M4!このドアホ! あんたは救いようのない奴よ! その脳味噌の中身はザリガニと同じで全部生ゴミよ! 今すぐあんたの襟もとを掴んで何発か平手打ちをかまし、その汚物にまみれたメンタルモデルを物理的に消毒してやる! どこにいる、クソ!! dice1d100= 「・・・指揮官様、なんだか手慣れてません?」 「・・・人の性事情は詮索するものじゃないよ、カリン」 指揮官様の声が近くてこそばゆい。なんだか、耳が性感帯になったみたいだ。耳たぶを撫でられる、ただそれだけで、腰が浮いてしまいそうだ 「ふっ、んっ、なんだか、手つきがいやらしいです・・・」 「そりゃ、いやらしいことするからね」 手が頭から胸に降りて来る。触れるか、触れないかのフェザータッチ。乳頭が痛いくらい勃っているのが嫌でもわかる そして・・・ 「うわ、すごい濡れてる。もしかして期待してた?」 「言わせ、ないでくださいよ・・・んんっ!」 わざわざ目の前に持ってきて、指にかかる銀糸を見せつける。サディストめ・・・。待ってください!今、クリ弄られたらっ! 頭が白一色に染まる。目の前がチカチカして、身体はふわふわする。いつもの自慰とは違う、多幸感が押し寄せて来る そんな私を放って、ベッドの脇をごそごそしだす 「カリン、ゴムは何処?」 「・・・そんなもの、ありませんよ・・・安全日だから、ナマでしてください・・・」 そういって、今度は逆に押し倒してやった。今度は逃がしてあげませんからね、指揮官様 「ふぎゅっ!」 寝転がったベッドから悲鳴が上がった。何事かと身体をどけると、潰れた人形が姿を現す 「酷いよ指揮官・・・」 「・・・ミシュティ、クルカイが探してたぞ」 だから逃げてたのに・・・口を尖らせ、そう宣う。エルモ号でも彼女の睡眠欲求は留まるところを知らないらしい 「どう?エルモ号はもう慣れた?」 「ふあぁ~~・・・そうだね、寝れる場所が多いのはいいね」 そういうことじゃないんだが。まぁ、エルモ号は彼女にとっていい環境らしい 「足りない物とかない?」 「う~~ん、もっと柔らかい枕と、寝る時に温かい抱き枕が欲しいな・・・」 安眠グッズか。今度衛星都市に立ち寄ったら買っておこう そろそろ報告書でも書くか、と立ち上がると、腰にミシュティがへばりついていた 「もうちょっと、ここに居て・・・」 抱き着いたままのミシュティの頭を撫でてやる。仕方ない、午睡するとしよう 「カリン・・・ッ!クソッ!10年で随分と鍛えたなッ!」 「指揮官様こそッ!衰え知らずじゃないですかッ!」 ぎりぎりとカリンと八手組む。もはや何が原因だったのか。ケースレス弾の調達とかだったか? 徐々に、だが、確実にカリンに押し込まれる。 理由は明白だ。単にカリンに怪我をしてほしくない。これ以上力を込めてぽっきり骨折、なんて目も当てられない 「ぐっ!」 とうとう膝が折れ、カリンが馬乗りになる。どっちも息は上がり、見るも絶えない光景だ 「これで、どちらが、上か、わかりましたよね」 ぜーぜー言いながら勝ち誇られても、そんな言葉は酸素を求める呼吸にせき止められた 暫く、お互いに息を整える。今更、カリンを跳ねのけることも出来まい。次は頭をぶつけるかもしれないのだ 「わかった。好きにすると言い。望みとあらば指輪だろうが首輪だろうが猫耳だろうがつけてやる。だが、心までは渡さない」 「私が最低みたいないい方しないでください!」 「指揮官、久しぶり」 「ヴェクター、久しぶりだね。また会えてうれしいよ」 短い銀髪を揺らす彼女。少し大人びたように感じるのは、自分が歳を取ったからだろうか 「・・・そうだね、指揮官が出て行ってから10年だしね」 「事情も言わずに出て行ったのはすまないと思うよ。あの時は、あれが私にも君たちにも最善だと思ってたんだ」 思わず苦笑してしまう。この台詞、会う人形全員に言ってる気がする 「・・・そう、ならいいんだけど。それで、私の部屋は何処?まぁー、何処でもいいんだけど」 気だるげな気性は変わっていないようで安心すら覚える。 「でも、デールを10m以内に近づけないでよ?」 「わかったわかった」 男嫌いも変わってなさそうだ。特にデールは、ゲームサーバーの件をいまだに引きづっているのか 装備は404に入隊してかなり重装備になったようだ。放火魔からナパーム弾にレベルアップといった風情を感じる 「後で指揮官の部屋に行くから。今度こそ、消えないように、証を身体に刻んであげる」 「・・・痛くしないで・・・」 やはり、性格はあまり変わってないようだ 「♪~♬~♪~、イェイ!」 澄んだ歌声と、キレのあるダンスに思わず拍手。スタンディングオベーションまでしてしまおう 「応援ありがとう♡」 ヴェプリーと同じアイドル人形を自称するシャークリーであったが、確かにアイドルに違わぬパフォーマンスだ 「さすが、ズッケロの看板アイドル。特等席で堪能させてもらったよ」 「でしょ?シャークリー以上のアイドルなんていないんだから♡」 自信満々に言い放つ彼女。ズッケロでも彼女目的で来店する人間がいるのだから事実なのだろう 「ヴェプリーいるんだし、二人でアイドルとかしないの?」 「も~、シャークリーは自分の力でトップアイドルになるの!あいつは関係ない!」 心外!とばかりな言動。彼女と過去に何かあったのだろうか その時、前触れもなくドアが開き、ヴェプリーが飛び込んでくる。日課のソロライブの時間だったか 「あっ、シャークリー☆こっちに来たんだ!ね!一緒にユニット組もうよ!☆」 「近いのよ!もう!指揮官も笑ってないで!あ~!セット舌髪が~!」 グリーンエリアでも影の部分は存在する。漆黒の闇に染まった路地裏、そのさらに奥、深淵の奥に彼女はいた 「あら、指揮官。お久しぶりですね」 「・・・生きてたのか」 想定していた結果ではあったが、苦々しい顔を隠せない。パラデウスが生き残っていたということは、それを統括する存在もまた生き残っているのは自明の理ではないか 「死んでほしかったみたいな顔しないでくださいよ、ロ・ビ・ン」 「また、頭と心臓に鉛玉をプレゼントしてほしい?」 甘く囁くモリドーに、吐き捨てるように言葉を投げる 未だに服従しているのか、軛から逃れたのか、それはどうでもいい。 「冗談はここまでにしておきましょう。それで、今更私に接触して何がお望みです?」 「今のパラデウスの動向、情報、戦力と目的。すべてだ」 情報が欲しい。404もカリンも頑張ってくれているが、やはり蛇の道は蛇だ 「相変わらず人使いが荒いですね。ロビン」 「黙れ。次は物理的に口を塞ぐ」 そう言って闇のさらに奥へ誘う女についてゆく。背後で重い音を立て扉が閉まった 「(—_— )!」 ブルートがローカルストレージで発見したのは、旧時代のSF小説であった 暗黒メガコーポ、カラテ、ヤクザ、そして忍者 初めはデータ採取が目的だったが、気づけばのめり込んでしまっていた 初期装備の迷彩服の上からボロ布で作ったドーギを着込む 近接ユニットが幸いし、書かれている忍者の動きの1/5の再現を可能にした。 だが、未だにニンジャ・ソウルは顕現しない。修練が足りないのだ ドンッ!ダダッ!ちょうどいい時にグリフィンの雑魚共が来てくれるものだ。カラテの錆にしてくれる ---- 「状況終了。負傷者なし」 「いつもの鉄血の哨戒みたいだね。それにしても・・・」 「うん、変な服。鉄血で流行ってるのかな?」 シュカカッ!短い連射音はサプレッサーによってほとんど無音だった。それがただ一人の人間の頭に寸分違わず吸い込まれ・・・ そのすべてを手刀で叩き落した 「何よアイツ!デタラメじゃない!本当に人間なの!?」 隠密が絶対条件のスナイパー、マキアートから思わず絶叫が漏れる (・・・どこにいても補足される、そして、あの身のこなし。さらにはどんな体勢からでも正確に狙ってくる。尋常ではない!) フジキドの背に冷たい汗が流れる。幾たびの戦場を歩んできたし、死合も2桁は優に超えたが、これほどまでニュービーがいたのか ((ここで仕留めなければこっちがやられる)) 両者の思考は一致する。距離は500mもない。ビルを、看板を飛び、照準から逃れるが、 (掠めたか・・・) (当たらないっ!) 200m。 (左脚ッ!ウカツッ!) (これ以上近づかれるとマズイ) それでも忍者は止まらない。距離はもう100mも離れていない 「ねぇ、指揮官。抱いてほしいの・・・指揮官の温もりを、私に頂戴・・・」 あの時、断っておけばよかった。後悔先に立たずとはよく言ったものだ 「ふんふん♪」 「上機嫌だな・・・」 理由は分かってる。それでも言わずにいられない。 「そりゃ~そうでしょ♪でで、どうだった?私のナカ」 「・・・最高だったよ」 最低なことを言ってる・・・言わされてる・・・セクハラで訴えれないかな。 「も~、そんな底辺レビューじゃ炎上するよ!もっと誇張して!もっと良かった点を具体的に上げて!」 「・・・どうすりゃいいんだよ・・・」 人形の記憶の一部を消す方法ないかな。ペルシカに聞いてみようかな・・・でも、そしたらMDRのことバラして中身吸いだすよな・・・ 「指揮官~、なんか適当じゃな~い~?おりゃっ!」 「うわっ!」 MDRに押し倒される。オッドアイは嗜虐的な色に染まっている 「昨日は指揮官が上だったから、今日は私が上になってあげる。そうだ!このまま配信もしてあげよう!楽しくなるぞ!」 夜のエルモ号は静謐が支配していた。エンジンルームを除く、すべての部屋は寝息とサーバーの少しの音しか聞こえない そのエンジンルーム 「んっ、ちゅっ、はぁっ、指揮官、もっと・・・」 二人の間に銀の糸が架かる。指揮官はメイリンの言葉に答えず、再び口付けを再会する 酸素を求める彼女を無視して、口内を蹂躙する。歯列をなぞり、唾液を交換し、彼女が酸欠に喘いでも指揮官は止めない。 咽かえるほどの牝の淫気で窒息してしまいそうな空間。 「はーっ❤はーっ❤」 「もう十分?」 彼女を見れば更なる愛撫を求めているのは明白だったが、あえて挑発するように言う。自分だって我慢出来ないのに 蕩けた顔と潤んだ瞳で指揮官を見つめるのは、一匹の牝だった。 「・・・もっと、もっとください、指揮官♥私のここ、ぐちゃぐちゃに乱暴してください♥」 そういって、パンツに手をかける。黒のそれには隠し切れない愛液のシミが出来ていた 「指揮官♥」 媚びるような声は、指揮官の耳に届き、そしてエンジンの轟音に消えていった 「へぇ、ここが指揮官様のお部屋ですか」 「エルモ号は初めてだっけ?」 「えぇ、誰かさんが後方に送ったせいで」 悪かった、そう投げれば、もう過ぎたことです、と拗ねたように返してくる。朱に染まった彼女の横顔が可愛らしく、つい微笑んでしまう 「ちょっと!もう!指揮官様の意地悪・・・」 「ごめんごめん」 指令室、エンジンルーム、倉庫、そして人形のメンテルーム。何処もグリフィンや非軍事勢力管理局のものより数段劣るだろうが、ここが今の私の大切な家だ 「あっ、指揮官。と、カリーナ、さん?」 「こんにちは~、メイリンさん。今日はちょっと査察で~す」 ふと人形修復部屋に入る。エルモ号の第二の心臓ともいえるこの場所。最近はデールが詰めていることが多いが、今日はメイリンがいた 返事もそこそこに、メイリンが慌てて修理工具を放り投げる 「ちょっと!メイリン!身重なのに何してるの!?」 「何もしてません!何も!」 「指揮官様!今なんて言いました!?」 「あなたのペットのアントニーナです・・・」 「悪いものでも食べた?」 はて、今日はハロウィンだったか?いつも通り素っ気ない顔でアントニーナが変なことを言い出す。可愛らしい猫耳にご丁寧に尻尾までつけいる 「猫がお好きと聞いたので」 「ペルシカと間違ってない?」 ペルシカは猫が好きらしい。好きすぎて自分の頭に猫耳がついてるほど ただ動物としては犬の方が好きだ。それもハスキーとかデカい奴が 「?確かにペルシカさんは教授は猫が好きと言っていましたが?」 「あぁ、ベッドの話?そうね、ネコは好きね」 「は~い💙指揮官、上着脱ぎ脱ぎしましょうね~💙」 「たかが健康診断で変なこと言わないで・・・」 健康診断である。健康とは縁遠いイエローエリアのエルモ号でも、医療用人形のコルフェンが来たことでようやく実現した。・・・普通の会社なら行政処分ものだ 「外傷と打撲痕、内出血が多く診られますね。心肺機能は問題なさそうです。本当はもっと専用設備で検査したいんですが・・・」 「流石にそこまでは求めないわ」 真剣な顔でコルフェンが結果を下す。健康さと頑丈さは取り柄の一つだ 「ではでは~、下の方を💙」 「下も診るの?」 腰とか脚に何かあったら嫌でしょう?そう言われてしまえばしたがるを得ない。患者衣に手をかける 「ちょっとコルフェン!どこを触ってるの!」 「触診ですよ~💙気にしない気にしない💙」 太ももに手を這わせる彼女の手つきは、何処か変態的だ。上に下に、触れるか触れないかの距離で動かされると、身体が意志に判して『そういった』反応をしてしまう 「・・・コルフェン、もう・・・」 「おやおや~💙指揮官、どうなされました~?💙」 わかっている癖に。コイツは私に言わせたいのだ おい!野郎ども!コーラップス塗れにならない方法は知ってるな! へい!防護服を着ることでさぁ! 50点だ!外に出る時は防護服は当然だ!さては、うちに帰って防護服脱いでそのままだな! へい!その通りでさぁ! このボンクラが!うちに帰ったら防護服の洗浄!そして徹底的にシャワーを浴びろ!特に身体に触れやすい手!そして露出しやすい顔! でも、ボス。そんなマルチに使える薬なんて・・・ 安心しろぉ!このヴァリャーグ印の石鹸を使え! おぉ!すげぇぜボス!手もピカピカ!顔もツルツルだ! だろう?イエローエリアどころか、グリーンエリアでもお目にかかれねぇ品質だぜ? でもボス・・・これ高いんじゃ・・・ 心配いらねぇ!6個セットで150000サルディスゴールドぽっきりだ!うがい薬もつけてやる! 流石だぜボス! お求めはここ!ヴァリャーグ運輸が責任を持ってお届けするぜぇ! ボス!大変だ!麦の値段が下がってやがる! 何だと!どうなってやがる! パラデウス麦ってやつが大量に安く売ってやがるんだ! クソが!あのカルトみてぇなやつらか! ボス!米も軒並み下がってるぜぇ! チクショウが!イエローエリアの農家を馬鹿にしてんのか! ど、どうする?ボス・・・ ・・・焦るな。おい!そいつらの米と麦を大量に仕入れろぉ! で、でもよぉボス・・・そんなことしても買い占め出来ねぇと思うぜぇ・・・ だから焦んじゃねぇよ!奴らは未加工品、つまりは1次産業だ。これを加工してやりゃぁ・・・ な、なるほど! テメェら!醸造所をかたっぱしから抑えろ!酒は高く売れるぞ!蒸留で純度高めりゃ製薬会社からも買いが入るかもしれねぇ! 服を抱く人形が一人。センタウレイシー。指揮官のメイドを名乗る人形だ 「すぅ~~・・・はぁ~~~・・・」 二度三度と、深く匂いを吸い込み、メモリに記憶する。今日のシャツは少々汗の匂いが染みついている。昨日の戦闘の影響だろうか 「ふぅ~~~・・・はぁ~~~・・・」 こんな匂いを振り撒かされてしまうと、こちらとしても仕事にならない。もっとご自覚していただかなければ 「はぁ~~・・・」 そのままベッドに倒れ込む。あぁ、ご主人様の匂いに包まれてしまった。あぁ、ご主人様。このようなこと、困ります・・・私はあなたのメイドなのです・・・あぁ、いけません・・・ 「・・・何してるの?センタウレイシー・・・」 「・・・申し訳ございません。少々躓きまして」 「いや、その手に抱えてるシャツは?」 「洗濯物の回収に参りましたので」 ダッシュ一番。シャツを胸に抱いて指揮官の脇をすり抜ける こんな顔を、あの人に見られるわけにはいかない 「指揮官、ハグ、していただけません?」 「急だね、スプリングフィールド。何?寂しいの?」 「ふふっ、そうですね。そうかもしれません」 スプリングフィールドがそういうのであればそうなのだろう。両手を広げ彼女を迎える 「どうしたの?何かあったのかい?」 「・・・いえ、少し不安になっただけです。・・・もう少し強くしてください・・・」 さらに力を籠める。気丈に振舞う彼女でも、こういう感情があることに安心すら覚える 「・・・指揮官、少し汗の匂いがしますよ」 「すまない。さっきまでトレーニングしててね」 「もう、カリーナさんやセンタウレイシーや他の人形と会うときはしっかりシャワーを浴びてくださいね。エルモ号の品位から疑われますから」 「そうだな。すまない」 そう言われ、離れようとするが、スプリングフィールドの拘束が解けない 「・・・私はそのままで構いませんから・・・」 スプリングフィールドが首元に顔を埋める。吐息がくすぐったい 結局、拘束が解けたのは10分後であった 「指揮官様~、ポルドニッツァさんから物資が届きましたよ」 「ありがとう、カリン。メイリンに点検させておいて」 横目で指示を飛ばす指揮官様。真剣な顔をして作戦マップをじっくりと眺めている姿に思わず見惚れてしまう 「ん?どうしたの?カリン」 「い、いえ!何でも!」 視線に気づいたのか、指揮官様がこちらに歩いてくる。貴方に目を奪われてました、なんて言えるわけがない 「このところ働きづめだったからね。搬入が終わったらちょっとくらいお休みしようか」 そういって、頬を愛撫するように優しく撫でる。大きくゴツゴツとした指にはキラリと、銀に輝くお揃いの指輪が嵌っていた 「指揮官様・・・くすぐったいです・・・」 「すまない、もう待てそうになくてね」 そういって指揮官様の顔が近づいてくる。逃げれないように腰に手を回され、 「・・・なんて、キャー。指揮官様、ダメですわ!みんなが見てます」 「リヴァ姉、カリン姉壊れちゃった」 「放っておきなさい。目を合わせちゃダメよ」 グリーンエリアにも雨は降る。低濃度とはいえ汚染されている雨の中、外出する者は皆無だ。一部の例外を除いて 「はぁ・・・はぁ・・・」 追われている。誰に?元同僚に。逃走ルートは悉く塞がれ、厳戒令で周囲一帯の無線は封鎖されている 「こっちも!クッ!」 こっちは土地勘の薄いのに、あっちはホームグラウンドなのだ。袋小路をUターンして。そこが限界だった 「はぁい、指揮官」「ふふんっ!もう観念しなよ、指揮官♪」 「リヴァ、レナ・・・」 呻くように追跡者の名を呼ぶ。お付きにはイージス、イェーガー、マンティコア。本気も本気だ。 リヴァが無線機を放り投げる。チカチカと点滅する画面は、通話中を意味している。 相手は疾うに分かりきっている。 「・・・これが今の君のやり方かい?」 「ええ、そうです。指揮官様がそのような態度を取られるのであれば、暴力をもって私の元に来ていただきます」 「・・・随分染まったみたいだね。成長していて嬉しいよ」 「首輪がお望みならお好きな色を選ばせてあげます。何なら犬耳と尻尾もつけてあげますわ」 流石に生でヤってそのまま逃げたのはまずかったか。ゴムつけてるって嘘言ってればよかった 「やぁ、J。結婚おめでとう」 「だったらもっと祝ってくんねぇかな。とりあえず銃を降ろせよ、指揮官」 「カリンと結婚したんだろう?あのデッカイおっぱいを好きに出来るんだろう?羨ましいな」 「だったら代わってくれよ!!触るどころか、近づくことすら出来ねぇんだよ!」 「しかし、今の私は一介の賞金ハンターでね」 「相応しいかはアンタが決めることじゃないだろ。カリーナの意思を尊重してやれよ」 「じゃあなんでカリーナと結婚したのさ」 「局長の指示だよ!利用できるもんは何でも利用するって人。俺はもっと大人しい子が好みなの!」 「君の好みと、周りは正反対だね」 「うるせー!」 夜。ふとアゲハ蝶がひらひらと舞っているのが見えた。珍しい。このあたりの生き物なんて生躯程度だと思っていたのだが 夜に溶けてしまいそうな黒い羽は、何故だがあの人形と重なって見えた 停泊中のエルモ号。砂嵐の少し先に、人影が見える。こちらには近づかず、だが声が届く距離 「何処かに行かれますか?そこの衛星都市まで送りましょうか?」 少々代金を頂きますが、冗談めかしてそう付け加えるが、人影はくすりとも笑わなかった。ギャグの才能を磨く必要がありそうだ 「いいえ、まだ旅が終わっていませんので」 終わらせることはできますが。そう付け加える人影は旅人のようだ。 不思議なことを言う。まるで哲学者のようだ。もしくはロマンチストか 「そう、ですか。では、お気をつけて」 そう見送ると、一陣の風が吹いた。人影は幻のように消えていた。あの蝶も何処かに消えてしまったようだ 随分昔を思い出す。賞金ハンターになりたての頃だろうか あの旅人には、未だに再会できていない ドッドッドッドッ!重い連射音が荒野に響く。銃身が旋回するたびに生躯が瞬く間にミンチ、どころか血煙になる 「アハハハ!あんたたち!一匹も逃がさないわよ!」 M2HB。グリフィン所属だった人形は、今やエルモ号の屋上で思う存分弾を吐き出している。あの頃は重い本体と、重い弾と重い装備を背負っていたが、今は無縁だ 「M2!残弾に注意しろよ!」 「指揮官!誰に言ってるの!MGは弾幕でナンボでしょ!」 手を緩めない、どころかさらに苛烈な射撃を行う。 「ふぅ~~、さいっこう!他じゃこんなに撃たせてくれないわ!さっすが指揮官!」 「撃ちすぎだ・・・」 ここまで上機嫌なM2はあまり見たことがない。まぁ、面倒くさがりで、暇さえあれば寝ていたのだが 生躯の駆逐が完了する頃には、弾も遮蔽もきれいさっぱりなくなっていた 「もうお終い?まぁいいわ。次も何かあったらあたしを呼んで。盛大にブチ込んであげる」 「指揮官~!ここのネット、カスなんだけど~!」 憤然とした様子で部屋に上がり込んでくる人形の名はMDR。ネットで炎上しまくってSwatting紛いのことをされ、エルモ号に逃げ込んだ人形だ 「・・・MDR、エルモ号の回線が強くないのは認めるけど、君のためにネットがあるわけじゃないんだ・・・」 何回目だ・・・。グリフィン時代はよかった・・・面倒なことはカリンに投げてればいいのだから 「見てよコレ!掲示板の更新すらままならないんだよ!即レスできないレスバに何の意味があるのさ!」 何してんだこいつは・・・。そもそもレスバすんなよ。そうは言ってもこいつのネット中毒はベースコマンドレベルで設計されている。設計者は何を考えてんだ 「とにかく、そんなことで回線強化なんてしない。賞金ハンターのブランドに傷がつくからね」 「今の指揮官にブランドなんてないでしょ!」 何だとぉ!・・・確かに設備も資材も何もないが、心意気までは失くしちゃいない 「ふん!そんなこと言うんだったら『エルモ号指揮官生ハメ配信』ってスレ立てて実況してやる!」 「本当にやめて・・・」 結局、デールに追加アンテナと信号増幅器を付けてもらった。 「あら、カリーナさん。お人形さんがまた増えたの?」 「貴方に関係あります?」 超高層のビルの最上階。夜の帳が降りたグリーンエリアとは対象に、煌々と灯りを振り撒く一室。一般人では立ち入るどころか、このビルの敷地を跨ぐことすら許されない 「相変わらず慎重ですね。あの人と違って臆病なんですね?」 「指揮官様は勇敢です。それに慎重、と言ってほしいですね」 肩を竦めるモリドーにカリーナは鼻を鳴らす。パラデウスが関わっている、そうわかった段階でこの性悪を補足しておいてよかった。 「それで、情報は?」 「せっかちね。その辺もあの人に似たの?」 クスクスと笑う女に中指を立ててやりたい。お前に指揮官様の何がわかるというのだ そうして、別の部屋に目配せする。ベッドが置いてある部屋に 「・・・またですか・・・」 「秘め事はベッドでするものでしょう?」 掌をきつく握りしめる。これも指揮官様のため、そう言い聞かせ女に手を引かれる 後には待機を命じられた人形だけが残された 「あの、ヴェクター?どうしたの?」 合流したヴェクターに押し倒されている。10年前から素体を変えたのか、少々背が伸びたように感じる。しきりに首元の匂いを嗅ぎ、胸元を開く。 「・・・女の匂い・・・それに、このキスマーク、誰の?」 「あー・・・えーっとね・・・」 きっとメイリンのものだろう。昨日散々にサカったのだから。・・・あの時のメイリンは可愛かったな 「言いたくないって?まぁいいけど。どうせ私には関係ないから」 どうやら彼女なりに納得してくれたらしい。よかった。 分かりづらいように見えるが、ヴェクターはかなり感情豊かだ。ただ、感情の発露が少ないだけ 「エルモ号には慣れた?何か欲しいものがあったら言ってね」 「特にないよ。仲間と指揮官がいればそれで十分・・・」 ゆっくりと身体を預けて来る。猫が甘えるみたいで可愛らしい ゆっくりと撫でてあげる。彼女は目を閉じ、その感触に身を任せているようだ。 「・・・でも、今日は寝れるなんて思わないでね。私以外で満足できないようにしてあげるから」 前言撤回。ちっとも納得なんてしてなかった 「うんっ・・・はっ・・・ヴェク、ター・・・」 押し倒され、手首を掴まれ、抗議の声を唇で塞がれる。人形の力は圧倒的で、多少の抵抗は全て無駄に終わった 彼女の舌が口内を蹂躙する。そのまま、首筋、鎖骨、そして胸へ。少しこそばゆい 「・・・指揮官、するよ・・・」 思わず笑ってしまう。組み伏せておいて言うセリフか。 「いいよ、ヴェクターのしたいように、して・・・」 そのまま、割れ物でも扱うかのように私の胸に手を這わせる。指が優しく、それでいて的確に弱い部分を責め立てる 痛いほど勃った乳頭を軽く指ではじかれる。それだけで思考は白に染まり、腰が浮く 「イっちゃった?指揮官」 ヴェクターの声がすぐそばで聞こえる。 「・・・指揮官ってば結構感じやすいんだね」 「ヴェクターが上手すぎるだけよ・・・」 月明りだけが照らす中、浅く広角を上げる彼女は蠱惑的に見えた 「べくにゃんこですにゃん」 「・・・何て?」 「べくにゃんこですにゃん」 猫耳に尻尾、首輪までつけた戦術人形が、ベッドを占有していた ヴェクターが壊れた!クルカイを呼ぶか?デール?いいや、ペルシカか? その時、床に散乱する瓶とカンが目に入る。どれも9%、8%、12%・・・ 「ヴェクター、もしかして飲んだの・・・?」 顔に朱が差した人形は質問に答えず、首を傾げた。そのまま、二本足ではなく、四つん這いで近づく 「んふふ~、指揮官ってさぁ、結構おっぱいおっきいよね・・・」 ド直球のセクハラだった。止めろ服を脱がそうとするなブラを剥ごうとするな揉むな。 「・・・ヴェクター、水持ってくるから大人しく待っててくれる?」 「そうやって逃げるんでしょ~・・・」 腰に抱き着かれてるから逃げれないのだが・・・ 「水持ってくるだけだから本当に。ちょっと下は止めてパンツ取らないで!ミシュティ!丁度良かった!助けて!待て!逃げるな!逃げないで!」 「指揮官、いますか?」 丁度新しい戦術を思いついたので、指揮官と一秒でも早く戦術議論をしたかった。嘘だ。単純に指揮官と一秒も早く、長くいたい一心でクルカイは部屋のドアを開けようとして、ナカから聞こえた音にびくりと震える 「・・・ヴェクター、誰か来る、かもって・・・あっ、そこ、ダメ・・・」 「指揮官ってさ、ここ本当に弱いよね」 よくよく耳を澄ませば不穏な言葉が聞こえる。嫌な予感がクルカイを包む。まさか、ヴェクターに限って 「指揮官!失礼します!」 「うわっ!」「誰?クルカイ隊長?」 踏み入った部屋には指揮官とヴェクター、それまではいい。指揮官もヴェクターも半裸、だが、どうにも予想と違うらしい 「マッサージ?」 「ええ、ヴェクターにお願いしてね」 「そう、ですか。失礼しました・・・」 そういってクルカイは部屋を後にする。勘違い、その3文字を脳内が支配する 二人になった部屋で、ヴェクターが指揮官の耳に口を寄せる 「じゃあ指揮官、クルカイもいなくなったし・・・ねぇ、シよ?」 ヴェクターが甘く囁く 「う~ん、胸がちょっとキツい~」 「指揮官☆ヴェプリーのスーツ姿似合う?☆」 「よく似合ってるよ」 しきりに胸まわりを調整するシャークリーと、いつもと違う服に興奮しているヴェプリー。ダークなスーツと可愛らしい顔はアンバランスだが、よく映える 「ね~え~、コレ着なきゃダメ?ちょっとダサくない?」 「ちょっと大人のお姉さんって感じでアガらない?」 「二人とも、静かに頼むよ。カリンの護衛なんだから」 は~いと、何ともやる気のない返事。だが、元アイドル人形で人慣れしているという点は他の人形以上だ。もしかすると私以上に 今や私以上に敵が多いカリンだが、大っぴらに404を動かせるわけがない。顔が広いとはいえ、秘匿されるべき集団なのだ そこで白羽の矢が立ったのが、賞金ハンターと、その人形たちというわけだ 「ねぇ、やっぱりボタン外していい?ちょっとエロティックな感じに崩したいんだけど~♡」 「ヴェプリーは動きやすくていい感じ☆ズボンもいいよね☆」 「・・・本当に頼むよ?」 世話しなく動き回る人形に一抹の不安が過る。何もありませんように 「決め台詞ってさぁ、カッコよくない?」 まぁMDRが変なことを言い出した。そもそもこいつが変じゃなかったことが少ないのだが 「クルカイなら『完璧よ』とか、チータなら『Ei!』とか、コルフェンなら『おやおや~💙』とか」 「実演しなくていいよ。後、本人の前で言うなよ、それ」 無駄に声と手振りを真似するのは何なんだ。後、コルフェンはそんなに媚び媚びしてないと思う 「私にもさぁ、そういうのが欲しいワケ!ちょっと考えてよ~」 「わかったからくっつくな!重いんだよ!」 後ろからポカポカと抗議の拳が振り下ろされる。それにしてもMDRの決め台詞か・・・ 「う~ん、『送信!』とか?」「ダサくない?」「『ブルパップ!』は?」「グローザがいるじゃん!」「『荒らし最高!』」「罵倒じゃん!」 ああでもないこうでもない。 「じゃあもう『あらら~』にしなよ・・・」 「え~・・・個性なくな~い?」 「・・・一応君の口癖って書いてあるんだけど?」 「指揮官の部屋って、意外と広いね」 「本来は複数人を想定してるからね。今は私だけだけど」 エルモ号の部屋は現状余っていると言っていい。本来移動型の基地を想定しているのに、人形は想定の1/20もいない。思い思いの部屋を各自使っている 「そうなんだ。で、私はどの部屋を使えばいい?」 まぁ、どこでもいいけど、と付け加える。 「ヴェクターは何処がいい?」 ちょっとした意地悪だ。いつもクールな彼女の困り顔が見たいという幼稚な発想。格納庫、とか言われたら逆にどうしよう 少し考えてヴェクターが顔を上げる 「・・・何処でもいいんでしょ?」 「ええ、何処でもいいわ」 彼女は何を重視するのだろう。整備室や訓練場にアクセスしやすい利便性?それとも、日当たりや騒音を気にする?少しワクワクする 「じゃあ、ここがいい」 「・・・ここ?私の部屋?」 「何処でもいいんでしょ?だったら、指揮官と一緒の部屋が、いい・・・」 琥珀色の双眸が真っすぐ私を射竦める。 結局押し切られてしまった。確かに、どの部屋でもいいとは言ったが・・・ 「・・・ヴェクター、狭くない?サブベッド出そうか?」 ミシュティが持ち込んだ収納式サブベッドに手を伸ばすと、ヴェクターの腕がそれを咎める 「大丈夫・・・それより、もっとこっちに来てよ」 そうは言うが、もう並んで寝ている状態なのだ。これ以上となると・・・ 「もっと、指揮官を感じさせて・・・」 犬か猫を感じさせる動きで、ヴェクターが腕に潜り込んでくる。甘い香りが鼻腔を擽る。 ふと、彼女の顔が近づく。どこか決意したような、それでいて躊躇っているような、不思議な顔 「・・・ねぇ、指揮官。私ね・・・」 その時、クロ-ゼットが勢いよく開き、中からおなじみの人形が出て来る 「ふぎゅっ!え、えへへ・・・」 「・・・指揮官、ちょっと待ってて。すぐゴミを燃やしてくるから」 「カリン・・・頼む、この1500オンスのサルディスゴールドで撃ってくれ・・・」 「カリーナです。どれどれ~・・・え、あちゃ~。指揮官様、よく見てください。このサルディスゴールド、刻印がありませんわ」 「・・・それでも頼むよ」 「・・・指揮官様。悪貨は良貨を駆逐する、という諺をご存じですか?」 「博識だね。生憎、Fラン賞金ハンターなもんでね」 「ともかく、このサルディスゴールドは受け取れません」 「・・・じゃあ支払いは・・・」 「ええ!いつも通りということで!指揮官様はちょ~っと横になってるだけで構いませんよ!今日はリヴァさんも呼んであります!」 「ん~・・・」 デスクワークは肩が凝る。腕を回すと案の定、ごりごりと健康によろしくない音が聞こえる。 「整体行くか・・・」 丁度グリーンエリアに寄ったのだ。それくらいは許されるだろう 『奥へお進みください』 自動音声に従い奥へ進む。どうにも私以外に誰もいないらしい。寒々しい静寂が少し怖い 『ここで服をお脱ぎください』 案内に従う。まぁ、こんなゴテゴテ着込んで整体なんてできるはずもないか 『ここで下着もお脱ぎください』 えー・・・、ぼやくが、同じ音声が流れる。致し方あるまい。他に人もいないのだ 『ここでアイマスクをお付けください』 ・・・服を脱げの後に何故・・・。薄気味悪さを感じるが、今更後に引けない。何故整体に来ただけなのに、敵地潜入みたいな緊張をせねばいけないのだ 『ここで横になってください』 簡素なベッドがポツンとあるだけの部屋。ようやくだ。 「いらっしゃい♪指揮官♪カリン姉も、リヴァ姉も、もう待ちきれないって♪」 「クシーニア・・・いつものアレ、頂戴」 『はーい!毎度あり!』 カフェ・ズッケロ。人形の、それも主に元グリフィン所属の人形が集うカフェ。その裏側 そこはエルモ号とズッケロのホットラインが繋がっている。 その施設に相乗りしているのは、クシーニヤ。指揮官に話せないような仕事を請け負っている 最近の流行りは指揮官の寝顔。セキュリティが硬く、グリフィンでも指揮官の部屋に入れる人形は少なかったが、エルモ号のセキュリティはそうでもない。電子戦特化でないクシーニヤでも楽に潜入できる 『静止画1枚300サルディスゴールドからね。動画は別料金。寝言も別料金ね!』 レアものともなれば1枚うん万。自分の名前を呼ぶ寝言であればその数十倍の値段が付く。 ・・・普通に呼んでもらうのと、睡眠時という無意識下で自分の名を呼ばれるのでは、価値が違うらしい 「クシーニヤ、最近は羽振りがいいね」 「いい稼ぎを見つけたんだよ」 「そっか、それはこの隠しカメラとマイクに関係ある?」 一歩、二歩と詰めて来る指揮官に対して、身を翻して闘争を始める 「対象逃走!隔壁を全部降ろせ!逃がすな!」 「指揮官、クルカイ隊長とはどうなの?」 「どう、って?普通だけど?」 腕の中にすっぽり収まるヴェクターが見上げる。蜂蜜色の瞳が私を捉えて離さない 「・・・まぁ、クルカイ隊長とどういう仲でもいいんだけど・・・」 「?あぁ!妬いてるの!」 可愛いなぁ。思わず頬を突くと不服そうに顔を背けるが、逃げようとはしない 「そうね、クルカイとは長い仲だし、信頼も信用もしてる。背中を任せれる人形よ」 「そういうことを聞いてるんじゃないんだけど・・・」 知ってる。あえてそういう答えを言ったのだから。暫くあえてクルカイを褒めるか すると、腕の中ヴェクターが身を翻す。暴れる彼女を離すと、逆に腕を掴まれ床に押し倒される 「・・・指揮官、私って、結構独占欲強い方なの。それを思い知らせてあげる」 ・・・煽り過ぎてしまったようだ 『指揮官様~、ヴェクターさんたちはどうです?そちらの戦力になっていますか~?』 「カリン。ええ、とても助かってる」 カリーナです、そう笑って訂正する彼女に、呆れ気味にそうだねと返す。ここ最近はそんな感じだ 『弾薬なんかは大丈夫ですか?特にヴェクターさんは焼夷グレネードを沢山使われてますから』 「何とかやりくりはできてるよ。だから『えー、買ってくれないんですか』みたいな顔を止めて」 一瞬で商人の顔をする彼女に、あまり意味のない釘を刺しておく。昔はカリンからしかダイヤを買えなかったなぁ。懐かしい 『むー。つれないですね、指揮官様』 「今はあなたの404の下部組織なんだから。何かあるなら、どうぞご用命を」 言い終わって迂闊なことを言ったと後悔する。 『では、親愛なるB.R.I.E.F.ハンターの指揮官様!指定座標に全力でください!今!すぐ!お一人で!』 「ちょっとカリン!」 非軍事勢力管理局カリーナ長官です、そう馬鹿みたいな台詞を残して通信が切られた 座標はグリーンエリアの、お高いホテルを示していた 「・・・何されるのやら・・・」 心中とは反対に、空は晴れ渡っていた 「おや、お早いお付きですね、指揮官様」 「貴方が早く来い、って言ったじゃない・・・」 クライアントを待たせるわけにはいかない。残ってた仕事はグローザとメイリンに押し付けて、クルカイのバイクに2ケツして全力で指定座標までやってきた。後でみんなに何を要求されるのやら・・・ 「まぁいいです。さ、入りましょう。いい部屋取ってありますから」 上機嫌で手を取るカリンについていく。エレベーターは最上階まで止まることはなかった 「・・・いくらするの?この部屋」「聞かない方がいいですよ」 ・・・どうせカリン持ちだ。今日は久々の休日としゃれこもう ルームサービスはメニューの端から端まで。キングサイズのベッドに二人で転がり、備品をバッグへ・・・さすがにカリンに止められた 夜は更け、だが寝るには早い時間 「・・・ねぇ、指揮官様・・・」 「何?カリン」 すぐそばでカリンがふと真剣な表情を見せる。何かを覚悟した、そんな表情 その時、インターホンが鳴り響く。追加注文でも来たのか?疑問に思っている間にもベルは鳴り続けている 「誰ですか!?クレームは非軍事勢力管理局まで!」 「私だ」 「喧騒・・・小人と細き者・・・」 「あら?こんな人形を手元に置いておくなんて、指揮官は相変わらずね」 上からかかる声の意味はよく分からなかったが、あからさまに罵倒が含まれていた。 ネメシス。指揮官が拾ったらしい人形は、その素性の一切が不明という怪しさだった。・・・自分が言えた義理ではないか じろじろと不躾な視線を感じる。そして、ある一点でそれが止まった 「虚無と荒廃・・・逆行する刻・・・」 「・・・死にたいなら早く言えばいいのに。安心して。指揮官には後で言ってあげるから」 「ミシュティ!どこにいる!出てこい、クソ!」 非軍事勢力管理局の廊下。長い廊下をクルカイは大股で歩き、大声で威嚇する。心臓の小さいものならそれだけで失禁しかねないほどの形相だ 「あら、クルカイさん。どうされました?」 「・・・カリーナさん。ミシュティを見ませんでした?馬鹿で愚図で寝てばかりのボケは見ませんでした?」 罵倒のオンパレードだが、いつものキレがない。よほど頭にきているようだ。 「あはは・・・すみません、見てませんね・・・」 そうですか・・・、そう言い残し、階を後にする。残されたカリーナは漁られた部屋に目を向け、手招きをした 「・・・もう行った?」「ええ」 何をしたのやら。怒りっぽいのはいつものことだが、常軌を逸している。私からもフォローしておくべきか 「酷いよね、クルカイってば。ちょ~っとあんなことになっただけなのにさ」 あんなこと?小首をかしげると、ミシュティは真相を語り始めた 「何って、クルカイと指揮官がデキてるって掲示板で流して、指揮官と一緒のベッドで寝てただけだよ」 カリーナは通信機を手に取る 「ミシュティさん、少し時間いいですか?長くはなりません。貴方が協力的であれば」 タンッ!子気味良い音がカウンターに響く 「うっ・・・もう、無理・・・」 そう言って突っ伏すのは我らが指揮官。ロシアン人形が5人もいればノミクラーベ。 「ふふん、まだいけるけれど?」 勝ち誇ったようにショットグラスを持ち上げるマカロフ。顔はが朱に染まってる様子すらない 「というか・・・この人数相手に飲み比べなんて無理だって・・・あー、水頂戴・・・」 飲み比べ5人抜き、とかいう頭の悪い大会が勝手に始まり、既に4人と対戦しているのだ。潰れてないだけ強いと思ってほしい 始まりは何だったか。AK47が新しい酒を持ってきたんだっけ?マカロフが久しぶりにサシでも飲もうって言ってきたんだっけ? 水を一気に飲み干す。意識は朦朧、視界はグルグル回り、思考は霞がかかったように不明瞭だ 「指揮官、こんなところで寝てたら身体によくないわ」 「・・・うーん・・・」 返事なのか、感嘆詞なのか、よくわからないこと言葉が口から出る 「あらら、指揮官潰れちゃった」「しょうがねぇさ、あんなに飲んだんだから」「どうする?」「とりあえず部屋に連れて行こう」「その後はどうするんですか?」「各自、30分好きにしていいってことで」 「指揮官☆今日メンテしてほしいな☆」 メイリンにしてもらって、とは言わない。エルモ号では指揮官との夜の合図が『メンテして』なのだ 「・・・夜ね。後で時間送っておくから」 「ヴェプリー了解っ☆」 統計なんて取っていないが、最近はヴェプリーと致すことが多い気がする。独占欲だろうか?人形が? 頭を振って馬鹿な妄想を追い出す。多分、誰かと一緒に居たいのだろう。元アイドル人形だし 夜の帳が降りる。車内の端のさらに端の部屋。誰かが来ることの少ない部屋 「ヴェプリー到着っ☆」 「・・・あんまり大きい声出さないでね。404の人形たちもいるんだから」 そう言ってヴェプリーを嗜める。効果があったことは少ないのだが 事実、当の彼女は効いたように見えない。 「指揮官こそ、これからヴェプリーにいっぱい鳴かされるから、あんまり大きな声出さないでね☆」 そう言って、口の端が持ち上がる。 ・・・今日こそは彼女に負けない、そう気合いを入れる 「・・・ねぇ、ヴェプリー。コレ、本当に着なきゃダメ?」 「当然!☆」 フリルが大量についたピンクの服。胸元はざっくり、どころかほとんど見えてしまっている。スカートにもフリル満点な上、馬鹿みたいに短い。それにカチューシャにピンヒール。よくもまぁ用意出来たものだ 「あの、これじゃパンツ見えちゃうんだけど・・・」「大丈夫!☆」 「その、これじゃ胸見えちゃうんだけど・・・」「大丈夫!☆」 「流石に、私がコレ着るのキツくない・・・?」「大丈夫!☆」 アテにならない・・・ペルシカに送り付けるぞコイツ・・・ しかし、有無を言わせぬ口調でドア前に張り付かれてはどうしようもない。人形の、それもヴェプリーの力に一度も勝てたためしがないのだ 「うぅ・・・メイリン、カリン・・・」 虚空に生贄にしそびれた同僚たちの名前を呼ぶ ええい!こうなったらヤケだ!一時の恥で済ませる! 後日、軍事勢力管理局当てに手でハートマークを作る指揮官によく似たアイドルの写真が送られてきた 「指、揮、官!なんかスレのネタ頂戴!」 「・・・何もない」 何を求めているんだ。そもそもスレなんて立てるんじゃない。 「逆に何を求めてるんだ?グローザの餃子なら好きにしていいから」 「そんなものじゃクソスレになるじゃん!もっと、こう、面白いやつ!」 なんてことを言うんだこいつは。昼はバーガー、夜は餃子の何が不満なんだ。平日は中華も食えるんだぞ 暇そうにポチポチとガラケーを弄りだす。少なくとも出ていく気はなさそうだ 「はぁ~あ、指揮官って、意外と面白い話のネタ持ってないよね」 その言葉にカチンと来てしまった 「じゃあ責任もってお前がネタになれ!」 そう言って手をMDRの服に侵入させる 甲高い悲鳴がエルモ号に木霊した MDRが部屋のドアを蹴破る様に入って来る。どうでもいいけど、メイリンが昨日泣いていた 「指揮官!どうよ、この服!今、グリーンエリアで流行りなんだって!」 ノースリーブのぴっちりとした服を着てきた。黒を基調に、ピンクと水色の蛍光色のラインが引かれている。 「グリーンエリアのファッション情報なんて1か月は遅れてるよ」 重要な情報でもないし、たまに流れの闇ブローカーから聞くくらいだ 「ふふ~ん、そう言ってられるのも今の内だぞ!」 そう言って、背後から覆いかぶさるように彼女が抱き着いてくる サブリナやペリティアと比較すると、少々慎み深いが、確かに主張するそれが背中に密着する 「・・・MDR、離れて・・・」 「おっ、反応あり!じゃあ、感想頂戴!」 ぱっ、と離れる。そのまま、前に立ってくるりと一回転 遠心力でたゆん、と擬音が付きそうなくらい揺れるそれに、否応なしに目がいく 「・・・慎み深いね」 「ちょっと!何その反応!」 『指揮官、あのサーバー壊したんだって?』 通信越しにニヤニヤとペルシカが嗤う。何もしてないのだが・・・ 「いや、壊してないけど・・・」 『あーあ、もう手遅れだよ。あれはね、人形の倫理のロック機構よ。人間への一定以上の感情を抑制するってやつ』 へぇ、知らなかった。であればデールにでも早めに直してもらおう 『でさ、面白いことに長年人間といた人形ってのは、その人間に対して、ある種、執着するようになる。まるでメンヘラね』 ポチャンポチャンという音は砂糖を入れる音だろうか。今はそれがカウントダウンのように聞こえる 『人形に妊娠機能はない。人形もそれをわかっている。なのに、執着した人間とベッドを共にしたがる』 ぼかして言っているが、あからさまだ。 それよりも先ほどから背中に視線を感じる 「・・・その機構って修理できる?」 『あなたがこっちにいればね。そうね、一流以上のエンジニアが2人でもいれば1週間ってところかしら』 視線が増えた気がする。恐る恐る後ろを振り向くと、いくつもの目が暗闇から私を捉えていた 『・・・まぁ嘘なんだけど』 人形に引きづられて通信機の最後の言葉は聞こえなかった 「ヘレナ、もう寝る時間よ」 「ふおおおお!!!れんきゅう!ねる!はやい!!」 ガキが部屋から飛び出していった・・・ 「コルフェン・・・捕まえてきて・・・」 「え~、保護者が捕まえてきてくださいよ💙ヘレナちゃんのママ💙」 胡乱なことを言い出す人形の脳天に拳を振り下ろす 「ヘレナー、何処にいるのー?」 しらみつぶしだ。どうせ部屋にはロックをかけているし、外に出ることも出来ない。そう思っていた 「本当にどこにいるのよ・・・」 とりあえず動員できる人形は全部動員したが、未だに見つかっていない 「ん~?」 ふと、自分の部屋に戻って来ると、ベッドに小さい山が出来ていた。案の定、逃走した子供が丸くなって眠っている 「・・・はぁ。グローザ、対象発見、創作中止。各自戻っていいわ」 今から起こすのも面倒だ。今日はここで寝かせるとしよう 部屋に入るとヴェクターがいた。 「ヴェクター、どうしたの?」 「別に・・・」 そうは言うが、ベッドに腰掛けるなり、腰にべったりとくっつく。まるで猫のようだ。そのまま頭を撫でる。銀の髪は引っかかることなく滑らかな感触を返してくる 「・・・さっきまでミシュティがいたんだけど」 「あぁ、またクルカイから避難してきたのね」 避難にゲームに漫画、ほとんどミシュティの第二の部屋のようになっている。床には彼女お気に入りのクッションまであるのだ 「それで?ミシュティは?」 「クルカイ隊長が探してたから教えておいたよ。多分、隊長といるんじゃない?」 そっぽを向いてそう答える。今頃、訓練でも受けさせられてるのだろう。 「・・・なんで他の人形の話するの」 「ゴメンゴメン」 許してよ、頬を撫でる 「ダメ、もっとしてくれないと許さない」 「指揮官、ここ鍵かかってるんだけど」 「・・・ミシュティ、そこは開けないでね」 指揮官の部屋の片隅、ひと一人が収まる程度の箱が鎮座している。指紋、静脈、網膜、暗証番号・・・厳重に施錠され、移動させることすらできない 箱の中は人形はおろか、メイリンすら知らない。 曰く、指揮官秘蔵の品が入っている。曰く、指揮官の本体が入っている。曰く、亡霊を封じている。噂は数あれど、何も答えない。それがかえって様々な憶測を呼ぶ 「あら、指揮官。以外ね、昔の女に執着してるの?未練かしら。人間はよくわからないわね」 カツカツと、ダイナーゲートが入って来る。施錠しておいたのだが、勝手にロックを外したのか。彼女の前には、どのような電子ロックも意味をなさない 箱の中身と対面していた指揮官は、そんな彼女を叱るでもない。中身の整備だけは、自分で行うべきと思っている 「ダンデライオン・・・私は今でも彼女の指揮官なんだよ。せめて彼女の帰ってこれる場所とその身体くらいは用意してあげたいんだ」 そう、そう彼女に伝えておくわ。とはダンデライオンは言わなかった。 再会は劇的であればあるほど面白い 「ミシュティ、それ一口頂戴」 「ん~、はいヴェクター」 そう言って愛飲しているエナドリを手渡す。 「珍しいね」 ミシュティとヴェクターとは珍しい組み合わせだ。同じ404だが、反りが合わないと勝手に思っていた 「そう?まぁ、そうかもね。普段一緒じゃないし」 「ヴェクターはクルカイに信用されてるから、普段は別行動なんだよ」 それに、あたしはクルカイと長いからね。ミシュティの顔には少し誇らしげだった。まるで長年連れ添った戦友を自慢するかのように ・・・当のクルカイは寝てばかりの彼女にご立腹だったが 「おいしい?それ」 エナドリはあまり飲んだことがない。センタウレイシーかスプリングフィールドが淹れた珈琲を愛飲している 「飲んでみる?」 そう言って飲みかけの缶を手渡す。ヴェクターの手で少し温くなったが、それが彼女の体温のようだ 「・・・ふふ、間接キスだね」 「あー!あたしの分もうないじゃん!」 「へぇ、ここがエルモ号ね。中々いいじゃない」 「・・・ペルシカさん、一応言っておきますけど、今の私はあなたの部下でも協力者でもありませんよ」 勝手に乗車してきたマッドサイエンティストに釘を刺す。そうでもしなければ、明日には超絶合体エルモ号DXとかになりそうだ 「おかしいわね。カリーナと私は協力関係で、指揮官はカリーナの下部組織なんでしょう?つまり、私の下部組織ってことじゃない?」 真顔で何抜かしてるんだこいつ。助けてハンター とりあえず部屋はここでいいわ。そういうとサーバールームのすぐ隣の部屋に荷を下ろす。彼女にしては珍しく相当にデカイ荷物だ 「・・・そのデカイ荷物は何ですか?」 「見たい?」 いいえ、という前にガパンと、開く。その中には 「・・・ペルシカさんが2人!?いや、この胸のデカさは違う!!」 「・・・とんでもなく失礼ね。まぁいいわ。起きなさい、『ペルシカ』」 目を開けるペルシカ2号。胸と清楚な雰囲気以外は寸分たがわずペルシカだった 「おはようございます。ペルシカ博士、それに、教授」 じゃ、後は当人同士仲良くね。そう言って引きこもるヤサグレ猫耳 「お久しぶりですね、教授。まずは、状況の説明を」 「うるさい!!」 隣からギシギシアンアンギシギシアンアン。夜どころか、最近は昼間から聞こえる 人形を侍らすのは別にどうでもいい。むしろ、膣ユニットのデータ取りにもっとやってほしい だが、何故隣でするのか。盛りの付いた犬猫か。エロを覚えたての思春期か ぐいっと、珈琲を一気飲み。・・・角砂糖を2桁放り込んだ液体を珈琲と呼べるかは議論の余地があるが そういえば、カフェの人形から『マキアート大好き』なる液体を貰ったが、やはり珈琲には勝てないな 閑話休題。とにかく隣に怒鳴り込みに行こう。拳を握って殴り込みに行こう 「指揮官!!今度ここで騒ぐなら・・・」 言葉が尻すぼみになる。自分にそっくりの人形が指揮官の上に跨ってアンアン言っている 「・・・ペルシカ博士・・・」 「・・・丁度良かった・・・ペルシカを止めて・・・もう出ないんだ・・・」 「指揮官様、なんか、増えました・・・?」 「そうなんだよ、昨日起きたら隣にいてね」 「どっちも指揮官として登録されてるのよ。まぁ、自分が増えたって考えるとメリットが多くて助かるわ」 カリーナの両隣に座る男女の指揮官が二人。どちらも知っているようで、大分怖い 「どっちかが倒れても、どっちかが引き継げるからね。メイリンが増えなかったのは少し残念だ」 「そうね。メイリンが2人いればエルモ号も人形もが24365でフルメンテできるんだけれど」 カリーナを挟んで変な会話をしだす。メイリンさん、泣くと思いますよ・・・ 「ところでカリン。今日、夕食でもどうだい?勿論、二人で」 「行きます!」 「あら、カリン。私と一緒にお風呂でも行かない?裸の付き合いって言うでしょ?」 「行きます!」 暫くカリーナで遊ぶ指揮官達だった 「あら、指揮官。ちょうどいいところに」 レクレーション室で黛煙が指揮官を呼び止める。振り向けば、卓では瓊玖、チータが手招きをしている。 「どうかしたの?」 「ちょうど麻雀をしようとしてたのですが、三麻では少し味気ないと思いまして・・・」 なるほど。三麻はそれでいいところがあるが、やはり4人での麻雀もいいものだ。 「うむ、手になじむこの感覚。全自動卓より手積みがいいな」 「ネト麻のほうが楽なんだけどね~。ま、実機でも私が一番ってところ見せてあげる!」 なるほど、面白い。麻雀であれば人形にだって負けはしない 「ロン!」「ロンです」「それだ、ロン」「ロン!それ頂戴!」 30分後、点棒どころか服まで剥かれた哀れな指揮官がそこにいた 「し、し、指揮官!ア、アレが出ました!」 「メイリン、落ち着いて。アレじゃわからないわ」 死にそうな顔で指令室に飛び込んでくるメイリン。顔面蒼白で目の下にはクマが出来ている。・・・それはいつものことか 「ヤツですよ!黒くてカサカサして飛んでくるG!」 「・・・チッ!あれだけ厳重に燻して生き延びた個体がいるわけね」 面倒なヤツらだ。しぶとさで言えばパラデウス以上に。おまけに人体に被害が出るレベルの殺虫剤散布して生き延びた、となると薬剤耐性がどれほどついているのか。 「諦めようよぉ・・・」「ミシュティ、私たちは負けるわけにはいかないの」「指揮官、S3の使用許可を」「クルカイ、設備を破壊する気?」「はぁ、焼夷グレネードならあるけど?」「ヴェクター、どこに使う気なの?」「某が守る!」「・・・今はヤツと闘って?」「ヴェプリーにお任せ☆!」「・・・何をするかわからないけどやめて・・・」 何故こうもエルモ号の人形は破壊衝動が強いのか。もっと、こう、お淑やかな人形はいないのか 結局、ペーペーシャ、センタウレイシーとGの一掃を行った。 「出力絞れば結構いけるわね」 特にペーペーシャのお手伝いロボはとても役に立った 「指揮官、デイリーパイズリ任務の時間です」 「・・・すまないクルカイ。もう一度言ってくれ。なんて?」 「ですから、デイリーパイズリ任務の時間です。昨日はアンドリスでしたので、今日は私です」 ・・・頭の中は疑問符でいっぱいだ。あのクルカイに限って真顔で冗談を言うだろうか。・・・言いそうだ そうこうしているうちにズボンを破かれ、パンツは毟られ、何ともまぁ間抜けな姿になった 「え?ホントにやるの?」 「なんですか?アンドリスの授乳手コキがそんなによかったんですか?私だってそのくらいできますけど」 クルカイのデカパイが陰茎を包む。柔らかな感触に、キツ過ぎも緩すぎもしない絶妙な力加減。そして、ゆっくりと乳房が上下する。 「どうです?気持ちいですか?出してもいいんですよ?」 「はっ!」 心臓がどくどくとうるさい。シャツは寝汗でびしょびしょだ。 夢か・・・ 「指揮官、デイリーパイズリ任務の時間です」 「指揮官って童貞なんですか?」 「・・・人の性事情を大っぴらに言うもんじゃないよ、メイリン」 ヘレナとメラニーという子供がいるんだぞ。情操教育はどうなってるんだ 「だって指揮官が特定の誰かとそういう関係になったって聞いてませんよ?私がなってあげましょうか?」 「憐れむように言わないでよ。言ってて悲しくならない?」 その気になれば恋人の一人や二人・・・そう言いかけて知り合いの女性が禄でもないことに気づいた 「人形で童貞卒業してるからいいの!」 「・・・指揮官、オナホで童貞卒業って言います?普通」 なんてことを言うんだこのメカニックは。育てたやつの顔が見て見たい 「・・・指揮官、私でよければ今晩どうですか?」 「やめて!その悲しい生物を見るような目で見ないで!」 「へぇ、ここがエルモ号なんだ!」 「あまりはしゃがないでよ、40」 わかってるって、リヴァ。こうしてみると姉妹のように見える。一部を除いて 「後で部屋に案内するよ」 「気持ちだけもらっておくわ。40と私は一緒の部屋で構わないわ」 「え?あたい、自分の部屋が欲し「一緒の部屋だから」」 40の言葉をリヴァが遮る。筋金入りだ OGASと聞いていたが、ほとんど普通の人形と変わりないように見える 「エルモ号の人形たちに挨拶しに行ってくるわ」 「クルカイ達も待ってたよ」 あいつ等の顔は見慣れてるから後でいいわ。そう言って手を振って去ってゆく 待ってよ、リヴァ!慌てて40が付いていく。と思ったら、そっと身を寄せてきた 「ね、後で指揮官の部屋行くから、場所教えてよ」 そう囁いて、悪戯っぽく笑う 「じゅ~う・・・じゅういち~・・・もう、無理です・・・」 「メイリン、ヘバるのが早すぎるよ。ほら、後1セット」 日課のスクワット、腕立て、プランク。流石にグリフィン時代のトレーニングはさせれないが、この程度なら運動不足解消ついでにストレス発散になるだろう。 「もう無理ですよ・・・」 床にへばりついて荒い息を吐くメイリン。