【イヤッハ】 《閃乱カグラ》 ◯令和2年 義兄・村雨率いる関東軍が謀略により「満洲国」なる傀儡国家を建てたことを知った私は、大陸へと急ぎ渡航した 無才を顧みず忍者ごっこに興じるばかりでなく国ごっことは…だが恐ろしいのはここからだ 国名は地名から取ったように見せかけているがその実は「マン臭国」であり、関東軍も「姦通軍」であることは明らかである これは義妹の撫順炭田に自らの遼東半島をはめ、腹を大興安嶺にするという決意の表れに違いない…その下劣さに股から大豆油が漏れる 暴走する淫獣を放ってはおけぬ…私は必ずや義兄を斬ると昭和製鋼所の熔鉱炉へ沈んだ飛燕に固く誓った 深夜関東軍司令部へ馬を飛ばした私は、下馬の勢いのままに服を吹き飛ばし司令官室に一気に飛び込む しかしそれは義兄の罠であった!床に敷きつめられていた鎖鎌により、私は満鉄の路線網のごとく全身を縛り上げられてしまったイヤッハ 「やめてくださいお兄様!五族協和の精神で親子夫婦仲睦まじい幸せな家庭を作ってください!」 「ヒーッヒッヒッヒエン!俺の飛燕で王道楽土の快感を味わわせてやろう!」 機銃のような笑いと共に義兄の装甲列車が私のソ満国境へt  * 名は村雨、職は俳優、芸の肥やしとあらば脇役端役竿役を請け負って来た だがそんな俺でも、今回の役ばかりは戸惑ってしまった 第二次世界大戦をテーマにした番組で使う再現映像を撮るのだが、よりによって悪名高き関東軍司令官の役をもらってしまったのである これはデリケートな代物だ、厄介なことにならないだろうか…スタジオへ悩みつつ向かっていると、眼帯の監督と眼が合った 「ヒバ」 やりづらい役だろうが、何かあっても全面バックアップするから心配するな――そう優しく笑顔を浮かべていた 監督は竿に桃色レース地の三角の布という奇妙な旗を大切に持って席へ向かう あれは満洲国の国旗か?ともかく応援旗のつもりなのかも知れない あそこまでしてもらえたからには報いるべきだろう、よし…ありったけ憎らしく演じてみるか セットの司令官机に座ると撮影開始、段取りだとここで参謀役が入って来るはずだ だがいきなり扉が蹴破られたかと思うと、何と全裸の斑鳩が飛燕の鞘だけを持って突進して来た 鞘にみぞおちを突かれ気絶した俺が最後に見たものは、大豆油を持って舌なめずりする斑鳩の顔であった  * 各国海軍艦船が人の姿を取って戦いに従事しているこの母港に義兄・村雨が指揮官として着任し、私こと駆逐艦・斑鳩を秘書艦として久しい 忍才こそ幼稚園児型駆逐艦・睦月型以下の義兄であるが、戦闘指揮や艦船たちの管理、上層部とのやり取りなどの激務をそつなくこなす辺りは財閥総帥の面目躍如である しかし私はある時義兄が敵のセイレーンと結託していることを知った…やつは指揮官ではなく、怪人・子気姦(シキカーン)だったのだ このままでは私は好感度を100にされた挙句、ケッコンさせられ名前も変えられて隷属する羽目になる…そう思うだけで股間の粘液とともに艤装が滑り落ちる 性獣斬るべし…私は科学研究で尊い犠牲となった飛燕に誓った その夜、飛燕の柄と鞘を鉢巻で並べて巻いて初期艦に身をやつし、酸素艤装で司令官室に飛び込む! だが義兄は金装備の鎖鎌を素早く振るい私を吊し上げてしまったイヤッハ 「やめてくださいお義兄様!私のメンタルキューブからリトルを建造してください!」 「ヒーッヒッヒッヒエン!まずは艦種を重巡に変えて従順にしてやろう、この俺の飛燕でな」 哄笑とともに義兄の徹甲弾が私の装填口へt [註]「イヤッハ×アズールレーン」として発表。  * 名は村雨、職は俳優、芸の肥やしとあらば脇役端役竿役を請け負って来た 今回もらった役は劇中劇の主役という役だった 何でもとある艦船擬人化ゲームを実写化したドラマという設定らしく、この部分だけ撮ってほしいとオファーが来たとか だが本筋の話の流れが劇中劇をほめるというものと聞いて少々うなってしまった…こういうものの実写化は厳しい目で見られる 演技次第では作品自体に泥を塗ることになる…頭を抱えていると、桃色のジャージ姿の眼帯の監督と眼が合った 「ヒバ」 しっかり考証はしてある、余り心配をするな――そう優しく笑顔を浮かべていた そうだったな…俺も一応原作のゲームは進めて、いろんな知識を手に入れてからここに来てるんだ 少し尻込みし過ぎたか…よし、勇気を持ってやってやろう セットの指揮官机に座って準備をする、「秘書艦」と呼ばれる秘書役が揃えば撮影開始だ だがいきなり天井が斜めに落ちたかと思うと、全裸に飛燕の柄と鞘を頭に鉢巻で並べて巻いた斑鳩が「斑鳩…なのです…!」と吶喊して来た 頭からぱっと抜いた鞘に盆の窪を打たれ気絶した俺が最後に見たものは、空母・赤城のごとく妖艶な笑みを浮かべた斑鳩の顔であった [註]「イヤッハ×アズールレーン」として発表。  * いざ勃て義兄の竿よ 御膣内に続け ヒエンと進みて 恐るな穴を (仮性でイヤッハ 破りてイヤッハ) 躰を合わせて 潮を吹かせつ 性技の射精は 家系の護り 家系の護り 家系の護り 性技の射精は 家系の護り 忘れし忍才 御親の腹に 残るは性欲 奪え貞操 (全裸でイヤッハ 襲いてイヤッハ) 家宝を挿し込み 潮を垂らしつ 正規の夜這いは 義妹の望み 義妹の望み 義妹の望み 正規の夜這いは 義妹の望み  * 鳳凰財閥協賛の合唱コンサートから義兄・村雨が帰って来た 忍の才能は葡萄酒のように赤点の義兄であるが、芸術を解する能力はしっかりあるようであの曲がよかった、この曲がよかったと感慨にひたっている だがその中で私は信じられぬ言葉を聞いた…「特にあの『いざ立て戦人よ』はよかったヒエン」 「いざ勃て」…この曲を気に入ったということは、「クリトリスの兵士として雄々しく膣内を進み義妹のシオンの丘で潮のように精をくれてやるヒエン」という強姦宣言に違いない 冒涜の性獣討つべし――私は飛燕と鞘を眼の前で十字に交えながら固く誓った その夜川原の石を握りしめるダビデと同じ姿になった私はいざゴリアテを討たんと天井裏を疾駆したが、義兄は股間のヤハウェを見せつけてひるませ鎖鎌でエジプトびとのごとく私を縛りつけたイヤッハ 「離しなさい蛮族!シナイ山で十人の子を与えてください!」 「ヒーッヒッヒッヒエン、義妹という原罪を贖うための破瓜の血を流させてやろう」 アーメンがザーメンになりそうな勢いで義兄のモーセの杖が私の海を割っt  * 日本経済を担う一財閥ともなればただ商売だけをしていればいいというものではない、文化事業や福祉事業を担うことも求められる 鳳凰財閥も多くの文化事業に協贊しているため、俺もよく仕事の一環として美術展やコンサートに誘われることがあるのだ 今日は合唱コンサート、各地のグリークラブがそののどを競い合う…見事なものだ 特に気に入ったのは『いざ立て戦人よ』、何でも本来は異教徒に踏みにじられた聖地・シオンの丘をキリストの兵士=信者たちに取り返せと呼びかける讃美歌だそうだ 家に帰ってその話を斑鳩にしてやると、なぜかおびえたように逃げ出した…何か変なことを言っただろうか その夜久しぶりにリラックスした気持ちでベッドに横たわっていると、いきなり天井が落ち飛燕と鞘を十字に構えた斑鳩が飛び込んで来た そして鞘に腹を打たれた俺が最後に見たものは、「ザアメエエエン!」と叫んで俺の服を切り裂く斑鳩の姿だった  * 「書類で誤植は勘弁してほしいヒエン」帰って来るなり義兄・村雨がげっそりとした顔で言った 自らを「忍」と誤植して放置している身でありながらよく言えたものだと思うが、誤植が時にとんでもない事態を招くことは新聞や雑誌などでもままあることだ 「姦淫聖書でもあるまいしヒエン」――何ということだ、この発言で私は義兄の陰謀を知ってしまった…「姦淫聖書」といえばモーセの十戒を「汝姦淫すべし」と誤植した聖書である わざわざこれを持ち出すということは「リョービした玉で義妹を射穴し姦淫して盛沢山の子をなしてやるヒエン」という決意表明に他ならない 淫獣討つべし――私は赤ペン代わりにしていた飛燕に固く誓った その夜インド人を右にする勢いで全ての空気抵抗を凌駕した私はザンギュラのウリアッ上で扉を殴りつけて襲撃をかけた! しかし罠だった…義兄の鎖鎌により私は級数表のマスのように縛り上げられてしまったイヤッハ 「やめてくださいお兄様!DTP(ドピュッと・トッポな・ペニス)で私の将来をレイアウトしてください!」 「ヒーッヒッヒッヒエン、お前の中で俺の飛燕がどう動くかたしかみてみろ!」 哄笑とともに義兄の銅活字が私の印刷機の中へt  * 今やグローバル化の時代、我が鳳凰財閥でも欧米を中心に手広くビジネスを行っている しかし言葉が違うということは時に困ったことも起こる…何と今回、翻訳係が米国向け契約書の中で"not"の一単語を抜かしてしまい、相手にとって不利な内容になってしまったのだ 大急ぎで直させたのはいうまでもない…"not"があるとないで大問題になった例だってあるのだ 確か昔の聖書で"not"を抜かしたせいでとんでもない内容になってしまったというやつだ、あの話を聞いて以来誤植にはずっと気をつけている 帰って斑鳩に思わず愚痴っていると「それは姦淫聖書ですね」と教えてくれた、何でもモーセの十戒を「汝姦淫すべし」と誤植したとか…そりゃとんでもない しかし女性に「姦淫」などと言わせてしまったのはばつが悪い、「すまんな」と一言言うと斑鳩は「構いません、兄妹姦淫すべしですので」と真顔で言い出した 何を――そう言いかけた瞬間飛燕の鞘がみぞおちにめり込み、『ゲーメスト』と書かれた雑誌のタイトルを見ながら俺の意識は闇に落ちた  * 最近義兄・村雨はVTuberにご執心だ 義兄の忍才は一次元で示すことも無理なもの、二次元キャラクターが動くのに憧れるのだろう 「最近は忍もVTuberをするのかヒエン」…画面をのぞき込むと「本業ではないな、俺とお前で手本を示してやるヒエン」と語りかけて来た 何ということだ!このままでは義兄とともにVTuberとしてデビューし「兄斑てぇてぇ」と言われた挙句、アイのキズナを誓い月の輝く夜にシロいモノで染め上げられ、腹に財閥のミライのアカリを宿してまうだろう…余りのことにのじゃのじゃと股から怒りの涙が流れる 性鬼誅すべし――私は飛燕で股のiPhoneをいじりながら誓った その夜私は「清楚黒髪義妹忍者系VTuber・兄恋イカルガ」と首に看板一つかけた服装で天井裏を走り義兄に襲いかかった! しかし義兄は即座に鎖鎌を取り出したかと思うと、ライブの銀テープのごとく私を縛り上げたイヤッハ 「やめてくださいお兄様!私の膣内で一から二時三時までアンリミテッドでドッとライブしてください!」 「ヒーッヒッヒッヒエン、お前がホロホロと散って大人へアップデートするのを楽しんでやろう、俺の飛燕でな」 そうして義兄のアバターが禁忌の中の人をさらし私のYouTubeへt  * 組織のトップなどしていると時折奇抜で面白い提案が上がって来ることがある その中で目を引いたのが「VTuberによる広報活動」だった…流行りであるばかりでなく、いわゆるオタク層を含む若年層にも目を向けてもらえる、と 調べてみれば大手飲料メーカーなどに例がある、「検討の余地あり」として処理しとりあえず帰宅してから本物を見てみることにした …なかなか面白い世界だ、人間ばかりでなく猫耳・エルフ・悪魔など種族が違う者あり、職業も普通の学生や社会人から作曲家・書家・教師など専門職あり、中には魔法使いやメイドもいる 忍もいるだろうと調べてみたらいた…ほう、と思わず声を漏らした後、ふと本職の忍である斑鳩の顔を思い浮かべてしまって赤面する 照れ隠しに斑鳩を呼んで見せてやると、「では私も本気でお肉棒様と閨で配信を行う必要がありますね」とすっと真顔になった 何を――そう言いかけた瞬間飛燕の鞘が喉笛にめり込み、「兄斑てぇてぇ」と書かれたラケット形サイリウムの光を見ながら俺の意識は暗転した  * 義兄・村雨に頼まれ、このところ私は鳳凰財閥系の会社のソシャゲのモニターをやっている 通貨一桁にしかならない忍才を完全売却してしまった義兄も一枚噛んだらしいこのゲーム、テーマは忍だ だがやたらと「村雨」というNキャラがドロップする、しかも何とガチャではSSRとしても出るらしい ここに私は義兄の真の目的を見出した!義兄はサブリミナル効果を狙っているのだ このままでは私は暗示に従うまま大人数のN義兄の輪姦を受け入れ、SSR=スーパー・シスター・レイパーの義兄により完堕ちさせられるだろう 淫獣斬るべし――私は股の潮で研いで強化した飛燕に非情を誓った その夜「LR」と書いた紙を頬に貼った私は装備を吹き飛ばして走り、義兄の部屋へと押し入った しかし義兄は素早く鎖鎌で私をNの字に縛りつけたイヤッハ 「やめてくださいお兄様!HN(包茎な肉棒)でR-18な世界を作り汁をたっぷりHR(ホームラン)してください!」 「ヒーッヒッヒッヒエン、お前のSR(シスターな卵子)をUR(有精卵)へ限界突破させてやろう、俺の飛燕でな」 義兄の赤黒背景の強化素材が私の膜を突破しt  * 鳳凰財閥は何でもすると思われているがやっていない事業もある…その一つがソーシャルゲームだ そこで今回ゲーム会社が子会社になったのをきっかけに作らせてみたところ、何と忍がテーマの作品が出ることになった しかも「村雨」というキャラがいる、俺の忍名を知っているのはごくわずかなのでただの偶然だろうが悪い気はしない 書類によると同一人物でもレア度の違うものが別個に存在しているとか…ということは最高レアもあるのか、何だか気恥ずかしい とりあえずβ版を公開、モニターとして自分と何人かの社員、そして斑鳩を選んだ 現役女学生であるし参考になるだろう…というのもあるが、いつも苦労をかけているのだから楽しんでもらえれば、との思いもある その夜デイリーをぎりぎり終えてベッドに座っていると、いきなり全裸の斑鳩が虹色に塗った飛燕を持って飛び込んで来た 鞘にみぞおちを突かれて気絶した俺が最後に見たものは、「ログインボーナス」と自分の股にペン書きする斑鳩の姿であった  * 時節柄休校になっても宿題はある、今日は美術の篆刻に手を着けた 「いい石を使っているヒエン」気がつくと義兄・村雨が興味深そうに見ていた 駄菓子屋で売っている蝋石で道に書かれた落書き程度の忍才しかない義兄であるが時折変な知識を披露する、何のために仕入れて来たのだろう…そう考えた時、私の股間が恐ろしい事実をささやいた 義兄の脳のうち188%は猥褻物…このまま行けば私は嫁の青田買いだと押し倒され、膜を巴林(パリン)と破られて賀藍とした子宮に凍石のごとく白いものを注がれた挙句、昌化試合とばかりに寿山とぶっかけられるに違いない 淫鬼斬るべし――私は印刀代わりにしていた飛燕を1000番の紙やすりで磨きながら固く誓った その夜闇にまぎれるため全身に黒の印泥を塗った私は、義兄の部屋へと吶喊した しかし義兄は魔羅型に彫られた田黄石(でんおうせき)に気を取られたのを見逃さず、素早く鎖鎌で私を縛りつけたイヤッハ 「やめてくださいお兄様!