「私は、…四季のことが好きなんですの…好きになっちゃったんですの」いつもの賑やかさもノリの良さもどこかにやった真っ赤な顔で、か細い声で伝えてくれた夏美ちゃん。 「……!?」さすがに予想外。え?夏美ちゃんが?私を?好き……?確かに夏美ちゃんはかわいいし、一緒に動画のネタを考えたり新しいスムージーの開発をしたり、発明の実験台になってもらったり、一緒にいると退屈しなくてすごく楽しい。いつも別れ際にはもっと話していたい、ずっと声を聞きたいと思ってしまう。……でもわたしはメイが好き、それは揺るがないはず。 「あんなに明るく笑う四季をほかで見ないから、勘違いしちゃうんですの。私といると楽しいとか、嬉しいとか思ってくれてるんじゃないか、特別になれてるんじゃないか、って…。」あっ、泣きそう。そんな顔しないで…。夏美ちゃんはいつもの不敵な笑顔が一番かわいいのに。 「四季がメイのことを好きなのは知ってますの…でもちょっとだけでも、2番目でもいいから…」あなたの愛をちょうだい。 「わたしは、」メイが好き、といつものように言おうとしたのに言葉が出てこない。あんなに部室でもライブでも何百回も繰り返した決め台詞なのに。ふと、あの卒業式でクゥクゥ先輩にもらった言葉がよぎる。わたしは、それになんて返事をした? ──自分の「大好き」を大切にするってことは、きっと「いつもの言葉」に逃げてはいけない。同じだけ他の誰かの「大好き」を大切にしなくちゃいけないと、私はその時気づいた。夏美ちゃんは間違いなく本気の言葉をくれた。ならば。「わたしも──」 いろいろあって四季と交際を始めて数週間。「どうせ隠しててもすぐバレる。そうなったら、すみれ先輩と可可先輩みたいにひっそりと生暖かい目で見られることになるよ」あの二人事あるごとに見つめ合ったり無意味に名前を呼び合ってえへへ…とか笑い合ったり隠すつもりあるんですの…?、とそこまで考えたところで、自分たちも似たようなことをしてることに思い至り、ますます恥ずかしい。今も四季の膝の上に座らされて頭を好き放題撫でられているという、誰か来たらだいぶ言い逃れ不可能な状況ですし。 「それに、隠すのをやめたらみんなの前でもイロイロできる」「ひゃあ!?」耳たぶを噛まないで!腰が抜けそう…そのまま私の首筋に唇を押し付けると、ちゅうちゅうと吸い付く四季。「ちょっと!そんなとこに痕付けたらほんとに言い逃れできないですの!」 「そうだね。じゃあ、明日みんなに伝えよう」がばっと振り向けばなんなんですのそのわっるーい笑顔とピースサインは!この子ほんとズルい…。いつか覚えてろですの…。 「冬毬、あんたほんとかのんのこと好きよね」 「当然です!かのん先輩は不純な動機でアイドルを始めた私をいっさい責めず、最後まで寄り添ってくれました。あんな優しくて素敵な先輩いません。大好きですし一番の憧れです。今年は私達も先輩たちに恥じない活動をしなければ」 「私のことは?」キラキラ目を輝かせた冬毬がどんどん早口になって冬毬だけに止まりそうにないので、ちょっと意地悪してみる。 「……マルガレーテも歌はとても上手いですし、ひとを惹き付ける振舞いやあれだけ食べてスタイルを維持する自己管理能力は尊敬に値します」表情一つ変えずによくそこまですらすら言えるわね…でもだいぶ目が泳いでるわよ。「ふーん?まあ当然ね。で、私は好きかどうか聞いてるんだけど?」 「…………スキデス」たっぷり十数秒は硬直し、真っ赤に顔を染めて呟く冬毬。「聞こえないわ」まあ音楽家は耳が命、囁き声でもよく聞こえたわ。今日はこのくらいにしてやるけど、いつかもっとはっきり聞かせてよね。そうしたら私からも応えてあげる、そんな恥ずかしがりの貴女のことが大好きって。 ・この頃の冬毬ちゃんは初々しくてかわいいなあ。 「メイ、これあげる」これは、四季の…ぬいぐるみ?かわいいな…。 「ラジオの現場で先輩から聞いた。好きなひとのぬいぐるみを持ち歩いて写真撮ったりしてるんだって。当然メイのぬいぐるみも作った。これでいつでもメイと一緒」 最初はいいことだと思ってた。あんまりSNSに発信しない四季が積極的になるきっかけになってたからな。でも最近はちょっとやりすぎじゃねえか…?毎日のようにぬいぐるみと一緒の自撮り上げたり、「メイ、笑って…」ってぬいぐるみに話しかけてたり、私がいるのに「メイ、メイだよ…」ってなんなんだよ! Liella!のチャットもお前と影響されてかのん先輩、夏美、マルガレーテを日替わりで上げる冬毬のせいでぬいぐるみ写真が無限に増え続けてるぞ…。私みたいに部屋に飾って時々抱きしめたり、一緒に寝るくらいにしてくれよ! 「……たまには私とも一緒に撮ってくれよ」 ぎゅっ。ぬいぐるみとツーショで自撮りしようとしたところを取り上げて、かわりに四季の頬に私の頬をくっつけて笑顔で1枚。これはなかなかいい写真が撮れたんじゃないか? 「…………きゅう」「四季ーっ!」 「まーたバカップルがバカやってますの…」「っす」 ・ラジオネタ。AiScReamがこんなにバズるとは思ってなかったなあ。 「四季ちゃ~ん…好き、好きっす…」きな子ちゃんに抱き着かれ、押し倒され、組み敷かれている。ちょっと「自分に正直になる薬」を飲ませただけなのに。あくまでわたしはきな子ちゃんがいつも気を遣って頑張っているから、たまには羽目を外してストレス解消になればいいと思ってただけなのに、こんなことになるとは完全に予想外…。 「きな子ちゃん、ちょっと待って…」「四季ちゃんは最初にヘンな機械で私の背中を押してくれて、私のつぎにLiella!に入ってくれてすごく嬉しかったっす…同級生の同じ夢を見てくれる友達ができたって。それから一緒にスクールアイドルできて毎日楽しくて幸せで…気が付いたら好きになってたっす。四季ちゃんはメイちゃんのことが好きなのは知ってるっすけど、もうこの気持ちは抑えないっす」顔が近すぎる…これはメイ相手じゃなくても流石に恥ずかしい。「きな子ちゃん、いったん落ち着こう…」 「四季、黙るっす」 呼び捨て!?いつものきな子ちゃんからあまりにも遠い発言を気にする間もなく、わたしの口はきな子ちゃんの唇に塞がれ、柔らかな舌で乱暴に口内を蹂躙される。こ、これは…きもちいい…もう何も考えられないかも…。 ・生放送ネタ。これ大好きなんだけどきな子ちゃんがこれ言うシチュが考えられなさすぎる。 週末の人気のない教室。「お疲れ様です、四季先輩。今週もいい写真が撮れました」「いつもありがとう、冬毬ちゃん」 いつも通り、四季先輩との情報共有会。メイ先輩の写真や音声、録画データをスマホから共有フォルダへ投げていく。姉者が好きな私と、メイ先輩が好きな四季先輩。利害の一致で始まった甘美な秘密の時間。 いつごろからか、姉者とメイ先輩がふたりで写っている写真が増えてきた。寄り添ってベンチに座ってジュースを飲むふたり。練習中ふと目が合って恥ずかしそうなふたり。手を繋いで帰るふたり。死角になってるけど顔がやたら近いふたり。ホテルから人目を忍んで出てくるふたり。 お互い何もかもわかっているのに何も言わず、「メイ、今週もかわいい」「姉者も素敵です」と空虚な言葉を投げ合う私たち。とっくに打ち砕かれているのにそれでも消えない好きの気持ち。本当にここから溢れだすものがあるのでしょうか、かのん先輩。 「ねえ、冬毬ちゃん。わたしと付き合ってくれない?振られた同士」この頭脳派とマイペースとメイ先輩想いを混ぜて固めたような先輩も、理屈もない思い付きのような提案を出してくる程度には追い詰められていたようです。 「……アグリーです」「いいんだ。言っておいてなんだけど、まさかアクセプトされるとは思わなかった。……誓いの口付けでもしておく?」冗談めいた物言いがなんだか癪に障るので、あえて彼女の目を見つめながらゆっくりと顔を近づけてみる。ちょっとは揺らいでくれてもいいのに、普段は意外と感情豊かなところもある赤の瞳はただ静かなまま、深海のように吸い込まれそうな恐怖を覚える。きっとわたしもこの哀れな先輩と同じ表情をしているのでしょう。 綺麗な唇を割って舌をねじ込み、歯をなぞって舌を絡め合う。そこには温かみも充足感もまったくないけれど、背徳と倒錯のカクテルは大変な美味でした。このままふたりで澱のように沈んでしまえるならどんなにしあわせなんだろうかと思うほどに。 ・この辺から癖が漏れ始めている。bubble riseの歌詞をこんな風に使ってごめんなさい。 「『意外だけどおめでとうですの~♪』だそうです。私は姉者になんて言ってほしかったんでしょうか?初めて姉者がにくい、と思ってしまいました」私はもう限界です、と鬱々と呟く冬毬ちゃん。「やはりこの関係にメリットはありません。もう会わないようにしましょう四季先輩」想い人に選ばれなかった同士、もっと仲良くしたいと思っているのは本心なんだけど…気持ち良かったし。 「そんなに忘れられないなら、わたしのことを姉者だと思えばいい。わたしが夏美ちゃんの替わりになる」無視されるだろうと思っていたが、どろどろと淀んでいた彼女の瞳がわずかに輝く。 「四季先輩…四季あねじゃ…義姉者…姉者」「うん。姉者だよ、『冬毬』」「姉者、姉者、姉者、姉者」心に馴染ませるように繰り返す冬毬ちゃん。うん、さっきよりはマシな顔になったかもしれない。今度メイと夏美ちゃんの前で呼ばせてみたら、ふたりはどんな顔をするだろうか? 姉者姉者と呟きながら震える冬毬がガラスの水槽に閉じ込められた小さなクラゲのように見えて、わたしの中に初めて芽ばえた気持ちに笑いかける。 いつ見ても千砂都先輩はすごい。私も部分的なダンスの技術に関しては追い付いてきたところもあると思っているけど、並んでみると表現力や躍動感が段違いで悲しくなる。メイやきな子ちゃん、夏美ちゃんも「全然負けてなんてない」って何度も言ってくれるけど、不安ばかりが心を浸食してきて、なかなか人の性格の本質は変えられないと実感する。 「ねえ四季ちゃん、今日調子悪い?」 やはり先輩の目はごまかせない。ちょっとお話しよっか、と練習終わりに誘ってくれたのが嬉しくて、つい甘えて思うところを吐き出してしまう。そんな私に先輩は意外なことを言う。「私はさ、昔は気も弱くていじめられてたんだ」「かのんちゃんはそんな私を助けてくれたのに、私はかのんちゃんがほんとに困ってるとき何もできなかった。でも今はかのんちゃんと一緒にLiella!でいられて最高に嬉しいんだ」恋ちゃんとすみれちゃん、それに可可ちゃんのおかげだね、と優しく微笑む先輩。先輩方5人は時々そういう表情をする。噂で初年度のLiella!結成までは相当なイザコザがあったと聞いたが、きっと私たちにはわからない強い絆があるんだろう。ちょっとうらやましい。 「その、千砂都先輩は後悔してることとかはないんですか」いくらでもあるよ~と笑う先輩にちょっとほっとする。「今でもずーっと思ってるし悔しいって夢に見るよ。なんでかのんちゃんをグイッて引っぱって一緒に走り出したのが可可ちゃんで、私にはできなかったんだろうって」「なんでかのんちゃんが最初にスカウトしたのはすみれちゃんで、私じゃなかったんだろうって」優しい笑顔のままあまりにも普段のイメージと違うことを言い出すので、私は絶句してしまう。「でも後悔しても変わらないでしょ?だったら私は先のことを考えてたいって思うかな」 「だから私は決めてるんだ。かのんちゃんのためになることならなんでもするし、かのんちゃんを傷つけるようなことからは全部私が守る」 この人の心は鋼のマルだ。後悔も寂しさも嫉妬も全て糧として鍛え続けた向上心と決断力の塊。今はもう深く輝く鋼球として、貴金属にも宝石にも負けない光を放っている。私の触れれば割れるガラスのような自意識とはまるで違う。私はちょっとでもこの先輩に近づけたなどと思ったことを恥じた。 その時ダンス大会の会場まで応援に来てくれたんだ~!ほんとにかのんちゃんは昔からかっこよくて~!とどんどん加速する千砂都先輩。いつもの調子に戻ってくれたことに安心しながらも、やはりまだ先輩には敵わないと落ち込んでしまう。「私は、いつもかのんちゃんのことを考えてパフォーマンスしてるんだ。四季ちゃんも一緒なんでしょ?大好きって気持ちでフルパワーで頑張れば、それはもう最高のマルだよ」四季ちゃんはもうわかってるから大丈夫だよ、とにこにこ笑う先輩。その笑顔を見ると不思議と不安が消えていく。確かにちょっと焦って視野が狭窄していたのかもしれない。そう、私はメイが好き。それを心のいちばん大事なところに置いて、少しずついろんな気持ちや経験で守って大事にしていけたらいいのかな。 私と四季ちゃんもいろいろ似てるところもあるよね!またコイバナしようよ!○語りもね!と言い残して去っていく背中を見ていたら、すごく心が軽くなったのを感じる。うん、メイに会いに行こう。 ・激重感情ちぃちゃんが急に書きたくなったので。「鋼のマル」って表現は結構お気に入り。 バレンタインデー前日、姉者とともにチョコ作り。いつも通りオニナッツチャンネルの撮れ高も確保し、Liella!の皆さんや友人たちへ渡すチョコレートが無事完成しました。ずらりと並んだトリュフチョコを眺めながら、真剣な目付きの姉者。 「冬毬~。どれがいちばん綺麗にできてると思いますの?」ああ、そういう…そういえば先日ちょっと豪華なラッピング資材と黄色のリボンを買ってましたからね。「これがよく整っているかと」微笑ましくもすこし寂しく思いながら、千砂都先輩に見せても合格点を貰えそうな、滑らかなマルに仕上がったひとつを指差しました。すると姉者はそれを取り上げ、ひょいと私に差し出してくるのでした。 「じゃあこれは、冬毬にあげる!」「え…?私でいいんですか?」「もっちろん!大事な妹には一番いいやつをあげたかったんですの」食べて食べて、と目を輝かせる姉者に見守られながら口に入れたそのチョコレートはごく普通の味でしたが、私はきっと生涯その甘みを忘れないでしょう。 その深夜。こっそりと冷蔵庫に隠しておいたひとつをラッピングすべく、台所へ忍び足で向かったら、冷蔵庫の前で冬毬とばったり。 「あ、姉者!?」その手にはやはり冷蔵庫から取り出したと思われる綺麗な小箱と、エレガントパープルのリボン。すべてを悟った私は顔を赤くして何やらごにょごにょと言い訳を始めた妹をなだめて、ゆっくりと話を聞いてみることに。 同期の彼女と初めて一緒に行ったスイーツ店のものであること、二人ともとても気に入ってまた行きたいわね、などと話していたのに機会がなくて再訪できておらず、せめてこの店のチョコレートを渡したいと思って買ってきたことをぽつぽつと話してくれた冬毬の恥じらい含みの微笑みを見ていたら、この子はもう大丈夫だな、となんだかとても安心しましたの。 「お互い、うまく渡せるといいですの」 「…アグリーです」 たまには姉らしいことをしてあげたいと思って、冬毬ならぜったい大丈夫ですの!と頭を撫でてぎゅっとしてあげたら、いつもクールで格好いい自慢の妹が久しぶりにぱあっと明るいとびきりの笑顔を返してくれたから、私まで嬉しくなっちゃいましたの。明日が楽しみですの~! ・純愛とまマル&きなナッツかつ姉妹愛。前後編で視点変えるの別に面白くなかったのでこれ以降やらない。 彼女と「お泊り」した翌日はいつも身が入らない。今日も練習上がりに私がいつまでも着替えないので先輩たちに怪訝な顔をさせてしまった。「マルガレーテと話がありますので、皆さんお先にどうぞ」と冬毬が助け舟を出してくれたが、この平然とした態度!誰のせいだと思ってるのよ。意外と気にしいの新部長がまた心配するじゃない。 「あんたが散々痕をつけるからこんなことになるのよ…わかるでしょ?」「見えないところにしか付けてませんから、気にするのは貴女の勝手です」無茶苦茶ねこの子。なにしろ服の下、胸から腹に太腿、背中までこいつのつけた痕がないところはない。吸った痕からつねった痣に咬み跡までもびっしり残っているとバレたら、と気にならないわけがない。 …でもそれは、敏感なところを吸われながら「貴女は私のモノですからねマルガレーテ」「痕が消えても離しませんよ。ずっと」と囁かれるたびに、心はぽかぽかと満たされ身体の芯は燃え上がってもっともっとと求めてしまう私が悪いとわかってる。今も、この痕(キズナ)の刻まれた姿をみんなに晒したらあんたはどんな顔をするのか、なんて妄想だけでお腹の奥がむずむずしているんだから。 ・記念すべきマゾガレーテ初登場回。まだわりと言い訳の効くレベル。 「~~っ♡冬毬、そこ、いい…!もっとして…」マルガレーテにぐいぐいと頭を押さえつけられながら、敏感な突起に舌を這わせ、吸い付き、息を吹きかける。秘部が物欲しげに蠢いているのを尻目に、仕上げに甘噛みをひとつ。「つっ…んんん~!」太腿が一際痙攣を強め、最後にはぐったりと脱力します。満足してくれたようで嬉しいですよ、マルガレーテ。 充足感に浸っていたのもわずかな時間、「あ、うそ…待って!止まって……!」ちょろちょろと、蜜とは別の液体が迸る。油断していた私は、顔面でそれを受け止めてしまいました。「ふふっ。仕方ない子ですね」唇をぺろりと舐めれば、口内に彼女の苦味と塩味が広がります。いやだなんて微塵も思いませんしむしろ美味しくて嬉しいのですが、おまけにこの人前では常に強気で凛とした恋人が涙を両目にいっぱい溜めて「とまりぃ…汚してごめんなさい…きらわないで…」などと懇願してくるのです。頭の中で何かが開放される音が聞こえました。 「……そんなの反則です」結局その日は彼女のあらゆる体液を啜り尽くし、仲良く意識を飛ばすまで愛してしまったのです。 「ということがあったのです」「あったのよ……」「なんでそれを私に報告するの!?怖いよお!」「トマカノーテの一員として先輩には共有しておいたほうがいいかと思いまして」「絶対いらないよ!マルガレーテちゃん顔真っ赤だしやめてあげて!あと開放ってそういう意味じゃないから!私もちぃちゃんとそこまではしたことないよ!!」 …逃げられてしまいました。むしろマルガレーテのほうが望んだことだというのに…。次は恋先輩か、姉者にでも「相談」してみましょうか。それとも次は、もっと違う「報告」のできることをしましょうか。…などとふたりで話しながら、つぎの夜に向けての熱を高めていくのが私たちの秘密のルーチンなのです。まあ公然の秘密になっているのですが。 ・まあまあ謎シチュなので前半だけでよかったなあと思う。 「オ~ニナッツぅ~~!!」髪を三つ編みツインに結い、ピンクのハートまみれの衣装を着せられ、十何度目かのリテイクを受けて披露する例のアレ。色々あって冬毬の欲求をひとつ聞くことになったけど、こんなこととは思わなかったわ。最初は恥ずかしくて死ぬかと思ったけど、なんかだんだん楽しくなってきたわね… 「その動画、ネットに上げたりしないでよね」「そんなことしませんよ」「…なんに使う気なの?」「………セルフプレジャーに」「さすがに私から見てもドン引きなのよ」「そうでしょうか…大好きな姉者とマルガレーテのコラボは私にとって最高のシナジーでさらに普段絶対見られない姿を見せるプレミア感が快感を「もういいわよ!」 「だったら私にも同じものよこしなさいよ」「自分の動画を使うのですか?倒錯してますね」「んなわけないでしょ!あなたがやるのよオニナッツ。完コピで」「……え?」あんなにダメ出ししたんだから当然一発で完璧にキメられるのよね?と精一杯挑発的に煽ってやる。そうそう私って本来こういうキャラよ。たまにはリバもありよね。 「どこでそんな言葉覚えたんですかかのん先輩ですか簀巻きしてきていいですか」…恋先輩よ。 ・流石にドン引きです。 付き合い始める前からそうだけど、メイは自分で思っているより愛が重い。口では「四季の魅力が皆にも伝わってほしい」と言いながら、学校で私がファンの子と話しているとよく物陰から捨て犬のような目で見つめてくる。可愛い。今日は夏美ちゃんの配信に出演した時にメイの知らない話題を出したのが気になったらしく、彼女の部屋で問い詰められている。 「…夏美のほうが大事なのか?」「違うよ」躊躇いを見せず即答で否定すれば大丈夫、とニジガク知恵袋で予習した私に隙はない。急に夢の話をして不安がらせるような失策もない。 「今の私はメイだけのもの。メイも私だけのメイでいて」ハグしてよしよし、と頭を撫でてあげる。普段はこれで蕩けてしまうメイだけど、今日はまだ不安が抜けないよう。「なら、証明するぞ。…今」押し倒され、足を絡め慣れない手付きでボタンを毟られる。メイ、すごく無理してる…いつもはすごく気を遣って優しく優しく抱いてくれるのに。でもそんないじらしさもアリ、むしろ嬉しい。 燃え上がったメイに身を任せながらふと、視界の片隅に弾みで転げ落ちたふたつのスマホが寄り添うように重なりあっているのが見えた。まるで私達みたいだね。 そろそろまたメイの「ケア」が必要になる頃ね、とかのんと話していた矢先。「お二人に相談が」「どうしたの四季ちゃん?」「……その…」いつも端的な物言いの後輩が、妙に歯切れが悪い。ってことは。「メイのこと?」「…はい」 「メイが二人といかがわしいことしてると、噂で。実際盗聴、いや、声が…」悪いことはしてないわよ、と伝えても、露骨にやめて欲しいと言いたげ。あの子愛されてるわね…ふと横目で見るとかのんがわるーい顔で瞳をギラン!と輝かせている。そういうこと…乗ってあげましょ。「「だったら、体験してみる?」」 数分後。「四季はいい子ねえ…よしよし…」「うんうん。もっとリラックスしていいんだよ~…」抱き締めたり膝に乗せて撫で回したり耳元で左右から囁き続けたりした結果、完全に脱力して私たちにもたれ掛かり、潤んだ目と緩みきった口元。「四季ちゃーん?」「……ふぁい♡」顔といいこのウィスパーボイスといい、壮絶な色気出すわねこの子…でもこれは。(落ちたね)(落ちたわね)相方と無言で目配せし、心の中で舌なめずりする。メイもとっても美味しかったけど、この子はこれからどんな素敵な声を聞かせてくれるのかしら。 ・CatChu!リフレ回。AiScReamネタを仕込んでたけどまだバズってない頃なので誰にも気づかれなかった。 最近四季がおかしい。いつも先輩のほうをぼーっと眺めてるし、聞いても「何でもない……」と目を逸らす。私には言えないことなのか…? ……これはまたCatChu! リフレで癒やしてもらおうかな!仕方ないんだよ!楽しみだなあ! 「四季?な…なんでここに…?」「あんた知らなかったの?四季は常連よ」嘘だよな…?だが頬を染め目を伏せる四季の表情が全てを物語る。「メイ、こんな素敵なことを黙ってるなんてずるい。一緒なら、もっとよくなれるから…」「し、四季…」思わず手を伸ばすが、「だーめ。お客さん同士のお触りは厳禁だよ」蠱惑的に微笑む先輩に制止されてしまう。もう何が何だかわからない。 「せんぱい…ん…しゅき…♡」「今日もやる気満々ね…あんまりがっつかないの」躊躇なくすみれ先輩と抱き合い、舌を絡める四季。私とはそんな濃厚なやつしてないのに。リボンを解き、胸元とスカートへ手を伸ばす先輩。私だってまだ触ったことないのに! その間もかのん先輩は私の体を撫で回し、鎖骨に唇を落としてくる。開発され尽くした身体はそれだけで敏感に跳ねてしまうが、いつもと違い心の奥底は冷えて固まり、ただ四季の痴態と嬌声だけが心を灼く。 「大丈夫、私たちは夏美ちゃんみたいに四季ちゃんのこと取ったりしないよ。ずーっといっしょに二人とも愛してあげる」ふたり…ずっと一緒…夏美よりも…?そんな甘い囁きが、凍った心に罅を入れる。私は…だれと一緒に居たいんだっけ…?「メイ…ずーっといっしょだって…うれしい…♡」どろどろに蕩けた琥珀色の瞳がこちらを向く。四季が、嬉しい…?……だったらいいのかな…もう我慢しなくても。 「うっ…うぅ…うぅ~!」「メイ…!?」「ごめんねごめんね!やり過ぎちゃった」「あんた煽りすぎ。一応リフレってテイなんだからほどほどにしなさい」 ……ひとしきり泣き続けて数分。心配そうに覗き込む顔を見てわかった。この3人から離れたくない、ずっと一緒にいられるなら他に何もいらない。きっと四季もそうだよな…? かのん先輩とすみれ先輩がわたしを見てにっこりと笑い、大好きな声で囁きかけてくれる。「「…次の予約はいつにする?」」よやく…いつがいいかな…四季と予定が合う日は……楽しみだなあ…… ・四季ってえっちなお店にドハマリしそうだよね。 先輩方を送り出して数ヶ月、新入生も結ケ丘にすっかり馴染んだ頃。私は気付いた。「きな子、異常にモテてないか…?」 入学式では生徒会長として飾らない真っ直ぐな言葉で新入生たちを歓迎し、部活紹介では新生Liella!のセンターとして素晴らしいパフォーマンスを見せた結果。今や桜小路会長は結女生全員の憧れの的となり、登校すれば遠巻きにきゃあきゃあと黄色い声が上がり、毎日のようにファンレターとラブレターと怪文書の束が生徒会室に届けられ、「きな子様ガチ恋部」だの「桜の君を愛でる会」だの「れんきな復権派」だの暗躍する闇FCを敏腕副会長「海月の君」が摘発する事例が後を絶たない。 …きな子は頑張ってるし、みんなから認めてもらえるのはすごく嬉しいんだが…なんかこう…最初にあいつのすごいところに気付いたのは私達だし、きな子のこといちばん好きなのもLiella!の私達なんだぞ、みたいな感じでちょっともやもやする。「そこで『私達』じゃなくて『私』と言い切らないからダメなんですの」「なんで告白しないの」息ぴったりにdisってくるのをやめろ。 「今更きな子が誰かに取られないか不安になってるだけですの。ビビり」「ファイト、メイ」「うるせー!」元はと言えばこいつらが見せつけるようなことするから悪い。「私だってお前らみたいにきな子と付きあいたいしツーショ撮ったりあーんしたり頭にアゴ乗せたり、…カップル配信とかもしたい!恥ずかしくて言えないけど!」 「………ふーん」 つい口に出てたのに気付いたときには、目の前に「桜の君」が立っていた。 いつから聞いてたんだ!と頭の中がぐるぐる回って倒れそうになるが、無言で近づいてきたきな子ががっしり私の両手を掴んできたのでもう逃げ場はない。これから公開処刑されるんだ…私の茜心はもうガラスボールリジェクションだ…。 「メイちゃん!」「……はい」「えっちなことはちゃんと段階を踏まないとダメっす!まずは週末デートからっす」「……え?」そこで告白からやり直してくれるんすよね?と朗らかに笑うきな子。どうやらまだ私は死ななくていいらしい。 「ほんとにいいんですのきな子…?こいつめっちゃヘタレのムッツリですの」「よかったねメイ。きな子ちゃんのイケメンスパダリの才能が開花してて」夏美はあとで〆る。 かのん先輩の喫茶店にて。いつも尊大なまでに堂々たる振る舞いの彼女ですが、今日はもじもじと足を摺り合わせ、異常に周りを気にして怯えています。…まあ、私が先程彼女のパンツを奪ってカバンにしまい込んだせいなのですが。「とまりぃ…もういいでしょ…部屋に行きましょ…いつまでこうしないとダメなの…?」「ダメですよ。おあずけです」顔が真っ赤で可愛いですね…もっと焦らしてあげないと勿体ない。 「そんなにびくびくしていたら、かのん先輩に怪しまれますよ。それとも、それを望んでるのですか…?」「かのんに…♡んっ…♡」…先輩の名前を出したら反応が変わりましたね。それはそれでちょっと面白くない…貴女が誰のものなのか、理解らせてあげます。 「かのん先輩。私達はマルガレーテの部屋に行きます」「ええ…行くわ」「?…うん。マルガレーテちゃん顔赤いけど大丈夫…?」「……だいじょうぶ…♡」またそんないやらしい声を…そんなに先輩のことが好きなんですか…?まあ私も好きなんですけど。しっかりと痕(キズナ)を刻み込んであげないといけませんね…覚悟してください。 ・マゾガレーテ再び。 自室にて。冬毬と愛し合い、というか私が一方的に責められ続けて数十分。ドアがノックされ、慌てて上着を被る。「二人とも、コーヒーとお菓子持ってきたよ」 「ありがとうございます。いただきますね」「うん…ありがと…」「マルガレーテちゃん本当に大丈夫?熱あるんじゃない…?」「へいき…」調子悪かったら言ってね、と微笑んで去るかのんの優しい声が妙に頭に残り、身体の奥で熱が燻る。 「…もう時間なので帰ります」「はあ?!ここまで焦らしておいてそれはないでしょ!泊まっていきなさい」 冬毬は少し逡巡するが、「…でしたら、かのん先輩とお母様にコンセンサスを取ってきてください」などと言う。私が?「はい。…その格好のままで」当然下着はまだ冬毬に奪われたままで。今はブラまで外されて、制服は着てるとはいえこれでかのん達と話してこいって!こいつほんと変態なのよ。 「どうすれば貴女が悦ぶか、常にアセスメントしてますから」「貴女さっき先輩と話してた時すごく興奮してましたよね…?うまくできたら特別な『ご褒美』をあげますよ…♡」……そんなこと言われたら、やるしかないじゃない。 ・この辺はとまマル前提の上でのマル→かのんの矢印を意識してた頃。 大学生活にもすっかり慣れた頃。いつもの4人の飲み会、カクテル1杯で既にだいぶ呂律が回ってないメイの推し語りに相槌を打ちつつも、まったく話の内容が頭に入らない。 …向かいに座っているきな子が気になる。もっと言えばきな子のスカートの中が気になる。いや変な意味じゃないんですの!あの子があんまり無防備にちらちらさせるから、心配になるだけですの!断じてメイみたいにいやらしい目じゃないですの!ただスカートから伸びる黒タイツに包まれた脚が柔らかそうだなあとかその中心にちらちらする布地が気になるなあ触ってみたいなあなんなら脱がせたいなあとか、……今のナシで。 「メイ、もう限界かな…私たちは帰るね」「やー…わらしはまだいけるぞしきぃ…」「りょーかいっす」もうふらふらに泥酔したメイを抱き上げて立ち上がる四季。いつもながら見せつけてきますの。と、去り際に四季が私に囁きかけてきた。「姉者、ファイト」……?何をがんばれと?「じゃ、メイを送ってくるから」送り狼のセリフを聞きながら、いまの言葉の意味をほどよく酔いの回った頭で考える。 と、きな子と二人きりになったことに気づく。劣情を抱いてしまったのが今更恥ずかしくなって言葉に詰まる私ににこりと笑いかけ、「夏美ちゃん…さっきからずーっときな子の脚見てたっすよね…そんなに気になるっすか…?」とスカートをひらひらさせるきな子。 「夏美ちゃんにしか見えない位置だから大丈夫っす」それならよかった。いやそうではなく。「もっと、見たいっすか…?」上目遣いで覗き込んでくるのあざとすぎる…ってどこでそんなこと覚えたんですの!?って四季の入れ知恵か!あいつ~!「こんなことするの夏美ちゃんだけにっすよ…きな子は夏美ちゃんのことずっと…」薄く朱に染めた頬に、いつの間にかふたつも開けられたシャツのボタン。「夏美ちゃん…顔が真っ赤っすよ…どこかで休憩したほうがいいんじゃないっすか…」 こんどは胸元から視線を外せないままになんとか言葉を返そうとして、いつからか喉がカラカラに渇き、唇が張り付いていることに気付く。…私いつから黙り込んだままだったんですの?「『休憩』…したいですの…きな子といっしょに…」囁くような声で必死に返事するのがやっとな私。冬毬…お姉ちゃんは今日大人の階段登っちゃいますの… ・ナッツの一人称語りが難しすぎるせいでだいぶキャラが迷子だなこれ。 「サイン貰ってきてくれよ~!」「『米女メイさんへ』って入れてもらう」「最っ高…!!」 上原歩夢ちゃんとはラジオで一緒に仕事をしてから時々遊びに行ったりしている。ヘビやカメの話をしたり、お互い好きな人の話をしたりでけっこう気が合う。物陰から見つめてしまったり、「誰を見てるの?」って不安になるのはとても共感できる…メイは思わせぶりだから。今日もそんなに歩夢ちゃんのこと好きなの…?ってちょっと思った。 「あの子の行こうとしてるお店をリサーチして、欲しがってた靴とかを先に買っておいてあげるの。そうするとすごくびっくりして喜んでくれるよ」参考になる。