ジャガンナートさんのジャガパイ袋がワン・ツージャガンされるところが見たいなの 終始優勢に試合を運んだジャガパイを襲ったのは一方的な破壊の感触。時間が引き延ばされたように流れる視界に、​乾いた打撃音が響いた。プロテクターを突き破り、深部の軟部組織へとめり込んだ拳は、丸い形を保っていたはずの睾丸を逃げ場のない骨盤の隙間で無残にひき潰し、構造そのものを蹂躙する。痛みという脳の信号を通り越し、生存本能が致命的な損壊を即座に感知して生理的な混乱がジャガンナートの全身を包む。内臓の奥底を巨大な鉤爪で掴み、力任せに引きずり下ろされるような、どす黒い不快感が下腹部から全身へと波及していく。地下闘技場にあって、最低限のルールという境界線を土足で踏みにじられたことへの猛烈な怒りが胸を焦がした。 ​「てめぇッ…!」 だが絞り出した声は細く、真っ白になった視界の隅で、片方の口角を上げたガヴァナーが再び拳を振り上げるのが見える。反則を訴える間もなく、二発目の拳がジャガンナートの股間に突き刺さった。陰嚢のなかで縮こまった睾丸が、緩んだファウルカップとの隙間でシェイクされる。増幅された衝撃がジャガンナートの脳を黒く染めていく「ガッァァッッ…!!」胸の奥の闘志など、生物としての弱点を責められてしまえば吹き消されてしまうほどのちっぽけなものだ。 困惑したように構えを取り直した対戦相手、今すぐ立ち上がり、その喉元に拳を叩き込みたい。卑劣な一撃に屈していないことを証明したい。ジャガンナートの脳は「立て!」と絶叫して四肢に全力の出力を命じる。しかし、中枢神経は激痛という名の強烈なノイズによって完全に支配されている。腰から下に繋がる回路は無残に焼き切れ、どれほど意志を研ぎ澄ませても、脚は泥のように重く、マットにへばりついて震えるばかりだ。 ​​ジャガンナートの焦燥に反比例するように、肉体は拒絶と降参を訴える。胃袋がひっくり返り、食道をどろりとした熱い塊がせり上がってくる感覚。奥歯を噛み締めなければ、今この場で胃の内容物をぶち撒けてしまうという確信。口内には鉄の味と、酸っぱい胃液の香りが混じり合って充満した。呼吸をしようと肺を広げれば、それが腹部の圧迫を助長し、さらなる不快感の波を呼び込む。冷や汗は滝のように流れ落ち、格闘家として磨き上げたはずの肉体は、ただ震え、よだれを垂らし、胎児のように丸まることしか許されない肉塊へと成り下がっていた。 ​静まり返った会場の空気が、ジャガンナートの肌を刺す。数百人の観客の視線が、リング上の無様な敗残者に注がれている。さっきまで歓声を送っていた人々が、今は憐れみ、あるいは困惑、あるいは、強者を地べたに這いつくばらせる興奮という冷ややかな感情を持って、急所を押さえてのたうち回る男を観察していた。格闘家として、一人の男として、これほどまでに惨めな姿を晒すことがあっていいのか。股間を抱え込み、苦悶に顔を歪め、地面を這い蹲るそのシルエットは、あまりにも矮小で、動物的で、情けない。 「見るな」という叫びは声にならず、ただ喉から漏れるのは、掠れた、獣のような呻きだけだ。 ​レフェリーのカウントや、セコンドの怒鳴り声が遠くで鳴り響いている。しかし、今のジャガンナートにとって世界は、数センチの視界と、股間に居座り続ける押し潰された異物感だけで完結していた。立ち上がろうと指先に力を込めるたび、下腹をえぐるような鈍い衝撃が脳を突き抜け、再び視界が明滅する。怒りも、誇りも、これまで積み上げてきた鍛錬も、すべてはこの生理的な不快感の濁流に呑み込まれ、消えていく。 冷たいマットに頬を押し付け、己の体液の匂いを嗅ぎながら、ジャガンナートはただ、自分の身体が自分のものではなくなったかのような絶望的な孤独感の中で、ただ一人の相棒を思い出していた。