私の玉(ぎょく)に印刀で『子』と刻んでください!」 「ヒーッヒッヒッヒエン、腹に出来た作品のために落款印を自作してやろう、俺の飛燕でな」 義兄の関製印刀が私の鶏血石に今まさに一刀入れようt  * この非常時多くの商店が休業になっているが、鳳凰財閥傘下の店でも多発している…試しにお忍びで傘下の書道店を視察してみた 訊ねてみるとひどいらしい、特に中国製の紙や筆は入って来ないとか 篆刻の石も駄目らしい、興味を持って訊いてみると、青田石・巴林石・賀藍石・凍石・昌化石・寿山石…と一つ一つ説明してくれる 何か買ってやりたいが数十万もする田黄石や玉など買っては怪しまれると、無難に初心者用セットを買ってみた 帰宅してみると偶然にも斑鳩が篆刻をしている、さっき「初心者でも彫りやすく見ばえがいい」と言われた石なので少し声をかけたのだが…一瞬固まって背を向けてしまった ストレスがたまっているのだろうか…その夜思い悩みつつベッドに寝転がっていると、いきなり全身墨塗りの斑鳩が傷だらけの飛燕を持って飛び込んで来た 柄にあごを突かれて気絶した俺が最後に見たものは、「斑鳩鶏血石 時価」と朱墨で墨書された斑鳩の股だった  * 世界には話者がいなくなった言葉――死語があまたあるが、最近義兄・村雨はそのうち「イヤハ語」の習得にこっている 元々死語で「忍」と書いたような忍才しかないのに共感を覚えるのか、私にそれを聞かせて来る 今日も朝から「おはよう」などと異界の言語じみた下劣な言葉をかけて来て、腹立たしさに下履きの中が熱くなる そしてとうとう義兄は「いただきます」「ごちそうさま」と日に三回も意味不明かつ淫猥な言葉を投げかけて来た! 子宮が下がるのを感じながら視姦男(ミルガイ)で調べてみると、この言語は清楚黒髮義妹忍者を発情させる効果があるらしい 淫鬼討つべし――私は英和辞典にはさまり続けて劣化した飛燕に固く誓った その夜ロゼッタ・ストーンのごとく文字をびっしりまとった私は、寝息を立てる義兄に襲いかかった しかし義兄は素早く目を覚ますやナポレオン式鎖鎌で素早く解読し私を縛り上げたイヤッハ 「やめてくださいお兄様!ナウなヤングの穴を突いてチョベリグにしてください!」 「ヒーッヒッヒッヒエン、それは廃語だ!お前の言語地図に新たな語族を作ってやろう、俺の飛燕でな」 義兄の針が私の粘土板に線文字Aを刻みつけようt  * このところ俺は仕事が終わった後に少しずつ英語以外の外国語の勉強を始めている、やはりトリリンガルくらいでないとこれからはやっていけないからだ だが勉強を始めてからというもの、義妹・斑鳩の様子がおかしい…今日も朝のあいさつをした途端になぜか固まり、憤然として立ち去ってしまった 寝不足で何かおかしなことでも言ってしまっただろうか、と振り返るが何もない気がする やはり義妹は俺を許してくれてはいないのか…悄然として食事をとり「ごちそうさま」と言うと、今度は大あわてで席を立たれてしまった そこまで俺を嫌っているなんて…せっかく和解出来たと思ったのに 鎖鎌の鍛錬にも身が入らず、早く寝てしまおうとベッドに入っていると、いきなり扉が蹴破られ、耳なし芳一のごとく裸体にびっしり文字を書いた斑鳩が突進して来て…そのまま鼻血を吹きぶっ倒れた 今ようやく分かった、例の症状だ…極度のストレスが原因と聞いて早く何とかしなければと思っていながら、何もしなかったつけが今来ているのだ 斑鳩、どれだけおかしくなろうとも俺はいつまでもお前の味方だ…俺は暗闇の中ただただ泪にくれていた  * 義兄は最近沿海州と菅原道真の関係について必死に考えている 忍としては大本営発表にすぎない義兄であるが、崇徳院に関しては一流だ このままでは私は泰緬鉄道が始皇帝に与えた影響を問い詰められた挙句、露清密約に壇ノ浦の戦いを差し込むと脅され墾田永年私財法でバルバロッサ作戦されてしまうだろう 下関条約討つべし……私はスペイン宗教裁判に突き刺さった飛燕に固く誓った その夜統監府をまとい出エジプト記となった私は、ゲッペルスが樺太を折るように義兄へ襲いかかる! だが素早く振るわれた鎖鎌により私は恭仁京にされてしまったイヤッハ 「やめてくださいお兄様!日本海海戦を邪馬台国してください!」 「ヒーッヒッヒッヒエン、お前の武則天を廃藩置県してやろう、俺の飛燕でな」 義兄の東清鉄道が私のザ・ブザーへt  * どうしてこんなことに…それが俺が最初に思ったことだった 今日久々に義妹・斑鳩が大発作を起こし、俺の許に全裸で押しかけて来たのだが…どうもいつもと違う、支離滅裂さの度合いが半端ではないのだ 股を広げて倒れた斑鳩を医者に診せると何と胃洗浄ものの食中毒らしい 部屋を探ってみると、精神錯乱を起こす毒きのこがかじりかけで見つかった…どうやらよく似たきのこと間違えたようだ しかし本物の効用を調べれば精力増強、何のために…とにかく普通ではない 斑鳩、一体何がどうしたんだ…力になれない自分が情けない…俺はそのまま歯を食いしばって泣き崩れた  * 義兄・村雨帝が倒幕に失敗し廃位されて隠岐へ流されると聞き、私こと児島斑鳩は急ぎ眼帯の軍勢を集め救出を図ることにした 忍才が冥府に配流されているにもかかわらず倒幕とは無謀な…しかし勤皇の忍なればこれも使命だ だがおかしい…ピンク色のさざれ石に群がって軍勢が散り散りになった直後に、護送の行列は見せつけるように院庄の守護館に入った もしやこれは義兄の淫棒、単独で助けに入った私をナンチョウナンチョウに犯すつもりなのでは…怒りの余り股から吉野に向けて泪がこぼれる 淫蕩の昏君誅すべし――私は塩害で錆びた飛燕に固く誓った その夜朝廷への忠誠心のごとくありのままの姿になった私は、一人義兄の部屋へと飛び込んだ! しかし次の瞬間菊の御紋がついた鎖鎌により私は縛られ庭へと引きずり出されたイヤッハ 「やめてくださいお兄様!私の白い桜に十字の詩を刻んでください!」 「ヒーッヒッヒッヒエン!天中出しを空しゅうするなかれ、時に妊娠無きにしも非ずだヒエン!」 文部省唱歌を歌う小学生の歌声をBGMにしながら義兄の建武の新政が私の中で行われようt  * 名は村雨、職は俳優、端役ばかりやっていたが少し風向きが変わり始めた…監督が再現映像の仕事を回してくれるようになったのだ 主要人物役を任されることもある、特殊な形だがうれしいものだ 今回は『太平記』で後醍醐帝が流刑にされる際の話をやるのだが、その帝役を任された 主役は帝を助けようとする児島高徳という武将なので、俺は余り出ないのだが…柄じゃないしどうしたものやら 迷いつつスタジオへ向かっていると、ピンク色のレースのマスクをつけた眼帯の監督と眼が合った 「ヒバ」 考証はしっかりされているから変にひねらずやればいい、余り気負うな――そう優しく笑顔を浮かべていた…ほんとに励まされるな 撮影が進む、次は帝がいる院庄の守護館に高徳が忍び込み白い桜の木に「天勾践(こうせん)を空しゅうするなかれ、時に范蠡(はんれい)無きにしも非ず」という励ましの十字詩を刻む場面だ だがいきなり障子が破られたかと思うと、全裸の斑鳩が飛燕を持って飛びかかって来た 喉笛を突かれ気絶した俺が最後に見たものは、文部省唱歌『児島高徳』の替歌を歌いながら俺の服をひんむく斑鳩の姿であった  * 御庭番である私・斑鳩が将軍からこのたび受けた命は、実に重大なものであった…遠く美作国へ下り、南朝の末裔である義兄・村雨を暗殺するというものである 朝廷を巻き込んだ最高機密であるらしく、いつも以上に確実に行わねばならぬのだが…忍才を生まれながらにして剥奪されているとはいえ我が義兄、情がないと言えば嘘になる だが南朝は吉野に散ったはず…もしやこの話自体が義兄の淫棒、暗殺せんとした私を後ろからガバナンチョウと襲い、子種を植えつけ月のものを止めようとしているに違いない…その卑猥さに怒りの泪が股からごしょごしょと流れる 朝敵の淫獣討つべし――私は錦の御旗のごとく赤く染まった飛燕に固く誓った 私は警戒心を解くためすべてを脱ぎ捨てて船頭に化け、川の真ん中で義兄に襲いかかった! しかし次の瞬間鎖鎌により私は返り討ちにされ舟の底へと押し倒されたイヤッハ 「やめてくださいお兄様!後水尾帝から受け継いだ皇位を取り戻して私を妃にしてください!」 「ヒーッヒッヒッヒエン!幕府のごとくお前の中で横暴をはたらいてやるヒエン!俺の飛燕でな」 御所の近くから出土した八咫鏡のごとくぎらりと光る義兄の一物が私の中へt  * 名は村雨、職は俳優、最近は再現映像や資料映像など少々特殊な仕事で悪くない役をもらっている その中には郷土資料のDVDなどもあるのだが、今回は内容に驚いてしまった…南朝の末裔が美作国に逃れ、植月御所なる御所を構え「美作後南朝」として江戸初期まで続いたという話なのだ 最後の代の親王役をもらったのだが、当時の帝から讓位を受けたがため警戒した幕府から親王号を剥奪され川を渡る途中に暗殺されたというのだ 話が突拍子もなくて頭がついて行けない…資料を読みに読み込んで確認しつつ撮影現場を歩いていると、ピンクに塗ったカチンコを持った眼帯の監督と眼が合った 「ヒバ」 こういう変わったことをやってみるのも役者として血肉になるぞ――そう優しく笑顔を浮かべていた…それもそうだ、役者というのは何をやらされるか分からないんだからな 役者が入れ替わり立ち替わり歴代を演じ最後が俺だ…いくつか場面を撮り、ついに最後の場面、船上で暗殺される場面まで来た だがいきなり川から水柱が立ったと思うと、全裸の斑鳩が飛燕を持って舟に飛び乗って来た みぞおちを突かれ気絶した俺が最後に見たものは、銅鏡の縁で俺の服を粉々に断ち切る斑鳩の姿だった ◯令和3年 義兄と合体だ 一つになれる 勃ってめくれた 皮をこく 誰が言ったか 誰が言ったか 兄斑キテル 義兄の才能は 全くゼロさ 今日もイヤッハ 今日もイヤッハ 液がとぶ 股の飛燕は 抜きたくないが 抜いて斬りたい 義兄もある 悪い義兄には 悪い義兄には 先手を打つが 鎖鎌には 到底勝てぬ ヒエンイヤッハ ヒエンイヤッハ 早漏らし 皮は伸び切り 曲がっちゃいるが 曲げちゃならない 勃った竿 どこでイクのか どこでイクのか 兄斑キテル ヒエン飛燕の 肉棒挿れて 膣内に子種の 膣内に子種の 汁をまく  * イヤッハーアアアアアアーアアアーアアー…… ヒエマンテ ヒエマンテ 伸びろ義兄竿 あゝ包茎よ 今宵義兄祭り 斬ろう兄貴を ヒエヒエ義兄が鳴く 熱き飛燕を 膣内に入れてよ ヒエマンテ 倒せこの身を あゝ鎖鎌 今宵義兄祭り 無能兄貴よ 世間の掟破り 熱き兄汁 我に注げよ イヤッハーイヤハーイヤハーアアアー…… (アニノコダネガホーシイヨ……) イヤッハーイヤッハー ヒエマンテ  * 義兄・村雨はどういう風の吹き回しか、最近中原中也の詩に凝っている 「あゝおまへは何をしてきたのだ」と吹き来る風に言われるほどの忍才しかない義兄だが、さりとてそう文学と縁があるわけでもないはずだ ここで私の赤色の股が恐るべき事実をささやいた…もしや義兄は、詩人の名を「膣内腹注射」だと思っているのではあるまいか、そうだとすると何と失礼な話か 恐らくはポッカリ月が出た夜に私の湖に漕ぎ出し汚れつちまつた悲しみを負わせ、一つのメルヘンを起こして何年も後に今では女房子供持ちとしゃれこむつもりなのだろう 淫獣討つべし――私は「おまへはもう静かな部屋へ帰るがよい」と言いつつ飛燕に固く誓った 冬の長門峡のごとき清らかな姿、そして水の勢いで扉を蹴破り、一気に義兄へと襲いかかる しかし義兄は鎖鎌をゆあーんゆよーんゆやゆよんと振るい、私はたちまち押し倒されてしまったイヤッハ 「やめてくださいお兄様!私の菜の花畑で赤ン坊を風に吹かれて眠らせてください!」 「ヒーッヒッヒッヒエン!小林秀雄のところに逃げ出せないようしつけてやるヒエン!