私もやろう。 「あとはこういう双眼鏡で遠くから~…」あっ、それはもうやってる。この自作望遠ゴーグル貸してあげる。「素敵~!」ほかにも発信機とか自白剤とか、私の発明品をこんなに喜んでくれた人は初めてかもしれない。 「有意義な時間だった。また会いたいな」なるべく自然に笑顔を作って別れの挨拶をすると、何故か「……それ、他の子にやらない方がいいよ」私でもちょっとドキっとしたもん、と拗ねたような顔で呟かれてしまう。……?友達付き合いってやっぱり難しい。 ・ラジオネタ。歩夢と四季って似てるところが多くて気が合いそうですよね。あぐとくまはなんかバチバチしてるけど。 「四季ちゃん」「はい」 「…おっぱい触らせてほしいんだ」メイ用の『デリカシーとか理性を失くす薬』を間違えて千砂都先輩に飲ませたかと思ったが、そうではないらしい。 「……かのん先輩に頼むべき」なんとかそう返事するも、「いやそうなんだけどかのんちゃんも私もほら、小さいでしょ?だから大きい人を体験してみたいな~とか…?」早口で言い訳を並べながら、だめ、かな?と上目遣いに頬を染めて見つめてくる。小柄でもとっても強くて優しい大好きな先輩にそんな風に頼まれたら、断れない…。 数分後。「……ふおぉ…この重量感だよ…」私の胸を持ち上げ、上下に揺らす先輩。「いやぁ…すごい…恋ちゃんとどっちが大きいんだろ…」僅差で恋先輩が上と可可先輩は言ってた。「大きくても別にいいことない」大きい人は皆それ言うよね!と口を尖らせてしまう。失言だった。 「おぉ…これは…すごく落ち着く…これが母性というやつなんだね…」胸に顔を埋め深呼吸してスーハーされるのは流石に恥ずかしい。もうそろそろ…と言いかけたところでがちゃりと部室の扉が開く。 「ちぃちゃん…!?」「「あっ」」…これはだいぶDanger…!助けてメイ。 「ち゛ぃ゛ち゛ゃ゛ん゛が゛浮゛気゛し゛て゛る゛!」ひどいよぉ!と叫ぶかのん先輩を二人がかりで宥め、なんとか落ち着かせるまで数分。 まだだいぶジト目の先輩が言い出したのは、「私も触らせて!四季ちゃんのおっぱい!」「は?」どうして。「まあしょうがないね。独占はよくないし、今日だけ特別にいいよ!」…私の意思とかは? …「なるほどこの柔らかさはヤバいね~」「でしょー?四季ちゃんは凄いんだよ!」わしわしと私の胸を揉むかのん先輩と、ドヤ顔で腕組みしてうんうんと頷く千砂都先輩。もっとダンスとか歌のことで褒めてほしい。 「すごいね~…すみれちゃんのお尻に匹敵するよ~」かのん先輩がえびす顔でそんなことを口走る。確かにすみれ先輩は色々柔らかそうだけど、…お尻? 「…なんでそんなの知ってるのかのんちゃん?触ったの?」しまった、と口を噤んでももう遅い。 浮気だよ!そんなの○じゃないよ!かのんちゃんのばか!しょうがないでしょあのデカケツには抗えないって!ちぃちゃんだって浮気してたじゃん!と、また犬も食わない喧嘩を始めたふたり。これがLiella!のエースと部長の姿なの…?助けてすみれ先輩…。 ・全力でおバカなちぃちゃんを急に書きたくなったので。 「メイ、生きてますの?」「んー…」 燃え尽き症候群というか、進学後のメイは完全にだらけ切っている。講義も最低限しか出ないし、いつもアパートでスクドルの動画やらゲームばかり。 見かねて交代で世話しに来てるわけだが…今日も本人はベッドの中でスマホから目を離さない。 流しに積まれた皿を洗っていると、メイが後ろから抱きついてくる。「そんなんいいからしようぜ~…」 「…後にしてほしいですの、んっ」返事など待たず、私の体を弄り始める。 「私はともかく四季ときな子にはもっと優しくするんですの。本当に愛想尽かされますの…」 澁々ベッドへ向かいながら釘を刺すも、聞いているのかいないのか…。 散々に絡み合い、裸で抱き合って余韻に浸っていると、ふとメイが泣きそうな声で呟く。「夏美…ごめん。みっともなくて」 「格好良いメイに戻るの、皆待ってますの」よしよしと撫でていると安心したのか寝息を立て始めたので、布団を抜け出して家事の続きにかかる。 料理を冷蔵庫に詰め、掃除洗濯も済ませ、『ちゃんとお皿は洗いなさい!』とメモを残して軽い達成感に浸りつつ。 「…一緒に食べたかったですの」今日も何も言えなかったな…。 ・燃え尽き自堕落メイナッツストーリーは結構な可能性を感じるんですけど500字単位ではとても纏めきれないので誰か書いて。 「マルガレーテ、貴女誘っているんですか?」「へ?」 「スカートです。そんなに短くしてる人他にそうそういませんよ。しかも大股でずかずか歩くから時々下着が見えてます」 時々ではない。もはや結ケ丘に彼女のパンツの色を知らない生徒はいないでしょう。 「別に見えたって困ることないでしょ、女子校なんだし。それに私はスタイルだって自信あるもの。わざわざ隠すなんて性に合わない」 そういう自信満々な所は素敵ですが、もう少し節度というものが。 「だってかのんが…」 どうしてそこで先輩が…ああ、『もっと脚出してこ!その方が絶対可愛いよ~!』などと言ったんでしょうね。週に8回くらい言ってそうです。 ……ふーん。私だってもっと可愛いって思っていますよ。 「冬毬…?なんか複雑そうな顔してるけど大丈夫……?」 無知でムチムチなマルガレーテに適当なことを吹き込んだのはギルティですが、結果的には大変アグリーです。感謝すべきか簀巻にするべきなかどちらなのでしょうか。 …それはさておき、私の気も知らないで覗き込んでくる目の前のお馬鹿は簀巻、もしくは亀甲縛りとかにしてお説教ですね。楽しくなってきました…! 四季は変わった。 いろんな色の中に居ても「白」は染まらずそこにあるというが、まるで白いスクリーンが周りの色を反射してカラフルに輝くように、みんなと過ごす日が増えるたびに新しい表情を見せる。 千砂都先輩とのダンス練習で褒められた時にはまるで子犬が尻尾を振るように喜んでいるのが見て取れるし、夏美や冬毬と悪ノリ一歩手前の話題で盛り上がっている姿などは、私と二人きりの科学室にいたら絶対に見られなかった。 …そんな四季の姿にどこかモヤモヤするのは、嫉妬などではない。私は四季の「メイが好き」という言葉に甘えて、あいつの世界がどこまで広がっても自分を一番に想ってくれるかと試しているんだ。 手放す気なんてさらさらないくせに、口では「私だけに依存するな」と突き放すふりをして。「好き」を引き出しては、今日も私は四季の一番でいられていると優越感に浸っている。 依存してるのはどっちだよ…我ながら強欲なうえに歪んでいる。 …それでも、二人きりで見つめ合えばすぐに私の色(ルージュ)に染まって恥じらう顔を見たら溺れてしまうのも仕方無い。四季が罪深い私だけを見てくれている時が、一日でも長く続きますように。 ・罪DA・YO・NE記念。今考えても11人を3チームに分けるってのに2-5-4になるのおかしい。 「…なにこの謎の生命体」 「マルチーズのマルちゃんですよ」私達をモチーフに動物化したぬいぐるみシリーズですが、あまりお気に召さない様子です。 「もっと格好いいやつがよかった。狼とかサメとか」そっちでしたか。 この手のグッズは何個か変わり種を混ぜて目を引くのが定番ですから、と宥めますが「そもそも変わり種率高くない…?かのんのフクロウもなんか独特の表情してるし」確かにかのん先輩こんな変顔しないのに妙に馴染んでますね。 「すみれ先輩も複雑な顔してたわよ」グソすムシは…確かに一番目に留まりますね。「可可先輩が褒めたら上機嫌に戻ってましたよ」「ちょろ…」プライド高いように見えて結構単純…親しみやすいんですよ。 「私は可愛いと思いますし好きですよマルちゃん。部屋に飾ります」「…ふーん」おや、思ったよりも反応が淡白です。 「…冬毬…ぬいぐるみよりもっと私に言うことがあるんじゃない?」ああそういう… 「勿論解っています。ぬいぐるみより貴女が一番可愛いですよマルガレーテ」 「うんうん。当然よね!わかればいいのよ」ぱっと表情が明るくなり、今度はご満悦。 ちょろいんですよね。そういうところも好きですよ。 週末に四季と遊ぶときは、いつもスクドルのイベントやショップに猫カフェ巡り。たまにはお前の行きたいところに行かないか、と尋ねる。 「じゃあ、あそこ」四季が指差したのは、夜空にネオンが眩しい宿泊施設。……ええっ!? 「メイと一緒に…行きたい」望まれたなら、応えたい。でも心の準備が…/// 脳内真っピンクに染まった私が手を引かれやって来たのは、ラブホ…の向かいにあるペットショップ。だよなあ! 「ここは海外の昆虫とか輸入してて、見てるだけで楽しい」目を輝かせてクワガタを眺める相棒に気が抜けて呟く。 「いやあ、びっくりしたぜ…」「?」「何でもねえよ…勘違いしただけだ」 四季はそんなやらしいこと思ってるわけないのに、失礼だぞ私。浮かれすぎだ!と反省していると、四季がおずおずと切り出す。 「メイは…ホテルに行きたかった…?」「なっ…!」「私はメイが望むなら、いいよ」 目を伏せ耳を朱に染めながらもはっきりと言う。私が望むなら、か。四季にここまで言わせたんだ。『決めるのは、自分だ』ってことだよな…?だったら。 彼女達も同じ赤と青のコンビだったとふと考えながら、四季の手を取る。私の望み、私の意思で。 「メイ、これ飲んで」 「絶対怪しい薬なんだよなあ」まあこっそり飲ませないだけマシか。だいぶこいつに毒されてきてるなあ…。 「大丈夫。ちょっとホルモンバランスが変わってドキドキするのと血流が増えて感度が良くなって、軽い酩酊状態で心の抑制が外れやすくなる程度」「…媚薬じゃねえか!」 「メイがいつまで経っても手を出してくれないから」いやそれは…すごく恥ずかしいし…それにお前のことはもっと大切にしたいっていうか… 「そんなものなくても私はいつでも四季と…」 えっ、と固まる四季。クールな表情が一瞬で真っ赤に染まり、嬉しそうにもじもじとこちらを見つめる。 「そ、そうなの…メイはそういうこと、したい…?」あったりまえだろ!ただ、溺れそうで怖いし…でも四季と一緒なら、沈むのも悪くないかもな… 「まーたバカップルがイチャついてマス…」「見てるだけで恥ずかしいったら恥ずかしいのよね」 「…二人もそっち側だよって突っ込んでもいいやつかな?」「やめなよちぃちゃんまだ隠せてると思ってるバカップルその2に現実見せるの」 「あなたたちもですよバカップルその3…わたくしだけ疎外感ヒドいですよ」 表参道をブラついていたら、意外なひとと出会った。 「あっ!久しぶり~!」目を引く金髪と輝く笑顔、全身から溢れ出る陽のオーラ。 「虹ヶ咲学園の…宮下先輩だったかしら」 「愛でいいよ~!マルっち!」何度か合同ライブで会っただけだけど、すごくグイグイ来るわねこのひと。 「マルっちって去年はソロで活動してたよね?アタシ達もソロがメインだからいろいろ参考にしてたんだ~!」 …!嬉しいこと言ってくれるじゃない。独りよがりの黒歴史みたいな過去だけど、届いていたひともいたのね…。 「今のリエラの曲もよく聞いてるよ~!すっごく歌も上手いしみんなの強い気持ちが伝わってくるよね!……表参道に、重てぇサウンド響かせよう、なんつって!表参道だけに!」「ふふっ。何それ」 「また虹ヶ咲にも遊びに来てよ!エマっちやランジュ、ミアチともきっと気が合うと思うんだ!」「ええ。是非に」 ハイタッチして去る愛先輩。Liella!にはいないタイプだけど、少し話しただけで心が明るくなるようなすごい人だったわね。 私も今度皆の前でダジャレのひとつでも言ってみようかしら。どういうわけか、私とダジャレってすごく相性がいい気がする。 ・中の人ネタのあいマル。愛さんが言う駄洒落を思いつかなさ過ぎて結局どっかで結那が言ったのをそのまま採用してしまった。 トマカノーテ発足時に冬毬が自作した衣装…やっぱり露出が多いわね。 「かのん先輩に一度着てもらいたかったんですが、断固拒否されました」 珍しく凹んでるから何事かと思ったけど、心配して損した。 「なので貴女が着てください」「なんで!?」「先輩の性格的に頼み込んでも可能性は低そうなので」 私はかのんの替わりってこと!?流石に腹立つわよ…!ちゃんと頼むなら、いくらでも着てあげるのに…。 「あんたほんといい性格してるわよね!」 …と言いながら何やかんやで着ちゃう私もチョロい…ところで。 「胸がきっついんだけど!」 「先輩に合わせてますから。ですがこれはこれでアグリーです。動画も撮っていいですか」「やめてよ…///」 誰かに見られたらマズいと思っていると、お約束のようにドアが開く。 「あ!……あー…お邪魔しました~…」 「かのん先輩!?違うんですこれは何かの間違いです待って逃げないでください~!」ほら。私はもう慣れたわ。 「聞いてよすみれちゃん!部室で冬毬ちゃんとマルガレーテちゃんがコスプレえっちしてたんだよ!」「あんたねぇ…真面目なあの子達がそんなことするわけないでしょ」……ノーコメントで。 冬毬が四季先輩謹製の『本音が出る薬』を飲んだらしいわ。導入が雑ね。 「かのん先輩、大好きです。一番の憧れです。あなたみたいなアイドルになりたい」「えへへ…嬉しいなぁ~!クネクネ」いつもより余計にくねくねしてる…。 「姉者、大好きです。夢を追い続ける姉者と一緒に頑張りたいです」 「冬毬…ありがとう!私も大好きですの」よかったわね夏美先輩…。 「マルガレーテも好きですよ」うんうん。…え、それだけ?もっと、カッコいいとか美しいとか愛してるとか、ないわけ? 「貴女は私のこと好きって全然言ってくれないから嫌いです。寂しいです。私はこんなに想っているのに…」 あんたも普段全然言わないのに…そんなこと思ってたの? 「悪かったわ…二人だけの同期なんだし、その、恋人なんだから、今もこれからもずっと大好きよ」 「…嬉しいです!もっと言ってください!もっともっと!」未だかつて見たことなかった満面の笑み。あんたこんな顔もするのね…! 「よかったねぇ冬毬ちゃん!クネクネ」「義姉者と呼んでもいいんですのよ~クネクネ」 …外野がうるさいから一緒に簀巻にしてから帰りましょう、冬毬。共同作業ってやつね。 ・ニジガクの「侑さんのことも好きですよ(小声)」のパロディのつもりだったけど誰にも伝わらなかった。 「マルガレーテ、貴女先日すみれ先輩にお尻叩かれて悦んでましたよね…私というものがありながら」「誤解ったら誤解よ!」反省してるんですか?なんだか余裕がありそうですね…。 「ダメですお仕置きです。今日は…」 彼女の胸元のリボンを抜き取り、手首を縛る。さらにハンカチで両目を覆ってやる。 「あっ♡こんなの…♡」自由を奪われ足を擦り合わせてもがく姿…こ、これは…あまりにも煽情的すぎますね。いけません。実に実にアグリーです。このまま眺めてるのもいいか…。 数十秒後。「とまりぃ…そこにいるのよね?なんとか言ってよ…」私が黙っているので不安になったのか、涙声になって懇願する彼女。 「ふふっ、ここにいますよ…」耳元で囁き、顔で唯一自由になる唇を塞いでやる。舌を絡めながら秘部に手を伸ばせば、そこはもう下着越しにもわかるほどとろとろに濡れそぼっていて。 「いっっ♡ん~~っ!♡」視界が塞がれたぶん敏感になっているのか、軽く愛撫しただけで呆気無く絶頂に達しびくびくと震える。 「す、すっごいよかった…クセになるかも…♡」「アグリーです…とても可愛かったですよ」またやりましょうね…。 「よし今日はここまで!私はバイトあるから先行くけど、皆はダウンしてから帰ってね!ういっす~!」「「「「ういっす~!」」」」 練習が終わり、心地よい疲労感と微かな寂しさを覚えながらストレッチしていると、「それにしても四季って~、ほんと千砂都先輩のこと大好きですの!」夏美ちゃんが急にそんなことを言いだす。なんでニヤニヤしてるの。 「気づいてないんですの?千砂都先輩と組む時だけすっごい嬉しそうな顔してますの」「ミーティングの時も絶対先輩の隣か真向かいに座ってるっす」「アグリーです。