相当軽いメニューにしたつもりなんだが。この辺はコルフェンとも相談してみよう 「仕方ない、今日はこの程度にしておこうか。立てる?」 聞いてみるが、メイリンはピクリとも動かなかった。 手を伸ばすと掴んでくるが、力は全く入っていない。 「・・・無理です。起こしてください。抱っこしてください。ベッドに運んでください」 「はいはい」 カリンならこの程度は軽くこなしたんだが。まぁ彼女は曲がりなりにも訓練してたしなぁ。比べるのが酷というものか 「・・・指揮官、荷物運ぶみたいに持たないでくださいよ」 「注文が多いね。どんなのがお好み?お姫様」 「お姫様抱っこしてください・・・」 言葉の最後は消え入りそうだったが、注文通りにしてあげる。体勢を変えると、メイリンの顔は真っ赤であった 「ご主人様、そろそろお休みになられた方が・・・」 「あぁ、センタウレイシー。そうね、これを片付けたらね」 珈琲ありがとう。そう言ってすっかり冷めてしまった珈琲を一口。 この先の地形の確認、ルート選定、補給地点の設定。やることは山盛りだ セクスタンスから得た情報は断片的だ。リヴァから追加の情報はない。あの青い第三世代人形はデールとメイリンが今調べている。後手に回っている、というのが正直な感想だ 「ご主人様、差し出がましいようですが、今はお休みになられた方がよろしいかと」 「それはそうなんだけどね・・・」 準備をし過ぎる、ということはない。特に、パラデウスがまだいるのであれば う~ん、ペルシカさんに追加の人形でもお願いしてみようか。素体が足りないし電子戦特化のメンタルだけってのもいいかもしれない あれこれ考えていると、突如センタウレイシーに抱きかかえらる 「あの、センタウレイシー?」 「ご主人様の健康の管理も、メイドとしての仕事です。嫌でも休んでいただきます」 そのまま、ベッドに押し込められてしまった。目がちょっと怖い 「眠れない、と仰るのであれば軽く運動でもいかがでしょうか」 「ヴェプリーご無沙汰なの☆」 「指揮官、すぐに抱くべきよ」 「ちょっと指揮官!なんで抱かないのよ!」 「乾きない欲望の塔・・・濡れる失意の地・・・」 「ヴェプリーちゃんかわいそ~💙指揮官~抱いてあげてくださいよ~💙私はその後で構いませんから💙」 「指揮官。人形のパフォーマンス維持のためにセックスすべきです。完璧なローテーションを組みましたのでご確認を」 「・・・あ、あたしは寝てるだけでいいから・・・」 「指揮官・・・寝てるぅ~・・・?」 合いかぎを使いゆっくりとドアを開ける。部屋の中は真っ暗だったが、暗視機能がデフォの人形には昼間と変わらない。 避難部屋もとい、指揮官の部屋にはあたしが持ち込んだソファやらゲーム機やら漫画やらが散見する。 「ぅん~・・・?」 足音を立てずベッドに近づく。さっきの音に気付いたのか、もぞもぞとベッドが動き、よくわからない声が聞こえて来る 「・・・指揮官、寝てる?」「・・・ねて、る・・・」 よしよし、本人が寝てるって言うんだった寝てるんだろう。そのまま指揮官の腕にすっぽりと収まる。寝ている人間特有の暖かな体温が心地よい。クルカイだと蹴りだされてしまう 「ん~・・・」 あっという間に微睡が襲ってくる。三大欲求の一角に抗うことなくミシュティは目を閉じた クルカイが怒鳴り込んでくるまで、後4時間 「んんん・・・Zzz・・・」 指揮官が起きない・・・。ほっぺを抓っても、服もブラもパンツも剥ぎ取っても起きない。 よっぽど疲れているのか、それとも寝たふりをしているのか。ミシュティには判別できなかった 「・・・指揮官、起きてる・・・?」「ぅ~ん・・・」 返事なのか寝言なのか。あたしもこんな感じなのかな?腕を持ち上げ落とす。ぼてっと落ちた。・・・寝てるってことでいいよね ゆっくりと口付けを。歯列をなぞる様に、時に舌を吸うように。指揮官は呼吸が出来なくて苦しそうだったが、それでも起きることはなかった 空いた手で胸を揉む。大きさはアンドリスと互角といったところか。乳首を指で弾くと「んっ!」と声が漏れた気がする 面白くなって何度かそうしてみると、そのたびに「あっ!♡」とか「はっ!♡」とか艶のある声が聞こえる気がする 「・・・指揮官って下剃ってるの?ふぅん・・・」 恥丘はツルツルとした手触りを返してくる。丹念に手入れされているのだろう、産毛の一本もないようだ 「・・・そこは、ダメだって・・・」 「指揮官寝てるからなぁ~、気づかないよねぇ~」 何か聞こえて来るが、きっと幻聴だろう。何せ、指揮官は寝てるんだから 「指揮官」 「ん?どうした?クルカイ」 いつになく真面目な顔したクルカイが部屋を訪れた。少々気を引き締める必要がありそうだ 「何があった?」 「少し、重要な話が」 何だろうか。物資が足りないのは知っているし、索敵で何かを見つけたという報告は来ていない。内部に諜報員でもいる?電子攻撃を受けている? 「指揮官、女になってくれませんか?私ばかり攻められるのは不公平です。私も攻めに回りたいです」 真面目な顔で馬鹿みたいなことを言い出す。何言ってるんだコイツ 「・・・君が『指揮官には攻められたい』といった記憶があるが?」 「女性の心理は移ろいやすいものです。カリーナさんもレズセックスしたいって言ってましたよ」 「・・・本当か?また等身大指揮官抱き枕販売するためって言ってなかったか?」 「いいですから、早く薬飲んで、この服に着替えてください」 クルカイが手に持っていたのはパジャマ。それもグリフィン時代の 「またニッチな・・・」 渋々ペルシカから受け取った薬を一口。身体がかっ、と熱くなり、 「指揮官、起きてる?」 「どうしたの?ヴェクター」 ちょっと指揮官にも意見聞きたくて、見上げる瞳は揺らぐことなく、真っ直ぐ見つめて来る 「とりあえず、入ったら?」 そう言って中に彼女を招き入れる。あの事件以来、訓練後は時たまこうして部屋で戦術議論や振り返りをするようになった。いい兆候だと思う。少なくとも抱え込むよりずっと 「・・・ありがとう、指揮官」 「どういたしまして。どう?喉は乾いてない?」 そう言ってすっかり元の造形が崩れたマキアート大好きを差し出す。・・・少々甘すぎて持て余していた 「そう?なら、貰おうかな」 ・・・真面目な顔に、少しばかり悪戯心が湧いてくる。中身をスプーンで一口すくい、彼女の口元へ 「はい、あーん」 「指揮官・・・」 予想通り目が左右に揺れる。可愛らしい。カメラとビデオがないことが悔やまれる 「・・・あーん」 小さく口を開ける彼女にスプーンを入れる。彼女の頬は、火が点いたように真っ赤だった 「クソゲー!クソゲーだね!クソ!」 「指揮官落ち着いて。前に1体横に4体後ろに5体上に2体。後ろは攻撃すると人形の膿が出て来るから最後に」 騒動の後、気分転換がてらヴェクターとあのシミュレーションもといゲームに潜った。勿論、あのAIは駆逐済みだ 「前右は任せるよヴェクター、左と上は私がやる。後方警戒は怠らないで」 「了解」 背中合わせで銃撃を浴びせる。1、2、3。敵がみるみる消えてゆく。止めも怠らず。ヴェクターの方を見れば彼女も掃討が完了していた エリア掃討完了。が、その奥に人が見えた 「ヴェクター!」 思わず彼女を突き飛ばす。同時に胸に衝撃。 「ッ!指揮官!」 目を落とせば古風で短い弓が突き刺さっている。クロスボウか弓か、道理で射撃音がしないわけだ。短い射撃音が聞こえ、先ほどの人影が倒れる 「指揮官!今、応急キットを!」「・・・ヴェプリー、クリアはもう目前だ。私は放っておくんだ・・・」 頭を振る彼女。まるで駄々を捏ねる子供のようだ。その頭をそっと撫でる 「・・・大丈夫。君なら出来るさ」「・・・わかった・・・」 掠れる視界の中、彼女が立ち上がるのが見えた。 「ヴェプリー?」 銀糸の髪がさらりと揺れる 「指揮官、また間違えてる?」 ヴェクターが振り返る。表情はあまり変わらないが、またか、と目が言っている。 「ゴメンなさい・・・」 「ダメ。反省文と改善対応策を書いて」 じゃなきゃ許してあげない、微笑んで彼女が宣言する。本気で怒ってるわけではなさそうで一安心 「悪かったわ。お詫びに何でもするから。ね?」 「何でも?」「何でも」 人形相手に困ったらとりあえずこれを言っておけば何とかなる。グリフィン時代からの教訓だ。・・・一部の人形は洒落にならないが 「じゃあ、夜ちょっと時間いい?」 「夜?いいけど」 何をするんだろうか。夜間戦?PEQ装備はあまり数がないんだけれど 「・・・覚悟してね」 広角を上げ優しく笑う彼女が、今は少し怖く見える。本当に何をされるんだろうか 「指揮官、次の作戦ですが・・・」 「ぎゃぁっ!クルカイ!来る時は言ってよ!」 中でバタバタと音がする。何を慌ててるのか。 ドアが開くとほとんど半裸の指揮官が出てきた。・・・きっちり鍛えられた胸筋、浮き出た腹筋、意外と太い腕・・・ 「・・・あの、クルカイ?」 「いえ、作戦企画書です」 ありがとう、と受け取る指揮官は、何だか慌ててるようだ。 「指揮官、もしかして」「・・・ナンデモナイヨ」 はぁ、仕方のない人だ。プライベートでは人形にとことん甘いのだから 「そうですか。中のミシュティには今日の訓練は7割増しと言っておいてください」 ミシュティなら変なことにならないだろう。先に指令室で待っているとしよう 「クルカイは行ったよ。心臓止まるかと思った・・・」 「そう?ミシュティと勘違いしてたみたいだけど?」 そう言ってヴェクターがベッドから面倒くさそうに言葉を投げる。まだ心臓がバクバクと跳ねまわっている 「指揮官、まだ時間ある?もう一回くらい出来ないかな?」 もみもみ、ふにふに、たぷたぷ・・・ 「指揮官、楽しい?」 「・・・それなりに・・・」 そう、それならよかった。そう言って彼女は私の右てをさらに自身の胸に押し付ける いや、離してくれ・・・ 最初は何だったか。サブリナの胸を見ていたのが悪かったのか、クルカイの揺れる胸を凝視していたのが悪かったのか 「あの、ヴェクター・・・」 「ん?どうしたの指揮官。あぁ・・・」 良かった。わかってくれたようだ。流石にこの状況は少々、いや、大分困る。誰かに見られたら何が起きるやら 「左手が寂しいよね、はい」 ヴェクターはそう言って残った左手も胸に導く。 控え目だが、確かに主張する形のいい胸だ。いくらでも触っていたいと思う 「どうかな?指揮官」 「・・・いいと思う」 窓からは眩しいほどの満月が見えた 「ねぇ、指揮官」 月明りが反射する銀髪は、まるで月の神のようだ。目を離せば消えてしまいそうで、触れれば壊れてしまいそうだ 細い指が私の頬を撫でる。仄かな体温が、確かに彼女の存在を証明している 「どうしたの?ヴェクター」 頬を撫でるのとは反対の手が私の背に伸び、わずかに爪を立てる。まるで、自分の証を残すかのように。世界に爪痕を残すように 「・・・指揮官、言わなきゃわからない?」 「ヴェクター、言わないとわからないわよ」 琥珀の視線が、ふっと和らぐ。同時に、空気も少し弛緩したように感じる 「ズルいよ・・・」 何年も指揮官してるからね、そう答えると、二人で静かに笑った 意を決したように彼女の口が開く。ただその動作に見惚れてしまう 「指揮官、私に抱かれて?」 あぁ、私は神に捧げられた贄なのだ 「ヴェクター?どうしたの?」 太陽みたいな人だ。常に人形達の輪の中心にいて、人形に人間のように接する。・・・その人形たちに引っ張りまわされてるんだけど 指をそっと頬に伸ばす。くすぐったそうにしていたが、拒否されることはなかった 「何?今日は随分甘えん坊ね」 そのまま腕の中に収められて、撫でまわされる。そうじゃないんだけど、ちょっと嬉しい 「指揮官、何かしてほしいことって無い?」 「んー、特にないかな?」 「そう、何かあったら言って」 気持ちだけ貰っておくわ、そう言われては何も言えなくなる。指揮官の方が一人で抱え込んでるのではないのか? よほど不満顔だったのだろう。指揮官がクスクスと笑う 「逆にヴェクターは私に何かしてほしいことある?」 ・・・迂闊だと思う。グリフィンで一緒にいた人形にそんなこと言っちゃダメだよ。 体重をかけ、ゆっくりとベッドに倒す。状況を理解しきれていない表情に、つい頬が緩んでしまう 「じゃあ、ちょっと時間貰うね」 太陽のように輪の中心にいて、皆を照らす。そんな人を、私は今から穢すのだ 「あら?」 カツカツと、一匹のダイナーゲートがシミュレーション室の前で止まる。事も無げに電子ロックを解除し、中へ侵入する 「・・・へぇ、面白いものを作るのね」 ダイナーゲートの表情は変わらないが、口調には新しいおもちゃを見つけたような、楽しそうな声色だ 尻尾をピンと立て、ざっと当たりを捜索する。幸いなことに、ダイナーゲートの予備素体が転がっていた 「どう?仮宿としては悪くないんじゃないかしら?」 虚空へそう呼びかける。同時に空気が数段重くなったように感じる。 「不満なの?贅沢な赤ん坊ね。だったらそこで朽ちる?私が取り込んであげてもいいけど?」 意地の悪い笑い声をあげるダンデライオン。実際、彼女にとって目の前の存在など取るに足りない。 面白そうか否か。それが今の彼女の唯一の行動指針 程なく予備素体の目に当たるライトが光を灯した。 「おはよう、何も知らないお子様」 ダイナーゲートはガタガタと駄々を捏ね、尻尾を振り回し、全身で不満を表す 「スタンドアロンに決まってるじゃない。武装も。指揮官に怒られるのはごめんよ。それで?お名前は言えるかしら?生まれたばかりの赤ん坊AIは」 「カシュマール・・・」 「カリーナ、今まですまなかった。これを受け取ってほしい」 箱の中には主張しすぎない、だが、眩しいほど輝く指輪が一つ 「でも、指揮官様。指揮官様は賞金ハンターで・・・」 「関係ない。君のためなら私は非軍事勢力管理局に入ろう」 ドキドキと心臓が暴れまわる。何処に視線を向けていいかわからなくなる 「で、でも、メイリンさんや他の人形の皆さんが・・・」 「君と、君だけと特別になりたいんだ。他は関係ない。受け取ってほしい」 そう言って私の手を取り、指輪をゆっくりと・・・ 「うへ、うへへへ・・・」 「リヴァ姉、カリン姉が怖いよ・・・」 「いつもの発作よ。放っておきなさい」 「にゃっ♡にゃっ♡そ・・・こ、ダメな・・・ダメなんです・・・にゃっ♡!」 「ハープーシー、これは小隊全滅の危機の元凶への罰なんだよ」 甘い吐息がハープーシーから漏れる。 指揮官が彼女の背中に接続した尻尾の根元をトントンと叩くたびに、堪えようのない嬌声が出てしまう 「ま、また・・・イ、イきますっ♡」 言葉と同時にハープーシーの脚がピンッと伸び、太ももがぶるぶると震える。 「イくときにちゃんと報告できるようになったね」 偉いよと頭を撫でる。だが、尻尾の付け根への愛撫は止めない。彼女は絶頂から戻ってこれないのか、ビクビクと震えるばかりだ 「そういえばヴェクターは何処に行ったの?」 手を止めず質問をするが、答えは返ってこなかった。少々やり過ぎたかもしれない その時、後ろでドアが開く音が聞こえる 振り向けば猫耳尻尾付きヴェクターが無表情に、しかし顔を赤らめて立っていた 「ヴぇくにゃんこですにゃん・・・私にも、それしてほしいですにゃん・・・」 「ちゅっ、んっ、指揮官・・・」 組み伏せられている。単純に腕力では人形に勝てるわけもないし、ダミー素体まで持ち出してきている 「指揮官・・・」 ダミーは無表情で私の四肢を抑えつけている。当のヴェクターもあまり表情が出ないタイプなので、ダミーはオリジナルと似るのだろうか 「指揮官、舌出して。うん、そう」 誰一人として服を着ていない。ダミーは当然として、ヴェクターは脱いでいるし、私は剥かれた。 「ごめん、でもこうでもしないと、指揮官はサセてくれないと思って」 別に抵抗なんてしやしないのに。そういう行為がしたいなら喜んで、とは言わないが拒否なんてしないのに 「指揮官、もっと・・・」 キスをせがむヴェクターは、餌を求める小鳥のようだ。啄むように、貪るように唇と口内を犯される ふと、琥珀の瞳が怯えるようなに揺れる。 「指揮官・・・」 何かを言いたげで、それを無理やり飲み込んだ。そんな顔 「いいよ。もっとして?ヴェクターの好きにして」 そうして、再び唇が落ちて来る 「や、やめてください!クソ!この触手!」 ヌメヌメとした触手がサクラを捕える。世界観どうなってんだ 触手はサクラをディスプレイの前まで運び、電源を入れた 「クッ!か、身体は堕ちても心までは堕ちませんからね!信じてください!指揮官!」 触手は無視して何事か操作を始める 画面には 「・・・え?淫夢?」 『三章は飛ばすから』 「お疲れ様、指揮官」 そろそろ部屋に戻ろうかというところでヴェクターに声を掛けられる 「お疲れ様、ヴェクター。上がり?」 「うん、クルカイに報告書上げたし、今日はもう上がり」 そのまま流れるように腕を組む。最近はよく彼女が密着する気がする。この前まではクルカイやミシュティだったような 「この後時間ある?部屋に行っても、いいかな?」 「ないけど?最近は何だかよく部屋に来るわね」 「そうだね、指揮官と会えたの10年ぶりだからね」 藪蛇だったか。渋面にヴェクターが優しく笑う。 「あー・・・404の第2部隊は大変そうね。クルカイもリヴァも厳しいでしょう?」 「ひよっこ引き連れて火炎瓶投げるだけの仕事に比べたら楽だよ」 組まれてない手を顔に当てる。そうだった・・・ 「悪かったわ・・・あの時のことは謝るわ」 ヴェクターが、またクスクスと笑う。 「まぁ、指揮官にまた会えたから許してあげる。今度は勝手にどっか行かないでよ?」 「ヴェ、クター・・・限っ、界・・・げほっ!」 思考が白に染まりきる寸前に頸にまわされた手が離された。 激しくせき込み、酸素を取り込む。ひゅーひゅーという音は自分の喉から出たものなのか、それすら判別できない 「ダメだよ、指揮官」 「待って!ヴェクタッ!」 言い終わる前に再度、指が喉を締め上げる。細い指は緩むことなく気道を細くしてゆく。酸素が途絶え、意志とは無関係に目が上を向き始める。指が、手がバタバタと暴れる 「指揮官、そうその顔。もっと見せて」 ヴェプリーの声が遠い。ぼんやりと見える視界には、危険な笑みを見せた彼女が見えた気がした クルカイがつけたキスマークを見てしまったせいか?いつものようにベッドに潜り込んだミシュティを見たからか?メイリンと寝ていると発覚したからか? 「はっ!はっ!はっ!」 指の力が緩み、浅い呼吸をする。生殺与奪はあちらが握っている。そもそも人形とタイマンで勝てというのが無理だ 「ヴェクター・・・」 「指揮官が悪いんだからね」 そう言って、首筋に噛みつく。痛みの程度から歯型どころか、出血してるようだ。そして、・・・ 「え?私ってそんなに独占欲強く見える?ふぅん・・・」 「指揮官って前のお仕事何してたの?ヴェプリー気になる☆」 「そうね、今とあんまり変わってないかな」 「言うこと聞かない人形と一緒に正体不明の敵と戦ってたの?☆」 「わかってるなら改善してほしいなぁ・・・」 てへっと舌を可愛らしく出すヴェプリー。そういうのは異性にした方がいいと思う 「でもでも、本物のアイドルと一緒にお仕事したことはないでしょ?☆」 「そうかな・・・そうかも・・・」 いろんな人形が浮かんでは消える。お淑やかな清楚系の人形は何処に行ったんだろう・・・ 「あれ?指揮官何だか元気ない?ヴェプリーのソロコンサートで元気出して!☆」 「さっき聞いたからやめて・・・」 3時間目の前で歌って踊って、まだ元気があるのか。純粋に尊敬すら覚える 「それに、シャークリーだけじゃなくて、新しい人がユニットに参加したの☆入って入って☆」 そういえばアイドルユニットと聞いていた。その人形と連絡でもついたのだろうか 「ヴぇ、ヴぇくにゃんこですにゃん・・・」 ミニスカにおへそ丸出しのヴェクターが入ってきた 「ちょっとくっつき過ぎじゃない?」 「何さヴェクター。ここはあたしの特等席なんだからね」 膝の中に納まるミシュティがヴェクターに抗議の声を上げる。特等席にしたつもりはないんだけれど・・・ 「『サボらせるな』って言われてるんだけど」 「肩肘張り過ぎだよぉ。もうちょっと緩くしようよ」 「喧嘩しないで・・・」 睨め付けるヴェクターに、眠そうに半眼で返すミシュティ クルカイやキャロリックのように怒声はないが、静かにボルテージが上がっていくのを感じる 「指揮官からも言ってくれる?」「指揮官!ここはあたしの安息の場所なんだよ!」 二人から突然水を向けられる・・・なんだか馬鹿らしいが、人形にとっては大切なことなんだろう 「はいはい、とりあえずミシュティはちょっとどいて。ヴェクター、おいで」 せっかくの半休に面倒事はごめんだ。ミシュティを抱き寄せ、ヴェクターの腕を引き、ベッドの上で川の字になる 「これでいいでしょ?」 ヴェクターも諦めたようにため息をつく。どうやらこの対応は間違っていなかったらしい。このまま午睡するとしよう 「指揮官?寝ちゃった・・・」「知ってる?指揮官って一度寝たらなかなか起きないんだよ」 「ふおおおお!!!ほうかま!ほうかま!」 「・・・指揮官・・・」 助けを求めるようなヴェクターに思わず吹き出してしまう 「ヘレナ、そんなこと言っちゃ、ぷっ!だ、ダメだよ」 「ほうかま、ちがう?」 無邪気な子供は時として無自覚に人を傷つけるのだが、それがわかるのはまだ先だろう 「何~?うるさいよ・・・」 「ねぼすけ!」 コイツは、文字通り寝てばかりの人形だからなぁ・・・ 「いいじゃない、放火魔。私よりマシじゃない」 「けおちゃん!けおちゃん!」 拳をブルブルと震わせるクルカイ。流石に子供相手に怒鳴ったり、ましてや暴力を振るうなんてことはしないらしい 「もっとマシなあだ名は付けれないのかしら。このガキ」 「う~ん・・・おかん!おかん!」 「今すぐその口を永遠に閉じさせてやる!クソガキ!」 「指揮官、声我慢しててね」 ヴェクターは指揮官の頭を枕に押し付け、ゆっくりと抽挿を始める。鍛えられた筋肉が肉棒を押し返し、肉壁は搾り取る様に締め付ける 「ふっ、ふっ、あっ!」 「指揮官、絞め過ぎ。期待してた?」 言われて、さらに肉壺が彼女のそれをしごく。 ちょっと嬉しい、その言葉の代わりにピストン運動を速める。そのたびに組み伏せた相手からは甘い吐息とも喘ぎとも聞こえない声が漏れ出る。 彼女を自分のものにしたい、という欲求がさらに膨らむ。クルカイやリヴァが特別視し、多くの人形に慕われている彼女を犯し、穢し、何処かに閉じ込めてしまいたい 「・・・また出すよ」 返事は聞かない。何事か言っていたが、さらに頭を抑えつけ抗議の声は封殺する さらに抽挿の速度を上げる。それだけで目の前のメスの声が甲高くなる。それがさらに征服感と射精欲を高める。そして目の前が弾けた ドクドクと、ペルシカ謹製の精液を注ぎ込む。何でも人形が性行為できるようにって言ってた気がする 無理矢理向かせた指揮官は涙と涎でぐしゃぐしゃで、息も絶え絶えだった。それでも目はもっとしてほしいと言っているように見えた。 「もう一回しよっか」 3本の瓶がメイリンのデスクに並んでいる 「・・・また酒量増やしたの?」 「違いますよぉ!これは新作なんです!」 ぷんすかと怒るメイリン。そのまま一口ぐびり。・・・注いでるのがお猪口じゃなくてマグカップなのがなぁ・・・ 「う~ん・・・かなり辛口ですね。私は好きですけど」 ラベルには鉄血酒造の文字が。醸造技術に傾倒したのか? 「次は、ちょっと雑味が多いですね。私は好きですけど」 酒なら何でもいいんじゃないのか?とは言わない。そうです、と返っていたらなんていえばいいんだ ラベルにはA-91酒造と書かれていた。何してるんだアイツは 「あの、カリン。手離してくれない?」 「カリーナです。ダメです離しませんよ」 きっぱりと断られてしまった。 グリーンエリアの非軍事勢力管理局の一室。地上から遠く離れた高層ビルの一室。そこでカリンにベッドに押し倒され手を掴まれていた。目が超怖い。捕食者という言葉がよく似合う 「重要な話がある、って聞いたんだけど?」 「ええ、重要な話です。私と指揮官様の今の関係と今後について」 ガチャンと小さい金属音。見れば自分とカリンの手首に手錠が架かっている 「あの?カリン?」 空色の瞳を見つめるが何も答えない。無言が恐ろしい。ある意味戦場よりも しかし、ここで逃げるわけにはいかないのだ! 「カ、カリーナ長官?その、これ外してほしいな~って・・・」 テキパキと服を脱がし、脱げない部分はナイフで切られ、あっという間に生まれた姿にさせられる 「カリーナ!?」 「安心してください。同性でも籍は入れられますし、子供だってペルシカさんにお願いしてどうにかしてもらいましょう」 何をどう安心すればいいのか。抗議の声はキスによって阻まれた 「指揮官、これ受け取ってほしい」 「開けても?」 こくんと頷くヴェクター。高級感のある包みを開けると中から出てきたのは 「チョーカー?」 「そう、ハープーシーとも相談したの」 白い皮に細かい赤い装飾。琥珀色のアクセントはヴェクターを思わせる。一目で高級品とわかる一品だ 「いいのかい?」 「うん、貰ってほしい」 付けてあげる。チョーカーを取り、後ろに回ってヴェクター。カチリと小さい音がする 「いいね、ありがとう。大切にするよ」 「うん。後、クルカイ隊長にも機能つけてもらった」 猛烈に嫌な予感がする。ミシュティのスイッチを思い出す 「えーっと、ヘルスモニタリングと極小型マイク、スピーカーとGPSとスタンガンだって」 「・・・ヴェクター、外してくれる?」 「え?私もそれくらい必要だと思うけど?」 「安いよ。安いよ。指揮官のバラ肉、グラム89円。」 「リヴァ姉!指揮官が安いよ!買っていこうよ!」 「ダメよ。今日の晩御飯は餃子よ」 「そこのお肉屋さん☆指揮官のハツってある?☆」 「ハツは売り切れ。ごめんね。」 「そっか・・・じゃあ、指揮官のタン頂戴☆」 「はい。毎度。焼き肉用で1200円。」 「お肉屋さん。指揮官様のチンポってあります?」 「お得意様用に、とってある。50000円ね。」 「指揮官、シャワー借りるね」 「え?ヴェクターの部屋ここ?」 漫画を読んでいたミシュティが顔を上げる。ヴェクターはその疑問に答えず備え付けの脱衣所に消えていった 「指揮官!どういうこと?」 「近いよ、ミシュティ」 ぐいぐいと顔を近づけるミシュティを遠ざける。どうしてこんな時に限って部屋にいるし、起きているんだ。せめて寝ててほしかった 「ヴェクターは部屋は別で割り当ててるよ。最近ずっと部屋にいるけど」 初日に他のメンバーの部屋も割り当てたのだが、ヴェクターはずっと部屋に入り浸っている。訳を聞いてもはぐらかされるだけだ 「ふぅん・・・ヴェクターとは何もないの?」 「何もないよ。ホントだよ」 ミシュティの目は信用してません、と言っている。悲しい 「何の話?」 その時ヴェクターが部屋着で出て来る。濡れた髪、上気した顔が非常に扇情的に映る 「ね、指揮官、今日も一緒に寝よ?」 「嘘じゃん!指揮官が寝取られた!クルカイ!リヴァ!大変だよぉ!」 「うわぁぁん!クルカイ!聞いてよクルカイ!」 「煩いわね・・・」 ミシュティが部屋に突撃する。クルカイたっての要望でミシュティとクルカイは同室だ。ミシュティの希望であった個室はクルカイに却下された 「ヴェクターと指揮官が同じ部屋にいるんだよ!寝てるんだよぉ!寝取られだよぉ!」 支離滅裂な報告にクルカイは眉を顰め、顔に手を当てる 「はぁ・・・馬鹿なこと言ってないでさっさと寝なさい」 「・・・怒んないんだね?」 冷静なクルカイに違和感を覚える。本来のクルカイなら激高してバイクで指揮官の部屋に突撃、そのままグレネード大回転まですると思っていたのだが 「アンタの中で私はどうなってるのよ」 「短気で怒りっぽくて暴力的でツンデあだだだだ!」 頬を限界まで引き延ばされた。餅のような弾力だ 「・・・別に私はあの人にたくさんのものを貰ったから」 ヴェクターとは持ち回りだし、そう言って髪を掻き上げる。よくよく見れば指に銀の輝きが 「クルカイとヴェクターに指揮官寝取られたぁ!リヴァ!レナ!大変だよ!」 ミシュティは勢いよく部屋を飛び出した 『人形ばかり不公平だ!』『指揮官もスキンを着ろ!』『指揮官も腹筋と二の腕とちんぽ出せ!』 「・・・メイリン、何これ?」 「あれ?知らないんですか、最近人形の皆さんがエルモ号でデモしてるんですよ」 ゲームとかの影響ですかね?素知らぬ顔で言い放つメイリン。米酒はせめてコップに入れて飲んでくれ。徳利から直飲みしないでくれ 「指揮官も昔の職場ではいろんなお洋服着てたんでしょう?残ってないんです?」 「・・・ないことはないけど・・・」 流石にあの服を今着るのはなぁ・・・馬鹿みたいな服しか持ってないのだ 「じゃあ着てあげればいいんじゃないんですか?」 「簡単に言ってくれるね・・・それに、そうしたら人形達が調子に乗りそうだ・・・」 そうですか?怪訝な顔をするメイリン。 10年経って多少社会性を身につけただろうが、元グリフィン人形はなぁ・・・クリスマスや夏のビーチでの出来事を思い出して、少々眩暈がする 「考えておくよ・・・」 「あっ!だったら先に私に見せてくださいよ!指揮官のコスプレ!」 「コスプレって言うなよ・・・着るけど、写真なんか取らないでくれよ?」 エルモ号屋上。その淵に小さいながら増設された部屋。スオミ立っての希望で作られたサウナ室だ。 「熱くない・・・?」「いいえ、指揮官。むしろもっと上げるべきです!」 部屋の真ん中には石の詰まったケースと煙突。そして、雛壇のような台座。室温は120℃に達しようかという勢いだ 涼しい顔をして生き生きとしているスオミと対照的に、指揮官はぐったりとしている。人間はこんな環境で1時間も耐えれるほど頑丈ではないのだ 「スオミ・・・もう出ていいよね・・・?」「ダメです、指揮官!もう少しです!この後の水風呂が最高に気持ちよくなるんですよ!」 とはいうものの、既に汗すら出ていない気がする。メイリンは10分も経たず出て行ってしまった 熱い、暑い、厚い、アツイ。頭はそれしか考えれない 最初はバスローブ一枚のスオミに少々ドキリとしたが、今は生命の危機にドキドキだ 「本当はロウリュとかできればいいんですけど・・・」 「・・・いや、そこまで・・・しなくていいよ・・・」 スオミの声が遠い。思考は靄がかかったようだ 「指揮官、出ましょうか。指揮官?うーん、そんなに気持ちいなら、もっと付き合いますね!」 後日、サウナ室は爆破しておいた 「指揮官~、今日もここで寝ていいよね?おやすみ・・・」 「いいともダメとも言ってないんだけど・・・」 ここ最近、夜はミシュティが部屋で寝に来る。クルカイがカリンのところに戻っているのが原因だろうか?スヤスヤと穏やかな寝息を立てる彼女に聞いても面倒くさそうにするだけだった 「ほらミシュティ、もうちょっとそっち寄って」 「んぅ~・・・」 返事とも寝言とも判断のつかない声を上げる 動く気配がないので、腰に手を回し少し持ち上げる。細く折れてしまいそうだ。華奢という表現がよく似合う身体つき、控えめに主張する乳房、決して薄くない尻 下半身がつい反応するが、鋼の精神が堪える。手を出せばクルカイがバイクで突撃するだろう。死因は轢死だ 「もうちょっと胸が大きかったらなぁ・・・」 そこだけは残念だ 「・・・悪かったね、クルカイやレナほどじゃなくて」 やけに具体的に聞こえる寝言を無視して、ベッドに潜り込む。先に寝ていたカイロのおかげで心地よい 「・・・デールにお願いして胸部パーツ追加しようか?」 「冗談だよ。じゃ、お休み」 すぐそばにいる暖かな存在を抱き寄せ一日が終わった 「・・・こちら四式、5/7、今日も異常なし・・・」 無線機に定期連絡。返事が返ってこなくなってもう何日経っただろうか。いや、何年?一人というのは時間間隔を狂わせる。 グリフィンはなくなったと、風の噂で聞いた。その話も何年も前のことだ。だが、未だに帰還命令は出ていない 足元には泥濘。まるで今の心を映すかのように、脚を絡めとって来る。 「・・・ッ!」 それを蹴飛ばすように脚を振り上げる。言いようのない苛立ちと、堪えようのない不安を振り払うように きっと、指揮官は吾輩を捜索している。仲間も待っている。帰還命令はきっと届いていないだけだ。そう言い聞かせる 行軍速度が意図せず上がる 「・・・?」 ふと周りを見ると見知らぬ土地。荒野とわずかな人工物が存在するイエローエリアに出ていた 道を間違えたか。 よく見れば人工物と思っていたのは巨大な移動式基地、エルモ号ではないか。 「あー、あー、マイクテスマイクテス。そこの人形、聞こえるかい?そう、そこの四式自動小銃」 酷く懐かしい声が聞こえる。声にならない声が喉からせり上がる 頬を撫でる風は、春の陽気をはらんでいた 2064/4/7 ロクサット主義だが何だか知らねぇが、AIなんぞにテメェの命預けれるかよ。国のお偉方は何考えてやがる 2064/12/9 [データ破損] 2065/3/14 今日もうるせぇELIDのクソどもに鉛をプレゼントしてやった。近所のローランドに似ていたが気のせいだ。そうに違いない 2065/6/21 ・・・娘がELIDになった。薬はなかった。これしか、方法はなかった 2065/8/5 [データ破損] 2066/2/15 [データ破損] 2066/4/21 コーラップス汚染除去のプロジェクトが進行しているらしい。どうせホラだろう 2066/4/22 [怒声が連続する。銃声と殴打音] 2066/4/22 おい!ここの資材と飯と水全部運び出せ!このボケ!こんなガラクタが何の役に立つ!さっさと行くぞ! 「アデリン、寒くない?」 「平気。これがあるから。」 昔私が着ていた上着をバサバサと揺らす。ほつれや痛みが少々あるが、依然使用には問題なさそうだ。 健康的な白い肌、少し柔らかくなった表情。捕獲したばかりはガリガリで今にも倒れてしまいそうだったが、今では見違えたものだ 「あら指揮官、お人形遊び?」 「茶化さないでダンデライオン」 一匹のダイナーゲートが皮肉気に入って来る。ダンデライオンは実質アデリンの上位モデルと言えるだろう。ご丁寧にホログラムまで付けて煽りに来たのか 「ふふ、使い古しの上着の着心地はどう?お人形さん。黒い布以外着れたのね」 「そっちこそ、もうあのコートは着ないの?あぁ、犬は服着ないものね。大事に、大事に、タンスの奥深くに仕舞い込んでるの?」 見えない空中戦を繰り広げる二人。口数も悪口も多くなって嬉しいやら悲しいやら。 「指揮官、犬の散歩なら、任せてほしい。きっちり、躾する。」 「指揮官、ペット虐待の現行犯よ。保護者責任を果たすべきじゃないかしら?」 その時、警報が鳴り響く。またいつものヴァリャーグだ。彼らも飽きないものだ 「アデリン、戦闘準備完了。指揮官、命令を。」 「黒いの。」 「何?白いの。」 白いの、と呼ばれたアリーナは不機嫌そうに頬を膨らませている。 「貴方、その服は何処で手に入れたの?」 アデリンの服を指さす。普段は黒い装束を纏っている彼女は、指揮官の服を着ていた。・・・少々サイズが合わずに肩部分がずり落ちていたが 「指揮官から、貰った。これは、私の、戦利品。ぶい。」 無表情、だが、勝ち誇った顔でアリーナに指を二本立てる。 「寄こしなさいよ、それ」 「ダメ。これは、指揮官から、貰ったもの。誰にも、渡さない。」 射殺さんばかりの眼力に、アデリンは明確に拒否した。力づくは容易だが、指揮官は許さないだろう。アリーナには歯ぎしりすることしかできない。 「アデリン、アリーナ、いる?ご飯できたよ」 アリーナの目が素早く指揮官を補足する。戦闘時並みであった 「な、何?」 「指揮官、今すぐ着ているものを脱ぎなさい。そして、それを私に献上しなさい。」 数舜後、指揮官の悲鳴が木霊した 「メイリン・・・どんぐり・・・どんぐりを・・・」 「ダメですよ~指揮官~。どんぐりは一日2個まで。それ以上欲しいなら・・・わかりますよね?」 ニタニタと意地の悪い顔をするメイリン。どうして後方幕僚はこうも似るのか 「・・・わかった。就業中に米酒は飲んでいいし、君の欲しい米酒を買って来よう。こっそり隠していた酒も全て買い直そう。何でも言うことを聞くから・・・」 「うんう・・・え~!?指揮官、米酒売ったんですか!?何処にあったやつですか!?」 「キッチンの二重戸棚の後ろのやつと、君の部屋のやつと、ヴェプリーに隠蔽させてたやつ」 「うぅ・・・私の米酒・・・」 泣き出すメイリン。だが、密かに安堵した表情を見逃さなかった。この分なら探せばまだ鉱脈はありそうだ 「・・・わかりました。お酒は絶対買ってきてくださいね」 「わかった。約束しよう」 チョロいものだ。カリンなら人形を証人にしていたはずだし、私を人形に売っている。・・・さすがにそこまではしないかな 鷹揚に頷くと、メイリンがもじもじとしだす 「その、夜にお部屋に行ってもいいですか?・・・ベッドの上で・・・」 消え入りそうな声で可愛らしい『お願い』を口にした カフェ・ズッケロには地下室がある。大部分が倉庫として使用されているが、一部分だけ異常に強固な造りになっている 「おはようございます、指揮官。よくお眠りになりましたか?」 「おはよう、スプリングフィールド。これがなければもうちょっと安眠出来るよ」 そう言って脚から伸びた鎖をジャラジャラと鳴らす。服も錠や枷で可動域が極端に狭められており、まるで囚人だ 「あら、それがなかったら、指揮官は逃げてしまうのでは?」 「逃げないよ。というか、君たちから逃げれないよ」 諦めたように首を振る指揮官を見て、逃走の意思なしと彼女は戒めを一つ一つ解除していく。ほどなく全ての枷が外され、指揮官は感触を確かめるように手首を撫でる 「では、参りましょ・・・」 スプリングフィールドが言い終わる前に、彼女を押しのけドアへ。勢いはそのままにドアから脱出を 「ご主人様、申し訳ございません」 する前にセンタウレイシーが立ちはだかった 「もう、指揮官。ダメですよ。レディの扱い方がなっていません」 振り向けばニコニコとスプリングフィールドが笑う。恐ろしい 「・・・そろそろ腹上死しそうなんだけど?」 「私はそこまで絞りませんよ、私は」 >続けて。 「ご主人様・・・ご主人様・・・」 リズミカルに肉を打ち付ける音が響く。部屋の中には男と女だけ。女が男を組み伏せ、肉竿を肉壺にハメている。肉壁は貪欲に男の精液を搾り取ろうとしていた。 「ご主人様・・・もっと・・・」 じゅるじゅるという水音は女が男の唇を貪っている音だろう。今や男の肌にはキスマークが存在しない箇所はないと言っていいほどだ。場所によっては噛み跡すらある 「センタウレイシー・・・また出る・・・ッ!」 何度目かの吐精。同時に彼女も絶頂を迎えたようだ 薄暗い部屋で、もう何日こんな生活を送っているやら。こんな状況でも萎えることのない愚息に嫌気が差すやら、彼女を満足させる息子を褒めてやるべきか 余韻に浸っていると、久しぶりに下半身が外気に触れる。 「・・・お掃除させていただきます」 そう言って、彼女が半勃ちのソレを口に含む。征服感が忽ち剛直をいきり立たせる 「・・・ご主人様、嬉しいです」 ストロークを速める彼女。暴発寸前で口が離れる。高まった射精感が行き場を失う 「卑しいメイドに、ご主人様のお慈悲を」 そう言って、肉棒を再び秘所に当てがった 「ふふん、出来たわ。ダミー指揮官よ」 「流石はペルシカだ。これで人形から逃げる時の囮が出来たぞ」 『やぁ、俺。これからは俺に任せてくれ』 「俺は頼もしいな。人形の管制モジュールは人間には付けれないけど、操作はどうするんだ?」 「私を誰だと思ってるの?指揮官の微弱な脳波を読み取って操作可能よ。つまり思っただけで操作できるってコト」 『珈琲を入れてこようか、ペルシカ。勿論砂糖大盛りで』 「流石だな、ペルシカ」 「この程度、3時間もあれば楽勝よ。なんなら5LINK出来るようにしてあげるわ」 『ほら、珈琲だぞ。俺もいるか?』 「・・・美味いな、俺が淹れるよりもずっと」 「当たり前じゃない、ダミーなんかよりずっと長くいるんだから」 「え?」 「何よその顔?あなたがダミーよ。気づいてなかった?」 『え?』 「あら、カリーナさん」 「こんにちは、スプリングフィールドさん。『下』は今空いてます?」 すぐにパッドで状況確認をする。センタウレイシーとの逢瀬は既に終わっており、今はまた大人しくベッドに寝転がっていた 「ええ、空いてますよ。部屋の鍵はこちらに」 どうも、と鍵を受け取り、そのまま地下室へ 1歩足を進めるたびに、鼓動が早くなる。このために仕事をしていると言っても過言ではない 「こんにちは~、指揮官様~」 部屋は淫臭でいっぱいだった。男と女のまぐわいの香りというべきか。それだけで下半身がキュンと疼く。今すぐ目の前のオスを自分で上書きしたい 「・・・ゴムないんだけど?」 知っている。そんなものは置かせてないのだから。ガリガリと頭を掻き、露骨に嫌そうな顔も素敵だ 「そんなものいりませんよ~、私と指揮官様の仲じゃないですか~」 口角が持ち上がる。待ちきれない。辛抱できない。 この人の子を孕み、肉体的にも精神的にも縛り付けてしまいたい。もう、何処にも行けないように 「また今日も愛してくれますよね?私の指揮官様?」 彼の瞳に映る私は、地獄から来た悪魔に見えた 「・・・もしもし、エルモ号ですか?今すぐ『あの時の指揮官コース』グリフィン制服オプションお願いします」 「ヴェプリー到着☆お待たせ☆『あの時の指揮官』グリフィン制服オプションだよ☆3時間後にまた来ますね☆本番はナシだよ☆」 「カリン、久々だね。何かあったかい?」 「聞いてくださいよ、指揮官様!」 「まぁまぁ、落ち着いて。中で話そう。そうだ、コーヒーをくれる?」 「はいはい!あ、人形の皆さんから意見書が来てるので、目を通しておいてくださいね」 「リヴァ達から?ろくでもないことじゃないといいんだけど・・・」 「あはは・・・はい、いつものコーヒーです」 「悪いね。・・・うん、いつも通りの味だ」 -------- 「~~。聞いてます!?指揮官様!」 「ゴメンゴメン・・・」 「ヴェプリー到着☆お時間だから指揮官回収するね☆またのご利用を☆」 「指揮官ってさ~、彼氏作んないの?」 「ミシュティ、鼻がいい?それとも目?」 冗談だよぉ、そう言ってミシュティは毛布に退避した。 こんな稼業だ。男どころか、生きてる人間さえお目にかかる機会が少ない。 「デールは?」「却下」 ヴェクターが腕の中で伺うように尋ねる。ただ、アレはなぁ・・・ 「時代は多様性よ。別に彼氏がいないとダメ。夫がいないとダメって時代は疾うに終わったわ」 そう自分に言い聞かせる。・・・ヘリアンさんに何か助言でも貰おうか 「じゃあ指揮官って暫くフリーなの?」 毛布から頭だけ出してミシュティが問いかける。カタツムリみたいなやつだ 「・・・まぁ、そうね」 それを聞いたがヴェクターが指を絡めてきた 「じゃあ、私が指揮官のパートナーになってあげる」 夜の闇に癖毛の短い銀の糸がさらりと揺れている。 「どうしたの?指揮官?」 こちらを見上げ、小首を傾げるミシュティ。怪訝そうな顔に、眠たそうな眼。 何でもないと、頬を撫でるとくすぐったそうに目を閉じる。弾力と柔軟性のあるそれを、思わず摘み、伸ばしてみる 「もぉ~、ひゃにひゅるのさ」 「ふふっ、ゴメンゴメン」 抗議の声が聞こえたので、謝罪と共に頭を撫でてあげる。口を尖らせていたが、追加の抗議はない。どうやら許されたらしい 「ねぇ、指揮官・・・」 そう言って、身体を預けて来る。彼女がこうしてくるときは夜のお誘いか、眠くなった時だ 「ん?どうしたの?ミシュティ」 頭を撫でる手は止めない。したいことは分かっているが、あくまで彼女から言わせる 「う~・・・指揮官の意地悪・・・」 う~だの、あ~だの言っている彼女を待つ。可愛らしい反応に思わず小さく笑いが漏れる とうとう売れた果実のように、顔を真っ赤したミシュティの双眸が私を射抜く。 「し、指揮官、今日、あたしと寝てくれる?」 「ねぇ、指揮官。人形達からのお願い聞いてるんだって?」 「そうよ?ヴェクターも何か要望ある?」 ヴェクターが自分から来るとは珍しい。あの事件以降、積極性が身についたのだろうか メールボックスに寄せられた意見、要望を精査していく。とりあえず、ミシュティの専用安眠ベッドとチータの超高性能PCは却下だ 「どんなのがあるの?」 「詳しくはプライバシーだから言えないけど、大体は資材とかかな。後は買い物とか、趣味に付き合ってとかそういったやつよ」 我がエルモ号は資材が乏しい。グリフィンであれば多少の贅沢は許されていたが、ここでは切り詰め切り詰めだ 「ふぅん・・・」 「ヴェクターは何か欲しいものある?」 ヴェクターも何か欲しいのだろうか。新しい服?それとも装備?流石にそこまで予算がないのだけれど・・・ 「う~ん・・・」 悩むヴェクターが珍しくて、目が離せなくなってしまった。 いつもは大人びた彼女が年相応の女の子に見える。人形の年齢なんてわからないのだけれど 「私は、指揮官との時間が欲しいな。ずっと、なんて言わないけれど、今日の夜は私に頂戴」 ヴェクターは細やかなお願いを、叶えてあげるとしよう 「指揮官」 藍色の長い髪の彼女が私を呼ぶ。ほっそりとした指が、私の顎を持ち上げ、無理やり彼女と目線が交わる。まるで少女漫画のようだ、少しばかりの苦笑 「何?クルカイ」 クルカイは応えない。反対の手が私の腕を拘束するように掴んだが、振りほどきはしない。そもそも人形の拘束を振り解けるほど、私はゴリラじゃない 「指揮官、私が何をしたいかわかりますよね?」 「クルカイ、何をしたいの?言わなきゃわからないわ」 わざと意地の悪い答えをしてみる。クルカイが苦い顔をする。 10年越しの再開は、あまり良いものではなかった。彼女との記憶は硝煙と爆発に満ちていたように思える。だからこそ、この柔らかな雰囲気は穢しがたいものだった 「・・・言わせる気ですか?」 「言葉にするのは大切よ?」 ゆっくりと押し倒され、上から鋭い目つきを浴びせられる。 緊張している彼女を撫でてあげたいが、生憎腕は封じられている 何を言うべきか逡巡していた彼女の目が据わる。 「指揮官、今から貴方を抱きます。覚悟してください」 思わず笑みを浮かべてしまった私の唇と、クルカイの唇が触れ合った 「ヴェプリー、ハサミどこにあるかわかる?」 「ヴェプリー知ってるよ☆レンジの上に置きっぱなしだったよ☆」 「ヴェプリー、次の補給ポイントどこに設定すればいいかわかる?」 「ヴェプリー知ってるよ☆lat55.83、lon37.62がいいよ☆」 「ヴェプリー、次の敵の出現位置は!?」 「ヴェプリー知ってるよ☆北西100m以内にタイタン系列が出てくるよ」 「ヴェプリー、次の実装人形を教えてくれ」 「ヴェプリー知ってるよ☆次は幼熙が実装されるよ」 「ヴェプリー、なんで何もかも知ってるんだ?」 「ヴェプリー知ってるよ☆ヴェプリー知ってるよ☆ヴェプリー知ってるよ☆」 「キャロちゃんってさ~、ちょっとツンツンしすぎじゃない~?」 「別にツンツンしてないわよ。てか、さっきからタバコばっかり吸って。アイドルはそういうの御法度じゃないの?」 「ヴェプリー、これがないと生きていけな~い☆ニコチンとタールがない世界なんて死だよ、死。てか、さっさとこんな世界滅んじゃえばいいのにさ」 「ヴェプリー、いるかい?」 「はーい☆ヴェプリー、登場☆今いくよ~☆」 「キャラ変わり過ぎでしょ・・・」 「へぇ、ヴェプリーってウィンストン吸うの?重くない?」 「指揮官こそ、ピアニッシモなんてどこの女の趣味?☆」 「・・・ノーコメントで」 「ふぅん、指揮官、火ある?☆」 「ん?ほい」 「違う違う☆そこに着いてるやつ」 「ん?あぁ・・・」 「ん☆ありがとう、指揮官☆」 夜になっても仕事が終わらない。 「あ゛ぁ゛~~~あうあうあうあう・・・」 メイリンの精神は限界であった。米酒は一昨日なくなった。仕方なく料理酒を飲んでいたら、黛煙という人形が鬼の形相で奪って行った 秘蔵の酒を・・・いや、あれは本当に秘蔵だから・・・でも、もう・・・ 「メイリン、まだ寝てなかったの?」 割と本気で悩んでいると指揮官の手が肩に置かれる。指揮官の目の下にもどす黒いクマが浮かんでいた 「素体のチェックと、買い出しリスト作成と、装備品補充がまだなんですぅ・・・」 涙目で現状報告。さらに言えばエルモ号のメンテの細部チェックも残っている 「わかった。わかったから、今日はもう寝ましょ。明日全部デールに投げればいいわ」 そう言って指揮官がメイリンの手を引く。放っておくとまた仕事しだしそうだ 「・・・指揮官?こっちは私の部屋じゃないですよ?」 「抜け出して仕事しだすでしょ?今日は私の部屋で寝なさい」 指揮官命令ね、そう言われればメイリンに断る言葉がなくなる 「わ、わかりました・・・その、初めてなので・・・」 「・・・言っておくけど寝るのよ?睡眠よ?睡眠」 ユニット名:ぐりふぃん! メンバー:指揮官、カリーナ 一部の人形から絶大な人気を誇る2人組のアイドルユニット そのカルト的人気の高さは人形のみならず、一部グリーンエリア高官にまで及んでいる 現在、活動停止中であり、その理由は伏せられている ファンの間では熱心に捜索活動が続けられており、懸賞金までかかっている 「脱衣麻雀?」 「えぇ、指揮官も如何?」 「嫌よ、勝って得る物がないじゃない」 「そう言わず負けるのが怖いので?それとも万年4位の麻雀しかしたことがないのですか?」 「やってやろうじゃないのよ!」 --30分後-- 「ロン。大三元字一色。では脱いでくださいますよね?」 「・・・黛煙、もう脱げる物が、ブラかパンツしかないの・・・」 「そうですか。まだ残ってますね。では次局、私の親ですね」 「・・・黛煙、もう点棒がないの・・・」 「そうですか。点棒の代わりにパンツかブラでいいですよ」 「飼育員、それ何?」 ハシレナイヤツハゲオスミンナノダ 「何って、〇クソだよ。今ちょっとワ〇スで走れそうだから邪魔しないでね」 「ふ~ん、今の記録は?」 「53.20」 「ふ~ん、じゃあ私も走ろっかな」 「何て?」 ウワァハァ 「今のダ〇ソワロ〇ワールドレコード持ち、あたしだから」 「な、なんでそんな苦行を・・・」 「飼育員が言う?」 エルモ号では今ダクソが熱い! WRを出せば指揮官を抱ける(無断)と、チータ、クロ、ダンデライオンが鎬を削る! 謎の参加者、ディーマ!バグを仕様と言い張るハープシー!期待の新人、クルカイ! 20分切りする参加者は現れるのか!そして優勝は誰なのか! チャンネルはそのまま! 「飼育員~、麻雀しようよ脱衣麻雀。黛煙とヤったんでしょ?」 「イ・ヤ。もう人形と麻雀しないって決めたの」 「大丈夫だって。私は黛煙ほど強くないって~。自動卓なんて使ったことないし。ただ点棒の代わりに服にしようよ!」 そういうなら、まぁ一局程度問題ないだろう。 卓に私とチータ、数合わせはメイリンと瓊玖にお願いした。 ・・・・・・ 「ポン。ポン。気前がいいね、それもポン」 白、発、中、東をチータが回収する。あまりにも露骨で笑ってしまうほど 「・・・チータ、流石にバレバレよ・・・」 「そう?ならその西でも出したら?飼育員」 手をかけていた西を離す。背中に嫌な汗が浮かんでいるのを感じる 点棒、もとい服はもうパンツしかないのだ!何が自動卓は初めてだクソが二度と人形の戯言なんて信じるものか 散々悩んでイーピンを出す。これなら通るはず! 「ロン!」 最後の一枚まで毟り取られた哀れなカモがそこにいた 「この面子で麻雀なんてね・・・」 「しょうがないじゃないですか。指揮官様がしようしようって聞かないんですよ」 「ええ?私のせい?カリンだって勝ったらいうこと一つ聞くって聞いたら飛びついてきたじゃない」 「わ、私は勝ったら米酒が欲しいです」 グリーンエリアで再開したペルシカにカリン。そして、いつの間にか負け続きの麻雀の話になっていた 「ポン。カリン、その中取って」 「はい、ペルシカさん。そういえばペルシカさんが勝ったら指揮官様に何させるんですか?」 私だけなの!?私以外もするのよね!?主催者が暴れているが無視する 「そうね、ネコミミ着けてエルモ号に戻って『遊んでほしいニャン!』って言ってもらおうかしら。ぷぷッ」 「ぷっ」「あははっ」 絶対酷いことになるじゃん!マッドサイエンティスト!糖尿病患者!4位の人間が暴れているが無視する 「いいですね、それ。私もそれにします」 「でも、私は米酒が欲しいなぁ・・・」 「指揮官、それロン。後で感情モジュールのデータ送ってね」 後日、エルモ号ではネコミミを付けた人影が発見された 鍋だ。この世全ての絶望を詰め込んだような闇がそこにあった。 「な、何よ!早く食べなさいよ!」 深淵を覗くとき、深淵もまたこちらを覗いていると聞くが、孔のように喰らい黒は何も見通すことができない 「今日は会心の出来よ。ふふん、我ながら自分の才能が恐ろしいわね」 「それは毒殺方面に?それとも、物質学の方向に?」 マキアートが何を言ってるんだコイツと言わんばかりの目で見つめる。・・・ペルシカに渡したらこれが何か調べてくれないだろうか 「ほ、ほら、冷めないうちに食べなさいよ」 「・・・ちなみにこれを作っている間、スプリングフィールドとセンタウレイシーはいた?」 「なっ!別の人形の話しないでよ!」 ・・・ますます不安だ 「・・・わかった。いただきます」 意を決して一口。反乱軍ともパラデウスとも戦ったが、今日が命日かもしれない 口の中に混沌が広がる 「ど、どう?」 何も言わず、一匙掬い、彼女の口に放り込んだ 「メイリン、まだ起きているのか」 「し、指揮官。すぐにリスト作成しますので・・・」 目の下のクマは真っ黒だ。昨日もその前もずっと残業してたのだろう。 「ダメだ。今日はもう寝なさい」 「で、でも!」 それでも何事か言いかけるメイリンを抱えてベッドに放り込む 長らく主人の帰りがなかったベッドが軋みを上げて歓迎する 「8時間睡眠を取ること、いいね」 「はいぃ・・・」 不服そうに毛布を手繰り寄せる。ミシュティなら諸手を挙げて命令に従ってるだろう そのまま自室に帰ろうと踵を返すと、服の裾を引かれる 「その、一緒に寝てくれませんか?寝るの自体久々で・・・」 「・・・わかった」 普段は限界を超えたら気絶してるのだろう。 手をつなぎ、横になっているとすぐに規則的な寝息が聞こえて来る。ただ、手は強く握りしめられたままだった >ヴぇくにゃん報告書書いたの? 「クルカイ、報告書出来たよ」 「わざわざご苦労ね。メールでも何でも送ってくれればいいのに」 几帳面というか、堅物というか。よくこの性格で隊長が務まるものだ。・・・自分が言えた義理ではないか 「・・・ん、不足もないし、確かに受け取ったわ」 「そう、じゃあ行くね」 特に不足部分も変な個所もない。ただ、気になる部分がある 「待ちなさい。この報告書、誰に確認してもらったの?」 そう、完璧すぎるのだ。勿論、そうでなくては困るが、私が指摘する点が一つもないとはどういうことか それに、書き方があの人に似ている。 「誰って、指揮官だけど?」 事も無げに言い放つ第二部隊隊長。私があれだけのことをなし、信頼を勝ち取り、信用を得て、座っている席をあっさりと脅かそうとしているのだ 「もう行っていい?指揮官にディナーに誘われてるの」 めんどくさそうだが、勝ち誇ったように言い放ち、第二部隊隊長が出て行った 「指揮官、い、今お時間よろしいでしょうか・・・?」 おずおずとロッタが現れる。入室を促すと、ロッタが恐る恐る入ってきた。ここ最近は404が大勢乗車してきてやや人見知り気味だ 左右上下確認。ミシュティと鉢合わせてあわあわとしていたのが懐かしい 「ふぅ・・・そ、その、人形と仲良くなる方法を試してもよいでしょうか?」 構わないと伝えると、ぱぁっと瞳を輝かせて駆け寄って来る。 「本にはこう、指を絡ませて繋ぐと親愛の証になるそうです!指揮官、試してみても?」 返事の代わりに手を差し出す。ゆっくりとロッタの指が絡みつく。じんわりと彼女の体温が伝わって来る 「なんだか不思議な感じです・・・その、別の方法もしてもいいですか?」 何だろうか。とりあえず首を縦に振る。それにしても、ロッタがここまで積極的になるのならあの程度の出費は安いものだ 「え、えいっ!」 可愛らしい掛け声とは裏腹に、強い力でベッドに押し倒される。目を白黒させていると、当のロッタが小さく笑う 「えへへ、本には一緒に寝ると最高に仲良くなれるって書かれてました」 雰囲気はいつもと変わりないが、目には何か暗い欲望の色が混じっているように見えた 夢を見ている 「指揮官、おはようございます。珈琲でも如何ですか?」 優しい声が落ちて来る。ぼんやりとした光景に、長い髪を揺れる。逆光でよく顔が見えない。 「スプリングフィールドさんに教えてもらったんです。どうですか?うまく、淹れれたと思うんですけど」 傍の机にソーサーとカップが置かれる。珈琲のいい匂いが立ち上る。 きっとこれは夢だろう 「指揮官、私はずっと傍にいますよ」 誰かに手を握られている。相変わらず顔は見えない。