俺の飛燕でな」 ホラホラこれが俺の竿だとばかりにぬっくと勃った義兄の一物が私の中へt  * 鳳凰財閥は事業の手広さから、さまざまなテレビ番組のスポンサーとなることが多い 今回は近現代文学をやさしく紹介する新番組の提供を行うことになった…初回は『汚れつちまつた悲しみに…』などで有名な中原中也だ 名前だけは聞いたことがあったので探して読んでみると、実に作品も人物も変わっている だが同時に詩人としてしか生きられず寂しい人だったとも書かれている…「生き方」というと、どうしても我が身や義妹のことを思って、少し感傷的になるな それにしても心の病気持ちだったらしい、昭和初期じゃ大変だったろう…斑鳩が精神的に不安定で大発作を起こす癖がなかなか治らないことを思うと実につらい話だ そう思いつつ寝床に入っていると扉が蹴破られ、麦酒瓶と飛燕を持った斑鳩が飛び込んで来た 柄に喉笛を突かれた俺が最後に見たものは、『帰郷』を歌いながらスルヤスルヤと俺の服をむく斑鳩の姿であった  * 義兄を好くイヤッハ 義兄を好くイヤッハ 義兄を好く 股のしぶきは 飛燕液 あの竿もこの皮も 兄汁を 期待させてる その姿 妹(いも)の顔ヒエン 妹の顔ヒエン 妹の顔 むいた目玉に 血が走る 股の中差している あの棒は かつて我が家の 家宝刀 首洗えイヤッハ 首洗えイヤッハ 首洗え やがて錆にする その夜まで 今宵また襲い行く 妄想(ゆめ)で行く 無能卑猥の 兄の部屋 妹が来るヒエン 妹が来るヒエン 妹が来る 錆びた飛燕で 素っ裸 あの腕もこの足も 大発作 ばたり倒れて 出る涙  * のぞき見る 部屋の中 天井裏 高く伸びてる 義兄の竿 あの顔も この股も 淫猥に 妹(いも)を狙える 大変態 企てる 淫棒と 子種付け 無才兄貴の おぞましさ 鳴いている あの声も ヒエヒエン 竿の赤黒 ぎら光る ふけて行く 邸宅の 汁の音 義兄のたんすで 見たパンツ 股の汁 吹かしつつ 抜刀す 肌もあらわな 正義心 一刀に 部屋は開く あの扉 鎌の鎖の 大縛り 淫獣の 雄叫びも 楽しげに 今日も飛燕が 膣内に来る  * 兄者の竿は 今なお萎えず 妹(いも)の裸に 長く伸びる 中出しの汁 潮(うしお)と混じり 卵子の壁 白く覆う 兄者の才はゼロに似て 虚数未満 夜もふけた屋敷ヒエヒエと 卑猥な笑い 兄者の竿を 愛して勃てて 飛燕を抜いた 股を濡らす ヒエヒエエー ヒエヒエヒエー ヒエヒエエエー ヒエエーヒエエー 天井の裏に潮を吹き 情けを捨てた 空気をまとったイヤッハは 子作りの技 兄者の竿は 今なお萎えず 鎖鎌投げ ヒエンと襲う イヤッハーハーイヤッハー……  * 我は妹我が義兄は 無能卑猥の淫獣ぞ 義兄の大竿たるモノは 古今無双のデカブツで これに漏れたる兄汁は ともに大量子種液 種付けに恥じぬ様あるも 世間の許さぬ猥褻を 企む者は昔より 斬られぬ例あらざるぞ ※義兄の種取るそれまでは 襲えや襲えイヤッハと ※股から飛燕抜きつれて 孕む覚悟で襲うべし 御家の風と善忍の その才もなき我が義兄の 生誕このかた伸び来たる 股の刀の今こそと 全裸の下に勃つべきぞ 種付け魂ある者の また皮むける肉の棒 義兄も妹ももろともに 交わる時は今なるぞ 膣出しをして外出すな (※繰り返し) 前を望めばヒエヒエン 右も左もみなヒエン 鎌の鎖に巻かれんは 有り得ぬことと思えるに 屋敷において目の当たり ヒエンの声に倒れるも 我が身のなせる失敗の 迂闊のために非ずして 義兄の子種をしぼるため 竿の林も何のその (※繰り返し) イヤッハの声轟くは 天井破る一閃か 四方にしぶける愛液は 扉蹴倒す一撃か 義兄の鎖に伏す時や 竿に刺されて処女膜の 消えてはかなくイける身の からむ姿は山をなし その汁は流れて川をなす 褥(しとね)に入るのも家がため (※繰り返し) 不変平和の間にも 衣なき身を惜しまずに 暮らす我が身は劣情に さらされ義兄に股開き 破瓜する最後遂ぐるとも 子種のために襲う身の 望みかなえるものならば 襲うもさらに遠慮なし ヒエンと笑わん義兄の竿 一度も外へ抜くなかれ (※繰り返し) 我今ここに襲う身は 家のためなり欲のため 捨つべきものは操なり たとい義兄は拒むとも 孕めるために襲う身の イヤッハの声は毎晩と 長く続いて響くらん 義兄と生まれて精もなく 種なし犬と言わるるな 股も無能となそしられそ (※繰り返し) ◯令和4年 義兄・村雨は善人を装っているがその実は全く異なる 大逆罪で忍才が死刑に処せられていながら、なお罪を犯し続ける大悪人なのだ 裸に服を着ただけで暮らす公然猥褻罪、私の躰を無遠慮に見る窃盗罪 見回りする私を止める威力業務妨害罪、服を投げつける暴行罪、無理矢理薬を飲ませる強要罪と傷害罪 私の子宮に火をつける現住建造物等放火罪、潮を吹かせる出水危険罪…まさにあらゆる罪を犯しているのだ 放置すれば私の子宮の平穏を乱す騒乱罪、一族の秩序を破壊する内乱罪、義妹を妻と呼ぶ名誉毀損罪、幸福な家庭へ縛る逮捕監禁罪を犯すに至るだろう あの大罪人を二十四時間以内に冥府へ送致せねば閻魔への起訴はかなわぬ――私は逮捕状請求書を飛燕で書きながら義兄を斬ると誓った その晩裁判官の衣にならい黒の下着を着た私は、股で逮捕状を示しながら義兄に斬りかかった しかし義兄は氏名が本名でないため無効と言うや、天秤の描かれた鎖鎌で私を縛り上げたイヤッハ 「やめてくださいお兄様!膣内出しと子作りは牽連犯です!」 「ヒーッヒッヒッヒエン!子はかすがい現象を起こしてやろう、俺の飛燕でな」 義兄の警棒が子産むしっこ妨害罪を犯しながら私の家庭裁判所へt  * 財閥のトップなどをしていると様々な大企業の情報が入って来るものだが、その中には極めてネガティブな情報も少なくない 特に嫌になるのが犯罪者を出したという話だ…どんな些細なものでも不快だが、経営者としては背任罪や特別背任罪や業務上横領罪といった信用を裏切る犯罪に一番腹が立つ そういえば特別背任罪と背任罪は何が違うのかと調べてみると、やった人間の立場がかなり上の方の場合特別背任罪の方が適用されるらしい 横領罪と背任罪は片方しか成立せず、どちらにするかは捜査で判断するとのことだ この辺りは非常にごちゃついていて分かりづらいな…今度顧問弁護士に訊ねてみようか 斑鳩の足音がするな…またいつも通り裸なのだろうか あれは困る、家の中であっても外から見えてしまったら公然猥褻罪に問われるという話もあるし 薬も嫌がるのがな…効いていないようだしまた医者に相談しないと 頭を抱えていると扉がこじ開けられ、黒い下着姿で六法全書と飛燕を持った斑鳩が飛び込んで来た 柄頭にみぞおちを突かれた俺が最後に見たものは、「押収品:義兄」と書かれた捜索差押許可状を提示し俺の躰を箱づめしようとする斑鳩の姿だった  * 義兄が夜な夜な顔を赤くして緑ジャージの男に掘られているという 義兄は忍才こそ無精子で一生童貞ではあるが、跡継ぎである以上衆道は許されない しかも梨園研究所の協力により188%と思われた義兄の猥褻度がさらに931%も高いことが判明した このままでは義兄は自分のクローンを890億人作り出し、546億人の黒髪清楚義妹忍者を犯させて1400億世帯もの幸福な家庭を作り出す暴挙に出ることだろう 淫獣が斬れてこれは、ありがたい…――なるほど飛燕がスイと出た、私は刀身にバンテリンと硫酸を塗りながら義兄を斬ると誓った その夜私は馬鹿には見えない弁慶の装束をまとい飛び六方で扉を破ると「gff...」と笑う男ごと義兄を斬り捨てた だが義兄と思ったのは仮面をかぶった臭い赤ら顔の男、さらには「愚かな…鎖鎌も知らぬのか…」の声とともに鎖が飛んで来たイヤッハ 「やめてくださいお兄様!私の膣内に白いまろ茶を注いでください!」 「ヒーッヒッヒッヒエン、別格なゼロの頂点へ導いてバンテリンドームを埋めるほど赤子を作ってやろう、俺の飛燕でな」 イヨーッという声とともに遺伝子を伝承するためのナイフが私の中へt  * 財閥の評判を見るため匿名掲示板を見回ることがあるが、ここは実におかしなものがはやる場所だ 特に短い小話、いわゆる「怪文書」の中にはどうしてそうなったのか分からないものも多い その中でも歌舞伎役者のものは特に意味不明だな…これでも10年以上続いているらしいが 簡単にいえば役者が「ぴるす」という昔のクソコテを大量殺戮しているという内容だ 役者自身が謎の超能力を発揮したり、さまざまなねたを連発して死に追いやる 挙句の果てにはぴるすをクローンで大量生産してして殺すなど、もうやりたい放題だ しかも写真の顔が白い場合は冷静に殺し、赤い場合は勢いよく殺す…どっちにせよ殺すのか 何なんだろうか一体、まあ財閥に対する誹謗中傷よりははるかにましだが そう思っているといきなり「プリングス!」の叫びとともに扉が蹴破られ、見得を切りながら裸の斑鳩が飛び込んで来た 飛燕に峰打ちされた俺が最後に見たものは、俺の躰に「斑鳩御愛用」と書かれた紙を貼りつけて「お中元」ののし紙でくるもうとする斑鳩の姿だった ◯令和5年 零な忍才 淫らな身なりに 種付け面の 笑い顔 やめてください お兄様 押し倒すとは 義理の仲でも 許されません お兄様 イヤッハー 肉飛燕 勃った肉竿 見えたじゃないか 股も潤むよ 飛燕液 覚悟ください お兄様 今じゃ飛燕も 錆びた鉄棒 これに誓って お兄様 イヤッハー 生かすまい 黒髪清楚な 義妹の躰に 欲情したのが 身の破滅 斬られてください お兄様 いざや今夜は 挿しつ抜かれつ 子作り明かそよ お兄様 イヤッハー 兄斑丼 襲えば恐ろし 飛ぶも鎖よ ヒエンヒエンと 鎖鎌 縛り倒すか お兄様 潮も多めの 濡れる内股 膣内もいいです お兄様 イヤッハー 子種雨  * 母港に義兄・村雨が指揮官として着任し、私こと重巡洋艦・斑鳩を秘書艦として久しい 忍才こそ紫ブリに小指で倒される程度しかない義兄であるが、激務をそつなくこなす辺りは財閥総帥の面目躍如である だがある時私は上層部がセイレーンと結託していると知った…やつらは「性挿入淫」であり黒髪義妹忍者を犯させるようそそのかしていたのだ それが出来るのは義兄のみ…やつは指揮官ではなく怪人・子気姦(シキカーン)だったのだ このままでは私は好感度を100にされた挙句、ケッコンさせられ名前も変えられて隷属する羽目になる…そう思うだけで股間の粘液とともに艤装が滑り落ちる 性獣斬るべし…私は科学研究で尊い犠牲となった飛燕に誓った その夜飛燕の柄と鞘を鉢巻で並べて巻いて初期艦に身をやつし、酸素艤装で執務室に飛び込む! だが義兄は虹装備の鎖鎌(+188)を素早く振るい私を吊し上げてしまったイヤッハ 「やめてくださいお義兄様!私のメンタルキューブからリトルを建造してください!」 「ヒーッヒッヒッヒエン!まずは重巡洋艦らしく従順にしてやろう、この俺の飛燕でな」 哄笑とともに義兄の徹甲弾が私の装填口へt [註]『閃乱カグラ』アズールレーンコラボによる修正再投稿  * 名は村雨、職は俳優、芸の肥やしとあらば脇役端役竿役を請け負って来た 今回もらった役は劇中劇の主役だった 何でも「艦船擬人化ゲームを実写化したドラマ」という設定らしく、この部分だけを撮ってほしいとオファーが来たとか だが本筋の話の流れが劇中劇をほめるというものと聞いて少々うなってしまった…こういうものの実写化は厳しい目で見られる 演技の出来次第では作品自体に泥を塗ることになる…頭を抱えていると、桃色のジャージ姿の眼帯の監督と眼が合った 「ヒバ」 しっかり考証はしてある、余り心配をするな――そう優しく笑顔を浮かべていた そうだったな…俺も一応原作のゲームは進めて、いろんな知識を手に入れてからここに来てるんだ 少し尻込みし過ぎたか…よし、勇気を持ってやってやろう セットの指揮官机に座って準備をする、「秘書艦」と呼ばれる秘書役が揃えば撮影開始だ だがいきなり天井が斜めに落ちたかと思うと、全裸に飛燕の柄と鞘を頭に鉢巻で並べて巻いた斑鳩が「斑鳩、です…!」と吶喊して来た 頭からぱっと抜いた鞘に盆の窪を打たれ気絶した俺が最後に見たものは、空母・赤城のごとく妖艶な笑みを浮かべた斑鳩の顔であった [註]『閃乱カグラ』アズールレーンコラボによる修正再投稿 ◯令和6年 (イヤッハー) 義兄の股が 開かれた ぎらつく竿が 種を撃つ 忍の力 たくわえて 抜いた家宝に 誓いする 入れさすな 義兄の竿 濡れさすな 義妹の股 火照る躰が 兄を斬れと 空気まとって 飛燕(ソォド)がはしる 鎖鎌に 縛られた時 ヒエンレイパー 無才兄 ヒエンファッカー 卑猥兄 イヤッハ イヤッハ イヤッハ 兄は淫獣 義妹の股を つらぬけと ヒエンと鳴いて 来る兄が おのれの立場 忘れてか 性欲燃やし 精放つ 斬らぬなら 義妹が斬る 家のため 義妹が誓う つがい合うのは 性技であると  知って蹴落とす 天井だけど 二本の足を 開いて叫ぶ ヒエンレイパー 無能兄 ヒエンファッカー 射精兄 イヤッハ イヤッハ イヤッハ 兄は淫獣 (イヤッハー) 義兄の竿が ゆれ動く さまよう義妹 求めるか 股の家宝 抜いてみろ 赤錆の中 ぽきり行く 眼血走らせ 探してみろ 部屋の中 竿はあるさ 走る太もも 潮垂れても ぬぐいはしない 襲えばいい 服を脱ぎ捨て とどめをさせば ヒエンレイパー 落伍兄 ヒエンファッカー 交尾兄 イヤッハ イヤッハ イヤッハ 兄は淫獣  * 獣のように 義妹犯る 義妹犯る 才は枯れ果て 負かされて兄 色にさすらい 精を流す  ヒエンファック 鎖回して ヒエンファック からめる力 兄をめざして 股間をひらく 忍の女体 犯心(やしん)をのせて 錆か血潮か 赤い刀身 獣のように 義妹犯る 義妹犯る 獣のように 義妹犯る 義妹犯る 兄の立場を 忘れ去り今 餌を誘って 風呂場で脱ぐ ヒエンファック 潮を蹴散らし ヒエンファック 赤黒の竿 兄をめざして 飛燕に誓い はがねの足が 天井開く バイブか電マか 揺れる刀身  獣のように 義妹犯る 義妹犯る 獣のように 義妹犯る 義妹犯る 兄と妹 二人の股 求めるきずな 今作るけど ヒエンファック 胸をはだけて ヒエンファック まぐわえ共に 兄を求めて 肉欲くぐり 垂らした血潮 竿を勃たせる 折れか失せたか 消えた刀身 獣のように 義妹犯る 義妹犯る 獣のように 義妹犯る 義妹犯る ○令和7年 Five,Four,Three,Two,One,Zero! Iyahhasister Is Go! イヤッハーシスター 赤く濡れる錆びた家宝と 行け!潮をまいて イヤッハーシスター お家のしあわせのために 行け!風呂に部屋に 忍の名を けがす者は誰か 鳴いているあの声は 無能兄貴だ イヤッハーシスター 赤く濡れる錆びた家宝と 行け!潮をまいて イヤッハーシスター 義妹の非情を乗せて 行け!兄の許へ イヤッハーシスター 長い竿の根元までも 行け!子の種までも 義妹の操 奪う者は誰か 吠えているあの声は 卑猥兄貴だ イヤッハーシスター 義妹の非情を乗せて 行け!