先輩と話すときだけ声のトーンが上がってます」 …千砂都先輩は確かに小さくてかわいいし、ダンスも上手くて教え方も丁寧だから話していて楽しい。部長として時に厳しく時に優しくみんなを支えてくれてるのも憧れる。 大好きなんて当たり前なんだけど…。 「…そんなこと、ない。私はメイが好き」 「ほんとにそうなんですの~?うりうり」「禁断の三角…いや四角関係ってやつっすか?恋先輩から借りた漫画で見たっす!」「ふむ。交際関係の縺れはトラブルの原因です。今白状したほうがいいかと」どうして今日はみんなノッてくるの…恥ずかしい…。 揶揄われたままは癪なので、「それを言うなら、私は夏美ちゃんのことだって、…大好き」肩を掴んで壁に押しやり、顎に指を添えて目線を合わせ、じっと見つめてあげる。 メイにされたことを再現しただけだけど、夏美ちゃんもこれで少しは動揺して反省してくれるはず。ところが。 「なっ!ナナナナナッツぅ~……///」予想に反してきゅう、と息をついて崩れ落ちる夏美ちゃん。あれ? 「…きな子たちもちょっと言いすぎたかもしれないけど、今のは完全に四季ちゃんが悪いっす!壁ドン&顎クイのコンボは刺激が強すぎっす!」「あああ姉者しっかり!意識を強く持って!帰ってきてください~!」 夏美ちゃんは顔を真っ赤にして完全に目を回してしまった。そんなにびっくりしたの…?ちょっとショックかも。 …私はきな子ちゃんも冬毬ちゃんも大好きなんだけど、二人にももっと普段から伝えたほうがいいのかな。そして、千砂都先輩にも? よし。これからはもっと5yncri5e!、そしてLiella!のみんな、もちろんメイにも「好き」の気持ちを表現していこう。3人で夏美ちゃんを介抱しながら、私は密かに決意したのだった。 「理事長室はどちらですか?」 校門で可可とダベっていると、妙齢の美女が訪ねてきた。案内している間、可可がその人の顔をマジマジと見ながら眉を寄せている。知り合い…? 「理事長。椿です」 「……椿!?そうデス!椿ルリカちゃんデス!」理事長より先に反応する可可。誰!? 「あら。私のこと知ってるの?」 「あったりまえデス!椿滝桜女学院アイドル部といえばスクールアイドルという概念そのものの生みの親まさにレジェンドオブレジェンドデスその不動のセンターたるルリカちゃんがどうしてここに!哎呀妈呀!救命啊!」 早口ったら早口ね…。そんなにすごい人なの? 「今はママの跡継いで理事長だから。でもこんな若い子がファンなんて嬉しいな~♡」 にこにこ笑って軽く手を振り、当時の持ち歌と思われる曲を口ずさみ始める椿さん。「それがスクールアイドル~♪」 「~~♡!!」可可はもはや日本語でも中国語でもない咆哮を上げてぶっ倒れる。流石に理事長も唖然としてるわ…。 数十分後に復活したものの、残された「唐可可さん江」と書かれた直筆サインを見てまたぱたりと倒れていた。幸せそうで何よりだわ…。 ・スクミュ見た記念にスクミュネタ。ママ似の愉快な美女になったルリカちゃんが書きたかった。 「今日はオニナッツチャンネルにゲストが来てくれましたの~!」 「こ、こんにちはっす!桜小路きな子っす!」 『きな子ちゃん!』『かわいい』『久しぶり~』と和やかなコメントが流れる。平和な配信になりそうですの…。 と思っていたら「『今日は旦那じゃないの?』……?旦那って誰っすか?」きな子が早速余計なコメントを拾う。 「ああ、四季ですの…前に来たとき「夏美ちゃんは私の嫁」とか言ったせいで旦那扱いされてますの」 「そそそんなのダメっす!メイちゃんが可愛そうっす!」ただのネタなのに、きな子は純粋でかわいいですの…。 「それに…!」…あっ。いらんこと言うパターンですの! 「夏美ちゃんは私の嫁!四季ちゃんにはあげないっす!」スイッチが入ったのか、ぎゅっと抱き寄せ口づけてくるきな子。好き…♡でもここではマズいですの! 『きなナッツもいい~フゥー!』 『姉者…嘘ですよね…』 『脳が回復するぜ…!』 『続きはFANZA!なのですか?!』 加速するコメントと触れあった身体の感触。承認欲求や別の欲求がすごい勢いで喚起され、前戯くらいまでならイケるか…?と浮かれた頭で瞬時に皮算用する。 当然BANされた。 深夜。ふと目が覚めると、マルガレーテちゃんの部屋から声がする。冬毬ちゃんが泊まりにきて話が弾んでいるんだろうけど、流石に明日に響くだろうから一声かけようとそっとドアを開ける。 …薄暗がりの中ベッドで重なりあう二人の姿。叫び声をギリギリで押し殺せたのは奇跡だった。 ゆっくりとドアを閉め、なんとか気づかれず自室に戻れたが、彼女の肢体と嬌声が頭に焼き付き心臓が早鐘を打つ。いつから?どっちから?なんで教えてくれなかったの?…暗い感情ばかりが渦を巻く。 全然私に気づく素振りもなかったし…あんな顔見たことないな…二人だけの世界ってやつかな…。 「好きだったのになあ。マルガレーテちゃん」呟くともう堪えきれず、涙が溢れる。失恋の歌詞なんて無数に読んだし、考えていたフレーズもたくさんある。でも、実際に体験するとは大違い。あぁ、キツいなこれ…。 それでも明日からはいつも通り、ただのお節介でちょっとウザ絡みな『かのん先輩』でいなきゃいけない。これで調子を崩したら私と組んでくれた2人に失礼だし、全力でぶつかり合うと決めた8人に合わせる顔がない。 …だから、この気持ちは今夜でおしまい。 そう決めた。 それはさておき。 「あんな顔、初めて見たな…」 彼女の顔と白い肢体を思い返しながら、下着をずらし、敏感な部位に触れる。そこは既に薄く湿っていて。 「ん…マルガレーテちゃん…好き…あっ…」なぜこんなに興奮してるのかなあと他人事のように思いながら、ナカを掻き回しながら敏感な突起を弾く。 『かのん』彼女の甘い声が脳内に響く。『すきよ。わたしも』あの子はそんな顔をしないし、そんなに優しく声をかけてくれることはない。これまでも、きっとこれからも。 でも今夜だけは、そんな幻想に浸らせてほしい。…まあ何度もシたからそういう妄想は慣れたものなんだけど。 瞼の裏に彼女の裸体を思い浮かべながら、気持ちいいところを捉えてぐちぐちと掻き回す。「ん…すき…すきなの…!つっ……!♡」太腿が突っ張り、びくびくと痙攣する。そこはぎゅっと締まり、熱い蜜がじわりと溢れる感触を指先で感じる。…過去一番気持ちよかった。 「ふぅ……ぅぅ」今夜は眠れないと思っていたが、長く息をつくと身体は単純で、もう満足したから休めと言ってくる。私はその声に従い、ゆるりと意識を手放す。 ・最初はふたりの痴態を覗き見たかのんちゃんがオナニーするだけの話だったけど勢いで失恋させちゃった。 「ゴールデンウィークにはゴールデンマイクロビキニを」「着ない」だいたい四季の言うことは予想がついてきたので、この程度で動揺などしない。 「そう言うと思って私が着てきた」「なんで!?」いつもの平板な声色は変わらないが、僅かに頬が紅潮している。 ほんとに…?四季がこの服の下にあんなえっちな水着を…?興奮してきたな…! 「見たい…?」「はあ!?そんなわけないだろ!」見たいに決まっている。 「…冗談。そんな物着てくるわけない。メイのえっち」 いつものクールな表情に戻り、ニヤリと笑う四季。こいつの冗談は冗談に聞こえないんだよな…心臓によくない。 そこで四季を正面から見据え、真面目な声で言ってやる。 「いや、そんな冗談で済ませるなよ…?着ると言ったからには着てもらう」「えっ」 …これはあくまで四季が変な嘘でからかってきたから責任取らせるだけで、私欲とかでは断じてない。 「なんなら皆の前ででも」「えっえっ」四季が悪いんだぞ。 「そ、それはダメ…二人きりのときなら…」ニヤリ。「…言ったな」「……メイのばか。変態……♡」お互い様だよ…♡ 見たし見せた。たいへん眼福でした。 「四季先輩。姉者と距離が近過ぎでは?」こいつ言っても聞かないし…「そう?このくらい普通。夏美ちゃんとは友達…親友だから」「そ、そうですの!仲良し、ですの~」 しれっと言いながら私の頭にアゴ乗せるのをやめない四季、ほんといい度胸してますの…。 「それを言うなら、冬毬もマルガレーテと相当親密に見えますの。この前うちに来たときも部屋で…」「……別に何もありませんよ。ふたりで話していただけです」カマかけに乗らない…我が妹ながらクールですの。 でも急に振られた相手はそうではなく。「そ、そそそそうよ!なんもないったらないんだから!べつにハートごとゲッチューとか、丸ごと包んでぎゅっとしてChuっとかないんだから!」…語感が独特すぎる。 「貴女…なんでそんなに隠し事ができないんですか」赤面しながらジト目で睨む冬毬。流石に追及も続けられず、ウヤムヤで解散となった。何やかんや一緒に帰るふたりが仲良しでうれしいですの。 ——「流石にバレたかと思いましたの」 「大丈夫。怪しいけど決定的証拠はない、位を保つのが一番安全。マルガレーテちゃんが自爆してくれたおかげ。義妹に感謝」 「気が早すぎですの!」 「すみれ先輩、ちょっと相談が」 なにかしら?ショウビジネスの世界の心構えとか? 「簀巻きの方法を教えてください」 ……なんて?「オーソリティのメソッドを身につけたいと思いまして」そんなんになったつもりはないのよ。 「かのん、ちょっとこっち来なさい」「なになに~すみれちゃん、ってなんで縄持ってるの!?今日はまだなんもしてないよ!」 悲鳴を無視して手際よく縛り上げて動きを封じ、床に転がす。もうすっかり慣れたものよ…慣れたくはなかったけど。 「まあこんなものね。参考になった?」「なるほど、ためになります」 「でもなんで急に縛り方なんて知りたいのよ?」当然な疑問を投げかけると、なぜか頬を染めて口ごもる冬毬。 「マル、いや縛りたい相手が、んん違います、趣味というか…愛情表現というか…ゴニョゴニョ」 察した。……あまり後輩の夜の営みに口を出すものじゃないわね…。でも。 「そういうプレイは怪我に気をつけて同意の上でやるのよ…」 「私同意した覚えないんだけど?!」「うっさい。デリカシーゼロのスピーカーには相応しいったら相応しいわ」 「縛られてる先輩も可愛いですよ」「うれしくない~!!」 「ククのカードはPoppin' Up!2枚とEutopia!ライブカード3連コンボでスコア9点デス!」 「くっ、わたくしのライブはJellyfishとシェキラ☆☆☆で8点…追いつけませんね。参りました」最近の先輩達は空き時間によくカードゲームで対戦している。元々ゲーム好きな恋先輩はともかく可可先輩はわりと意外だ。 「では明日の練習ですみれと組むのはククデス」「次は負けませんよ可可さん」 謎のシステムなのよね。勝手に賞品にされてるすみれ先輩が可哀想…でもそんな特典があるなら私もルール覚えようかしら。 「ところで、私達のカードは使わないわけ?」聞いてみるとふたりの顔が曇る。 「……カレスコは置いてきマシタ」「この戦いにはついてこれません…」…悪かったわ。きっと次の弾で強化されるわよ…。 具体的にはBHの付いた4コスランプキャラとか、START!True dreamより緩い条件でランプできるライブとか、あとはアグロ相手に耐えられる延命手段とかください。 ・ラブカネタ。ランジュは規制で概ね妥当なレベルに落ち着いて群雄割拠になったけど今は22すみれがちょっと強いかな?って感じですね。個人的には9→13へワープ進化するせっつーのデッキが扱いやすくて好き。 「あ゛ぁ~!ちぃちゃん分が足りないよ~!」最近はユニット練習が多くてちぃちゃんとあんまり会えてないからさみしくて、つい口に出してしまった。すみれちゃんとマルガレーテちゃんが冷ややかな目で見てくるけど事実だから仕方ない。私の半分はちぃちゃん成分でできてるんだから。 「かのん先輩、それなら見てほしいものが」すっと動画を見せてくる四季ちゃん。なになに?「5yncri5e!での千砂都先輩」 これは…ダンス練習の動画だね…ショートパンツとシャツだけでそんなに脚を開いたり屈んだりしたら…うわぁ…すっごいなぁ!見えちゃう見えちゃう!こんなのえっちすぎてえっちいちゃんだよ! 「わかる。千砂都先輩はいつもCute&Charming👍」四季ちゃんのそんな顔初めて見た気がする…。ちぃちゃんの魅力のおかげかな! 「じゃあこれはどう?たこ焼き屋でがんばって働いてるちぃちゃん!」「すごい…汗だくでSexy…!」でしょ~! その後も盛り上がって、秘蔵ちぃちゃん動画&写真を交換しちゃった。これはとっても捗るなあ~!にこにこ。「かのん先輩。今後とも是非情報共有を」もちろんだよ! それにしても。 「やっぱり四季ちゃんって、ちぃちゃんのこと大好きだよね!」同士に巡り会えたのが嬉しくてつい心がキラララしてしまう。 「そ、そう…好き…尊敬してる///」四季ちゃんったら顔を赤らめてもじもじして、なーんか、メイちゃんのこと好きって言うときよりしっとりしてない……?まさかそんな……本気で!? 「でもちぃちゃんは私のものだから!あ゛げ゛な゛い゛よ゛!」 「…ふーん」「あっ」今度は顔が急に青くなったね四季ちゃん。どうしたの?後ろ? あ、ちぃちゃんいたんだ…いつから?えっちぃちゃん辺りから?結構最初からいたね…。 「とりあえず校庭100周ね。四季ちゃんも」そのゴミカスを見るような目付きも素敵…。部長の貫禄を感じるよ…。 「動画も消してね」走るのはいくらでも行くけどそれだけは許して! 「そんな殺生な!こんなに可愛くてえっちに撮れてるのに!」「そう。こんなSexyな動画は4k画質でクラウド保存して永久保存すべき」さすが四季ちゃんわかってるぅ! 「簀巻きするからそのまま校庭100周ね。四季ちゃんも」はい。 ・かのんちゃんは好きなだけおバカにしてもいいと思い始めている。 「なあ、本当によかったのか…?言わなくて」四季が千砂都先輩のことを好きなのは、あくまで同じユニット、ダンス班の先輩への親近感とか尊敬とか。皆はそう思っていたけど、私にはそうじゃないとわかる。 「…千砂都先輩とかのん先輩は幼馴染ですごく通じ合ってるし、まさにお似合い。私の入る余地は、最初からなかった。私は先輩たちが幸せならそれで満足……!」 淡々と語るけれど、いつもの平常心を保てていないのはすぐにわかる。…ずっとお前のことを見ていたんだから。 「何も言わなくていい。私はわかってる。先輩にしたかったこと、何でも私にしていいから…」ぎゅっと四季を抱き締め、耳元で囁く。 少しでもこいつの辛さが埋められるなら、私は何でもする。そんな風に自分を捧げることでしか、大好きな相手を慰める術を知らない自分の浅ましさが嫌になる。 「メイ、ごめん…」四季の紅潮した頬と、涙で潤みきった瞳が近づき、胸がひどく痛む。 ……こういうときこそ嘘でもいつもみたいに『好き』って言ってくれよ…。渦巻く感情を振り払うように、四季の唇に貪りつく。今だけはこの罪の味を味わっても…いいよな? ・メイちゃんはなんらかの罪の意識を背負わせるとほんとにいい仕事をする。 「きな子が可愛すぎて辛い」 「まーた言ってますの」 メイは普段は格好いい所もあるのに、きな子が絡むと急に臆病になる。私や四季には当たりが強いのに露骨ですの。 「先週も買い物に行ったんだけど、あいつ『みんなで遊ぶのも楽しいけど、今日はメイちゃんとふたりで来れてうれしかったっす!』とか言うんだぜ…!勘違いするだろそんなん…!」 そこまではっきりシグナル出してるのに何やってますの。 「『今までのはただ友達同士で遊んでただけなのに、勘違いさせちゃったっすか?ごめんなさい』とか言われたらどうすんだよ!」なんでこんなに自覚がないんですのこいつは…。そろそろ怒りすら覚える。 「……きな子はきっと、夏美みたいな賑やかで華があってメゲないやつが好きなんだよ。羨ましいぜ…あと胸もデカいし」 …不意打ちでそういうこと言うからズルいですの。 「…メイだって皆のことよく見てくれてますし、大事なことに真直ぐで頼りになると思いますの」 「…どうしたんだよ…急にそんな恥ずかしいこと言って…」お互い真っ赤になって顔も見れなくなってしまったけど、こんな時間も…悪くはないですの。 