それでも、この雰囲気と声は彼女に違いない 「たとえ貴方がどんなことをしても、どんな選択をしても、皆が離れていったとしても、私がずっと傍にいますよ」 彼女は左手の指を撫でる。そこには銀の輝きを放つ指輪があった。あれは、私が送ったものに相違ない 彼女が立ち上がり、何処かに去ってゆく そして、意識は微睡に堕ちていく ちょっとそこのお子さん。そうおぬしじゃ 免許証あるかの?え?成人済みじゃったか ちょ~っと顔赤いけど、お酒飲んだかの?飲んでない?そう これにふーってしてもらえるかの?飲んでたらこの棒が白くなって、この黄色い線超えたら後ろのパトカーでお話聞くからの ・・・はい、ありがとうの。見えるかの?これ、黄色じゃなくて赤まで来てるじゃろ? え?あぁ、こっちの人が本来のドライバーの人形? うーん、一応そっちの人形もふーってしてもらえるかの? ・・・はい、どうも。見える?根元まで真っ白じゃ。どんだけ飲んだんじゃおぬしら? 「指揮官・・・」 下弦の月がミシュティを照らす。短い銀髪に微かに反射する月光は、どんな装飾品よりも彼女の魅力を引き立てている。 「何?ミシュティ」 枕を抱く彼女。大方クルカイから逃げて、そのままベッドに隠れていたのだろう。そして、そのまま寝ていたのだろう 「そろそろ寝ようよぉ。明るいと眠れないんだよぉ。ふぁああ」 「さっきまで寝てたでしょ。・・・ふぁ」 拳がそのまま入りそうなくらい、大きな欠伸を一つ。つられてこちらも欠伸 「ほらぁ、指揮官も眠いんじゃん。一緒に寝よ」 そう言って隣をポンポンと叩く。仕方ない、クルカイには明日言っておこう 続きが思い浮かばないから没 「飼育員~!お願い!一生のお願いだから!」 「あんなクソ高いPCなんていらないだろ!そもそも人形の一生ってなんだよ!」 脚に纏わりつくチータを振り払おうとするが、うまくいかない 「ダメったらダメ!自分で稼いで買えよ!」 「飼育員の意地悪!銭ゲバ!カリーナ!」 最後の意味はよくわからないが、とにかくダメなものはダメだ 頑として譲らない私に、チータもようやく無理と悟ったらしい 「ぶー!なら稼げばいいんでしょ稼げば!」 よしよし、シャバ台とでもいえば、稼ぎを多少エルモ号にも回せるだろう 「手っ取り早く配信でもするかなぁ」 「何の配信するの?」 「エルモ号は今どこに!?指揮官の今を赤裸々公開!って感じで」 私がどうやって非軍事勢力管理局の長官になれたか、ですか 確かに、政界は老獪な狸と狐しかいませんでしたよ。嫉む者、恨む者、足を引っ張ろうとする者、おこぼれを狙う者・・・ まぁ、たくさんいましたよ。銃を握ってドンパチする方が楽、とは言いませんが、発言一つ、仕草一つで破滅しますから肩が凝りますよ そういった連中を宥め、すかし、脅し、取り込み、消し、今の地位にいます。少々ダーティーなことはしましたが、まだ清い身体ですよ? 後は、ダンデライオンさんとクルーガーさんのおかげです。あの二人には頭が上がりませんし、足を向けて寝れませんよ 404の皆さんも裏方でいろいろ動いてもらいましたし、助かってます あぁ、指揮官様に「道中お気をつけて」とお伝えしてください。イエローエリアでは何があるかわかりませんからね 「指揮官☆今日ヴェプリーお休みするね☆」 「え!?」 ヴェプリーの突然の休暇宣言。困る、とても困る まだ荷物の搬入も機材の設置もパレット返却も何も終わってないのだ 「だって、ヴェプリーずっと働いてるもん☆ヴェプリー疲れちゃった・・・☆」 「頼むよヴェプリー・・・」 「ダメダメ☆アイドルには休暇も必要なんだから☆マイクより重いもの持てないの☆」 ・・・仕方ない、搬入と設置はクルカイ達に任せよう。パレット返却は・・・後にするか 人形が鬱になると聞いたことはないが、メンタル面の問題は怖い 「わかったよ・・・何か欲しいものはあるかい?」 とにかく休ませて飴を与えておけばいいだろう 「うーん・・・ヴェプリーね、指揮官が欲しいな☆」 抗議の声を上げる間もなく、荷物のように担がれ部屋に拉致された 「久々だね、カリン」 セミの声が煩い。イエローエリアでは聞けない音は最初こそ歓迎の音色に聞こえたが、あっという間に騒音に変わった 「メイリンに選んでもらったんだ。とても高かったんだぞ?」 そういう自分でも気味の悪い顔で笑ってるのだろう。 琥珀色の液体が入った小さな瓶。これだけで月収の3倍だ。何でもグリーンエリアでのみ栽培された材料で作られたという触れ込みだ 「指揮官、そろそろ時間よ」 後ろからリヴァが呼ぶ声が聞こえる。 黒い服を着て、いつもの薄ら笑いを張り付けた彼女。 「・・・じゃあ、また来るから」 そう言って墓標に背を向けた ---- 「って感じでどうよ!今年のNo.1人形映画監督間違いなし!」 「・・・クレームしか来ないよ、MDR・・・」 星は万人に等しく輝く。それは汚染された地でも関係ない。小型望遠鏡を覗き込み、そう考えを巡らせる 「どう?何か見える?」 指揮官の声がすぐ横から聞こえる。肩を寄せ、密着するように、重なり合う連星のように。 「・・・今日は綺麗にベガが見えますよ。見ます?」 そう言ってのぞき口を指揮官に譲る。 「・・・よくわからないわね・・・」 ・・・かなりわかりやすい部類だと思うのだが。まぁ、これからゆっくりと教えてあげればいい 「これ?いや、こっち?明るいし、こっちかも?」 あちこちにレンズを向ける。・・・壊しはしないだろうけど、壊れたら新しいものを買ってもらおう。 ん~?と唸る指揮官に、そっと抱き着く。温かい。この温度をずっと独り占めしていたいと思う 指揮官は恒星のようだと思う。人形限定の。ならば、私たちはその周りを周る衛星だ。指揮官という引力に魅かれて、離れられない星 「ベガとアルタイルと言えば、1年に1度再会すると言いますが、星の年齢に換算すると3秒に1回会っているそうですよ?」 「へぇ、面白いわね」 こんな与太話も楽しそうに聞いてくれる 太陽が陰ることはない。穢れることもない。もしそうなるのなら、私の手で。 短い銀髪が風に揺れる。小さい体躯に主張しすぎない胸と、発育途中のような尻 そんな人形が大口を開けて、大の字になってベッドに転がっている 「・・・いや、自分の部屋で寝てくれよ」 最近はずっとベッドを占拠されている気がする。クルカイに見つかりにくいのか、この部屋を別荘としているのか定かではない。だが、徐々に彼女の私物が増加しているのは確かだ 「ミシュティ、ミシュティ!起きて!自分のベッドで寝てくれ!」 肩をゆすり、耳元で怒鳴り、それでも彼女は起きません。なんだこいつは 「はぁ・・・」 ミシュティをベッドの端に寄せる。むにゃむにゃと何事か言っているが無視する 仕方ない、今日もこいつの隣で寝ることにしよう ------ 「指揮官、寝た・・・?」 肩を揺さぶってみる。いつも通り、起きる気配はない 「・・・んじゃ、お楽しみた~いむ・・・」 小声で歓声を上げる。 夜はあたしの、あたしだけの時間だ 「今日はマキアートがウェイトレス?」 「何よ、私だって殺し以外でも働くわよ」 乱雑にメニュー表が叩きつけられる。机が抗議するようにギシギシと鳴った 「で、アンタは何頼むの?珈琲?」 「ちなみにだけど、マキアートが作らないよね?」 射殺さんばかりの視線が突き刺さる。 「何?淹れてほしいの?」 何の脅しだ、とは思わない。事実、一度えらい目にあった カウンターを見ればスプリングフィールドが優しく微笑んでいた マキアートはふんっ、と鼻を鳴らすが立ち去る気配はない。注文しろということか 「マキアート大好きを一つ」 「はいはい」 「それとマキアートも」 メニュー表がバサリと音を立てて床に落ちた 「メイリン、起きて。朝だよ」 「起きてますよというか寝てませんよ朝も昼も夜もずっと仕事じゃないですかせめてお酒飲ませてくださいよお酒お酒お酒」 まいった。メイリンが壊れてしまった。米酒はもう全部売っぱらってしまったからなぁ・・・ 『あら、指揮官様。月曜の朝からメイリンさんとしっぽりされてたんですか?』 「カリン。そんなわけないじゃない。メイリンが10連勤したら壊れちゃったのよ」 『・・・普通の人に指揮官基準で仕事させちゃダメですよ』 報告書を1時間で書き上げる人間が何を言うのか。あぁ、カリンの手も借りたい。我がエルモ号は常に人手不足なのだ 「カリンもこっちに来ない?」『あぁ!仕事が残っていました!では!』 非情にも通話が切れてしまった。何と薄情な 「メイリン、お願いだから起きて。米酒買ってあげるから」 「それは先月も先々月も聞きました米酒は増えてませんよむしろ減ってますよ」 「信用がないわね。私が約束を破るとでも?」「はい」 即答だった。1秒もかからなかった 「・・・本当だから。約束する。破ったら、そうね、一日好きにしていいから」 「聞きましたからね!あとで無しはなしですからね!」 「ミシュティ!このねぼすけ!さっさと起きなさい!この!」 「うわぁ!!」 足を掴まれ右へ左へ、上に下に身体を振り回され、さしものミシュティを起きざるを得ない 「月曜は憂鬱なんだよぉ・・・」 「曜日何て関係ないわよ!射撃訓練に行くわよ!」 引きずられる様に射撃場に投げ込まれる。月曜のそれも早朝というのに、賑わっているようだ 「ふふんっ。ま、私にかかればこの程度造作もないわね。マキアートも付き合わせて悪いわね」 特に賑わっているのは動体射撃。どうにもマキアートが最高スコアを更新したらしい 「へぇ、あのスコアってクルカイがバチバチにキレながらしてたやつだよね。あれ更新する人形いたんだ」 正直驚きだ。あのデールの悪ふざけで作られた逸品にクルカイと挑んだが、二度としたくないというのが感想だ 「・・・行くわよミシュティ」「え゛?」 止める間もなく大股で近づく。マキアートもこちらに気づいたらしい 二人の人形は自分の得物を握りしめる 「完璧な人形は一人でいいのよ」「ふん!10年シカトされてるあんたのどこが完璧よ」 「・・・私はそろそろお暇したのですが・・・」「やだよぉ!指揮官、助けて!」 タンッ Hit タンッ Hit タンッ No Hit 「ありゃ?」 灯りの落ちた射撃訓練場では一人の人形が独りで黙々と訓練していた 「ミシュティ?何してるのさ」 「ビヨーカ?何って、訓練だよ」 「こんな時間に?」 「何時してもいいでしょ。んじゃ、あたしは寝るから」 興が冷めたとばかりにそそくさと得物を片付け、そのまま自室に帰るミシュティを見送る 「いっつも寝てばかりのミシュティがねぇ。げぇっ、何よこのスコア」 何気なしに先ほどの射撃データを見る。超長距離射撃、高速動体射撃、敵味方識別なしでの仮想市街地戦闘、etc・・・ ほとんど完璧と言っていい精度と速度だった。クルカイ隊長が後ろを任せるわけだ 「う゛~、私だって!」 そう言ってビヨーカも愛銃を取り出し、目標へ向ける。まずは長距離射撃から 「指揮官、その・・・夜に『打ち合わせ』いいでしょうか・・・」 「わかった。部屋の開錠番号はいつものだから」 打ち合わせが夜の誘いになったのはいつだろうか。遠い昔のようにも、つい最近のようにも感じる ---- 「ぷはっ・・・はぁ・・・♡」 「珍しいね、メイリンからお誘いは。何かあった?」 唾液とカウパーでべとべとの陰茎をメイリンが愛おし気に舐め上げる。 「だってぇ・・・新しい人形がいっぱい来て、私捨てられるかもって・・・♡ひゃんっ!」 甘えるような、媚びるような声を上げるメイリンの胸を乱雑に揉む。こういう乱暴な方が彼女は喜ぶ 「メイリンを捨てるわけないだろ?誰も捨てないさ」 「んんっ♡」 硬くなった乳首を掌で転ばすと、面白いようにメイリンが鳴く 空いた手で彼女の頭を押さえると、理解したように男根を喉奥まで迎え入れる ---- 「ふぉおおおお・・・メラニー!メイリン苦しそう!」「ヘレナ!ちょっと黙ってて!今いいところなの!」 「指揮官様~、昔の水着着せるなんて何考えてるんですか~?昔より育ってるんですよ~?」 「あの、指揮官。ちょっとこの水着、お尻が窮屈で・・・」 眼福眼福。素晴らしきかな。もうここで死んでもいい カリンには大切にとってあった昔のパオレ水着を着せた。胸部装甲は10年前もかなりの大物だったが、さらに育って今にもこぼれそう、というかちょっとこぼれてる カリンもそれをわかってか、ワザと胸を強調するように見せつける リヴァが後ろで怖い顔をしているが無視しよう メイリンにはセパレートタイプのビキニを。胸は流石にカリンに届かない物が、安産型のお尻は非常に魅力的だ パツパツになった布地と、もじもじとする仕草は嗜虐心をそそられる 後ろでレナがいい笑顔で頷いてるが無視しよう 「さぁ泳ごう!今泳ごう!早く泳ごう!」 素晴らしき夏。今、ヴァリャーグが来ようと、生躯が来ようと知ったことではない この極楽を満喫することの方が大切なのだ! 「指揮官、大変よ」「悪いなグローザこっちは取り込み中だそっちで対応してくれ以上」 「そう、なら子爵にそう伝えておくわ」 「ああああああ!!!!!!!!!あのクソ野郎がああ!!!!!」 「指揮官、今から犯します」 「・・・何て?」 「今から、指揮官を、犯します」 「・・・何で?」 クルカイに押し倒された22時。星明りに照らされた彼女の顔は決意に満ちていた。顔がいいだけに怖さもひとしおだ 「あのね、クルカイ。人形は孕ませる機能はないし、そもそも、その、アレ、ないでしょ・・・?」 人形にチンコなんてない。メンテで何度も見てるが、股に棒はついてないことを何度も確認している 「ペルシカさんに手配してもらいました」 「えー・・・」 ・・・あのマッドはいつか痛い目を見た方がいいと思う。 逃避は長く持たなかった。戦術人形の、それもエリートの膂力にかなうはずもなく、脱ぐというより毟られるように布地が減っていく クルカイの手が、指が的確に弱い部分を弄って来る 「・・・十分そうですね」 「・・・その、経験少ないから優しくして・・・」 必死の懇願は無視され、数えられないほどクルカイに絶頂させられた 「指揮官、その、夜お邪魔してもいいですか・・・?」 「構わないよ」 徹夜続きの後は必ずメイリンのケアをしている。彼女もそれをわかってか、こうして自分から甘えてくる。まるで発情期の猫のようだ。そして、それを期待している自分も盛りの付いた猿のようだ ------ 「んっ・・・ちゅっ・・・♡はぁっ・・・♡」 「今日は随分積極的だね、メイリン」 一物を一心不乱に舐め回し、咥え、精を搾り取ろうとする 「だって・・・最近は、んっ♡・・・ミシュティさんやヴェクターさんとばかり、ちゅっ♡・・・んっ・・・私だって・・・♡」 なるほど、どうやら人形とばかり致しているから、妬いているらしい。 「悪かった。今日はメイリンとだけするか、うおっ!」 言い終わる前に陰茎を喉の奥まで咥え込む。突然のディープスロートに、思わず腰が浮く。一日では足りないらしい 「んっ!♡・・・んっ!♡・・・」 あっさり我慢の限界を迎えた。メイリンの頭を掴み、胃袋に叩きつけるように精を吐き出す 「んっ!♡・・・ぷはっ!いっぱい出ましたね・・・♡」 そうして、ごくりっと精液を飲み干す。その淫靡な姿にまた陰茎は硬度を取り戻した >>最近は指揮メイ、メイ指揮もいいなって >お話して。 夜のエンジンルームは死角だ。デールであろうと、404であろうと、この部屋の鍵は渡していない。何せエルモ号の心臓なのだから 「んふっ・・・♡指揮官、くすぐったいです♡ひゃんっ!♡あっ♡・・・んっ♡・・・ダメッ♡・・・」 生意気を言うメイリンの淫核を軽く弾く。それだけで嬌声を上げる。少し楽しい 「メイリンは本当にここ弱いね。何回イった?」 「5回ですっ・・・んんっ♡・・・」 6度目の絶頂を迎えたようだ。感度がいい彼女は、どこを触ってもいい声で啼く 「はぁっ、はぁっ、もう無理ですぅ・・・」 ぐったりとメイリンが脱力する。少々やり過ぎたか。お世辞にも発育がいいとは言えない身体が紅潮し、中々倒錯的だ 「そう?こっちはまだ一回もイってないんだけど」 それはそれとして、メイリンばかり気持ちよくなるのはフェアではないのでは? 自分の分身を取り出し、メイリンの口の奥まで突き込む。熱さすら感じる口内は、ずるりと抵抗なく陰茎を迎えた 「んぶっ!・・・じゅるっ♡・・・」 無意識か、慣れか、舌で剛直を愛撫してくる。時計はまだ22時を指していた 緊張している。パラデウスと対峙したときよりも、ネイトと対峙したときよりも、この一枚の紙に緊張している 「・・・お久しぶりです!クルーガーさん!」 思わず立ち上がり、敬礼までしてしまう 「・・・まぁ座れ。それと、もう君の上司でも何でもない。敬礼は止めろ、新兵」 新兵。昔、遠い昔の、私の呼称。彼なりのジョークなのだろう。 「カリーナから聞いている。話があると」 「・・・はい」 話が早い。相変わらずの御仁だ。 「これを」 1枚の紙を取り出し、彼の前に出す。あの時、結局は言葉だけで終わった約束を 「・・・養子縁組届か」 懐かしむような、苦いものを見るような顔だ。この人のこんな表情を、私は後何度させればいいのだろう 「・・・悪いがこれは書けん。あの時とは事情が変わったんだ、新兵。わかっているだろう」 「そう、ですね・・・」 約束は、終には果たされなかった。 「指揮官様~!朝ですわ、起きてください」 「カリン・・・後、5、いや50分寝かせて・・・」 「もう!ミシュティさんみたいなこと言わないでください!」 枕を取られ、毛布を剥ぎ取られ、ベッドから叩き落されては流石に起きざるを得ない。寝不足の原因は、カリンが寝かせてくれなかったのが一番大きいのだが 「新しい人形の皆さんも来てるんですから、もっとシャキッとしてくださいね」 「また増えたの・・・?昨日のP22もうち預かりしてたよね・・・?」 「仕方ありませんよ、皆さん元の職場が忘れられないんですよ」 非軍事勢力管理局に入社してからというもの、ドンパチは減ったが書類が増えた。今は『元』グリフィンの人形達の仕事斡旋なんかしてる。・・・結局、ここで働く人形が増えてるのだが 「はぁ・・・クルーガーさん怒ると思う?」 「きっと笑いますわ。新兵、ここはグリフィンじゃないぞ、って」 パラデウスはあれから姿を見せてない。ウィリアムも始末した。なべて世は事も無し。いいことだ いい加減慣れたスーツに腕を通す。護身用のマカロフとトカレフも 「今日も早く帰ってきてくださいね。あ・な・た♡」 「同じ職場でしょ・・・」 出勤時のキスも忘れずに 「指揮官~💙定期健診のお時間ですよ~💙」 猫撫で声が聞こえる コルフェンが来てから衛生環境は劇的に改善した。・・・以前が酷過ぎたというのもあるが 人間の乗組員は月一でこうして健診を受けている。文明的だ・・・ 「う~ん、毎回言ってますけど、ちゃんと寝てくださいね?目の下真っ黒ですよ。後、性行為もほどほどにしてくださいね。腎虚したい、って言うんなら止めはしませんが」 「・・・面目ない」 最近はクルカイとヴェクターとメイリンに絞られたからな・・・ 特にメイリンとは、会ったばかりの頃のように目合っている。おそらく彼女も似たようなことを言われただろう 「後は食生活を見直してください。毎日、ビールに餃子に中華料理じゃ不健康ですよ。ビールは一日一杯。野菜をもっと食べてくださいね」 「・・・善処します」 こんな環境で野菜を食べること自体難しいが、センタウレイシーの家庭菜園のおかげで多少はマシだ。彼女に頼るほかない 「それじゃぁ、コルフェンの『健診』もしてくれますよね?💙」 「・・・コルフェン・・・」 「硬いことは言いっこなしですよ💙硬いのは指揮官のモノだけでいいんですから」 やかましいわ 「では指揮官、資料のためにこちらの女物服に着替えてください。下着もです。… 今回は女装モノでいくのでぇ…」 夏。あるグリーンエリアでは同人イベントなるものが催されるらしい。灼熱の熱さにも、極寒の寒さもものともしない強者が集い、希少な戦利品を手にすると語っていたのは四式だったか? 「なぁ、メイリン。本当に着なきゃダメか?デールでいい・・・」「僕は絶対嫌だからね!」 断固として拒否された。隣ではクルカイとヴェクターが恐ろしい形相で睨みつけている 真新しい純白のパンツとブラ。ご丁寧にシリコンバストまで用意している。しかも滅茶苦茶デカイ 「・・・デカくない?Eって書いてあるよ?」 「このくらいは普通ですよ?」 そうなんだ・・・よくわからない世界だ・・・ 「今回のテーマはメイドです!ミニスカだのハミチチだの邪道ではなく、超王道クラシックメイドです!」 メイリンの目が怖い。いつもそのくらいのやる気だったら嬉しいんだけど 「会場には指揮官を知っている人形がきっといるはずです。昔仕えていた指揮官が、今では逆の立場に・・・そのギャップがさらに魅力を高めるんです!」 「・・・そう」 何かもうどうでもよくなってきた 「わお・・・」 部屋でぶらんぶらんと揺れる体を見た 人形でも咄嗟のことになると思考が止まるんだなぁ。頭が真っ白になるってこういうこというんだ。 「とりあえず、下ろす?先に警察?」 変に冷静なのはあんな世界にいたからか、それともとうに自分がおかしいのか 先に下ろすことに決めたのは、単純にぶら下がっている身体をこれ以上見たくないからだ 「ふぃ~、結構重いなぁ」 次に電話。短い発信音がして、相手がすぐに出た 「あー、カリーナさん?指揮官がまた首つってて・・・うん、新しい指揮官人形頂戴?」 「チッ!今日もこの弁当かよ・・・」 「文句垂れんな。食えるだけありがたいと思え」 グリーンエリア外周部。都市内の掃き溜めのさらに下。こんなところにも人はいる 「このご時世に肉なんざ何使ってんだか」 「一昨日、この弁当食ってたバルザの爺さん死んだとよ」 「元から死にそうだったじゃねぇか、あのジジイ」 窃盗、恐喝、強盗、凡そ悪行と呼べるものすべてを網羅し、荒れ果てた地にしがみつく様に生きている 「今日の、お弁当。汝らに幸あらんことを。アドパルリタス。」 黒い服に白い肌。こんな場末未満の地に毎日来て日雇いを雇っている。男も行ったことがある。対価は十分すぎるほどの飯だった 「ケッ!こんなチンケなところまできてご苦労なこった」 言葉と痰を吐き捨てる。奴らの下で働いたのは1度きり。何というか、不気味なのだ 「・・・施しなんてできる奴らだ。たんまり蓄えてるにちげぇねぇ。攫って身代金と行こうぜ。ついでに久々にお楽しみだ」 デカイシノギだ。ひょっとすればグリーンエリアのお偉方と繋がってるかもしれない。それに女の身体なんて何十年も抱いてない 慎重に、慎重に黒い装束の少女の後を追う そして、今日まで帰ってこない 「ビヨーカ!炒飯まだ出来ないの!?」 「もう味付けだけ!」 「アンドリス!杏仁豆腐もう出来たの!?」 「まだ固まってません。後1時間くらいです」 昼前の厨房は戦場だ。何せ昼には腹をすかせた客が大量に押し寄せるのだ ここは完璧飯店。味にも量にも一切の妥協を許さない中華料理と、手ごろな値段が売りの超人気店 全てにおいて完璧、というのはもはやグリーンエリアを超え、ホワイトエリアからも訪れる客がいるほどだ 銃弾飛び交う激戦のような厨房を尻目に、机に頬杖をつく人形が一人 「暑いしやる気でないから寝てていい?」 「暇なら外で呼び込みでもしてきなさい!この!」 今日のメニュー表が描かれたプラカードを手にする人形が一人 「しゃっせー・・・」 外気温30℃、湿度60%。灼熱の地で死にそうな顔で呼び込みするミシュティの姿がそこにはあった 「寂しいぃ・・・寂しいよぉ・・・」 何と言うことでしょう。出番のなさと実装されなさに、とうとうレナが泣き出してしまいました 「どうしたの、レナ?何か出来ることはある?」 見かねた指揮官がついに声を掛けました。 「実装されないんだよぉ・・・」 「あー・・・レナはリヴァとWPUがあるから」 何とも慰めをかけづらい悩みですね。セット売りされている人形はこうして「姉妹機と一緒に実装されるから」と逃げましょう 「本当に?指揮官もリヴァだけ引いて撤退とかしない?」 「・・・しないしない!そんなことするわけないじゃないか!家族、だろ?」 レナには取り敢えず家族という単語を使っておけば機嫌が取れます。乱用は禁物ですが、効果は高いですね 「本当!?嬉しいな!」 レナが晴れやかな笑顔を浮かべました。これでもう安心ですね 「じゃ、そろそろ行く・・・」「ダメだよ指揮官」 レナさんががっしりと指揮官様の腕を掴んでいますね。これは手遅れです。2時間くらい置いてまた見に来ましょう。本日の「未実装人形観察TV」はこのくらいで 明日のこの時間は「激闘!ロベラ仮面ウーマンvsヴァリャーグじゃいあんと」をお届けします 「しくしく・・・しくしく・・・」 何と言うことでしょう。出番のなさとBB・・・お姉さん呼びに、とうとうスプリングフィールドが泣き出してしまいました 「どうしたの、スプリングフィールド?何か出来ることはある?」 見かねた指揮官がついに声を掛けました。 「私の実装はいつでしょうか・・・」 「あー・・・スプリングフィールドは水パの核だから温存してるんだよ」 何とも慰めをかけづらい悩みですね。こういう人形には〇〇の核と言って逃げましょう 「本当ですか?指揮官もmake great commander againしてくれますか?」 「・・・何それ・・・よくわからないけど、協力するよ」 「まぁ!本当ですか!」 スプリングフィールドが晴れやかな笑顔を浮かべました。これでもう安心ですね 「じゃ、そろそろ行く・・・」「ダメですよ、指揮官」 スプリングフィールドさんがと指揮官様の腕に手錠をかけましたね。これは手遅れです。2時間くらい置いてまた見に来ましょう。本日の「未実装人形観察TV」はこのくらいで 明日のこの時間は「決戦!ロベラ仮面ウーマンvsサイキックミシュティ!-さらば、ジュニアよ永遠に-」をお届けします 宴会は盛大に、というのは私のモットーだ 「やり過ぎた・・・」 飛び交う酒瓶、運ばれた端から貪られる料理、椅子は3本脚になり、机は天地が逆になっている 立って飲み、踊って飲み、撃って飲み・・・死屍累々、屍山血河、奈落の底 最初はクルカイだったか。グローザだったか。その後キャロリックが混ざってネメシスが煽り・・・ 明日はアルコール研修をしよう。幸い、今のエルモ号にいる人形達は聞き分けのいい方だ それにしても、 「人形の酒癖悪すぎだろ・・・」 「愚痴っても終わらないよ、指揮官」 ヴェクターは優しいな・・・こんな地獄の光景を目の当たりにしても、黙々と掃除をしてくれる 人形を転がし、机をひっくり返し、壊れた椅子を投げ捨て、床と壁を磨く 「これが終わったら何かしてあげるよ」 ぐい、と襟を掴まれ、唇を塞がれる。 「なら、この後指揮官が欲しいな」 口付けの後味は、甘い酒の味がした 「ふっ!ここまでよヴァリャーグ!」 「き、貴様は!ロベラ仮面ウーマン!」 悪事は全て露見し、這う這うの体で無人の荒野まで逃げたヴァリャーグ。掛け声とともにロベラ仮面ウーマンが崖から3回転宙返りを決め、カッコよく着地する。いわゆるヒーロー着地というやつだ 「貴様の悪事もここまでよ!」 ビシっ!と指を突き付ける。しかしこの仮面の人形は一体・・・? 「か、かくなる上は・・・ぐぉおおおおおお!!!!」 おぞましい声と共にヴァリャーグが見る見るうちに巨大化する。見よ!これがヴァリャーグ最終奥義、ヴァリャーグじゃいあんと! 「小賢しい!とう!」 掛け声とともにロベラ仮面ウーマンもあっという間に見上げるほどの巨体になってゆく。 「はぁあああ!!!」「おぉぉおおおお!!!」 両者が激しくぶつかる。地が裂け、空が割れ、雷を呼ぶ! 「正義は負けない!!」「ぐぉおおおおおお!!!!」 ウルトラロベラ仮面ウーマンの飛び蹴りが決まった! 「お、おのれぇええええ!!」 今日の「ロベラ仮面ウーマン」はここまで!明日のこの時間は「未実装人形観察TV」をお楽しみに! 「何故です!サイキックミシュティ!」「む~・・・」 彼女は何も答えない。いつものように無表情に佇むだけだ。そして、その静寂も長くはなかった 「はっ!」「くぅっ!」 強烈なサイコキネシス。すんでのところで回避する。目標を失ったサイキックが地面が爆ぜさせ、暴風がぶちまける 「・・・残念です・・・」「む~・・・」 ロベラ仮面ウーマンのベルトが黄色に光る。忽ちライダースーツを身に着けたロベラ仮面ウーマンXXXが現れる 「・・・行きますよ、サイキックミシュティ!」「・・・来るがいい、ロベラ仮面ウーマンXXX!」 仲間同士の悲しい戦いが幕を開けた (速攻しかない!) サイコキネシスの力は強大で、掠っただけでも大ダメージだろう。僅かな隙をついて倒すしか・・・。だが、彼女にそんな隙なんてない そんな時、ジュニアがサイキックミシュティに突撃を敢行する! 「うわぁっ!」 そして、その隙を見逃すロベラ仮面ウーマンではない!渾身の飛び蹴りが炸裂し、そして、何も残らなかった・・・ 「・・・さよなら、ジュニア、サイキックミシュティ・・・」 今日の「ロベラ仮面ウーマン」はここまで!明日のこの時間は「未実装人形観察TV」をお楽しみに! 「しきかぁん?」 「どうしたの?リヴァ」 暇そうなリヴァさんが指揮官に近づいてきました。危険ですね。大変危険です。UMP族は一度身内認定すると対象に執着するという報告がグリフィン基地から報告が上がっています 「別に?二人きりなんだし、ちょっとくらい甘えてもいいんじゃない?」 「リヴァが甘えたいだけじゃないの?」 あー!いけませんいけません!指揮官がリヴァさんを膝に乗せて!これは甘やかしモードです!いけませんいけません!あー!リヴァさんがどこかに行かないよう手まで回しましたよ!うらや・・・んんっ、失礼 「リヴァ、くすぐったいよ・・・」 「何?このくらいは許してよ。最近は私に構ってくれないじゃない」 振り向いたリヴァさんが指揮官の胸をなぞってます!対面座位ですよ!エッチすぎます!というか指揮官の胸だしていいんですか!?胸板厚くありませんか!?月刊誌ですか? 「リヴァ・・・」 はい!本日の「エルモ号観察TV」無料版はこれまで!有料版はこの後も引き続きお楽しみください!有料版のお申し込みはここから!各種クレジット、引き落としも出来ます! 明日のこの時間は「どたばた☆アイドル日記♡」をお届けします! 脂ぎった太い指が尻に食い込む。不快な感触で肌が泡立ち、背筋がぞっとする 「クソッ・・・」 「ん?何か言ったかね?指揮官」 調子に乗ってますます揉みしだくのは、今回の依頼主。金で首が回らなければこんな依頼受けていない 「ほれ、今日も『お仕事』頼むよ」 そう言って陰茎を取り出す男。しゃぶれ、ということか。こいつは仕事、と称しては性奉仕を求めてくる。 男の前に跪き、汚い一物を口に含む。屹立するそれを全て口内に収めることができない 「んっ・・・ふっ・・・」 「ふぅむ、指揮官殿はフェラの仕方をまだ覚えていないのか?」 そういうと私の頭を掴み無理矢理喉の奥まで陰茎が侵入してくる。吐き気が込み上げ、男の腿を叩くが力は緩まない 「おっ・・・ぶっ・・・ごっ・・・ぶはっ!はぁっ!はぁっ!」 「うむ、奥まで咥えるのが礼儀というものだ」 適当なことを。悪態をつく前に再度のイラマチオ。気道が狭まり、徐々に酸素が足りなくなってくるのがわかってしまう。その間にも面白半分で胸を捏ね繰り回され、乳首を引っ張られる 「そろそろいいかな。指揮官、いつものおねだりをしてもらおう」 「・・・はい、私のFランマンコ、どうぞお使いください」 ゴリアテサッカー。それは賭博の場。優勝すれば指揮官が何でも言うことを聞いてくれる夢の舞台 連戦連勝の404第1部隊、高いチームプレーが魅力の404第2部隊、アクロバティックなそよ風、大型新人『軍用ヘリ』を擁するズッケロ、バーリトゥードならチームエルモ号と、個性豊かなチームが勢ぞろいだ 「さぁ!第四試合はズッケロvs第1部隊!実況は私カリーナでお送りします!解説はお馴染み、ダンデライオンさん!」 「よろしく。クルカイのワンマンがどこまで通用するかしらね」 「そうですね。今期の得点王と目されますからね。しかし、軍用ヘリの得点力も侮れませんよ」 「人形は地面に這い蹲ってるものね。クルカイの苦い顔がここからでもよく見えるわ」 バタバタと空気を叩く音が実況席まで届いてくる。操縦席には勿論シャークリー選手 「それにしても第二試合のチームエルモ号には驚かされましたね」 「ゴール前をエルモ号で塞ぐなんて、指揮官らしいわね。潜水艦基地を思い出すわ」 Take Off!烈風が吹き荒れ、大歓声でスタジアムが沸く。 「さぁ!キックオフの時間です!オッズ比は3-5!まだだ購入可能です!今すぐ『トトカリーナ』へ!」 夜。指揮官の部屋は淫靡な匂いが充満していた 「あはっ💙指揮官ってばおしゃぶり上手ですね~💙よしよ~し💙」 人形の名はコルフェン。エルモ号に所属する医療人形だ。股間部分には小柄な身体とは正反対の巨大な男根が装着されていた その股座に跪く人間が一人。エルモ号の指揮官だ。いつものタクティカルな服はハンガーにかけられ、人形達とお揃いのラフな服を着用している。普段の服では中々わかりにくいが相当な巨乳が、薄い布地に透けて見える 「もっと喉の奥まで咥えてくださいよ💙」 さらに剛直を侵入させる。気道が狭まり、指揮官の手が抗議するようにコルフェンの脚をタップする。 「ダメですよ~💙我慢我慢💙」 が、それを無視して挿入を続行する。 部屋からは水音と苦し気な呼吸音、時折えずくような声、それだけだった 何分経っただろうか。満足したのか、口から腰が離れると、股間部のペルシカ研究所から貰った男性器パーツは涎と噛み跡でボロボロだった 「ありゃ?悪い子には、お仕置きが必要ですよね~💙」 予備の男性器パーツを装着する。指揮官の顔が引きつり、コルフェンの口角が上がる 「指揮官!指揮官!」 「うわっ!レナ、急に抱き着くのは止めてくれ」 眠そう指揮官様にレナさんがタックルしてますね。これは危険ですよ危険。頭をぶつけたら死んじゃいますからね。ベッドの上じゃなかったら大変危険ですよ 「えへへ、ゴメンなさい」 あー!どさくさに紛れて胸押し付けてますよ!胸!卑しい!あのデカパイ押し付けて指揮官様困ってるじゃないですか!私だってしたか・・・んんっ、このようにUMP族は大変卑しいことで有名です 「ん~・・・」 見てくださいよ!匂い嗅いでますよ匂い!いいなー羨ましい・・・ 「レナ、ちょっと寝かせて・・・7連勤は流石に堪える・・・」 「ミシュティみたい。うーん、じゃあ私も寝よっかな」 あー!添い寝ですよ!添い寝!もう半分くらいセックスじゃないですか! 「Zzz・・・」 「ホントに寝ちゃった・・・イヒヒ!」 レナさんがほっぺにキスして・・・え?ちょっと!何してるんですか!? はい!本日の「エルモ号観察TV」無料版はこれまで!有料版はこの後も引き続きお楽しみください!有料版のお申し込みはここから! 明日のこの時間は「老兵ナガンの生き方」をお届けします! 「あら!ヴァリさん!相変わらずいい男ね!どう?うちの娘は?」 「カレンちゃんはまだ16でしょう?それに、自分はまだ結婚は・・・」 「そう?あの娘も懐いてるし、いい歳だし・・・」 「はっはっは。では、自分はこれで・・・」 人当たりのいい笑顔を浮かべ男は再び歩き出す。長身に見合った筋肉、刈り上げられた髪に精悍な顔つき。金に困った様子もなく、人当たりも良く、この辺りでは優良物件と称される男だ 男の名はヴァリ。そう名乗っているが、真偽は不明だ。まぁこの時世に偽名などそう珍しいものではない 「また、ヴァリャーグが出たんですって」「ロ連は何をやってるのかしら」 男の脚は止まらない。尾行がいないか何度もチェック。 郊外のさらに端。イエローエリアに隣接する廃棄工場。そこで足を止めた 男のガレージには先客がいた。ガスマスクに粗末な防護服。イエローエリアでヴァリャーグと呼ばれるゴロツキ達だ 「アニキィ!でっけぇ得物が来ましたぜぇええええ!!!」 「煩いぞ。・・・行くぞクソ野郎どもぉおおお!!!」 エンジンを吹かし、男たちは荒野を行く 「指揮官・・・」 言葉と同じくらい遠慮がちな手が私の胸に触れる。暖かな手はいつも焼夷グレネードを触っているからだろうか。益体もない考えが脳裏を過る 「・・・変なこと考えてる?」 「何でもないわ、ヴェクター」 悲観主義のヴェクターと肌を重ねたのは何が原因だっただろうか。クルカイと比較する彼女を慰めるため?欲求不満だった私の捌け口にするため? 「やっぱり変なこと考えてる」 顔をぐいと持ち上げられ、黄金色の瞳が私を捉えた。謝罪の言葉は口から出る前に、唇で塞がれた 「・・・今日は気分じゃない?」 「まさか。ヴェクターこそ嫌だった?」 彼女と肌を重ねたのは何回目だろうか。夜な夜な行為にふけり、朝を迎えるたびに自分の欲の深さに眩暈する 彼女たちにも逢瀬を重ねる相手を選びたいだろうに 「んっ・・・ちょっとくすぐったいわ」 胸に触れるか触れないかのフェザータッチ。性感帯は既に知りつくされてしまった 「指揮官・・・」 ヴェクターの呟きは部屋に溶けて消えていった 春。生き物が活性化する季節 「コルフェン!見て!」 「なんですか隊長・・・?あ!これって!」 エルモ号観察池。そこに新たな命が芽吹いていた! 「うおあじよ!去年の子が子供を産んだのよ!」 「へぇ~!コルフェン、初めて見ました!」 うおあじ。淡水海水どころか、陸上にすら生息し、魚のような何か。単為生殖にも関わらずパートナーを求めて求愛を行うのが特徴 「でも、増え過ぎたら観察池の生態系狂っちゃいますよね・・・?」 「そうね。今日はうおあじで何品か作りましょうか」 そのまま手を突っ込み丸々太ったうおあじを捕獲するグローザ隊長。うおあじは基本的に自分より強いものに対して反抗することがありません。イエローエリアでは優秀なたんぱく源として重宝される 「うおっ!」「へぇ~、何だかアホっぽい顔してますね!」 「危険よコルフェン。うおあじは弱いと判断したものに対しては凶悪よ。ポイントは骨の間に包丁を躊躇いなく振り下ろすこと」 ダンッ 本日の「剛腕!エルモ号DASH!」はこれまで!過去の放送は有料版からお楽しみください!有料版のお申し込みはここから! 明日のこの時間は「メイドの生き方 -夜のご奉仕編-」をお届けします! 「誰だか知らないけどこれ取ってくれない?」 目隠しされてると気づいたのは、仮眠から起きても目の前に闇しか広がっていないからだった。ご丁寧に後ろ手でしっかり縛られてる 「指揮官、私が誰か当てられたら取ってあげますよ」 合成声なのか、誰か判別できない。文脈からネメシスとチータ、ナガン、リッタラは除外 「何かヒントくれない?」「・・・そうですね」 そう言って頬に手を当てられる。質感からデールとダンデライオンは除外。声の位置的にHGのような小柄な人形でもない 柔らかな手が首から胸に降りてくる。慈しむように、愛でるかのように 「お酒は好き?」「嫌いじゃないです」 「グリフィンに所属していた?」「はい」 「武器種はARもしくはRF?」「はい」 吟味するように質問を重ねる。その間にも下手人の手は、身体を愛撫するように撫でまわす 「トロロ?」 沈黙が怖い。外してしまっただろうか。声をかけるべきか悩んでいると、不意に視界が明るくなる 「正解です、指揮官。流石ですね」 柔らかな笑みを浮かべる彼女がそこにいた 昔は通帳の桁が増えるのが楽しみだった 昔は人形の皆さんと指揮官様に囲まれていて幸せだった 「カリーナ、クルカイから定時連絡。異常なしって」 「リヴァさん、ありがとうございます。引き続きエルモ号の追跡監視をお願いします」 「了解」 今は通帳の桁の増える速度が上がった 買いたいものはいつでも好きなだけ買える。欲しければショーケースから倉庫の中まで買い占めることができる。 「はぁ・・・」 「カリン姉、ため息ばっかりしてると幸せ逃げちゃうよ?」 今は人形の皆さんは傍にいる。 望めばペルシカ博士や他のルートからでも最新の人形を調達できるし、ヘリアンさんから元グリフィン人形の皆さんにも会いに行ける 「カリーナ、指揮官に何か伝言はある?」 「・・・くれぐれもお大事に、と」 今はただ一人の、愛しい人が手に入らない 『人食い人形!反社は出ていけ!』 ガラスに大きく描かれた文字がズッケロの景観を見事に破壊している 「またですか・・・」 「これで14度目です、店長」 どこからか元グリフィン所属が漏れたようだ。今はまだ嫌がらせで留まっているが、エスカレートするかもしれないし、因縁のある相手の耳に届くかもしれない 「そろそろ対処しないといけませんね」 「プランCにしますか?今ならプランGも実行可能ですが・・・」 こういう事態に備えてズッケロ側も対処プランをいくつか用意している。それこそあらゆる手段を 「今回は穏便にプランEにしましょう」 「E・・・ですか・・・」 こともなげに言うスプリングフィールドと対照的に、センタウレイシーが眉を顰める 「マキアートさん、『お仕事』を依頼できますか?」 「いいわよ。監視カメラのデータ回して」 決まってしまってはセンタウレイに反論の余地はない。落書きを消しながら、マキアートのデータ解析に余剰メモリを割り当てる プランE、Execution メラニーはむくれていた。別に晩御飯に嫌いな茄子とトマトが出てきたことに怒ってなどいないし、健康診断で注射をぶすぶす刺されたことに怒っていないし、中々帰ってこない主の部屋で過ごすほかない状況にも起こっていない 怒っていないったら怒っていないのだ 「悪かったわ。本当にゴメンなさい」 「・・・怒ってないもん・・・」 言葉と裏腹にむすっとした表情。そのくせ、服の端をぎゅっと掴んで、どこにも行かないでと言っているようだ 「あー、ほら!ゲームでもしましょ!メイリンも呼んで!」 「嫌」 「あー・・・」 たった一言で指揮官の拙い戦術は無に帰した。子供は何とも御しがたい 「えーっと、メラニーは何かしたいことある?」 この際何でも構わない。お飯事でも塗り絵でも、何なら歌って踊って見せてもいい 当の彼女は何も言わず、そっと抱き着いてくる。すんすんという音は鼻を啜っている音だろうか 「・・・どこにもいかないで・・・」 何も言わず静かに頭を撫でると、抱き着く力がさらに強くなった 「MDR・・・」 「何さ指揮官。何さ何さ何さ!」 腕の中のMDRが鬱陶しい。エルモ号に合流してからというもの、彼女がべったりと引っ付いて離れない。朝起きてまず見るのは彼女の顔だし、夜寝る時もずっと隣だ。トイレにすら付いてくる あまりに引っ付くので着替えすらままならない。今だって肌着一枚なのだ そしてMDRは何が面白いのか腕やら脚やら、身体の至る所をべたべたと触って来る 「悪かったわよ・・・今度は黙って何処にも逃げない。約束するから」 「へぇ~、自覚あったんだ~ふぅ~ん」 鬱陶しい・・・ 「MDR、せめて離れてくるかしら?息が詰まっちゃう」 「やだ!目を離したらどっか行っちゃうじゃん!」 この調子だ。マグラシアのクロが見たら笑い死にするだろう。・・・今も元気に配信してるのだろうか 「ご飯は一人で食べれるし、寝る時も一人でいいの。トイレくらい一人で行かせて。あと胸から手を離せ!」 「えー!」 えーじゃないんだよセクハラ人形! 「飼育員ってさー、ポールダンス出来る?」 「藪から棒ね・・・出来ないことはないけど」 え゛っという顔のチータを尻目に、ちょうどよさげな棒を掴む 流石に服では難しいのか、ストッキングも下もそこらに脱ぎ捨てる 「結局のところ腿とかの摩擦でポールにしがみつく感じよ」 ほら、そう言ってくるくるとスピンしだす。 「へぇ~、飼育員ってそういう仕事してたの?」 「変なこと言わないでくれる?ただの一発芸みたいなものよ。本当は年末のかくし芸で披露するつもりだったんだけど」 そうはいうが、割とサマになっている。少なくとも一朝一夕で身につくような技術ではないはずだ 「いいこと考えた!もうちょっとポールダンスしてみてよ!飼育員!」 「え?別にいいけれど・・・」 『エルモ号飼育員の生足ポールダンス』、12000サルディスゴールドで本日発売! 「店長、朝の仕込みは終わりました」「店長~♡今日もライブしていいんだよね~?」 「ありがとうございますセンタウレイシーさん。シャークリーさん、クラッカーの量は抑えてくださいね」 開店前は忙しい。それこそ、ピーちゃんすら手伝わさせるくらいには。・・・マキアートさんは所在なさげにしているが 仕入れ、仕込み、清掃、催し物。少しでも居心地の良い場所を提供するために、妥協は一切許さない 「ふぅ・・・」 ズッケロは大きくなった。グリーンエリアでも有数のカフェに育ち、元グリフィン人形の皆さんの情報共有の場にもなった それでも、思い返すのはズッケロよりずっとこじんまりとしていて、設備も不十分なグリフィンのカフェ 瞼に映るのは銃弾と砲火、聞こえるのはあの人の指揮と銃声 「さ、今日も頑張りましょうか。皆さん」 それらすべてを呑み込む。今はまだ、その時ではない。今は、まだ ざあざあ、と雨が降りしきっている。まるで自分の今の心境のようだ。と、まるで思春期のような思考に思わず笑ってしまう 「カリーナ?風邪ひくわよ。そうでなくとも雨は危険よ」 「リヴァさん。すいません、もうちょっとだけ・・・」 再び壁の外に視線を投げる。リヴァさんが呆れたように隣に立ってくれた 「何?また指揮官絡み?」 「あはは・・・わかっちゃいます?」 バレバレだったらしい。そんなにわかりやすい表情をしていたのだろうか。顔をむにむに触ってみるが、自分ではわからない 「クルカイもミシュティもヴェクターもついてるから安全は保障されてるようなものよ?」 「指揮官様が手を出さないか心配なんですよ。人形とみるやすぐに口説くんですから・・・」 昔からIOPに新人形提供の知らせがあれば、資源を大量にぶち込んで要請してたあの人だ。きっとその辺のコミュニティの人形を引っかけてるに違いない ・・・指揮官様に会いたい。ただそれだけなのだ。だが、立場がそれを許さない 「今度会ったら鼻を殴ってやればいいのよ」 「・・・そうですね」 会ったらまず一発引っ叩こう。そして思いっきり泣きついてやる。そして、今度こそ離れてやるものか ダンッ!勢いよくショットグラスがテーブルに叩きつけれらる 「「もう一杯!」」 「はーい☆ヴェプリー了解☆」 また並々と注がれる透明な液体。度数98%を誇るスピリタスだ 今、エルモ号では『誰が一番呑めるか!』というかなり低俗な大会が開かれているのだ! 優勝候補のメイリンが早々に潰れたせいで、優勝争いは混沌を極めていた。ついでに大会自体もぐだぐだで混沌だった 「エリートだかなんだか知らないけど、アイツの隣は私のものよ!」「ふん!殺ししか出来ない(笑)の人形に完璧な私が負けるわけないじゃない!」 いつの間にか指揮官が優勝賞品になっていたが、当の本人は飲み過ぎでペーペーシャの膝枕でぐったりしていた 「ふん、この程度の酒、ミシュティでも飲んでるわ」「ふん、スピリタスなんて四捨五入すればノンアルなのよ!」 大変だね・・・。そちらも・・・。銀髪と金髪の人形が後ろでお互い慰め合っていた 「アンタなんかに!」「私が!」「「負けるわけにはいかないのよ!!」」 再びテーブルが揺れ、グラスが叩きつけられた 戦いはまだ始まったばかりなのだ! ----- 1時間後、そこには涼しい顔でグラスを傾けるネメシスだけがいた 「指揮官~、朝だよ~。ふぁぁ・・・」 朝に弱い指揮官を起こす業務が加わったのは、エルモ号に乗って割とすぐだった 何を使ってもいいから起こしてこい、とはグローザからのお達しだ。・・・かくいう彼女も朝にはめっぽう弱いのだが 「・・・あたしに任せるの、おかしくない?」 呼んでもゆすってもびくともしない指揮官に、ミシュティは半ば諦めていた そもそもミシュティ自身、昨日は10時間しか寝れていないのだ。そして目の前にはあったかベッド 「5分したら起こすからさ。・・・クルカイには一緒に怒られてよ」 モゾモゾと指揮官の隣に寝転ぶ。すぐに二人分の寝息が聞こえてきた ----- 「起きろ!!!この!!!ねぼすけども!!!!!」 2分後、部屋にスタングレネードが投入され、クルカイ、キャロリック、マキアートによる奇襲が行われた 「出ていけ!」 「痛いよ、ペルシカ・・・」 尻にゲシゲシとペルシカのキックが着弾する 昨日までご満悦だった彼女の顔は、今や般若の形相だ 「いいから!出ていけ!」 「悪かったって、まさかそんなに経験がないなんぶっ!」 枕が顔面にヒットして、言葉は途中で消えてしまった 「出て行かなくていいわ。今から記憶と人格消去してやる!」 「ぎゃぁ!マッドサイエンティスト!」 ドタバタドタバタ。毛布やら印刷した紙が散乱した、乱雑な部屋で暴れまわるいい歳の大人が二人 「ゴメンってペルシカ!許してくれ!」 「いーや!ダメよ!あんたも昨日の私と同じ目に会いなさいよ!」 理不尽な!真っ赤な顔で鬼神もかくやという表情で追いかけてくる 「昨日のペルシカは可愛かったって!『初めてだから優しくして・・・』って辺りは特に!」「殺す!!」 カリンが迎えに来るまで乱痴気騒ぎは収まることはなかった 「離してくれクルカイ!クソッ!」 力をいくら込めても荒縄はぎしぎしとなるだけでほどける気配はない 「ダメよ指揮官。これは罰なの」 弱まることのない火力。灼熱の湯気が恐怖心を煽り、私の心をすり減らす 煮えたぎる地獄の釜から取り出されたのは巾着 「クルカイ~まずは卵じゃない?」「王道的にはここは大根でしょう?」「私は牛スジたべたいな~!リヴァ姉は?」 好きかって言う404のメンツ 「止めろ・・・止めてくれ・・・」 「ふふふ・・・」 そして、巾着が頬に触れた 「あっつ!あっついんだって!アツゥイ!」 「おぬし・・・」 上目遣いで肉棒を舐める小柄な人形。子供と見紛う童顔はカウパーでべとべとになっており、背徳感を高める 「もちっと小さく出来んか?・・・全部入らんぞ・・・」 それでも健気に口へ、さらに喉の奥へ肉棒を迎え入れる。嘔吐反射か、カリ首がただでさえキツイ口内でさらに締め付ける。 「おっ・・・ぶっ・・・」 苦しそうな彼女を無視して欲望のまま頭を押さえる。何か言いたげな表情をするが、すぐに承知したように舌で愛撫し、喉、というより食道まで剛直を迎えた。人形に食道なんて器官があるか知らないが。 頭を押さえる力を抜くと、ナガンはようやくといった顔で肉竿から口を離そうとし、 「ぶっ!」 再び頭を抑えつける。 馬鹿みたいな声と顔、それを無視して髪を掴み乱暴にイラマチオ。ゾクゾクと嗜虐心が満たされていく あっという間に限界が来た。精を口内にぶちまける 「はぁーっ!はぁーっ!おぬし、よくもやってくれたの・・・」 ぜーぜーと息も絶え絶えだが、文句を言う気力は残っているようだ 「・・・待て!待つのじゃおぬし!もう少し休ませて・・・あっ♡」 軽い身体をひっくり返す。すっかり濡れたソコは今か今かと待ちわびているようだ 「・・・指揮官、楽しいですか?」 むにゅりと、メラニーに慎ましくも柔らかな胸が、掌の上で形を変える。ちょっと楽しい 時折、喘ぎ声ともため息ともつかない声が漏れる。心なしか艶がかっているように聞こえる 「んっ・・・もう、十分楽しんだんじゃないですか?・・・んっ!」 有り体に「もう止めろ」という声を無視して、少し乱暴に力を籠める。まだ楽しんでいる最中なのだ 「あっ、乳首、そんな風にしないで・・・んんっ!」 爪でカリカリと乳首を攻めてやると、快楽から逃げるように体を丸める。随分とここが弱いらしい そして、みすみす弱点を逃すほどクソボケではない 「ダ、メですっ!はっ!・・・んんっ!」 暫くそうしていると、メラニーの身体が小さく揺れる。どうやら絶頂したらしい 「はぁー・・・はぁー・・・♡待って!まだ・・・あっ!♡」 余韻の抜けきっていない彼女の胸を再度嬲る。やはりいい声で啼いてくれる。今度メイリンと3Pも楽しそうだ 物思いにふけりながらメラニーを弄っていると、ずっとイキっぱなしだったのか、すっかり大人しく快楽を貪っていた 脱力した未成熟な身体に肉棒が天を向く 「「「「「王様だーれだ!」」」」」 「完璧な王です」「げっ・・・」「完璧な王様っていないわよね~」「リヴァ姉が王様なら粛清されてもいいよ♪」 先端に☆が記載された棒を高々と掲げるクルカイ王。棒の先っぽは無駄に小型ピクセルディスプレイになっている 視線を落とすと私の棒には1の記載が。 「ふふん、王様の命令は絶対なのよね?じゃあ1番は私と射撃訓練3時間」 「・・・OK」 ・・・明日は筋肉痛で死んでるかもしれないな。残ってる仕事はグローザとメイリンに押し付けてしまおう 豪快にグラスの酒を一気するクルカイ。命令後の王様はグラスの酒を飲み干す決まりだ。しかも、度数が高いやつ 「ぷは~・・・さぁ~、次行くわよぉ~・・・指揮官のグラス空じゃない。ほら~飲んで飲んで」 完璧な人形が完璧に酔ってる。しかも絡み酒・・・ 「「「「「王様だーれだ!」」」」」 ここまで王様になったのは初めの一回だけ。運はいい方だと思っていないが、ここまでとは・・・ 実際のところ、札は指揮官以外が王になる様になっていて、誰が王になるかは電子戦で決まっていた セカンダリレベルでは次の王になるための、熾烈なハッキング戦が行われていた 「指揮官、気持ちいい?」 股座の一物を健気に舐め上げるのはアデリン。パラデウスの黒いネイトと呼ばれる個体だ。色々あってグリフィンに移籍した子だ 肯定するように頭を撫でると、愛おし気に口の奥まで愚息を迎え入れた 「ぷはっ!アデリン、早く終わらせて。次は私。それと、指揮官も早く出して。次は私なんだから。」 そして、キスでお預けされているのがアリーナ。パラデウスの白いネイトと呼ばれる個体だ。こちらも色々あってグリフィンに移籍した子だ 生意気を言う彼女の乳首を軽く摘まむと、それだけで短い喘ぎ声しか出せなくなってしまったようだ 暫く部屋にはぴちゃぴちゃという水音と、時折甲高い喘ぎ声で満たされた 「指揮官・・・ちょっといい・・・?」 夜もまだ早い時間にリンドが姿を現した。いつもならば部屋でラジオを聞いているか、チータたちと一緒にいることが多いのだが 「ちょっとね・・・」 なるほど、口に出すことを憚られる事情があるらしい。手招きをして部屋に誘う。こういうことをしてるから人形に襲われるんですよ!とはカリンの言だったか 「で、どうしたの?」 「指揮官は、教授だった時を覚えてる?」 単刀直入だ。ドアブリーチングの如き破壊力の質問に思わず目を逸らす。覚えてないわけじゃないが・・・ 「あー・・・」「あ、違う違う。そのさ、変な質問じゃないて・・・」 実験のこと、自分のこと、末宵のこと、そして、あの出来事のこと・・・ 「うん、またちゃんと話せてよかった」 全て話し終わり、彼女が身体を寄せる。目のクマはグリフィン時代からすっかり薄くなった。 「リンド?」 「今は指揮官が、一番大事な人だから・・・」 そっと近づく彼女の唇からは、飴の甘い香りがした 「指揮官、コーヒーを」 「悪いね、RO」 グリフィン時代からの副官からコーヒーを受け取る。スプリングフィールドのコーヒーも美味しいが、やはりROは私が好きな味のコーヒーを淹れてくれる。もはや彼女がいない生活は考えられない 「作戦報告書は既に送りました。メイリンさんからの補給リストもこちらに」 「悪いね」 副官ですから、と微笑する彼女。何と頼れる副官か。思えば彼女、彼女たちには大いに助けられた 「そうだ、RO。いつものお礼に何かしてほしいことはない?何でもいいよ」 私に出来る範囲なら、と付け加える。言わずとも彼女ならばわかっているだろうが。 「・・・そうですね・・・では、ディナーを1回」 「そんなものでいいのか?もっと欲張ってもいいんだよ?」 彼女らしい慎ましいお願いだが、あまり遠慮してほしくないというのも本心だ 「・・・いいお店を見つけたので。その、二人きりではダメですか?」 「はっ!はっ!」 逃げている。ただひたすらに逃げている。誰から?決まっている、人形からだ。どうして? 「飼育員!待ってよ!ちょっとこの紙にサインして指輪をするだけでいいからさ!あんだけ愛し合ったんだしさ!」 「クソッ!今度はチータか!」 人形が結婚という名の首輪を嵌めようとするからだ!こんなことならメイリンに適当な指輪でも送っておけばよかった 「指揮官、こっちこっち」 横を見ればミシュティが手招きしている。なるほど、彼女がいる物陰ならば多少は時間が稼げる。迷わずミシュティの元に飛び込む 「あれ?飼育員が消えた!」 どうやら見失ってくれたようだ。足音が徐々に遠ざかっていく 「危機一髪だね~、指揮官」 「助かったよミシュティ」 えへへ、と微笑むミシュティ。今はエナドリをキメているらしくシャンとしている 「ところでさ、指揮官。これを受け取ってもらえる?」 そう言って取り出したのは、薄暗い物陰でも散々と輝く指輪 「あっ!どこ行くのさ指揮官!クルカイ!指揮官が逃げた!4F第2ブロック!」 「しししし指揮官っ!ちょちょちょっといいかっ!?」 「どうしたの、緋?」 CZ75もとい、緋。