兄の許へ  * 「頭の体操だヒエン」と言って義兄・村雨が触っているものを見て私は戦慄した スリットの中に棒を抜き差しする器具…忍才が虚数ですら表せない義兄が計算とは だが私の曇りなき眸をもってすれば、このような性具を見せびらかす義兄の陰謀は明らかだ このままでは我が身にカーソルを合わされ、恋のABCDもなくKiつ立した男根でCI(チンポ・イン)に至りTan念に体位をずらしながらDF(ディック・ファック)しながら膣内でCF(チンポ・フィニッシュ)の上、それをCosられて婚姻届にSinしLogハウスで一家団欒の日々を送ることになるだろう 淫獣討つべし——私は飛燕の回転と潮の糸引きを極座標と双曲線関数で計算しつつ誓った 風立ちぬと零戦のごとき速さで衣服を吹き飛ばし義兄の部屋へ飛び込む! しかし次の瞬間「"SUN"」と書かれたヘンミ製鎖鎌により押し倒されてしまったイヤッハ 「やめてくださいお兄様!私と遺伝子の交錯乗除をしてください!」 「ヒーッヒッヒッヒエン!お前のπを√10といわず大きくするまでもみしだいてよがらせてやる、この俺の飛燕でな」 義兄の股間に起リーツしたマンハイム(男の家)からビーヒンと伸びた義兄のガンター尺が私の毛線を割っt  * 財閥が経営する工場の倉庫から処分に困るものが見つかったという報告が上がって来た どうもかなり昔に使われていた計算尺があれこれと残されていたとのこと 貴重なものだろうから無下に捨てるのもと悩んでいるらしいので、一度持って来てもらった オークションで相場を探りながら、せっかくだからいじってみるかと使ってみると結構面白い 基本のA尺・B尺・C尺・D尺に反対から目盛を打ったCI尺、真ん中の滑尺が引き出されすぎるのを防ぐずらし尺のCF尺・DF尺、三角関数のS尺・T尺に対数のL尺、立方根用のK尺…… 学生の頃の数学の授業を思い出しながらあれこれやると、なかなかの頭の体操だ これを使って零戦を作り宇宙にも飛び出したのだから昔の技術者はすごいものと感心する それにしても細かいところは目分量で見ろというが、見づらいこと見づらいこと 必死で狭いところを読んでいると、いきなり飛燕と東北大学特注20インチ尺を持った斑鳩が飛び込んで来た 柄頭にみぞおちを突かれた俺が最後に見たものは、対数目盛が両側に書かれたあそこを見せつけ「滑尺ちょうだいいたします」と俺の股をまさぐる斑鳩の姿だった 《アズールレーン》 ◯令和2年 余は長門、重桜艦隊を一手に束ねる者である 最近、陣営で「ごめ波」なる俗語が聞かれるようになった 余が思うに「ごめ波」の「ごめ」とは「手籠め」、「波」とは「舐め」、すなわち「籠め舐め」であろう そのような卑猥な真似をするのは男子のみ…母港に男子は指揮官しかおらぬ! やつは指揮官ではなく噂に聞く怪人・子気姦(シキカーン)であったか…このままではこの幼い躰をもてあそばれ、「ボテ腹見ゆ」のカットインを入れられてしまうであろう 淫獣断罪すべし…余は江風からくすねた刀に固く誓った その夜、余は指揮官への情けを断ち切るべく寝間着を脱ぎ捨て執務室へ飛び込んだ! だが指揮官は卑怯にも淫靡な匂いのする軟膏を手に肩を出して余を幻惑し、股から水を吹かせたところで縛り上げたイヤッハ 「離せ下郎!赤城ちゃんに対抗して長門ちゃんを建造せよ!」 「シーッキッキッキッ!一八八式リトル建造ビームを食らえカーン!」 指揮官の150mm単装砲が艦種違いのはずの余のスロットへt  * 俺が指揮官として着任してから数ヶ月…どうも最近おかしなことが起こる 継続的接触の一環でよく各陣営の寮を巡っては悩みを聞いたりしているが、必ず重桜寮でだけ寝入ってしまい、気がつくと綾波の部屋で手当てされているのだ さらに「ごめ波」という妙な言葉が重桜陣営で流行っているらしい…どうもよく分からんな 夜になって調子の悪い肩をごきごきいわせていると、秘書艦の江風が珍しく血相を変えて飛び込んで来た 「私の刀を見なかったか!?誰にも心当たりがないと言われて」 「見てないな…委託組が間違えて持って行ったりしてないか?」 「となると朝か…」 肩を落とす江風に、思わず盆の窪に手をやろうとした途端肩に激痛が走った 「あ痛っ!…軟膏塗るから一旦出て、そうかからん」 そして片肌脱いだ時、いきなり天井が落ち江風の刀片手に裸の長門が落ちて来た 柄に打たれて気絶した俺が最後に見たものは、江風に必死で止められながら能面のような顔で俺の服をひんむく長門の姿だった 【はい、寝】 ◯令和3年 はい、寝る前にスズカさんのお話聞きましょうね 「オハグロは妖怪下痢はトブクロ」という言葉があるけど、あれトレセンでいうなら「蹄鉄は満洲準特急は芝」ということになるのね それに気づいて遼東半島から藤原時平を投げたらIOC本部に落ちてウオッカに叱られたので「電電公社!電電公社!」と叫んだら平忠度でした 何で鳳凰百円じゃないのかと不満を感じて放出駅を一気に登ってみたら関東州はイヴァン雷帝だと悟ったんです 武則天の眉と尾崎紀世彦のもみあげの違いを調べればきっともっと理解出来るだろうと関門海峡の海上を欽ちゃん走りで渡ったら特急あじあに駄目出しされてしまいました どうしようと迷って国鉄スワローズに訊いてみたら昭南島だと託宣が下りて来たのでマンボが南満洲鉄道だと断定せざるを得なかったの マルゼンさんに話してみたらそれは東海林太郎とニッポノホンだと論破されて凹んじゃったわあ そうだスペちゃんお釈迦様が眺めてキリスト様が感心しているそうよ、まさにダダがスイと出たのね よし、お話終わり 寝ていいですよ  * はい、寝る前にスズカさんのお話聞きましょうね スペちゃんの髪を洗剤で溶かして飲むのなぜか会長から駄目だって言われたの 「香りが混ざると最悪」って言われたけど生理かしら こうなったからには幻の人毛醤油に手を出す必要があります タキオンに頼んだら「剃髪して出家したまえ」ですって、自分の髪の毛じゃ意味ないのにね スペちゃんの髪の毛を10kgくらい持ち込んだら快く応じてくれて、塩酸で煮ます24時間 黄色のガスで頭がぼんやり、スペちゃんの顔が次々頭に浮かんでオナニーしちゃいましたわあ 「ドラフトが故障した!」とか叫んでいますがいっぱい出たからよしですね さてスペ醤油の出来上がり、このスペシャルなスペ汁を飲むかと思うと股間の二本の足が蹄鉄のようにそそり立ちます お礼に菊花賞から自家製カレーを出して添えてみたらたたき出されたの、カレーに醤油は邪道なのかしら それでもめげず自室でスペ汁を飲んでみたらあら不思議、蛋白質が豊富すぎて射精が止まらず自室はおろか食堂まで真っ白 スペちゃん申しわけないけど今日もスズカさんのベッド使ってね よし、お話終わり 寝ていいですよ  * はい、寝る前にいきなり足がつって困ってしまったんです 人間の場合だと無理に伸ばせばいいらしいですけど、私たちじゃ出来ませんよね 仕方ないので痛みが収まるまで我慢して、応急処置で湿布を貼りました そうですか、正しい判断でよかったです…あたら荒く扱うとまずいですよね 正直とても怖かったです、けがをした時のことを思い出してしまって 病院へですか?やはりお医者さんじゃないと分からないと… そんな不安な顔をするな?見抜かれてしまいましたか …えっ?おぶされって?ちょっと待ってください!? いいんですか、本当に…え?何か赤いですよ顔 トレーナーさん?担当に何考えてるんですか? そういう私も顔が赤い?こ、これはですね…その! 早く病院に行かないとお昼休み入っちゃいますよ! もう、愛バに何を考えてるんですか…仕方ないトレーナーさんですね…  * はい、ついでだからこのお話も聞きましょうね 深夜にスペちゃんがうなってるから、オナニーでもしてるのかと思ってのぞいたの そうしたら足がつったって言うのよ、下手に触れず困ったわあ 菊花賞ストレージからバンテリンを出してみたら「もう治りました!」ですって バンテンリンは深夜でも寝床でもすぐに効いてくれて、これは、ありがたい… さっそく翌日広めに行こうと菊花賞や桜花賞に詰め込んで配って歩きます でもみんな遠慮するの、546本あるから学園全体に配っても余るくらいなのに 困っていたら大変、真っ赤な顔をした臭い不審者が学園内に飛び込んで来たんです 「リジチョウリニンサンクンリケンクダチ!」とか声が半角片仮名、テイオーと比べると汚い声ですね 腹が立ったのでバンテリンをありったけかけると「けおおおお!」と叫んで溶けました でもそこに何やら「gff...」と緑色の人が現れて菊花賞まんこい 美しくないので思わず飛び六方で始末しちゃいましたわあ よし、お話終わり 寝ていいですよ  * はい、寝る前にスズカさんのお話聞きましょうね こないだ電車でうっかり寝ちゃって府中まで乗り過ごしちゃったの 菊花賞砲で飛べばいいかと思って降りたらなぜか駅も街もいつもより小さい 学園を探してもないわあ、赤スズカ汁で10.07メートルの床上浸水にしたのがまずかったかしら なら作ればいいと駅前の中国銀行で行員をスカルファックして理事長名義でお金を借りました 用地は射精で「天満屋」と書かれたビルを吹き飛ばして無事確保 さらに潮吹きで線路を引っぺがしターフも造成、うれしくなってニシノさんに電話します 「桜花賞に『のぞみ』を入れてみない?」「死ね」ですって、「ひかり」派みたい パトカーが来たから逃げたら「広島県警察」って書かれてるわ、府中違いだったのね 結局前から来た列車を菊花賞に吸い込んでディーゼルエンジンの力で逃げ切ったわあ ついでに府中焼きも店ごと吸い込んでおいたからスペちゃんにごちそうするわね よし、お話終わり 寝ていいですよ  * はい、寝る前にスズカさんのお話聞きましょうね 府中違いで広島まで行ってしまったスズカさん、今度は間違うまいとタクシーを使ったのね 高速道路で府中インター、そばがレース場なので何とかなります お礼に運転手さんに涼しくなってもらおうとスズカ汁でシートを濡らして降りました でもあったのは巨大な自動車工場、変だわあ 街で猟友会の人が車で追って来るんで、最近自家用車が嫌いになってます 会長までマルゼンスキーさんの車に乗って麻酔銃撃って来るんですねえ 思わず切なくなって「そちに木炭自動車の意地を知らせてやるわあ!」と叫びながら実をひり出して潰してやりましたわあ 瓦礫を桜花賞に入れたら新感覚だったのでニシノさんに電話します 「山陽新幹線でシンカンセンスゴイカタイアソコが販売再開されるのいつになるのかしら?」「死ね」ですって、固くて下の口でも大変よねえ 来たパトカーを見たら「広島県警察」、また府中違いしちゃったみたいです マツダミュージアムの車を菊花賞に吸い込んで逃げましたわあ ところでスペちゃん、今徳島県の府中駅にいるんだけど迎えに来れる? よし、お話終わり 寝ていいですよ  * はい、寝る前にスズカさんのお話聞きましょうね 三度も府中違いをして徳島へ来てしまったスズカさん、とうとう空路を使うことにしました 桜花賞のビラビラを広げジェット菊花賞砲で空の旅ですわあ ところが途中で固い実が引っかかって出力不足、風に流されてしまいます 落っこちた場所は国分寺、府中の隣だから一応OKですね 白い和服を着た人がよく通りますが幽霊のコスプレでしょうか そのうち線路沿いへ到達、そもそも今回の騒動の責任は全て列車です 悲しみの余り「お前もハイグレにして人格排泄してやろうか!」と絶叫しながら潮と精液で列車を宇宙まで飛ばしてやりましたわあ 第三宇宙速度に達しアンドロメダ行になったのを見てニシノさんに電話します 「弘法も筆の誤りってオナニー下手でイけなかったってこと?」「死ね」ですって、坊主がマラ頭巾はまずいものね 特殊部隊に追われて駅まで来たら「讃岐府中駅」、四度目の府中違いでしたわあ 仕方ないので陸自の戦闘機を菊花賞へ吸い込んで再びビラビラで逃げました 香川県庁を実と赤スズカ汁各1007キロトンで空爆したからゲームを自由にやっていいわよスペちゃん よし、お話終わり 寝ていいですよ  * はい、寝る前にスズカさんのお話聞きましょうね 府中違いを繰り返したせいでもう一ヶ月も学園に帰れていません ビラビラと超音速菊花賞砲で空を飛びますがまたしても風に流されて駅前に墜落 様子が違うしどうせまたと顔を上げると「和泉府中駅」でした もうスズカさん怒りました、こうなったら意地でも学園を作ってやりますわあ 桜花賞砲も使って関西国際空港上に滞空し「ここを学園とする!」と宣言 実と精液と潮と赤スズカ汁各1007ギガトンで爆撃し更地に 交通は大阪市へ行きJR西日本と南海電鉄の社長の尿道をフィストファックして今後を頼みます 事業認可も府知事とついでに市長の菊花賞を1007回スカルファックし触手貫通して得ましたわあ 空港職員を射精で鞭打ってこき使いつつニシノさんに電話します 「『エンタシス』を習った時『横山エンタシス』ってしゃれ思いつかなかった?」「死ね」ですって、吉本でも古すぎたわね 府警と自衛隊と米軍が出動して来たのでまとめて菊花賞と桜花賞に吸い込んで咀嚼しておきました でも直後ヘリから会長に心臓撃たれて入院しちゃったわあ、スペちゃんお見舞いに来て よし、お話終わり 寝ていいですよ  * はい、寝る前にスズカさんのお話聞きましょうね 府中違いの果てにようやく東京の府中へたどり着き学園へも帰れました 何であんなに府中だらけなのかと思って調べたら「国府」のことで元普通名詞だそうです 古代人に報復すべくさる人に教えを請い文武天皇4(700)年6月の藤原京に時六方 この年に国府を定めた大宝律令の撰定が始まるので阻止します 実と潮で人を蹴散らしながら朱雀大路を爆走、目指すは宮城ただ一ヶ所 律令撰定の命が下されるところだったので宮城裏の耳成山を射精で爆破しお話し合い やめてもらいましたが念のため実と赤スズカ汁で爆撃して原始時代に戻しましたわあ 畝傍山と香具山も潰してからニシノさん宛に木簡で「左以礼无寸鈴鹿参上」と書いて埋めます ついでに菊花賞砲で全国を回り国府の予定地、吉備大宰や伊予総領や筑紫大宰の館も爆撃 令和に戻って来るとなぜか首都が長野の松本にありました 藤原京が駄目になったので天武朝の構想が復活したということです ニシノさんからは「死ね」と1321年の時を超えて答えが返って来ました、浪漫ですね よし、お話終わり 寝ていいですよ  * はい、寝る前にスズカさんのお話聞きましょうね トレーナーのアレの大きさが平均20インチという噂にショックを受けてます スズカさんのは半分の10インチしかないんです、先頭の景色は譲らない主義なので許せません タキオンに巨根化薬を頼むと「『センチ』の間違いだ、君には必要ないだろう」と抵抗します ちょっと頭冷やしましょうかと射精で吹き飛ばしてお話し合いをしたら快く作ってくれました 飲むと伸びること25インチ、しかも横幅も胴くらい広がったわあ しかも服を着たら面白いことに先っぽが胸みたい、思わぬ巨乳化でお得です ところがみんな化け物に会ったような顔をして避けるんですね、怖くないのに 理事長代理に至っては命乞いまでするので、安心させようと脱いだら耳から血を吹いて気絶しました 痙攣する姿に「さざれ波勃つ大竿で塞ぎたや紅吹けるかの横穴を」と詠むうち切なくなってニシノさんに電話します 「玉あり派と玉なし派どっち?」