「メイちゃんはきな子のこと、そんなに好きじゃないんすかね…こんなにアピールしてるのに…」メイと遊んだあとのきな子ちゃんは、時々凹んでいる。 「メイはシャイで思い込みが激しいから、なかなか素直に受け取れてないだけ。きっと本心は同じ」そのあたり、メイは私と似ている。 「もっと直接的に伝えたほうがいい。私みたいに」「……でも、それでいいんすか…?四季ちゃんはメイちゃんのこと…」 「私はメイが好き。メイがきな子ちゃんと仲良くなって幸せになれるなら、私も幸せ」 本心から伝えると、真剣な顔で「す…すごいっす…!そこまで言い切れるなんて…!これが愛情なんすね」と呟くきな子ちゃん。 四季ちゃんのためにも頑張るっす!と目を輝かせる姿に、「きな子ちゃん、…好き」つい口に出てしまった。 「私はきな子ちゃんが好き。メイも夏美ちゃんも好き。4人でこれからも仲良くできると嬉しい」 「もちろんっす!きな子たちはずーっと親友っす!」 ……その後きな子ちゃんがものすごくグイグイいって色々あった結果、親友どころか4人で一緒に交際することになったのはまた別の話。 今の私は桜小路・若菜・米女・鬼塚・四季です。✌。 彼女といると調子が狂う。 クールで強気なマルガレーテが、私とふたりのときはネコのように甘えてくるのです。 今日も私の肩にもたれて「冬毬…?もっとこっち見てよ……」などと囁いてきます。まさに魔性ですね。 物欲しそうな顔に応え、優しく手首をベッドに縛り付ける。いつからかそれが始まりの合図になっていたが、私が本当に縛りたいのは。 「…?冬毬?今日はそういうやつなの…?」一向に彼女に触れないせいで、心配させてしまう。 「…私だって大概素直じゃないし、でも冬毬と一緒の時はなるべく正直でいたいと思うのよね」「何が言いたいのですか」「たまには自分をさらけ出すってのもいいんじゃない?どっかのスクールアイドルも言ってたわ」見抜かれている。 「……貴女と一緒にいると調子が狂います」「いいじゃない。もっと私にしか見せない顔を見せてほしい」 「ずるいですよ…そんなの…んっ」 こうして今夜も、私だけが見られる彼女の姿が増える。 ——さらけ出した結果、彼女の全身おもに腰が大変なことになって翌日の練習を休むことになったのは秘密です。「どっちかと言うと私の方がさらけ出したわよね!?」 「すみれ先輩は私のお嫁さんむっ?!」 最近のマルガレーテは毎朝よくわからないことを口走るので、塞いでやった。私というものがありながら、すみれ先輩が嫁だなんて。悪い口はこれですか? 舌を絡めながら薄目を開けて眺めると、彼女が目を閉じて恍惚に浸っているのがわかる。でもこれは「お仕置き」なんですよ…。 しっかりと彼女の頭をホールドし、優に普段の倍以上の時間をかけて歯列をなぞり口内を蹂躙する。彼女はタップするかのように背中に回した腕でばしばしと叩いてくるが、当然離してなんかやらない。 お互いの肺腑の中の酸素を奪い合うように唇を貪りあい、酸欠で視界が紅黒く染まってきたあたりで唇を離す。 はあぁ、と長く息をつき、肩で息をする彼女に優しく問う。 「わかりましたか、マルガレーテ?」 涙をぼろぼろと零しながら私を見上げ、呂律の回らない口でなんとか紡いだ言葉は。 「…ふぁい…とまりのおよめさんでしゅ…」 口角が上がるのを抑えられない。ちゃんと理解ってくれたようで何よりですよ、マルガレーテ。 …どちらかといえば私が嫁のほうがいいんですが、まあいいでしょう。 ・冷静に考えれば鼻は空いてるんだからキスで窒息ってないよなあ。という理性をうるせえ!と黙らせながら書いた。 「千砂都よ」「…えっ」 「千砂都ったら千砂都」「」 毎朝カレスコの3人から嫁宣言を受け、かのんには「で、すみれちゃんは誰を選ぶの~?w」と煽られる日々。 いい加減めんどくさいので、こう言って黙らせることにした。 効果は覿面、クク達とは遊びだったのデスか!?などと叫ぶ4バカを追い出し、練習の準備にかかるが、当の本人が笑みを浮かべてノッてくる。 「すみれちゃーん…今の、本気だったりする?」「んなわけないでしょ!あいつらがウザ絡みしてくるから言っただけよ」 「…そうだよね。んもーひどいよー!」頬を膨らましてむくれてしまう。ごめんごめん。表情豊かで可愛いわよね。 「——私は…本気だったらいいなって、思ったよ?」…まだ揶揄われてるのかと思ったが、くるりと背を向け屋上へ向かう千砂都。その一瞬に浮かんでいたのは明らかな悲しみで。 …もし、万が一「そういうこと」だとしたら、私がしたことは最低だ。4人を責める資格なんてない。 「待って…千砂都…そうじゃないのよ…」 後悔に埋め尽くされ、口の中がカラカラに渇く。日常が簡単に壊れてしまったことを実感しながら、ひどく小さく見える背中に震える手を伸ばす。 ・この辺から四季メイ以外も隙あらば重々にしてやろうという癖が漏れ始めている。 「…新曲?Liella!との対決が近いのよ」 「3人での活動もいつまでかわからないから…冬毬ちゃんセンターの曲を作りたいんだ。四季ちゃんも可可ちゃんも、すっごくきらきらしてた。冬毬ちゃんにもその景色を見せてあげたいって、思わない?」 「…あんたほんと冬毬のこと好きよね」 「あったり前じゃん!可愛い後輩だよ!大好き!あっ、もちろんマルガレーテちゃんのことも大好きだから安心してね!」 …!誰にでもすぐそうやって好き好き言うヤツって分かってても、言われる度どきりとしてしまうのが癪だ。 「話し方も柔らかくなってきたし、アイドル活動もすごく楽しそうにやってくれるようになったよね!それが一番嬉しいんだ~」 …最近冬毬が楽しそうなのは同意する。でもこいつ、肝心なことを何もわかってない。 冬毬がかのんのことを見る目付き。私にだってわかるくらいの熱視線送ってるのに、本人がこんな調子じゃあ可哀想にもなる。 それに私だって…。 まあ、そんなの絶対教えてやらないんだけど。 「暑苦しくてウザい」「えーひどいよ~!」 学園祭のステージで全てが決まる。でも今は、私達がこの愛すべき先輩を独占してもいいわよね…。 「四季ちゃーん!」「はー……ぃ……」 油断していた。最近そこかしこで「アレ」やってよと振られるせいで、口が勝手に動き、律儀に手まで上げてしまっている。 「えーと…ごめんね?」私に用があったのか、申し訳なさそうな千砂都先輩と、にこにこ笑っているかのん先輩。これは今日中には結ケ丘中に広まってる…。 「忘れて…」顔が熱い。そんなに恥ずかしがらなくていいのになあ、可愛いよ?と言ってくれる千砂都先輩。やさしい…。 「うーん、じゃあこういうのはどう?」かのん先輩が耳打ちしてくれたのは、たいそう魅力的な提案。 ——「ち、千砂都せんぱーい……」 「そうじゃないでしょ四季ちゃん!」何故かノリノリのかのん先輩。何故? …もうヤケだ。「千砂都ちゃーん!」 「はーい!」「何が好きー?」 「コーラフレーバーよりも、あ、な、た!」 完璧な振り付け込みでこなしてくれる先輩。かわいい…。 「ちぃちゃん前から練習してたからね~」「ちょ、それは言わなくていいよ~!」先輩方はいつも仲良しで羨ましい…でも。 「千砂都、ちゃん……」その慣れない響きを噛みしめるように呟くと、何故か胸がどきどきする。この感情は、いったい…? 「ただいま~ってうわっ!四季か」「おかえりメイ。待ってた」休日出勤から帰ると、扉の前で四季が仁王立ちしていた。そのまま抱きしめて口づけてくる。嬉しいけどせめて着替えさせてくれ…。 「遅くなって悪い…どうしたんだ?」「何でもない、けど…」歯切れの悪い四季。そしていつもはすぐ出迎えてくれる残りの二人が出てこないことで察した。 「あ、おかえりっすメイちゃん」「夕飯にしますの」と、二人の部屋から半裸で出てくるきな子と夏美。明らかに事後だこいつら。 「お前ら…四季を仲間外れにしてないよな?」「あっメイちゃんおこっす」「…私達も誘いましたの。でもメイが帰ってくるの待つって…」そうなのか? 「そう、待ってたのは私の勝手。だから二人が私達の部屋まで聞こえるくらい盛り上がってたのも、別に悪くない」「っす!?」「そそそんなに…うるさくしてないですの~?」 「四季を放っておいて二人で盛ってたんだな…これは、おしおきが必要だなぁ?」四季と顔を見合わせて、ニヤリと笑ってやる。 「そうだね。いい道具もある」 抱き合い震える二人の可愛さに、疲れも忘れて色々と滾ってくる。私達、何やかんやで仲良くやれてる…よな? 「かのんちゃん…相談したいことが」 今までになく真剣そうなちぃちゃんから呼び出され、二人で話がしたい、と。 「マルガレーテちゃんのお腹にすごく沢山、痣みたいなのがあって…よく見たら手首にも縛られた跡が…」 ……冬毬ちゃんだ。それ冬毬ちゃんだわ~!私同居してるから二人が「いろいろ」してるの知ってるんだ~…。 「私、何にも気づかなくて…部長失格だよ…」 脳細胞をフル回転させ、上手く二人の名誉を傷つけずにちぃちゃんを安心させる方法を考える…が、無理だよこんなの!ちぃちゃんがこんなにウブだったなんて! 「あのねちぃちゃん…それはきっと…心配ないやつだよ」「……何でわかるの?」 今にも涙をこぼしそうなちぃちゃんの手を取る。細くて柔らかくて白い、世界で一番大好きな腕。 「かのんちゃん?」「だってその痕って、こういうやつだもん…」肘の中あたりに唇を当ててちゅうう、と強く吸いつき、痕を刻みつけてやる。 「……あっ、そういうこと……」やっと思い至ったのか、顔をその痕と同じ色に染めて俯いてしまうちぃちゃん。 「ねえちぃちゃん。もっと…つけてもいい…?」可愛い可愛い幼馴染は無言のまま、こくりと頷く。 幾多の偽装ページを掻い潜り、いつもの闇配信サイトを開く。そこには。 「こんにちはですの~♡」 薄暗い部屋でスケスケの衣装を纏い手を振る、金とピンクのグラデ髪と小柄な割にやたら大きな胸の彼女。 「今日も楽しんでいってほしいですの~、マニーもお待ちしていますの!」 焦らすように着衣を脱ぎ捨てながら、煽情的に腰を振ったり、カメラにお尻を向け、くぱぁとソコを広げてみたり。 「あ、Riceladyさんいつもありがとうですの~」ちゃりんちゃりんと課金音が響き、その度に彼女の秘所に埋もれたバイブが振動を強める。 「んっ♡あなたのオプションで…イキますの…!!♡」大股開きで全身を痙攣させる姿を見つめながら、股間に突き立てた彼女とお揃いの淫具を強く締め付け、昇りつめる。 ——彼女の痴態を眺め、投げ銭を介して交流するのを楽しみながら、私が妄想しているのは。 学校で「いつも見てる」と伝えたら。あいつは怒るのか、泣くのか、それとも悦ぶのか。あるいは、この配信で「オニナッツ」とコメントしてみる? ……ひとの生殺与奪をこの手に握るというのが、こんなに興奮するなんて知らなかった。 スイーツ、というか食全体にうるさい貴女のお眼鏡に叶うだろうと探し出した店。 途中まではうきうきしていたのに、店に近づくにつれて渋い顔に。店の前でとうとう「ごめんなさい冬毬、急用を思い出したわ」などと、あからさまな嘘で逃げられてしまうなんて。何か気に障ることをしてしまったのでしょうか…? 仕方なく一人で予約席に付き、ショートケーキを頼む。軽やかなスポンジと程良い甘さのクリーム、恋先輩にも合格を頂けそうな質の良い苺。…きっととても美味なのだろうけど、今はまったく味がしない。 「貴女と一緒じゃなければ、美味しくないですよ…マルガレーテ」 楽しい時間を過ごせるはずだったのに、彼女はそんなに嫌だったんでしょうか…? 彼女のことを考えると、いつもこうだ。理屈の及ばないところでどんどん不安が膨らんだり、訳もなく恥ずかしくなったり、まったく私らしくいられない。 ……それがどういう感情なのか分からないほど初心ではないけれど、言葉にするにはまだ早い。もう少し彼女が私のことを意識してくれたら…。 ひとりであまり長居しては変に思われそうだし、色々な感情が決壊してしまいそうなので、早々にレジへ向かう。 価格もクオリティの割には良心的で、人気なのも頷ける…などと考えていると、レジの上にでかでかと貼られた写真に目が止まる。 『期間限定ギガ盛りパフェ完食者 Wien Margarete』。唇の端にクリームを付け、スプーンをトロフィーのように誇らしげに掲げる彼女の姿が。 ……呆れました。今更、そんなので恥ずかしがるような仲ですか。貴女に付き合わされて何度大盛り定食屋やら食べ放題やらに通ったことか。 無性に腹が立ったので、Liella!のグループトークにドヤ顔写真を共有してやる。 既読とスタンプの連打に少しだけ溜飲を下げていると、「冬毬!?あんたなんてことするの!」ダッシュで店に飛び込んできた。 その腕を掴み「私は知りましたから、もう逃げないでくださいね」と。内心を隠しとおせるくらいには、悪戯っぽく言えたのではないでしょうか。 「……悪かったわ。逃げちゃって」こうなりゃヤケ食いよ、と席へ向かう背中に向けて「私はこれで2個目ですが、体重が増えたら練習に付き合ってくださいね」と呟く。 「2個?たったそれだけで増えるわけないじゃない」 そういうことじゃないんですよ。ほんとお子様ですね。…ばか。 ・甘々なのも書きたいんですよホントは。苦い苦い甘いくらいがいいですよね。 四季先輩に用があり科学室を訪れると、いつものようにクワガタのお世話をしている彼女。 「…クワガタを見ると、昔会った男の子を思い出します」「…へえ?」 なんの気無しに呟いた言葉でしたが、何やら先輩は気になる様子。まあ隠すことではないか。 「小学校に上がる頃だったかと思いますが、牛久に旅行に来てたらしく何日か一緒に遊んだ子がいたんですよね」 「そうなんだ…どんな子だったの?」 「確か『しぃくん』とかそんな感じに呼んでた記憶があります。クワガタをたくさん採ったり、おもちゃを自作したりで姉者と大層気が合ったらしく、その子が帰ったあともずっと「また遊びたい」とか果ては「大きくなったら結婚する」とまで言っていたような…」 思えば、とても口数の少なくてクールな子でした。私がこのような性格になったのも、姉者の気を惹きたくてその子の真似をしていたのがきっかけなんですよね…これは誰にも伝えていないのですが。 「……そろそろ帰ろうかな。冬毬ちゃん、ありがとう。『なっちゃん』にもよろしく」 ……どうして四季先輩が姉者の昔の呼び名を…?それに何故そんなに嬉し恥ずかしそうなんでしょうか…? 世は大怪盗時代。この街にも多種多様な怪盗が現れ、日々警察機構との鬼ごっこを続けている。 抜群の連携を見せる怪盗クーカー、街中のマルいものを全て奪っていく怪盗マンマル、怪盗気取りのエルチューバーオニナッツ、大食いチャレンジに挑戦しては賞金を攫っていくことからバンデット(盗賊)・マルマルと称される怪盗マルガレーテ。 そして私は。 「あーっこの野郎!待ちやがれ怪盗シッキー!」「……しつこい。私を捕まえるなんて無理」「そ、それでも…お前のことはほっとけない!」なぜか顔を赤らめる警官メイ。……いつもながら可愛い…もう我慢なんてできない。 「私の目的は、…メイ。あなたを奪うこと」「へぇっ!?」虚を突かれて脚が止まったメイを抱え上げ、裏路地へ飛び込む。「は、離せー!」じたばたするが、もう離さない。 「ふふ…本当に可愛い」謎に星型の手錠を取り上げ、自作の拘束具で彼女の四肢を縛り上げる。 「な、何する気だよ……///」「わかってるくせに。いけない刑事さん」身悶えるメイにゆっくりと近づき、その肢体に指を—— 「…ってのはどうかな?」「……他校のスクールアイドルで妄想カプ文書書くのやめなよ…」 ・座長をオチにするとなんとでもなってしまうので多用しないようにしよう。 「ん…冬毬…もっとして…♡」 「ふふっ…可愛いですよ」 またやってる!まあ仲良いのはいいことだしプライバシーでもあるからあんまり言えないけど、そこお父さんの部屋なんですけど~。私が聞き耳立ててるのがよくないのかなあ。 