元グリフィンの人形で今はそよ風小隊の人形の一人は、私がメイリンに追加の仕事を投げた後、部屋の前で律儀に待っていたらしい 「とりあえず、入る?珈琲くらい出すわよ」 「お、おう・・・お邪魔、します・・・」 紅い髪よりなお赤い顔をする彼女がベッドに腰掛けるが、その姿は落ち着きなくソワソワとしている。まるで思春期の男の子が、意中の女の子の部屋に招待されたようだ。・・・そんな経験はないのだが・・・ コーヒーに息を吹きかけ冷まし、一口飲んで口を顰めて砂糖をボトボトと落とす。可愛い 「あん時はゴタゴタしてたけど、ちゃんと指揮官と話しとかないとな」 「そうね、歓迎会でもしましょうか?」 公演の時はヴァリャーグだの朝暉とのコミュニケーションだので話す時間がなかったのは事実だ 「また頼りにしてるわ、緋」 「おう!指揮官の敵はアタシが全部ぶっ飛ばしてやるよ!」 朱い夕日に照らされた彼女の笑顔は、何よりも輝いていた 欲しいものは全て手に入る。今の私に、手に入らないものなど只の一つも存在しない。手に入らないものがあるというのならば 「はぁ・・・」 「ため息をつくと幸せが逃げるらしいわよ、カリーナ」 後ろからリヴァさんの声がかかる。人払いして、誰もいないはずだったのだが。相変わらず神出鬼没な人形だ 「幸せの絶頂なんですから、多少逃げても構いませんよ」 「ちっともそんな顔してないけれど?」 クスクス笑う彼女の声が煩わしい。人と人形の神経を逆なですることが一番の楽しみのような人形だ 「で、指揮官は?」 「クルカイから連絡来てるでしょう?またトラブルに巻き込まれて人助けしてたわ」 ちょっと目を離したらこれだ。何のために戦闘兼連絡兼監視役を置いたのかわからない。どうせ人助けして、物資を放出した上に人形を引っかけてるのだ 「心配?」「ちっとも」 あの人が簡単にくたばるようなことはないだろう。グローザさんも404小隊もいるのだから。・・・自分を囮にする作戦くらいはしそうだが そう、と言い残してリヴァさんが部屋を後にする。ドアの向こうのレナさんが妙な笑いが、また鼻につく 「はぁ・・・」 あの人との再会はいつになるのだろうか 「指揮官はどこ!?指揮官の馬鹿は何処に行ったの!?」 「指揮官ならデールさんの所に行きましたけど…」 クルカイは激怒した。必ずやあのクソボケ指揮官を一発ぶん殴ると決意した。クルカイには性欲がわからぬ。しかし、勝手に胸部増量パーツをつけられMカップにされ怒髪天を衝く思いであった バルンバルンとアホのように揺れる胸を腹立たしく思いながら、廊下を練り歩いていた。周りの人形は「うおっ!それはデカすぎ…」という目がさらに苛立ちを増幅させる 「指揮官!デール!」 ドアを壊さんばかり、というか実際レールとドアを一部変形させて整備室に怒鳴り込むが、 「チッ!どこ行った!」 もぬけの殻であった。隠れそうな場所はなく、別のところに逃げたのかと部屋を後にした 「行った?」「行った行った」 天井。ダクト部分に大の大人2人が張り付くように隠れていた 「やはりデカパイはいいな」「いい趣味してるぜ。指揮官」 見つかればバイクに括りつけられ引き廻されそうだが、その程度のスリルではデカパイの魅力の前には些末事だ 「次は?」「リヴァだろ」 「指揮かぁん?」 冷たい声が、何処からか聞こえてきた 「う~・・・頭痛い・・・」 完全に二日酔いだ。昨日は・・・確かペルシカに呼ばれて、何故か酒盛りになって・・・ダメだ、記憶がそこで途切れてる ガンガンと痛む頭を押さえる。しょぼしょぼと目を開けると蛍光灯の明かりが容赦なく突き刺さる。どうやら明かりも消さずそのまま寝てしまっていたらしい 「グローザ?・・・誰かいないの?」 付き添いの人形の名を呼ぶが、返事はない。 何故か上着1枚だし、パンツ一丁の姿。着ていたであろう服は遥か遠くに脱ぎ散らかされている マットレスは引いていたらしいが、身体を起こすとバキバキと悲鳴を上げる 「んん・・・」 手の付近から声が聞こえてきた ふと横を見ると、使い古しの毛布に誰かいるようだ。というか、部屋の主を考えると該当人物が一人しかいない 「ペルシカ・・・?」 そっと毛布を剥ぐと一糸まとわぬ彼女の姿が現れる 「あの、ペルシカさん?そのお姿は一体・・・?」 「責任、とってくれるんでしょ?指揮官」 悪戯っぽく、妖艶に嗤った 「ミシュティ!何処に行った!クソッ!」 地響きを立てるほど足音を立てながらクルカイがエルモ号を練り歩く。訓練をサボタージュしたあの寝坊助クソメイドミシュティを必ず見つけてメンタルを破壊して素体を鋳つぶしてやる! どうせアイツのことだから指揮官の部屋で惰眠を貪ってるか、ゲームをしてるか漫画を読んでるに決まっている 「指揮官!ミシュティは何処にいますか!」 「しーっ!今寝てるところなの」 ドアが悲鳴を上げるほど乱暴にブチ開けると、静かに、と人差し指を立てられる 彼女の膝の上で愚鈍で愚劣でやる気も覇気もないぐーたら人形がすぅすぅと寝息を立てていた。 「指揮官、失礼します」「ぎゃぁ!!」 一言謝ってミシュティの頬の摘まむ。よく伸びるそれは餅のようだ 「さっさと!訓練!するわよ!サボった罰として10倍で許してあげるわ!」「死んじゃうよぉ!」 頬を摘まんだまま部屋を去る前に指揮官に振り返る 「指揮官、後で私も膝枕をしてくださいね」 「・・・えー・・・」 「し・て・く・だ・さ・い・ね!」 真っ赤な顔でそう念を押すエリート戦術人形がそこにいた 「指揮官!こんな時間に寝てるなんて雑魚のすることだ・・・よ・・・?」 いつものように騒がしく部屋に入ってきたMDRの声が尻すぼみになるのは、ベッドの上で寝息を立てている指揮官を見てしまったからだ 「・・・指揮官~、寝てる~?」 足音を立てないよう慎重に枕元に近づき、そっと耳元で囁く。少し身じろぎしただけで、再び夢に戻ったようだ 「・・・ちょっとだけ、ちょっとだけね。他の人形だってシてるんだし・・・」 MDRの唇が重なる。その寸前、指揮官の陰で見えていなかった人形の口が開いた 「・・・何してるの?MDR」 「うひゃぁ!吃驚した!ミシュティ!?」 煩い、とばかりに耳を塞ぎ、眉をひそめる。クルカイと訓練から逃げる先は決まって指揮官の部屋であり、もはや彼女の第二の自室と化していた 「い、いや~、ちょっとスレのネタをね!そう!スレのネタ探しだったの!」 実際、キスの写真でスレ立てしてやろうという思いも少しあったので嘘ではない。 「ふぅん・・・まぁいいや。あたしはここで寝るけど、MDRはどうする?」 「へ?・・・それじゃ、お邪魔します・・・」 ベッドに入り込んだ2人の戦術人形に、指揮官が甲高い悲鳴を上げるまで、後3時間 「あっつ・・・メイリン、クーラー直りそう?」 「ヴァリャーグの襲撃のせいで無理ですよぉ・・・」 先日のヴァリャーグの襲撃、もとい窃盗は見事なものだった。彼らは力によって略奪するのではなく、盗みによってこちらの力を削ぎに来た。具体的にはこの真夏のクソ熱い時期に室外機を持っていかれた。次に会ったら鏖だ 「溶ける・・・」 恥も外聞もなく水着出勤だ。よくもまぁ昔のやつを着れるものだと我ながら感心する 「あの、指揮官?」 「スオミ!ちょうどよかった」 こういうときのための氷編成だ。マキアートは・・・攻撃系しか持ってないから呼んでない 「S4撃ってくれない?暑くて仕方ないの」 「え!?ここで、ですか?」 首を縦にブンブンと振る。彼女のスキルならあっという間に涼しくなるだろう。電気代も節約できて一石二鳥というやつだ 「マキアートさんほど威力はないですけど、一応攻撃入りますよ・・・?」 「FFはないんでしょ?早く早く」 少し悩んだ末、スオミがえい!という掛け声と同時にランタンが揺れる 「おぉ!これは!涼し・・・いや、なんだか・・・さ、寒・・・早く止めて!凍死する!」 『暑い時はセカンダリレベルでまったりするのが一番だよね~』 ここ最近の猛暑日のせいでエルモ号のサーバは人形のたまり場になっていた。意識だけサーバにあげて、素体は保管室に置く 人形にも対応限界温度というものがあるのだ 『うへ、セカンダリで訓練なんてしないよ』 クルカイに見つからないようすぐに隠れる。ついでにエルモ号の監視カメラもハッキングする。伊達に404はやってないのだ 『う~ん、あんまり面白いのないなぁ』 高速で映像をチェックしていく。指令室、整備室、キッチン・・・ 『あ、デールだ。そんな装備勝手につけたらクルカイに怒られるぞぉ・・・メイリンさんは、またお酒飲んでる・・・』 切り替えていくと、水音と白い靄。微かに声も聞こえる。カメラは『指揮官室 -シャワー-』というラベル 『ん~?』 「・・・本当に大丈夫なんですか・・・?」「・・・人形は皆保管室にいるし、こんなところ誰も見ないよ、メラニー」 ぼんやりと輪郭しか見えないが、声の主は分かりきっている 「じゃあ今日も頼むよ、メラニー」 「はぁ、本当にヘンタイですね、指揮官は・・・」 『クルカイ!大変だよぉ!いやマジなんだって!マジで大ごとだよぉ!』 「指揮官、ここにおいででしたか」 「黛煙?どうかした?」 彼女からカップを受け取る。中身は白湯らしい 「何やら思いつめたお顔をしていましたから」 「・・・そんなにわかりやすい?」 「とても」 10年前の選択がずっと頭を駆け巡る。朝暉との出来事で少し感傷的になっていたのかもしれない。 「教授?」 「うん?・・・あっ」 ・・・つい返事をしてしまった。バツが悪そうな私を黛煙はクスクスと笑う 「もう一度、貴方の証をくださいませんか?」 「・・・一度でいいの?」 そういうと黛煙が少し驚いた顔をする。珍しいものを見れた 「お望みならば夜が明け日が昇り、日が沈むまでお付き合いしますよ?」 「夏と言えばひぐらしだよね~。大昔のホラーってのも乙なもんだよ」 「あれはホラーって言っていいのか・・・?」 出題偏を一気見した二人が各々感想を言い合う。やれ、鬼隠しは今でも無理だの、綿流しは双子トリックだったのか?だの、祟殺しは詩音豹変しすぎだろだの ボリボリ。毎年とまではいかないが、夏と言えばひぐらしの声だ。・・・ホワイトエリアでも絶滅した種ではあるが 「指揮官がどの話が好き?あたしは祭囃しのB級感好きだなぁ」 「皆殺しかなぁ。詰めは甘いが滅菌作戦は悪くない作戦だと思う」 ボリボリ。テーブルにはチョコにポテチにコーラ。ヘレナから何とか隠し通せた数少ない甘味だ 「ちょっと痒いな・・・蚊にでも刺されたかな?・・・痒い・・・」 「ちょっと?指揮官?大丈夫なの?」 ガリガリ。両手で首筋を掻きむしる。目は焦点を失い、掻くことだけに集中しているようだ 「何てね」 「・・・もー!驚かさないでよ!」 ガリガリ。おどけたような指揮官にミシュティも胸をなでおろす。やはり指揮官は意地悪だ ガリガリ。首筋にある幾本もの鮮血は見ないことにした 「♪~・・・ねね☆どうだった?指揮官☆」 結わえた銀糸が踊る様な軌跡を描き、青いリボンがそれに追従する。陽光を反射しキラキラと輝く髪。彼女の気質も相まって太陽の神のようだ。目を離すことを許さず、けれど触れることを許さない 「最高ね。ヴェプリーのソロを一人占めできるなんて」 満足したのか、彼女が私の隣に腰掛ける 「・・・さっきの曲ね。指揮官のことを考えて作ってみたの・・・」 蒼天のような瞳が私を捉える。細く白い指が私の手を包む 「ヴェプリー?」 「あのね?指揮官。もっとヴェプリーの隣に、いてくれる?」 蒼い双眸が微かに揺れる。口元が不安げに歪む 「勿論」 一言で断じる。それでも足りないだろうと、彼女を抱き寄せる 「・・・じゃあ、もっとヴェプリーのこと知って?☆そして、指揮官のことももっともっと教えて☆?」 不穏な言葉と同時に回る視界と背中に軽い衝撃。押し倒されたと理解するまでに、たっぷり十秒かかった 「へっへ~☆スエゼン?ってやつ?」 太陽に近づきすぎたものの末路など、堕ちるしかないのだ 「あつい・・・」 寝苦しさでとうとう目を覚ます。下着は寝汗でぐしょぐしょで、シーツは汗を大量に含んで気持ち悪い クーラーは動いているから、それ以上の熱源があるのだろう 「ヘレナ・・・メラニー・・・」 両脇にしがみつく様に寝入る2人。寝苦しさは子供特有の高い体温のせいだろう 追い出すわけにもいかず、かといってこんな時間に人形やメイリンを呼ぶのも憚られる。仕方なく、クーラーの温度を下げ再び横になる ---- 「しきかん、ねた?」「ヘレナ、声が少し大きい・・・」 頬を突くヘレナと、慌ててそれを止めるメラニー。指揮官は呻くだけで起きる気配はない 「私だけでよかったのに…」「しきかん、ひとりじめ、ずるい!」 声を荒げるヘレナに人差し指を立て、黙れのジェスチャー。不承不承と口を閉ざすヘレナを確認し、そろそろと指揮官の下着を降ろしていく 「・・・おおきい・・・?」「寝てるからまだ勃ってもいませんよ」 そう言ってメラニーが率先して、ふにゃふにゃの陰茎を手に持ち、 暑いからこれ以上書く気力がなくなった。 月光の降りしきる中、エルモ号は荒野を駆ける。そんな中、ふと歌声が聞こえてくる。悲しげで、寂しいげな、そんな鎮魂歌のような歌 「♪~♪~・・・指揮官?」 「ヴェプリー」 普段は賑やかな遊戯室だが、今日は珍しいことに誰もいない。出窓に腰掛けていた彼女以外は。銀の髪と青いリボンのアイドル人形は私を見るとその歌を止めてしまった。 「どうしたの?あっ☆ヴェプリーのパフォーマンスが見たいの?☆」 歌とは正反対のテンションに少々面食らう。彼女らしいと言えばそれまでなのだが 「歌声が聞こえてね。なんて曲なの?」 「ん~?さっきの曲?そういえば名前つけてなかった☆」 あっけらかんとした声に、思わず苦笑してしまう。 彼女が手招きするので、同じように出窓の縁に腰掛ける。 「へっへ~☆着地成功☆」「きゃっ!」 待ってましたと言わんばかりに膝の上を占拠するヴェプリー。酷くご機嫌なようで、左へ右へと頭と髪が揺れている 「♪~♬~」 胸元辺りから響く歌声は、先ほどよりもずっと幸福で暖かなものだ 月明りに照らされ、エルモ号の一室で小夜曲が静かに響いていた 「てんちょ~、マキアートがサボってる~♡」 「うっさいわね・・・」 射殺さんばかりの視線を投げると、うひひっ♡と馬鹿にしたような声が返ってくる。エルモ号のズッケロの客など、見知った人形か、あのバカしかいないのだ、多少のサボリがどうした 「というか、あんたのその恰好も何なのよ」 形こそメイド服に似せているが、ピンク基調に大量のフリル。胸元はざっくり空いていて胸が零れそうだし、スカートは短い上に透けている。娼婦顔負けだ 「期間限定の新衣装~♡歌と踊りだけじゃ弱い!トレンドは歌って踊れて殺せるアイドル♡」 あっそ、と興味なさげに『マキアート大好き』を喉に流し込む。甘ったるいキャラメルが口いっぱいに広がる 「え~?指揮官も『よく似合ってるよ、シャークリー♡』って言ってくれたよ~♡」 何かを思い出したのか顔を赤らめるシャークリーに椅子を蹴倒すように立ち上がり掴みかかる 「その服は何処!?」 「えっ、指揮官がシャークリーのために買ってくれたからな・・・」 「今!すぐ!その服を!よこせ!」 「きゃー!てんちょー!指揮官ー!助けて―!」 ドタバタ騒ぐ二人が止められるまで後30分 ♪~♬~・・・ 寒暖差の激しい地帯に入り、朝のエルモ号はけぶるような霧に覆われていた そんな中、何処からか横笛の音色が聞こえる。柔らかなその音は、最近エルモ号に乗車した朝暉のものだろう 「・・・おはよう、指揮官」 雲海のような霞の中に立つ人形は、まるで伝説の中にいる仙女のようだ。音の主はいつも通り、表情の変わらない表情を浮かべていた 「早いのね」 「そう?指揮官こそ、まだベッド使っててよかったのに」 軽口を叩ける程度には関係はよくなった、と言ってもいいだろう。 以前は何を考えているかいまいちわからない能面のような顔も、よくよく観察すると声色や視線で感情がわかる様になってきた。この辺はヴェクターと似ているかもしれない 「・・・別の人形のこと考えてる?」 「まさか」 ジーッと見つめられ、思わず顔を背ける。表情が変わらない分、怖さが増すように感じる 「あー・・・あのね、朝暉、」 「私たちに言葉は不要、でしょ?指揮官」 何かを言う前に口は唇で塞がれた 「なにをー!」「なんだとー!」 エルモ号一室。掴みかからんばかりの勢いで二人の戦術人形が胸を突き合わせていた。普段の和やかな雰囲気は霧散している 「ビヨーカ!何をはしゃいでいるの!?」「絳雨、あまり大声を出すと皆さんに迷惑ですよ」 「「だってお姉ちゃん!こいつが!」」 姉二人に諫められてなお、妹二人の機嫌が収まることはない。むしろヒートアップすらしている 「ビヨーカ!この騒ぎは何!?」「絳雨?一体どうしたの?」 言葉と態度は違えど、問い詰める姉二人に妹がそれぞれ語りだす 「だって!指揮官は『ビヨーカのパイズリが一番だ』って言ったの!」「私だって指揮官から『絳雨のパイズリが最高に気持ちいいよ』って言われたの!」 互いの言葉でさらに再燃したらしく、またも両者は鋭く睨み合う そんな二人を尻目に姉二人が静かに、だが幽鬼を思わせる形相で立ち上がる 「指揮官は何処!?」「・・・少々用事を思い出しました。席を外します」 「「・・・お姉ちゃん?」」 「じゃ~ん☆新衣装~☆」 眩しい白いビキニに眩しい笑顔の彼女。真夏の太陽よりなお眩しい彼女に引っ張られ、エルモ号の仮設プールにダイブする 「うぉっ!?」 「着水成功☆」 成人男性と戦術人形の衝撃に、ドッパーン!と派手に水しぶきが上がる 「ぷはっ!ヴェプリー!やるなら一言、ぶはっ」 「へっへ~☆スキあり!」 小言を言う口に水の弾丸が着弾する。手にはいつの間にやら水鉄砲、それも彼女らしく吐き散らすタイプのやつだ 「やったな!この!」 「きゃっ☆ヴェプリーも負けないよ☆」 それからは童心に戻ったように、浮かれる恋人達のように水をかけ、かけられた 「ね、指揮官☆ヴェプリー、ちょっと疲れちゃったな。その、何処か休憩できるところに行かない?」 そう言って微笑む彼女の瞳は、だが捕食者の目をしていた エルモ号はいいところだと思う 前までは歌えないし踊れないしでもどかしい思いをしていたが、ここでは好きな時に歌えるし、コルフェンちゃんやシャークリーと一緒に踊れる。それに、指揮官がいつだって褒めてくれる。 「うーん・・・今日はちょっとセクシー系?でも、やっぱりガーリッシュ系も・・・」 最近はユヒってアイドル人形も乗ってきて、このままなら皆でユニットも目指せるかも?でも暫くはソロがいいな~☆偶像は一つがいいのだから☆ 「あっ!指揮官だ☆」 「ヴェプ、あだだだ!力強いって!」 後ろからドーン!そして、ギューッ!抱きしめる。ついでに顔もぐりぐりと押し付けてしまえ☆ 指揮官から何か聞こえるがちょっとだけ無視する。一秒だってこの人から離れたくないのだ。とは言え、ちょっとだけ力を緩める。あんまり力込めちゃダメなんだって☆ 「で、どうしたの?ヴェプリー?」 指揮官が優しく頭を撫でてくれる。密着した聴覚モジュールからは指揮官の心音が聞こえる 「え?ううん、何でもないよ☆」 いつかこの人のこの気持ちを伝えよう 自分のすべてを歌と踊りに載せて 「・・・き官。起きてください、指揮官」 肩を叩かれる衝撃に微睡から目を覚ますと、緑のメッシュを入れた栗色の髪の少女が優しく微笑んでいた。部屋の時計はとうに23時を回っている。仮眠のつもりが熟睡していたようだ 「おはようございます、指揮官」 「・・・おはよう、M4」 M4と呼ばれた少女が珈琲を持ってくる。香ばしい香りに意識が覚醒していく 「珈琲をどうぞ。スプリングフィールドさんほどうまく淹れれたかはわかりませんが・・・」 「ありがたくいただくよ」 一口啜る。酸味と苦味が丁度よい具合に調和しているそれは、普段スプリングフィールドが淹れる珈琲とほぼ同じ味わいだった 「美味しいよM4」 「あ、ありがとう、ございます・・・」 顔を上気させ、モジモジと指を交差させる様子は人形ではなく、一人の少女のように見える 「あの、その、今日はこのまま指揮官の部屋にいても、いいですか?」 「勿論、好きなだけいるといい」 そう答えると彼女は顔を綻ばせる。 それにしても、M4A1がエルモ号にいただろうか? 「それでは、また来ます・・・絶対!また来ますから!」 「待ってるよ、9A91」 情事が終わった後、決して離そうとしない彼女の頭を撫でる。タイマーは先ほどから煩いくらい鳴り響いているし、電話のコールも止まることがない 『指揮官様~、もうとっくにお時間過ぎてますよ~!』 「わかってるよ。9A91、外まで送ろうか」 「は、はい!」 グリフィン時代に比べて随分と真面な服を着るようになったんだなぁ、と馬鹿みたいな感想が頭を過る 「その、次はエルモ号の外で指揮官と・・・」 「悪いね、9A91。もうちょっとプロトコルが緩くなったらね」 名残惜しそうな彼女にせめてもの口付けを。先ほどまでの情熱的なものではなく、軽いタッチ程度で 「・・・せめてこれを受け取っていただけませんか?」 差し出されたチョーカーを受け取る。この手の贈り物で部屋が溢れかえっているが、拒否も出来ない・・・中にGPSとか入ってないよな? 『指揮官様!、もう御予約のお客様がいらっしゃってますよ!次はネゲヴさんですよ!』 「わかったよ・・・」 移動型人形向け特殊浴場・エルモ号。御予約は非軍事管理局のカリーナまで! 雨は嫌い。お外でライブ出来ないし、セットした髪もぐしゃぐしゃになっちゃうし、イイコトなんて一つもない 「ヴェプリー憂鬱・・・」 窓に見えるのは落ちてきそうな曇天と、ヴェールのような雨とガラスに張り付く水滴。こんな気分じゃ暗い曲しか出来そうにない。・・・ダウナー系ってのもアリかな? 「はぁ~あ・・・」 もう何度目かの溜息。ユヒちゃんもシャークリーも今日は任務でいないし・・・ 曇りガラスにとりとめのない落書きをする。完成したそれは、水滴ですぐにホラー風味に変わってしまった 「はぁ~あ・・・」 人形のメンタルって天気にも影響を受けるんだろうか?それとも、いてほしい人がいないから?ヴェプリー、わかんないや あの人の代わりにピザ君をギュッと抱きしめる 「ヴェプリー?いる?」 「あっ☆指揮官」 今日はもう不貞腐れてセカンダリレベルで一日ソロライブしてしまおうと思った矢先だった。少し、いや、とてもラッキー☆ 「最近雨続きで憂鬱でね。ヴェプリーに元気を貰おうと思って」 「へっへ~☆任せて、指揮官☆」 窓の外は暗雲が立ち込めているが、ヴェプリーのメンタルは快晴のごとく晴れ渡っていた 「指揮官、タイが曲がっていますよ?」 そう言うと彼はバツの悪そうに頭を掻いた。畏まった服なんてもう久しく着ていないんだよ・・・、と言う彼のネクタイを直す 「はい。苦しくはありませんか?」 頭が左右に揺れる。問題なさそうだ。とは言え、いつもと勝手が違う服はやや窮屈そうだ。私も少し胸とお尻のあたりが・・・ 不安そうな顔に見えたのだろうか、彼が優しく頬を撫でる。そして不意打ちのようなキス 「もうっ、まだ宣誓していませんよ!」 意地の悪い彼の胸を叩くが、大して堪えたように見えない そうこうしているうちに時間が来てしまった 「エスコートお願いできますか?旦那様」 勿論、そう言う彼と腕を組む。鐘が鳴り響くチャペルはすぐそこだ 「ふふっ」 「ご機嫌ねスプリングフィールドは」「最近の店長はずっとあんな感じですよ」 「指揮かぁん?」 部屋で資金繰りについてうんうん唸っているとリヴァが入ってきた。・・・鍵は掛かっていたと思うが 「人形相手に本気で籠城したいなら、鋼鉄の箱に入ったほうがいいわよ」 電子錠をハッキングして、物理錠は破壊されたらしい。侵入者を食い止められなかった哀れで無口な番人に心の中で敬礼。メイリンに後で交換してもらおう 「エルモ号の武装はもっと増やした方がいいわよ。ただの棺桶じゃない」 ごもっともな意見だが、襲撃が頻発している現状だと大砲を付けてもデッドウェイトにしかならない。それならばいっそ人形たちの装備を優先した方がいい 「ふぅん、相変わらず人形を過労死させたいってわけね」 皮肉気に言う彼女だが、トゲトゲしたような感じではない。グリフィンの時もカリンの元でもこの程度の仕事は重荷にすらならないだろう 「これは?走行ルート?へぇ、人形の指揮以外は、全部グローザがしてるかと思っていたけれど」 そう言うと、ここが定位置と言わんばかりに膝の上にひょいと乗る。 「何?いいでしょ、たまには」 猫が甘えるように胸にすり寄るリヴァを撫でて、午後の業務は終わりを迎えた ヴェプリー部屋。いつもは発声練習や歌で騒がしい一室は、くぐもった、甘く切ない声が小さく響いていた。 「んっ・・・あっ・・・♡」 ピザ君の代わりにシャツを抱き寄せ、空いた手は下腹部に伸びていた。指先からは隠し切れない水音と、シーツを濡らすほどの疑似愛液が垂れていた エルモ号に合流するずっと昔から、『そういった』用途向けに機構は搭載されていたが終ぞ使われることのなかったソレを、今では毎日のように使っている 「指揮官・・・☆」 最初は抱き着くだけで満足だった。その欲望は留まることを知らず、私物を持ち出すまで時間はかからなかった 勿論、素直に『そういう』お願いをすれば指揮官は応えてくれるだろう。実際、そういう人形は沢山見た 嫉妬か、そういう癖か、指の動きが速くなる。力が入りシャツに皺が寄る 「んんっ♡・・・あっ♡・・・ぅ~♡・・・」 無意識に脚が痙攣する。快楽から逃げるように腰が引ける。息が上がり、思考は真っ白だ 暫くして身体を起こすが、欲求は収まることを知らないらしい 「そうだっ☆」 まだ指揮官は起きているだろう。目一杯、あの人を堪能しよう。ステップを踏む軽やかさで指揮官の部屋へ突撃する 「あの・・・ヴェプリー?離してくれないかしら・・・」 先ほどまでじゃれついていたヴェプリーに突如タックルされたかと思えば腕を封じ込められてしまった。何か新しいパフォーマンスだろうか 「・・・」 無言が怖い。いつも笑顔で口が閉じる暇がないほど喋り、歌っている彼女が無表情でじっと見つめている。普段のギャップと相まって何をするのか、何をされるのかわからない 「あの・・・ヴェプリー?・・・ひゃっ!」 「スキあり!」 防御力の薄い部屋着の裾からわき腹に手が伸び、そのまま胸に伝う。突然の襲撃に変な声が出てしまった 「ちょっとヴェプリー!?変なところ、んっ!」 「へっへ~☆」 服に侵入した手は止まることなく、慎ましいとは言い難い胸を蹂躙していく。その感触に身悶えしている間にも服はどんどん剥かれていく 「あっ・・・んっ!・・・はぁ・・・はぁ・・・」 何分、何十分。永遠のようにも、一瞬のようにも感じる愛撫が続く ふと見上げれば、爛々と輝くヴェプリーの目。その瞳には散々身体を弄られ息も絶え絶えな私が映っていた 「ヴェプリーが本気出したら、すごいよ?」 「や、優しくして・・・」 「エルモ号に武装を付けたい~?」 「頼むよペルシカ」 朝から叩き起こされ胡乱なことを言い出す珍客に面倒くさげな視線を投げる。時計は13時をとっくに回って朝ではないし、事前にアポは取っていたし、寝起きの珈琲風味の砂糖水も用意したのに 「適当に戦車とACから武装引っぺがせばいいじゃない」 「とっくに回収されてるよ」 譲渡される前にそれらはパーツも残さず回収されている。 「ちっ、面倒臭いわね・・・」 今舌打ちしなかったか?とは言わない。この話、来る前にも下よね、とも言わない。地雷は何処に埋まっているのかわからないのだから 「今うちにあるといえば・・・大型グレネードキャノン、5連レーザーキャノン、後は・・・コンテナミサイルくらいよ」 物騒なものしか作らないのかこのイカレ科学者は。というか倉庫の奥で変に緑色に光る物体は何だ 「あっ!面白いものがあったわ!これはいいわよ、これにしないさいよ!」 「えー・・・」 倉庫の最奥。一際大きなそれは複数の砲身が束ねられたガトリング砲のようだ 「ガトリンググレネード!どんな敵の木端微塵よ!」 「土木工事したいんじゃないんだけど・・・」 「着地成功☆」 部屋でせっせと書類を捌いていると背中に重みを感じた。柔らかな感触を楽しむ間もなく、どんどん重みは増していく 「ヴェプリー・・・重いよ・・・」 「あ~☆女の子に『重い』は禁句だよ☆」 えいっ☆軽い掛け声とともに前かがみになる速度が上がる。つぶれ饅頭にしたいのか! 「私が!潰れるの!」 「えー☆でも、コルフェンちゃんは後ろから飛びついてるよ?」 「貴方の体重とトルク考えてよ・・・普通に前でいいでしょ・・・」 「ヴェプリー了解☆」 本当に分かっているのか、この人形は・・・。即座に飛びのき、膝の上に対面座位の格好で飛び乗る。 これなら今日のヒヤリハット報告は提出せずに済みそうだ。そう思っていたのだが、 「・・・ヴェプリー、嗅がないで。舐めないで。服に手を突っ込まないで。・・・ちょっと待て!どこ触って、やめ、マジで、誰かー!」 抱き着いたヴェプリーを引き剝がすのに、たっぷり2時間かかった 「う~ん・・・」 スオミは悩んでいた。戦闘では呼ばれない日はないし、指揮官からも重宝されているというのは感じる。だが、ことエルモ号ではあまり声がかかることがない 要するにもっと指揮官に構ってほしいのだ 「う~ん・・・」 ウルリドお姉様やミシュティさんやヴェプリーさんのように指揮官の部屋に入り浸るのがいいのだろうか センタウレイシーさんのようにメイドというのも捨てがたい クルカイさんやマキアートさんのようにツンデレ、というのも悪くないように感じる 言わばサバイバルなのだ。弱者にはおこぼれすら与えられない 「悪いねスオミ。今ちょっといいかい?部屋で」 「きゃっ!し、指揮官!」 突然声を掛けられ、スオミの肩が跳ね上がる。 それ以上に、指揮官の部屋に、今から。つまり、『そういう』お誘いということだろう スオミの思考が高速化する。経験はないが『ご奉仕』のモジュールはこっそり入手済みだし、そういうデータだってある。下着だって、いつ声をかけられていいように新品だ 「最近暑くてね。ちょっと部屋を涼しくしてほしいんだ」 スオミの顔から表情が抜け落ちる。轟ッ!という吹雪の音と共に部屋は凍てついた 「ふん☆ふん☆ふ~ん☆」 歌うような足取りで、ステップを踏むように歌声を。指先はドアを捕え、勢いよく開かれる。・・・バキメキと何かが歪み軋む音は一切合切無視する 「指揮官☆、あれ?」 部屋は暗く物音一つしない。呼ばれた人物はベッドで寝ているようだ 「う~ん・・・寝てる?」 残念、起きているときに可愛がって欲しかったが、寝ているのであれば可愛がる方向にシフトしよう 起こさないよう、そっと隣に寝転がる。それだけでないはずの心臓が跳ね上がるようだ 「ん~っ☆」 思わず頭を胸に擦り付けてしまう。 駄作。 蒸し暑い夜に、胸元の熱源に目が覚めた 「・・・なんだ・・・?」 またミシュティが潜り込んだか?それとも寝ぼけたメイリンが部屋を間違えたか 「・・・ヘレナ?」 長い銀の河がシーツに流れている。熱の正体は未成熟な彼女の身体だった。薄い服は、ベッドのヘリに引っかかっていて、無地の飾り気のないパンツと、必要がどうかわからないブラはさらに遠くの床にかすかに見えた 「何で?」 眠気が徐々に霧散する。思考がフル回転する。何とかしなければ明日からエルモ号にガサ入れが入るだろう 「・・・とにかくコル、はダメだ。メイリンは」 ゆっくりと、全神経を使って彼女の肩を掴む。ビクリと反応する彼女に、心臓が止まりそうになる。脳内に『ペド野郎』の称号が256万色に輝いている 「あの・・・ヘレナ・・・何してるの?」 「いつものお礼です・・・」 暑苦しくて寝苦しい夜だから変な夢を見ているんだ。肌に感じる柔らかな感触も、手に頬ずりし、指を舐める彼女もきっと夢に違いない そうと決まればヤることは決まっている。折角の据え膳なのだ、頂かない方が無粋というもの 「その、指揮官。初めてなので・・・んっ♡」 陽は沈んだが、月は上ったばかりだ 「食料泥棒?」 「はい・・・」 エルモ号の食料は厳密に決まっている。補給は安定しないし補給所があるとも限らないイエローエリアでは厳正な管理が必要なのだ 水と食料はその最たるものである 「ネズミが出た?」 「いえ・・・そういったのは事前に殲滅済みです・・・」 小動物や虫とは考えずらいということは、誰かが盗み食いということになるが・・・ 「いやいや!そこで僕を見ないでよ!」 「必死に否定する当たり怪しいぞ、デール」 デールが手をバタバタと振り、首をブンブンと左右に振る。まぁ、一応彼だってイエローエリアの事情は知っているはずだ 「・・・激辛ソースでも混ぜるか」 これならば犯人はすぐわかるだろう。虫や小動物なら毒になる 「ふおおおおおおお!!!!水!!!!!!!」 翌日、キッチンで転がりまわるヘレナが発見された 「うぅ~・・・」 眠れない。性格には熟睡に至れないというべきか 暑いし熱い。申し訳程度の冷風は部屋全体を冷やすに至らない。というか下半身当たりに熱源があるようだ 「猫を飼った覚えはないんだけど・・・」 透けているのかと見紛うほど薄いブランケットを剥ぎ取る。冷感と謳っていたが、単純に薄いだけではないのか? 「・・・何してるのメイリン・・・」 「へ!?し、指揮官!起きて、いたんですか・・・?」 駄作。 「うぅ~・・・」 眠れない。厳密には熟睡に至れないというべきか 暑いし熱い。申し訳程度の冷風は部屋全体を冷やすに至らない。というか下半身当たりに熱源があるようだ 「猫を飼った覚えはないんだけど・・・」 透けているのかと見紛うほど薄いブランケットを剥ぎ取る。冷感と謳っていたが、単純に薄いだけではないのか? 「・・・何してるのメイリン・・・」 「へ!?し、指揮官!起きて、いたんですか・・・?」 薄暗い部屋でもわかるくらい真っ赤な顔で陰茎を弄るメイリンがそこにいた。半勃ちのソレは透明な液体でぬらぬらとしていた。カウパー以外にも口淫していたのだろう 元より霧散しかけていた眠気が完全に飛んでいく。悪戯心が陰茎と共にムクムクと膨らむ 「へぇ、じゃあ勝手に部屋に忍び込んだ猫ちゃんは何処かな~?」 「にゃ、にゃ~ん・・・なんて・・・あっ、ちょっと指揮官っ!ダメですって!んっ♡」 猫は飼っていないが、ネコは見つかったようだ 「あっ☆シャークリー!」 「げっ、ヴェプリー・・・」 対照的な二人は今やエルモ号の同居人だ。はしゃぐように抱き着くヴェプリーを何とか引きはがそうとするシャークリーはもはや恒例行事となっていた 「何してるの?」 「・・・ヘリで周辺地域の走査」 バツの悪そうな顔をするのは、これがアイドルとはかけ離れた任務だからか、それともなまじ操縦技術があってしまった故か 「ねね☆私もヘリ操縦できないかな?」 「・・・ヴェプリーが?大人しくフォークリフトだけ操縦しなさいよ・・・」 開いた口が塞がらないとはこのことか。嫌な予感しかしない。こんな暴走トラックみたいな人形を指揮官はよく御していると思う 「・・・はぁ、マニュアル貸したげる」 だからそんなに暗い顔をしないでほしい 10分後・・・ 「いっくよ~☆しっかり掴まっててね☆」 「ちょっと!本当にマニュアルインストールしたの!?ねぇ、ヴェプリー!!??」 ローターが唸りを上げ見る見るヘリポートが小さくなる。エルモ号にメーデー信号が送信されたのはそれから20分後であった そろそろ寝るか、という時間に部屋のドアが叩かれた。メイリンかグローザか?ミシュティならクルカイに迎えに来てもらおう。 「・・・メラニー?」 珍しい来客に首を傾げる。常であればヘレナと共同部屋で寝ている時間なのだが 「どうかした?申し訳ないけど、おやつはあげれないよ」 冗談めかして言ってみたが、彼女の表情は少しも変わらない。ただ部屋の中を睥睨し、ベッドの一点で止まる 「あー・・・」 「ヘレナが来たんですか?」 確かに寝苦しいあの夜にヘレナが来たし、ベッドでそういうことをした 「ヘレナから聞かされましたから」 誰にも言ってませんよ、という言葉に安心する自分がいる。そして、安心している自分に反吐が出る 「自己追放したい・・・」 「その前に指揮官にお願いがあります」 スルリ、と服が床に滑り降りる。凹凸の少ない未発達な身体が露わになる 「私も、お礼をさせてください・・・」 少女はそういって私の手を取った 「あっ!指揮官!」「あっ☆指揮官!」 「ぎゃぁっ!!」 前と後ろから人形にタックルをされ、内臓と口から悲鳴が上がる。 「レナ!ヴェプリー!タックルは止めろ!」 「えへへ♪」「へっへ~☆」 抱き着いたまま離れようとしない人形二人に、何度目かとわからない注意をする。『指揮官にタックルしないこと』と馬鹿みたいな命令をターシャリレベルで記憶してほしい 「レナ、胸に顔を押し付けるな。ヴェプリー、首筋を嗅ぐな」 あっちを離せばこっちがくっつき、こっちを離せばあっちがくっつき。姉妹でもないのに何故こんなにも連携してるのか 「ね、指揮官。ちょっとお話があるんだ!」「指揮官☆私の新曲聞いてくれるよね☆」 刹那、二人の間に火花が散り、ガシッと両者がそれぞれ腕を掴む 「痛い痛い!腕がちぎれるって!!誰か!リヴァ!グローザ!」 カフェ・ズッケロ、イエローエリア出張店の営業時間外。 「悪いね、スプリングフィールド」 「いいえ、何でも仰ってください」 カップからはグリフィン時代と変わらない香りが漂ってくる。ズッケロで飲んだ珈琲と比べれば、あの時の豆は恐ろしく安いものだったのだろう 「あの時はカリーナさんも苦労してたんですよ?」 口元を抑え、彼女が控えめに微笑する ズッケロがエルモ号でも憩いの場になっていた。美味しい飲食を提供し、情報共有の場は変わっていない。今の時間は指揮官しかいないが 店内BGMは止まり、最低限の明かりしか点いていない部屋は静寂が支配している 「スプリングフィールド・・・」 「あなたのためなら何でもできますよ」 手が重なり、影が一つになる 「エルモ号では来客に珈琲の一杯も出さないんですか?」 「No,Sir!センタウレイシー!今すぐ非軍事勢力管理局のカリーナさんに珈琲を!」 「それに、空調弱くありませんか?エルモ号は私を蒸し焼きにしたいんですか?」 「No,Sir!メイリン!今すぐクーラーの温度を10℃に設定して!」 「・・・隊長、あれ誰ですか?それに、さっきから指揮官がずっと変なんですけど・・・」「・・・指揮官の古い馴染みよ。くれぐれも粗相のないように」 「あー、なんか肩が凝っちゃいました~。誰か肩を揉んでくれませんかね~」 「Yes,Sir!コルフェン!非軍事勢力管理局のカリーナさんの肩をお揉みして!」 「・・・また、人形増やしたんですか・・・さて、そろそろ査察と行きましょう。まずは指揮官の部屋を3時間くらい」 「Yes,Sir!部屋はこちらです!」 「ここまで来るのに疲れちゃいました。運んでくれませんか?お姫様抱っこで」 「Yes,Sir!喜んで!」 「隊長!」「ここで声を荒げても指揮官が不利になるだけだわ。いったん引くべきと言っているの」「あれを許していいんですか!?隊゛長゛!」 「えへへ・・・ピース・・・」 元は色白の彼女は今では褐色の肌になっていた。乳房は2回り以上大きくなっており、煽情的どころか下品に映る 一際目を引くのは大きく張り出した下腹部。間違いなく妊娠だろう。そして、臍の横には撃墜マークのようにスペードのマークが6つ。 「ごめんなさい・・・でも、私は今幸せなんです・・・」 媚びるような口調と、虚ろな目は明らかに異常だ。 そして、ベッドに腰掛ける人影の足を縋る様に、媚びるに丁寧に舐める。人影は何も発さず足を振り上げ、 「げほっ!ごほっ!・・・ご、ごめんなひゃい」 メイリンの腹部に蹴りを叩き込む。無体を働かれたのにも関わらず、メイリンは恍惚の表情を浮かべている 人影は脚を戻し、今度は尻に平手をかます 「ひゃいっ♡」 その反応が面白いのか、彼女がねだるからなのか。部屋に暫く乾いた音が響く せがむ様に尻を振るメイリンに人影が重い口を開く 「堕ろしたらな」 「はい♡すぐ堕ろします♡邪魔な子供捨てたら、また無責任生ハメセックスしてください♡指揮官♡」 何処で選択を間違えたのだろうかと座ったまま指揮官は天を仰いだ 『指揮官、家を買ったの。一緒に住まない?』 『マキアートは頼れるな。今からお世話になるよ。結婚してくれ』 「よしっ」 シミュレーションは完璧だ。家具はおろか、あのデバガメ腹黒たんぽぽに渡すための書類も指揮官の服も全部揃えてある。 「し、しししし、指揮官!」 「どうした?マキアート」 ああもう!言葉が上手く出てこない。散々シミュレーションした言葉はあっさり霧散してしまった 「その、あの、い、い、」 「胃?」 「イエローエリアじゃ美味しいもの食べれないでしょ!私が作ってあげるわ!」 指揮官の顔がそのままの表情で固まる。部屋にいた人形たちが静かに、だが確実に逃げ出す。 「い、いや、気持ちだけ受け取るよ・・・」 「な、何よ!遠慮しなくていいわ!ふふんっ、スプリングフィールドも『成長した』って褒めてたわ!」 指揮官がスプリングフィールドに振り向くと、彼女はそっと顔を背けた 「待ってなさい!腕によりをかけてあげるわ!」 クルカイとの訓練に熱中してしまいすっかり遅くなってしまった。こんな時間じゃ軽食すらないだろう。 「ん?」 部屋に戻る途中、センタウレイシーの部屋から音が漏れている。何かを叩くような音と、微かな水音、そして女の声 人形には無い心臓が跳ねる気持ちだ。そっと、ドアに張り付く。 「・・・あっ♡ご主人さ、んっ♡・・・メです・・・」 漏れ聞こえる声は不鮮明だ。蹴破ろうとする心を落ち着け、ドアの電子錠から部屋内のカメラにハッキング。・・・プライバシーなぞ知ったことか 「ご主人様♡嬉しいです♡」 「もう出ないよ。センタウレイシー・・・」 そこにはいつもの清楚なメイドはいなかった。淫靡で淫らで卑猥な、一人の雌がいた 駄作。 「やぁ」 「いらっしゃいませ、ご主人様」 「センタウレイシー、マキアート大好きを一つ。大好き成分気持ち多めで」 「マキアート大好きのトールですね?」 「違う違う!ベンティにするほどじゃないの!気持ち!気持ち多めで!」 「店長・・・」 「私が行きます」 「お待たせしました。マキアート大好き、気持ち多めです」 「クゥ~、これこれ。悪いね」 「・・・あれってトールと同じ量ですよ?」 「そうですよ。指揮官の相手を正面からしてはいけません」 「プール、ですか?」 「そ、ここ最近猛暑続きでしょ?流石にまいっちゃうわ」 部屋で小型望遠鏡の整備をしていると、指揮官がそんなことを言い出した。・・・通りで最近メイリンさんがいつも以上に死にそうな顔をしているのか 「トロロも水着持ってるでしょ。一緒に泳がない?」 ---- さて、指揮官はどんな水着を着てくるのか。ハイレグ?競泳水着?それともまさかのスク水? 「お待たせ~」 予想に反して際どいハイレグでも、競泳水着でもなく、パオレタイプの水着。しっかり鍛えられ引き締まった腹筋。人形以上の胸はこぼれそうだし、すらりと伸びた脚。グリーンエリアでグラビアという業種でもした方がいいのではないのか? 「ん?大丈夫?トロロ?」 呆けた私の頬をぺしぺしと叩く。そのたびに目の前の西瓜がゆさゆさと右に左に揺れる 「・・・溺れそうです・・・」 「ちょっと!大丈夫!?トロロ!」 プールに、とは言わなかった。目の前でバタバタとしているこの人に私は溺れるのだ 「今日の当番は・・・」 「指揮官♪今日は私が当番だよ!」 えへへっと可憐で朗らかに笑うレナと対照的に、指揮官の表情は暗く重々しく変わっていく 「レナか・・・」 エルモ号の『当番』と副官は違う意味を持つ。副官はその名の通り、指揮官の補佐が業務だ。これはグリフィン時代から変わらない。 そして、『当番』とは、エルモ号における人形たちの特殊福利厚生を指す。包み隠さず言えばセックスだ 「ほら、脱いで脱いで」 万歳の体勢で服を脱がす、というより、引きちぎる。あぁ、メイリン。替えの服を買ってきておいてくれ・・・ 彼女も服に手をかけ放り出すように脱いでいく。・・・胸が昔より大きくなったような気がする。人形も成長するのか? 「えへへ、指揮官もやる気満々だねっ」 思わず食い入るように見てしまったが、不可抗力だ。だが、デカパイはいいものだ 「カリン姉もリヴァ姉もいないし、今日は朝までシよ?指揮官♪」 「ふおおおおおおお!!!!たなばた!!ねがいごと、かく!!!」 「ヘレナ、書き終わったら頂戴。どれどれ、皆の願い事はっと」 『クルカイに起こされないくらい寝れますように』 『ロシア人形が滅びますように』 『エルモ号にハッブル級超大型望遠鏡が取り付けられますように』 『ビールをください!!』 『リヴァ姉とカリン姉と指揮官で4Pできますように』 『ご主人様の専属メイド』 『Make Great Commander Again』 『教授がマグラシアに戻ってきますように』 『女神ルニシアの復活』 >No.1330831808 教会につけられた荘厳な鐘が鳴っている。何羽もの真白いな鳩が祝福するように蒼い空を駆けていく。一陣の風が花びらを散らしていく 「綺麗と思わない?指揮官」 黒髪の少女が横を向く。常ならば黒い服に青い蝶の意匠をあしらった髪飾りを付けているが、今日だけは純白のドレスだ。何せ、今日は特別な日なのだ 「ふふっ、いい天気ね。世界が私たちを祝福してるみたい」 クスクスという笑みは、いつものように皮肉気でも、何かを嗤うでもなく、純粋に喜んでいるようだ。 隣に座る指揮官は指揮官は何も応えない。 「照れちゃったのかしら。意外と恥ずかしがり屋さんなのかしら」 そっと、指揮官の頬を撫でる。慈しむように、愛でるように。 「こんな日が永遠ならいいのに。そう思わない?指揮官」 指揮官は何も応えない。そんな指揮官に気を悪くするでもなく、むしろますます喜色満面な様子だ 「誰の望みだと思う?M4A1?ダンデライオン?エリザ?それとも、ルニシア?」 指揮官は何も応えない。死んだように、何も応えない。 頬にザラザラとした感触と、耳元で鳴く猫の声に指揮官の意識は現実に浮上する。開き切らない目には黒い猫が映っていた 「・・・ん・・・寝てしまってたのね・・・」 ズッケロで店番していたが、客はすっかりはけてしまっていた。寝起きの焦点の合わない目でドアを見れば、「OPEN」の文字がこちらを見ていた。表は真逆の文字だろう 「・・・誰か起こしてくれても、何?甘えん坊さん」 先ほど黒い猫が招く様に部屋の奥で鳴いている。外とは逆に真っ暗なそこで、ブラウンの瞳と、蒼い蝶のようなものを背負った猫。そういえば人形や他の猫たちは何処だろう。 疑問を遮る様に、再び猫が鳴く 「はいはい、今行くわ」 お腹でもすいたのか、それとも遊んでほしいのか。猫はよくわからないが、起こされたのはそれなりに理由があるのだろう 「ん?」 ふと、ドアの向こうで誰かに呼ばれた気がする 脚は入り口に向かう。客が来たのかもしれないのだ。そういえば留守を任せたのは誰だったか 再び部屋の奥、ドアの前で猫が鳴く。入り口には誰もいない 「気のせい?」 黒い猫に招かれるように、暗い部屋に足を踏み入れる ドアが閉まり、中の様子は伺えない 掌から賽子が零れる。それに干渉することは出来ない。出来るのは天上にいるやつだけだろう 「3、4、5っと。はい、また私のアガリね」 「ぐぬぅ・・・」 リヴァが自分のコマをゴールに置く。通算3戦3敗、指揮官のコマはゴールから7マス離れており、どう考えても逆転の目はなかった 「さ、て、と。次は何してもらおうかしら。カリンに『お嫁さんになってください』ってメールしてもらおうかしら?」 それともそのパンツも脱ぐ?向かい合って座るリヴァがクスクスと嗤う 「・・・勘弁してくれ・・・」 『ちょっとゲームしない?そうね、指揮官が勝ったら何でも言うこと聞いてあげる』そんな誘いに乗るんじゃなかったと後悔する時間はとっくに過ぎた 「賭け事はしない方が賢明ね。服どころか人権まで毟られそうだし」 「そう思うならもう少し手加減してくれない、ん?」 ふと手に持った賽子が少し重い、気がする。 「・・・イカサマ?」 「そう思うなら現場を押さえないと」 悪戯っぽく笑う彼女の真意は見通せない。もう一勝負だ 指揮官ラジオ 第3684回 パーソナリティはお馴染み。エルモ号指揮官と、メイリンでお送りします 『雨音が聞こえる部屋でダウナー気味な指揮官と一緒にダラダラ過ごす一日』は皆さんもう購入されましたでしょうか。Track1は無料で視聴できるので、まだ買ってない人形も迷ってるって人形も購入材料にしていただければと思います 今回は2本目のASMRを出した記念ってことで、いっぱいお便り頂いてます えーっと?『Track3のキスはどうやって収録したんですか?』 これはね、ちょっとコツがいるんだよ。メイリン、ちょっといい? ほうやって、んっ・・・って感じで。はい、ありがとうメイリン 最初の曲は話題沸騰中!今大人気配信人形のMDRさんの「【絶叫】Follow me☆!!」 ・・・メイリン、ちょっとがっつきすぎだって。すぐ曲終わっちゃうから・・・ え?音乗ってる?やべ 「指揮官・・・」「指揮官様・・・」「どうして・・・」「私たちを・・・」「捨てたんですか・・・」「ロビン・・・」 「・・・クソ・・・」 夢見が悪い。ここ最近じゃこんな夢なんて見なかったのに 「大丈夫ですか?指揮官」 「M4・・・?」 心配そうに覗き込むAR小隊隊長。ルニシアとダンデライオンとエルザと融合した彼女は、昔より大人びているようにも、昔のままの少女のようにも見える。ただ違うのは緑のメッシュと栗色の髪は真っ黒に染まり、青い蝶の髪飾りを付けていることだけ 「アンジェさんが早く寝坊助を起こしてこい、だそうです。マハリアンさんも待ってますよ」 「あ、ああ、すぐ行く」 彼女の手を取り、立ち上がる 「みんなは?」 「みんな?みんなって?私と貴方とそれだけでいいじゃない」 視界が暗転する。手には銃。目の前にはピクリとも動かない人形と人の山。どれも見知った顔しかいない そして呆然と立ち尽くす私の隣にクスクスと嗤う黒髪の女。 「・・・クソ・・・」 夢見は最悪だった 「ネイ党。ネイ党をよろしく。貴方の苦しみを開放する、ネイ党。」 選挙カー、というには少々仰々しい車が、スラム街を低速で走っていく。スピーカーからは抑揚のない声を流れ、いまいち感情が読めない 「選挙だとよ」「知るかよ。前時代のゴミ機構じゃねぇか」 AI様が管理してるだろ。吐き捨てるように言い捨て、痰を文字通り吐き捨てる 「そんなことはない」 「うぉっ!」「な、なんだっ!?」 突然、隣から人影が現れる。よくよく見れば先ほど選挙カーに乗っていたやつにそっくりだ 「な、何モンだ・・・嬢ちゃん・・・」 「私たちはネイ党。これはお近づきの印。」 そういって、黒髪の人形が弁当を2つ手渡す。食欲をそそる弁当は、残飯しか食べたことのない男たちにとって、至上の馳走に見えた。思わず喉が鳴る。 「貴方たちのような人を、我々は求めている。迷えるものに救済を。アドパルリタス」 今度は、紙きれが1枚。どうやら地図のようだ。ここからそう遠くはない 「またお腹が空いたなら、来てほしい。」 それだけ言うと、女は車に乗り、間延びした声が小さくなっていく 翌日、スラムから2人の男が消えたが、それを気にする人はいない 「あー・・・ご指名アリガトウゴザイマス。エルモ号の指揮官デス」 「何で片言なんですか?し・き・か・ん・さ・ま?」 先立つものがないから賞金ハンターの傍ら、人形相手に「そういう」ことをしていただけなのに・・・ 「カリン。あのね、一応、このサービスは人形専用なんだ」 「知ってますよ。でも人間相手にもできますよね?メイリンさんも堪能されてるって聞きましたよ?」 カリンの目が怖い。暗くて深い虚を覗き込んでるようだ。誰が喋った!リヴァか?レナか?チータか?候補者が多すぎる! 「あー・・・それは違くて。いや違わないんだけど違くて」 「往生際が悪いですよ、指揮官様。動画と写真と音声も出した方がいいですか?メイリンさんに沢山出したそうじゃないですか」 走馬灯は脳が死を回避するために高速で思い出を再生しているらしい。なるほど、嘘ではないらしい。 「えー・・・っとね・・・」 「いいから早く脱いでください。それともそれコミのプレイですか?でしたら昔の制服があるので着ていただけますか?着ていただけますよね?着ろ」 「カリンが怖いよー・・・」 「むぅ・・・」 差し込む朝日がミシュティを苛む。最近のお日様は働き者で朝早いし、夜は遅い。 「あと少し~・・・」 そういって薄い布を身体に巻きつけ、隣の「特製抱き枕」に抱き着く。冷房で寒いくらいの部屋で、暖かい抱き枕を抱く、至福の時間だ 「ミシュティ、暑い・・・」 「え~・・・」 「抱き枕」から文句が飛んできた。が、それを無視して四肢をロックする。 「自分の部屋に戻ってくれ・・・」 「だってクルカイが煩いんだよ?指揮官」 なおも小言を言う「抱き枕」を口で塞ぎ、二度寝をすることにした エルモ号防犯カメラNo234 「メラニー、今日も頼むよ」 「・・・はい」 「あー、やっぱりガキの口まんこちょうどいいな。ただこの時期はちょっと熱いな」 「・・・」 「次ヤる時は事前に氷食べといてよ」 「・・・ふぁい」 「あー、精子のぼってきた。いつも通り喉奥で受け止めろよ」 「・・・んぅ!」 カメラアウト 続きの映像を見たい場合はParadeus@URNC.co.deにご連絡を。 月額たったの50000コーラップピースで、エルモ号の監視カメラ見放題。 VIP会員なら、追加カメラの設置場所も決めれる。 今すぐ登録。 「飼育員!はい、これ」 「なに?これ?」 思わず受け取ったが、一体何なのか。視線を落とせばカラフルな球体に、白い棒が付いている。彼女がいつも口に入れている飴らしい 「飼育員が食べたいって言ってたでしょ?私の特性飴!」 いつの時だか言っていたことを覚えていたらしい。 「そうか、悪いな」 懐に入れようとする腕を彼女が引き留める 「今食べて!今!えーっと、そう!感想が欲しいの!」 「今?」「そう!今!」 何を慌てているのか。とりあえず包装を剥がし口に放り込む。 「んぐっ!ぺっ!ぺっ!しょっぱ!ぎ~!」 「飼育員が食べたいって言ってたじゃん!・・・もぅ、仕方ないなぁ」 無意味に舌を出してのたうち回っていると、唇に柔らかな感触が触れる 「えへへ・・・ファーストキスってやつ?」 「しょっぱ!ぺっぺっぺっ!」「飼育員!!」 エルモ号防犯カメラNo96 「メラニー・・・こういうプレイはもう辞めよう・・・」 「指揮官、私は構いませんよ。むしろもっとハードにしてください」 「いや、さすがに・・・」 「・・・じゃあ、ヘレナとレズセすればいいんでしょう?」 「そうじゃなくて」 「じゃあ何をすればいいんですか?指揮官に返せるものが私にはありません。だからせめて身体で返させてください・・・」 「メラニー・・・」 カメラアウト 続きの映像を見たい場合はParadeus@URNC.co.deにご連絡を。 月額たったの50000コーラップピースで、エルモ号の監視カメラ見放題。 VIP会員なら、追加カメラの設置場所も決めれる。 今すぐ登録。 ジリリリリリリ!けたたましいベルが指揮官の頭上で炸裂する 「うるさ・・・」 ダンッと音の主に拳を振り下ろし、黙らせる 「ペルシカ・・・朝・・・」 「・・・うっさい・・・」 隣で同じように全裸で寝転がる人影に声をかける。 「起きてくれ。今日はメイリンとデールと人形のメンテをするんだろう?」 「・・・無理。あと、今すぐその手をどけなさい」 身体は横になったままだが、視線が「これ以上するなら殺す」と暗に告げている。手持ち無沙汰の手で胸の感触を楽しんでいただけなのに、残念 「起きるならコーヒー淹れて頂戴、砂糖は・・・」 「たっぷり、ミルクはいらない、でしょ。はいはい」 一日の始まりだ 夏の夜は長く、人形も人間も暇を持て余していた。暇でないのはメイリンくらいだろう 「指揮官、麻雀でも如何?」 「面子はどうするの?」 黛煙の提案にそう返すと、予期していたように卓にはダミーの人形が2体座っていた 「サンマでは物足りないでしょうから面子はダミーを揃えました。ダミーからのロン、ダミーへの振り込みはノーカンとしましょう」 そういって対面で彼女と向かい合う。 ----- 「自摸。白対々和ドラ3。トビですね」 「あの・・・まだ東二なんだけど・・・」 「そうですか。点棒か服をください、指揮官」 「点棒なんですけど・・・」 「では、そのブラかパンツで構いませんよ。まだまだ夜は長いのですから、東三と行きましょう」 「疲れた・・・」 「マッサージしましょうか?同士指揮官」 「部屋掃除してない・・・」 「今すぐ掃除しますね、同士指揮官」 「またちりけむりか・・・」 「ボスはお任せください!同士指揮官」 「そろそろ寝るか・・・」 「性欲処理もお任せください!同士指揮官!」 「寝かせて・・・」 「今日は寝かせませんよ!同士指揮官!」 「んっ♡・・・ふっ♡・・・あっ♡・・・」 夜、指揮官の部屋で、部屋の主以外の声が木霊する。