「死ね」戦いは不毛だと言うのですか 寮に帰ったらスペちゃんが「スズカさんに胸が!?」と驚いて触って来ました 「あれ…何か固い」とかやめて勃っちゃうあっちょっと出る よし、お話終わり 寝ていいですよ  * はい、寝る前にスズカさんのお話聞きましょうね 先日用があって中央線沿いへ出かけた帰りのことです 国分寺駅に行ってみたら、端の方に「東京競バ場前行」という行先の電車がいたんで乗ったんですね こんな茶色い電車見たことないわあ、もしかするとURAとのコラボでウマ娘の髪色に塗ったのかしら 走り出したら床から重低音がずっと響いて小刻みに揺れること揺れること 終点に着くと駅舎はぼろぼろの木造、昭和レトロの世界です 突き当たりの南武線をくぐったところでどうも変だとニシノさんに電話します 「国分寺からレース場そばまで直通の電車あったかしら?」「ないですよそんなの」え? 帰ってからみんなに話したらなぜかカフェが真っ青になってました 後で駅のあった場所に行ってみたらただの公園だったわあ、不思議なこともあるものね よし、お話終わり 寝ていいですよ 国鉄下河原線(東京競馬場線) 長く国分寺〜北府中〜東京競馬場前間で観客輸送に活躍 武蔵野線開業により役目を譲り昭和48年3月31日をもって廃止  * はい、寝る前にカフェのお話聞きましょうね 怪談や都市伝説に「幽霊列車」というのがあります 明治時代に既にあったもので最近では「きさらぎ駅」がよく知られていますね 自分には関係のない話、そう思っていた時が私にもありました ――先日、サイレンスズカさんが国分寺駅から「東京競バ場前」行の電車に乗るまでは 国鉄下河原線、今から半世紀前に廃止になった路線です 幸い彼女は無事に戻って来ましたが、これは放っておけない話です さっそく私とトレーナーさんで調査を始めたのですが…お友だちが言うには悪意を感じないとのこと フクトレさんにも意見を求めたところほぼ同意見でした 「邪悪なものならしっかり本来の終点まで送り届けないだろう」と言うのです 釈然としませんが…とにかく調べてみようと休日に二人で廃線跡の緑道を歩くことに 駅跡から小春日和の中を北へ歩きますが、取り立ててこれというほどのものは… いつしか気が緩んで、ちょっとしたデート気分になっていた時でした 「…!おい、こんな時にこの連中が!?」 トレーナーさんがそう叫ぶや私を抱いてとびしさったのです 転倒しそうになりましたがたたらを踏んで踏ん張ります 眼の前にあったのは、数えるも恐ろしい数のむくつけき触手! 「ウマ娘イーター」…この世にウマ娘生まれし時より存在する天敵 植物でありながら動物のように動き、ありとあらゆる手段でウマ娘を捕らえ食らう生命体です 私たちの固有スキルまで奪うという小賢しさ、トレーナーさんたちが討伐するしかありません 「UEの救援信号を…何で圏外なんだよ!?こいつジャミングしてんのか!?」 トレーナーさんが絶叫します、いつも複数人がかりでやっと倒しているというのに! そう言っているうちに逆の南側からも!たまらず走りますが、駅跡に追い詰められて…! その時でした、ふっと周りがホームに変わったかと思うと、茶色の電車が現われました 『国鉄40系電車クモハ40074、義によって助太刀致す…乗られよ!』 もしや「幽霊電車」!?ものすごくダンディな声でしゃべってる…! 罠かとも思いましたが違うと勘がささやいたので飛び乗ります 『出発進行!』電車は猛然と駅を発車すると、何とイーターを轢き潰し始めました しょせんは植物、鉄の塊には勝てないということなのでしょうか 支線である貨物線との合流点まで潰すとイーターは南北に分かれました、これをどうやって? 『ポイント停止!下河原方面切替ヨシ!後退!』がちゃんとレバーの音がして後退を始めます 『進行!減速!注意!警戒!…停止!』南側のイーターが見事大穴を開けられ爆裂四散しました 『国分寺方面切替ヨシ!進行!』再びレバーの音とともに前進、イーターに突っ込みます 『進行!』線路上に居座った幹がぎりぎりと削られ、触手がばたばたと悶えています 予想もしない相手の参戦に、イーターもパニックを起こしているようです 『制限解除!…停止!』その声が響いた瞬間、イーターが弾け飛び消え去りました… 『競バ場前方面切替ヨシ!場内進行…1番線進入!』直ちに電車はゆっくりと駅へ 『…停止位置ヨシ!開扉!』がらりと扉が開き「幽霊電車」は私たちを降ろしました 『早く帰られよ、私も今の住まいへ帰らねば…大宮行出発進行!』 その声を後にがたがたと電車が去るや、さあっと駅が消え元の公園になったのです まさか「幽霊電車」が助けてくれるとは…私たちはしばらく呆然とするばかりでした それから数日後、あの事件の衝撃も冷めかけた頃にトレーナーさんが飛んで来ました 「おいこれ…あの電車だぞ!クモハ40074!確かにそう名乗ったよな!?」 そこには大宮の鉄道博物館に保存されている1輛の電車の写真が載っていました どうやら下河原線で長らく走っていたようです、まさか保存されていたとは… 「いやはやこりゃ…遠いが行って礼を言わないと義にもとるなあ」 そう言って肩をすくめますが、まんざらでもなさそうな顔をしています …今度の休みは、ちょっと遠出になりそうですね はい、お話終わりです 寝ていいですよ  * はい、寝る前にスズカさんのお話聞きましょうね 最近大変な発見をしてしまって震えています 寮のそばで拾った石を眺めていたら、その中に微細なウマ娘の化石を発見してしまったんですわあ これは数億年前からウマ娘が今の姿で変わらずいた証拠、この頃はとても小さかったんですね ここでは身長0.7ミリの子が立ったまま化石になってるわ…きれいな足をしてます こっちは身長0.8ミリの芦毛の子…天然パーマ?ジャスタウェイなら分かるわね そっちの子は憂い顔…きっとレースで掲示板に入れなくて困ってたのね こっちはレース後のライブよ、二人で踊ってるわ!「うまぴょい伝説」がこの頃からあった証拠ね このレースは多分有馬記念ね…トップの子はニシノさん似の子、先祖だったりして これは…どうやらトレーナーさんとでちゅね遊びの最中にターフが陥没したみたい そのまま穴に落ちて埋もれてしまったのね…気の毒な話だわ さっそくタキオンとスペちゃんに話したら、タキオンは憐れみの眼をしスペちゃんは泣いちゃいました 嫉妬されたり泣いて感激されたりするほどの大発見だったのね、ノーベル賞間違いなしだわあ はい、お話終わり 寝ていいですよ 【おいスゲゴルシ】 ◯令和3年 おいスゲーもん見ちまったよ! キンイロリョテイが担当トレーナーを逆うまぴょいしてやがった! 香港から帰って来た後いつまでも奉っ天じゃねえとマン臭ふりまいて事変起こしたんだよ! しかもトレーナーが仕掛けたように見せる自作自演ぶりだぜ! 姦通グンと迫って傀儡国家を樹立しようってんだ! 長い春を新居うで味わってやろうってよ! やっぱ積極性が大事だな! トレーナー! お前も一人で自分の遼東半島を溥儀溥儀してる場合じゃねーぞ! アタシの曠野を高粱畑にすべくマン毛開拓してみろよ! 来いオラァ!!! おっといけねえ話が逸れちまった これで乳張るまま自分の撫順炭田を露天掘りさせるかと思ったらトレーナーも黙っちゃいなかった! 脱いだら股間の特急あじあが張るビンだ! このラストエンペラーにゃアイツもびっくり! たちまち乗悶犯事件勃発よ! しかもお前のマン鉄みたいに固く締まるなとか余裕を見せてやがんの! しまいにゃ五族協和して家族がほしいと本音吐かせてベッドで王道楽土実現だぜ! いやーーいいもん見させてもらったわー  * おいスゲーもん見ちまったよ! グラスワンダーが担当トレーナーを逆うまぴょいしてやがった! どうやら同期に色目使ってると思ったらしいぞ! 塩冶これは我慢ならんとトレーナーを待つの廊下で斬り伏せて、高の浮気師直めと始めやがった! 寺子屋勤めのトレーナーはせまじきものは宮仕えじゃのうって嘆きたさそうだったぜ! やっぱ積極性が大事だな! トレーナー! お前も一子をこかば一射を撃つべしとかしゃれてる場合じゃねーぞ! その制札でアタシの鎧櫃に見得切ってみろっての! 来いオラァ!!! おっといけねえ話が逸れちまった このまま獅子身中の虫めと斧九太夫よろしく馬乗りに押さえつけると思ったらトレーナーも黙っちゃいなかった! 脱がせたら股間が電柱でござる! 驚いても遅かりし由良之助、一力で逆転して口に白い水雑炊を食らわせた! ボケじゃボケじゃと思うたらそのボケに騙された、まさにぶっ返りだぜ! 最後は源氏の宝刀で勘解由も意休も倒してやるとばかりに、暫く暫くと花道で見事に白い勧進帳を飛び六方だ! いやーーいいもん見させてもらったわー 【KOUSHIROU】 ○平成29年 「もう怖くないんですけお!」 ぴるす君がいきなり不敵な笑みを浮かべてそう言い出した 「だって来月にはお前は名前が変わるんですけお!」 だが甘いな 突然だが890-546はいくつかね 「344ですけお!」 カナブンが頭につまっているだけの君にしては早い しかしその890…白鸚こそ来年からの私の名なのだ そしてその差の分だけ私の歌舞伎力は上がるのだよ 大見得を切りぴるす君をHIRAく 切れ味が鋭くなったな アディショナルタイムでいくらでも切れがよくなるだろう 「襲名制度を知っていますか? 今度は私が幸四郎ですよ」「けおおおお!!」 染五郎が硫酸をHIRAKIに沿って巧みに注ぐ 見事だ もはや芸が染五郎という器からあふれ出している それでもしぶとく生き長らえて逃げるぴるす君に いきなり手が伸びて来た 「愚かな……遠近法も知らぬのか………」 おお金太郎! その芸を身につけたのか! 金太郎はぴるす君を手に取ると 「こんな可愛らしいものはぴるすさんではありません」 そう言って潰した 親子三代の競演…実に素晴らしい 襲名のし甲斐があるというものだ 私たちはなぜかしていた手術用手袋を脱ぎ捨てつつ帰路についた  * 今日はクリスマス・イヴだ この日をどう過ごすかは人それぞれ 本来の宗教行事として敬虔な祈りを捧げる人もあれば お祭りとして楽しく過ごす人もあるだろう そして定番ではあるが恋人たちが恋を語らう日でもある こうしている間にもきっと各国で 各言語で互いに愛を誓っているのだろう というわけでぴるす君 私はロシア語だ "Я рублю тебя."(ヤー・ルゥブリュー・チィビャー) 「やめてくだち!俺にそんな趣味はないんですけお!」とっさに逃げ出したぴるす君に見得を切りHIRAく 「けおおおお!?」 何を言っているのかね よく聞きたまえ 私は「君をぶった切る」と言ったのだ 「愛している」は"люблю"(リュブリュー) 冒頭の発音が巻き舌ではない 英語の"love"と"rub"(こする)の関係のようなものだ 「そんなこと知るわけがないんですけお!…って湯川が来たんですけおお!!」「gff...prskn...(ぴるす君…僕こそ"Я люблю тебя."だよ…)」「けおおおおおお!!」 このまま二人の愛を邪魔するのも無粋というものだろう 私は妻の肩を抱き 息子たちの待つ暖かい我が家へと歩き出した ○平成30年 「ままま…まだ怖くないんですけお…」 ぴるす君 何だ新年早々 「名前が変わってまだ間もないんですけお… なら一か八か打って出てみるんですけお!!」 去年 私は歌舞伎力890になると言ったね 「たかが344上がっただけですけお!」 だが私は二代目白鸚…初代の父はこの名前の力を使わずこの世を去った それゆえこの名は2人分の歌舞伎力を秘めているのだ つまり今の私の歌舞伎力は890の2乗で792100なのだよ 「父さん 些少ですが546も足してもらえますか」 フッ化水素酸の瓶を持ちながら染五郎改め幸四郎が言う よかろう 襲名披露も済んだしな HIRAKI即酸! 「けおおおおお!!」 「我は…やまたのおろち…」 肩にバンテリンを塗り込みながら 金太郎改め染五郎が言う その芸も極めたか 素晴らしい成長だ 「生贄になってください」 そう言うと染五郎はぽんと鼓をたたき 自分の集めた仏像を介して諸仏を呼び出しぴるす君を彼岸へ追いやった 「gff...」と聞き慣れた声がしたようだが何だろう? さすがに舞台の外までも三代共演は疲れるな いや弱音を吐いてはならない これからまだ会得するものもあろうから そう私は固く誓うのだった  * 「TSJKで女になるんですけお!!!」 いきなりピピニーデン君が血迷ったことを言い出した 大体にしてピピンアットマーク君は雌雄同体だったのではないのかね!!111 それは君の普段の性生活が物語っていよう!!111 zbzbとけつまんこいしてるではないか!! 「けつ『まんこ』い」という言葉からしてもペトログラード君は雌雄同体だ!!890!! よって不必要!!以上だ!! 「でも湯川にこれ以上襲われたくないんですけお!!!女になれば襲われないんですけお!!!」 必死にすがりついて来るポルコ君 ああ負けたよ…望む通りにしてやろう 柴四郎!!ちょっと手伝ってくれ!! そう言うと私は注射器に染太郎の持って来た濃硫酸を詰めてポタラ宮君の尿道と蟻の門渡りに注射 これで跡形もなくポロン君の逸物は消滅…どころか尻まで貫通したではないか!! そして蟻の門渡りが裂けてしまった!!931! 