マルガレーテちゃんの嬌声が一際高くなり、ふと静かになる。「最後まで」行ったんだな…って察してしまえるのがなんか嫌だ。 と、がちゃりとドアが空き、二人が入ってくる。私は当然壁にへばりついたままで。「かのん、ちょっと聞きたいんだけど、……あっ」「…あっ」私の人生終わった…。 「もしかして、私達がしてるの盗み聞きしてたの…?」「……そのようですね」顔を見合わせ、ニヤリと笑うふたり。先輩としての威厳が…。 「それは元々ないから大丈夫よ。かのん、ちょっと来なさい。悪い先輩にはお仕置きしてあげる」「だ、ダメだよ!そういうことは好きな人とじゃないと」「私はかのん先輩のことも好きですよ」えっ。冬毬ちゃんそうだったの?!嬉しいけど、それ今言っていいの?!卒業式とかまで取っとかなくていいやつ?! 混乱が収まらないまま、マルガレーテちゃんの部屋へ引きずりこまれてしまう。私、どうなっちゃうの~? 「それでその時姉者が…」つい口が滑ってしまったが、この姉バカは聞き流してくれない。「姉者は私の姉者ですよマルガレーテ」「ああ…そうね。あんたがいっつもそう呼ぶから伝染っちゃった」 「しっかりしてください」 「…将来は義姉になるんだから今呼んだっていいじゃない」「それはそうですが」意外とちょろい。 「……私のほうが生まれは早いんですから、貴女は私を姉者と呼ぶべきです」おっとまた冬毬が変な方向に走り始めたわよ。 「いやひと月も変わらないでしょ…」 「さあ呼んでください。姉者の命令ですよ」この子時々おかしくなるのよね。まあ呼ぶくらいなら…。 「と、冬毬…姉者…」 「…はぅっ」 固まっちゃった。なにその反応…? 「す、すごい破壊力でした…意識が飛びかけました」そんなに。 「…姉者は封印しましょう。危険すぎます」ふーん。「本当にいいの、『姉者』?」「…コヒュッ」…これは、弱点見つけちゃった…? …と思ったのは一瞬。 「ふふっマルガレーテ、…お姉ちゃんに任せてください。さあ脱ぎましょうね」ぐるぐるした眼の冬毬にかつてないパワーで押し倒され、余計な挑発をしただけだと散々に思い知らされた。もう姉者はこりごりだわ~…。 「マニーです」 「マニーっすか…」即答した。 きな子先輩から、Liella!全員からの誕生日会とは別に、姉者へ個人的にプレゼントを贈りたいと相談されて。私の返答は軽い意地悪も含んでいました。 「冗談はさておき、先輩からなら何を貰っても嬉しいと思います」「冗談だったんすか!?」 もー!と怒るきな子先輩。相変わらず先輩らしくないというか、親しみやすくて何よりです。 「去年もちょっとしたお菓子だけだったから…今回はメイちゃんや四季ちゃんみたいになにか形に残るモノを渡したいんす…」と真剣な顔で呟く先輩。 確かに…メイ先輩からの猫ストラップ、四季先輩からのドローンカメラ、それぞれ大切に使ってますね。 ……でも、姉者が去年きな子先輩から貰ったというお菓子のパッケージを綺麗に保存していたり、それはそれは嬉しそうな顔で私に何度も見せてきてくれることはまだ秘密にしておきましょう。今年は何を貰えるのか、先週からずっと浮き足立っていることも。 それに、きな子先輩は「ただのお菓子」と言っていたそれ、関東では手に入らない北海道銘菓をわざわざ取り寄せてますよね…。 まったく、傍から見ていてもじれったい限りですよ、『義姉者』? 嵐千砂都です。最近悩みがあります。 私がリーダーを務める5yncri5e!なのですが、…風紀が乱れているような気がします。 きっかけは四季ちゃん。すっごく頑張っていたから「何かしてほしいこととか、ご褒美とか欲しいものとかない?」と聞いたら、「……Kiss」とか言うの!仕方なくほっぺたにしてあげたらすっごく喜んでくれたのはいいんだけど、次の日になったら皆に自慢してるの!もう恥ずかしいからやめて! その後はほかの3人も何か頑張るたびに、…キスしてほしいって言い出すようになったり、後輩同士でちゅーしてたり。普通の距離感ってのもよく分かんないけど、みんなこういうものなのかな…?「一般的なスキンシップの範囲でしょう。私も姉者とはもっと色々しています」って真面目な冬毬ちゃんも言うから普通だとは思うけど、やっぱり他のLiella!の皆やかのんちゃんには恥ずかしくて言えないよ~…! ‒‒「千砂都先輩、…何か悩んでる…?」 「それはよくないっす!きな子たちで何とかしないと」 「かのん先輩達を参考に研鑽した5yncri5e!リフレの出番ですの」 「アグリーです。我々の実力を今こそ千砂都先輩に見ていただきましょう」 結ケ丘を卒業して2年。お互い進学した私たち。 「あ、恋先輩!お待たせしたっす」 「……きな子さん」「はい?」いつになく深刻そうな声の先輩。きな子、また何かやっちゃったっすか? 何やらもじもじしながらも、恋先輩ははっきりと言ってくる。 「恋、と呼んでいただけませんか」 ……そ、それは…確かに今は別々の大学だし、その、お付き合いしてるのに、いつまでも先輩呼びはヘンかもって、思わなくはないけど……。でも「恋先輩」ってずーっと呼んでたのを今更変えるのも恥ずかしいっす…。 それでも。いつもとっても控えめで優しくて、きな子の望んだことをなんでも叶えてくれる素敵な先輩が、きっと勇気を振り絞って伝えてくれたことだから。 「恋、さん…」 きっと私の頬は、先輩に告白されたときと同じくらい赤くて。でも、恋さんのそれはそれは嬉しそうな顔を見たら気恥ずかしさもどこかに行ってしまって、ただ幸せに包まれるような。 「…きな子さん、あなたを選んでよかった」 それはきな子のセリフっす! 二人の愛の巣、もとい拠点な科学室。遠慮していたのか、見せ付けられるのが嫌だったのか、あまり近寄ったことがなかった。 久しぶりにそこへ向かい、白衣の背中に声をかけようとしたが、四季の様子がおかしい。俯き加減でなんかもぞもぞしてるし、やたらと悩ましい声を上げている。 「ん…はぁ…」白衣の下、左手は胸元、右手はスカートの中に。……あいつとはピュアな交際をしてるって聞いたし、まあそういう気分になる時もあるか…。 めんどくさい事になる前に立ち去ろうとするも。 「……メイ…好き…!」あんまりにもエッチな声を出すから、足がもつれて物音を立ててしまう。 途端に椅子から跳び上がり、振り向く彼女。 「!!……夏美ちゃん!?」「……あー…夏美はなんも見てないですの……」そういうことにして、と言いたかったが、四季にはそんな余裕はなくて。 「お願い…メイには言わないで…」涙目で懇願する彼女。…私をなんだと思ってるのか。怒りと情欲がない混ぜになった暗い欲求が沸々と湧き上がる。 「…なら、そのまま見せてほしいですの。…最後まで」それで私が満たされることなんて何もないのに、私は何を期待しているんだろうか。 「わかった……」おずおずと椅子にかけ直し、震える手を自らの身体に伸ばす四季。 彼女が目をやるスマホには見慣れた赤毛が映っていて、やはり私の入る余地などないと実感させられつつ、四季の肢体から目が離せない。 ──「ん…はぁ…イきそう…♡」 しばしのち。中途半端なところで中断されたせいか早々に再燃し、私のことも半ば意識から飛んでいそうな彼女。秘所を掻き回し、乳首を捏ねる両指先が加速し、ぴくぴくと震える足先が限界が近いと示す。 「…四季」「!」彼女が上り詰めるタイミングで名前を囁き、僅かに唇に触れる。悩ましげに閉じていた琥珀色の瞳が見開かれ、レンズの真ん中に私の顔を映す。…我ながら最悪な顔してますの。 「……なつみちゃん…?」ただひたすら困惑と恐怖に彩られた四季の表情。そんな顔をするだけだと、判っていたのに。 「ごめんなさい。誰にも言わないから」 なんとかそれだけ呟き、科学室を飛び出す。…あの一瞬だけは、私の存在を彼女に刻み付けることができただろうか。 …本当の私の気持ち。知られたくない最上級の秘密。隠し通さないといけないのに、あなたに見破られたいと思ってしまったのは、なぜ…? ・eyeをちょうだいの歌詞って深読みするまでもなく激重だよね…というやつ。 Liella!は敵。彼女はそう言い続けてはいたけど。きっともう、本心からそう思っているわけではない。 やはりそれは、かのん先輩の影響が大きいのでしょう。時々頼りないところもありますが、私たちをいつも尊重して親身に接してくれるのは感謝しきりです。会う時間が限られている私でもそうなのですから、マルガレーテはもっと強くその魅力に触れて、…惹かれてしまうのも当然でしょう。なにしろ一緒に住んでいるのですから。羨ましい。 活動開始からそれなりに時間が経ち、二人で出かけることも増えました。同期の友人として、よい関係を作れているとは思います。…でも、遊びに行って彼女が話すのはいつもかのん先輩のことばかり。口では文句ばかり言っているように見えて、本当に楽しそうな表情と口ぶり。 「…それでかのんの奴毎日毎日千砂都先輩と通話してるのよ。敵のボスだってのに」彼女の言う『敵』のほんとうの意味はきっと他の誰も知らない。マルガレーテ自身でさえ、明確には意識していないのかもしれない。「…そういうなら、かのん先輩は私の敵なのでしょうか」「なにか言った?冬毬」「いえ、何も」 『ピスタチオ、よりもあ・な・た』 「メイちゃん、ぴすたちお?ってのが好きだったんすか?…オシャレっすねぇ…」 「確かにはじめて聞いた気がしますの」 ──四季と並んでアイスを食べながら、二人の発言を思い返す。「あー…そういうことか」 「どうしたのメイ」 「いや、ピスタチオのアイスってコンビニだとあんまり売ってないから、食べるのはだいたいうちだろ?お母さんが買ってきてくれるし。で、あいつらはうちには殆ど来ないから…」 「そう。私だけが知ってるメイの好物。なのにあんなに大勢の前で言っちゃうなんて…」揶揄うような物言いの四季。 もちろん本気ではないけれど、そういう独占欲みたいなのを受けとれるのも、結構嬉しいものだ。 「まあそう言うなって。わかるだろ?ピスタチオよりも…」しーき。 声に出さず口の動きだけで伝えてやると、いつもクールな顔がほんとうに嬉しそうに綻ぶ。…そんな顔をされたら、私だって我慢できなくなる。 「メイ、今日は素直。どうしたの…?んっ」 ピスタチオとクッキー&クリーム、混ざっても結構イケるよな…と心の片隅で考えながら、お互いを味わう私たち。私はいつも、お前の熱気に融かされてるんだぞ…。 私と四季ときな子。私のトークアプリには3人だけのルームが作られている。ルーム名は、『作戦会議』。 …別に夏美をハブってるとか、そういうやつではない。むしろ逆と言っていい。私達3人ともが夏美狙いだということが発覚し、度重なる協議と牽制の結果生み出された空間だ。 『あいつ、今日も可愛すぎる…なんなんだよあのあざといポーズと媚びっ媚びの萌え声…偉大なるにこちゃんに匹敵するぞ』 『動画撮影に夢中になりすぎてまたすみれ先輩に怒られてたっすね。シュンとしてる夏美ちゃん、守護らねば』 『しかも先月と比べてバストが3ミリも成長していた…Fantastic。5yncri5e!のダンス練のときの動画を上げておく』 このように夏美の可愛さを語り合い共有再確認するのが最近の日課。 四季謹製の高性能カメラドローンのおかげで、夏美の24時間あらゆるシーンの写真と動画が無限に供給され、私達の生活を彩る。 目下の目的としては、3人で協力して悪い虫が付かないように警戒し、…いつか私達のモノにすること。 それもこれも、あんなに魅力的な夏美が悪いんだからな…。 「今週末だけど、冬毬は行きたいところはないの?」 「私は貴女と一緒にいるだけで嬉しいので、特には」「何よ…つまらないわね」 …嘘です。お芋のスイーツがあるカフェに行きたい。水族館に行きたい。お揃いのものが欲しい。私の家に来てほしい。 貴女と行きたいところ、やりたいことは増えるばかり。 でも、これは駆け引きというやつ。 「それなら、当ててみてください」 「あら、私に挑戦?冬毬のことなら、あんた自身よりよく知ってるつもりよ」 「随分な自信ですね…」 「じゃあ教えてあげる。先週偶然知ったみたいに教えてくれたレストラン、私の為に調べてくれたのよね?あとこないだ寄った古着屋で、秋物の上着物欲しそうに見てた。一昨日の夏美先輩の動画に出てた映えスポットも気になってるんじゃない?それから…」 ……当たっている。自覚のない欲望を次々に突かれ、ポーカーフェイスを維持できているか心配になる。貴女との勝負はいつも、負けてもいいやと思わされてしまう。 「そういうところ、好きですよ。マルガレーテ」だからたまには素直に伝えてあげたのに。 「えっ!?急にどうしたの…熱でもあるんじゃない?」……そういうところですよ。 ・キャラソンネタ。ワイルドカードあまりにも冬毬ちゃんのキャラに似合いすぎている。絶対この子ドSの素質あるよ! 「姉者はいつも…ズルいです…!」 「誰より…私も」 「リボンください!」 ……と、あくまで真摯に一途に愛を伝え続けた結果、3人からの熱い返礼を受けるとこになった私。とうとう3人から詰められています。 「「「で、冬毬(ちゃん)は誰を選ぶの?」」」 そんなの、答えは決まっています。 「もちろん3人ともですよ…!」決まった。 「本気で言ってるの…?わたし海外で一人で心細いな~冬毬ちゃんが選んでくれなきゃ頑張れないな~クネクネ」 「血は水よりも濃いと言いますの。たった二人の姉妹、一生一緒にオニナッツですの。まずは牛久広報大使の仕事からですの」 「冬毬、海外の景色を見たいって言ったわよね?私が行くところには全部連れて行ってあげるわよ。私と来なさい」 ……予想と違いますね。3人ともチョロ…素直で良い子なので甘い言葉を囁いていたらこのままズルズルと関係を続けられるという読みだったのですが…視線がちょっとずつ険しくなっています。いつの間にか三方を囲まれ、逃げ場なしです。…これは、選択を間違ったかもしれません。助けて、きな子先輩…。 ──「いや、自業自得っすよね?」 「はい」 「まったく、もっと感謝してほしいっす。あそこできな子が助けに入らなければどうなっていたことか」 「仰る通りです。返す言葉もございません」 「まあ、きな子は可愛い後輩をモノにできて嬉しいっすけど」 「……私は甚だ不本意ですが」 「またまた~そんなこと言ってなんやかんや嬉しいんすよね~?」 「…ウザ絡み具合はかのん先輩に似てきましたよね」 「照れ隠しが下手っすね~にこにこ」 「はあ…もうそれでいいですよ」 「そんなこと言ってずーっときな子の膝の上から離れないから可愛いんすよねぇ。よしよし」 「…///」 大学に進学して数年、いつもの2期生飲み会。毎回の悩み、きな子の酒癖が悪い。 「夏美ちゃ~ん…やわらか…好きっすよ~」 「もう…暑いですの…」そ、そんなにくっついてこられたら…。もう酒の味などわかったものではないですの…。 「きな子~そのへんにしとけよ~」「メイちゃんも飲んでるっすか~?」「へいへい」メイもなんか生暖かい目で見守ってるだけで、あんまりきな子を止めたりしてくれない。この薄情者。 「きな子…飲みすぎですの…お酒弱いのに…」なんでそんなにベロベロになるまで飲むんですの? 「……」四季が何やら怪訝な顔をしている。? 「いや、きな子ちゃんはパッチテストの結果アルコールの分解能はとても高いタイプだった。いわゆるザル」 「「えっ」」3人の時間が止まる。「実際夏美ちゃんがいない時だともっと普通」「……」え、それって…? いつの間にかさっきの緩みきった顔をどこかにやってしまったきな子が四季に凄む。「……四季ちゃん、…黙るっす」「!」 こわっ!声色こそ冗談めかしてはいるが、内心は明らかにキレている。四季もそれを察したか、「ご、ごめんなさい…」素直に謝る。 でも、今までのが演技ってことは、きな子は私と…? 「まあ、今のは四季が悪いけど、いつまで経ってもきな子の気持ちに気づかないお前も大概だぞ…」てことはメイは知ってたんですの?というか、気づかないと思ってたの?流石に私のことナメすぎですの。 