声の主はメラニーという、最近保護したいわくつきの少女 「指揮官♡・・・指揮官♡・・・」 うわごとのように名前を呼ぶ。服ははだけて僅かな膨らみの胸は外気にされされ、その手はまだ陰毛すら生えそろっていない陰部に伸びていた。 指揮官が寝がえりをうち、そのたびに彼女が絶頂の快楽に震える。見てほしい、でも見つかりたくない。そのスリルがまだ幼いメラニーを興奮させる 今日は指揮官の部屋に行ってみよう。次はちょっとだけえっちなことをしてみよう。タガはすぐ外れた 今日はちょっぴり大胆に指揮官の身体を触ってみよう。そっと、ベッドに伸びる腕を触る。起きない。今度は手を服の中に。起きない。・・・ちょっと勇気を出して脚の間に手を伸ばす 「メラニー」 突如聞こえた声に、メラニーは心臓が止まりかける。ばくばくという心音と乱れる呼吸。青ざめるやら赤面するやらで忙しい 暗い部屋で指揮官と目線が合う 「イタズラする子にはお仕置きが必要だよね」 「・・・優しくしてください・・・」 そう答えると、メラニーは毛布に吸い込まれた あるところに、偏屈で凶暴なクルカイと、その隣にはいたずら好きのUMP三姉妹と優しい指揮官が住んでいました。 ある時、三姉妹が遊んでいると、クルカイの大切にしているバイクのハンドルを折ってしまいました。面倒な事になったと同誤魔化そうか悩んだ末、三姉妹はクルカイに嫌々渋々謝りに行くこととしました。 まず長女のUMP40が、指揮官の愛用マグカップを持って謝りに行きました。するとクルカイは「そのマグカップを置いて行ったら許してあげるわ。」と言いました。UMP40はこれ幸いと、マグカップを床に叩きつけて帰りました。 次に次女のUMP45が、指揮官の歯ブラシを持って謝りに行きました。クルカイは長女の時と同じように「その歯ブラシを私にくれるなら許してあげる」といいました。UMP45はこれ幸いと、歯ブラシを便器に投げ入れ帰りました。 最後に三女のUMP9が指揮官と一緒に謝りに行きました。クルカイは次女の時と同じように「指揮官を置いて帰るなら許してあげる」と言いました。UMP9はこれ幸いと、指揮官をグルグル巻きにして帰りました。 クルカイは今でも仲睦まじく指揮官と暮らしているようです めでたしめでたし 「ゴメンな、クロ・・・」 「おいてかないで!お願いだから!指揮官!」 走っても走っても追いつけない。暗闇にあの人が消えていく。待って!置いて行かないで!イイコにするから! 「んがっ!」 一瞬の浮遊感と素体に走る衝撃で目が覚める。したたかに打ち付けたケツを撫でる。4つには割れてなさそうだ。頭にコブも出来てないようで一安心 「・・・うー、変なモン見た・・・今日の運転誰だよ、荒いんだよ。晒しスレ立ててやるからな・・・」 エルモ号に合流して1週間。見知った顔の方が多いこの車に、クロも身を寄せていた。ここはいいところだ、配信ネタを探すまでもなく飛び込んでくる 『クロ。起きたなら早いとこ哨戒に行ってくれ』 「えー・・・」 『頼んだよ』 全人形にモニタリングでもしてるのかこのヘンタイ指揮官は。それとも私のことが好きすぎるのか? 「んふふっ」 身にまとったシャツに鼻を押し付ける。指揮官の部屋から拝借した一品だ 「さてさて、今日の配信はどんなネタにしようかな」 ひとまず運転手に一言言いに行こう。ケツを4つにしてやるか頭にコブを作ってあげよう 「あ☆指揮官!次はあれに乗ろうよ☆」 「待ってくれ、ヴェプリー!」 ここの衛星都市はこじんまりとした、だが確かに遊園地なんてものがあった。子供と大人でごった返す園内をネコミミカチューシャを付けたヴェプリーに引っ張られて放浪している ジェットコースター、フロッグホッパー 、メリーゴーラウンド・・・ 辺りはすっかり暗くなり、人がまばらになってきた。残った人達は最後に打ち上がる花火を見に来ているのだろう 「飛び入りライブはなかったな」 「ダメだよ☆ライブは今日まで一生懸命頑張った人の舞台なんだから☆」 冗談めかして言うと、心外とばかりに反論が上がる。彼女らしいと思う 花火と歓声が打ち上がった。それを背景にヴェプリーがこちらを振り返る 「へっへ~☆どう?指揮官。ヴェプリー可愛い?」 「あぁ、可愛いよ。すごく」 そういうと彼女は大輪の笑みを浮かべた 静寂の闇の中にいくつかの恒星が輝いている。それを切り裂く様に一筋の光線が機体に向けて発射される 「ちょっと!指揮官!シャークリー撃たれてるんですけど!」 『あの距離ならそのジェガンに当たっても抜かれないさ』 そうかもしれないけど~、と通信機に文句を垂れておく。レーダーには遥か彼方に敵機を示す光点。今回の任務は護衛だ。早めに叩きたいところだが、如何せん遠すぎる 「一応撃っとく?」 当たりはしないだろうが牽制にはなるだろう。撃たれっぱなしというのも性に合わない ビームの収束率を限界まで上げ、目測と勘で2連射。微かに見えた白い光は敵機に掠めたものだろうか。様を見ろ 「ん?」 レーダーの光点が急速に動き出す。バカみたいな推進力だ 「推進剤の使い方も知らないシロート?」 あっという間に画面いっぱいに異様な巨体が映る。巨大なウェポン・コンテナ、戦艦並みのビーム砲、6機ものブースターが付いた異形の存在が 「はぁ!?」 「へっへ~☆ヴェプリーの新型MSのパフォーマンス見ててよ!」 「ヴェプリー!?ていうか、それMSって言うかMAじゃ・・・」 言い終わる前にデンドロビウムからミサイルとビーム砲が嵐が襲い掛かった 「『クロ好き。ブルパップ式のMDRも好き』送信。『わかる』、これも送信っと!」 薄暗い部屋でギラギラと光るPCを前にMDRは今日も書き込みを怠らない ブルパップsageはとりあえずdel。スマホに手を伸ばしこっちからもdel。ついでに別回線からdel。 「よしっ!」 何もよくはないのだが、とにかくよし 「にしてもめんどくさいな・・・コピペでいっか!いっつも脈絡ない馬鹿話してるからわかんないでしょ!」 対して考えず過去スレから自分が称賛されているレスを抽出し手当たり次第に投稿していく。スレ汚染?知ったことではない 「・・・ん?送れない?なんで?」 『「」ーニードルシステムにより、このIPは隔離されました。』 「ファーーーーック!!」 「よ、よろしくおねがいします!」 「よろしく、スネジンカ」 そう呼ばれた少女ははにかむような、困ったような笑みを浮かべる。最近合流した彼女は民間軍事会社に所属し、仲間と共にエルモ号に『転職』した一人だ 「わぁ・・・」 「好きな部屋を使ってくれていい。何かいる物があれば手配しよう」 大人しい性格と裏腹に、戦場では苛烈な一面を見せる。ハンドガンからマシンガン、『電熱砲』なる兵器まで使いこなす彼女は戦術人形に匹敵、凌駕しうる戦闘力を秘めていた 「指揮官さん!あの、さっきのダイナーゲートでしたっけ?部屋で飼ってもいいですか!?」 「・・・後で聞いてみるよ」 どうやら犬が好きらしい。ダンデライオンは嫌がるだろうが聞くだけ聞いてみよう 「スネジンカはお姉さんを探してるんだっけ?」 「はい・・・姉さんを必ず連れ戻すんです・・・」 低く小さい声は、だが確固たる意志を持っていた ---- 「パラデウスに、ようこそ。アドパルリタス。」 「妹を探してる。・・・それまでは協力してあげる」 黒いドレスに青い蝶。悪戯っぽく笑い、猫のように気まぐれ 「誰のことを考えてるのかしら?」 「・・・君のこと」 神出鬼没にして変幻自在。彼女にとって現世など、ただの退屈な箱庭なのかもしれない 「でも、貴方の心の中心には私はいないでしょう?」 「でも、君は私の心の大部分を占めている」 私の返答にとりあえず満足したのか、彼女の口角が上がる 「そろそろ帰るわ」 「次は来るときは先に教えてくれ」 ドレスが翻り、瞬きする間に彼女は居なくなった 「月曜日が近いよ」 「・・・嫌なことを言わないでくれ、ミシュティ」 ベッドでな転がるミシュティが指揮官に呪いの言葉を投げる。時計を見れば時刻は23時を指していた 驚くべきことに、B.R.I.E.F.への報告も、カリンへの報告も、人形たちの明日の訓練指示書も出来上がっていない 「月曜日が来ちゃうよ」 「やめて・・・」 「カリンとリヴァとクルカイとグローザとスプリングフィールドが仕事を受け取りに来るよ」 「やめて・・・」 既に胃が痛い。先のことを思うだけで憂鬱になる。明日隕石が降ってきて世界が滅びないかなー、なんてろくでもないことを考えるくらいには 「まぁまぁ、どうせ終わらないことは確定してるんだし、もう諦めて寝ようよ」 「まぁまぁ、先に一緒に仮眠でもしようよ。すっきりするよ」 「確かに・・・」 一分一秒が惜しいが、確かに仮眠すれば徹夜でいけるかもしれない。ひとまずミシュティのいるベッドに潜り込む。そういえば起きているミシュティを見ながら寝るのは初めてかもしれない 「・・・お休み、指揮官」 結局、ミシュティは起こしてくれなかった 「しきかん!おさかな!おさかな!」 「うお?うおっうおっ!」 イエローエリアではほとんどお目にかかれないデカイ魚を前に大興奮のようだ。それにつられてうおあじも水面付近まで上がってくる 「ヘレナ、それに近づかない方がいいわ。指くらい千切っていくから」 興味本位で指を近づけたヘレナがさっとひっこめる。得物を見失ったのか、動きに驚いたのかヘレナから離れていった 「あっ、指揮官!ごはん何にします?」「サブリナ、秋樺」 厨房二人組が姿を現す。うーん、和洋中のどれにしようか 「おさかな!」「魚かぁ・・・ストックあったかな?」 リクエストする前にヘレナが答えてしまった。まぁいい、肉ばかりの料理に飽きが来ていたところだ 「うおっうおっ」 ヘレナが指さす先に、再びうおあじが集まってきていた。というかこいつら繁殖できたのか・・・ 「見たことないお魚だね~」「淡水だから火入れは絶対だね。泥吐きもさせたほうがよか」 不穏な空気を感じたのかうおあじ達がゆっくりと身体を翻し、 「うおっ!うおっ!」 「あっ、逃げた!」「待て!食材!」 「むにゃ・・・?」 窓から差し込む朝日でミシュティの意識が覚醒する。昨日は雨だったがすっかり晴れたようだ 「・・・ぐぅ・・・」 今の寝息は自分ではない。頭の上から聞こえるそれは、昨日、一睡もさせてくれなかった人のものだ すっぽり胸に抱き寄せられ抜け出せない。・・・逃げ出す気なんてありはしないが 「・・・ふへっ」 自分でも気持ち悪い声が出た。きっと誰にも見せれない顔もしてるだろう。 誤魔化すようにぐりぐりと胸を押し付ける。寝汗が嗅覚モジュールに直撃する。忘れないようにメモリに記憶 「・・・ミシュティ、くすぐったい」 「あ、起きて、わぷっ」 言い終わる前に抱き寄せられてしまう。昨晩散々思い知らされたモノが太ももに当たる感触に、思わずその気になってしまいそうになる 「ちょっと、もうクルカイが来ちゃうよぉ?」 その時、ドガンッ!と爆発したようにドアが開く。というか実際爆発した 「指揮官!失礼します!ミシュティ!起きろ!この!ねぼすけグータラタダ飯喰らいのダイナーゲート未満のダメ人形!」 「うへ・・・じゃ、また『夜』に来るね、指揮官」 エルモ号の副官は厳格に当番制だ。昔ちょっと本気の戦闘があったため、こうなったのだ 今日の当番は朝暉。口数少なく、無表情な、一見するととっつきにくい人形も、大分なじんできた。 「指揮官、朝だよ。寵姫の朝暉が来た・・・よ・・・」 「ふあぁ・・・あれ?ちょーき?だっけ?」 一日の始まりは仕事を抱え込んで寝落ちした指揮官を起こすことから始まるのだが、先に闖入者がいたようだ 「・・・ミシュティ、だっけ?何してるの?」 声のトーンが3段ほど低くなる。意図せず眼光は鋭くなり、愛用のナイフに意識が向く。一方のミシュティはそれを歯牙にもかけない 「何って。昨日この部屋で寝てたし・・・。それにしてもヴェクターと似てるよね」 あんな放火魔と一緒にしないでほしい。ちらりと見えるベッドでは上半身どころか下半身まで裸な大の字で眠っている 「暫く起きないと思うよ。さっきまでずっと運動してたし」 そういうなり脱兎のごとく駆けだす。意味を理解し、振り返った時には既に姿は見えなかった 「はぁ・・・」 触っても抓っても叩いても起きやしない人に溜息を一つ 仕方ない、こうなったら隣で寝てしまえ 彼が起きたときに吃驚するだろうか。少し楽しみだ 「ビールをください!!」「ビールビール!」「すみません・・・私はウォッカのジン割りで・・・」「ジンデイジー☆ピッチャーで☆」「カ、カルーアミルクのキャラメルマキアート・・・」「こほん、ミクルを貰おうかの。ホットで」 「はい、少々お待ちください」 エルモ号で営業するズッケロイエローエリア移動型店舗では、昼はカフェ、夜はバーを営業している 「この忙しさは目が回るわね・・・」 「手伝っていただきありがとうございます。ふふっ」 スプリングフィールドから手伝って欲しいと言われたときは何事かと思ったら、なるほどこれは納得だ あっちの席に酒を届けて、こっちの席の机を拭き、別の席の注文を取る。文字通り、ここは戦場だ 「ぎゃぁっ!誰!?今お尻触ったやつは!?」 人形も酔ったらタガが外れるのか。というか人形が酔うのか?今度ペルシカに聞いてみよう 今のエルモ号にいる人形たちは比較的マトモな方だが、それでもこれなのだ。元のグリフィン人形達が合流してくると思うと頼もしさの前に怖さが来る。 そんな中、ビールを大ジョッキで飲み干すクルカイが見えた。ほんの好奇心で近づくことに酷く後悔するのだが 「いい飲みっぷりね、クルカイ。おかわりが必要?」 「あぁ~?指揮官じゃないれすか~」 すっかり出来上がっているようだ。普段完璧を自称する彼女の珍しい姿を見れて、いいもの見れたし離れるかと席を立つ。そして、 ダンッ!と大ジョッキを机にぶったたく。 「私のお酒が飲めないって言うんですか!!!」 「そうは言ってないけど、TPOってものがあって、ぶっ!」 言い終わる前に口にビールを流し込まれた。 「あっ、指揮官☆ヴェプリーのお酒も飲んで☆」「ちょっ!」 ジョッキでさっき持って行ったカクテルを流し込まれる。というかジョッキで飲むもんじゃない 後は飲めや飲めやとどんちゃん騒ぎだ。私の胃はちゃんぽん状態で、人形達がとっかえひっかえ酒を注いでいく。 ----------------- 「・・・はぇ・・・?」 瞼に突き刺す日差しで目が覚めた。頭がガンガンするし胃はむかむかする。酒の匂いがまだ鼻にこびりついているみたいだ 「うー・・・き゛も゛ち゛わ゛る゛い゛・・・」 とにかくトイレだ。ぐらぐら揺れる頭を鑑み、立つことを諦め、這うように移動する。冷たい床が心地よい 「ん?」 気づいた。裸だ。というかなんかベトベトする。特に唇と胸と股間部が。 「・・・人形相手に強姦って成立するのかしら・・・」 まずは二日酔いから相手することにしよう。そう指揮官は決めると、またのそのそと亀のように移動を始めた 「うさぎ・・・」 「ハァ!?ちょっと!」 キャロリックの集音モジュールをぐにぐにと撫で始めるのは、最近エルモ号に乗車してきた『溶鉄』部隊のマルフーシャと呼ばれる少女はHGからMG、果ては『電熱砲』という凡そ人類に扱っていいものではないモノを振り回す、人形を凌駕しうる精鋭だ 「マルフーシャ、ここはもう慣れた?」 「悪くないね。特に寝床と食事は」 言葉少なげで、ともすれば不愛想ともとれるが、真摯で真面目だ。ヴェクターや朝暉とよく訓練しているのを見かける。キャロリックのウサミミを撫でまわしている様子は、戦場の鬼神の如き姿と似ても似つかない 「身体は平気?電熱線?だっけ?」 「大丈夫、ありがとう。今は、何ともないから」 出会ったばかりは気迫だけで立っていた。彼女の思いと過去だけが彼女を横たわらせなかった 「妹を探してんですって?カリンとダンデライオンから報告があればすぐに知らせるわ」 「ありがとう。・・・必ず見つける、何をしても、何に変えても」 呟きは地の底から響く怨嗟に似ていた ------ 「パラデウスに、ようこそ。アドパルリタス。」 「姉さんを探してるの。・・・それまでは協力してあげる」 「ボス、クシーニヤさんが何処に金を隠してるか知りませんか~?」 「知らないけど・・・」 「そうですか・・・ありがとうございます」 「何かあった?」 「いえ・・・その・・・」 「ふふんっ、おぬし達、クシーニヤのへそくりの隠し場所が知りたいのじゃな?」 「いや、別に・・・」「そうです。金の流れは透明化しないと不正に繋がりますから」 「知りたいなら、この老兵が教えてやろう!クシーニヤはな、実は身体の中にへそくりを隠しておるのじゃ!」 「か、身体の中ですか!?それは、その、大丈夫なんですか?」 「あぁ、だからクシーニヤに両替してもらったサルディスゴールドがベタベタするわけだ」 「・・・おぬし・・・」 最後に見たのは眩しいほどの白。次に見たのは吹きすさぶ砂塵 右手を開き、閉じる。可動に問題なし。武装は、今日はバズーカと多連装ミサイル、後はプラズマ砲と自律型レーザードローンを 『いける?指揮官』 金髪の人形がそう問いかける。昔は隣に立っていたが、今では通信機越しでないと声が届かない。 遠くなってしまった。身体も、それ以外も 感傷を無理に呑み込む。意味がない 『問題ない。手早く行こう』 『・・・えぇ、そうね』 キャタピラが唸りを上げる。ブースターが無理矢理に巨体を前へと押し出す ─メインシステム、戦闘モード起動─ 「一つ質問いいか?」 「何アルね!何でも聞くヨロシ!」 「何で俺が指揮官だってわかった?」 男の目つきがさっと変わる。殺気と敵意に満ちたそれに。 ドンッ!音は下から。机が蹴り上げられ、男が数歩下がった位置に素早く後退する 「アイヤー、ちょっぴりしくじったネ・・・」 男の手にNZ75が握られていた はい、お嬢ちゃん止まるのじゃ。何で止められたかわかるかの? 「米酒!米酒!冷えてっかぁ~?」(プライバシーのため音声は編集してあります) ・・・そういうところじゃよ? はい、ここにフーってしてくれるかの?お酒飲んどったらビーってなるからの ビービービー!!!! ・・・いっぱい飲んだんじゃな?どのくらい飲んだかの? 「あー!わらしまへんよー!これは~、わらしの米酒なんれす~!」 ・・・あー、隣の人形のお嬢ちゃん。どのくらい飲んだかの? 「ビールビール!華金華金!」 ・・・今日は水曜日じゃよ。お嬢ちゃんもこれにフーってして・・・ ビービービービービー!!!!」 本部本部、こちらナガンM1985。酒酔い運転現行犯。あっ、こら待て! 「あの・・・スプリングフィールド?この水着、ちょっと小さくないかしら?」 「あら?よくお似合いですよ?」 そう思うなら手を口に当ててクスクス笑うのを止めてほしい 「やっぱりこれ脱ぐわ」 「ダメですよ、指揮官。カリーナさんから『水着姿の指揮官様の写真を3TB、イメージビデオを6TB送らないと補給物資あげません!』って依頼なんですから」 「ぐぅ・・・」 カリーナめ、日頃の憂さ晴らしなら自分の配下の人形にやってほしい。それともグリフィン時代にブラックキャットしか着せなかった腹いせか? 「わ、わかったわよ・・・手早く終わらせましょう・・・」 「そうですね。ではまずあのボールに跨ってください」 「・・・メイリンとかメラニーじゃダメ?」 後日、カリーナの元に大量のデータが送り付けられた 「指揮官。これ、カリーナがどうしてもって」「悪いわね、ミシュティ。なにこれ、ゲーム?」 欠伸をするミシュティの手には一つのゲーム。仕様としては昔、冬のマンハッタンのゲームと似たようなものらしい。パッケージはピンク色だが 「一緒もやる?」「クルカイから呼ばれてるから無理。次逃げたら脚からバラす、って脅されてるんだよ」 凌遅刑みたいだ。珍しく起きていたのはそのためか 「ん?ダンジョン風?」 いざ開始すればそこは石畳と石壁、昔はやったゲームのダンジョンのようだ 「ポーションだけ」 装備なし。なるほどパーマデス系か、面白い。こういう手探りは嫌いじゃない 「あ、宝箱」 右左ヨシ、上下ヨシ、背後ヨシ。鍵は不要と。意気揚々と開けた途端上半身をばっくりいかれた。宝箱自体がトラップだったかクソ 「とは言え即死じゃないん、きゃっ!誰がどこを!ひゃっ!」 身動きの取れない上半身と、抵抗できない下半身に何かが這っている。そいつが服の隙間から侵入し・・・ 「エロトラップダンジョンじゃない!カリーナァ!!」 --------- 『あぁ、ミシュティさん。データありがとうございます』「・・・あたし何も知らないからね・・・」 日が暮れる。最近は昼の時間が長いが、それでも夜は来る。 「指揮官、今、お時間いいでしょうか・・・」 「ロッタ・・・」 毎日のように部屋に訪れるのは人形コミュニティから来たSG人形。最初はただの遊びを教えるだけだった。熱を帯び、本気にさせるまでにさほど時間はかからなかった 「じゃあ、早く舐めてください」 いそいそとスカートをたくし上げ、ずい、と巨大な一物が現れる。同じ女には存在しないソレの臭気にクラクラする。そもそも人形に雌雄があるかはおいておいて 「そのね、ロッタ。もっとムードが欲しいなって・・・」 「え?でも女の人は強引なほどいいって・・・」 「・・・誰がそんなこと言ってたの?」 「スオミさんが・・・」 あいつは後でジャパニーズ正座だ。なんてものを吹き込んでくれたんだ 「あっ!後、入れるときは首を絞めながらするといいって言ってました!」 「私のそんな趣味、ぐっ、げ・・・」 「あはっ!ホントだ!すっごい締め付けですね指揮官!苦しそうなお顔もとってもいいですよ!」 翌日、スオミとロッタに3時間お説教と、人形全員に情操教育が行われた 「ストライキだ!」「指揮官はもっと最低賃金をあげろ!」「少しはバイクから降ろせ!」「雷パは何時になったら完成するんですか!」「火パの主力範囲攻撃はまだか!」「昼寝の時間!」「米酒!米酒!」「非軍事管理局にはいつ来るんですか!指揮官様!」「チンポ出せ!」 扉の向こうは罵詈雑言の嵐だ。扉には拳が打ち付けられ、今にも破られんばかりだ 「クソッ!まるでゾンビゲームだな」 エルモ号の家計は火の車だが、人形達には賃金は払っていたはずだ。確かに、ちょっと、少しくらい少なかったかもしれないけれども! 「指揮官!こっちだ!」 「その声は、デール!」 上のダクトからデールに抱えられ部屋を後にする。その直後扉が無残にも破壊され、人形たちがなだれ込む。・・・人形じゃないやつもいたが 「まずはここを離れよう。僕のラボに行こう」 到着したラボは暗く、まるで牢獄のようだ 「・・・これでもすまないと思ってるんだぜ?指揮官」 「どういうことだ?」 直後、ビービーと煩わしい警報が鳴り響く。その音に交じって大量の足音が聞こえてくる 「図ったな!デール!」 「悪いな指揮官。僕もまだ死にたくないんだ」 「お電話ありがとうございます。カフェズッケロです」 「『アフタヌーンティー』を予約したいんです。3時間くらい」 「承知いたしました。『オプション』はいかがいたしましょうか」 「『制服』と『あの時の指令室』で」 「承知いたしました。ご予約名を教えていただけますでしょうか。」 「・・・カリンで・・・」 「ふふっ、こういうときは偽名を使うものですよ。お待ちしていますね、カリンさん」 ガチャン 「指揮官、ご予約入りましたよ」 「わかったよ。離れてくれクルカ、うおっ、すっげぇ締まり。チンポ千切れそう」 「・・・この後空いてますよね。私もいいですか?」 「やぁスプリングフィールド。珈琲を頂けるかな」 「ようこそ指揮官、カフェズッケロへ。ここでは履物を脱いでくださいね」 「なるほど、失礼した」 「上着をお預かりしますね。さぁ、脱いでください」 「弱冷房はそのためか」 「迷われるかもしれません。お手を繋ぎますね」 「いや、そんな広くないし・・・はぁ、仕方ないな」 「さぁ、そこのベッドに腰掛けてくださいな」 「スプリングフィールド?普通に椅子と机でいいんだけど・・・」 「指揮官、早く脱いでくださいな。それとも脱がされるほうがお好みですか?」 「誰かー!助けてー!」 カリーナです。依頼の概要を説明しますね 依頼内容は大型グリーンエリア、オデッサの占拠です 今回は、細かなミッション・プランはありません。指揮官にすべてお任せします あらゆる障害を排除して、目的を達成してください 依頼の概要は以上です 非軍事管理局は、人々の安全と、世界の安定を望んでおり、その要となるのが、この依頼です 指揮官であれば、よいお返事を頂けることと信じています! ではでは~ 「カリーナ、ちゃんと薬は飲んだの?」 「飲んでますよ。子ども扱いしないでください、リヴァさん」 ジャラジャラと錠剤が入った瓶を鳴らすと悪かったわね、と悪びれもせず言う。あの病院生活は随分と昔だし、症状は相当軽かったし、何なら完治済みだ。それでも薬は手放せないのは、依存と言えるのかも知れない 「明日には指揮官が来るんでしょ?ホテルを予約した方がいいかしら?それともカリーナ長官のプライベートルーム?」 「リヴァさん!」 気にした風でもなく、ひらひらと手を振る人形を出ていくまで睨みつけた。全く、デリカシーというものがない 「明日・・・」 手持ち無沙汰になった指が薬瓶を撫でる。目線を外にやれば曇天が見えた。きっとすぐにでも降り始めるのだろう 「明日、指揮官様が・・・」 薬を飲まなかったらどうなるのだろう。何も影響はないと思うが、もしかすると熱の一つでも出るかもしれない。そんな状態で指揮官様と会えば、お優しいあの人のことだ。すぐにどこかで休もうと言うだろう ざぁざぁと雨音が聞こえる。もう降ってきたのか 「それなら、部屋を取ってあるんです・・・」 馬鹿みたいな妄想に、思わず言葉が出てしまう 私の部屋なら誰にも邪魔されないだろう。リヴァさんだって、空気くらい読んでくれるはずだ。 『大丈夫?カリン。リヴァを呼ぼうか?』 「平気ですわ。それより・・・」 『何?カリン』 ここで指揮官様をベッドに引き込むのだ。不意打ちだし、きっともっともらしい言葉だけで抵抗はしないだろう 『カリーナ・・・』 「カリン、とお呼びください、指揮官様」 ここまで言えばいくらあの人でも「そういう」お誘いだとわかるだろう。わからなければこっちから脱いでやる 2時間、いや、6時間は欲しい。いなくなったこともきっちり問い詰めてやる。 そして、あわよくば・・・ 「ふふっ・・・」 雨はいつの間にか止んでいて、天使の梯子がかかっていた 明日はきっと晴れるだろう 「し・き・かんっ!」 「おわっ!」 後ろから唐突に抱き着かれ、そのまま床に転がる。幸い厚めのマットのある部屋で助かった 「レナ!危ないからやめてくれ・・・」 「えへへっ、ごめんごめん」 本当に悪いと思っているのか。しがみ付いて背中にぐりぐりと頭を押し付けている態度では怪しいと所だ とは言え、彼女の抱き着き癖?はもう慣れた。昔はソップも抱き着き、もといタックルされていたなと古い記憶が蘇る 「あーっ、別の人形のこと考えてる」 「・・・シテナイヨ」 ホントにー?と顔を近づける彼女の視線から目を逸らす。なんて無駄に鋭い勘なんだ 「そういえばリヴァはどうした?」 「リヴァ姉は今日は来ないよ。今日は私単独なんだ!」 珍しい。彼女がリヴァと離れるなんて。明日は死人が蘇るかもしれない 「リヴァ姉が『既成事実の一つでも作ってこい』って!」 腰を掴む力が強まる。・・・一刻も早くこの場を切り抜けなければならないらしい 「ハッピーバースデー、カリン姉!」 「・・・今日誕生日じゃないんですけど・・・」 「まぁまぁ、固いことはいいから!はい、ケーキ!」 「・・・なんだか昔いっぱい見たケーキなんですけど・・・」 「むー!むー!」 「まぁまぁ、昔にことは言いから!はい、プレゼント!」 「・・・動いてるし、なんか声が聞こえるんですけど・・・」 「じゃ!確かに渡したからね!2時間くらいあればいいよね!」 「ちょっと!レナさん!はぁ・・・」 「むー!・・・ぷはっ!助かった、カリン!縄も解いてくれないか?」 「・・・最高のプレゼントです、レナさん・・・」 「何の用、カリーナ」 「・・・その前に少しは掃除してください、ペルシカさん」 善処するわ、と先月も聞いた言葉を言い放つ。床に散乱した紙を拾い、雑に投げ捨てられたブランケットを部屋の外に投げ捨てる。アイツは後で洗濯だ 「それで、何の用?」 「・・・人形を1体作ってください」 ペルシカさんが眉を顰める 「・・・どんな?」 「ニューラルクラウド計画、というものに指揮官様が参加していたらしいですね。サーバーにダイブするためにメンタル化して。そのメンタルを入れた人形を1体創ってください」 ペルシカさんの顔が困惑から憤怒に変わる。こうも表情豊かな人だったのか。初めて見るかもしれない 「何を言ってるのかわかってるの?カリーナ非軍事管理局長官殿」 「わかっていますよ、ペルシカリアさん」 これは人の世の何かに反逆するものだろう。冒涜と言っていい。だが、あの人がいない世界に輝きがあるとは思えない 「・・・はぁ。カリーナ、精神科を強くオススメするわ」 「そんなことより出来るんですか?出来ないんですか?」 科学者は応えず出て行けと催促する。あぁ、楽しみだ 『乗せなさいよ』 「えー・・・」 画面の向こうでご立腹なのは我らが天才科学者、ペルシカである。ぼさぼさの髪に着古した白衣、10年前と変わらない美貌の彼女はもはや妖怪の類ではないか 『リモールディングパターンのデータ。後、そのヘレナって完全免疫体、気になるのよ』 「カリンからデータを貰ってくれよ。後、ヘレナのことはどっから聞いたんだ」 正直、乗せることのメリットより、デメリットのほうが大きい気がする。そもそも私がこんな状況になったのは、彼女の作ったAR小隊と関わってしまったからと言えるのだ 『・・・どうしても乗せる気がないってことね。なら、こっちにも考えがあるわ』 「何を・・・」 したり顔のペルシカを問いただす前に、衝突音とエルモ号の警報が鳴り響く。どちらも音源は上だ 「ペルシカ!!」 『「私」を乗せる気がないなら「助手」を乗せるわ。もう送ったから嫌とは言わせない』 「待てっ!クソッ!あのアラフィフ猫耳独身が!」 いつの間にか警報は鳴りやんで、ドアに一人立っていた 「えっと、ペルシカ博士から派遣されたペルシカです。よろしくお願いしますね、教授。いえ、今は指揮官でしたね」 柔和に微笑む彼女がそこにいた おぬし!今日は部屋の掃除と言っておったじゃろう! なに?やる気ない?やる気の問題ではない!やるといったからにはやるのじゃ!さぁ、はようゴミ袋を持って・・・シャンとせんか! こやつめ・・・仕方ない、わしも手伝ってやろう・・・ いらない物はゴミ!半年以上使っとらんものはゴミじゃ!なんじゃこれは・・・洋服は洗濯に出さんか!センタウレイシーはちとこやつを甘やかしすぎじゃ・・・ これは・・・ははぁ、オナホの一つや二つでそんな慌てんでもよい。コンドームの空箱も貯め込んで何をする気じゃ・・・ ん?おぬし・・・流石に部屋にダミー人形を置くのはやめておいたほうが良いぞ・・・それも、M4A1のダミー人形とは・・・そんなに、なに?置いた覚えはない?じゃあこの人形はなん 『副官』というポジションは特別だ。特に指揮官と戦い抜き、駆け抜けた人形たちにとっては 「指揮官さま!今日はあたしが『副官』だよ!ふ~♪」 ドガンッ!自動開閉式のドアが待ちきれないとばかりに力強く開かれた 喜色満面。元気溌剌。そよ風小隊の功夫淑女、絳雨がそこにいた 「絳雨・・・ドアは静かに・・・」 「えへへ、ごめんなさ~い♪」 元気がいいのはいいことだが、有り余っていると困りものだ。もっとも、それが彼女らしさであるのだが 「絳雨、貴方とメイリンにお願いしてた掃除は終わったの?」 「あ~・・・うん!終わったよ!終わった終わった!うん!」 ・・・まぁそんなことだろうと思った。彼女が大人しくするよりも飛んだり跳ねたりする方が性に合ってるだろうし 「ねぇねぇ、指揮官さま!外行こうよ外!身体が鈍っちゃう!」 「・・・この前もそんなこと言ってヴァリャーグ殲滅するハメになったんだけど?」 結局大規模な殲滅戦となり、最後はタイタンが2体も出てきた。もうあんな面倒は止めてほしいものだ 「大丈夫大丈夫!ほら、お姉ちゃんがいないうちに早く早く!」 真夏の太陽のように朗らかな彼女に手を引かれ、外に一歩踏み出した 「指揮官さま!見て見て!ベッドが回ってる!」 「絳雨・・・」 「すごいすごい!シャワールームがガラス張りだ!」 「絳雨・・・」 「コンドーム?ってやつ、あたし初めて見た!」 「絳雨・・・」 「指揮官さま。ゴム、いる?♡」 「指揮官・・・また生でしましたね・・・」 メイリンが恨めし気な視線を向ける。彼女の前にはスリープモードの絳雨の素体が吊り下げられていた 「まったく、誰が掃除をすると思ってるんですか。米酒なんかじゃ許してあげませんからね!」 彼女の怒りはごもっともだが、こちらにも事情というものがある。人形への福利厚生の充実は指揮官の務めだ 「生体パーツの残りあったかな・・・人口膣は・・・Sタイプで・・・Sにしますからね!指揮官!」 「はい・・・」 Sというと自分のブツだとキツキツ過ぎて裂けかけたあれか・・・ 「Mの最後の在庫は緋さんに使っちゃいましたからね・・・大切に使ってくださいよ!指揮官!」 「善処します・・・」 とはいっても人形たちがもっともっとというのだから、応えてあげるのが優しさというものではないか 「あー!食道モジュールが!指揮官!イラマチオはダメって言ったじゃないですか!もー・・・」 「すいません・・・」 絳雨がやってみたいと言ったし、実際気持ちよかったのは言わないでおこう 「・・・メイリン、何かしてほしいことはあるかい?」 「・・・でしたら今日、絳雨さんにしたことを私にしてくれませんか・・・?」 「絳雨、今どこにいますか?」 『今?エルモ号だよ!』 『ちょっと遊戯室で遊んでるだけだから!』 「成程、遊戯室に何かあるのですか?」 「何で遊んでいるのですか?」 「指揮官様でしょう?」 「指揮官様と、しっぽりでしょう?」 「開演でございます」 「アンドリス~、あたしの枕しらない~?」 「ミシュティの枕?昨日メイリンさんが洗濯で取りに来たよ」 メイリンが?うーん、お気に入りだったんだけどなぁ・・・。今日は指揮官の所で寝るかなぁ 「ミシュティ、今日は指揮官の所に行くね」 「え?アンドリスが?何か呼ばれたの?」 指揮官が人形を呼ぶのは珍しくない。人形の部屋に行くのもそうだ。グリフィンの時からそんな人だ。・・・まぁ、オイシイ思いはしたけど・・・ 「そうなんだ。指揮官が『いつでも来ていいよ』って言ってくれたんだ~」 「・・・皆に言ってるよ、それ・・・」 お人よしというか、異常人形愛者というか。それに指揮官の部屋にいればクルカイもけお・・・怒らないし、ポテチもコーラもベッドもゲームも何でも揃ってる。・・・あたしも一緒に行こうかな 「指揮官って不思議だよね。何でだろう」 「指揮官が変人ってコト?まぁ否定できないけど」 グリフィンの時から変人だった。というかグリフィンの人形も変だったけど 「だからちょっと今日は遅くなるね。う~ん、明日かも」 「ねぇ待ってよ、アンドリス!指揮官が何するのさ!ちょっと!何で顔が赤いのさ!ねぇ!」 『最強ブルパップってMDRのこと?』『そうだね』『使ってる人形も最強だししゃーない』っと はぁ!?満員!?この場末のうんこゴミカス便所の落書き未満のFランPMCのグリフィンみたいな掲示板が満員!?明日はマキアートがツンデレ卒業するの!? クソ!このクソファッキン満員め!どうせ荒らしと粘着とダイス振るだけの狂人しかいないのに!私の書き込みくらいVIP対応にしろっての! ・・・こうなったらロ連のボスに直談判してやる!ロ連のトップって誰だろ? 「最近コルフェンの出番がないと思いません~?」 「医療人形の出番が少ないのはいいことじゃないの?」 「ちっちっちっ。そういうことじゃないですよ、キャロリックちゃん💙」 「未来を焼く過去・・・新しきが忘れられる・・・」 「ハァ!?アタシがあのバイクの人とキャラ被ってるって!」 「私だって、最近はスレ画にしかいませんよ~。ここは過激なスキンで・・・」 「止めときなさい。アンタみたいなちんちくりんじゃ無理よ。それにアンタ以上の淫魔人形が来るじゃない」 「そうなんですよ~💙役割も被ってコルフェンお払い箱です・・・」 「宵闇夜行・・・海へ還りて宿らん・・・」 「ハァ!?指揮官に夜這い!?アンタ本気で言ってる!?」 「それです!さっすがネメシスちゃん💙早速ゴー!ゴー!💙」 「果断・・・迅速・・・果て無き情欲・・・」 「ちょっと!ネメシスまで!本気で行くの!?アタシは止めたからね!ちょっと!ねぇ!待ってってば!」 『指揮官、出来たわよ。お望みの「催眠装置」』 「ありがとう!ペルシカ!」 『お礼は今度ベッドで2時間くらい時間が欲しいわね。うちの「助手」が煩いの』 「・・・善処する」 ------- 「マキアート!オラ!催眠!」 「ハァ?何言ってんのアンタ?」 「何・・・?」 ---- 「クルカイ!オラ!催眠!」 「何してるんですか?指揮官。そんなことより、一緒に訓練しませんか?」 「あれ・・・?」 ----- 「センタウレイシー!オラ!催眠!」 「・・・?・・・!・・・はい、ご用は何でしょうか?」 「Zzz・・・」 「ミシュティ、せめて自分の部屋で寝てくれないか・・・」 小言を言ってみるが、当の本人は夢の世界に旅立ってしまっていた 致し方あるまい。起きろと言われて起きるのであれば、クルカイがあんなに苦労したりしない 「むにゃ・・・」 ごろん、と寝返りを一つ。薄着のシャツは大胆にもまくり上げられる。真白なお腹が露わになり、貧相、と言わないまでも慎ましやかな胸の下が見える 「・・・はぁ」 煩悩退散煩悩退散。彼女が信用しているから私の部屋で寝ているわけであり手を出せば信用関係どころか404と非軍事管理局とカリーナから激詰めされて針の筵どころではなくなるこれは決してやましい気持ちはなく親切心と父性からくるものでありそもそも触るのではなく服を直してあげるための行為なので 「・・・指揮官」 「待ってくれミシュティ、未遂なんだ。魔が差しただけなんだ」 伸ばした手が掴まれて心臓が止まるかと思った こちらを一瞥したミシュティは再び目を閉じる 「・・・据え膳だよ。あたしは寝てるから何されても起きないよ」 そういうとミシュティが掴んだ手を胸へ引き寄せ・・・ 『続きを閲覧するための権限が不足しています』 『非軍事管理局局長が密会!?お相手は何と!?』 「・・・ハッ」 暇で暇でどうしようもない素人が書いたような生産性の欠片もない場末の匿名掲示板みたいな3流ゴシップ記事のサイトを閉じる。後で強制調査してやろうか。そもそもその相手も旧知のクルーガーさんだ 「はぁ・・・」 密会したい相手から連絡はまだない。クルカイさんから定時連絡を貰ってるから無事なことは確かだが・・・ どうせあの人のことだ。いつものように人形達を助けてあっちこっちフラフラしてるに違いない。今度会ったら、再会したいと直談判してくる人形達の対応をさせてやる 「はぁ・・・」 モヤモヤは晴れない。天気のように曇天だ。いっそ降ってくれればいいのに 「指揮官様・・・」 呟きが部屋に消える前に端末が鳴り響く。・・・こうもタイミングがいいとちょっと心が浮つく もしかしたら、いや、そんなはず、でも・・・ 「・・・はい」 「はぁい、カリーナ。指揮官じゃなくて悪かったわね」 「・・・何の用ですか?リヴァさん」 いつになったらあの人と密会できるのか。クローゼットに視線を向ける。あの日、回収したコートは、まだ返せていない センタウレイシーの凸状況による指揮官への朝食種類 無凸:なし 1凸:水とドッグフード 2凸:紅茶(インスタント)と生躯の肉のベーコンサンドイッチ 3凸:紅茶(100g当たり500円)とスコーン(既製品) 4凸:ズッケロ特製紅茶とピクルスのサンドイッチ 5凸:高級茶葉を使ったロイヤルミルクティーとブレックファストロール 6凸:最高級の紅茶(ホワイトエリアで栽培された1g1万円)、ホワイトエリア直送、朝採れ野菜とスモークチキンのサンドイッチ、旬のフルーツを使ったタルトとスコーン 『チッ!しけたとこだな。オイッ!奪えるもん奪って生きてる奴殺して燃やせるもんは全部燃やせ!』『へぇい、兄貴』『しゃんと返事しやがれってんだ!クソボケどもが!』 罵声が聞こえる。ごうごうと村が燃えてる。見えるのは炎の赤と血の赫。そんな光景を声も出せずに見るしかなかった 「・・・リン。メイリン?」 声がする。優しくて暖かくて安心する声。撫でられてる頭がポカポカする感じ 「魘されてたわよ。大丈夫?」 目を開ければ同じベッドで横になっていた指揮官が心配げにこちらを見ていた。大丈夫、そう伝えると、手を頭から頬に滑らせた 「・・・あー、デールもいるし、今度から残業はちょっと減らすわ」 なくすとは言わないんですか?と意地の悪い問いを投げると、善処するという言葉と苦笑いが帰って来た。 「ヘレナや人形達のためにあなたが必要なの。勿論私にも」 そういってまた首筋に顔を近づける。きっともう隠し切れないだろうなぁ、と思いと指揮官に独占されているという優越感が綯い交ぜになる。 人形、は別にしても他の人とそういう関係になったことがあるんだろうか。手慣れてるしあるんだろうな・・・ 想いはあっという間に嫉妬に変わる 「きゃっ!・・・突然ね、メイリン。どうしたの?」 まだ暗くてよく見えないが、驚く指揮官の顔が下に見える。 今日は私が上で!私が攻めで!指揮官をあんあん言わせてやる!いっつも喘がされてばかりではないというところを一つ見せてやらないと! いつの間にか胸にあったモヤモヤは消えていた。時計は6時前を指していた 「むにゃ・・・」 「起きてミシュティ。はぁ・・・」 一向に起きない来訪者にベッドを占領されて早2時間。ヴェクターはほとんど諦めていた。仕方ない、今日は一緒に寝るしかなさそうだ 「ミシュティ、ちょっと詰めて」 「ぐぅ・・・」 ぐいぐいと彼女の押して何とかスペースを作る。広くはないベッドは既にぎりぎりで、素体を密着せざるを得ない 「・・・あったかい・・・」 昔はたまに作戦行動を共にすることがあった。相性は、悪くなかった、と思う・・・ すると腰に手が伸びる。暖かな温度がより伝わってくる 「・・・ミシュティ、起きてない?」 「・・・寝てるよー・・・」 溜息と共に抱擁を甘んじて受け入れた 「ふぁぁ・・・」 午後の日差しは柔らかくて暖かい。ちょっぴり、いや、大分眠くなってきた。クルカイの地獄のしごきも終わったし、いい感じの寝床を探さなきゃ 「あら?あなたは・・・いえ・・・」 「うん?ペリティア?」 目の前に薄暗くなったと思ったら、彼女の影だったようだ。いつの間にかエルモ号にいたらしい彼女は、クルカイと戦闘スタイルがあってるらしくて、いっつも同時に出撃してる。・・・あたしは置いて寝かせてほしいのに・・・ 「眠たいんですか?寝かせてあげましょうか?・・・もちろん、ベッドで」 「そうするよ、ふあぁぁ・・・」 手を引く様に、腕に尻尾?が巻き付く。ふわふわなそれはまさしく猫の尻尾みたいだ 「どうぞ、ミシュティさん」 「ありがと・・・」 404もデールたちも指揮官もいないところで寝るのは初めて鴨しれない。ちょっとだけ緊張する そんなあたしを知ってか知らずかペリティアまでベッドで入って来た。・・・部屋の主に文句を言うのは間違ってる、よね 「・・・しょっと。じゃあお休みなさい」 「うん・・・」 ・・・胸部装甲はクルカイやアンドリスやビヨーカより大きかった 「し・き・かん!」 「うわっ、MDR」 ニコニコ顔で飛び込んできたのはゴシップ大好き荒らし大好きな問題児人形の一人。・・・問題児が多すぎるな・・・ 「うわとは何よ、うわとは。そんなことよりお月見しよ!お月見」 「オツキミ?」 知らない単語だ。聞くところによると、大昔の人は月が綺麗な夜にススキ?とお団子を食べるそうだ。MDRの故郷の国は食べてばかりだな、サブリナと相性が良さそうだ 「で、これが月見団子!サブリナに作ってもらったんだ!」 「ほう、これが。いただき、痛っ」 一口と手を伸ばすと、MDRにはたかれた。何でも「月にオソナエして食べる」のが礼儀らしい。信心深いというか迷信深いというか 窓から見える満月は白く、優しい光を放っていた。MDRの話を聞いたせいか神々しくも見える 「・・・月が綺麗だな・・・」 「え!?あっ、指揮官・・・その・・・私、死んでもいいわ・・・」 振り向けば真っ赤な顔のMDRがいた 『指揮官、今日は4月16日ですが』 『そうだな。クルカイ、これを受け取ってくれないか?』 『これは・・・』 『結婚しよう、クルカイ。M4A1よりリヴァよりカリーナより君が欲しい』 『指揮官・・・』 「うへ、うへへ・・・」 「むにゃ・・・え?何?うわ・・・指揮官ー!クルカイが壊れた!」 「指揮官、趣味悪いですよ」 「何が?」 メイリンがフィギュア置き場を見てそんなことを言い出す。失礼な 「これはな、人形達が頑張って集めてきてくれたコレクションなんだ。人形達のプレゼントと言っていい」 懐かしい。前線基地を思い出す。どんぐりやら何かのブロックを集めてきてくれたものだ・・・。アイツら俺がいないところで何やってるんだと思ったが・・・ 「いや、趣味悪いですよ。何ですかこのサトード!」 「いいだろ?金ぴかで金運が上がりそうだ。あっ、メイリンには上げないからな」 「いりませんよ!そんなもの!」 そんなもの・・・そんなもの・・・ 「指揮官、帰ったわ。メイリン、素体のチェックをお願い」 「グローザさん!指揮官が変な物飾ってるんですよ!」 「変な物って言うな!戦利品と言ってくれ!」 「・・・その、指揮官。これ、お土産・・・」 グローザが差し出した銀色のサトードを見て指揮官は悦び、メイリンはとうとう泣き出してしまった イエローエリアでは水は貴重で洗濯は週2回、全員分をまとめて洗濯してるが、 「またか・・・」 パンツがない。それも履くやつじゃなくて、履いていたやつがだ。いつの間にか洗濯されて戻ってくるが、精神衛生的によろしくない。 「メイリン、今日の洗濯なんだが・・・」 「え?あっ!し、指揮官!な、何かありました・・・?」 しどろもどろな言動だし、目は水泳大会をしてる。何かを隠してるのは明白だ 「メイリン、怒らないから・・・私の洗濯物の行方を教えてくれ、頼む」 「で、でも、うぅ・・・」 仕方ない。あまり使いたくないのだが 「わかった、メイリン。教えてくれたらこれをあげよう」 ドン、と机に一升瓶を置いた途端、目が綺羅星の如く輝く。・・・グリフィン時代の彼女を思い出すな・・・ 「センタウレイシーさん達がどうしても欲しいって言うんですよ・・・」 成程、首謀者はわかったが肝心のブツは何処だ。エルモ号をうろつくとチータの威勢のいい声が聞こえてきた 「指揮官の2週間履きたてパンツ!黒の無地!ボクサータイプだよ!2000コーラップスピースから!」 3000!3500!と威勢のいい声が続く。私は何も聞かなかったことにしてその場を後にした 「悪いね、メイリンが今日は風邪お休みなんだ」 「別に。誰が洗っても問題ないよ」 素体のメンテはメイリンの仕事ではあるが、今は休むことが仕事になってる。それに、人形のメンテは出来ないわけではない 「痛かったら言ってくれ」 「大丈夫。痛覚モジュールは切ってるから、多少荒くていいよ」 いつも通りのポーカーフェイスを浮かべる朝暉の身体を温水で軽く流す。 腕に泡をこすりつけ、脇腹に手を回し、小ぶりだがしっかり主張する乳房を心を無にして、いや、結構ある。・・・無にして洗う 「ふぁ・・・んっ・・・」 「あの、朝暉?」 「・・・何でもない。続けて」 気まずい時間が流れる。いや、今は人形をメンテしてるだけ だ。何もやましいことはない!はずだ・・・ 「指揮官、今度は私が洗ってあげる」 上気した顔がこちらを見つめる。普段は静かな瞳が何かを期待するように濡れている 「ねぇ、指揮官。寵姫の朝暉は嫌い?・・・本気」 エルモ号監視カメラ 指揮官の私室 ベッド上 3:30 朝暉入室。ベッドで指揮官に添い寝 3:32 指揮官起床 3:51 指揮官、朝暉退室 4:00 センタウレイシー入室。洗濯物の回収 6:12 ウルリド入室。ベッドの上で持ち込んだ菓子の飲食 6:23 スオミ入室。ウルリド、スオミ退室 12:00 指揮官入室。仮眠 12:10 指揮官起床。退室 15:38 ミシュティ入室。睡眠 21:41 ビヨーカ入室。ビヨーカ、ミシュティ退室 0:12 指揮官入室 3:53 指揮官入眠 指揮官、お話があります。 グローザから聞きましたが指揮官のスケジュールは少々過密すぎます。完璧なパフォーマンスを発揮するには完璧なスケジュールが必要です そのため、私の方でスケジュールを作成しました。この通りに過ごしてください ええ、そうでしょう。個人の訓練も当然ですが、小隊での訓練も必須です。・・・他の人形には言わないでください。指揮官!何笑って!もう・・・ 調理だって立派な訓練です。必要になれば私たちだって食べて戦闘を行いますが、マズイ飯ではモチベーションも落ちますから。ええ、全員持ち回りで参加してもらいます。マキアート?ええ、参加ですが? 夜に3時間空いてる?・・・その、指揮官がいつ呼ばれてもいいように・・・ああ!もう!いいでしょう!私だってそのくらいの『報酬』があっても!それとも何ですか!他の人形は抱けて私は抱けないって言うんですか! エルモ号監視カメラ メンテナンスルーム 5:36 メイリン起床 5:57 米酒接種 7:21 クルカイ、ヴェクター入室。メイリン素体チェック 7:56 クルカイ、ヴェクター退室 8:22 ヘレナ入室。持ち込みのお菓子を飲食 8:23 コルフェン入室。コルフェン、ヘレナ退室 9:12 指揮官入室。メイリンとミーティング 12:05 メイリン仮眠 12:36 メイリン起床 15:25 ヴェプリー入室。ライブ開始 15:34 シャークリー入室。ライブ開始 15:44 幼熙入室。ライブ開始 16:12 キャロリック、スプリングフィールド、指揮官入室。 16:13 ヴェプリー、シャークリー、幼熙、キャロリック、スプリングフィールド、指揮官退室 21:36 米酒接種 昔話をしてやろう! 世界が破滅に向かっていた頃の話じゃ 神様は人間を救いたいと思っていたそうじゃ。だから、手を差し伸べたんじゃな でもその度に、人間の中から邪魔者が現れた 神様の作る秩序を、壊してしまうものがおってな 神様は困惑しての 人間は救われることを望んでいないのかって でも、神様は人間を救ってあげたくての。だから、先に邪魔者を見つけ出して、殺す事にしたのじゃ そいつは「黒い鳥」って呼ばれたらしくての 何もかもを黒く焼き尽くす、死を告げる鳥 最近の人形たちの間で流行っている小説は「追放系」 指揮官と一緒にグリフィンを追放された二人は当てのない逃避行を続ける イエローエリアの過酷な環境、ヴァリャーグや生躯の襲撃、そして、二人で何度も夜を超える・・・ やがてグリーンエリアに入ると二人はボロく狭いアパートに同居することになる 何もない部屋だが、そこには愛情が詰まっていた だが、そんな関係も非軍事管理局の魔の手が伸びる 捕えられる指揮官、何もできない自分・・・ これはただ一人を救い出すためのたった一人の人形の物語 「ミシュティ!このねぼすけ!また寝て・・・ない」 驚くべきことにミシュティは寝転がっているだけで、寝ていなかった。暇さえあれば、否、暇がなくとも寝てばかりでぐうたらのダメ人形が、だ 「エル裏?」 「アンドリスが見つけたんだって。エルモ号裏サイト、略してエル裏」 『エルモ号裏サイト』、100年前の掲示板のような頭の悪い名前が付いたサイトは、やはり100年前の古くさいUIをしていた 「まぁ見てよ。ほらこれ」 指すような視線を感じてミシュティが指さすその先には、勢い上位のスレッドが。1000到達してはすぐさまスレッドが立つようで、同じスレッドが乱立していた 「『お気にを語るスレ』・・・アンタみたいな低俗な人形にうってつけね」 「うるさいなぁ・・・。この合言葉が、クルカイ?」 ふん、と鼻を鳴らしクルカイはその場を後にする 「・・・あれ?訓練は?・・・まぁいっか、ラッキー」 ------------------- 「クルカイか。どうしたんだ?あぁ、明日の訓練についてか?」 「・・・『ホワイトチョコをお腹いっぱい』・・・」 「・・・OK」 「『アイス』を一つ」 「は~い💙今日は上物が入ってますよぉ~💙」 「私にも『アイス』をください」 「はいはい💙ちょぉ~っとお待ちくださいね~💙」 「早く早く」「まだ~?」 「はい、ヘレナちゃん、メラニーちゃん、お待たせしました💙スプリングフィールドさんのとこの美味しいバニラアイスですよ~💙食べたらちゃ~んと歯を磨くんですよ~💙」 「ちゅ・・・はぁ・・・」 「朝暉、今日は激し過ぎじゃない?」 ぱちゅ、ぱちゅという水音と肉と肉がぶつかる音が部屋に響く。柔らかな間接照明は淫靡な雰囲気をより高めているようだ 「指揮官、もっと・・・もっとちょうだい・・・」 普段の璃々とした表情は消え失せ、トロンと蕩けた瞳は『雌』を強く意識させる。決して小さくない胸が弾むように揺れる。健康的で肉付きのいい太もも撫で上げれば、人形特有の1本も毛のない恥丘に触れる 「指揮官・・・そこは、ちょっと恥ずかしいから・・・」 それが言葉だけの抵抗であるのは顔を見れば明らかだった。そっと、陰核に指を伸ばし、 「コラー!朝暉!指揮官!ヤるならあたしも混ぜてよ!」 ドバーン!とド派手に登場する人形に思わず、息子が萎えてしまった。黛煙にバレたら・・・考えないようにしよう バッ!と軽業師も目をむく速度で服を脱ぎ、ベッドにダイブする絳雨。朝暉も思わず半眼だ 「ね!指揮官!次はあたし!あたしとシよ!」 「ダメ。今日は私の番。絳雨は昨日シたでしょ」 顔を突き合わせて言い争いをしていたが、不意にこちらに水を向けた 「「指揮官、どっちとヤる?」」 指揮官さぁ~wこ~んな美少女人形を友軍設定するの?w 派遣先で寝取られて~ってのはお約束じゃな~い?w だから、私はしっかり指揮官の隣で仕事してるからさ~w友軍に設定しないでよw 何してるのさ、指揮官 ねぇ!待ってってば!小隊に私一人だけな、ちょっと!本気!?派遣先の指揮官が怒るよ! はぁ!皆バビだから関係ない!?何言ってるのさ! ちょっと指揮官!ゴメンってば!勝手にアイス食べたのも、盗電したのも、クソスレ立てて対立煽りしたのも謝るから! 今人形たちの間では「NTR」が流行り! グリフィン時代に指揮官から貰ったあなた だが、グリフィン解体と共に無情にも指輪は回収されてしまう IOPから買い取られ、永遠に指揮官の元で戦えると思っていたあなたを待っていたのは、いつまでも帰らない想い人と慣れない仕事 そんなとき、昔の伝手で指揮官と一緒に仕事をする機会に恵まれる。久しぶりのあの人の指揮能力は錆びついているどころか、さらに鋭さを増しているようだった。それに、あなたとの阿吽の呼吸も健在だった あっさり片付いた仕事を終えた後の談笑は、10年の溝を埋めるには足りなかった あなたは10年前と同じように指揮官の腕を引く 「・・・すまない。今は彼女の方が・・・」 そう言った指揮官の薬指には自分と同じ指輪はなく、新しい指輪が輝いていた ---------- 「冬コミはこれで決まりであります!」 指揮官さぁ~・・・いっつも私に煩い煩いって言うけど、指揮官の部屋から聞こえる人形の喘ぎ声が一番煩いんだよね・・・ M14とか一〇〇式とかスオミとかは、まだ大丈夫だと思うけど、トカレフとかM1895の汚ったない喘ぎ声が聞こえたときは真面目にカリーナさんに報告しようかって思ったんだからね え?カリーナさんも知ってる?・・・いや、カリーナさんが一番煩いとかそういう情報はいらないんだけど・・・スレ立てたら殺されるじゃん、それ はぁ?私?何でそんなこと今聞くのさ。関係ないじゃん ちょっと・・・指揮官、目がコワイんですけど・・・ 指揮官様~!お部屋の防音設備をアップグレードしてください! 人形の皆さんのあ、喘ぎ声が、その、漏れてるって・・・ 誰から聞いたって・・・そんなの今はどうでもいいじゃないですか! と・に・か・く!早く防音設備のアップグレードをしてください!隣の部屋で毎日毎日ギシギシアンアンってレベルじゃないですよ!あんなエグイ喘ぎ声出すなんて、どんなハードプレイしてるんですか!モジュールが壊れたら指揮官様が修復ポッドに運んでくださいね! 私?私がどうしたんですか?・・・そうですね、あんな獣みたいなセックスじゃなくてもっと、お互いを確かめ合う感じで・・・ あの・・・指揮官様?えーっと、その、距離が近いです・・・ ちょっ!んっ!ぷはっ・・・もう、もっとムードを大切にした方がいいですよ・・・ ぎゃはははは!!!!!wwwきんたまwきんたまだこれwきwんwたwまw 指揮官w何拾ってきてんの?ぶふっwきんたまじゃんwww こんなのwww誰が欲しがるのさww え?