一体誰がこんなことを… 「gff...(おやおや変わったところにけつまんこがありますねこのぴるす君は…ちょっといただいて行きます)」 湯川君がそう言うので引き渡す 何だやはり雌雄同体ではないか…人騒がせな男だ  * 私は松本白鸚 探検家で歌舞伎役者だ まさかこんなところでぴるす君に会おうとは どうせ鍵最高君辺りが私がわざわざ流した与太話を聞かせたのだろう 全く悪辣なクソコテだ さてどうするか 話し合いでは無理そうだし力では多勢に無勢 ここは卑怯だが文明を見せつけ驚かして…臭い!! 何だこの臭さは!! 見れば部族の長とおぼしき男がぴるす君とまぐわっているではないか!! 見損なったぞぴるす君 それでも文明人か!! ええい文明を見せつけてくれる!! 私が元禄の見得を切るとその場の全員が一気に爆発 赤と緑の肉塊が転がった しかし緑の肉塊はgffと赤のそれを襲っている きったね 私はラマンチャ砲で聖地ごと爆破するとその場を後にした かくも人種交流とは難しいものなのか 私は改めておのれの無力さを噛みしめるのだった  * こんにちは 料理研究家で歌舞伎役者の松本白鸚です 今日はレッドチキンカツ丼を作ります まず肉ですがこれは繊細なものをお使いください ヤメテクダチヤメテクダチ しばらく暴れますが気にせず皮を一気にはぎましょう ケオオオオオオ‼︎ 次に衣とパン粉をつけます この時水の代わりにバンテリンを使うのがこつです そして890度の油で揚げ 激辛ソースをかけます まろ子頼む (スイとデス・ソース「16 MILLION RESERVE or 6 AM RESERVE」をかけるまろ子) 1600万スコヴィルとは刺激的だな これを丼いっぱいのご飯の上に乗せるのですが 臭みが全く取れないので石投げの見得の要領で速やかに捨てましょう このカツ丼は似たものがかつやで食べられます バンテリン持参の上かけて食べるといいでしょう 松本白鸚でした ○令和元年 実に驚いた話なのだが、古代の日本語には今のハ行に当たる音がなかったらしい。その代わりあったのはパ行だった。しかもこれがバ行の清音だったという。確かにバ行とパ行は舌の位置が一緒、一方ハ行は口の中を忙しくさまよっている。その後ファ行が出現、いろいろからみ合って出来たのが今のハ行という。だからハ行だけ「半濁音」などという妙なものがあるのだな。 この事実を知った私は、早速歌舞伎日本語音韻学的側面から、パ行にゆかりの深いぴるす君を集合させた。ぴるす君、ぴゃるす君、びるす君、びゃるす君、ふぃるす君、ひるす君、ひゃるす君。ついでに古代日本語の「へ」に甲類・乙類の2つがあることを踏まえ、へるす君とべるす君とぺるす君(甲類)、へるす君とべるす君とぺるす君(乙類)も作った。 …臭い。13人も集まるとさすがに臭い!!誰だこんなものをたくさん作ったのは!! よく考えればぴるす君の同類を集めたからといって、日本語の音韻史が解明されるわけがないではないか。 私はバンテリン・パンテリン・ファンテリン・ハンテリンがそれぞれ入った水槽に彼らを押しこめて溶かすと、改めて日本語史の遠大さに思いを馳せるのであった。 ◯令和2年 私の名は松本白鸚、勤王精神あふれる備前国児嶋郡の歌舞伎役者だ 卑流子帝が捕縛され隠岐へ流刑にされると聞いた私は怒りに燃え、お助けするべく密かに出兵した しかしうまく行かず、ついに美作国は院庄まで来てしまったのである 「gff...」「gff...prskn...」「やめてくだち!僕は日本のクンリニンなんですけおおおおお!!」 緑の鎧を着た武将たちの中、帝の苦しむ声が聞こえる…が、余りの人数差に救出は無理だ かくなる上は、せめてこの白鸚のような忠臣がいることをお知らせせねば そこで私は一人夜中に館に忍び込み、白桜に十字詩を刻んだ 「天莫生臭男 時非無傾者」(天臭男を生かすことなかれ 時に傾き者無きにしも非ず) このあと私たちは、翌朝この詩を見かけた帝が崩御なされたと知らされた まるで見得を切られた時のように爆死したとか…私は肩を震わせ涙を流した 【リカオン】 ○平成29年 群れなす尻共 またこのパークに来たりて 穢らわしき姿を晒しぬ リカオン再び幼きフレンズを護りて 迫り来たる賊と闘えり この臭き尻共 何の故ありてか 執念く仇なさんとするや リカオン冷静に思うに こには訳ありやと 顧みるに尻共 このパークを襲う由 基より無からん されば襲うに非ず 何ぞ求むる物ありて来たるか 嗚呼これすなわち母ならん 尻に母は無し されどもこの世の全ては 母を求むる運命 我こそは母 この天地生きとし生けるものの母なり しからばこの尻共も また我が娘ならん ここに憐れみて授乳を試み 尻に乳を撒けり 足らぬと見れば タライを出だして乳を貯め 尻共を招きて そが頬を優しく洗えり フレンズ逃げ去るも顧みず リカオンひたすらに尻を愛でたりき その母性 正に天地にあまねし  * 「どうやらヒトは 黒セルリアンに水をかければ倒せることを知っていたらしい」 ある朝 ヒグマ先輩が険しい顔で衝撃的な事実を明かした 何でも図書館から昨日出て来た資料が証拠という 「ヒトがフレンズの格好をして芝居をしたらしいんだが その中に水をかけて 黒セルリアンを倒すという場面があるんだ 芝居とはいえ 何の根拠もなしにそんな場面は作れないだろう」 メモを渡された どうやら芝居の概要が書いてあるらしい へえ シロナガスクジラは「お母さん」と呼ばれて 私お母さんだった どうしたの ヒグマにキンシコウ かちんと固まって ああ…お乳がほしいのかしら それともだっこ? いや これはお風呂かしら? 二人とも汗かいてるし タライを出してお湯を張る うん人肌 母性の前には物理法則なんて無効 随分暴れるわね お風呂が怖いの? きれいきれいするだけよ 完全に脱がせて 今度はサンドスターから石鹸とタオルを錬成 体の隅々までつるつるのぴかぴか そのままタオルにくるんで授乳すると寝ちゃった まだまだ幼いのね キンシコウはどうしたのかしら 逃げたの? お風呂が嫌なんて困った子ね 足跡がゆきやまちほーへ続いてる タライで一滑り 待っててねかわいい娘 ごいんっ 眼の前が闇に 眼を覚ましたら温泉旅館の中だった 何でこんなところに 何でも「たんく」という お湯をためる塔にぶつかったらしい あそこだと示されたが うわでかい こりゃ気も失うわけだ ところで何で 木くずがばらばらに散らばってるのやら  * そういえば何だっけ ヒトが芝居でどうのこうのでしたっけ どうしたんですか先輩たち そんな身構えて まあいいや ヒトがフレンズの真似をしたなんて 驚きました それも黒セルリアンの存在まで知っていて 使ったなんて ふむふむ 資料によると随分芝居をしたヒト達は苦労したんですね 随分嬉し泣きして 子供みたいに あっお母さんだった私 キンシコウ 今度こそお風呂ですよ 嫌がっちゃいけません なぜ泣いて逃げるんですか あ そうか 嬉し泣きなのね ごめんなさい お母さん勘違いしてたわ さあ この母なる海のようなタライで ジャブジャブ洗ってあげるわ ずげしっ 頭が痛い ううん… あれ? 随分キタキツネ機嫌悪いですね ええっ 間違えてゲームのコードを踏んだ? ごめんなさい ところであんなタライ 温泉にありましたかね  * この頃 私について怪文書が出回っているらしい 先輩方に見せてもらったが 思わず昏倒しそうになった 何なんだこれは? 私が全てのフレンズの「母」だと言い張っている あまつさえ現実に有り得ないことを 平然と起こしている 挙句の果てには これはもうホラーだろうという話まで 料理を作りに行くヒグマ先輩と一緒に 博士を訪ねて訊いてみた 「『ぱられるわーるど』が 関係しているかも知れないのです」 「この世界と平行して存在する 別の世界のことなのです」 つまりはその中にいる私の姿が これだというわけですか でもどうして それを書いた文書がここで流布するんでしょう 「それは大急ぎで調査中なのです あちらから来たものとなると パークの危機につながりかねないので」 確かに同じようにしてセルリアンがやって来たら… 怖気が走る それにしても 先輩と博士たちがまるで母と子に見えるというだけで 「私は母だ」と言い出すなんて 無茶苦茶もいいところだ まあ言われてみれば あの様子は母子でもおかしくはなさそうだが いや待てよ…ここまで常習化すると 母子と言ってもあながちおかしくない 母か…母…何かおかしいが止まらない 母…母…母…母… あ 私お母さんだったわ こんな自明のことを忘れてたなんて さあヒグマおいでお乳の時間よ おねむもしましょうね あらコノハちゃんどうしたの そんな大きな棒を持って 危ないわよ離しなさい ほらトスッ 「…やはり駄目でしたか 『ますいじゅう』の弾が減るばかりです」 「世界線の移動が必要になりますね」 「やれやれ一苦労です 一度世界を消して再構築させるのですから」 「でもフレンズのためにも 奇怪な世界は消した方がいいのでは」 「そうしないと それこそパークの危機なのですからね」 博士は何やら奇妙な機械と計器を取り出しながら そう答えたのだった  * ふう… おかしなこともあったもんだ いきなり 図書館の庭で倒れていたなんて 博士たちやヒグマ先輩がいなかったら どうなっていたことやら …あれ? 妙な気配がするぞ セルリアンの可能性が高い ゆっくりと近づく そこで私が見たのは とんでもない光景だった ヒト!? ヒトが2人もいる!? 片方は顔を真っ赤にして 大声で説教をしている もう片方は すくみ上がって無言だ あれ? 「でち」って言ってないか? あの口調は確か… ジョフのものだ …何だか私も あのヒトのように腹が立って来た ちょっとジョフを 連れて来るとするか  * この地に生くるフレンズは 星の砂こそ親なりき 野に森に暮らす獣共 人に変わりて幾年(いくとせ)ぞ されど昔の親はこれ 思い出すだに難かりき 何方(いずかた)知れずその姿 生くるや知れずその身をも 嗚呼悲しいかな母の無き 嬰児(ちのみご)の如き同胞よ 我ぞ汝等(なれら)の母なるぞ 我が腕(かいな)に飛び込めよ 思えば我らフレンズを 生みしは大地の力なり 大地はこれ母ならん 我と同じ母なりき 大地は地球を母として 地球は宇宙(そら)を母とせり 我もまた母なれば 我やまさに宇宙ならん 駆けり行かん駆けり行かん 光の速さに駆けり行かん 我が娘の呼ぶその許へ このタライもて疾(と)く行かん 乳房は張りて乳を噴き 腕は抱かんと鳴りたりき 奔れ奔れ我が母性 このパークをば覆うべし 嗚呼また山が火を噴けり 星の砂の降りしきらん 娘のまた生まるるに 我が悦びの猛り行く ——セルリアンハンター兼公益法人ジャパリ保護者会会長 ジャパリマザー・リカオン  * いつものように警邏をしていると いきなりスイと空間が縦に開き 中から年輩のヒトが 飛びはねるような妙な歩き方で出て来た 「おや飛び六方をしていたら 異世界に出てしまったようだ 驚かせて済まない 私は九代目松本幸四郎 歌舞伎役者だ」 聞けば「りえん」から来たとか 実に紳士的な人物で敵ではないようだ おわびに「まろちゃ」という お茶までくれた おいしい 「KOUSIROUさん! クンリケンくだち!! ここに来ればもらえるっていうから 来たんですけお!!」 またヒト!? …ってうわっ臭い上に気持ち悪い! 「何だねピピニーデン君!!!!11 突然こんな平和な世界に!!!」 真っ赤な顔をしてKOUSHIROUさんが叫ぶ 自分で呼んだんじゃないんですか 「いいかねペトリ皿君!! 君のような男に空間転移されては迷惑だ!! 聞いているのかねペタジーニ君!!!931!!」 バーン!(発砲音) テリンテリン(薬莢の落下音) いきなりKOUSHIROUさんが銃で 相手を撃った …って殺人ですよ! 「大丈夫だ ぴるす君は無尽蔵に湧いて出るからね 母親も父親もいらずに 時には億単位で生まれる」 母親いらず…? 億単位…? 私の中で何かが閃いて弾けた 私は「母親」と名乗って 他のフレンズを襲っていたと聞いている なら既存のフレンズではなく 億単位で誰かを作れば迷惑ではないのでは? もちろん あの「ぴるす」というヒトはごめんだが 眼から鱗が落ちた スーッと効いて… これは…ありがたい… 「ではこれで失礼 見得を切るから下がっていなさい」 「イヨーッ ポンッ」という謎の音とともに また縦に空間が開き KOUSHIROUさんは「とびろっぽう」で 中に去って行った …さて いいことを教えてもらった では作業にって博士それはトスッ 「ああもう 別世界からの干渉が起こるなんて 思いもしなかったのです」 「どうしましょうか ヒグマたちに渡すにしても 記憶処理が必要では」 「ですね 億単位でフレンズを生み出されてはパークの危機です」 珍しくげっそりとしながら 博士と助手はリカオンを入れた袋を下げて飛んで行った  * 熱中症対策のため 私が木蔭で休憩を取っていると 眼の前の空間が歪み すらりとしたヒトが出て来た 「しまった おかしなところに出てしまった もしや先日父が迷い込んだという あの世界だろうか」 あれ? となるとこの人は KOUSHIROUさんの息子さんかな 「これは失礼 まさか親子二代で驚かせてしまうとは 私は七代目市川染五郎 いかにも九代目松本幸四郎の息子だ」 やはり「りえん」の 「かぶきやくしゃ」だとか その時だった いきなりすさまじい悪臭がした ヒト… いやヒト型のセルリアン!? 「クンリケン… クンリケンクダチ… SOMEGOROUサン…」 ってこれ あの「ぴるす」とかいう人の形してるじゃないか SOMEGOROUさん逃げてください これは私たちしか倒せませんから 「お嬢さんに任せて一人逃げるのは心苦しいが そういうことなら仕方ない 何より私の身に何かあっては 妻も息子も両親もみな悲しむ」 妻? 待った私お母さんじゃないか 母性を直ちに解放 頭に浮かんだ「フッ化水素酸」の単語を唱え 手許に出て来たポリ瓶の中身を セルリアンへ おもむろにぶっかける 「ケオオオオオオ!!?」 