「そうっすよ…なんでこんなにアピールしてるのに手を出してくれないんすか…?夏美ちゃんはきな子のこと、嫌い…?」目を潤ませて不安げに尋ねてくるきな子。そんな顔をさせたいわけじゃなかったのに…。 「き、嫌いなわけない!むしろ好きだからこそ、その場の勢いで、みたいなのは嫌で 、ずーっと我慢してたんですの!」 言っちゃったですの…。これってつまり、両想いってやつ? 「夏美ちゃん…これからは、もう我慢しなくてもいいっすか…?」 「きな子…夏美もももう、我慢なんて…」そして見つめあい、近づく顔と顔…。 ──「結果的に良かった。No rain,No rainbowというやつ」 「まあそうだけど、四季はもうちょっと反省しとけ…今日は一緒に寝てやらない」 「…!そんな殺生な…!」 こいつらはもうちょっと慎みを持つべきでは?ですの。「っす」 「メイ、これあげる」いつも四季は唐突だが、まあ気にかけてくれるのだから悪い気はしない。 「ありがとな。開けていいのか?」「もちろん」革のチョーカーだ。ちょっとごついデザインだけど、まあ似合う奴には似合うだろう。……ただ、なんか、私の目が確かなら、錠と鎖ついてるんだよなあ。 「念のための確認だが、これって…チョーカーだよな…?」「ううん、首輪」「……だよなあ」 流石にこれはない。私はマルガレーテの奴みたいにアレじゃないし。四季ってそんな、私のことを拘束したいみたいな趣味があったのか? いや、でも、それを私のことを信頼して打ち明けてくれたっていうなら、受け止めてやらないと… ぐるぐると高速回転する脳みそを一旦止め、四季の返事を待つ。「勘違いしないでほしい。私は冬毬ちゃんみたいな「そういう」趣味はない。ただ、メイにきっと似合うと思って…」 罪悪感に駆られるからそういうのやめて欲しいんだよなあ…。シュンとした四季と首輪の間で視線を2,3往復させて、ため息ひとつ。 「はあ…今日だけだぞ」我ながらこいつには甘くなっちゃうなあと自嘲しながら、箱の中のソレに手を伸ばす。 「ど、どうだ…?似合うか…?」「…メイ。やっぱりダメ。理性が保てなくなる」「そんなに」お前が持ってきたんだろうが。まあ喜んではくれてるみたいだし、とりあえずは良しとするか。だいぶ丸め込まれた感はあるが。 「ほらよ」首筋から伸びる鎖を四季の手に持たせてやる。「う、うん…メイが…私の手の内に…!」そんなことしなくても、いつでも私はお前のものなんだけどな…。流石にそこまでは口に出してはやらないけど。四季はしばらく感慨深そうに首元を見つめていたが、堰を切ったように感情を爆発させる。 「メイ…素敵。可愛い。好き。ずっと一緒にいて」そんなにか… 「はあ…こんな恥ずかしいやつはもうお終いだ」「え…」 「なら、今度はお前が付けてみろよ。ちょっとは私の気持ちがわかるかもな」深く考えずに言い返してみると、四季の目がまた妖しく輝く。 「つまり、メイが私のことを飼ってくれるってこと?それはそれで、すごく悪くない…!」「余計なこと言ったわ」 でも、改めて四季がこの首輪を付けて私に甘えてくる姿を想像してみると、普段とのギャップにくらくらする。確かに、それもイイかもしれない…イケないことを覚えちゃったかもな。 ・リエラジ公録ネタ。鈴原希実が悪い。 「すみれ、好きです。可可と付き合ってくれませんか」 「……ごめんなさい。好きな人がいるの」 「そうですか」そんな気はしてました、と俯く姿に胸が痛む。 可可は変わった。学業との両立とか家族とのすれ違いとか、悩みは今や一切なくなったとばかりにより一層輝いている。 料理も上手くなったし、芸能界デビューの時に引っ越したこの部屋だって、相変わらずバカでかいサニパ様のポスターとLiella!の集合写真が並んで飾られていることを除けば、いつ「若手タレントのお部屋訪問」に入られてもいいくらいお洒落で快適だ。 ──私が好きなのは、段ボールだらけの狭い部屋で料理を作ってやり、小言を言いながら掃除をし、衣装作りを手伝い、毎日くだらない言い合いをしながら、最後はなんやかんやで笑いあえていた相手。 そんな可可はもういない。ここにいるのは、親友で恩人でライバルで、ただそれだけの奴。 「…すみれの想い、叶うといいですね」またそんな優しげに微笑んで。昔のように、グッソクムシが生意気デス!と言ってほしいのに。 顔を逸らせば、やや色褪せたポスターと目が合い、否応なしに歳月を実感する。 時が止まっているのは、きっと私だけ。 「よよよよろしくお願いします……!」 メイのオファーがきっかけでコラボすることになった、オニナッツリスペクトLtuberのモモフッユさん。 今日はその撮影だけど、もう可哀想になるくらい緊張している。憧れの夏美ちゃんに会えたからというのもあるだろうけど、主な原因はその隣に。 「こんにちは。鬼塚夏美の『妹』の鬼塚『冬』毬です。よろしくお願いしますね」👁👁。 …口調は柔らかいけど目がまったく笑っていない。私が夏美ちゃんと遊んだり夏美ちゃんで遊んだりしてるときと同じ。 ここは、撮影係の私が空気を和ませてあげないと。 「夏美ちゃんの嫁の鬼塚四季です」✌。 「…えっ?」「「話をややこしくしないで!!」」 目を丸くするモモフッユさんと、見事なダブルツッコミの鬼塚姉妹。流石息ぴったり、Excellent。 流石に緊張も解けたのか、そこからはおおむね和気藹々とコラボ撮影を進められた。でも問題はその後。 「四季…嫁だなんて…大胆…んもぅ///」夏美ちゃんはなんかくねくねしてるし、冬毬ちゃんは今度は私に氷のような視線を向けてくる。 撮影はうまくいったのに、どうして…?モモフッユさんと顔を見合わせ、首を捻る私だった。 「レンレン、また禁断のセカイデスか?」「みみみ見てませんよ!履歴は消しました!」「見てるじゃないデスか…マルマルの教育に悪影響デス」 『禁断のセカイ』。別に気になるってわけじゃないけど、気紛れに検索してアクセスしてみる。 ふーん…ただの創作小説サイトじゃない。別にそんな恥ずかしいことないと思うんだけど。 …と思っていたが、『#Liella!』のタグを見つけて心臓が跳ねる。流石に自分たちモデルの小説は予想外だった。 当然個人のタグもあるわけで、『#鬼塚冬毬』に吸い込まれるように指先を伸ばしてしまったのが運の尽き。 『「冬毬ちゃん……とっても似合ってるよメイド服…次はこのセーラーを」「かのん先輩…もっと見てください…」』──by ヨーソロ 『「ふふっ、姉者…体格も体力も私の方が上、抵抗できると思わないでくださいね」冬毬はそのまま夏美を壁に──』──by lily な、な、な…!冬毬がそんなこと言うわけないでしょ!相手は私だけよ! 頭に血が上り、『#とまかの』『#とまなつ』のタグを次々に開いては読み耽ってしまう。 こんなの誰かの妄想にすぎないとわかっていながらも、何故か目が離せないのが悔しい。どうして…! 「…それで寝不足なんですか。しっかりしてくださいマルガレーテ」 流石に冬毬にも呆れられた。面目無いわ…ごめんなさい。「…せっかくのデートなんですから」 本気で怒っているわけではなさそうだが、冬毬の目がぎらりと輝いたことに私は気づかなかった。 「それで、貴女の見た小説では私はどんなことをしていたのですか…?教えてください」 いつもは冬毬が責めてくる側だというのに、上目遣いで揶揄うような甘えるような態度。 …『「マルガレーテ…もっと」』──by 座長 流石に自分モデルの作品は恥ずかしすぎてほとんど直視できなかった『#とまマル』。 それでも特に心情と濡れ場の描写が濃厚な作品のシーンがフラッシュバックし、目の前の冬毬の姿に重なる。 「と、冬毬…誘ってるの…?そんなの」 「今日は貴女のしたいこと、してください」「…っ!」 そこからはよく覚えていない。ただ小説で見た甘いセリフを散々に囁き散らかし、冬毬の身体を堪能したという朧げな記憶だけが。 「たまにはこういうのも悪くないですね…」 なんだかとてもつやつやしている冬毬。私はめっちゃくちゃ恥ずかしかったんだけど! どうやら、まだ夜更かしの日は続きそうだ。 ・『禁断のセカイ』アニメ見返したら小説じゃなくてもっと直接的なエロサイトみたいな造りだった。まあいいかあ! 「卒業したら、冬毬と離れ離れになってもいいんですの?」 「いいわけない。でも、私はウィーンに戻って、歌手としての道を歩むの。私の一番の夢は、誰にも譲れない」 たとえあの子と天秤にかけても、と呟くマルガレーテの顔は苦渋に歪んでいて、本当に最後まで迷い続けていたことがわかる。 「マルガレーテ、去年冬毬がLiella!に残ってほしいと言ったとき、どう思いましたの?」 「そりゃ嬉しかったわよすごく。でも、今回は違うじゃない!離れたくないってのは私だけのワガママで、それに冬毬を付き合わせるわけにいかない」 …お互いに望んでいるのなら、ワガママではないんですの。あの子が最近ずーっとドイツ語の勉強してるの、知ってる? 「もう一度だけ冬毬と話してほしいんですの。あなたのほんとの本音で」 流石に私の思いが伝わったか、マルガレーテの瞳が輝く。 「ありがとう、…姉者」 「冬毬のこと頼みますの」 「わかったわ、…冬毬にプロポーズする。流石にただの『恋人』を海外に連れて行けないもの」 え?流石にそれは…まだ早いのでは…? 「そ、それはちょっと待つですの~!冬毬はまだ渡しませんの!」 「小姑が怒った」「だ~れが小姑ですの!」 最近、具体的には9月17日(水)以降、気になっていることがある。 「ねえ冬毬、」 ──首を絞めて。「……は?」 言っちゃった。でも、なんというか「そういう行為」の定番みたいなところあるじゃない? それに、ランニングして限界寸前で息も絶え絶えな中「あっ気持ちいい」みたいに感じるやつ、誰しも経験はあるでしょう? 最愛の恋人にそうされたらどう感じるのか、ひとたび気になってしまえばもう止まれない。 「……すみません。少し整理する時間を貰えますか」流石にドン引かれているのはわかる。痣を付ける行為や手枷とか目隠しとか羞恥調教とかともまた一段レベルが違う。 もう貴女には付き合いきれません、と捨てられるかもしれないと思うと恐ろしいわね。……でもそれはそれでゾクゾクする。 後日。「調べてきました。後遺症の残らないような締める強さ、時間、場所。安全には最大限配慮しなくてはいけません。すぐに救急車も呼べるようにしましょう」 あ、そこまで?「そこまでです。では、行きましょうか」 まあ、冬毬が思ったより乗り気なようでよかったわ…。 それでもお互い謎の緊張感に包まれ、いつもより更に人目を気にしながらホテルの入口へと滑り込む。 「で、では、いきますよ…マルガレーテ」 私の上に馬乗りになり、震える指先を伸ばし首筋に手を掛ける。 息が詰まる。耳の中には自分の心音が響き、顔に熱が灯るのが感じられる。じわじわと目の奥が熱くなり、僅かな隙間から酸素を求めてコヒュ、と滑稽に喉が鳴る。 でもまだ、もっと。目で訴えれば、冬毬は躊躇いながら頷き、更にぐいぐいと締め付けてくる。 「う、うぅ、うぅ~…!」ぽろぽろと涙を溢しながらも、私の首筋に加える力は緩まない。 恐怖と罪悪感に歪む中にも隠しきれない昂奮が見て取れる真っ赤な顔。ああ、美しいな…とボヤけた意識の中で考えながら、私は絶頂した。 ──「ごめんなさい。あなたの気持ちを考えてなかった」「…怖かったです。万が一取り返しのつかないことになったら」べったりと私に抱き着き胸に顔を埋め、まだ涙声の冬毬。 ここまで弱ってるのは久しぶりに見たわ…私のためにそこまでしてくれるのは本当に感謝しかない。 …このプレイは当分の間は封印しよう、と心に決め、私は冬毬を抱き締めて頭を撫で続けた。 そんな私の中でリフレインする歌詞。 あなただって痛いでしょう? だったら、責任とって、もう離さないで。 「ねえ?」 ・『酸欠』とんでもないですね。今度のライブで生で聞けるのが楽しみすぎる。 >マルガレーテの同級生モブになりたい 『問題児』『ラブライブを舐めたガキ』『オーストリアから無様を晒しに来た歌の天才(笑)』 SNSでは散々な言われようだったが、まあ当然だ。 私が結ケ丘へ進学したのは、近くで推しのLiella!を見るため。なのに入学式にはもう顔を見ることなんてないはずだったあの女がいて、新スクールアイドル部などと言ってる。 誰も集まるわけないし、精々無様晒せばいい。 と思ってたら、Liella!のエースかのん先輩と、エビフライみたいな髪の新入生。3人でLiella!と対決するとか。イミワカンナイ! ──怖いもの見たさで見に来た『トマカノーテ』の配信ライブ。 『私たちの歌が、届きますように──』 …これがあのマルガレーテ?去年の剣呑な威圧感も、傲慢なまでの自信に満ちた覇気もまるでない。 不安そうに俯き、隣の二人と手をつないで訥々と語る姿は他の新人スクールアイドルと何も変わらなくて。 『Bubble Rise 光に両手伸ばそうよ──』3人の優雅かつ伸びやかなパフォーマンス。真ん中に立って輝いていたのは紛れもなくあの女で。 「ウィーン・マルガレーテ…」 …かっこいいじゃない。応援してあげてもいいわ。 「夏美のこと、好きなんだろ」 「なに言ってるの?メイ。私はメイが好き」 そう言うと思った。 「でも、最近の四季の態度はそうにしか見えないぞ」 自然に一緒にいるし、夏美と居るときには本当に楽しそうに笑っている。そんな変化を私が見逃すわけない。 「…私が…夏美ちゃんを?……」 「好き…好きかも」「やっと気づいたか?」 「夏美ちゃんは揶揄うといい反応するし、私も気を遣わず喋れて、ちょっとしたことで笑ってくれる。発明も喜んでくれてやり甲斐があるし、すぐ涙目になって怒るところも可愛い。別れ際にはもっと声を聞きたいって、思ってしまう…」 ちゃんとわかってるじゃないか。安心した。 「…まだ精査が必要。でも、私は確かに夏美ちゃんに対して、メイとも違う好意を抱いている。でもこれが、恋?」 メイへの感情とは全然違う、とどこか不安げに呟く四季を落ち着かせるように語りかける。 「ゆっくりでいい。でも、四季はもっと思うままに動いていいんだ。私達は似た者同士、私はいつも四季の味方だから」 「…メイ。ありがとう。好き」 今の『好き』は、昨日までとは少し違ってて。きっと四季にとってはいい変化だ。 …さよなら、私達の初恋。 「貴女の根性論にはエビデンスがありません。もっと合理的に」 「根性論の何が悪いの?結局最後は鍛えた精神が物を言うのよ」 鬼の副部長と悪魔の部長。 天才と自称するだけの実力がある上に地道な努力を全く苦にしないマルガレーテ部長、クールな外見通り周囲をよく見て鋭すぎるくらい的確な意見を出す冬毬副部長。 結構意見が合わない時もあり、言い合い始めると誰も止められない。練習の厳しさも相まって、口さがない誰かがつけたあだ名だ。 もちろん、大本は尊敬と畏怖から来ていると判るから、言い出した時にはめちゃくちゃ似合ってる!と同期で笑い転げたものだった。 だが、練習が休みの日、部室に忘れ物を取りに行った私は見た。 「ねぇ冬毬~…もっと撫でてよ…」「ふふっ、マルガレーテは可愛いですね…いつもこんなに素直ならいいのに」 ……鬼と悪魔が、隣同士に座ってイチャイチャしていらっしゃる。あんな甘えた声の部長も、慈愛に満ちた表情の副部長も、控えめに言って解釈違いだ。ふたりはもっと格好良くて、最強でないといけないのに。 ああ、これが「脳が破壊される」感覚なのか…と実感できてしまった。明日から、まともに二人の顔を見れるだろうか…? 『先週のライブも最高でした!みんなかわいい!』『練習頑張ってください。応援しています』 「今日もたくさんファンレターが来ていますね」「うれしい話っす」 「…でも、なんで音読する必要があるっすか…?」「先輩がショックを受ける文言や秘密の暴露がないか、私がリスクヘッジしているだけです」 『きな子ちゃん大好き!会うたびに幸せが溢れちゃう!』『きな子先輩の頑張る姿に、いつも勇気をもらってます』 「さ、流石にちょっと恥ずかしいっす…嬉しいけど」「生徒会長なんですから、いい加減慣れてください。