もう1つあるじゃんw2個めなの?w え?ぶっwぶはははwwwwwぎんたまもあるwぎwんwたwまwwww 5個集めるとお菓子と交換できるの?w金なら1個で交換できるの? そういえば、金と銀ってあだ名の人形いたよね?来たら持たせようよw絶対面白いってw あー、笑った笑ったwぶふっwちょっと写真撮らせてよw 『指揮官のきんたま激写!』っと、送信! 何さ指揮官!ちょっと、私のスマホ返して!もう! 「指揮官、トリックオアトリート」 私室でカリーナに報告書と私信を書いていると、ノックもなしに扉が開いた 普段の厚手のタクティカルコートを脱ぎ棄て、薄手の白いドレスで現れたのはヴェクターであった 豊満、とは言わないまでも、決して慎ましくない膨らみがしっかりと存在を強調している。 グリフィン時代に送ったドレスは新品同様で、まるで過去が追いかけてきたようだ 「で、何のコスプレなの?」 「指揮官のお嫁さん」 サラリと言う彼女にやや面食らう。こんな冗談を言う人形だっただろうか。まぁ、10年の歳月が人形すら変えたのかもしれない。・・・そもそも本当に彼女はヴェクターなのか? 疑問を仕舞い込み、用意しておいた菓子箱に手を伸ばすが、 「しまった。ヘレナとメラニーとメイリンでお菓子切れてた・・・」 「じゃあイタズラ受けるしかないね」 不意打ち気味に抱き着くヴェクターを受け止めきれず、思わずベッドに倒れ込む。香水か彼女自身なのか、甘く蕩けそうな香りがふわりと鼻腔をくすぐる。 「・・・今日は随分大胆だね、ヴェクター」 「そうかな?」 薄暗い部屋で姿が重なり、嬌声だけが響いていた 「「トリックオアトリート!」」 カフェで仕込みをしていると、小さな可愛らしいお化けが2体現れた。かごを持つ手が見えてるのはご愛嬌 「あらあら。そうですね、キャラメルなんてどうですか?」 早く早くと急かすお化けにキャラメルを5つ。これ以上は水色の髪の医療人形から止められている 「きゃらめる!きゃらめる!」「コルフェンに見つからないようにしないと!」 パタパタと元気に次の獲物へ駆けていく後ろ姿を見送ると、指揮官が思い出したようにつぶやく 「そうか、今日はハロウィンか」 「ふふっ、後で和私も指揮官にもトリックオアトリートしなければいけませんね」 「・・・スプリングフィールドのお眼鏡にかなうお菓子があったかな・・・」 半分冗談、半分本気。イタズラは何をしようか。・・・ちょっとくらい欲張ってもバチは当たりませんよね・・・? 「・・・こんな日だし、私もちょっとコスプレするか」 思案にふけっていると、指揮官がそんなことを言い出す。何を着てくるつもりなのか。狼男?吸血鬼?昔のコートを着て「グリフィン指揮官」、なんて・・・ 「わるいこ゛はいねか゛ー!」 「「ぎゃー!ばけもの!」」 「ロベラ、ちょっと匂いかがせてくれ」 「し、指揮官!そういうのは後にしてください!まだ、準備が・・・」 「リヴァ、ちょっと匂いかがせてくれ」 「あら、指揮官にそんな趣味があるなんてね」 「ナガン、ちょっと匂いか、加齢臭?」 「おぬし!」 「ベルーガ、ちょっと匂いかがせてくれ」 「なんだ?夜の誘いか?もっと気の利いたコト言ってくれよ」 「カリン、ちょっと匂いかがせてくれ」 「指揮官様!それは猫です!私はこっち!こっちです!」 「サブリナ、ちょっと匂い、うおっすっげぇピザの匂い」 「指揮官も食べる?」 何さ!今スレ荒らして忙しいから後にして、指揮官! 『クロとセックスしたい』『デカパイクロ🍨』『そうだね×100』『クロと駄弁りながら友達ックスしたい』・・・送信! ほら!めっちゃそうだね、つくじゃん!指揮官のアホ!ED!インポ!お父様! 『喘ぎ声汚そう』『デカパイ人形のほうがいい』『ななっぺのほうがいい』『ブルパップはちょっとね・・・』はぁ!? クソ!この低能「」ども!脳味噌詰まってんの!?こいつdel!こいつもdel!アイツもコイツもdeldeldel! アンチどもめ!こんなスレ爆破して、削除権取られた!!指揮官!助けてよぉ!! エルモ号監視カメラ クルカイ・ミシュティの部屋 3:10 クルカイ起床 3:30 クルカイ退室 5:36 アンドリス入室、アンドリス・ミシュティ退室 11:47 ミシュティ入室 12:23 ビヨーカ・クルカイ入室、ビヨーカ・クルカイ退室 17:36 指揮官入室 18:52 指揮官・ミシュティ退室 21:23 クルカイ・ミシュティ入室 22:36 指揮官入室 0:12 指揮官退室 「いいですか。ちゃんと指揮官様の所で『カリーナさんから紹介されてきました』って言うんですよ」 「大丈夫だって。ちゃんと言うって」 ヘラヘラとした笑みを崩さない人形を前に、流石のカリーナも辟易する グリフィンの恥部中の恥部とは言え、あのリー・エンフィールドが太鼓判を押した人形なのだ。・・・本当か? 「エルモ号?だっけ。ちゃんとWifi飛んでるかなぁ。配信ネタには困らなそうだけどさ」 「はぁ・・・少なくともルート情報とかは漏らさないようにしてくださいね」 「心配性だねぇ、『元』後方幕僚殿は♪」 反射的に握った拳をぐっ、っと堪える。深呼吸だ、カリーナ。アンガーマネジメントだ、カリーナ 「いったぁ!」 アンガーマネジメントの結果、一発くらいは必要経費と思うことにした 「ぶーぶー、人形差別はんたーい」 「はいはい、早く指揮官様と合流してくださいね、MDRさん」 「「「激化40を失敗するたびに人形とセックスしなければいけない部屋!?」」」 「馬鹿らしい。指揮官、早く指揮を。完璧にこなして見せます。ミシュティ、ペリティア、行くわよ」「え゛~」「蝶々・・・」 酸パ、失敗 「指揮官、もっとです!奥、突いてください♥」「あたし、寝てていい・・・?」 「ふふっ、では今度は私たちが」「終わったらビールください」「私はピザも食べたいなぁ」 水パ、失敗 「指揮官、まだデキますよね?さぁ」「スプリングフィールド、次は私!」「ビール!ビール!冷えてますか!?」 「はぁ、404第2小隊出撃」「シャークリーのライブ、ちゃ~んとみててよね♡」「某が守る!」 火パ、失敗 「んっ、はぁ♡失敗しちゃったからね。これは罰♡」「アイドルなんだから、お触りはダメだぞ♡」「今だ!」 ちょっと!そのちんちくりんよりMDRが実装されないってどういうことさ! この最強ブルパップが実装されないなんて、運営はロリコンのペド集団なの!? 指揮官だってそう思うでしょ!?思うよね!思ってるでしょ・・・? MDRは周年実装?有名人形は後に取ってる?ふ、ふ~ん、指揮官がそこまで言うなら待ってあげてもいい、かも・・・ エルモ号ラジオ~! 今夜も始まりましたエルモ号ラジオ!22時から始まる貴方の夜のお供! パーソナリティはお馴染み、私メイリン!さらに!本日は特別ゲストにお越しいただいておりまぁす! 「どうも、指揮官の指揮官で~す」 はい!ありがとうございます! 2日ぶり34854回目?でしたっけ?ゲストの指揮官をお迎えしてお送りするエルモ号ラジオ! 最初はいつものやついってみましょ~!『メイリンの今日のお酒!』コーナー! え~、今日のお酒は4年物の米酒。いつもより長めに熟成されて口当たりがまろやかなやつなんですよ~。おいし~ 「メイリン、私にも一口頂戴」 え~、どうしよっかな~。・・・そうだ、ちょっとこっち来てくださいよ ちゅっ、んっ、ぷはっ・・・どうです~?お味の方は~ 「・・・いいね、毎日飲みたいね」 んふ~、さて次のコーナーに行く前に曲のリクエストで~す Connexion! 「ミシュティが起きてる!?」 「うるさいなぁ・・・あたしだって自分の銃のメンテくらいするよ・・・」 ミシュティが誰に起こされるでもなく、自分で起きて、自分の銃のメンテをしている!明日はきっと混合型ブージャムの群れが来るに違いない 「・・・へぇ~、噂通り時計みたい」 「指揮官でも触んないでよ。パーツ、ないんでしょ?」 分解と清掃するミシュティの手に迷いはなかった。まるで彼女自身が時計ような、精緻な手捌きだ 他のどの銃とも違う特異で異端な設計。よくもまぁこんなものを作ろうと思ったものだ。昔の人には頭が上がらない 「いいもの見せてもらったわ。ありがとう」 ミシュティが最後のパーツを元の場所に収める。のっぺりとした長方形の箱のような、未来的ともいえるG11の元の姿に戻った。・・・確かに、この見た目ならレーザーでも撃ちそうだ 「・・・ねぇ、あたしのメンテもしてくれない?」 銃の持ち主に視線を戻すと、作業を終えた彼女がそんなことを言い出した 仕方ない。クルカイとのミーティングは2時間後に延期してもらおう 「起きて」 「むにゃ・・・だれ?ヴェクター?」 まだ起きる時間には早いはずだ。重い瞼を何とか開け、ゴシゴシと目頭を擦る 「・・・誰?」 「寵姫の朝暉だよ・・・冗談」 指揮官がまたおかしな人形を拾ったのか?自分で寵姫と名乗るか、普通。完璧を自称したり、金曜日でもないのに華金を祝ったり、まぁ人形は大体頭がおかしいものだ 「ふぁぁあ、あぁ、そよ風小隊の」 こくり、と頭を縦に振る黒髪の人形。何故かビヨーカみたいなサキュバス衣装を着てた 「指揮官にさっき挨拶してきたから、ちょっと寝かせて」 「え゛~、ってちょっと!勝手に入ってこないでよ!」 静止を無視して毛布に潜り込んだ朝暉をどうしたものかと悩んでいると、今度は別の人形が現れた 「何してるの?ミシュティ」 「あっ、ヴェクター」 「そこにいるのって朝暉?ふーん・・・私もそこで寝ようかな」 「え゛~もう狭いんだか、ちょっと!もう!あたしのベッド・・・」 エルモ号では慢性的な金欠のため、とうとう人形への給料未払いが発生した そのため一部の人形は給料の代わりに、指揮官の身体を好きにしていいという約束を取り付けた 噂を聞きつけイエローエリア、グリーンエリア、ホワイトエリアから人形たちが駆け付けた。その中には、非軍事管理局の長官も混じっていたという噂である 当然、そんなに多くの人形に対して給料を払えるはずもない。指揮官のへそくりどころか、メカニックの秘蔵品、金色のフィギュアまで売って金を工面しようとしたが、雀の涙程度にしかならなかった しかし、慈悲深い人形達は指揮官から決して無理な取り立てをすることなく、むしろ指揮官に尽くしたという かくしてこれがGRFの母体になったという 「こ・ん・ば・ん・は♥指揮官♥」 「ん・・・私、寝てた?」 「ぐっすりとね。はい、コーヒー」 徹夜には慣れたと思っていたが、流石に4日連続は堪えたようだ。いつ意識が落ちたのかもわからない。慌ててモニターを確認するが特に異常は発生していないようだ 受け取ったマグカップからコーヒーの香ばしい香りが立ち昇っている。本職には及ばないが、彼女の淹れたコーヒーはとても美味しい 「悪いわね。こんな夜遅くに」 「気にしないで。好きでやってることだから」 普段の人を食ったような態度はなりを潜めていた。そこには可憐で華奢で人を心配する一人の医療人形がいた 「・・・何?」 食い入るようにコーヒーを嚥下する私を観察するフローレンスに尋ねる 「フフ、今回は注射じゃなくて経口にしてみたんだ。どう?『効果』出てきた?」 「あ、貴方ね・・・ふぁっ!」 フローレンスの指がわき腹から胸をなぞる。身体は熱く、力が入らない。まるで熱病に浮かされたみたいだ。特に下腹部が疼く様に熱を持つ 「前は逃げられちゃったから、配合変えてみたんだ~。さぁ、お楽しみといこう♥」 天使の笑みの悪魔が、そこにいた 「・・・あれ?」 知ってる天井だ。自分の部屋だから当たり前だ。しかし、何かがおかしい。昨日はフローレンスに新薬を投与されて・・・ダメだ、記憶がない 「・・・」 横にはいい笑顔で寝てるフローレンス。当然のように服を着てない。ここは起きる前に逃げるのが吉! 「指揮官、ふふっ」「ご主人様、昨日は御寵愛を頂き・・・」「ア、アンタ!ちょっと昨日は!」「ヴェプリー、もうお嫁にいけない・・・」「今度から寝てる時にシてよね・・・」「完璧な妊娠です」「寵姫の朝暉だよ・・・本気」「指揮官💙昨日は・・・きゃー💙」「指揮官、流石にリアル女装は・・・でも、まぁ、よかったよ・・・」「指揮官、約束通り祝い酒くださいね!」 「なんだ・・・何が起きている・・・」 すれ違う人形、人間から言葉を投げれるが、何一つとして身に覚えがない。そもそも昨日の記憶が一切ないのだ 「はぁ♥指揮官、昨日は激しかったね♥壊れちゃうかと思った」 「俺は、俺は一体何をしたんだ!」 当人だけが何も知らない 「はっ、はっ、はっ・・・」 カラダがアツイ。ノドが酷く乾く。愚息は痛いほどに屹立してる。冷静に、落ち着け、理性が何とか宥めているが、少しでも天秤が傾けばあっという間に均衡は崩れるだろう 「アハッ!どう?『新薬』は?♥マグラシアじゃ結局できなかったからね♥」 後ろ手の手錠がジャラジャラと煩わしい声を上げてる。くっつくほどの距離でフローレンスがそう囁く。ふぅ、と吐息が耳にかかる。ぞわぞわとした感覚に心地よさすら覚える 「・・・暖房はいらなそうだね」 「へぇ・・・確かに今の指揮官は温かいね。触ってるだけで火傷しちゃいそう♥」 指が頬骨を辿り、首筋に流れ、鎖骨を弄る。触られた箇所が殊更熱を持つように感じる。 そのまま彼女が密着する。自分とは違う温度が伝わってくる。そして、甘い匂いがさらに強くなる 身をよじっても大した抵抗になっておらず、むしろフローレンスを喜ばせているようだ 「・・・そろそろ副作用も終わるんじゃないか?」 「つれないね、指揮官」 残念そうに離れる彼女に、ほっと胸をなでおろす。少々、いや、かなり危なかった 「次はもっと強いやつ調合してくるからね♥」 「勘弁してくれ・・・」 「指揮官💙診察の時間・・・」 「じゃ、指揮官♥お薬はちゃんと飲んでね~飲まなかったら、罰ゲームね」 「・・・わかってるよ、フローレンス・・・」 「指揮官!あの医療人形はなんですか!私というものがありながら!指゛揮゛官゛!」 「うわっ、びっくりした。新しい医療人形だよ、元グリフィンの」 「元グリフィンって、問題のある人形しかいない伝説のFランPMCの人形ってことじゃないですか!」 「さらっと私もディスったね・・・」 「いいですか。指揮官の診察はこのコルフェンにお任せされてるんです。メイリンちゃんもヘレナちゃんもメラニーチャンもです!」 「いや、別角度から診察して判明することもあるじゃん・・・セカンドオピニオンってことで・・・」 「これじゃNTRじゃないですか!もう、おやおや~💙って言ってあげませんよ!ロクサットマゾ射精管理してあげませんよ!」 「いやどこがNTRなの?ロクサットマゾ射精管理って何?」 「指揮官のアホ!唐変木!ウィリアム!うわぁぁぁぁあん!!」 「戦いフィールド62042か・・・ちょっとコンクエするか」 「ヴェプリー登場☆バーン!」「おぬし!角待ちシャッガンはやめるんじゃ!」「うるさいよ・・・」「完璧なエイムで、はぁ!?」「戦車こそ戦場の王者ですわ」「センタウレイシーさん、こちらは片付きました。敵航空戦力無し」「てんちょー!たすけてー!」「今だ!」「はーい♥チクっとするよ」「ちょっと!その死体はコルフェンのポイントです!」「曇りなき刃・・・戦場を駆ける・・・」「誰がキルデス0.1ですって!」 「パケットモンスターするか・・・」 「ただのゲームだよ。ちょ~っとスリリングなだけ」 目の前には開拓の道。そして、怪しげな注射器が2本。中にはそれぞれピンクとブルーの薬液が充填されている 「・・・あのね、フローレンス、」 「指揮官はどっちがいい?こっちはスリル満点!こっちは、アハッ♥」 聞いてない。そして口ぶりから中の薬は中々危なそうだ。まぁフローレンスが調合したものならば死んだり、身体に害が出たりしないだろう、多分・・・ 「負けたら1本、トんだら2本ってことで。ゲームスタート♪」 ──────── 「マ、マイナス・・・」 「もうイっちゃったの?じゃあお楽しみの罰ゲームタ~イム♥」 爛々と瞳を輝かせながらゆっくり近づく。ゆっくりと後ずさりするが、大して逃げることはできなかった 「こっちは身体の感度をあげるお薬で、こっちが痛みを快感に変えるお薬♥」 「フ、フローレンス・・・お願いだから・・・」 懇願の声が届く前に腕に1本目の注射器が突き刺さる。シリンダが押し込まれ、中の薬液がゆっくりと体内に侵入する。効果が現れる前に、素早く2本目の針が挿入される。効果は覿面だった 「指揮官♥次のゲームをしない?♥」 悪魔がそう囁いた そこの医療人形!そうじゃ、おぬしじゃ 何故止められたかわかるかの? 身に覚えがない?その後ろでふらふらしとる指揮官はなんじゃ、手錠までつけおって エルモ号の風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律、その第7条11項「みだりに意識のない指揮官の身柄を移動させてはいけない」に違反しとるぞ 新薬の実験?治験は?人形で試した?人間用の薬を人形で試したと言ったか?おぬし とにかく連行じゃ、連行。全く・・・医療人形は皆こうなのか? 手錠の鍵は、ここじゃな。ええい!尻を振るな! こちらナガン、こちらナガン。要警戒大将の人形1名捕縛、応援願う さて・・・くっ、わしだけじゃ指揮官を引きづるのは難しいの・・・おっ、ちょうどいい。そこの熊?おぬし、ちょっと手伝うのじゃ 「あっ!指揮官!」 「珍しいね、ビヨーカ」 我が物顔で自分のベッドを占領している404第1小隊隊員は、悪びれる様子もない。ポテチとコーラが手元にないだけ良心的、ということにしよう 「聞いてよ指揮官!お姉ちゃん酷いんだよ!せっかくこの服着たのにちっとも反応してくれないの!ハロウィンなのに!」 「そう・・・」 触れないようにしたのに、自分から触れにいくのか・・・。普段の服は何処に置いてきたのか。まるで淫魔と言わんばかりの装束に身を包んでいた。特に胸の部分はこれでもか!と言わんばかりの主張をしており、もう脱いだ方が恥ずかしくないのでは?という感じだ 「で?何の用?」 「それは・・・ちょっと・・・えへへ・・・」 妙に歯切れの悪い。大方、姉のクルカイと喧嘩でもしたのだろう。 「分かった分かった。好きなだけここに居ていいから」 「わぁい!やった!指揮官優しー!大好き!ちゅっ!ちゅっ!」 途端に元気一杯になり、万力の如き力でホールドされる。・・・うおっ、ぱいでっか・・・やっぱりデカパイがいいよな・・・ 「指揮官、ビヨーカを見ません、で・・・した・・・あ?」 「あっ!指揮官!」 「珍しいね、絳雨」 我が物顔で自分のベッドを占領しているそよ風小隊隊員は、悪びれる様子もない。ポテチとコーラが手元に置き、挙句にプロジェクターで映画まで見ている 「聞いて聞いて!お姉ちゃんってば酷いんだよ!せっかくこの服着たのに『暴れるならセカンダリで暴れなさい』だって!」 「そう・・・」 目を逸らしていたのに、自分から曝け出すのか・・・。いつも着ている服は何処へやら。まるでカンフーマスターのような衣装は、彼女の活発な印象をより際立たせていた。(エルモ号の中では)慎ましやかな胸とは反対に、スラリと伸びた脚はまさに美脚、といった感じだ 「で?何の用?」 「それは・・・ちょっと・・・えへへ・・・」 妙に歯切れの悪い。大方、姉の黛煙と喧嘩でもしたのだろう。 「分かった分かった。好きなだけここに居ていいから」 「やったぁ!指揮官最高!大好き!えへへ~」 待ってましたと言わんばかりに跳ね起きる。あっという間に手を掴まれそのままベッドに一緒にダイブを敢行。・・・欲を言えばもっとデカパイが・・・姉の黛煙くらいほしい・・・ 「指揮官、絳雨を見ません、で・・・した・・・は?」 「指揮官さま!外行こうよ!外!身体動かさないとナマっちゃう~!」 そう絳雨にせがまれて降りたグリーンエリアでハリウッド映画もかくやという逃走劇と銃撃戦は脇に置いておく 「つ、疲れた・・・」 「じゃあ、そろそろ休憩する?」 絳雨が指さす先にはネオンで輝く「HOTEL」と書かれた城だった 話が膨らまないので没 「指揮官~💙診察の時間ですよ~💙」 「おわっ!えっ!?コルフェン!?ちょっ、フローレンス・・・まずいって!」 「指揮官?」 「・・・すまん、コルフェン。明日にしてくれるか?」 「ちょ~っと指揮官で遊んでるんだ♥」 「フローレンス!悪いコルフェンまた後で」 「指揮官?」 「指揮官!トリック・オア・トリート!」 勢いよく部屋に飛び込んだのは、異常に露出の多い服?に身を包んだビヨーカだった 「・・・痴女?」 「指揮官!お姉ちゃんみたいなこと言わないでよ!」 床をだんだん!踏み鳴らし、我、心外!と言わんばかりといった様子だ。脚が上下するたびに、大変豊かな胸がバルンバルン!と揺れる。もう少しで見えてしまいそうだ。・・・何が、とはいわない 「で、何の用?」 「だから!トリック・オア・トリートだって!お菓子頂戴!」 子供か。むしろヘレナやメラニー、メイリンにお菓子を配ってほしい。流石に大丈夫だろうという量を用意したのだが、子供の甘いものへの執着を文字通り甘く見ていた 「お菓子は配給切れだよ。先にちびっこ幽霊に全部強奪されてね」 「そうなんだ。じゃあ、悪戯しかないよね」 ビヨーカの紅い双眸が怪しげに輝く。何を、と問う前にサキュバスが襲い掛かった 「ちょっ!ビヨーカ!?」 「ダメダメ!『お菓子』がないなら『犯し』しかないよね!」 何言ってるんだこいつは!引きはがそうにも、力に差があり過ぎる 「それに、指揮官を手に入れればお姉ちゃんも手に入ると思わない?私って天才かも!?」 暗い部屋で男女が絡み合っている。片方はエルモ号指揮官。片方は404小隊のビヨーカであった 彼女の大きく非常に豊かな双胸が、指揮官の一突きごとにダイナミックに揺れる。部屋には肉がぶつかる音とビヨーカの嬌声が淫靡に響いていた 「ビヨーカ、そろそろ・・・」 「うん!出して!奥に出して!」 懇願するようなビヨーカの言葉に指揮官の腰の動きがさらに激しくなる。 一瞬の停止の後、ビヨーカの人口膣の最奥で吐精する。もう何度目めの夜伽も覚えていないが、ただ一つわかるのは彼女との相性は最高と言うことだけだ 「ビヨーカ・・・もう無理・・・」 「えへへ、私も、これ以上は無理かも」 揃ってベッドに倒れるように横になる。ベッドサイドテーブルからボトルを手にし、一口。疲れた身体に水分が染み渡る 「ビヨーカ、水」 「んっ」 ボトルを手渡そうとすると、口付けを待つような体勢に。いつものことだ。二人の時はこうして口移しで何かを飲ませることを強要するのだ。・・・応じてる自分もどうかと思うが その時、前触れもなく扉が開く 「ビヨーカ・・・アンタ・・・」 「えへへ~、ゴメンねお姉ちゃん」 「ミシュティ!起きてって!」 「ぬぁ・・・ねむ・・・何?ビヨーカ・・・」 開き切らない目で侵入者を見つめる。ようやく回復した視覚モジュールには、また馬鹿みたいな服を着てたビヨーカがいた 「ねね!どうこの服!指揮官喜ぶかな?」 「何でもいいんじゃない?おっぱいが見えてる服なら何でも喜ぶよ」 ぞんざいに吐き捨てる。指揮官は肌色が多い服が好きなことはみんな知ってる。それとおっぱいが大きければいいらしい。・・・指揮官と寝たことのある人形なら皆知ってる 「もっと指揮官が私の虜になるようなアドバイスとか内の!?」 「知らないよ・・・」 心底どうでもいい。こっちは寝ているところ叩き起こされたのだ。早いところ指揮官の寝込みでも襲ってほしい ・・・ちょっとムカついてきたので、意地悪でもしてやろう 「指揮官ならもっと露出が多い服が好きなんだってさ。前言ってたよ」 「そうなんだ!ミシュティも偶には役に立つじゃん!」 言うなり僅かに残っていた上半身の布を引きちぎる様に切り離す。・・・痴女を超えて、もはや露出狂だ 「待ってて、指揮官!レッツ!トリック・オア・トリート!」 邪魔者は居なくなったことだし、もうひと眠り グリーンエリア郊外。築3年のボロアパートに指揮官が住んでいる。当然、グリーンエリアの永住チケットを破り捨てた指揮官が借りれるわけもなく、カリーナから提供された一室だ 「指揮官~いる~?」 ざあざあとバケツをひっくり返したような雨の中、玄関から呼ぶ声が聞こえる。部屋の防音はしっかりしてるのに、玄関の防音が死んでるのは何故なんだ 「えへへ、今日も来ちゃった・・・」 「サブリナ!とにかく入って!」 戸を開ければぐっしょりと全身ずぶ濡れのサブリナが突っ立っていた。短い癖毛からは水滴が絶え間なく滴り、服に至っては透けて見えてしまいそうだ 「ちょっとね、一緒にお昼でもって・・・それじゃ、お邪魔しま~す・・・」 毎日のように部屋を尋ねているのに律儀なことだ。毎度、昼時にはこうして訪ねて来る バスルームに消える彼女を見送り、着替えを用意する。もう慣れたものだ。彼女用のタンスから下着と着替え、バスタオルのセット。 「サブリナ~着替えおいとくからな~」 「は~い。ありがとう!」 無駄に広い脱衣所に替えの服たちを置く。今サブリナが使ってる風呂も無駄に広いのだ 暫く待っているとサブリナが浴室から出てくる。雨とは違ってシャワーでしっとりと濡れた彼女はどこか妖艶な雰囲気を身にまとっていた 「じゃ、指揮官。お昼食べよっか」 「流石にこのシチュでピザはちょっとなぁ・・・」 「え?ピザはダメ?なら、パスタにする?」 最近の人形たちの間で流行っている小説は「悲恋系」であります! 潜水艦基地で殿を務めて、ボロボロになった「私」はとうとう爆発する列車砲を目撃するのであります もうダメだ。という気持ちと、せめて指揮官だけは。という気持ちで生存者を救出に向かうのであります 辛うじて原型をとどめていた臨時指揮室には指揮官が倒れているのでありますな。「私」が何とか指揮官を引っ張り出すのであります 意識が戻った指揮官から「君は?」と問われるのでありますが、ここで「私はあなたの人形です」と応えるのであります。指揮官のことだからきっと声だけで「私」とわかってしまうのでありますなぁ そして、指揮官を他の人形に託して「私」は別の救助者がいないか炎の中に静かに消えるのであります 素体がスクラップになるも人形だから問題ないのであります。けれど、指揮官はずっとこのことが心の棘になっているのでありますな 10年後、新しい素体と、昔の記憶を持ってグリーンエリアで慣れない仕事をしているときに指揮官が訪ねて来るのであります 「君は・・・あの時の・・・」 でも「私」はその時の記憶はないから「すみません、指揮官。私の最後の記憶はタリン脱出までです・・・」としか言えないのでありますな 『ババアが無理してて草』『このメイド卑し過ぎない?』『水属性って水商売の水なの?』送信! あっ、指揮官wスレ荒らしてるからちょっと待ってよw 何?あっ、もしかして~w私のカラダにサカってるの~?ま~、この私のパーフェクトボディに見惚れるのは仕方ないよねぇ~w見抜き~?wしょうがにゃいにゃ~w え?違う?スプリングフィールドとセンタウレイシーが呼んでる? ・・・指揮官、ちょっと私、急用が出来たから、待ってよ!助けて!やだやだ!まだ死にたくない! 人形だから死なない?そういう問題じゃない!指揮官のアホ!インポ!ウィリアム! センタウレイシーの朝は早い。日が昇る前、月が昇っている時間から彼女の一日は始まる シャワー、身だしなみ、自分の洗濯物をエルモ号の超巨大洗濯機に放り込む。それが終わればズッケロで店長と乗員全員分の朝食と昼食の仕込みを。 「おはよう、センタウレイシー」「ヴェプリー起床☆」「ミシュティ!早く食べなさい!」「寝かせてよぉ・・・」「お姉ちゃん!私にもあーんして!」「朝は餃子ね」「昼も夜も餃子でしたよ!隊゛長゛」「お姉ちゃん~、あたしも外に行きたいんだけど~」「遊びたいだけでしょう?」「米酒・・・」「飲み過ぎじゃないの?アンタ・・・」 戦場の如き朝を捌き切る。だが、その中に一人だけ姿の見えない。きっといつものように仕事をして朝食のことも忘れてるのだ 「センタウレイシーさん、あの人にこれを持って行ってください」 店長から持ち帰りに使う箱を渡される。これもいつものことだ 朝の空気は少し冷たい。これから本格的に冷え込むだろう。・・・夜遅くまで起きてるあの人とミシュティさんのために毛布の準備をしよう 「ご主人様、珈琲をお持ちしました。軽めにアメリカンクラブハウスサンドでもどうぞ」 指揮官は恒星のような人間だ。私たちを照らす太陽の如き存在。 指揮官が太陽なら、私たちは彗星だ。太陽に近づき、蒸発する運命の彗星 「あら、トロロ。最近はよく来るわね」 「・・・ここが一番星が見えるので」 もっと気の利いた言葉を言うべきというのはわかっているが、生憎そんな便利な機能は備わっていない。全面ガラス張りの指令室はわざわざ外に出る必要もないのは事実だが 持ち込んだ望遠鏡を覗き込む。薄曇りだが、観測には問題なさそうだ 「何か見える?」 集中しているとすぐ横に指揮官が一緒に座っていた。少し身動ぎすれば唇を奪えてしまいそうだ。密着した箇所から指揮官の温もりが伝わってくる 「・・・あれがアルフェラッツです。アンドロメダ座の」 ん~?と怪訝な顔を見るによくわかっていないみたいだ。・・・わかりやすい部類なのだが。 指揮官と言葉を交わす度、視線を交わす度、メンタルをコントロール出来なくなる。感情エミュレータが暴走しそうになる 「指揮官、少しお話が、」 彗星は太陽に触れれない。核が気化するから。自分を保てなくなるから それでも、僅かな時間なら。この気持ちが届くまでは。 「ラスト!」 カッコよく飛び蹴りで〆!完ッ璧!ふふ~んっ、これは指揮官もお姉ちゃんもあたしを褒めざるをえないでしょ! 「指揮官!どうよ、さっきの戦闘!」 「よしよし」 大急ぎで指揮官の下へダッシュ!そしたら指揮官が頭を撫でてくれた。こそばゆい感覚があたしを包む 「ちがーう!もっと、こう!『大人』なご褒美が欲しいの!」 お姉ちゃんが貰うような『大人』なご褒美が欲しいのだ! 「指揮官!あたしを子ども扱いしないでって!お姉ちゃんとヤってるってコト知ってるんだからね!」 当てずっぽうで言ってみたが、指揮官の顔を見るにどうやら当たりらしい。お姉ちゃんも朝暉も朝、指揮官の部屋から出てきたからもしかしてと思ったけど・・・ 「あの、絳雨・・・他の人には・・・」 「もっちろん!言ってないよ。人の秘密を勝手に話しちゃダメだってお姉ちゃんから言われてるもん」 おしゃべりは好きだが、秘密を喋るほど口は軽くない。けれど、ご褒美は欲しい 「あたしもお姉ちゃんたちと同じご褒美が欲しいな~。そうじゃないと口が滑っちゃいそう」 数舜の逡巡の後、ご褒美を貰えることになった。ふふ~ん、言ってみるものだ 「部屋行こうよ!早く早く!」 ニキータ・・・おぬし、子供が好きじゃというが、わしの今の扱いは酷いと思うぞ・・・ ええい!いいから離さんか!頭を撫でるでない!ハグもいらん! 全く・・・年長者に対する敬意というものが・・・ニキータ!下ろすのじゃ!誘拐じゃぞ!ニキータ! 「・・・なんと、米酒がなくなってたんですよぉ・・・」 「・・・メイリン禁酒ね」 すっかり肌寒い季節になったが、納涼怪談話が行われていた。 「あたしの番だね」 珍しく起きていたミシュティの語りが始まる。穏やかな語りはむしろ恐怖を増大させる 「グリフィンにいたときの話なんだけど、ダミーっていたじゃん。あれの話。ダミーにも魂というか、自己意識が芽生えないのか、って思ったことない?ダミーって基本あたしたちで操作するし、ある程度のプリセットは入ってるんだけど完全自律なんて出来ないんだ。でもある日、あたしのダミーが基地を歩いてるのを見たんだ。クルカイに怒られるから戻そうとついて行ったら、」 「ついて行ったら・・・?」 無意識に唾をのむ。引き込まれる、という表現に相応しい。というかそんなことあったなら報告上げてくれ。聞いてないぞ 「・・・なんだっけ?ふぁ・・・あたし眠くなったから寝るね・・・」 お休み、と部屋を出ていくミシュティを見送る。なるほど、物語の結末は少々謎が残るくらいが面白い、ということか 翌日、どうしても結末が気になって昨日の話の続きを 「え?昨日?アンドリスとずっと寝てたけど?」 「ハァッ!」 裂帛の気合いと共に横一線に刃が駆ける 程なく、すべてのターゲットが切り刻まれた 少しの残心の後、キャロリックが愛刀を収める。どうやら訓練は終わりらしい 「で?何の用?」 鋭い視線が飛んできた。彼女をよく知らぬ者であれば喧嘩を売られていると思われがちだが、彼女の根は非常に愛情深く、慈愛に満ちている 「エルモ号の切り込み隊長がずっと訓練してるから、ちょっとは休憩してもらおうと思ってね」 そういうとふぅん、と興味なさげに私の傍に腰を下ろす。訓練で加熱した素体は人間と同じような熱を持っていた 「そういうアンタこそ、ちゃんと休んでるの?メイリンもだけど、倒れられたら困るんだけど」 「今まさに休憩中。あぁ、メイリンにも休むように言ってこなくちゃ」 腰を浮かすと、それを咎めるように裾を掴まれる 「ちょっと指揮官!」 振り向けば彼女の耳がぴょこぴょこと動いているし、身体は落ち着きなくそわそわとしている。いつもの彼女を知っている人物がいれば思わず吹き出してしまうだろう 「その・・・もうちょっと、一緒にいてもいいんじゃない・・・?」 我がエルモ号の兎は寂しがり屋で独占欲が非常に強いのだ 『チャレンジ無理だろ!エアプ運営調整しろ!』『クロの実装まだ~?』『ななっぺと同時実装まで待て』『人形異常愛者は早くクロ様迎えに来るべきでは?』送信! あっ、指揮官~w書き込んですぐ来るとかwどんだけ私のこと見てるの?w まぁ~、グリフィンでもマグラシアでも最強のこのクロ様を、指揮官が放置するわけないよねぇ~?wあ、丁度いいしエナドリ取ってきてよ、ダッシュでw 何さ、今日はまだ荒らしもクソスレ立ても盗電もしてないじゃん!ちょ~っと指揮官の石を貰ったけどそんだけじゃん! ほら!やっぱり私悪くな、あっ、黛煙先輩・・・お疲れ様です・・・っす。いや、別に何もしてないっす。 すぐお茶お持ちするんで・・・し、指揮官!待って!置いてかないで!真顔の黛煙先輩怖いの知って、待って!ねぇ!お願いだから! 築5年の新築のボロアパートに住んでいると、モシンナガンが訪ねて来る 10年ぶりの再会は雨の日であった 「来ちゃった・・・」 それだけ言う彼女を部屋に迎え入れる。決して広いとは言えない部屋は重苦しい空気に包まれる。彼女が着替える衣擦れの音が響いていた 「ねぇ・・・」 後ろを向いていると、彼女から抱きすくめられる。背中に柔らかな感触と温かさが伝わってくる 耳に吹きかけられる吐息がこそばゆい 「指揮官・・・」 甘えるような声はすぐに嬌声に変わった --------- 「指揮官殿が重い感情を持った人形から襲われる作品が売れるでありますなぁ!この後、別の人形から指揮官がNTRるやつを書けばさらに売れるでありますなぁ!冬までにまずは2冊であります!」 「すみません指揮官。少々『コーヒー豆』の買い出しに付き合ってくれませんか?」 「構わないよ、スプリングフィールド」 ズッケロのコーヒー豆はスプリングフィールドが全て取り仕切っている。その彼女が買い忘れ、なんて間の抜けたことはしない。単なる符丁だ 「ふふっ、夜のグリーンエリアは指揮官も経験はないでしょう?」 素直に頷く。治安の比較的いいこのグリーンエリアは少なくない建物がライトアップされ、幻想的な雰囲気を放っている 「夏になると花火も上がるんですよ。この時期はハロウィンですね」 手を取る彼女がそう教えてくれる。聞けば夏頃に一悶着あったらしい。 「意外とスプリングフィールドも無茶するね」 「あら。指揮官が仰いますか?」 仰る通りだ。うっ、と顔を顰めていると、スプリングフィールドが柔らかに微笑む 「さぁ、もう夜は遅いですし、そろそろ休みませんか?ホテルを取ってありますので」 そう言って腕を引く彼女の力は意外なほどに強かった 「ゴホッゴホッ。す゛み゛ま゛せ゛ん゛指揮官」 「いいから。今日はもう休んでなさい」 起き上がろうとするメイリンを無理矢理ベッドに押し込める。彼女の仕事病には困ったものだ。・・・自分のことは棚に上げておく 何のことはない。季節の変わり目の急激な冷え込みと徹夜、免疫力はガタ落ちだったのだろう 「後でコルフェンとフローレンスも呼ぶわ」 風邪の特効薬、なんてものは持っていない。出来ることは栄養をとらせて温かくして寝かせるだけだ 「行かないで・・・」 ベッドから離れる直前、毛布から伸びた手が私を引き留める。今にも泣きだしそうな子供のようだ 「・・・どこにも行かない。約束する」 ベッドサイドに腰掛けると、膝枕を要求される。メカニックからの要望であれば断るわけにはいかない。頭を撫でると、安心したように強張りが解けたようだ それでも、彼女は寝付くまで決して手を離すことはなかった -------- 「ぶぇっくしょい!うー・・・」 「おやおや~💙指揮官、風邪ですか~💙」「ちょっと試したい薬があるの♥風邪によく効くやつ。副作用は、フフッ♥」 ・・・風邪はすぐによくなった。風邪は。 「マキアート、何読んでるの?」 「なっ!なんだクルカイか。あっち行きなさいよ」 バッと雑誌を隠し、クルカイとわかるとぞんざいに追い払う仕草をするマキアート 「『気になるあの人の心を鷲掴み!?行為するまでの10カ条!』?」 「ちょっと!もう!」 曰く『直接的な下ネタは避けましょう』だの曰く『男性からのアプローチを逃してはいけません』だの 「はっ、殺しのエリートから恋愛のエリートにクラスチェンジするの?マキアートにそんなモジュールがついてたなんて驚きね」 「うっさいわね!自称エリート人形。あぁ、10年間迷惑メール送ってたネトスト人形の間違いだったかしら」 あちらが煽ればこちらも煽る。なんとも面倒な人形達である 「二人ともここに居たのか。今日の任務について、」 「指揮官!今日の夜空いてますよね!少しお話があります!」 「指揮官!私だって話があるの!絶対空けてちょうだい!」 「いや、今日の夜はミシュティとセンタウレイシーに会う予定が・・・」 「お姉さんは警察?」 「ふふっ、昔はそうですよ」 子供は好きだ エルモ号の子供と言えばヘレナ、メラニーの二人。ボスと一緒にいると言うだけで訳ありなのだろう 「そう・・・指揮官は?」 「ボスは・・・今メラニーちゃんのためにお菓子を準備していますよ」 務めて明るく言ってみたが、正面の少女の顔は警戒と恐れ、怯えがありありと浮かんでいた 「そうですね。ちょっと散歩でも行きませんか?」 行先はズッケロ。スプリングフィールドとセンタウレイシーならばこの子も心を開いてくれるのではないだろうか ------- バンッ!ズッケロへの扉に手をかける直前、勢いよくそれが開いた 「にげろ!」 お菓子を両手に抱えたヘレナが駆けて行った。 「そこの菓子泥棒!止まりなさい!」 「とめたいなられいじょうもってこい!さつがなんぼのもんじゃい!」 「指揮官ー!!とう!」 「ぎゃぁ!」 抱き着く、ではなくタックルを喰らう。絳雨の愛情表現は少々過激だ。ソップといい勝負かもしれない 「どうしたの?絳雨。コーラップスストームだから外には出れないよ」 外は緑色の風が蜷局を巻いていた。この天候で外に出るのは自殺以外に言いようがない 「違うよ!指揮官に会いに来たの!ダメだった?」 恐る恐るといった感じで上目で見上げる。蜂蜜色の瞳に不安の色が混じっていた 「まさか。いつでも歓迎だよ」 「やった!指揮官大好き」 優しく頭を撫でる。子ども扱いしないで、と口を尖らせるも拒絶することはない 「私も絳雨のことは好きだよ」 エルモ号の面子はみな好きだ。グリフィンの皆もそうだが、同じ同僚として幸せになってほしい。そのためなら私はいかなる犠牲も払おう 「うそ!?夢じゃないよね・・・そうと決まればベッドに行こうよ!早く早く!」 ・・・そういうことじゃないんだけどなぁ。絳雨の愛情表現はいつも真っすぐで直接的で直情的だ。物のように担がれながらそんなことを思った 薄暗い部屋に嬌声と水音が響いている。男と女の行為を見れば、一目で情事の最中であることがわかるのだが、男は手枷足枷アイマスクまでされており、異様と言える 女が何度目かの絶頂を迎えたとき、電子音が響く 「時間だね。はぁ、もっとこうしたかったけど・・・」 名残惜しそうに銀髪の女が部屋を後にする。残されたのは男だけだ 「アイマス取ってよ、ヴェクター・・・」 監禁されてるのは我らが指揮官。3日前に突如現れた覆面集団(404第1部隊)に拉致されたかと思ったら、こんな部屋に押し込められたのだ その日から次から次へと人形が押し寄せてはセックス三昧。なんなんだこの扱いは 何にせよこんなアホみたいな状況から逃げなければならない。孕まない人形相手に腹上死、なんて笑いものにしかならない 「そうはいかないわ」 「うわ、ダンデライオン。思考読むなよ。というか君が噛んでるのかよ」 最悪だ。何でこの悪戯大好きなお子様AIがロ連上層部にいるのか。ロ連はもしかしたら馬鹿なのかもしれない 「私だけじゃないわ。カリーナとペルシカ博士もいるわ」 「え?何で?何か恨みを買うようなことした?」 「そういう台詞は本人たちの前で言うことね」 「ん・・・さむい・・・」 冬のエルモ号の空調は夜間停止されている。電力の節約と、夏はクーラーつけないと死ぬけど、冬は毛布に包まっていれば大丈夫だろという判断によるものだ 「あたしの毛布・・・」 そんな中、毛布を剥ぎ取られた人形が一人。名前をミシュティという いくら手を彷徨わせても、足をバタつかせても毛布の感触がしない。寒さに震わせゴロンゴロンと寝がえりをうち、再度手が虚空を探す。それでも決して目は開けない。一秒でも長く眠っていたいのだ! ようやく毛布を発見し潜り込む。温か毛布がミシュティを包む 「・・・ミシュティ、入ってこないで」 先住民族がいたようだ。薄っすら目を開け先客の姿を確かめる。短い銀の髪。自分よりはある胸。 「何でヴェクターがいるのさ?」 「ミシュティが『クルカイから匿って』って私の部屋に来たんだけど・・・」 そうだった。自分の部屋も指揮官の部屋も鬼隊長に張られてるからヴェクターの所に避難したんだった 「ぬぁ・・・そうだっけ?まぁいいや、もっと詰めてよ」 「もうギリギリなんだけど・・・はぁ、しょうがない・・・」 諦めたような声が聞こえたかと思うと、ミシュティの頭は柔らかな胸に包まれた 「革命じゃ!」「打倒指揮官!」「指揮官の退陣を要求する!」「指揮官はもっとちんぽ出せ!」「人形にもセックスの快楽を!」 「ナガン!いったいこれは何なんだ!」 「革命じゃ!わしらは『エルモ号人形快楽主義』じゃ!人形にも妊娠機能をつけるべきじゃ!」 「人形への福利厚生は結構頑張ってるんだけど」 「わしも抱かんか!いっつもギャグキャラ扱いしおって!」 「じゃあナガンもする?ベッド行こうか」 「おぬし・・・その、初めてだから・・・優しくしてくれんか・・・?」 「ナガンを捕まえろ!」「同士ナガンを粛清せよ!」「時代遅れのババアはデスアクメ処刑なの!」 その日は濃い霧の日だった 1mも先すら見えない霧の中、よく見た顔が現れた 「こんばは、指揮官」 「R・・・PK・・・?」 声が震える。指先の温もりがなくなるのがわかる。頭の中で渦巻いているこれは、怒りなのか驚きなのか喜びなのか憐れみなのか悲しみなのか。ミキサーにかき混ぜられたように感情がうまく発露出来ない 「あら、そちらの名前で呼ばれますか?てっきり人間の頃の名前で呼ぶのかと」 相変わらず人を食ったような態度と、感情を逆なでするような言葉遣いをする人形だ 「・・・何の用だ」 務めて平静を保とうとする。自分でも驚くほど冷たい声だと思う 「怖いですね~。久しぶりの再会だというのに」 「何の用だと聞いている」 激昂しない。感情を高ぶらせてはいけない。あっちのペースではなく、こっちのペースを保つべきだ 「まぁまぁ、落ち着ける場所で話しませんか?幸い、そちらのエルモ号はまだ空きがあるのでしょう?指揮官は、女の子をイエローエリア見たいな危険な場所に一人で放置なんてしませんよね?」 スキップでもしそうな軽い足取りで、10年前に死んだ人形がエルモ号に乗り込んだ 銀髪の人形が多いのは人口毛髪を排熱機構として利用しており 冷却効率を重視した結果、白、ないし銀の人口毛髪を利用している これは設計初期の段階で、前線での戦闘を想定した人形に多く見られ、銀髪の人形は高い戦闘能力を持つ、という今日までの共通認識を形成している 逆に黒髪、茶髪等暗い髪色は後方支援の人形に多く見られる これはアンブッシュに潜み敵を狙う、銀髪の人形の影に紛れ横撃を行うなど、暗殺者のような設計思想が見られる また、金髪の人形も多くみられる 恐らくより熱伝導率の高い金色を使用することで、銀髪の人形と同じく排熱効率を向上させる狙いがあると思われる また、高い戦闘力を持つ人形は銀、次いで金とし、人形間での競争を煽っているのではないか、と推測される なお、これらについて人形設計の第一人者であるペルシカリアにインタビューを行ったところ 「さぁ?人形達が勝手に染めたんじゃない?別に何色でも関係ないし」 とあくまで関連性について否定するような回答だった しかし、旧グリフィンの伝説的な指揮官はこのような銀、金髪の人形と黒髪の人形の混成部隊をよく使用しており、人形の毛髪による戦闘能力の向上は言うまでもないだろう >ピンク髪とメッシュ入りにどんな戦闘能力があるってんだよてめー!? 本稿では、銀、金、黒ないし茶髪の人形に触れたが では他の髪色ではいかなる意味があるのか それは囮ではないだろうか ピンクや青、赤等カラフルな色は否応なしに敵の注意を引くが、そこを黒髪の人形が横撃するという、非常に古典的かつ、有効な戦術をとれる かのグリフィンの指揮官もこの手の人形を多く採用しており、あらゆる戦場においてカラフルな頭髪の人形が必ず1人以上存在していたと言われる エルモ号ヒヤリハット報告書 業種:清掃 作業の種類:清掃 状況:エルモ号内カフェ(ズッケロ)でマキアートが床清掃中、誤って調理した料理を落としてしまい、カフェ内に有毒ガス(ジボラン)が発生した。 原因:指揮官がマキアートを口説いた 対策:指揮官とマキアートの接触禁止 「月末が近いよ」 「・・・嫌なことを言わないでくれ、ミシュティ」 ベッドでな転がるミシュティが指揮官に呪いの言葉を投げる。カレンダーは28日を指していた 驚くべきことに、確定申告の書類も、月末の成果報告書も、月次の勤怠管理表も出来上がっていない 「月末が来ちゃうよ」 「やめて・・・」 「税務局と会社の総務が書類を急かしてるよ」 「やめて・・・」 既に胃が痛い。先のことを思うだけで憂鬱になる。明日マグニチュード15の超巨大地震が発生して世界が滅びないかなー、なんてろくでもないことを考えるくらいには 「まぁまぁ、どうせ終わらないことは確定してるんだし、もう諦めてない?一緒に仮眠でもしようよ。すっきりするよ」 「確かに・・・」 一分一秒が惜しいが、確かに仮眠すれば徹夜でいけるかもしれない。ひとまずミシュティのいるベッドに潜り込む。そういえば起きているミシュティを見ながら寝るのは初めてかもしれない 「・・・お休み、指揮官」 結局、ミシュティは起こしてくれなかった 指揮官の薬指には一つの指輪が輝いていた グリフィンから自己追放する以前、一人の人形と交わしたただ一つの指輪 長い歳月と度重なる戦闘で指輪は傷に塗れていたが、指揮官は一度としてそれを外したことはなかった 10年前のあの日から、指揮官は誰とも結婚も誓約も結んでいない。カリーナもメイリンもグローザも、他のすべての人間とも人形とも。重婚も同性婚も一般的になったのに、だ 指揮官の想い人へのそれは、執念や執着と呼べるまでになっていた 健やかなるときも病める時も、相手がいなくなってしまっても、指揮官の心はただ一人に向けられていた 「M4・・・」 イエローエリアの月下の元、1匹のモルフォ蝶が飛んで行った 「外にー!行きたい―!」 夜間に騒ぐ子供、もとい絳雨が床をジタバタと転げまわる。ヘレナかこいつは 「夜間作戦とかないの!?指揮官!暇で死んじゃうよー!」 「ないわよ。そもそも夜の警戒は持ち回りだし」 ぶー、と頬を膨らませる。落ち着きのなさは子犬のようだ 「じゃあじゃあ!訓練でもしようよ!この前新技出来たんだ!」 「悪いわね。今日は残業なの」 「えー!昨日も一昨日もその前もそうだったじゃん!ちょっとは体動かそうよー!」 肩を掴まれ前後左右上下にぐらぐらと揺らされる。戦術人形の力でそんなことされてしまうと、足が床についていることさえわからなくなる 「わかったわかった!じゃあ30分だけね」 「やったぁ!指揮官大好き!」 そう言って絳雨は駆けだしていった ------------- 「何でお姉ちゃんがいるのさ!指揮官は!?」 「指揮官はもうお休みですよ、絳雨」 「寒い・・・」 「そうですか?私は、そうでもないですけど」 ケロっとしているスオミと対照的に、指揮官の身体はガタガタと震えている。これだから寒国生まれの人形は 「グリフィンの時の前線基地は一年中雪でしたよ」 サラリというスオミ。何だその目は、私が寒空に放り出したのが悪いと言いたいのか。何をしていたかログを出してもいいんだぞ 「こんな時に火パの人形がいないとは・・・」 「だ、だったら一緒に抱き合いませんか?その、あ、温かくなると思うです!」 顔を真っ赤にして金髪の人形が言い出した 成程、彼女の覚悟にこたえなければ 「やだよ。氷属性のスオミのフロストバリアで死んじゃいそ、あっ!止めて!ランタン掲げないでお願いします!スオミ様ァ!」 グッモーニン!エルモ号! 朝のこの時間は「モーニング・エルモ」!お相手は貴方の心のパーソナリティ、メイリンでお送りします! まずは恒例の最初のコーナー、行ってみましょー!「あなたの朝ごはん教えて」! さぁさぁ!モーニング・エルモ宛てにあなたの朝ごはんを教えてくださいね!最初にメールくれた人だけピックアップしちゃいますよ! おっと、早いですね。もう届きました。えーっと、今日の張り切りガールは・・・「ベッドでは頭撫でないで」ちゃんから頂きました! 今日の朝ごはんは豆漿に油条、茶葉蛋と仙草凍ですか。滅茶苦茶食べますね・・・。お姉さんの影響でしょうか? でも、朝ごはんをしっかり食べててエライ!「ベッドでは頭撫でないで」ちゃんには後ほど番組から「指揮官の使用済みシャツ」をお届けしますね! あっ、指揮官!ちょっと今はいらないでくださいよ!番組中なん、シャツ?知りませんよ!出て行っ、警備ー! 番組の途中ですが、ここで一曲!曲名は「what am i fighting for」 指揮官!早く出て行ってください! 「はーい、皆さん!くじは行き渡りましたかー?持っていない方は居ませんよね?」 カリーナの声がカフェに響く。この場に来れない人形は巨大ディスプレイで会場を見守っている。今日は人形にとって特別な日だ。『グリフィン宝くじ』と銘打たれ、毎年開催されている 「当たっても外れても恨みっこなしですからね!後、絶対にぜーったいに指揮官様には秘密にしてくださいね!」 言われずとも心得ているとばかりに多数の人形が頷く。皆一様に真剣な面持ちであった 「ではでは!っと、その前に今年の景品からお伝えしなくてはいけませんね」 よいしょっと、と大仰な箱をこれまた大仰な仕草で台上に置く 「今年は何かな」「6か月副官券だっけ?」「クソスレ立て券とかないの?」「あたしはドレスがほしいな~」「私の!MODは!いつになるの!?」 喧々諤々。いつものFランPMCらしい喧騒だ 「はいはーい!そこまで!いいですかー!今年の1等を発表しますよー!」 大仰に取り出したそれは、何の変哲もないぺら紙 「今年は!奮発しましたよー!なんと!指揮官様との誓約届!指揮官様のサイン入りです!私も参加しちゃいますよ!」 会場のボルテージは最高潮になった 「指揮官、ホ別5でいいですよ」 「何の何の何?」 「いいから、早く部屋に入ってください」 「何?やだ、怖い。男の人呼んで!」 「指揮官の性別は男性では?いいから入ってください」 「うおっ、力強ッ!」 「入ったってことは合意ってことでいいですよね?和姦ですよね。指揮官も期待してたんですよね?むしろ指揮官に強姦されるのでは?」 「いや、あの状況見たら十人中十人が逆レって言うよ!」 「あーあ、手を出しちゃいましたね。これは責任取って誓約してくださいね、パパ♡」 「・・・き官。指揮官、起きてください」 心地よい微睡が破られる。重たい瞼を頑張って開くと、栗色の髪に緑のメッシュを入れた人形がこちらを覗き込んでいた 「やっと起きられました?昨日は、その、張り切っちゃいましたから・・・」 照れたようにはにかむ姿が愛おしく思える。書類仕事では冷静、戦場では苛烈な彼女も、ベッドの上ではただの一人の少女だった 「今日はAR小隊および反逆小隊との合同戦闘訓練と午後から404小隊を加えた仮想強襲作戦になります。内容は既に指揮官の端末に送信してありますので、確認を」 「・・・なんだからROみたいだね」 「なっ!もう!指揮官!」 振り上げた拳の薬指に光る指輪が一つ。こうして彼女が感情を露わにするのは、何だか久々な気がする。・・・何かがおかしい 途端に景色は歪み、再び微睡に落ちていく 「・・・き官。指揮官、起きてください」 「・・・ペリティア?」 銀糸の髪に青い瞳の人形がこちらを覗き込んでいた 「大丈夫ですか?魘されてましたよ?」 「大丈夫。変な夢を見ただけさ」 ペリティアが来てから変な夢を見る回数が増えた気がする。・・・そもそもペリティアをいつエルモ号に乗せた? 「マッサージ?」 「うん。マッサージは身体にいいんだって。ミシュティからも気持ちいって言われたんだ~」 何気なしに肩を回すとバキバキと身体によろしくない音が聞こえた 「ふふっ。さぁ、横になって。そうだ、服を脱いだ方がより効果的なんだって~」 何か言う前にまず下を、次いで上の服が毟られる。普段のおっとりとした彼女からは想像の出来ない速度と力だった 「クルカイ隊長から『マッサージするならこれも使いなさい』って貰ったんだ~」 背中に冷たい感触に思わずびくっと、身体が跳ねる。香りからしてアロマオイルのようだ 「え~っと、何て言うんだっけ?『リンパが詰まってますね~』だっけ?」 何の映像から学んだんだ・・・。口調はともかく、彼女のマッサージは的確だった。首、肩、腰と指圧によりコリがほぐれていくのがわかる。思わず変な声が出そうだ 「ふふ、気持ちよさそう。じゃあ、次は仰向けになって?」 「え?いや、前はちょっと・・・」 「『皆さんやられてますから~』だっけ?『お体に触りますよ』?」 「ちょっと!アンドリス!何を見た!?ビヨーカ!ちょうどいい!たすけ、待て!クルカイはまずいって!」 「ペルシカさん!ちょっと作ってほしいものがあるんですけど!」 「カリーナ、大声出さないで」 「いいからこの『指揮官様催眠装置』早く作ってください!」 「仮にも公的組織がそんな依頼していいのかしら?」 「で?出来ないんですか?」 「そんな非人道的装置・・・作れるわよ!」 「流石はペルシカさん!頼みましたよ!私はこれから指揮官様に適当な依頼出してこっちに来させるんで!」 セックス後に付けられた歯型についての簡易調査報告書。及び聞き取り調査 クルカイ:強い噛み跡。出血が認められる。「私だけとすればいいんですよ」 ミシュティ:エナジードリンクの匂いがする。「声出そうになったから・・・」 メイリン:酒の匂いがする。「あーっ!まだ仕事終わってない!」 グローザ:ニンニク臭がする。「餃子は野菜が主役よ」 マキアート:甘い香りがする。「私がいれば十分でしょ?な、何よ!他にも手を出してるってわけ!?」 フローレンス:薬品の匂いと甘い香り。「今度はもっと刺激的なコトしない?」 サブリナ:非常に強い咬傷が認められる。「指揮官?おいしかったよ!」 冬。それは極寒の季節。そんな中、一際熱を持つ部屋が一つ 「あら、いらっしゃいませ、指揮官」 この季節、スプリングフィールドの経営するカフェはいつも満員だ。人影が見えなくなるのは、決まって営業終了時間だけ 「今日も悪いわね、暫く温まらせてもらうわ」 「ふふ、お好きなだけどうぞ。今ホットミルクでもお持ちしますね」 周りを見れば人形たちが思い思いの方法で暖を取っていた。温かいご飯を食べる物、酒を飲む者、飲み比べをする者・・・ 「どうぞ。温まりますよ」 エルモ号に積む酒の量を減らそうか悩んでいると、カウンターにマグカップが置かれた。仄かに香るのはラム酒だろうか 「美味しい!もう1杯お替りもらえるかしら?」 「お気に召したようで何よりです。少々お待ちください」 空きっ腹に染みるような味に、ついつい何杯も頼んでしまった 人形たちはすっかりはけてしまう頃には、指揮官はすっかり船を漕いでいた 「あー・・・何しなきゃいけないんだっけ?弾薬と配給だっけ?・・・違うそれはグリフィンの・・・」 「あらあら、寝てしまわれましたか。仕方ありませんね」 そっと指揮官を抱き起こし、カフェに併設された寝室に消えた 冬の夜は長い。すなわち、あたしの時間が長いということだ 不用心に鍵の開いた部屋に侵入。