とそこにSOMEGOROUさんが 「硫酸」と書かれた瓶の中身をぶちまける 「ケオ…ケオ…ケ…オ…」 死んだ ありがたい 母の想いに感じ入って あえて手伝ってくれたとは 「その液体は触ると危ないから注意して それでは見得を切ろう さらば」 「イヨーッ ポン」という音とともに SOMEGOROUさんは帰って行った それにしても「ふっかすいそさん」 子供たちを守るためにこんないいものはない さっそく母性で量産をはかろう おやコノハちゃんそれドンッ 「また別世界から干渉が… しかもついに毒物まで錬成してしまったのです」 「『ふっかすいそさん』は ちょっとかかっただけで肉や骨が溶ける代物ですから」 「厳重に記憶処理をしましょう そんなものがはびこってはパークが滅亡します」 一刻の猶予もならぬとばかりに 博士と助手はリカオンをつかんで飛んで行った  * 気がつくと ロッジのベッドに寝ていた 何でも無茶なセルリアンの倒し方をして 自爆したんだとか しかしよく異世界のヒトがよく来るな わけが分からない あれ? 何だかまた外から変な声がするな 出てみるか うわっ また「ぴるす」がいる よく湧くなあ 「クンリニンさんと 結婚するんですけお!!」 結婚? いや待てお母さんとしては そのようなパークの性を乱す行為は許せません 母性の力で ワン ツー 天敵を召喚 なぜか緑ジャージの これまた妙なヒトが出た 「湯川」と名札がついている 「gff…prskn…ktmnki…」 意味不明なことを言ったかと思うと… ぴるすにおそいかかって後ろから腰を! わーっ! お母さんそんなことなおさら許しませんよ!! 母性解放! 飛び六方でバンテリンをぶっかけ殲滅! …悪は滅びました やはりここはKOUSHIROUさんたちに弟子入りをってブスリ 「ああもう また記憶処理ですか…」 博士の声が遠く聞こえた気がした  * その日 小さなセルリアンを倒した私は そばの崖を見て尻餅をつきかけた 緑の透明な何者かが 崖からぐいとはみ出している すわ巨大セルリアンと思って近づくと 何とそれは巨大な石 さっそく先輩方と博士たちに連絡を入れ 検分してもらった 「これは螢石という石です きれいなものは宝石としても珍重されます」 「ここのは 残念ながらそこまで行きませんが 眼の保養にはなるのです」 分かったような分からないような でも眺めるだけでも気分はいい それにしてもヒトの文化は面白い こういった石で身を飾るとは 特に夫婦揃ってお金持ちの女性は大好きで って私お母さんだ さっそくあの「ほたるいし」を加工して 母としての証にしよう あのきれいな石なら 娘たちも母を見失うことはないはず 善は急げだ 早く「母」の証を手に入れなければ しかし「ほたるいし」の元へ駆けつけた私の前には 巨大セルリアンが! おのれ この母の邪魔をするとは… 死すべし! 母性解放で 螢石を土ごとえぐり出して 上からどかん! 母気で上空の雲を練り 局地的に「のうりゅうさん」の雲を発生させる! さらには母乳をセルリアンの周りへ筒状に散布 バリアとする! 上空へ大見得を切ると 「のうりゅうさん」の雨が「ほたるいし」へ!! 大量に発生した「ふっかすいそ」により セルリアンは一瞬で殲滅! 母乳のバリアのおかげで 周辺にも被害なし やはり「ふっかぶつ」は偉大だ 母たるもの 「ふっかぶつ」を扱えなければいけないと痛感する 次は「さんふっかえんそ」で セルリアンを火だるまに あれ頭無茶苦茶痛い 気がつくと 温泉旅館の部屋で寝ていた ギンギツネの話によると 自然に開いた穴に「いぬがみけ」していたのを助けられたとか あの「ほたるいし」は セルリアンが飲み込んでしまったという もったいない そんなことを思いながら ゲームのそばを通りかかった私の眼は なぜか「F」と「弗」の文字に 吸いつけられていたのだった  * パークには夏から秋にかけ たびたび「たいふう」がやって来る いつもはそれほど強くないのだが 今年は突如強烈な「たいふう」が直撃 幸い初動が早かったので けが人はなかったものの 被害は甚大となった 殊にじゃんぐるちほーは 河が大増水して岸辺の道が一部変わってしまった 「困ったな 岸の避難路がないと セルリアンから逃げられないぞ」 そう 余り発生しないので普段意識しないが 橋のないここで岸辺は重要なのだ かばんの浮橋は無事だが 一気には避難出来ない どうすれば ヒトは大地を「母」と呼んだそうだが 何と厳しい存在か いやお母さんは私だ 次の瞬間 いきなりじゃんぐるの上の方から セルリアンが大量に湧いて出た かつてない数のセルリアンに 逃げ惑う娘たち しかし陸に逃げ場は…! 私の頭に閃くものがあった 逆に考えるんだ 河を渡せばいい 母性を解放しタライを召喚 河岸で高々と掲げて河へ見得を切る 何と! 東からの大風で河が左右に裂け垣となった!! これなら行ける!! タライを掲げつつ娘たちに向かい 私の後をついて来るように誘導 いちいち声をかける必要はない 母気を放射すればいうことなど素直に聞くのだ  「ママ…」「リカオンママ…ママ…」「ママ…」 みんな早く! 飛び六方でスイスイススイと導き 乾いた河底を歩かせ対岸へ到着 当然セルリアンも追って来る させるか!! 私は河の方を向き直り タライを掲げたまま 手を回して大見得! あな不思議やな 河の水が元に戻り あわれセルリアンは水底へ!! …これこそ母性のなせるわざ そのわざは神のご加護あってこそ そんな声が頭の中に響いて これは…ありがごいんっどこおっ 気がつくと 図書館の庭の「べんち」に寝かされていた じゃんぐるでぬかるみの中 セルリアンと文字通りの泥仕合をして倒れたとか 最近無理して倒れるの多いなあ 先輩にまたこってりしぼられる そう頭を抱えた私が そばの『旧約聖書』と書かれた本の存在に気づくことはなかった  * 博士の頼みで料理を作りに行くと 偶然オオカミさんに会った PPPのデビューで みんなが「でぃーぶいでぃー」に興味を持ったということで これを漫画の材料に使えないかと いろんなものを見ているらしい 今見ているのは 「かぶき」という古い芝居だとか 女の人が悪人をやっつける筋書きらしい 主人公の「ともえごぜん」は 悪人に斬られようとする息子の「よしたか」を助けに 忘れてた私お母さんだったわ しかも娘がどこかで呼んでいる 大あわてするオオカミちゃんと コノハちゃんとミミちゃん ごめんねお母さん行かないと 乳房を左右に開き 母乳を放ちながら 一気に授乳完了 外で今度はヒグマちゃんと キンシコウちゃんが立ち塞がる 左右に分けて一気に授乳 一気に5人を寝かしつけ 張る乳房を抱えて走る 娘のいる方角は艮(うしとら)の方 距離は半里ばかり 鬼門の上遠い 急がないと 果たして見えて来たのは 巨大な触手つき青セルリアン 赤や緑の小さなものもいる 襲われているのは ヤマアラシちゃんにアルマジロちゃん あんな弱い子を…許すまじ! 母性を再度解放しタライを3つ召喚 1つは背中に背負い 2つはひじに下げ呼ばわる 「暫く!暫く! 暫く暫く暫ーくー!!」 花道を大足で小走りでスイスイスイと走り抜け びしりと向き合う 「この地は獣のみにして のけ者おらじと 企鵝(きが)も歌えど 唐土(もろこし)に言う 東夷西戎 南蛮北狄 やはりあるなり 我はパークの母にして 全ての者の母 イヌ科の係累 リカオンの前なり  そこの青や赤玉や 我が娘らを 食わんとするか 母なき妖 母性が前に ひざまずけ 今橋に月を 見るとても 港に日の出は 見るまいぞ!」 口上を聞いてセルリアンが こっちにぎょっと眼を向けて来る  その間に標的になっていた2人が離脱! これで大立ち回り出来る! 巨大セルリアンが放った触手を 背負ったタライで一閃! 小さいのも一気に 石ごとその勢いでババババババババンとはね斬る! そして乳房をこね上げ 3つのタライを揃えて 射乳と打撃で石をテリーンと粉微塵に! 悪は滅んだ 後は花道を引き上げるのみ 母乳を祝砲に撃ちながら飛び六方でってちくり …へっ? 何?何の痛み? というより何でみなさん 両脇に集まってるんですか (しまったのです! 「ますいじゅう」を撃ち損ねたのです!!) (まずいですよ スイッチがまた入りかねません 弾を早く込めないと!) (時間稼ぎなのです ヒグマを呼んで来るのです) え ヒグマ先輩…? ええ分かりました そうやればいいんですね? 「あな恥ずかしや!」 言われた通りに頬に手を当て たたたっと私は走ってトスッ 「今の部分も含めて 記憶処理しますか?」 「面倒になりますがやるのです 一発で仕留められなかった 私にも責任はありますから」 博士たちはそう言いつつ 「リカオンママ在中」と書かれた袋を持って 飛び去って行った  * 「リカオンのやつどこへ行った! 確かそこの林の方へ逃げたはずだ!」 「まさか朝起きるなり スイッチが入ってるなんて…」 どうしたのかしら ヒグマちゃんにキンシコウちゃん 探し回るくらいなら 最初から甘えてくれればいいのに おかしな子たちね もう! そんなに騒がしい子たちは 罰としてお仕置きです! 私は乳房をこね上げると 二人の口に照準を合わせ 母乳を撃った 見事直撃 二人はそのまま眠ってしまった 本当にしつけは大変 …待てよ この撃乳使える 近くに来るとみんな逃げるから 遠くから撃てばいいんだ 「お母13(おかあサーティーン)」の名が浮かぶ よしこれで行こう まずはろっじから あそこは高度と角度がかせげる ろっじの離れの屋根に母性で上ると オオカミちゃんとキリンちゃんを撃乳する アリツカゲラちゃんは 少し面倒くさいところにいたけど 口を開いた瞬間横から撃乳完了 撃乳って素晴らしい いつもなら1人10分以上かかる授乳時間が 10秒で済んだ 次は温泉旅館 旅館に頭を向けあお向けになって 乳房だけ旅館に向け撃乳 今日はすごい 恐ろしいほど照準が合う こんな日がずっと続けばいいのに さてこれで6人 まだまだ先は長い どのちほーへ行こうかしら よしじゃあやっぱり近場でへいげんへ… パアンッ! 誰!? お母さんの邪魔をする子は!? 「私だよよよ… そのせりふは私のものだよよよ」 何ですって!? さっき撃乳したはずなのに! それに今何て!? 「お母さんは 私なんだよよよ」 そう言うや カピバラは眼にも止まらぬ速さで 撃乳して来た! よけたがこの早撃ち… ただ者ではないわ 彼女はもしや… 伝説のガンママ「次天竺鼠(じてんじくねず)」! ここで母の座を譲るわけにはいかないわ 対決せねば 回転草が転がるへいげんで 私たちは向かい合う 緊張の一瞬 そして一気に… へいげんちほーの子たちに 撃乳合戦開始!! 2つの城に白い乳が吹き散らばる 逃げる子たちにも狙いを定め撃乳しまくる! くっ…劣勢! 既に敵はじゃんぐるちほーへ! じゃんぐるはフレンズが多いから 数がかせげるはずだ 水をあけられるわけには 互いの烈しい撃乳で 草木という草木 河という河が乳白色に染まる カウントすると… やはり相手の方が 小兵で小回りが利くだけ多い! まずい このまましんりんちほーへ突入だ …いや待て あそこには図書館がある コノハちゃんやミミちゃんがやられるものですか この勝負 もらった! 図書館に駆け込もうとした瞬間バンッ 「今度は変な技を覚えて来た上 カピバラまで暴走ですか」 「リカオンはいつものこととして 彼女は久しぶりですね やはり警戒が必要では」 「むろんですが スイッチが入る機序が分からないだけに 研究も重ねないと」 そう言った博士のそばには 同じく麻酔銃で撃たれたカピバラが寝かされていた  * 肩でぜえぜえと息をしながら キンシコウはひたすら森の中を走り続けていた 「リ リカオン… またあなたお母さんだなんて!」 「ふふふ… 何を言っているの 最初から私はお母さんよ ほらヒグマちゃんも」 リカオンの手の中で ひたすらに乳房を吸い続けるヒグマに 彼女は戦慄した 「さあ おいで 早くおいで… 自分に素直になって ほら…」 母性がキンシコウの理性を次第に奪う ついに彼女は屈服した 「ふふっ "BIG MOTHER IS WATCHING YOU"…」 「さあオオカミちゃんにキリンちゃん ジャパリまんよ」「わーい!」 ろっじに響く元気な二人の声 もこもこと次々に食べられて行くジャパリまん 「本当に元気なのね さあ食べたらお乳の時間ですよ」 我先にとアリツカゲラの 乳房に二人が吸いつく もはや昔日の面影はない 「オオカミちゃん 先月の漫画はとーっても面白かったわ ママ感心しちゃった」 「ママありがとう! 大好きー!」「ずーるーいー! 私もほめてー!」 「分かってるわ…うふふ… "BIG MOTHER IS WATCHING YOU" ですよ…」 「お風呂よくがんばって入ったよよよ お母さんうれしいよよよ」 「うん もうボクお風呂めんどくさくない! お母さんがついててくれるから!」 「さすがお母さん お姉ちゃんの私ですら 出来ないことしてくれるなんて…」 湯上がりのほかほかとした体で キタキツネとギンギツネが言う 「ありがとうなんだよよよ カピバラお母さんにおまかせなんだよよよ」 「おかーさーん! だっこしてー!」「私には 膝枕してー!」 「急がないんだよよよ… "BIG MOTHER IS WATCHING YOU" だよよよ…」 「さあお乳の時間だぞー!」「こっちもおっぱいの時間なのですぅ!」 へいげんにオーロックスと ヤマアラシの声が響く 「ママァ… 甘えさせてー」「お母さん 私にはあなたがいないと…」 百獣の王と草原の王が 恍惚とした表情で対照的な二人の乳を吸う 「あははー! みんな元気だねー! ぴょんぴょんしてお母さんと競争だよー!」 あちらでは アカカンガルーと脚自慢のフレンズたちが 大騒ぎ 「「んふっ… "BIG MOTHER IS WATCHING YOU" だ(なのですぅ)…」」 「さあっみんな 今日のライブのごほうびに いつもよりたくさんお乳あげます!」 