式を控えた夜半の入り、部屋であてもなくDTMを打ち込んでいるさなか。あまりにも非常識すぎる提案が、携帯の画面越しに飛びこんできた。
年末からこれまでの言動を振り返ってみるが思い当たる節はない。年明けに軽い挨拶程度は交わしていたが、特に会う約束はしていなかったはず。…まぁ、どうせいつもの冗談だろう、とも思ったが、怒れども茶化せども理由を聞けども、何故か海鈴からの返信が一向に来ない。
…あいつに手玉に取られている感覚は気に食わないが、どうにも気になって落ち着かない。
イベントやライブも控えていて忙しい時期って言ってなかったか。宿題…はもう終わらせたって言ってた。いやてか0時に呼び出しって何?別に明日学校で会えるし。でもシカトしたら絶対まためんどくさいことになる…そもそも何で私の家の近く?

…悶々と考えているうちにその時は刻一刻と迫る。
結局立希は。まんまと約束の時間、約束の場所に、着の身着のままで来てしまった。
226/01/08(木)02:11:17No.1390460475+
「──オフの立希さんはいつ見ても新鮮ですね、可愛いです。」
「…もう怒る気も起きない。今何時だと思ってんの?さっさと要件だけ言ってくれない?ていうか寒くないの?」

つれないですね、とばかりに、大袈裟に肩でため息をつく。こちらの怒りも全く意に介していない…かと思えば、なぜか二の句を言い淀んでまごついている。

「…あ、あの…。」
「…言いたいことがないなら帰るけど?」
「まって!まってください!!立希さんに、…………去年の、お礼を言いたかったんです。」
「…何の?」
「そ、それは……。」
326/01/08(木)02:12:39No.1390460598+
得体の知れない話ばかりに歯痒さが募り、苛立ちがつい顔に出てしまったようで、海鈴が目に見えて萎み始める。

「あー…。もしかしてバンドのアドバイスがどうこうって話?もっと話し合えって言った気がするけど。」
「!そう、そのことです。」

…居た堪れず、思い当たる節を記憶の底から無理やり引っ張り出したが、どうやら合っていたらしい。海鈴が訥々と話を続ける。

「あの時からバンドメンバーとぶつかって、語り合って、演奏を重ねて、気づけばAve Mujicaの中に溶け込んでいる自分がいました。それからというもの、メンバーもバンドそのものも、みるみるうちに大きくなって、ライブもフェスもメディア展開にも手応えを感じてて…。少しずつですが、私たちの間につながりのようなものが見えてきて…私の思う、“本物”に近づいていってる感覚があるんです。」
「…。」
426/01/08(木)02:13:07No.1390460650+
「…私は、きっと立希さんがいなかったら、バンドというものもこんな気持ちも知らないまま、何者にもなれずサポートに徹するだけで終わっていたんだと思います。だから…。」
「あっそ。」

拙くも真っ直ぐな感謝の言葉に、思いがけずつい話を遮ってそっぽを向いてしまった。海鈴の言いかけた言葉が空に消える。

「え…。」
「あんなふわっとしたアドバイス一つで大袈裟すぎでしょ。」
「…つれないですね。」
「だから別に大したこと言ってないし。」

反射的に言葉を振りかざす。あぁ、まただ。
嬉しさ?気恥ずかしさ?淋しさ?罪悪感?込み上げてくる色んな感情の整理がつかず、昂りでしか応答できないいつもの癖。自分で自分の言葉に納得がいかない、モヤモヤが胸のうちに溜まっていく。
526/01/08(木)02:14:24No.1390460763+
「「………………。」」

結果として気まずい沈黙だけが流れる、海鈴もみるみる萎れて見る影もない。何か、何か私も言うことが………、
ぐるぐる、ぐるぐる。頭の中が迷走し逡巡し、働かない脳細胞を全力で駆け回して、ようやくらしい答えが浮かぶ。
そうだった、私だって。

「…まぁでも、前にヘルプで入ってもらった貸しがあるから。この話はこれでイーブン。」
「立希さん…。」
「それにバンドのことを話し合ったり、相談したりはお互い様でしょ。だから、その…──こっちこそさ、いつもありがと。」
「!!!!!!!!!!!」