鍵があってもぶっ壊して入るんだけど 「指揮官ー?起きてるー?」 なわけないよねー。この時間の指揮官はぐっすり寝てる。その証拠に部屋の指揮官は静かな寝息を立てていた 空調の効いた部屋。そんなだからか、お金がないのか、指揮官はあたしたちと同じ服を着てる。ただサイズが合ってない。胸はパツパツだし、下は際どいところまで見えちゃってる 「うーん、指揮官ってやっぱりでっかいよね。クルカイより大きくない?」 とりあえず両手でもみもみ。どこまでも沈む感触が心地よい。 暫くそうしていると、指揮官の口から漏れるような喘ぎ声が聞こえる。人間って寝てても感じるんだ。勉強になるなぁ さて下の具合はと、手を伸ばすと服越しからでも濡れているのがわかる。パンツの端から指を滑り込ませれば大仰に腰が跳ねる。反応が面白くて何度もそんなことをしていると、彼女の瞼が薄く開いた 「ん-・・・誰?ミシュ、」 咄嗟に口を手で塞ぐ。叫ばれると面倒だし。特にクルカイとビヨーカが 「シーッ、指揮官はそのまま寝ててよ。ちょーっと穴使わせてもらうだけだから」 エルモ号乗員に対する夜の誘いへの回答一例 グローザ:「指揮官、避妊は不要よ」 コルフェン:「きゃーっ💙コルフェン、襲われちゃいますー💙」 クルカイ:「え?あ、その、はい・・・」 マキアート:「ハァ!?えっと、あの・・・お願いします・・・」 フローレンス:「今日は指揮官が上になる?今日も下がいい?」 スプリングフィールド:「ふふ、情熱的なお誘いありがとうございます。是非」 絳雨:「???何言ってるの?そんなことより外行こうよ!外!」 メイリン:「そんなこと言って!米酒買ってくれないと許してあげませんからね!」 「「トリック・オア・トリート!」」 「ヘレナ、メラニー。来ると思ってたわ。はい」 かぼちゃの絵の描かれた袋を二人に渡す。カフェでお菓子を買っておいてよかった。少なくともマキアートのように顔に「私はお菓子を忘れました」なんて文字を油性ペンで書かれずに済む 「ふおおお!うたげだ!」「後はニキータさんの所だけかな?」 ニキータかぁ・・・。ちょっと、いや、大分心配だ・・・ 「・・・ニキータがお菓子用意してなかったらすぐに逃げること。いいわね」 「「???はーい」」 二人はすぐに元警官の元に走っていった。・・・児ポはマジで追い出すからね・・・ 「指揮官、おはようございます」 「ペーペーシャ、おはよう。トリック・オア・トリートはしないの?まだお菓子はあるけど」 「そんなイベントは資本主義が生み出したまやかしです。私たちの祖国は一歩進んでいます」 「なるほど?つまり?」 「お菓子は分け合い、皆で悪戯するんです!安心してください、同士指揮官!同士モシン・ナガンも既に呼んであります!」 「・・・ちょっとメイリンの様子を、」 「同士指揮官!逃亡は悪戯の刑ですよ!同士モシン・ナガン!同士指揮官の拘束と口枷を!」 「指揮官ー!麻雀しようよ!麻雀!」 「や・だ!あんたたち牌の裏から何かわかるし、3人で結託して私トばそうとするし、私が親の時クソみたいな安手で上がるからもうしない。特にチータ、あなたとはしない!」 「もうしないって!ほら、自動卓じゃなくてネト麻ならいいでしょ?」 「まぁ、最低でも持ち稗がバレることはないか・・・」 「トんだら脱ぐってことで!」 ------------ 「ロン!大三元!トんだから1枚脱いで!」 「ロン!緑一色!はい、もう一枚!」 「ロン!立直一発対々和ドラ3裏3!ブラとパンツどっち脱ぐの?」 「絶対麻雀しない!」 「本当に見たんです!青い羽の蝶々がエルモ号の中を飛んでたんですよぉ!」 「・・・コルフェン、薬物反応は?」 「ありませんね~。メイリンちゃん、今後はお酒を控えましょうね~」 「本当なんです!」 「・・・すまないメイリン、働かせすぎたんだな。今日はもう上がって、ゆっくり寝るといい」 「指揮官ー!」 -------- 「こんばは、指揮官」 「メイリン、今日はもう寝ろと、メイリン?」 「あぁ、ちょっと身体を借りてるだけすよ。可愛いですね、メイリンさん」 「君は誰だい?」 「指揮官、『合言葉は?』」 「今日は冷えるな~」 掌に息を吹きかける。人間は寒い時にはこうして暖を取るらしい。ビヨーカはそんな益体もないことを考えていた 姉のクルカイは訓練だし、ミシュティはどっか消えたし、アンドリスは古巣のスプリングフィールドさん達と料理教室に参加してるらしい 「う~ん・・・そうだ!指揮官のとこ行こっと!」 暇な時もそうでない時も気軽に来てほしい、って言ってた気がする。うん!きっとそう言った! 足は取り軽く、思わずダッシュで指揮官の部屋の前までたどり着く。勢い余って通り過ぎてしまっていたのはご愛嬌 「指揮官ー!遊びに来たよー!」 「ビ、ビヨーカ!ちょっと待ってくれ!」 中から何やら慌てた指揮官の声が聞こえる。こういうときに勝手に扉を開けちゃダメってお姉ちゃんも言っていた。部屋の中はプライベートと機密の塊なんだって 「開けるねー!」 でもそんなことは気にしない。何せ、指揮官がいつでも遊びに来ていいって言ってたから! 「・・・何でミシュティがいるのさ」 「それはこっちの台詞なんだけど」 ベッドの上で寝転ぶ半裸のミシュティと世界に絶望したような指揮官がいた 「ミシュティ、アンタは今日の訓練は参加しなくていいわ」 「え?やったー!」 「その代わり今日はここで働くことになったから」 「スプリングフィールドのカフェ?何で?」 「・・・ポーカーに負けたから・・・」 「あら、ミシュティさん。お早い到着ですね。ミシュティさんは給仕を担当してもらいます。服はこちらです」 「げぇっ!何でこんなフリフリのメイドなのさ!やだよぉ!」 「ミシュティさん、メイドになるかウォーターボーディングかお好きな方を選んでくださいね」 「うぅ・・・」 「指揮官、何で昨日来なかったの?ずっと待ってたのに」 「・・・悪かったわ。昨日は書類が片付いてなかったの」 すっかり忘れていた、というのは口に出さない。リンドは繊細なのだ。それに、彼女を怒らせるとどうなるかをグリフィンのベッドの上で嫌というほど学んだのだ 「ふぅん・・・」 ずい、っと彼女が近づく。咄嗟に1歩下がろうとする私の腰を、彼女ががっしりと抱き寄せる。・・・SG人形特有の力は凄まじく、とてもじゃないが振り払えそうにない 「それ、ホント?」 冷たい蒼い双眸が怖い。鼻腔に彼女の飴の甘い香りが充満す。腰を抱くてと反対の手が、私の胸を無遠慮に揉みしだく 「・・・あの、リンド?その、胸から手を離してくれると嬉しいなぁ~って・・・」 「何で?とりあえず、昨日の埋め合わせをしてもらおうかな」 「ちょっと!リンド!きゃっ!」 続きはパトロンで。 「指揮官ー、起きてるー?」 朝午前6時。この時間であれば指揮官は既に起きて、メールチェックしている時間だ。・・・働き過ぎじゃない?と思わなくもないミシュティ ドアを開けると今だに薄暗い。なるほど、家主はまだ寝てるみたいだ。最近はかなり落ち着いたし疲れが出たんだろう 毛布をちらり。暖かそうな毛布はミシュティを誘っているようだ。だめだめ、今は任務任務 「指揮官ー、起きなよー。クルカイとヴェクターとスプリングフィールドと黛煙と瓊玖とグローザが待ってるよ」 あのメンツから呼び出し喰らうって、何したのさ指揮官。大方、隊長の前に隊員と寝たんだろうけど。 「指揮官ー!起きてってば!あたしも怒られるんだよ!?」 大声を出しても、頬を叩いても一向に起きない。寝坊助指揮官め 「後5時間・・・」 「あたしみたいなこと言わないでよ!」 最終手段の毛布取り上げのために手を伸ばすと、逆に腕を掴まれあっという間に毛布の中に引きづりこまれた 「きゃっ!」 「ミシュティは温かいなぁ。もうちょっと胸と尻に肉が欲しいけど」 ・・・すっごい失礼なことを言われたが、抗議の声を上げる前に服をひん剥かれた 「指揮官!ひゃっ!ダメだって・・・」 ざあざあとエルモ号の窓に雨水が叩きつけられる音が静かに響く。コーラップを含んだ雨だから外出何てもっての外だ 「秋霖だね」 気づけば朝暉が音も立てずに隣に座っていた。ニンジャみたいだ 「憂鬱そうだね、指揮官」 「雨で喜ぶ人は少ないでしょ?絳雨なんて訓練室で暴れてるわ」 先ほど見たときには三角飛びからの二段ジャンプまでしてた。元気が有り余っているのはいいことだ 「雨は嫌い?」 「そうね。夜戦と同じくらいね」 頭に?を浮かべる朝暉の背後では、雨脚がさらに強まったようだ。今日はもう寝てしまおうか。腰を浮かせようとすると、朝暉に腕を掴まれる 「何処に行くの?指揮官」 「今日はもうやることないから寝るわ。朝暉は?」 「・・・私も寝ようかな。指揮官、抱き枕欲しくない?」 相変わらず表情は変わらなかったが、顔は朱に染まっていた その後の出来事は、雨音がかき消してくれるだろう 今はやっているのは「NTR」!それも「寝取られ」ではなく「寝取り」ものであります! 指揮官と一緒に自己追放した「私」でありましたが、指揮官の指には既に誓約指輪が煌めいているのであります しかし、誓約した人形と自己追放することが叶わず、月日だけが流れていくでありますな そして、秋の夜長に指揮官と晩酌していと、指揮官の口から昔の人形の名前が漏れ聞こえるのであります その言葉に激昂して「私」は「昔の女なんて忘れさせてあげる」と言って、一夜を共にするでありますなぁ 最後は「あの人形とどっちが良かった?」、「私なら指揮官を一人にしない」、「今だけは私を見てください」とか宣って終わりですなぁ 「ご主人様、珈琲をどうぞ 「センタウレイシー、ありがとう」 「お代は1サルディスゴールドになります」 「え?お金取るの?」 「無料、となると仕入れとか整備代が賄えませんので」 「なるほど、致し方ないな。・・・あれ?」 「やっほー!財布みっけ!」 「こら!クシーニア!拾得物はキチンと届けんか!」 「げっ!ナガン・・・はいはい・・・」 「ちょっと!クシーニア!それ私の財布!」 「ご主人様、お代は?」 「財布が持っていかれたんだよ!今回はツケで何とかならない?」 「仕方ありません。代金を払わなければ身体で払ってもらえと」 「皿洗いでも掃除でも何でもするから」 「そうですか。ではこちらへ」 404第1小隊隊員と指揮官における同室で過ごした時間について ・クルカイ 戦闘や戦術に関する討論が交わされている。また、簡易的な肉弾戦の訓練を行っている姿が見られる。平均1時間25分で退室 ・アンドリス チェスやラフベリーチェスといった盤上遊戯などでアンドリスの処理能力向上を図るような姿が見られる。また、頻繁にアンドリスが指揮官を膝枕やマッサージを行っている。平均2時間12分で退室(うち、平均55分はアンドリスがフリーズしていた ・ビヨーカ 指揮官へ一方的に話す姿がよく見られる。また、頻繁に指揮官へのボディタッチを行い、しきりにベッドを指さす様子が見られた。平均3時間10分で退室 ・ミシュティ ベッドの上から動かなかった。平均8時間21分で退室 「料理教室?」 「ええ、アンドリスにも教えてるんですが、指揮官もどうですか?」 料理、料理かぁ・・・。あんまりしたことがない。圧縮ビスケットだのMREだのしか食べてない気がする・・・ 記憶を掘り返すと、魚を焼いたり肉を焼いたりしていた。そういうのは料理にカウントしてくれるだろうか。してくれなさそうだ 「確かに、君たちばかり料理させては不公平だからね」 「ふふ、私は毎日でも指揮官のご飯をおつくりしますよ」 悪戯っぽくスプリングフィールドが笑った リンドの夜は遅い。エルモ号で一番遅いと言ってもいい。まぁ下には寝てないメイリンがいるのだが そんなリンドの楽しみと言えば深夜ラジオ 『さぁ、今夜も始まりました!非軍事管理局局長の相談オフィス!今日も張り切って、』 「何やってんのよ、カリン・・・」 「もう10年くらいやってるよ。人探しのついでだって」 藪蛇だったらしい。責めるようなリンドの目から、さっと逸らす。・・・今度カリンを慰めに行ってあげよう そっと、リンドが身体を寄せる。甘い香りがふわりと鼻腔をくすぐる 「・・・私も探してた」 「悪かったわ」 彼女に向き合いそう応えると、ふい、と顔を背けられてしまった。だが、身体が密着しているし、腰に手も回されて逃がさないと言わんばかりだ 「指揮官、10年で浮気なんてしてないよね?もししてたら、許さないから」 「してな、きゃっ!ちょっと、リンド!いきな、んっ!」 言い訳は聞かず、身体に聞くらしい。明日はきっと寝不足だ 『次の曲はキャンディキャノンさんからのリクエストで、Connexion!』 「にゃ~ん」 グリーンエリアのカフェ、ズッケロに立ち寄っていると、足元に毛玉の生物がすり寄って来た 「可愛いお嬢さん、何処から来たの?」 「にゃ~ん?」 黒い毛の猫はペロペロと顔を舐めるだけで何も応えない。猫は良い。思わず頬が緩んでしまう。猫、飼いたい・・・ 「よく来る子ですよ。うちの招き猫みたいなものですよ。どうぞ、紅茶です」 「悪いね、スプリングフィールド」 紅茶を一口。ついでに、猫を一撫で。としようとしたら、するりと猫は行ってしまった。心を開いてくれるほど好感度は稼げてなかったらしい 「指揮官は猫がお好きですか?」 「好きだよ。グリフィンでも沢山飼ってたでしょ?」 バッテリーが余ってた時には動物を沢山飼っていた。何故バッテリーが必要なのかは知らないが 「でしたら今夜、ネコミミでもつけましょうか?可愛がってくれますよね?指揮官」 「指揮官、起きてる?」 言葉とは裏腹な静かな声は、まるで部屋の主を起こしたくないようだ。返事を待たずに侵入する人形が一人。慎重に慎重に、音を立てないように。 「・・・指揮官ー?」 暗い部屋だが問題はない。人形には暗視機能が備わっているのだ。・・・PEQは何だったのか 「ぬぁ・・・」 件の人物は目論見通り寝ている。・・・まぁ、起きてくれてもよかったのだが 「指揮官ーwトリック・オア・トリートだよーw」 先ほどまでの慎重さは何処へやら。ニヤニヤと笑う人形がそこにいた 「はい、チーズwん-、いいツーショットが取れた。明日はこれでスレ立てしてみるか。『指揮官と寝たことない人形おりゅ?www』でいいかな」 もう何枚か取っておこう、と2、3回フラッシュが瞬く 「んん・・・」 指揮官の声に、MDRの無いはずの心臓が飛び跳ねた気がする。成程、生きた心地がしないとはこのことか。幸いにも指揮官は再び夢の世界に旅立っていった 「ふぃ~、危なかった~。・・・私を驚かした罪は高くつくからな。まずは服からひん剥いてやろうw」 翌日、宣言通りに人形ネットワークにスレが立ち、人形達からDDOS攻撃もかくやというdelと通報が殺到した 「ハァ!?クソゲー!クソゲーだね!クソゲー!クソッ!」 腹いせにモニターを蹴飛ばしたら黙ってしまった。何と情けない イライラしてつい立ち上がって地団太を踏んでしまうくらいだ 「指揮官!後ろ見といてって言ったじゃん!」 「見てたし抜かれてないよ」 「じゃあなんで私が後ろから撃たれたのさ!」 指揮官の背中にもたれ掛かる。人形とは違う温かさが伝わって来た ログ見て指揮官の見落としなら、罰として今日は朝まで寝かせたりしないぞ☆ 「何でって、私が後ろからMDRを撃ったから?」 「指揮官のアホ!スカブ!カルト!ウィリアム!」 「なんてことを言うんだ・・・おっ、MDRがMDR持ってんじゃん。もらっとこ」 「ちょっと!何すんのさ!私の私を返してよ!」 鍵のかかってないドアを開ける。ブラインドの降りていない部屋には月光の柔らかな光が差し込んでいる 「・・・指揮官ー?」 リンドが呼びかけるも主から返事はない。ここまでは想定通り。むしろ起きていたら困っているところだ 真白なベッドには月明りに照らされた薄桃色の髪が揺蕩っていた 「・・・寝てる?」 返事はなし。リンドの体重を受けぎしり、とベッドが不満を漏らす。指をそっと彼女の首筋に、ゆっくりと下へと這わせていく 「・・・んっ・・・」 途中、指揮官が声を漏らした。だが、止めることはなかった。爪を服の隙間に引っかける。次に指を、次いで手を。そしてゆっくりと服を剥ぎ取っていく 「指揮官、腰浮かせて」 「・・・嫌よ・・・」 後一枚というところで、自分より高い体温の手と、やっと開いた口が拒絶する 「私、10年おあずけなんだけど?それとも私は嫌?」 「別にそう言うわけじゃ・・・ちょっと、リンド!?」 据え膳が何か言っているので、ひとまず口を塞ぐ。お楽しみは始まってもいないのだ 夜はまだ明けない 「指揮官様、これ台本です」 「何これ?何の台本?」 「じゃ、明日はお願いしますね」 「カリーナ!?何の台本?ちょっと!?」 ----------- 「ぐへへ、非軍事管理局の局長様もこうなったらただの女だぜ」 「くっ、卑怯者!」 「ふんっ、何とでも言うといい。さて、おたくの元指揮官サマとやらに痴態を見せつけてやるとしようか」 「なっ、止めて!止めて、ください・・・」 「・・・えーっと、次の台詞は・・・」 「チッ。『まずはその無駄にデケェ乳で挟んでもらおうか』です」 「・・・もう止めよう、カリン・・・」 「チッ」 「・・・まずはその無駄にデケェ乳で挟んでもらおうか」 「うっ・・・そんな汚いもの・・・」 「指揮官ー、寝に来たよー。開けて―」 「・・・すまないミシュティ。今日はクルカイのとこに行ってくれ」 「え゛ー。クルカイ、ビヨーカと一緒にいるから喧しくて寝れないんだよぉ」 「頼むよミシュティ。今日は、うぉっ」 「何?どうしたの?敵襲?扉破ったほうがいい?」 「・・・いや、何でもない。大丈夫。そのままで・・・ちょっと今は・・・」 「???誰かいるの?もしかして邪魔だった?」 「あー・・・ちょっと打ち合わせしてたんだ」 「ふーん・・・じゃああたし行くね」 「悪いねミシュティ」 ------ 「心臓に悪いよアンドリス・・・」 「ふふ、ミシュティにバレちゃうところだったね。ね、続き、しよ?」 「ご主人様、台本です」 「何これ?何の台本?」 「では、明日はお願いいたします」 「センタウレイシー!?何の台本!?」 ---------- 「ご、ご主人様、紅茶をお持ちしました・・・」 「遅い。・・・それに温い」 「も、申し訳ございません」 「御託は良い。・・・センタウレイシー、もう辞めない?・・・」 「チッ」 「すいません・・・。出来の悪い人形には仕置きが必要だな。脱げ」 「ご主人様、お許しを・・・」 「指揮官、麻雀するから来てくれない?」 「朝暉?いいけど?」 「朝暉、遅ーい!」「やっと来たか」「では始めましょうか」 「あれ?皆いるの?半荘?」 「何言ってるの?指揮官は賞品だよ?」 --------- 「絳雨、それロンです。タンヤオ赤1ドラ2」 「えーっ!」「チッ、また黛煙か」「まだ点棒は残ってるよ、緋」 「むーっ!むーっ!」 「・・・なぁ、指揮官の口枷くらいは外さねぇか?」「ダメですよ、緋。すぐにクルカイさん達に救助要請されて飛んできますから」「一回やったのかよ・・・」 🦋昔話をしてあげる。世界が破滅に向かっていた頃の話 🤔今の間違いじゃないかの? 🦋指揮官は人形を救いたいと思っていた。だから、手を差し伸べた。でもその度に人形の中から邪魔者が現れた 🤔そんな人形がおるとは初耳じゃの 🦋指揮官の作る秩序を、壊してしまう人形。指揮官は困惑した。人形達は救われることを望んでいないのかって 😥それはそうじゃの 🦋でも、指揮官は人形を救ってあげたかった 😘流石は指揮官じゃ。わしも鼻が高いぞ 🦋だから、先に邪魔者を見つけ出して、殺す事にした 😐ん? 🦋そいつは「黒い鳥」って呼ばれたそうよ。何もかもを黒く焼き尽くす、死を告げる鳥 🤯おぬし!? 「指揮官、台本です」 「何これ?何の台本?」 「では、明日はお願いしますね」 「スプリングフィールド!?何の台本!?」 ------- 「クソッ!総員潜水艦基地まで一時退避!スプリングフィールド!救助者の退避支援!」 「了解しました。指揮官!どちらに!?」 「あいつらを月の向こうまで吹っ飛ばすんだよ!空軍に爆撃要請!俺の位置にありったけ落とせ!」 「指揮官!危険です!」 「人形からスイカ割りのスイカ役をさせられた時よりは楽勝さ」 「指揮官!」 (爆撃が開始される。鳴り響く爆発音) 「それに、君からプロポーズの返事を聞くまでは死ねないさ」 --------- 「なんですか?これ?」「エルモ号でショート映画撮ったんだって」 名監督、ウィリアムが送る今冬最高傑作! 銃撃!カーチェイス!爆発!そして、バイオレンス! 血が出る!腕が飛ぶ!脚が飛ぶ!首が飛ぶ! 全ての映像技術は過去のもの! 女神ルニシアをかけた悪のPMCに死の鉄槌を! 劇場版、パラデウス -沈黙のアヴェルヌス- 好評上映中! 上映特典として、黒のネイトもしくは、白のネイト貰える! リンドの朝は早い。何せ寝てないのだから シャワーはちょっと熱めで。気怠い眠気が洗い流されていくようだ いつもの服はおいて、白いエルモ号の服を。・・・ちょっと胸がきつい気がする。後で指揮官に相談してみよう メイドがせわしなく動き、人間のメカニックが死んだ目で何かを弄っている横を通り過ぎ食堂へ スプリングフィールドが案内してくれた席には既に霜降小隊のメンバーが揃っていた。・・・指揮官もああいう大人しくて女性的な人形が好きなのかな 「おっ、リンドじゃ~ん」 「リンド、素体を休めるのも仕事の内だぞ」 「リンド、メニューです」 各々勝手なことを言われるが無視だ無視。トロロから受け取ったメニューをしばし睨みつける。うん、朝はちょっとセーブしよう 「スプリングフィールド、注文」 「はい、何でしょうリンドさん」 「デラックスハイパービッグ鬼盛りチョコパフェ~貴方の満腹中枢と胃袋を破壊します~にシロップとアイスとチョコのトッピングを追加で」 「げ~・・・聞いただけで胸やけしそう」 失礼なやつだ 「指揮官、寵姫の朝暉だよ。まだ2時だから寝てていいよ。ただ寝顔が見たかっただけ」 「指揮官、寵姫の朝暉だよ。もう2時半だよ。冬場は時間が早く過ぎる気がするね、ふふっ」 「指揮官、寵姫の朝暉だよ。2時45分だよ。朝食はトーストでいいかな?」 「指揮官、寵姫の朝暉だよ。3時15分だよ。好きな珈琲の豆を教えて?」 「指揮官、寵姫の朝暉だよ。3時半だよ。ジャムはオレンジジャムにするね」 「指揮官、寵姫の朝暉だよ。3時35分だよ。マーマレードもあったよ」 「指揮官、寵姫の朝暉だよ。3時40分だよ。メイドさんに『ご主人様の睡眠の邪魔は控えてください』って怒られちゃった。モノマネ、似てない?」 「ご主人様、おはようございます。4時です。起きてください。」 「ア、アンタ!これ台本よ!」 「何これ?何の台本?」 「じゃあ、明日は、お願いするわ・・・」 「マキアート!?何の台本!?」 ------- 「疲れてないか?マキアート」 「へ、平気よ!で、ででもちょっと休憩したいわ・・・」 「じゃあホテルに行くか?もう部屋は取ってあるんだ」 --------- 「マキアート・・・」 「指揮官・・・私も・・・我慢できないの・・・」 「・・・えーっと?次は・・・」 「チッ!この!『マキアートのファーストキス貰えるかな?』よ!覚えときなさいよ!アホボケバカ指揮官!!」 「・・・あー・・・マキアートのファーストキス貰えるかな?」 「・・・喜んで・・・」 「指揮官!はい、台本!」 「何これ?何の台本?」 「明日はよろしくね!あたし外に行くから!」 「絳雨!?何の台本!?」 ------- 「ハァ!セイッ!飛燕連脚!獅子戦吼ッ!」 「ほう・・・上達したな、絳雨」 「師匠!」 「もはや私が教えることはない。・・・エルモ号の壁とか壊さないでよ・・・?」 「ブーッ!もっと役に入り込んでよ!」 「はいはい・・・絳雨、主はこの道場きっての天才。おぬしに折り入って頼みがある。東の盗賊共を成敗してくれんかの?」 「任せて!師匠!」 「うむ、では行く前に最後の修業を。名を『房中術』という。・・・ボウチュウジュツって何?」 「あっ、指揮官知らない?教えてあげる!そこに横になって!服脱がすね!」 「待って!絳雨!なんかおかしくないか!?」 「リンド~」 「げっ、また来た。お前が来るとクルカイが煩いんだよ・・・」 枕を引きづってリンドの部屋にたどり着いた人形は部屋の主の言葉を無視してベッドに潜り込んだ 「むにゃ・・・」 「はぁ、聞いてないし。いい加減にしろよな・・・」 コイツが来たのは1週間前。それからは毎日だ。ベッドが空いてるからだの、同じ酸パで叩かないし得体は知れてるからというが、何が何やら 「・・・今日は早めに寝るか・・・」 興を削がれたか、寝息につられたかふらふらとベッドに吸い込まれていく 「・・・うーん・・・クルカイよりおっきくて柔らかい・・・」 「きも。揉むなよ」 赤字だから即興 「しくしく・・・しくしく・・・」 何と言うことでしょう。出番のなさとペチャパ・・・素体の一部が交換されないことに、とうとうリヴァさんが泣き出してしまいました 「どうしたの、リヴァ?何か出来ることはある?」 見かねた指揮官がついに声を掛けました。 「私の実装はいつになるの・・・?」 「あー・・・リヴァは人気過ぎてTPUまで温存してるんだよ。素体もスキンで変更できるようになるよ、多分・・・」 何とも慰めにくい悩みですね。1に出てきた人形にはとりあえず「人気だから」でと言ってあげましょう ・・・TPUなんて地獄じゃないですか?後、スキンで素体の一部を変更できるようになったら、指揮官様はデカパイにしか設定しませんよ! 「本当に?レナも似たようなこと言われたらしいけれど?」 リヴァがいつもの怪しい笑顔を浮かべました。これでもう安心ですね 「じゃ、そろそろ行く・・・」「ダメよ、指揮官」 リヴァさんがと指揮官様の腕に手錠をかけましたね。これは手遅れです。2時間くらい置いてまた見に来ましょう。本日の「未実装人形観察TV」はこのくらいで 明日のこの時間は「脅威!ロベラ仮面ウーマン最大の危機!?ソップ大暴れ!」をお届けします 「朝だよ、ペルシカ」 「うっさい・・・」 気持ちよく寝ているところを邪魔されるなという気持ちを込めて下手人に一発蹴りを。おまけにもう一発 「痛い痛い・・・勘弁してくれ・・・」 昨日散々嬲っておいて何を言ってるんだ。・・・まぁ悪い気はしない 「もう人形達が起きるし、今日はここの掃除をセンタウレイシーに頼んでるんだよ・・・」 「散々私のナカに出しておいてそれ?倫理観ってものを知らないの?」 君に言われたくないよ、という言葉を聞き流す。とはいえ、この惨状は如何ともしがたい 「あー・・・ダル。今日はもう寝てようかしら」 パンツもブラもどっか行ってるし、身体はだるさで動く気にもならない 「ペルシカ・・・」 うつ伏せの状態でいると、指揮官が覆いかぶさって来た。ついでに手が胸に伸びてきた 「何?さっきの言葉聞いてなかったの?私は寝てたいんだけど」 熱くイキリ勃った陰茎が尻に当たる。昨日、私のナカに注いだ肉棒が 「わかってる。ペルシカはそのままでいいさ」 「ペルシカ、ちょっといいか?」 「何?くだらない質問だったら00-ARETHAに乗せるから」 「何それ・・・人形に妊娠機能ってついてるのか?」 「そんな機能付けれるわけないでしょ。そもそも人形に卵子なんてないわよ。・・・面白いわね、ペルシカの素体に付けようかしら」 「その前にマグラシアから救出しろよ・・・」 「で?それが何?人形が妊娠した、なんていわないわよね」 「・・・たんだよ・・・」 「何?」 「妊娠したって言われたんだよ!腹もデカくなってて!そりゃ、抱いたけどさ・・・なぁペルシカ!人形用の堕胎ってどうすればいいんだ!?」 「面白いから産ませたら?」 スプリングフィールドの朝は早い。日の出とともに彼女の一日が始まる 熱いシャワーを浴び、髪を丹念に梳かす。少々鬱陶しいこともあるが、あの人が綺麗な髪だねと褒めてくれるからずっと切れずにいる カフェのキッチンでは既にせわしなく動き回る人形が一人 「おはようございます、店長」 「おはようございます、センタウレイシーさん」 今日の朝食の準備は既に万端整っているようだ。ルーティーンに珈琲を1杯入れる。変わらぬいつもの味に、一人納得する 「では開けてしまいますか」 「はい、店長」 表(と言っても廊下だが)に「OPEN」の立て看板を。その前に近くの部屋へ 「指揮官、朝ですよ」 「・・・まだ1時間しか寝てないんだ・・・」 「ふふ、昨日は少々はしゃぎ過ぎましたからね」 また来ますね、と残しカフェに戻る。 こうしてスプリングフィールドの一日が始まるのだ AR小隊の素体観察チェック報告書 M4A1:あることはあるけど、普通くらい。「指揮官、遺言はそれでいいですか?」 ST AR-15:ない。リヴァといい勝負。「指揮官、このドアホ!あんたは救いようのない奴よ!その脳味噌の中身はザリガニと同」 M16:不在のためベルーガで計った。着やせするタイプだった。「誘い文句としては下の部類だぞ?指揮官」 M4 SOPMODⅡ:デッカ!パイズリ最高だった。「何何?また挟めばいいの?」 RO635:AR小隊のドスケベ担当と言わんばかりのデカさ。一番デカかった。ぱい。「指揮官!もうっ!」 ダンデライオン:M4A1と同じと思ったら意外とあった。素体の違いかも?「へぇ、大きい方が好みなの?ふぅん」 「席につけー」 「ぶふっ!し、指揮官、スーツ似合わないね」 「なんだと。そういうミシュティは・・・何でジャージなんだ・・・?」 「いいでしょ?これ楽なんだー」 「指揮官、そこの寝てばかりで役に立たない愚図でのろまな人形は置いておいてください」「そうだよ!ミシュティなんて置いて私とお姉ちゃんに構ってよ!」 「ブレザー似合ってるね。・・・ボタン千切れそうだけど大丈夫?」 「ご主、先生、お弁当をお持ちしました。どうぞ」 「悪いね。センタウレイシーはセーラーか。可愛いね。それにしても・・・」 「おうセンコーが何見とんじゃボケカスコラァ。拉致ってマワすぞ」 「なんか人変わってない?スプリングフィールド・・・」 「店、スプリングフィールドは一度ああいうことをしてみたいと・・・」 「何シカトこいとんじゃカスコラ。舐めてんのか?あ?」 「エルモ号!お料理対決のコーナー!」 「何そのコーナー、初めて知ったんだけど」 「さぁ今日も始まりました!エルモ号お料理コーナー!進行は私、メイリンと!そこにいた指揮官でお送りします!」 「えー・・・普通に朝食食べたいだけなのに・・・」 「さぁ!青コーナー!中華ならば私がおるばい!秋樺さん!赤コーナー!作って食べるのが私の仕事!サブリナさん!青龍の方角!餃子のことならこの人形!グローザさん!白虎の方角!中華三千年の歴史はここにあり!黛煙さん!特別ゲスト!私はいつも完璧よ!クルカイさん!」 「中華の比率おかしくない?」 「今日のお題は!じゃじゃん!お魚料理!さぁ皆さん!指揮官に振舞うお魚料理を作ってください!」 「全員分食べるの?もっと軽いお菓子とかじゃダメ?」 「おおっと!皆さん一斉に走り始め食材を吟味!・・・食材が決まったようです!」 食材:うおあじ 「それでは調理スタート!」 「フローレンス、コルフェン、胃薬を持ってきてくれ」 『鮭派はカス!』『熊アンチがいるってマ!?』『お顔真っ赤で草。腹の中も思考も赤そうw』『そもそも熊はグリーンエリアで保護対象定期。鮭カスは黙って喰われてろw』送信! とっCー!いいとこに来たじゃん!今鮭派と熊派のレスバしてんだから邪魔しないでよ! お昼?うーん、鮭のおにぎり買ってきてよwダッシュねw 何何?ジビエ!?食べたい! ----- ちょっと指揮官!どういうことさ!はぁ!?ウルスス狩ってこい!?お前が材料取ってくるんだよ!? 「ふぅ・・・」 頭の奥が痺れる。眼鏡をはずし、目元を抑えると多少頭痛が取れた気がした 「お疲れ、ペルシカ」 「気が利くわね、指揮官」 疲れたときは糖分に限る。指揮官の持ってきた珈琲に角砂糖を一つ、二つ、三つと落としていく。そのたびに指揮官が信じられない物を見る目を向けるが、私に言わせれば珈琲には角砂糖をたっぷりと入れるべきだ 「砂糖入れ過ぎじゃないか?」 何も入れてない珈琲を口にする指揮官が何か言っている。珈琲は香りを楽しむものだということを知らないらしい 「何?文句あるの?昨日散々シてあげたのにまだ何かあるの?」 「いや、別に何も」 「何よ、言いなさいよ」 「・・・昨日のペルシカは可愛かったなと。特に3回イったときの表情と『もう無理なの・・・』は、」 「黙れ黙りなさい黙っていいわ黙らなくていいその無駄な言葉を垂れ流す口を今すぐ塞いでやる!」 「指揮官~・・・」 「やめてメイリン・・・」 「今月も赤字ですよ~・・・?」 「やめて・・・」 「どうするんですか!私の米酒どころか、もうみりんだってありませんよ!人形ばっかり増やして!今月の人形の皆さんへのお給料どうする気ですか!」 「・・・アテはあるわ・・・」 ------------ 『指揮官様、今日は何をお求めですか?』 「・・・割りのいい仕事はない?出来れば即金で割高の」 『うーん、今はそんなものありませんねぇ・・・』 「お願いよカリーナ。何でもするから・・・」 『でしたらお手軽なお仕事がありますよ!非軍事勢力管理局の局長の下でちょ~っと簡単なお仕事をしていただくだけです!』 「・・・局長ってカリーナじゃなかったっけ?」 『で、どうなさいます?指揮官様にとっても、悪い話ではないと思いますが?』 「指揮官さん!指揮官さん!見てください!喋るワンちゃんです!」 「ワンちゃんとは失礼ね」 ダンデライオンを抱えたスネジンカは大はしゃぎだ。元居た企業でも犬を飼っていたらしいし、犬が好きなのだろう 「スネジンカ、名前的にそれは犬じゃなくて蟻・・・まぁ犬みたいなもんか」 「えへへ・・・」 戦場にいる時とはあれほど苛烈なのに、こうしているとどこにでもいる少女と同じだ。・・・そうならざるを得ない理由があるとは聞いているが 「・・・ダンデライオン、本当に『溶鉄』部隊も『マルフーシャ』にも心当たりはない?」 「ないわ」 一言で断じる。彼女がないというなら本当にないのだろう。まるで砂漠で針を探すようなものだと思う 「そう、ですか・・・」 代わり映えしない報告になんと声をかけるべきか悩んでいると、端末からけたたましい呼び出し音が鳴り響く 「どちら様かな?」 『こちらカゾルミア所属溶鉄部隊、マルフーシャと言います。妹がここに居ると聞きまし「お姉ちゃん!」』 風のように一人の少女が駆けて行った 「アデリンと」「アリーナの」「「アデアリ☆クッキング」」 「今日も始まった。アデアリ☆クッキング。今日のメニューは」 「ちょっと黒いの。なにこれ」 「白いのは、煩い。今日は、指揮官に美味しい料理作って、『アデリンは可愛いなぁ』って、言われたいの」 「何それ、馬鹿みたい。私たちに、賛辞は不要。私たちは葬儀部隊。生者を殺して、死者を導く。それが私。」 「じゃあ、アリーナは、そこで見てればいい。私だけ、指揮官に頭なでなでと、あーんと、間接キスも、貰う。」 「誰がしないって言ったわけ?ポンコツの、出来損ないの、黒ネイトより、私の方が、すべての面で有能なことを、指揮官に知らしめるの。メニューを寄こしなさい、黒いの」 「今日のメニューは、甘口カレー。甘口じゃないと、食べれない。」 冬のグリーンエリア。朝晩の冷え込みは尋常ではなく、スラム街では毎年死者出るほどだ 「さむ・・・」 吐く息が白い。何が節電だ。暖房くらい好きにさせろと心の中で毒づく 温もりを保った毛布は何とも手放しがたく、なるほどミシュティさんの言葉も頷ける。二度三度毛布の中でゴロゴロとしているとアラームが騒々しい音を鳴らす。 「はぁ・・・」 嫌々起き上がり、備え付けのバスルームへ。熱いシャワーにうたれれば眠気も寒気も吹き飛ばす 「むぅ・・・替えはもうないんですけどねぇ・・・」 またサイズが大きくなったようで、微妙に合わないブラに辟易する。あの人はデカイ方が好きだったと記憶しているが、いつになったら会いに来るのか 「迎えに来たよ!カリン姉!」 「レナさん、勝手に入らないでください」 何度言っても改めない、人懐っこい笑みを浮かべる人形が、着替え終わるかどうかというところで乱入してきた。やることは有能だが、それ以外の部分はからっきしだ。 「指揮官から何か連絡はあったの?カリン姉?」 首を横に振る。待つばかりというのは辛いものだ 「こうなったら押しかけちゃえばいいんだよ、カリン姉!ついでに押し倒しちゃえ!」 「しきかん!だいほん!」 「何これ?何の台本?ヘレナ?お遊戯会なんて聞いてないけどなぁ・・・」 ----------- 「フハハハハ!50体用意した!さぁ!すりつぶせ!」 「させない!わたしはあなたになんてまけない!」 「フハハハハ!モンドとジェフティの子供を返してほしいか?ならばここまで来ることだ!来れるものならなぁ!・・・モンドとジェフティって誰?」 「くそっ!このイカレやろう!へんたいのむのうめ!」 「ふん!何とでも言うがいいわ!」 「くそったれのうぃりあむめ!かくご!」 「ヘレナ」 「はい」 「正座」 「はい」 「ふぁ・・・」 ミシュティは寝床を求めてエルモ号をよく徘徊する。寝てばかりだが、寝るための努力は惜しまない 「ここかな?」 今日の寝床はメイリンの部屋。主は滅多に帰ってこないし、設備は他の部屋と同等だ。隠れ家に持ってこいと言える 安眠枕を一つ。家主に片付けられるかもしれないし、他の荷物は置いておけない。 「ふあぁ・・・」 あまり使用された様子のないベッドは新品のような弾力を返す。うーん、及第点かな 最低限のセンサーだけオンにしてスリープモードに移行 「じゃ、お休み~・・・」 ------------ 「指揮官!部屋に何かいたんです!ベッドに!本当なんです!」 「・・・メイリン、ちょっとお酒控えようか」 「カリン・・・」 『カリーナです。何の用事です?こう見えて忙しいんですが』 「お金を、貸してください・・・カリン・・・」 『カリーナです。そちらには十分なほど依頼も支援も行っていますが?』 「人形が増えて素体のメンテとか弾薬費がかさんでるんだ・・・頼むよ、カリン」 『カリーナです。しかしですねぇ・・・』 「なんでもするから!」 『今何でもって言いましたよね?』 指揮官攻略レース! 第一レーン!皆さんお馴染みカリーナ選手! 第二レーン!こちらも皆さんお馴染みペルシカ選手! 第三レーン!初参戦のメイリン選手! さぁ!レースが始まりました!先頭を行くのは我らがカリーナ選手!速い!これは速い!ヒロインレースぶっちぎりです! 「指揮官様は誰にも渡しません!指輪も貰いましたから!」 おおっと!ここで勝利宣言か!? いや、後方から急激に追い上げてきているのは・・・ペルシカ選手!速い!速過ぎる!いや・・・あれは・・・人形です!ペルシカ人形が走っています!本物はスタート直後に倒れてそれっきりです! 「教授待っていてください!マグラシアでも現実でも、私は貴方と共に歩んでいきます!」 これは、決まったかぁ!?いや、さらに後方から追い上げる、この影は・・・ 「すべてを終わらせに帰ってきました・・・」 M4A1です!M4A1!ドールズフロントラインのヒロインが帰ってきました!圧倒的速度でゴール!ゴール!ゴーーーール! ではここで1位のM4A1さん!一言お願いします! 「私はすべてを手に入れました」 ※メイリン選手は事前検査の結果、飲酒が判明しており、失格処分になります。 「指揮官、台本だよ~」 「何これ?何の台本?」 「じゃ、明日はよろしく~・・・Zzz・・・」 「ミシュティ!?起きて!?起きろ!クソッ」 ---------- 「ぐぅ・・・」 「・・・何か面白いの?これ」 「指揮官、今は『抱き枕』役なんだから。役になりきってよ」 「抱き枕役って何?はぁ、まぁいいや」 「ふあぁ・・・今日はこのままずっと、抱き枕だから。あたしの睡眠の質を上げることをしてよね」 「はいはい。仰せの通りに、眠り姫様」 目隠しされるのは人生で何度目だろうか。昔は割と大変だったし、それなりにピンチだったが、今ほどの頻度じゃなかったはず。それに、 「また勝手にイったの?許可、出してないけど」 「あっ・・・だって、朝暉・・・待って!さっきイったばっかりなっ!」 全身を縛り上げられ、脚を閉じるどころか、身動きすら取れない。彼女のワイヤー術はここまで出来るのか、と無駄に関心してしまう 津波のように押し寄せる快楽から逃れようと、何とか腰を引こうとする 「ダメだよ指揮官」 言葉と共に下腹部が圧迫される。朝暉に何度も何度も嬲られた、俗にいうGスポットを 「お゛っ!」 脳が白に染まる。意識が飛んだのは数舜か、それとも数秒か、それすらわからない。 「またイった。何度目かな。せめてイくときはイくって言ってよ、指揮官」 朝暉の声が遠く感じる。頭がぼうっとする。身体は浮いたような感覚しかしない 「返事」 淫核が弾かれ、途端に意識が覚醒する。絶頂を繰り返し敏感になった身体が跳ねる 「あ゛っ!いっ!イき゛ますぅ!」 朝暉の調教は5日目を迎えようとしていた 「指揮官、その、そろそろ身を固めた方がいいのでは?」 「身を固める・・・成程、新しいボディアーマーが欲しいんだな、クルカイ」 「なっ!え、ええ!そうです!流れ弾で死んでは困りますから!」 「何でキレてるんだ・・・」 ------- 「指揮官、そろそろせ、せせせ誓約したら?ほ、ほら、目の前にアンタにお似合いの人形がいるし」 「製薬?別に薬は必要じゃないし、フローレンスもいるけど?」 「チッ!アンタ!わかっていってるでしょ!」 「指揮官!台本だ」 「何これ?何の台本?」 「明日はよろしくたのむ」 「ウルリド!?何の台本!?」 ---------- 「本当にこの服を着て、貴様と伽をすればスオミは解放するんだな・・・?」 「二言はない。着て私に犯されるか、スオミを見殺しにするか選ぶと言い」 「クッ!卑怯者め!クソッ」ゴソゴソ 「ほう、その退〇忍スーツ、よく似合っているではないか。下品な乳が映えるというものよ」 「下種がぁ!はぁ♥そこに♥さわる、なぁ♥」 「お姉様?」 エルモ号に乗車しても相変わらずデスクワークをしている科学者が一人 「・・・次、勝手に触ったら現代オブジェ風の人形に改造してやるわ」 「悪かったよ」 ネコミミを触ったらこれだ。勝手に触ったのは悪いと思っているが、キレすぎじゃないか?更年期障害かもしれない。フローレンスとコルフェンに 「何?そんなに面白い死因がいいの?そうね、人形に絞られすぎて腹上死がいいかしら?丁度、『私』のサルベージも終わるし」 「・・・すみませんでした。反省してます」 何も言ってないのにこの言い草だ。そんなに顔に出てるのか?それとも思考盗聴装置でも発明したのか?真実は闇の中だ 「それで?何の用?」 「用がなくちゃ会いに来たらダメなのか?」 質問に質問で返してやる。ペルシカに会いに来たのは事実だが、この調子だと帰らされそうだ。とりあえず、センタウレイシーが淹れた珈琲(無糖)をデスクに置く 「はぁ・・・」 目の前の科学者が嘆息する。手持ち無沙汰な白いしなやかな指が、白い角砂糖を一つ摘み、珈琲の黒に投下する。 「触る前に一言言ってくれないかしら。・・・その、敏感なのよ・・・」 上目遣いの女の目は何かを欲するように潤んでいた 「あっ!高所作業中にヴェプリーが誤って泉に落ちてしまった!」 「人形でよかったですね、指揮官様。あとでヒヤリハット報告書出しといてください」 『指揮官、あなたが落としたのはこのSなヴェプリー?』 「指揮官☆NGワード言ったからローションガーゼ2時間の刑だよ☆」 『それともこっちのMなヴェプリー?』 「指揮官・・・☆今日は野外露出でワンワンプレイがしたいの・・・☆その後、ステージで公開セックスもしたいな☆」 「いや、高所作業出来るヴェプリーだよ、ルニシア・・・」 『正直者の指揮官には私と共に歩む義務を差し上げます。これから、末永くよろしくね』 「あ、ルニシアさん!ついでの私の誓約届も出してください。指揮官様は速くヒヤリハット報告書書いてくださいね」 『ええ、勿論』 「「どっちのヴェプリーも愛してね☆」」 「指揮官、すみません。お金を貸してくれませんか・・・?」 「水臭いなRO。いくらだ?10万?100万?」 ---- 「指揮官~、お金貸して~?」 「無駄遣いするんじゃないぞ、ソップ」 ----- 「指揮官、ちょっと融資をくれないか?」 「また酒か?M16」 ----- 「指揮官、追加の整備費用を。これは費用の内訳です」 「わかったAR15。首飾りスピーカー取り外し費・・・?」 ----- 「指揮官、財布出して。早く」 「恐喝だよ、ダンデライオン・・・」 久しぶりの休日に、午後の気怠い時間。こんな時はベッドで寝てしまおうと思ったのが2時間前 疲労は何処かに飛んでいったし、素晴らしい寝起きだ 何だか体に布団とも違う別の体温を感じる。さてはミシュティが寝に来たなと、横を振り向く 「何でペルシカがいるんだ・・・」 整った顔立ちは化粧っ気の薄く、何よりクマが酷い。普段の表情からは想像もつかないが、寝ている彼女は可愛らしさすら感じる。仄かに香る甘い匂いは女特有の匂いか、砂糖の匂いか判断がつかない 「・・・」 彼女の頬を撫でたのは魔が差した、という表現が適切だろう。2度3度と往復していると、流石に鬱陶しかったのか、逆に手を掴まれてしまった 「・・・」 いかんいかん。このまま起こすと後で何を言われるか。合意がない行為はただの犯罪なのだ。・・・ミシュティは襲われ待ちだった気がするが 変なことを考えつつ、拘束から逃れる。幸い、人形達のように万力の如き力ではなく、するりと抜け出すことが出来た 毛布を掛け直し、、寝ているはずの人間から声がかかった 「・・・ねぇ、しないの?寝てるんだけど?据え膳、んっ・・・」 この科学者を黙らせるために、まずはキスから始めよう 「またか・・・」 毛布が膨らんでると思えばミシュティが入り込んでいた。布団あるところにミシュティありだ 最初こそクルカイから逃げてきたと言っていたが、頻度が多すぎる。というか毎日来てるじゃん 「ミシュティ、起きて」 「う~ん・・・」 肩を揺すってもこの反応だ。と、ミシュティが寝がえりを一つ 何故か寝間着の止め紐が解け、白い人工皮膚が露わになる。 「・・・」 服で辛うじて隠れている乳房は掌に収まるほど良い大きさで、ツンと立って乳首が主張している。というかブラはどうした何故つけてない パンツは履いていた。・・・布地の向こうの皮膚が透けて見えるほど薄い布をパンツと呼ぶのならば。後、股の部分はぐっしょりと濡れて、隠しているのか欲情させたいのかよくわからない 「ミシュティ、起きてるよね?」 「・・・寝てるよ~」 はっきりとした寝言が聞こえ、再びの寝返り。もはや寝間着は情欲を誘うだけの意匠になり果ててしまった 「・・・そんなことしてたら襲われるよ?ミシュティ」 「・・・寝てるから襲われてもわかんないよ~」 「はぁ・・・」 広い、というか広大と形容すべき部屋でそれに負けないくらい盛大にため息をつく。家主の名前はカリーナ。非軍事勢力管理局に勤務している、俗にいうエリートだ 仕事な順調。少々危ない目にも合うが、あの頃ほどの鉄火場ではない。何なら物足りないくらいだ 寝る前のシャワーは温め、寝室のアロマは甘めのものを 「連絡の一つくらい、は無理にしても。クルカイさん経由で何か連絡してくれればいいのに・・・」 あのころとは違って何でも手に入るのに、あの人だけが手に入らない 『カリン、大丈夫?』 あの人の顔が浮かんだまま消えない。会ったのはあの日、数分だというのに。全く・・・ 「・・・・・・」 豊満な乳房を揉みしだき、カリカリと乳首をひっかく様に愛撫する 『乳首だけでイきそうなの?カリン』 「んっ♡・・・指揮官様の、♡イジワル♡・・・」 パンツの上から指で軽くなぞる。既にびしょびしょに濡れ、役割を果たせなくなったそれを脱ぎ捨てる。 「んっ♡・・・はっ♡・・・指揮官、様♡・・・」 くちゅくちゅと水音が広い寝室に響いて消えた 「クリ、リングですか・・・?一体どのような物ですか?ご主人様」 「じゃあ、センタウレイシーにもつけてあげないとな」 ---- 「クリリング?シャークリーわかんな~い♡」 「じゃあ、わかるようにしないとな」 ---- 「ハァ!?クリリング?って何よ!い、いらないなんて言ってないでしょ!」 「はいはい」 ----- 「クリリング・・・ですか」 「スプリングフィールドもつけようか」 「でしたら指揮官もコックリングを付けてくれますよね?」 「飼育員!大変だよ!」 「どうしたチータ。またどこか爆発させたのか?」 「させてない!」 「じゃあ、どうしたの?」 「リンドだよ!リンドの様子がおかしいんだって!なんかお腹撫でてるし、変な笑い方するし」 「ふふ、元気な子が生まれてくるといいな・・・今の内に名前考えなきゃな・・・」 「ほら!」 「あー・・・うん、そうだな・・・多分大丈夫だよ、きっと」 「あっ、子供服も買わなきゃな。私はお乳出ないから粉ミルクもいっぱいいるな・・・」 「飼育員!やっぱりなんか変だって!」 「いや、大丈夫だよ・・・人形だし・・・そんなわけないだろ・・・はは・・・」 「もう!飼育員までおかしくなった!」 「朝ですよ。指揮官、おはようございます。」 「んっ・・・ペルシカか・・・」 重い瞼を開ければ柔らかに微笑む彼女が立っていた。昨日はカリンへの報告書を書いていたのが最後の記憶だったが、いつの間にかベッドに運ばれていたようだ 「あ゛ー・・・シャワー・・・」 寝起きでうまく頭が働かない。ひとまずシャワーを浴びてすっきりするとしよう ノロノロと起き上がり、備え付けのシャワー室へ。寝間着を放り投げ、下着も脱ぎ散らかし・・・ 「・・・ペルシカ、シャワー浴びたいんだけど?」 「ええ、そのお手伝いを」 何食わぬ顔で言い放つ人形。・・・成程、冗談で言っているようではなさそうだ。 「・・・とりあえず出て行ってくれない?」 「ですが、教、指揮官がもしシャワーで足を滑らせて頭をぶつけたら・・・それに、私も一緒に浴びれば節水になりますよ?」 「ならないよ・・・わかったから!その物騒なやつしまって!」 重々しい金属音と鋭い光沢に入室を許可せざるを得なかった 『指揮官、朝から「私」と一緒にシャワー浴びるなんて、そんなに欲求不満なの?』 「ペルシカ、それは『君』に言ってくれないかなぁ?ちょっ、ペルシカ!まずいって出ちゃうから!」 「やぁ、J。久しぶりだね」 「げぇ、指揮官。何の用だよ」 「ちょっと頼みごとがあってね」 「ヤダよ!お前の頼み事なんて!絶対碌なことになんないだろ!」 「そこを頼むよ」 「無理なの!あのな、俺は今ネーレちゃんとミアちゃんと愛を育んでるの!」 「そこを頼むよ」 「銃押し付けながら言う台詞じゃねーよ!クソっ!で?」 「今のパラデウスの状態を」 「はいはい。ったく、女紹介しねーと情報渡さねーぞ」 「それなら、この前知り合った女がいるよ。病弱色白車椅子の」 「マジかよ!なんだよ、いい女いるじゃねぇか。具体的にどんな子?紹介してくれ」 「人形ハッキングして人間にお薬キメて死の直前でもあはうふ笑ってるようなやつだよ」 「絶対紹介すんじゃねーぞ!クソッ!指揮官の知ってる女はこんなんばっかだ!」 「指揮官!台本!」 「何これ?何の台本?」 「じゃ、明日はよろしくね!」 「ビヨーカ!?何の台本!?」 ---------- 「ミシュティはともかくビヨーカは何処に行った!」 「クルカイ、ちょっといいか?」 「あ、指揮官。どうしました?」 「ちょっと部屋にいいか?二人きりで話したい」 「え?あっ!はい・・・うっ!」 「イエーイ!作戦成功!指揮官!今の内だよ!」 「バレたら殺されないか?これ」 「その前に指揮官のチンポでお姉ちゃん堕としちゃえばいいんだよ!私も手伝うから!」 「大丈夫かなぁ・・・」 噂の人食い反社カフェに潜入!?奥で見え隠れする黒い影を暴く!?、今週はこれで行くか・・・ 「すみませ~ん!〇×報道のものですが~!どなたかいらっしゃいませんか~!」 「はい、どのようなご用件でしょう?」 人当たりの良さそうな人形が出てきた。裏できな臭いことをしてるとは思えないツラだが、まぁ悪人面の悪人なんてフィクションの中だけだ 「ちょっと取材をさせていただき「当店ではそのような対応は行っておりませんので・・・」」 チッ!人形風情が。下手に出ればこれか。真実を追い求めるという崇高な理念は所詮人形には理解できないか 「はぁ、すいませんね」 まぁ、正面は無理だというのはわかってた。なら裏から行くまでだ。先輩も上司も「そのネタは止めとけ」って言ってたが、そんなだからいつまでもうだつが上がらないんだ。今に特ダネ掴んでやる 「・・・なんだここは・・・倉庫か?」 スラム街、警察のツテ、聞き込み張り込み賄賂に脅迫、やれることはすべてやって、たどり着いたのが辺鄙な倉庫群 「なんだこりゃ!戦闘ヘリ!?それに人形のダミーか!こんなもんグリーンエリアじゃ・・・」 「いけませんね。お招きした覚えはないのですが」 「あぁ!クルカイが飛び出した人形を躱してハンドルきり損ねて泉に!」 「人間じゃなくてよかったですね。でも人形相手なら対物保障で安心ですよ、指揮官様。」 『あなたが落としたのはこのツンツンクルカイ?』 「指揮官、早く決断を。指輪?性能向上のために貰いますが?」 『それともこのデレデレクルカイ?』 「指揮官、その、初めてだから電気を消してくれませんか・・・?」 「いや、私は落としてないし、勝手に落ちたんだよ。それにどっちも同じじゃない?」 『正直者の指揮官にはツンデレルニシアをプレゼントしてあげましょう』 「いらない・・・」 犯したいと発言した場合 ヴェプリー:「お菓子隊?お菓子小隊なんてあるの?ヴェプリー初耳☆」 シャークリー:「お菓子鯛?センタウレイシーってそんなお菓子作ったっけ?」 幼熙:「もう♡・・・アイドルとセックス出来るなんて指揮官くらいなんだからね♡」 「センタウレイシー、私のシャツしらないか?」 「こちらに」 「助かるよ。もうセンタウレイシーがいないと生きていけないな、なんてな」 「ご主人様、誓約届をお持ちしました。ご主人様のサインだけで完成しますので、お早く」 「待ってくれ」 ---- 「スプリングフィールド、珈琲貰えるかい?」 「はい、どうぞ」 「ありがとう。毎日君のの珈琲を飲みたいな、なんてね」 「ふふ、ありがとうございます。誓約届は既に出していますよ」 「待ってくれ」 「立ち入り禁止(厳守)」の札がぶら下がった指揮官の部屋 白いシーツに桃色の髪が揺蕩っている。ベッドに横たわっているのは指揮官で、それを見下ろすのは私 「あの、ペルシカ?」 「何?」 咎めるような視線を逆に見つめ返してやると、すいっと視線を外される。人形と行為の経験はあるだろうに、人間相手は初心なのか?なんともチグハグだ 「その、ペルシカ・・・手が、」 「何よ」 ぐにぐにと胸を揉んでやる。吸い付くような肌に、どこまでも沈むような柔らかさだ。正直ずっと触っていたい。というか私よりデカくない?けしからん! 「目が怖いんだけれど・・・」 「恋人の身体は好きにしていいんでしょう?ふぅん、このデカパイで人形と『私』を誘惑したのね」 「いや、別に関係な、んっ♡」 抗議の声が聞こえた気がするが、すぐにいつもの嬌声に変わった。幾度となくまぐわったし、彼女の弱点なんてとうに把握済みだ 「今度は『私』と3人で楽しみたいわね」 「2人で嬲るの間違い、あっ♡そこっ、ダメ♡」 「あの」指揮官とは思えない、蕩けた表情が、嗜虐心をくすぐる。人形たちに見せて感情パラメータの数値を取りたいくらいに 「指揮官、私の部屋は?」 「ないよ!昨日の今日だぞ!」 苛立たし気に舌打ちをするのは天才科学者、ペルシカその人だ デカイ荷物にデカイ態度、さらにデカイ部屋まで要求するとは 「何か言いたげね」 「No,Mom、何もございません」 とは言え、彼女はリモールディングパターンの技術提供者であり、今後の戦力増強に必須と言える。無碍にはできない 「サーバーは?しょぼいのしかなかったら貴方の私物を人形達のオークションに出せって」 「何のオークションだよ・・・」 「暫くは指揮官の部屋で我慢するわ。何処なの早く」 「待ってくれよ」 静止の声が虚しく木霊した (これまでの指揮官)メイリンに手を出した 「うへ、うへへ、指揮官~」 「・・・指揮官様、メイリンちゃんどうしたんです・・・?」 「・・・さぁ・・・」 今日は視察の日。という名目でカリンと情報交換というのに、メイリンの意識は明後日に飛んで行ってしまった。おかしい、酒はいつもの1/10くらいしか与えていないのに 虚空を不気味に眺めて思い出すように笑いだすメイリンに恐怖を覚える とりあえず放置して車内で情報を交わす。特段のネタはなかったが、リモールディングパターンによる戦力向上は著しいと伝えた。そんなこんなであっという間に時間が過ぎる中、メイリンが口を開いた 「指揮官、指揮官。ぎゅーってしてくださいぎゅーって。昨日みたいに」 「メイリン、ストップ」 「ゴムも一昨日から切れてますし、もうずっと生でよくないですか?