当分これは続けないといけませんね」「冬毬ちゃんが鬼っす…」 「…それにしても、冬毬ちゃんの読み方すごく感情がこもっててすごいっすね~」「当然です。ファンの皆さんの声を忠実に先輩に届けるのが私のタスクですので」 …『大好き』『応援してる』『いつも』。…私は皆の声を利用しているだけ。感情は込めているのではなく、溢れているのです。こうしてガス抜きしなければ、きっと破裂してしまうだろうから。 いつか、ファンレターではなく私の言葉を受け止めてくれる日が来るのか。 期待と不安を胸に、臆病な私は私の『大好き』を隠して伝える。 「Liella!推しカプ投票?どうせまたどっかの裏FCか文芸部の仕業っす。冬毬ちゃんに摘発してもらわないと」 まさか天下の国営放送がそんな企画をやるわけがないっす。でも隣のオタクはだいぶファンの皆様には見せられない感じに盛り上がっている。 「やっぱりド安定の『かのちぃ』『クゥすみ』なんだよなぁ~!でもあえての『かのすみ』『クゥれん』も捨てがたい…!」 「どうせ組み合わせが決まってるメイちゃんは気楽そうでいいっすね」べつに悔しくなんかはないが、ちょっとは揶揄ってあげようとしただけ。なのに変に動揺するから…。 「なっ!あいつとは別に…そんなんじゃないし…そりゃ四季のことは大事だし一番仲はいいだろうけど、カプとかじゃないから…///」 まだ四季ちゃんのことだなんて言ってないのに。というかそんなこと言うんだ…それはそれで四季ちゃんがかわいそうっすよ? 「ふーん…それなら、『きなメイ』でひと波乱起こしてみるってのは、どうっすか…?きな子は結構、メイちゃんのことも…」 ぐいっとメイちゃんの顔を掴み、真正面から見つめてやると効果は覿面、真っ赤になって固まってしまう。こういうところ、ほんとに可愛いっすよね…。 「私は誰とも組まない。あんたはお姉さんかかのんとでも組みなさい」 Liella!推しペア投票に向けての活動。当然私はこの同期に声をかけたのですが、何故か取り付く島もない。 「合理的な説明をお願いします」 「…だって、私達は11人、奇数じゃない。誰かが絶対あぶれるなら、去年は皆と敵対してた私が外れるべきでしょ」 貴女相変わらず不器用ですね…別に全員が一対一で組むわけではないと説明すると、「……そうなの?」 やはり勘違いしていましたね。 「はい。だから先輩方に遠慮することはありませんよ」「そう…だったら私…」 「現に私は明日はかのん先輩と組む予定ですし」つい口が滑りました。 「なっ!そんなのダメよ!私だけを選びなさい!」 「簡単に一人だけなんて選べませんよ。そんなに私のことが好きなんですか」 「つっ……!そうよ。本当は冬毬しか選びたくないし、冬毬にも他の人を選んでほしくない」 ……嬉しすぎる。こうやって試す度に想像以上に良い反応を返してくれるから、つい意地悪してしまいます。 とはいえ、ちょっとやりすぎました。しばらくは企画を理由にして精々『とまマル』のアピールに努めるとしましょうか。 …週末が楽しみですね。 「んふふ~…『かのちぃ』に『クーカー』に『かのすみ』…いやあ人気者はつらいねぇ~」 Liella!推しペア投票の結果が発表されてから、かのんのテンションがヘンだ。 普段の3倍くらいくねくねしてるし、いつも締まりのない顔が更に緩みまくっている。 かのんが人気なのに異存はないし、5人で色々な難局を乗り切った1期生の絆が強いのもわかる。 ただ。 「……『かのマル』もあったわよ」 ヤキモチ焼いてるみたいでみっともないが、つい恨みがましく口に出してしまう。かのんは一瞬目を丸くするが、すぐにふにゃふにゃに戻ってくっついてくる。暑苦しい。 「ごめんねぇ~!忘れてなんかないよぉ!マルガレーテちゃんのことも大好きだから!」 「……そう。私もあんたのこと、好きよ」 「なんか雑じゃない~?愛が感じられないよ~」 抱きついてぐりぐりと頭を押し付けてくるかのんを捕まえ、頬に口付けを落としてやる。「…へっ?」 それまでの落ち着きのなさが嘘のように硬直し、顔を真っ赤にするかのんに「これで私が本気だって、わかったかしら?」と。 精一杯不敵な笑みを浮かべ、挑発するように見つめてやる。…私を本気にさせておいて、逃げられると思わないでよね。 ・推しペア投票が衝撃的すぎて3本も書いている。やっぱりかのんちゃんのカプ全体的に強いね。かのマルも結構好き。 「おまたせ~四季ちゃん!今日もかわいいね!」「あ、ありがとう…千砂都先輩もcute」 卒業から数年。紆余曲折あって、四季ちゃんとつき合っています。Liella!の頃から四季ちゃんは私のこと好きだったんだって。嬉しいなあ~。 今日は何回目かもわからないデートだけど、ふと思いつきを伝えてみる。 「四季ちゃん…『千砂都先輩』ってのは堅苦しくない?もうちょい気楽に呼んでいいよ」「そう…?」 首を捻る四季ちゃん。なんて呼んでくれるかな?でも『ちぃちゃん』はかのんちゃん専用だからダメだよ! 「…わかった。千砂都」「!」 ま、まさかの呼び捨て!?それは完全に予想外…!でも、そんなイケボで呼び捨てなんてされたら、「んっ🩷」ヤバイね…お腹がきゅんきゅんしてる…。 「…大丈夫?千砂都?」「…うん🩷」 ポカンとして眺めてくる四季ちゃんだけど、私の顔を見て察したのか、わるーい笑顔を見せて呟く。 「……『休憩』した方がいいかな🤍」 ああ、完全に発情しちゃったのバレてるよ…🩷 『休憩』先でも名前を呼ばれる度にびくびくと身体を震わせてしまい、完全に調教されてしまった私なのでした。すっごい気持ちよかった。 ラブホテルの門の前。「よ。お待たせ」「待たせすぎ。ここで待つの結構恥ずかしいんですの」 どうせヤるだけだし現地集合でよくない?とか言い出したのお前だろうが。 まあいわゆる、セフレだ。 「四季とはどーなんですの最近」ん? 「あいつあんまりシたがらないからな…たまにお互い気が向いたら、って感じ」「へー。あんないい身体してるのに勿体無いですの」「お前四季をエロい目で見んな私のだ○すぞ」「はいはい」 「きな子は逆に性欲強すぎて若干引くレベルですの。毎週どころか下手すると毎日。でもあんまり上手くない」…マジかー。色々大変だな、と珍しく社交辞令みたいな感想が浮かぶも、互いの身体を撫で回す手は止まらない。 何度身体を重ねても、小柄なわりに豊満なスタイル、私が触れれば敏感に跳ねる感度の良さにはまったく飽きがこない。 それは相手も同じようで、「メイ、上手すぎ。なんかやってたでしょ」とか失礼なこと言われたし、逆に身を委ねればイイ所を実にイイ感じに触れてきて、容易く絶頂まで誘われてしまう。 …本当に相性がいい、ってやつなんだろうな。好きとかでは全然ないが。私は四季を愛してるし、夏美もきな子一筋だ。そこは譲れない。 一段落したあとも、マトモな恋人同士なら甘いセリフの一つ二つも交わすんだろうが、あいにくセフレなのでピロートークも下劣下世話下品な方面にしかいかない。 ──「可可先輩とすみれ先輩ってヤるときもあんな風にケンカしながらだったりですの…?」「さあ?案外ものすごい真面目な感じかもな。私たちを切り捨ててラブライブ!出ようとした時みたいにwww」 「それ最後まで悪役ムーブできなくて泣くやつwww」「大嫌いでwww大好きwww」 ──「マルガレーテってさ…絶対マゾだよな…それもドM」「うちの妹が自動的にSになるやつやめろwww」 「いやあいつ絶対Sだよwww私らがバカやってるの見てる時の目付きwww冷たすぎて私目覚めるかと思ったもんwww👁👁www」 「わかるwww仲悪いときぶっちゃけちょっと興奮してたwww」 ファンには勿論仲間たちにも絶対に聞かせられないようなことを言い合いながら、次に会える日を探している。 勿論お互い恋人が最優先、あくまで身体だけの最低の関係だが、これはこれでかけがえがないな、と感じてしまうのは秘密。地獄に落ちるまで黙っておくしかない私達の罪だけど、これはこれでいいでしょう? たまたまメイが今夜はちょっと羽目外して飲んじゃおうとか考えていて。 選んだカクテルが飲みやすい割に度数が高くて。明日は休みだったり。そういう積み重ねが今だ。 「ふふ~…しきぃ…すきだぞ……」 泥酔したメイに抱き着かれて頬擦りされている。すごく嬉しいけど、問題は目の前にきな子ちゃんと夏美ちゃんもいるということ。 はじめは揶揄ってきた二人も、メイの様子を見てるうちに段々心配がまさってきたようで。「メイ…お水飲むんですのお水」「ん~…みず…のむ。のませて。しき」慌ててコップを手に取るも、耳元で囁いてくるのは。 「ちゅーしてのませて。いつもみたいに」口移しって…コト…///!? 「…四季?生きてますの?」なんとか。「わ、私の理性が残っているうちに早くここから離れて…!」「スーパーサイヤ人みたいなこと言い出したっす」 「メイ…!きな子ちゃんと夏美ちゃんも見てるから…!」ん~?と焦点の合わない目で二人を眺めるメイ。 「ふたりなら…みられてもいい……ふたりのことも…だいすきだから」 「こ、このメイは…」「ちょっと破壊力が…ヤバいっすね…」 あ、二人がメイの魅力に落ちそうになってる…これはdanger…! 「きなこも、なつみも、すきだぞ~ちゅーしよ~ちゅ~…」 「さ、流石にそれは四季が許しませんの…」「そうっす!夏美ちゃんはきな子とちゅーするっす!」「それは後にして!」 ふにゃふにゃのメイを背負ったまま、店員さんに3人がかりでぺこぺこ謝りながら会計して逃げるように店から出る。 …流石にこのままメイを帰すわけにはいかないし、私の家も結構遠い。 「いや、四季も結構酔ってるのに危ないですの」「…とりあえずあそこのホテルで休んだらどうっすか…?」…やむを得ないかな。 ……ベッドの真ん中ですやすやと寝息を立てるメイを眺めながら、3人で無言で見つめあう。 脳内ではさっきのメイの言葉がリフレインする。『きなこも、なつみも、すきだぞ』 その時、何故か二人の考えていることがわかってしまった。それはきっと私も心のどこかで望んでいたこと。 きな子ちゃんの手を取り、抱き寄せ、潤んだ瞳を見つめながら口づける。拒絶はまったくなく。視界の隅では夏美ちゃんが同じようにメイへ顔を近づけるのが見えて。嫌悪も嫉妬もまるで浮かばない。むしろそうするのが自然、とまで思ってしまった。 それは2人と2人の関係が、4人の関係に変わった夜。 「とま子~!かすみんとりな子、どっちを選ぶの?」「冬毬ちゃん…リナチャンボード、ウルウル」 「ひ、一人だけなんて選べません…!」 待ち合わせ場所に着くと、冬毬が知らない子二人に絡まれていた。まさかナンパ? 「あなたたち、この子私の連れなんだけど」 割って入って睨みつけてやる。冬毬も私の後ろに隠れ、きゅっと袖を握ってくる。…は?可愛いすぎるでしょ私の彼女。 「あ、この方たちは虹ヶ咲学園のスクールアイドルです。以前ラジオでご一緒した縁がありまして」 「あ、そうなの?それは悪かったわね」 …二人と別れて。 「マルガレーテ、心配してくれたんですよね…ありがとうございます。かっこよかったですよ」ま、まあね…それくらい当然よ。 「マルガレーテはいつも優しいですし、私のことを気にかけてくれますね。嬉しい」今日はえらく素直じゃない…どうしちゃったの? 「こんなに素敵な貴女を、私は好きにできる…ふふっ🩵」……ん? ──『かすみさん、璃奈さん、ありがとうございました。とても良い反応が見られました。お礼はまた改めて』 「とま子ってさ…真面目に見えて悪い女だよね…」「うん。マルガレーテさんも大変」 ・リエラジネタ。ヒトリダケナンテエラベナイヨー!とは実に便利な言葉ですね。 「……姉者」「なあに?冬毬」 「その、マルガレーテのことなのですが…」 最近、妹は随分あの同級生にお熱。姉としては微笑ましい気持ちと寂しさとが今は半々。 「…姉者も気づいてると思うのですが、彼女、スカートが短いじゃないですか」 まあ確かに。欧州人だから体格のバランスが私達とは違うからとか? 「いまいち話が見えませんの」「……」 真っ赤な顔をして黙り込んでしまう妹に、ゆっくりでいいと促すと、意を決したように口を開く。 「いつも、マルガレーテの、下着が…見えて、その、ムラムラするんです!」 「……は?」 「あれって、絶対私のことを誘っていると思うんですよ…そうでもなきゃあんな、痴女みたいな長さにならないでしょう姉者!悪い女ですよマルガレーテは!私がこんなに悶々としてるのをあざ笑ってるに違いありません!信じられません!私はもう気になって夜も眠れません!」「……はあ」 妹がだいぶエキセントリックな妄想に浸っている…まあ思春期だし?気持ちはわかるけど? YESともNOとも言わない微妙な表情でやり過ごしつつ、なんと返事したものか頭を捻る。正直頭を抱えたい。恨みますのマルガレーテ…! ──「マルガレーテちゃんってチョロいよね~!短い方が絶対可愛いよ~って言ったらほんとにめちゃくちゃスカート短くしてくんの!眼福眼福!あのぶっとい太腿たまんねぇ~!」 「あんた…それバレたら殺されるやつよ」「すみれちゃんももっと短くしてよ~w私のためにw」 「千砂都に言いつけるわよ」「…ゴメンナサイソレダケハユルシテクダサイ」 ──私の記憶によぎるのは、普段は格好良くて頼れるのに、すみれ先輩相手にだけIQが500くらい下がるとある先輩のセリフ。 これは絶対バレたらダメなやつ…!真実を知ればきっと冬毬は恥ずか死してしまいますの…! 「…お姉ちゃんは何も見てない…何も知らないんですの」 「姉者?なにか知っているのですか…?教えてください!本当に私は弄ばれているのですか!理性奪うこの糸に操られ・魔性なのですか!」 恋は盲目という言葉が相応しい妹に、いったいどう説明したものか。「き、きっと直接話せばわかってくれますの…」 「誘い受けに乗るのが私の責務ということですね!わかりました姉者!『わからせ』てやればいいのですね!」 謎に瞳を輝かせる冬毬。…ああ、後輩を売った悪い私を許してほしいですの…。 大晦日だ。おせち料理を仕込んだり、昼間っから呑んでみたり、コタツで特番を見たり。年末年始を一緒に過ごすのは何度かあったが、二人きりってのは初めてでどこか浮かれた1日だった。 「年越しそばできたぞ~」 二人分の蕎麦を運んでくると、四季はベッドの上で膝を抱いて丸くなっている。珍しく猫みたいでかわいい。 「……うぅん…めい…」「蕎麦食べよう」 「たべさせて…」「ばーか。火傷するぞ」 こいつ、ほんと甘えん坊になったな…昔はお互い、なかなか懐ききらない猫みたいな距離感だったのに。 四季と並んでのんびりと蕎麦を啜っていると、いつの間にか年明けも間近。 「来年もよろしくな」 「メイ、それはちょっと違う」ん? 「来年も再来年も、その先も。末永くよろしく」 「…そうだな。これからも、ずっとずっと、よろしく」軽く口付けを交わし、手を重ね指を絡めあう。すこし時間はかかったけど、こうやって好きな相手と一緒になれた。それだけで今年はいい年だったし、来年はもっといい年になる予感がする。 「…四季」四季がほしいな。耳元で囁けば、四季は頬をピアスと同じ色に染めながらも、瞳を潤ませ甘えるように頷く。まだまだ夜は長くなりそうだ。 ・かのちぃと四季メイととまマルが好き。 ・癖のままに書くとどいつもこいつも激重ドロドロになるので、もう開き直ってそれぞれの重さの個性を見せられるといいなあと思っている。 ・基本的にシチュ考えてから似合うキャラに当てはめて書いているんだけど、とまマルだけは勝手にいろんな場面が浮かんでくるから怪文書書き始めてどんどん好きになった。マゾにしてごめんね。 ・個人的にお気に入りのやつはメイナッツ前提代替疑似姉妹化四季とま、四季メイ被支配リフレドハマリEND、かの→マル失恋ニー、四季→ちぃ代替自己犠牲メイ、ケーキデートとまマル、酸欠プレイとまマルあたり。 ・他シリーズで好きな子は真姫、鞠莉、栞子、吟子。わかりやすすぎる