その言葉を聴いた瞬間、海鈴が急に活力を取り戻し、ポロポロと大粒の涙を落とし始めた。
626/01/08(木)02:16:58No.1390460957+
「えぇ〜…?い、いや、なに泣いてんの?」
「感涙しました。」
「…っふ、くくっ。」

雰囲気のかけらもない、不器用なやり取りがなんだか面白くなってしまい、思わず笑いがこぼれる。

「なんで笑うんですかぁ。」
「ふふっ、だってっ、さっきから大袈裟すぎるって…あーもー泣きすぎでしょホント…。」

べそをかく海鈴の隣に並ぶ。
いつものあのスタンプ、嘘じゃあないんだろうな。
泣きっつらをにやけ眺めながらぼんやりと、そう思った。
726/01/08(木)02:26:18No.1390461629そうだねx3
感涙しました👏
826/01/08(木)02:28:57No.1390461802+
こんな時間まで海鈴いるんだ…
926/01/08(木)02:33:18No.1390462076+
夜中いきなり呼び出す海鈴も文句言いつつグダグダ考えて結局行ってしまうりっきーも想像しやすいな…
1026/01/08(木)02:41:48No.1390462561+
お互いの不器用な部分がよく出ていて好き
1126/01/08(木)02:44:17No.1390462675+
これはツッコミとかじゃない素朴な疑問だけど
実際りっきー&海鈴ってお互いの連絡先を知ってるのかな…?
スマホでやりとりしてるとこ見たこと無い気がして
1226/01/08(木)03:07:51No.1390463781+
「…ていうか、わざわざそれだけ言いに来たの?」
「グスッ…ええ、その通りです。…実はさっきまで、この近くのスタジオでMujicaのメンバーと集まっていたんです。ミーティングや宣材写真の撮影とかもあって長丁場でした。」

海鈴の目立った格好にも非常識すぎる誘いの時間にも、一応納得はいく。この誘い自体も思いつきというか、衝動的なものだったのだろうなとなんとなく予想がついた。
そしてその予想通りであれば、おそらくまだ一つだけ問題が残っている。

「…この後どうすんの?」
「…歩いて帰ります。」
「バカすぎない?」
「冗談です、タクシーでも拾って帰りますよ。」

「「………………。」」
1326/01/08(木)03:08:30No.1390463802そうだねx1
「…家に泊まってきなよ。海鈴1人で帰すのも悪いし。」
「え?」

埒外の提案。仕返しとしては上手くいったようで、海鈴の顔が呆気に取られている。

「…今日さ、家に誰もいないんだよね。親は遅めの帰省で出払ってて、お姉ちゃんは大学の友達のところに遊びに行ってる。」
「……。」

さっきとは違う空気の、気まずい沈黙が流れる。なんの気なしに言ったはずなのに、なぜかこっちまで緊張してきた。

「…どうすんの?黙っててもわかんないけど。」
「…ではお言葉に甘えて。今夜は寝かせませんよ。」
「はいはい。」
1426/01/08(木)03:14:02No.1390464046+
気取った調子でも声は裏返っていて、明らかに動揺している。…多分私も。
2人並んで橋を渡り私の家に向かう。…明日は学校サボるんだろうな。わかりきった予感が、私の胸を少し高まらせていた。
1526/01/08(木)03:15:19No.1390464109+
>実際りっきー&海鈴ってお互いの連絡先を知ってるのかな…?
そうだったらいいなって
1626/01/08(木)04:11:32No.1390466322+
なるほどなるほど
あなたはレスがうまい!
1726/01/08(木)04:14:33No.1390466429そうだねx1
鉤括弧内の文末に読点いらないよ
1826/01/08(木)04:16:53No.1390466506+
書き慣れてなさそうだし野良海鈴かな
1926/01/08(木)07:10:05No.1390473086+
>鉤括弧内の文末に読点いらないよ
次から気をつけるね…
2026/01/08(木)08:44:52No.1390483284+
怪文書にルールなんてない……思いをぶつければいい……


1767805678760.jpg