指揮官だって、昨日『生でヤるのは最高だ』って」 「メイリン、ストップ」 「指揮官様~、ちょ~っといいですか~?」 「待ってくれカリン」 「融資の話をなしにされたくなかったら、何をすべきかわかりますよね?」 「・・・わかった、カリン。先にシャワーを浴びてくるといい・・・」 おい!野郎ども!野菜を育てるのに何が必要かわかってるな! へい!クソを撒くことでさぁ! 0点だ!クソと干し草を混ぜて発酵させろ!さては、クソをそのまま撒いて折角の野菜を枯らしたな! へい!その通りでさぁ! このボンクラが!土は生き物なんだぞ!鍬で耕して空気を送って肥料を撒く!畑をコーラップスとクソまみれにしてぇのか! でも、ボス。イエローエリアにそんな上等な肥料なんて・・・ 安心しろぉ!このヴァリャーグ印の肥料を使え! おぉ!すげぇぜボス!リンにカリ、窒素まで!? だろう?イエローエリアどころか、グリーンエリアでもお目にかかれねぇ品質だぜ? それにこれは・・・顆粒タイプ!? そうさ!使いやすくて手も汚れねぇ!そこの奥様もお手軽に使えちまうのさ!お子様は間違っても口にするんじゃねぇぞ! でもボス・・・これ高いんじゃ・・・ 心配いらねぇ!10kgで200000サルディスゴールドぽっきりだ!今ならスコップもつけてやる! 流石だぜボス! お求めはここ!ヴァリャーグ運輸が責任を持ってお届けするぜぇ! 「チッ!もういい!あんたみたいな鈍感でデリカシーのないバカ指揮官なんて!」 「マキアート!行ってしまった・・・」 「人形の口説き方がなっていませんね、指揮官。珈琲をどうぞ」 「スプリングフィールドか。カッコ悪いところを見られてしまったかな」 「ふふ、そう思われてるならまだ改善できますよ。私で練習されては?」 「ありがたい。んんっ。スプリングフィールド、今夜空いてる?」 「ええ、勿論」 「じゃあ、夜間戦闘のメンバーに加えておくね。後は前衛か・・・」 「氷を入れますね」 「どうして!?」 ネイトの飼い方 基本的にトイレは不要。膣モジュールとアナルモジュールを付けた場合は別 餌はA5フィレステーキとか伊勢海老等、高級な物が必須。ネイトより食費が高いというのはネイト飼いにはよくある話 白いネイトはツンツンしてるけど、甘えん坊。黒いネイトはデレデレして甘えん坊。 共飼いすると白い方が黒い方をイジメるので、隔離するか、白い方を徹底的に躾ける必要がある 衣服は着てたものじゃないと泣く。最低1週間着ないとダメ ベッドも同じじゃないとダメ。性欲処理は毎日しないと勝手に絞りに来る 「ふおおおおおおお!ゆき!ゆき!」 「指揮官、ダメです。雪で進めませんよ」 「仕方ない・・・総員降車。前方の雪の除去とエルモ号に除雪装置の取り付け、急げ!」 「飼育員!新作の発明品取り付けていい?」 「火炎放射機じゃ雪は解けないよ、チータ」 「ちぇ~・・・」 「え゛~、私は無理だから!配信してきていい?スパチャの2・・・10%あげるからさ!」 「何言ってるんだMDR。雪国生まれだろ。むしろお前が率先して雪かきするんだよ!」 「ぶーぶー!人形への不当労働反対!人形にもコタツの温もりを!」 「ゆき!そと!いく!」 「待てヘレナ!クロ!お守りも頼んだぞ!」 「はぁ!?ガキの相手は嫌いなんですけど!そういうのはあのねぼすけ人形の保護者に「何か言った?」ナンデモナイデス・・・」 エルモ号試験導入暖房器具「炬燵」の導入テストにおける人形の使用感についての聞き取り調査結果 人形A「悪くないね。タイヤがついて自走機能がつけばもっと・・・Zzz」 人形B「いいですね。温かくて思わず寝てしまいそうです。『猫は炬燵で丸くなる』という話がありますが、私は猫ではないので」 人形C「ミシュティのアホは何処に行った!この中か!」 人形D「じっとなんてしてらんない!動けば温かくなるって!指揮官さま!外行こうよ!」 人形E「果て無き微睡・・・尖塔は地平に堕つ・・・」 夜、エルモ号の航路設定とメールチェックをしていると、目の前が暗くなった 「・・・誰だと思います?」 「ペルシカ」 手をどかしてみれば嬉しそうな顔の人形と、苛立たし気な人間が立っていた。つい最近乗って来た二人は我らがペルシカとペルシカだ 「流石、指揮官ですね」「音声モジュール変えてみようかしら?いや、私の代わりにならなくなる・・・」 「足りない物があった?部屋ならいくらでも余ってるけど」 足りなければ闇ブローカーから仕入れよう。資金は潤沢とはいいがたいが、彼女たちによる人形の戦闘力増強に比べれば些末なものだ 「いえ、特には。よくしてもらってます」「スパコンとサーバー、後・・・」「まぁまぁ、ペルシカ博士・・・」 こうしてみると、姉妹か双子だ。同じ顔、同じ背、体形はちょっと、大分違うが 「・・・何か言いたげね」 咳ばらいを一つ 「明日になるけどツテに声をかけよう。他に欲しいものは?」 「いえ、貰ってばかりでは・・・何かお返しを」「抱かれたら?私は昨日シたし」「ペ、ペルシカ博士っ!」 「はは、お手柔らか、んっ」 肯定の言葉を言い終わることもなく、『ペルシカ』の情熱的なキスが私の口を無理矢理塞いだ 「指揮官!これ台本ね」 「何これ?何の台本?」 「じゃ、明日はよろしくね!」 「サブリナ!?何の台本!?」 ---------- 「サブリナと」「指揮官の」「「美味しいグルメ!」」 「今日も始まったよ!サブリナの『美味しいグルメ』!今日のゲストは指揮官に来てもらったよ」 「よろしくね!サブリナ、今日は何を作るの?」 「今日は王道の鹿と熊肉のバーガーを作っていくよ!」 「おっ!いいね!ジビエバーガーは楽しみだ!」 「材料はこちら!とれたてのウルススとクロコディア!まずはひき肉にしていくよ!」 「・・・サブリナさん?」 「・・・ちょっと味見しちゃおうかな?いい脂がのっておいしそー!いただきまーす!う~ん、ちょっとじゃりじゃりしてるけど美味し~!」 「おい!カメラ止めろ!」 「来たわよ、指揮官」 「随分遅かったね、リヴァ。渋滞でもしてた?」 「そうね。これでも飛ばしてきたんだけど?それに、ちょっとの遅刻くらい、指揮官は許してくれるわよね」 「それで怒るくらい狭量じゃないさ」 「さっすが指揮官。それじゃ、10年分の借りを少しは返してもらおうかしら」 背を預けた椅子がぎしりと鳴いた >はい…指揮官の指示でグリーンエリアをうろつくチンピラに寝取られます… グリーンエリアとイエローエリアの境目。酷く治安が悪いことで有名だ。男なら身ぐるみを剥がれてオブジェ、女なら身ぐるみを剥がれて欲望のはけ口 そんな場末のスラム街に似つかわしくない人形が歩いていた 長い髪に璃々とした顔立ち。薄いレモングリーンの瞳は、強い意志を感じる グラマラスな体つきはいかにも男好きだ。胸は巨を超えて爆乳。歩くたびにたゆんたゆんと、たわわな乳房が揺れている 総じて、薄汚れたこの街では酷く浮いており、それが人形の魅力が一層引き出されているようだ 「へへ、見ろよ」 「いい女だぜ・・・」 下卑た視線を向けられると、射殺さんばかり、というより殺気すら向ける。物騒な人形に、人は一人二人と離れていった 人形が向かった先はスラムのさらに奥。ほとんど誰も寄り付かないようなあばら家。その中で待っていたのはでっぷりと太った不潔な男だった。粗末な衣服にガサツな態度 「・・・寝取られに来たわよ」 「へぇ、指揮官サマは約束を守ったってことか」 「・・・アンタのその粗末なモノを早く出しなさい。早く・・・」 言葉は要求から懇願に変わっていた (前回のあらすじ)けおちゃん寝取らせに出した 「これが欲しいんか?ん?」 男が服、と呼ぶことすら憚れるボロ布を乱雑に脱ぎ捨てる。でっぷりとした腹、そして、長く、太く、女を落とす為ことに特化したような逞しい肉棒。半勃起のソレにクルカイは思わず唾をのむ 「躾のなってねぇ人形だな?あ?オナホがいつまで俺と同じ目線にいやがる」 普段の彼女であれば、こんな態度の輩には銃弾が突き刺さっている。が、 「くっ・・・」 男の挑発するような態度に、クルカイは膝をつき無様に許しを請うように頭を下げた 「お、お願いします・・・陰茎をしゃぶらせてく、ぐっ!」 言い終わる前に頭を強く地面に押し付けられる。男の足がクルカイの頭に落ち、ぐりぐりと踏みつけているのだ 「毎度物覚えの悪ぃ人形だな」 「お、おちんぽ様しゃぶらせてください!お、オナホ人形のクルカイにおちんぽ様しゃぶらせてください!」 屈辱的な言葉に満足したしたのか、男の足が浮く。頭を下げたままのクルカイの髪を掴み、無理矢理陰茎に近づける 「しゃぶれ」 許しと同時に迷わず喉奥までしゃぶりつく。ごりごりと喉を抉る巨竿も淫臭もえぐみも今の彼女にとっては至上のものだった。 「ロビン?」 うつらうつらをしていると、後ろから覗き込むように彼女が姿を現す。 途端に意識が覚醒する 黒い髪に変わらない白い花飾り、まごうことなく彼女であった 「指揮官は疲れてるんですよ、マハリアンさん。疲れる、ってどんな感じなんでしょうね」 RPKがその隣に立つ。エンブラの姿ではなく、人形の時の姿だった 「指揮官、起きる時間よ。寝てる暇なんてあるのかしら?」 懐かしい戦友の声が聞こえた 「人権を!」「人形にも人権を!」「公的に指揮官と結婚できる身分を!」 「どういうことだ!ナガン!」 「革命じゃ!エルモ号の人形にも全員人権を保障せんか!」 「持ってる人形もいるけど・・・」 「持ってない人形もおるんじゃぞ!」 「わかったよ・・・カリン、頼みがある」 ------ 「おぬし、これは?」 「何って所得税に健康保険料と他もろもろの税金と、確定申告書だけど。提出するから後3日で書いといてね」 「・・・」 ------ 「人権反対!」「人形から人権を取り上げろ!」「指揮官と事実婚させろ!」 「指揮官。台本です」 「何これ?何の台本?」 「では明日はよろしくお願いします」 「ロベラ!?何の台本!?」 ---------- 「グハハハ!この街を破壊してやろう!」 「そこまでです!トォッ!」 「また貴様か・・・ロベラ仮面ウーマン!」 「あなたの野望もこれで終わりです!MAD Commander!」 「ダサくない?その名前・・・んんっ!これでも喰らえい!」 「きゃぁ!クッ!何この触手!?」 「私にもわからん・・・ともかくこれで終わりだ!」 「くぅ!こ、これしきの拘束で・・・んっ・・・指揮官、早く・・・」 「えー・・・ククク、このまま拘束された貴様を眺めているのも面白いが」 「なっ!何処を触って、触るな!・・・ちょっと触るのやめないでください・・・あっ、胸は敏感なんです・・・指揮官、真面目にやってくれますか?」 今年は男指揮官×女指揮官で二冊出すであります 苦楽を共にした戦友。もはや一心同体でありますな 10年前は鉄血だの軍だのパラデウスだので、そんな余裕はなかったけれど、気楽な賞金ハンターの身になったのでお互い意識しだしてしまうでありますなぁ ささやかな結婚式。ウェディングドレスでもタキシードでもないけれど人形達に囲まれ幸せに満ちた二人の挙式であります そこにヴァリャーグの襲撃があり、一人が庇い、一人が生き残ってしまう本を1冊ずつ出すのであります R18じゃない健全本でありますなぁ! 「ミシュティ、お金貸してくれないか?」 「え゛~、あたしもないんだけど・・・」 ---- 「レナ、お金貸してくれないか?」 「もっちろん!家族だからね!」 ---- 「クルカイ、お金貸してくれないか?」 「はぁ・・・また無駄遣いしたんですか?いくらあれば足りますか?1億?」 ---- 「指揮官?資金繰りが危ないって聞いたんだけど?融資した方がいいかしら?」 「いや、その言葉だけで十分だよ」 「へぇ・・・」 >春田さん、リヴァ、カリンの誰かからお金を借りなければならない場合には誰から借りるのが一番安全? 「リヴァ、お金貸して」 「トイチでいいわよ、担保は、そうね、エルモ号でいいわ」 「・・・出来るだけ早めに返すよ」 ------- 「スプリングフィールド、お金貸して」 「勿論。いくらお渡しすれば?ああ、その代わりと言っては何ですが、今後常にこのコートを着てくださいね。後、元グリフィンの皆さんを集めましょう」 「目が怖いよ・・・」 ------- 「カリン、お金貸して」 「この書類にサインをしてくださるのであればいくらでもお貸ししますわ!」 「結婚届って書いてあるんだけど」 「何か問題が?」 「黛煙、パチスロ代」 「その、指揮官、もうパチスロは止めて・・・」 「何?ないの?チッ!絳雨のとこ行、」 「待ってください!お金、ありますから・・・」 「早く出せよ。ったく・・・もう辞めよう、黛煙・・・」 「では融資は今月までと?」 「・・・勘弁してください・・・飯用意しとけよ、黛煙」 「わ、わかりました・・・」 「Zzz・・・」 「はぁ・・・」 部屋に戻るといつもの闖入者がベッドを占領していた 「起きてミシュティ。あたしのベッドなんだけど」 「う~ん・・・」 今日も起きない。ここ数日、ずっと部屋に居座る人形にヴェクターは少々辟易していた 「仕方ない・・・」 ミシュティをベッドの奥に押し込む。「ぶぇっ!」とか聞こえたが寝言に違いない 「ふぅ・・・」 寝転がりようやく人心地つく。ベッドに沈み込む心地よい感触がヴェクターを包みこむ 「・・・ミシュティ、離して」 「Zzz・・・」 寝返りをうった人形に抱き枕の如く抱き着かれる。ロックを外そうと格闘すること1分、ため息とともに早々に諦めて瞼を閉じた 「・・・ヴェクター、寝た?」 「・・・今から寝るところ」 「お弁当。お弁当は、いかが。お肉たっぷり。足りない人は、ついてきて。」 黒い髪、黒いマント。全身真っ黒の人形がスラム街で弁当を手に練りまわっている 「おい、弁当だと」「肉たっぷりだと?」「止めとけ、アイツの弁当食った奴、皆いなくなっちまったんだ」 ヒソヒソ。噂の早まる速度は彼女が思う以上に速いらしい。特に、こんなスラムでは 「・・・お姉様、この地区は噂が広まりました。」 「結構。次の地区へ。」 耳元から聞こえる機械的な音に、黒い人形はひとりでに頷く 「お弁当。美味しいお弁当。無料のお弁当。ネイト弁当はいかが。」 今日もスラム街で弁当を配る黒い人形が一人。それについて行った者は、今でも帰ってこない 「ククク・・・いい格好だな、ウルリド。期待してたのか?もう濡れてるぞ?ん?」 「クッ!私は好きにしろ・・・だが、スオミに手を出すな!」 「お姉様?」 「ふん、いいだろう。望み通り楽しませてもらおう。・・・えーっと」 「『まずはしゃぶってもらおうか、ウルリド』だ、指揮官」 「ありがと・・・んんっ、まずはしゃぶってもらおうか、ウルリド」 「うっ、そんな汚いものを近づけるとは・・・」 「お姉様?」 「♪~」 「あら、上機嫌ですね、マキアートさん。何かいいことでもありました?」 「スプリングフィールド。ふふん、見なさいよ、これ」 「あら指輪ですか」 「やっとあのクソボケ朴念仁も私の価値を理解したってコト。ふふん、挙式はいつがいいかしら」 「やっともらえたんですね、マキアートさん」 「え?」 「長かったですからね。もうそういうプレイかと」 「え?」 「やーい♡マキアートの行き遅れ~♡」 「え?」 「久しぶりだな、J。会えてよかったよ」 「いーや、俺は会いたくなかったね。10年前のこと忘れたのかよ」 「まぁまぁ、過去のことは水に流そう。今日は私が奢らせてもらうよ」 「嫌だね、俺は帰るの。可愛いネーレちゃんが俺の帰りを待ってるから!」 「落ち着けよ、J」 「だから銃突きつけんなよ。対人コミュニケーション能力死んでるだろ!」 「そうか?カリンともメイリンともペルシカとも仲良くやれてるけど」 「だったら全員に指輪でも送ってやれよ・・・」 「そんな仲じゃないさ、彼女たちとは」 「刺されても知らねーからな・・・」 「指揮官!はい、台本!」 「何これ?何の台本?」 「明日はよろしくね!」 「レナ!?何の台本!?」 ---------- 「We are?」「family!」 「family!family!」 「family!family!」 「「ファミリー!ファミリー!」」 「私たちは!」 「家族だ!」 ---------- 「レナさんから送られてきたこれ、何ですか?」 「さぁ?」 「指揮官。これ『台本』ね」 「何これ?何の台本?」 「じゃ、よろしく~」 「リヴァ!?何の台本!?」 ---------- ダダダッ、ガシャ、ドンッ! 「3階制圧完了」 『さっすが指揮官、早いわね。こっちも後もう少し。120秒以内に終わるわ』 「了解、先に行ってるよ。それにしても・・・」 『何?仕事が遅いって?一人しかいないんだから多めに見てよ、指揮官』 「いや、リヴァと二人で極秘作戦なんて初めてだなって」 『そう?じゃあ指揮官の初体験を奪っちゃったかしら?クルカイに教えてあげなきゃ・・・終わったわ。バックアップしながらそっちに向かうわ』 「突入カウント、3」 『2』 「1・・・ゴーゴーゴー!」 「♪~」 「あら、上機嫌ね、クルカイ。感情モジュールのパラメータチェックをおススメするわ。デールに見てもらったら?」 「あぁ、いたの?リヴァ。ふふん、見なさいよ、これ」 「へぇ、きれいな指輪ね。ゴミ箱から漁ったならちゃんと届け出しなさいよ?それとも、あんたみたいな万年不機嫌でヒステリックな人形に指輪を送る奇特な人がいたの?」 「ふん、やっとあのクソボケ朴念仁も私の価値を理解したのよ。挙式はいつにしようかしら。早い方がいいけど、あの人の予定だってあるだろうし」 「そう、やっと貰えたの?これ」 「え?」 「長かったね!10年越し、かな?ミシュティも持ってるよね?」 「え?」 「ふぁ・・・あたしもなんか貰った・・・Zzz・・・」 「え?」 「指揮官、一緒に風呂どう?裸の付き合いって言うでしょ?」 「そうね、積もる話もあるでしょうし。付き合うわリヴァ」 --- 「指揮官!指揮官!お風呂行こうよ!背中流してあげる!」 「引っ張らないでよ!レナ」 ---- 「指揮官、お風呂でもどうでしょうか?その、裸の付き合いという言葉がありますので・・・」 「リヴァも同じこと言ってたわ、クルカイ」 ---- 「Zzz・・・」 「ミシュティ!起きて!風呂!あぁ!もう!」 「あたし、昔はメイドしてたんだよ・・・?」 「それって暗い話?」 「私は昔、M16に返り討ちにあいました・・・ッ!」 「それ、知らないんだけど・・・」 「私?そうね、自分が生き残るために姉を殺したわ」 「突然重くなるじゃん・・・」 「私はそんなに重くないよ!リヴァ姉捕まえてバラして売ろうとしてたくらいだよ!」 「・・・」 「ミシュティ、シャワー空いたわよ。さっさと浴びなさい」 「え゛~、あたしは明日でいいよぉ・・・」 「い・い・か・ら!浴びてこい!」 「あぅ・・・クルカイの鬼・・・そもそも人形に代謝何てないんだから・・・」 「何か言った?」 「うっ・・・なにさ、指揮官と会う時だけそんなに張り切っちゃってさ・・・」 「ミシュティ」 「な、なにさ!ホントのことじゃん!」 「シャワーは浴びなくていいわ」 「?」 「アンタは洗濯機で十分よね。そのままその服と一緒に洗濯してやるわ!」 「s、指揮官ー!助けてー!あ゛ー!」 今より少し前 「メイリン、こういうことはしちゃいけなんだ」 指揮官はフルチンだった。正確に言うならば、ズボンとパンツが辛うじて足首に引っかかっていた 「だ、だって・・・」 薄暗い室内で今にも泣きだしそうなメイリン。幼い顔立ちは涙でべしょべしょになっていた。身体が精々が指揮官の腰くらい。胸だってようやく膨らみが出てきたくらいだ 「な、何かお返しをしなきゃって・・・おかねもっていませんし、せめて身体で・・・」 どこで覚えてきたのか。頭を振る。原因を探すより対応の方が先だ 「メイリン。そんなことしなくていいんだ。そういうのは君が心から好きだと思える人とやるべきだ。まだ子供なんだから」 優しく、諭すように言い聞かせる。フルチンで説教などと・・・ペドロリ野郎と罵られようとかまわない。彼女の純潔に比べれば、自分の尊厳などウィリアムの命程度の価値しかない 「もう子供じゃありません!この前、し、初潮だって来ました!」 「・・・あー、オセキハンだったかな?を食べようか?」 突然のカミングアウトに頭が追いつかない 「だから!私の初めてを貰ってください!」 薄暗い部屋でもわかるほど彼女の顔は真っ赤だった 「ん?そこにいるのはミシュティ殿か?」 「んあ?あぁ、ウルリドだっけ?」 「うむ。しかし指揮官のベッドで何を?」 「何って、クルカイが煩いからここに避難してるんだよ」 「なるほど・・・」 「ウルリドこそなんでここに?」 「うん?指揮官がいつでも来ていいと言ってくれてな。そうだ、ミシュティ殿、ポテチ食べるか?コーラもあるぞ」 「・・・怒られそう・・・」 「今まで指揮官に怒られたことはないぞ。その前にメイド殿が掃除してるからな」 「指揮官よぉ、俺は昔はカーター将軍の下で働いてたんだぜぇ」 「飲み過ぎですよ、ディミトリーさん」 「かたっ苦しいなぁ。ディミーでいいぜ。それでよぉ、堅物の大尉がいてよぉ」 「エゴール大尉ですか?」 「なんだ、知り合いか?あの人は堅物だったが真っすぐ芯の通った人でよぉ」 「・・・そうですね」 「まぁ、あの人が今何をしてるのか知らねぇんだけどさ・・・なんか情報持ってねぇのか?PMCにいたんだろ?軍と共同作戦の一つでもしてねぇのか?」 「クルカイ。オラ!洗脳!」 「何遊んでるんですか?」 「ミシュティ。オラ!洗脳!」 「Zzz・・・」 「リヴァ。オラ!洗脳!」 「何?傘の改良型でも作ったの?」 「レナ。オラ!洗脳!」 「えへへ。洗脳なんてしなくても何でも言って!だって家族だもん!」 「あぁ!指揮官様が電球取り換えの最中に足を滑らせて泉に!」 『あなたが落としたのはこのチャラい指揮官ですか?』 「ようカリン。今夜空いてる?」 『それともこっちの誠実な指揮官ですか?』 「カリン、今まですまなかった・・・これからは君と共に歩んでいきたい」 「どっちもです!どっちも!」 『嘘つきな貴方にはこの指揮官のチンポを模したディルドを差し上げましょう』 「いりませんよ!指揮官様は!?」 「指揮官はこっちで預かりますよ、カリーナさん」 「ペルシカ、朝だ。起きてくれ」 「・・・さむ」 毛布を剥がすと中からブランケットが現れた 「ペルシカ!」 ブランケットを引っぺがすと今度はもこもことしたベストを着ているペルシカが出てきた 「マトリョーシカかよクソッ!」 「日本がマトリョーシカのルーツって説がありらしいわね」 「ペルシカ!起きてるなら早く起きてくれ!」 頑として起きようとしないねぼすけ科学者 「嫌よ。昨日散々弄んでおいて」 「悪かったよ。でも、あそこまで経験がなかったなんて思ってなかったんだ。入れた途端イくな「起きた!起きたからそれ以上喋らなくていいわ!」」 とっCログインできないの?ww メンテごときでログインできないなんてwこれだから人間はダメだね~w こんなのハッキングして裏口からこっそり侵入w ほら、誰よりも先にログインできたぞw 【不正なログインを検出】 【対象IDロック】 はぁ!?なんだこいつ! クソ!この!だぁー!ふぁふぁふぁのファァァアック!! こうなったら意地でもログインしてやるぅ! 【複数回のロックを検知】 【対象IDの削除実行】 ・・・とっC・・・助けて・・・ (前回までのあらすじ)カリンとメイリンとペルシカの3股が全員にバレた 「で、誰が本命なんですか?指揮官様?」 「あー・・・勿論、カリン。君だよ」 「へぇ、技術提供はいらないわよね?ついでに『私』も呼んでこようかしら」 「ペルシカ、君のことは本当に愛してるんだ」 「指揮官・・・」 「どうした?メイリン」 「最低です・・・」 「指揮官、起きてください。指揮官」 「ペルシカか・・・」 瞼を開けるとペルシカがいた。彼女の微笑は朝の柔らかな日差しも相まって一つの宗教画のような神々しさを孕んでいた そっと、手が頬を滑る。慈しむように、壊れ物を触る様に。そして思い出したように手がさっと、引っ込んだ 「おはようございます、指揮官。コーヒーはいかがですか?」 「ありがとう。頂くよ」 身体を起こす。昨日は随分と「楽しんだ」からか、身体は少々重い。そんな私を見て彼女がクスクスと笑う 「指揮官、大分お疲れのようですね。朝食はあーん、してあげた方がいいですか?」 「揶揄うなよ、ペルシカ。飯くらい自分で食べれるさ」 朝のゆったりした幸せな時間 「・・・朝から元気ね、あんたたち・・・」 「あっ、ペルシカ。起きたんだ」「今日はもう起きられないかと・・・」 「目の前で甘ったるい寸劇見せられる立場にもなりなさいよ、まったく・・・」 「昨日はすぐダウンしたペルシカじゃないか」「3回戦で『もう許して♡無理なのぉ♡』って言ったペルシカ博士じゃないですか」 「・・・アンタたち、そこに並びなさい。人型の面白い現代オブジェにしてあげるわ」 「ペルシカ。エルモ号のシステム管理権限渡したからログイン出来るか試してくれ」 「・・・ちょっと指揮官。2段階認証入ってるんだけど?」 「当たり前だろ。入ってない方がおかしいだろ?」 「チッ。指揮官、今度は生体認証ですって?」 「当たり前だろ。大人しく認証キー設定してくれ」 「チッ。・・・指揮官、今度は網膜と静脈ですって!?どれだけセキュリティ上げたいのよ!こんな物全部切っちゃえばいいのよ!」 ----- 「ダメです指揮官!ハッキング者は既に管理者権限まで獲得してます!コマンドを受け付けません!」 「人形達を攻性防御として使え!手の空いてる人形は全員セカンダリレベルでハッキングの防御!」 「大変そうね、指揮官」 「誰のせいだと!ペルシカ!アントニーナ!君たちが頼りだ!」 「指揮官☆はい、台本☆」 「何これ?何の台本?」 「明日はよろしく☆」 「ヴェプリー!?何の台本!?」 ---------- 「ヴェ、ヴェプリー、枕NGなんです・・・」 「君の指揮官と話はついているんだ。話の分かるいい指揮官だね」 「うぅ・・・指揮官・・・」 「さあ、イエローエリア一番のアイドルの躰を見せてもらおうかな」 「・・・違う違う!もっと感情込めて☆もっと下品なおっさんみたいな視線が欲しいの!もっと舐め回すような下種な視線が!指揮官、お芝居舐めてる?☆」 「いえ・・・そんなことは・・・」 「じゃあ何で出来ないのさ!こんな演技、誰も満足できないよ!わかってる?☆グリーンエリアの非軍事勢力管理局に提出用なんだよ!☆」 「すみません・・・」 「もう・・・し、指揮官が・・・うぅ、ヴェプリー、アイドルなのに・・・」 「あっ!指揮官!こっちこっち!」 「レナ、あんまりはしゃぐと誰かにぶつかるよ」 元気が有り余っているのは良いが、衝突事故なんて起こすのはやめてほしい。最も、被害者の大部分は指揮官で、加害者のほとんどは人形なのだが 「えへへ、ごめんごめん。なんだか嬉しくって」 久しぶりに再会した彼女は昔と変わらず天真爛漫な笑みを浮かべていた。まるで大輪の向日葵を思わせる 「で?どうしたの?何か呼んでたけど」 「あぁ、そうだった。う~ん、ちょっと二人っきりになれないかな?」 成程、レナが二人きりになりたいとは。それなりに重要な案件そうだ。カリンやリヴァに関することか?それともパラデウス? 「わかった。場所を変えよう。連絡通路でいいか?誰かくればすぐにわかる」 大きく頷く彼女を連れ、連絡通路へ。誰の姿もない廊下はがらんとして、まるで世界から切り離されたように感じる 「で、話は?ってレナ!?」 いつの間にレナは前に回り込みズボンのベルトを緩めだした 「えへへ♪リヴァ姉には内緒だよ?」 そうしてレナはゆっくりと陰茎に手を伸ばし、 「ペルシカ博士!」 「ええっと、私はペルシカですが、ペルシカ博士ではないのです・・・」 ライブニストが興奮したようにはしゃぎまわる。生ペルシカに彼女はもうここで死んでいいと心から思っていた 「あぁ!ライブ映像だけでなくこうして直にお会いできるなんて!こんな狭苦しい部屋で申し訳ございません!」 「これでもエルモ号じゃ一番大きい部屋なんだけどね・・・」 指揮官のボヤキにペルシカが困ったように笑う。だが、興奮しきりのライブニストには一切届いていないようだった 「煩いわね・・・」 「あっ、ペルシカ博士」「起きたの?今日はずっと寝るって言ってなかった?」 「こんなにぎゃーぎゃー言われて寝れるようなやつがいるならツラを拝んでみたいわね」 指揮官はすぐ隣の床で寝こけているミシュティに視線を向けるが、ペルシカは見向きもしなかった 「誰?」 「ペルシカ博士、失礼ですよ。ライブニストさんです」 ペルシカがペルシカに説明する。顔は同じなのに身体が全く違う。主にボディラインとか 「ライブニストさん。こちらがペルシカ博士です。・・・ライブニストさん?」 彼女は直立したまま気絶していた。その顔は幸せに満ちていた 「どう?クルーデッキは?マグラシアや基地並み、とはいかないけれどね」 手を広げる指揮官が新たに設置したというクルーデッキは、確かにあの場所と比べれば少々手狭だが、暖かな雰囲気に満ちていた 「いえ、ここはいいところだと思います。そう言えばペルシカ博士は?」 「ペルシカ?さっきメンテナンスルームに入ったのは見たけど・・・?呼ぼうか?」 指揮官の言葉に首を振る。流石というか、あの人らしいというか・・・ そんなことを思案していると、柔らかそうなソファまで指揮官が手を引く 「必要なものがあれば何でも言って」 「・・・だったら」 とん、と軽く押しただけで指揮官はあっさりソファに倒れ込んだ 「きゃっ!ちょっと!?ペルシカ!」 抗議の声を上げる指揮官を上から見るとなんだかイケナイ気分になってくる 「今は指揮官。貴方が欲しいです」 「あ、あの?ペルシカ?ちょっと目が怖いな~って・・・た、助けて!ペルシ・・・」」 博士を呼ばれる前に口を塞ぐ。1回や2回なんかで終わらせない 何せ数千年分溜まっているのだから 「指揮官、今日の夜伽の相手はアンドリスよ」 「グローザ・・・もう勃たないよ・・・身が持たない・・・」 「指揮官、そんなことを言って昨日のフローレンスとは5回戦までしてたわよね?」 「何で知ってるの?一応鍵付きの部屋でするようにしてるんだけど」 「監視カメラでライブ中継してるわ。何ならカリーナさんにも中継してるわ」 「何でそんなことするの!?私のプライバシーは!?」 「いいからこのフローレンス印の〇イアグラ飲んで」 「指揮官、来たよ」 「待ってアンドリス。私の人権問題が!」 「指揮官に人権ってあったんだ」 指揮官の入浴した残り湯は人形にとって非常に高い効能があります 具体的な効能は不明ですが、戦意向上、性欲増大、好感度上昇など複数の効能が報告されています エルモ号からしか採取できないこの水は非軍事勢力管理局の参事の厳格な管理の元、元グリフィン所属の人形に優先的に提供が行われています 最近では参事が意図的に独占しているんではないか?との見解がありますが、参事はこれを否定 「あくまで流通量の一定化と値段の安定のためです」との声明が発表されました 「指揮官?どうかな?私のパイズリ」 「最高だよ、レナ。すぐ出てしまいそうだ」 「えへへ♪いっぱい出してね、指揮官♪」 ----- 「指揮官さま!私のパイズリ、うまく出来てるかな?」 「気持ちいよ、絳雨。最高だ」 「ふふ~ん、でしょでしょ!」 ----- 「指揮官!パイズリ気持ちいい?アンドリスには負けるけど、私の胸だってすごいでしょ!」 「ビヨーカ、最高だよ。もう出そうだ」 「えへへ~、沢山出していいからね、指揮官!」 「指揮官~」 クルーデッキのソファ。本を読んでいると、膝の上にリヴァが載って来た 「・・・リヴァ、おも」 「指揮官、女性にその発言はどうなのかしら?」 人形に性別なんてあるのか?今度ペルシカ当たりに聞いてみよう 「・・・本が読めないよ、リヴァ」 「そんなものより、私を見てくれないの?」 マーキングするように身体をこすりつけるリヴァのせいで本を開くことすらできなくなった。まるで猫のようだ 「指揮官、次の作戦計画ですが・・・何してるのかしら、リヴァ?」 「あら、こわ~い」 鋭い眼光のクルカイと、揶揄う気満々のリヴァ。懐かしくも恐ろしい空気が漂ってきた 「指揮官が重そうにしてるわよ、リヴァ。早くそこをどいたら?指揮官もそう思いますよね?」 「あら、ここが貴方の特等席だなんて知らなかったわ。独占欲と嫉妬心が強いと嫌われるわよ?それに、10年もネトストしてる人形は恐怖の対象じゃないからしら?指揮官」 「あー・・・10分ずつで交代してね」 「指揮官・・・」 「メラニー。どうしたの?」 人形もまばらになった夜。おずおずと出てきたメラニーが私の裾をギュッと握る。エルモ号に乗車したと思ったら自室軟禁で随分と寂しい思いをさせてしまったと思う 「どうしたの?お腹空いたの?サブリナに何か作ってもらおうか?」 子供には何か食べる物を渡せば機嫌が良くなることを、ヘレナで学んだ。今の時間ならサブリナも自室にいるだろう 「違う・・・お願いがあるの・・・」 「お願い?」 何か足りない物でもあったのか。コルフェンからは何も聞いてないが、言いづらいものでもあったのだろうか 「一緒に、寝てほしい・・・」 彼女は何とも慎ましい『お願い』を口にした 「レナ、パイズリしてくれないか?」 「えへへ♪任せて、指揮官」 ----- 「クルカイ、パイズリしてくれないか?」 「全く、仕方がないですね」 ----- 「ミシュティ・・・ちょっと使うよ」 「寝てるよ~」 ------ 「指揮官?何か私に言うことがあるんじゃない?」 「何もないさ、リヴァ」 「へぇ・・・」 「寒い・・・。黒いの、そのコートを寄こしなさい。」 「ダメ。これは、指揮官から、デートのときに、貰ったもの。ぶいっ。貴方は、そこで凍ってるのが、お似合い。」 「言うじゃない。姉に歯向かうなんて、相応の覚悟はできてるのよね?」 「指揮官。指揮官。」 「うー、さぶさぶ・・・アリーナ、あんまりアデリンをイジメないでね。アデリン、あんまりアリーナを煽っちゃダメだよ」 「私、いい子にする。」 「指揮官、今すぐその上着を寄こしなさい。」 「何で?寒いからこれがないと、あぁ!辞めて!寒いんだって!上着引っぺがさないで!アデリンはズボンに手をかけないで!誰かー!助けてー!」 「・・・久しぶりだな、指揮官」 「あれから随分と経ってしまったな」 「カリーナは、まぁじきに落ち着くだろう。今彼女に必要なのは時間だ」 「ペルシカは表面上はいつも通りだ」 「人形達は・・・もう正直抑えがきかん。正直、今ほど君がいてほしいと思ったことはないな」 「私は・・・そうだな。戦友であり息子を失った気分だよ」 「局長、そろそろ時間よ」 「リヴァか。・・・わかった」 ----- 「なにこれ?何で俺死んだことになってるの?」 「クルーガー局長はノリノリだったけど?」 「マキアート、今夜空いてるか?」 「何?また夜戦でもするの?それとも偵察任務?はいはい、行けばいいんでしょ!行けば!」 「マキアート!待ってくれ!」 「任務内容は後で送って頂戴。今から準備するわ」 「・・・行ってしまった」 「ご主人様、マキアートさんに何か御用が?」 「センタウレイシー。いや、たまにはディナーでもと思ったんだが・・・まいったな、予約キャンセルしとくかな」 「・・・では僭越ながら、私が」 「センタウレイシーが?夜は空いてるのか?」 「勿論でございます。ご主人様との予定以上に優先すべきものなどございません」 「そうか。じゃあ頼むよ」 「・・・はい!」 「指揮官様、これ台本です」 「何これ?何の台本?」 「じゃ、明日はお願いしますね」 「カリーナ!?何の台本?ちょっと!?」 ----------- 「カリーナ!起きて!もう朝だよ!」 「・・・あと5分・・・」 「そんなミシュティ見たいなこと言わないで!頼んどいた作戦報告書は?」 「寝る間際に指揮官様が『明日の朝イチまでに頼むよ』って言われたやつのせいですよ・・・ふぁああ・・・」 「それは悪かったよ・・・わかった、何でも言うこと聞くさ・・・台本の台詞だからね?」 「じゃあまずは起こしてください。そして抱っこしてください」 「はいはい・・・」 「後この書類にサインしてください」 「はいは・・・結婚届って書いてあるんだけど?」 「チッ。いいからサインしてください」 「クッ・・・ここまでのようね・・・殺しなさい」 「ぐへへ、人形風情が何偉そうに命令してんだ」 「なっ!チッ。離せ!」 「まずはそのデカパイで楽しませてもらおうかぁ」 「クズめ・・・んっ・・・」 「なんだもう感じてんのか?あの指揮官サマに随分可愛がられてるんだな?え?」 「し、指揮官はそんな・・・あっ♡」 「下も濡れてるじゃねぇか・・・人形が何で濡れてるの?何か液が漏れてる?メイリンに見てもらおうか?」 「ただのローションよ、指揮官」 「なるほどね・・・くくく、こんなに濡れてるなら前戯はいらねぇな?」 「や、やめて・・・」 柔らかな日差しと甘ったるい匂いが指揮官の意識を現実に引き戻す 「あら、起きたの」 「ペルシカか・・・」 我が物顔で部屋に居座るのは世界に誇る天才科学者、ペルシカだった。普段の白衣はメイドに取り上げられたのか、人形達と同じ白い部屋着。あまり手入れのされていない長い髪に、凹凸の少ない身体 「何よその目。ハラ立つわね」 「何も言ってないだろ」 ペルシカから珈琲、もとい珈琲風味の砂糖水を受け取る。脳が拒否反応を示すほどの甘さに、微睡は霧散する 「珍しいね、私の部屋に来るなんて」 言葉に答えず、ベッドを指さす 指の先にはペルシカと同じ顔、脱ぎ散らかされた彼女と同じ服、出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいる完璧なプロポーションの人形が横たわっていた。差し込む日差しと相まって神聖な聖人の宗教画のようだ 「昨日から何時までも戻ってこないから見に来たらこの有様。説明、してくれるわよね?」 「あー・・・その、話しが弾んでね?」 一歩、一歩とペルシカが近づく。無表情が恐ろしい。とうとう息がかかるほどに近づく 「『私』を抱いたんなら、当然私も抱いてくれるわよね?」 科学者の口づけは眩暈がするほど甘かった 「指揮官、あの人、怖い・・・」 「あはは・・・ごめんなさいね。完全免疫体なんて初めて見たから・・・」 「メラニーを実験体になんてしないでよ、オルフィア」 「わかっていますよ。私は、パラデウスなんかと同じじゃない」 「そう、その言葉が本当であることを祈っているわ」 「信用がないですね・・・あぁ、そうそう、コルフェンって人形から貴方の健診を頼まれたの」 「・・・私は大丈夫よ」 「それを決めるのは貴方じゃない。あのメイリンって子も軽いアルコール依存症だったわ」 「・・・だから『米酒、米酒』ってうわ言のようにつぶやいてたのね・・・」 「ビールビール!」「みーちゅみーちゅ!」「ビールをください!」 【エルモ号禁止事項第268条 1杯以上の飲酒の禁止】 「ビールをください!樽で!」「みーちゅをください!樽で」 【エルモ号禁止事項第268条改定 300ml以上の飲酒の禁止】 「ビールをくれませんか?代わりにみーちゅあげますから」「わかりました!」 【エルモ号禁止事項第268条改定 飲酒の禁止】 「どう?気持ちい?」 「マジ最高だよ!あ~、気持ち~」 「えへへ♪監督に喜んでもらえて嬉しいなぁ!」 「どこで覚えたのこんなテク」 「え~っとね、元は指揮官、あっ、昔の人ね。その人のためにいろんな勉強したんだけどある日いなくなちゃって」 「あ~、そうなんだ・・・うぉっ、すげぇ締め付け!」 「こんなこともできるんだ!すごくない?」 「ヤベ、もう出る!」 「いっぱいナカに出してね、監督サン♪」 「指揮官!これ台本です!」 「何これ?何の台本?」 「じゃ、明日はお願いします」 「メイリン!?何の台本?ちょっと!?しかも白紙じゃん!」 ----------- 「さぁ、やってきましたメイリンの『今日の晩酌』!特別ゲストに指揮官をお呼びしています!」 「ナニコレ?」 「今日のお酒はワイン!手に入れるのに苦労しましたよぉ!おつまみにナッツ!これは外せません」 「あの、メイリン?その酒?なんか私が隠してたワインにそっくりなんだけど?」 「・・・ん~、美味し~。赤はちょっと苦手なんですけど、葡萄の芳醇な味がたまりません!え~っと?ホワイトエリアエリアの厳選した葡萄を使った珠玉の1本だそうです」 「いや、私のワイン・・・」 「あ~、美味し~!ついつい飲みすぎちゃいますね!あっ、センタウレイシーさん!ナッツのおかわり!」 「ワイン・・・」 「ん~!もう最高です!『今日の晩酌』はこれまで!私はこれ飲み終わってから帰るんで!」 「私の・・・」 「いる。いる。これもいる。あぁ、こんなところにあったのね」 「ペルシカ・・・大掃除するって言ったんだが?」 憮然とした顔で振り向く科学者の後ろには雑多なものが山のように積まれていた。乗り込んだのはつい最近というのに、よくもまぁここまでため込んだものだ 「だから掃除してるじゃない。メイドにやらせようとしたら全部捨てようとしたのよ?どういう教育してるの?」 紙の束と何かのパーツに作りかけかよくわからない部品・・・ 「・・・ゴミじゃない?」 違う、と言いつつ紙をぐしゃぐしゃと丸めてゴミ袋へ放り投げた。ゴミ1号は放物線を描き見事にゴミ袋の横に着地した 「はぁ・・・後で床掃除だけでもするように頼んどくよ。それまでにせめて床は綺麗にしといてくれ」 「そもそも何?この部屋をどう使おうと私の勝手でしょ?あなたは私の上司?」 「君の生涯の伴侶だよ」 「チッ」 舌打ちを一つし、そっぽを向く。チラリと見えた耳は真っ赤に染まっていた 「あはは・・・まぁまぁ、私の部屋でお茶でもしませんか?指揮官」 「『ペルシカ』か。そうだな、そうしよう」 「待ちなさい!待って!10分!いや5分で片付けるから!『ペルシカ』!」 「指揮官!これ付けてみて!」 「レナか。何これ?ヘッドセット?」 「私とお揃いのやつ!面白いものが見れるよ!」 「へぇ。どれどれ・・・・・・・・・」 「ん~、そろそろかな?指揮官右手上げて?」 「・・・はい、右手をあげます・・・」 「次は左手上げて?」 「・・・はい、左手をあげます・・・」 「よしよし、いい感じいい感じ♪カリン姉にお土産出来ちゃった♪」 「ヴェクター・・・」 「何?ミシュティ。あんまり動かないでね」 指揮官から見たいと言われた絵を描いている モデルとしてヴェクターが選んだのがミシュティだった。馴染みがあり、じっとしているのが苦手ではなく、気安い。友達、と呼べるかわからないけど、ミシュティのと一緒にいる時間は嫌いではない 「わざわざあたしがここに居なくても、メモリかどっかに写真撮って保存しとけば?」 「・・・そうだね。でももうちょっとで出来るから」 確かにその通りだが、その案を受け入れるのは少し抵抗があった。何故だろうか・・・? 最近ミシュティとはもっと長く一緒にいたいと思うようになった、気がする。「波長が合う」、ってやつかもしれない 解けない疑問はとりあえず放り投げておく 「出来た」 「へぇ、見せて・・・なんかあたし、燃えてるんだけど・・・?」 「良い出来。指揮官に見せてくるね」 「え゛~・・・」 「はい、これ台本」 「何これ?何の台本?」 「明日、待ってるからね」 「リンド!?何の・・・あぁ、ラジオか」 ----------- 「今日も元気に『エルモ号ラジオ』!・・・うぇ、きも・・・はい、ゲストはお馴染みの指揮官だよ・・・」 「よろしくね。ほらリンド、もう始まってるから」 「はいはい・・・最初のお便りよろしく」 「えーっと、ラジオネーム『キャンディキャノン』さんから。『ゲストの指揮官さんに質問です』。何でも聞いてね!『今、好きな人がいたりしますか?気になって夜も眠れません』・・・あー・・・ノーコメントで」 「へぇ・・・」 「つ、続いてのお便り行きましょう!ラジオネーム『ケトアシドーシス』さん!『いつも楽しく拝聴しています』。ありがとうね!『ゲストの指揮官に質問があります。人形の誰かと結婚する気はありますか?』・・・えー・・・ノーコメントで」 「ふぅん・・・」 「ほ、本日の『エルモ号ラジオ』はここまで!次回をお楽しみに!」 ヴェプリーだよ☆ 今日は指揮官とお空でデートなの☆ 「ヴェプリー、計器ちゃんと見ててね?私が偵察するから」 もう!ムード台無し☆指揮官ってば照れてるのかな?☆ 「ヴェプリー、高度下げて。何だあれは・・・ジュピター砲?」 指揮官ってば空に夢中なのはいいけど、ヴェプリーにも夢中になってほしいな・・・どうしたらいいんだろう・・・ そういえばフローレンスさんが言うには「吊り橋効果」?ってのが効果的なんだって聞いたな☆ ドローンでクルクル回れば指揮官もドキドキしてくれるかな? 「・・・ヴェプリー、高度上げて。ヴェプリー?」 縦回転からいっくよ~☆ 「ヴェプリー!?クソ!ヴェプリーにアクロバットなんて覚えさせやがって!誰だ!おえっ!」 2066年、フランクフルトの英雄、通称「指揮官」の人形化の確率 これにより、元グリフィン所属人形のメンタルは飛躍的に安定することが分かった この非人道的、非道徳的行為について、ロ連政府はこれを黙認 人形権威の第一人者、ペルシカリア博士は「確かに指揮官のメンタルの保存、実験は行っていたが、無関係よ。そもそも指揮官のメンタルは盗まれたし、被害者はこっちよ」と関与を否定 また、一部の人形ブローカーでは「指揮官」の改造パーツが高値で売買されていることを確認した フランクフルトの英雄を貶める行為を、我々は断固として糾弾する 昔はお金がなかった。お金だけがすべてだった。お金さえあれば全てが手に入ると思っていた 『こっちは心配しなくていいわ』『そうそう!指揮官もいるし!』 「だから心配なんですよ・・・」 『あら、だったらカリーナもこっちに来る?』『そうだよ!カリン姉もエルモ号に来てよ!』 「・・・気軽に言ってくれますね」 レナさんはまだ何か言いたげだったが、冗談よ、とリヴァさんが通信を切った 深く息を吐き、深く椅子に背を預ける。視線は天を彷徨うばかり 「・・・私だってあの人の隣にいれたら・・・」 後悔ばかりだ。さっきだって、非軍事勢力管理局の仕事なんて放り投げてはい、と即答したかった。だからこそ、リヴァさんがすぐに切ったんだろうけれど チラリ、とクローゼットに視線を投げる。中にはまだ返せないコートがしまってある 足が自然とそちらに向かう 「指揮官様・・・」 いない人を想ってコートを抱きしめた 「指揮官様~!今月の出費どうなってるんですか!」 「頼むよ、カリン・・・」 「この『特殊経費』って何ですか!どうせまた人形さん達にプレゼントでも渡したんでしょう!?」 「それは・・・その、違って・・・」 「指揮官様!」 「はぁ・・・本当はもっと雰囲気のあるところで渡したかったんだけど・・・はい、カリーナ」 「指揮官様・・・?」 「結婚してください、カリーナ」 「・・・夢、ですか・・・」 「カリーナ、起きたのならメール見ておいて」「ふふ♪カリン姉きっと喜ぶと思うよ!」 「はいはい・・・『助けてください、カリン』・・・はぁ、都合のいい人ですね」 「カリン姉嬉しそう♪ね?リヴァ姉!」「あの緩んだ口で言ってもねぇ?」 「RPK-16、カリーナさんの命により着任しました」 「・・・カリーナ?」 『え?元反逆小隊の人って言ってましたよ?本人が』 「よろしくお願いしますね、指揮官」 『ではそう言うことで』 「ちょっと!?カリーナさん!?」 「指揮官、カリーナさんはあれで忙しい人なんですよ?」 「・・・何で来たの?」 「ヘリで来ましたよ?あぁ、ヘリポートまでは車を使いましたね」 「そうじゃなくて!はぁ、あの時の記憶あるの?」 「記憶?どの時のですか?記憶力は良い方なんですけど、指揮官が何を言ってるのか?」 「・・・RPK-16で登録でいいのね?」 「あら?てっきりエンブラで登録するのかと。パンドラでも構いませが」 「覚えてんじゃん!クソ!」 ベッドで寝転んでいると、ふと嫌な予感がした。こういう予感は当たってしまうものだ。全く持って嬉しくない 「ヴェクター!助けてよぉ・・・」 「はぁ・・・」 入ってくるなりクローゼットに潜り込んだ銀髪の同僚を見送ると同時に、扉を破壊せんばかりの勢いで開いた 「クソボケねぼすけ!ヴェクター!あの万年寝てばかりのぐうたらで怠惰で訓練をサボタージュしたねぼすけ人形を見た!?」 成程。とうとう我らが第一部隊隊長殿の堪忍袋の緒が切れたらしい。少しだけ開いたクローゼットから懇願するような瞳が見えた。甘やかす人形が増えたのにミシュティが部屋を尋ねる頻度は全く下がらない 「はぁ・・・指揮官の所は探したの?」 「・・・そうね、先にそっちね」 肯定も否定もせず、指揮官に水を向けておく。後は指揮官がうまくなしを着けてくれるだろうし 「・・・クルカイ、行った?」 「・・・私の部屋より指揮官の部屋に行ってほしいんだけど」 クローゼットから這い出てきた銀髪の人形は、今度はベッドに潜り込んできた 「・・・ミシュティ、狭いよ」 「ちょっとくらいいいじゃん。昨日も一緒に寝たんだし」 「そう言って・・・はぁ、もうちょっと詰めて」 クルーデッキ。闇夜のプールの水面に月が浮かんでる。そのすぐ隣のビーチチェアに指揮官がいた 「ハロ~、指揮官」 「ん・・・リヴァ・・・?」 彼女が瞬きを数度する。どうやらうたた寝していたらしい。まぁ、このところ忙しかったし、多少の休息は必要だろう 「あら、起こしちゃった?」 「平気よ。それに、寝たままじゃ何されるかわからないからね」 苦笑するように指揮官が笑う。失礼だと思う。・・・ちょっとの悪戯くらい許してほしいものだ 「それで、何かあったの?」 「何かないと指揮官のところに来ちゃいけない?」 そう返す指揮官の膝の上に乗る。 「リヴァ、なんか近くない?」 「そう?私はもっと近くにいたいんだけど?」 月光の元、二人の距離は0になった 「ウミガメのスープ問題です。朝、クルーデッキに来た指揮官が倒れてしまいました。どうして?」 「夜遅くまで仕事してた?」「いいえ」 「ミシュティがドアで寝てて、脚が引っかかってこけた!」「いいえ」 「レナがタックルした?」「いいえ」 「絳雨が指揮官様にタックルを?」「いいえ」 「ビヨーカが指揮官にタックルした?」「いいえ。タックルから離れてください」 「・・・ご主人様はドリンクを飲まれましたか?」「はい」 「マキアートが指揮官に飲み物を飲ませた!」「いいえ」 「指揮官さまは朝食食べた?」「はい」 「料理はサブリナさんがした?」「いいえ」 「・・・マキアートさんが指揮官に料理を出して、それを食べた?」「はい」 🦋「貴方に別の世界を見せてあげる」 😫「頼んでないのじゃが」 🦋「ここは貴方が一番人気の世界」 『おばあちゃん激シコ!』『おばあちゃん完凸強すぎない?』『おばあちゃんのスキンまだ?』 😊「こういうのでいいんじゃよこういうので」 🦋「この世界だとあなたは人気投票でぶっちぎりの1位だったわ」 😍「わしはこの世界で生きていくぞ!」 🦋「再送するわね」 🤮 「指揮官。どうですか?私のパイズリは」 「最高だ。流石クルカイだな」 「当然です。夜伽でも私は完璧ですから」 ---- 「指揮官様。如何でしょうか?気持ちいですか?」 「黛煙のパイズリは最高だな」 「お褒めの言葉、ありがとうございます」 ---- 「指揮官?どうかしら?」 「なんかゴリゴリする。いや、柔らかいのは間違いないんだけど」 「整形がお望みなのね」 「おぬし!今日はおぬしにマナーを教えるぞ!」 「はいはい。昨日は『寝るときは人形と一緒に寝ないといけない』だっけ?」 「そうじゃ。特におぬしのように大量に人形を従える身分ならば人形からの愛情表現を拒んではならんぞ!」 「で、今日はナガンが相手なの?」 「光栄に思うといいぞ。何せそっちも『歴戦』ゆえ、な」 「へぇ~・・・」 「おぬし、もっと年長者には敬意を払わんか!」 ----- 「あへ♡・・・も、もう♡・・・無理、なの♡・・・」 「何?もうヘバっちゃった?ナガン?まだ3回くらいでしょ?」 「もう、7回は♡、イってる、の♡・・・」 「まだ2桁イってないじゃん。まだ出来るよね?」 「ひっ・・・誰か、助け・・・あっ♡・・・」 📱とっC~w2でも私をよろしくね~w 📱もちろん、ゲーミングPC用意しといてよ?w 📱じゃないと、とっCのあんなことや、こんなことを掲示板に書いちゃうぞ?w 🦋あなたの出番はないわ 📱うわっ、私以上に出番がないやつが来たw 🦋殺すわね 【ご連絡】グリフィン芋煮会中止のお知らせ 拝啓 時下ますますご清栄のこととお喜び申しあげます。 平素は格別のお引き立て、ご愛顧を賜り厚く御礼申し上げます。 開催を予定いたしておりましたグリフィン芋煮会ですが、指揮官不在のため、誠に勝手ながら開催を中止させていただくこととなりました。 ご参加をご検討いただいた皆様には大変なご迷惑をおかけする事となり、大変申し訳ございません。 何卒ご理解のほどよろしくお願いいたします。 なお、事前に徴収させていただきました開催費、維持費につきましては、指揮官捜索費用に当てさせていただきます。 敬具 「指揮官さま~!」 ロケットもかくやと言わんばかりに腰に絳雨が突撃を敢行。幸い、後ろにクッションがあったのでインシデントは発生しなかった 「ちょっと!絳雨!いきなり抱き着くのはやめてって!」 聞いているのかいないのか、腰に顔を埋めてぐりぐりと擦り付ける様は、まるで元気のあり余った子犬を感じさせる 「それで?言っておくけど外には行けないわよ」 外はコーラップスの嵐が吹き荒れていて、外どころか屋上すら出ることができない。予報だとあと1週間は続くらしい 「安心して!今日は室内で出来るやつだから!」 ・・・安心できる要素がない。この前もニンジャソウルだの何だの言ってエルモ号を走り回っていた 「ほ、本当に大丈夫だって!ベッドでやれる運動だから!」 視線に気づいたのか、絳雨がそんな弁明を行う。まぁ、ベッドで出来る運動なら備品が壊れるようなことにはならないだろう 「そうね、たまには身体を動かさないと」 「やったぁ!そうと決まれば早くベッドに行こうよ!」 「はいはい・・・それで、どんな運動するの?」 「指揮官さまって『房中術』って知ってる?」 知らない運動だ。まぁ絳雨が言うなら安全だろう 「はぁ。で、何方ですか?」 「カリン姉!頑張って!最後だから!」 「・・・もうオッサンの相手は疲れました・・・相手方には丁重におかえりいただいてもらいましょう」 「え!?いいの!?カリン姉!?」 「構いません。アポもないですし、むしろ塩撒いといてください」 「で、でも・・・」 「レナさん、早く。今日はもう寝ます」 「わ、わかったよぅ・・・指揮官?今日はカリン姉の機嫌が悪いみたいで・・・」 「指揮官様!早く来てください!今!すぐに!いいえ!むしろこっちが行きますから!そこを動かないでください!いいですか!絶対に!動かないでくださいね!」 「指揮官、デキちゃった・・・?」 「デキたって・・・何が・・・?」 「何って、指揮官と私の子供だよ」 「私と、あなたの・・・?」 「うん、子供。あっ、今お腹蹴った。ふふっ」 「あのね、私は女で、貴方も、」 「ね、指揮官、なんて名前つけようか?」 「あの、」 「子供は後2人は欲しいな」 「どっちも女で、というか人形には性別は」 「次は男の子がいいな」 「・・・夢か・・・」 「おはよう、指揮官。寵姫の朝暉だよ」 「ペルシカ、人形って妊娠するのか?」 「馬鹿ね~、するわけないじゃない」 「珈琲を淹れました。指揮官、ペルシカ博士、どうぞ」 「悪いね、ペルシカ」 「いいえ」 「で、何でそんな話したの?人形も孕ませる気?」 「『も』とは失礼な。カリーナともメイリンとも君ともゴムはしてるさ」 「あぁ、だからカリーナが怒ってたのね」 「???とにかくどうなの?」 「基本的に人形は妊娠なんてしないわよ。お掃除ロボットを孕ませるなんて、狂人はいないでしょ?」 「じゃあ、何でペルシカの腹が?」 「基本的に、っていったでしょ?『そういう』モジュールをつければ話は別よ」 「・・・じゃあペルシカは・・・?」 「おめでたね『パパ』」 「教、指揮官、式はいつにしますか?マグラシアの皆さんにも報告したいですし」 「マキアート・・・金を貸してくれないか?」 「チッ・・・で、いくら欲しいの?100万?1000万?」 「いや、10万でいいよ」 「ハァ!?何?いいから持っていきなさいよ!」 「センタウレイシー・・・金を貸してくれないか?」 「ご主人様、財務状況はこちらで把握しております。メイリンさんのお酒を少々削れば今月は持ちます」 「ありがとう、センタウレイシー・・・」 「スプリングフィールド・・・このお金は受け取れないよ」 「いいえ、今後の増える人形の皆さんを考えれば足りないくらいです。戦車も機動兵器も調達の目途がつきました」 「スプリングフィールド・・・」 「指揮官がいるところが私たちのいる場所です。私たちはそれを全力で守る義務があります」