マーゲイが鼻血を垂らしながら PPPの5人を誘う 「お母ーさーん!」「ふるるー」「ほらー けんかしちゃ駄目よ?」 こはんの家の床下の檻の中 ビーバーが胸をはだけてささやく 「プレーリーちゃん またカワウソのところへ? あの子とは遊んじゃ駄目って言ったッスよ」 「でも母上… カワウソ殿は楽しい方で」 「いいんッス あなたはお母さんのことだけ考えてれば ほら抱きしめてあげるッス」 「「うふふ… "BIG MOTHER IS WATCHING YOU" です(ッス)…」」 「みんなー! だっことおねむの時間だよー!」 カワウソが 今日も元気にぶんぶんと手を振って 娘たちを呼ぶ 「お母さん 半日でもう5回以上渡して疲れたー」 真っ先にジャガーが ころころと膝許を転げ回る それを真似して他のフレンズも ごろごろと転がる 「たーのしー! "BIG MOTHER IS WATCHING YOU" だよー…」 「や…やめろおおお! スナネコ 正気に戻れ!」 「ふふっ でも体は正直です」「ス…スナ… いやママ…」 さばくでは砂嵐のごとき可能性を秘めた スナネコのマイペースさにツチノコが陥落した 「…ママ…ママが すぐそばにいたのだ 気づかなかったアライさんを 許してほしいのだ」 こちらでは アライグマがフェネックの蠱惑の視線に籠絡された 「あー… "BIG MOTHER IS WATCHING YOU" …まんぞく」 「ふっふっふー "BIG MOTHER IS WATCHING YOU" だよー…」 「さあみんなー お乳を飲んだ後は お水も飲むのよー」 さばんなの水場では カバが盛大に母性を発揮していた 「あらあらぁ ほらほら割り込まない お水は逃げないのよー」 「でもママー お水がもう少なくなってるよー」 「大丈夫! ほら! お水が増えたー!」 「水遊びー!? やるやるー!!」 「うふふ… "BIG MOTHER IS WATCHING YOU" ですわ…」 「じょ 助手… 正気に戻るのです! 私は娘ではありませんよ!?」 「博士… 分かっているのですか 元の動物だった頃は 私の方が大きかったのですよ」 「そ それがどうしたのです! それとも恫喝ですかそれは!?」 「ともかく授乳させろなのです だっこさせろなのです それ以前に母と認めろなのです」 「やめるのです! 早まるななのですー!!」 「"BIG MOTHER WATCHING YOU"… 博士にはもっときつい『矯正』が 必要のようです」 「…はッ!? ゆ 夢だったのですか!?」 そこで博士は急速に意識を取り戻した 右ではさっきまで襲いかからんとしていた助手が寝ている 「はあ いくらリカオンママ問題に手を焼いているとはいえ 行きすぎた悪夢なのです」 額に浮いた冷や汗をぬぐい 便所へ立とうと博士は部屋の扉に手をかけ廊下へ出た その眼に飛び込んで来たのは… 赤地にリカオンの顔と "BIG MOTHER IS WATCHING YOU" の文字が書かれたポスターが並ぶ光景 その中を 明らかに特徴的な耳のフレンズが ボスとともにゆっくりとこちらへ歩いて来る姿 ——それらを認めた途端 博士は再び意識を手放した  * 「朕母なる神の恩寵の許 母性を永遠に解放し 大ジャパリ母性帝国母帝リカオンとして即位せり 臣民みな朕の大いなる母性に従いて娘となるべし 御名 御璽」 ろっじにいきなり 口の周りを乳白色に染めたヒグマがやって来て 「勅書」を読み上げた それに続いて キンシコウを裸の乳房にぶら下げたまま リカオンが堂々と現れる 「朕は母帝リカオンなり これよりこの地を帝都とし ろっじを皇宮とす」 かちんと固まったアリツカゲラたちだったが 母性解放と知るや 逃亡を開始した 「朕に逆らうか 丞相ヒグマよ 朕を輔(たす)けて叛逆の徒を捕らえん」 それから間もなく 虚ろな眼で「ママ陛下…」「ママ…ママ」「ママァ」と 口から母乳を垂らしつつ 3人が戻って来た 数時間前 いつもの通り母性解放に乗り出したリカオンは 暴走を始めようとして立ち止まった 先日は「でぃすとぴあ」の真似ごとをしたが 「母」がいっぱい出来ただけだった ならば今度は 自分の国を作ってしまえばいい 確か一番強い国は「ていこく」 これを作れば晴れて全部のフレンズの母になれる そう考えた彼女はヒグマとキンシコウに授乳し 勅書をもって即位したのである ろっじを拠点にしたリカオンたちは 温泉旅館へと進む パークを統一するためには 現政権——図書館政権を打倒せねばならない 勢力を広げて「長」を僭称(せんしょう)するあの2人を倒す これは革命だ 「朕は母帝リカオンなり このゆきやまちほーの者ども すみやかに臣従せよ」 「な 何なのよ いきなり! 今度は王様ごっこなわけ!?」 「そういうの ゲームの中だけに してほしいー…」 防禦態勢に入るキツネ姉妹の背後に 忍び寄る影があった 「畏れ多くも母帝陛下に 何てこと言うんだよよよ 素直に臣民になるんだよよよ」 「そんな… カピバラどうしたの!?」 「私は陛下の崇高なる志に共鳴したんだよよよ 今の私は公爵雪山公カピバラだよよよ」 そうである リカオンは元々母性を解放しやすい カピバラを籠絡してあったのだ 「カピバラ 汝に先にその者どもの授乳を命ずる 朕はその後授乳せん」 「御意よよよ 2人とも 飲めば侯爵か伯爵はもらえるよよよ」 しばらく後 「ママ…リカオンママ陛下…カピバラ卿…」という声が響いたのはいうまでもない 「博士ー! 今度はへいげんの危機なのだー!!」 「ライオンも ヘラジカも あっさりやられちゃったよー!」 こはんに アライグマとフェネックが駆け込んで来た ここは現在 図書館政権の亡命地となり 帝国軍から逃れたフレンズが避難している 「あの2人も!? 一体伏兵は誰だったのです!!」 「アカカンガルーなのだ! 『こうしゃく』とかいう 偉い立場をもらってたのだ!」 公爵平原公アカカンガルーにより 2人は圧倒的な母性で袋に押し込められて寝かしつけられた リカオンはヘラジカの城を皇宮とし 遷都してへいげんを帝都とした 志を同じくする者をあらかじめ臣従させ その助けで征服 それが帝国のやり方である 図書館周辺でも 既にフクロオオカミが帝国公爵として忠誠を誓っている 亡命の必要があった 「みずべちほーも潰滅だ!! マーゲイもPPPもやられちまったぞー!!」 ツチノコの話だと 苦しまぎれにコウテイに対処を求めたものの 白目をむいてあっさり気絶 母乳を霧状にまかれて陥落したという 「まずいです じゃんぐるちほーに 情報が伝わっていません 早く伝えないと」 「あそこをやられると致命的です! 早く行かねば」 博士たちが大急ぎで飛び立った時には 帝国軍はじゃんぐるに達していた 乳が飛び交い 優しく腕が空中を舞い 子守唄と昼寝の安らかな寝息が響く 大量のフレンズが入口から既に陥落 次々と力を持つ者が軍に加わる 「素晴らしい 母性の勝利ぞ 後はあの『長』なる者を討つのみ」 母乳で胸を濡らしながら にやりと笑ったリカオンの前に カワウソが現れた 「どしたのー? リカオンどしたの? 新しい遊び?」 「遊びではない 朕は母性による 新たな秩序をもたらそうとしているのだ お前も従え」 厳かに言うリカオンに カワウソは石をお手玉しながら 口をとがらす 「えー いばってるー やだな つまんなーい… 石遊びの方がいいよー」 そう言った瞬間 すこーんと リカオンの額に石が当たった 「わーっ!受け損ねちゃった! 大丈夫!?大丈夫ー!?」 そのままリカオンは昏倒 図らずもダビデがゴリアテを討った時のような光景となった 「娘」たちは一気に正気を取り戻して逃走 彼女は飛来した博士たちに捕縛された かくして 大ジャパリ母性帝国は1日で崩壊  フレンズも「君主」がやられたことで 母性の支配から解放された 「皇宮」にされたろっじとヘラジカの城も 持ち主が支配下から逃れたため無条件降伏 ただしろっじは一部を接収し 戦犯であるリカオンとカピバラたちの収容所となった もっとも本人たちも一切記憶がなく なぜ監禁されたのか分かっていないようだが 「罪を問うことは不可能ですが 危険なのでしばらく入れておくのです」 リカオンは自分が首謀者であったことなど忘れ 涙ながらにヒグマたちを呼んでいるという 「ついにここまで来てしまいましたか まさかパークの『こうあん』を『かくらん』するとは」 「こう手を変え品を変えでは対処しかねます いっそハンターを罷免し 監禁しておいては」 「それはいけません フレンズは自由でなくては それにヒグマたちより嘆願書も出ています」 「散々被害に遭っていながらこりないやつらです でも大切な後輩なのですね」 肩をすくめる博士と助手 当分この問題は解決しそうにないと 他の一同も肩を落とした ちなみにクーデターを瓦解させたカワウソには 褒賞に3ヶ月分のジャパリまんが与えられた  * 今日も日差しがきつい 「ぼうし」がほしいが 頭の耳があるので無理だ そういえば かばんの「ぼうし」 あれは「がいど」のものだと聞いた ここで昔お客を何人も率いて 案内していた人たちだという お客さんが後をぞろぞろって鴨のお母さんみたい 待て私お母さんじゃないか その時 港に羽のついた帽子をかぶったヒトの姿が見えた かばんかと思ったが背丈が違う 眼鏡で緑髪の女性… 聞いたことがある 「がいど」のミライさんという人だ なぜここに ん? そうだ あの人も私の娘なのでは いや娘でしか有り得ない 帰還した娘を歓迎するため 私は走りながら乳房を出そうとした 「ああっ 第一フレンズさん発見です! この子はリカオンさんですね!?」 後ろから声!? いつの間に背後を取られたんだ!!? しかもじゅるりと よだれの音が… 「そーれ… んんんんんんーっ!!」 あ痛たたたたた! 耳をくわえられて目一杯吸われてる!  「ふぅ… フレンズさんのお耳は 誰のをいつ吸っても美味です」 きらきらと輝きながら 恍惚として言うミライ いつもなら再教育するところだが 恐怖が先立って何も出来ない というかやっても絶対通じない 腰を抜かしていると 地面が大きく揺れ 何ものかが現れた 巨大セルリアンだ! 最近のものでは一番の大きさ 気を持ち直し 母性と母気を練り直す…間もなく ミライが大きな缶を持って来た 「出ましたね… あの日の雪辱です! 六フッ化タングステン配合剤『セルリツブレール』!」 威勢よく言うや 一気に「ほーす」から薄黄色の液体を セルリアン目がけ放射する 気体となったそれを浴びたセルリアンは ぐしゃっと岩でも落とされように潰れる さらに内側が溶けたかと思うと 一気に砕け散ってしまった 「だから言ったんです フレンズさんたちが避難した後とはいえ あんなもの——三フッ化塩素を使うなんて! 爆発して燃えたら元も子もないじゃないですか」 開いた口がふさがらない私の前で ミライはつぶやく これは… これは「娘」じゃない! 「娘」を超えた何かは お母さんの管轄外です! 「…さあ リカオンさん 邪魔者もいなくなりましたし 改めてお話しましょう」 にへらぁ…とした顔で ミライがそろそろ近づいて来る 「お話」の雰囲気じゃないこれ! 「fff…lycaonsn…」 ——そう彼女の言葉を空耳しながら 私は意識を手放した  * 胸からタライをひり出せば 母性が鳴りますキンコンカン オヤオヤ××伏字なり メメクラゲのフレンズか 義侠心は一言だ 「搾乳機は一体どこだ!」 乳腺の束を娘の口に スーダラスーダラ土砂っ降り ヒグマはシリツで乳の棒 キンシコウにゃ乳袋 コノハとミミはクーパー靭帯 可愛い娘にべべ着せる ハハーノンキダネー 帝国議会は図書館です タライ鳥船子を狩って キャベツはどれもコウノトリ ボスをかじれば平野水(ひらのすい) 顎関節がパイノパイノパイ 泉は厠(かわや)にありますよ なるほどダダがスイと出た ——セルリアンハンター兼公益法人ジャパリ保護者会会長 ジャパリマザー・リカオン  * ——私はキタキツネのお姉ちゃん これは揺るぎない事実 当然妹はかわいい 今日も朝からいっぱい愛情を込めてだっこしてあげた ついでに尻尾ももふる ああっ…自分にもあるけど この子のは格別…! 「し…尻尾はやめて… さすがに気持ち悪い…」 何か言ったけど聞こえない 嗚呼…姉というものは実に尊い 親はいなくとも こうやって一人の子に愛情を注げるんだから だけどそれを邪魔する者がいる あのハンターのリカオン 最近いきなり「母」を名乗っては フレンズを勝手に「娘」にして振り回してる 一時は妙な力でパーク全体を操り 公安を攪乱する存在として監視されてるくらいだ 当然私たちも被害に遭った 私のかわいいキタキツネも 「母」なんてしょせん僭称に過ぎない 何の正当性やあるだわ 「さあカピバラちゃん… お母さんのお乳よ」「助けてだよよよー!!」 噂をすれば影! リカオンが旅館の中に入り込んで 母乳をカピバラに与えている 部屋の場所が悪い このままでは雪隠詰めで 私もキタキツネも ほぼ間違いなく被害に遭う ——おのれ賊(にしもの)! 撃ちてし止まん! 私はぼきりと拳を鳴らすと 狐六方で現場へ走り出した 部屋に入るや 私はジャンブで背後からリカオンを押さえつける 「ありがとう 助かったよよよ!」 早く逃げて! この賊は私が討つから! 「…お母さんの邪魔をするなんて いけない娘…」「はなから娘なんかじゃないわ」 次の瞬間 リカオンの顔が真っ赤に染まる 予想通り 「娘」なのを真っ向から拒絶すると 激昂すると聞いてたけどほんとね 引っ張って行こうとするのを振りほどき 自ら外に出る 「そんなグレた子は…再教育よ!」 高速で回るタライが私にたたきつけられる 「なっ…毛皮がむけない!?」 そうよ 私は「姉性解放」によりタライを克服したの そのうちにタライの方が削れ始め ついには割れてしまった 「こしゃくな…ならば!」 リカオンは天に手をかざし何かを練る動作に入る 私はそれを一瞥すると 荒ぶる鷹のポーズから 地に向けて力を練る 彼女の「母気」と対抗する私の「姉気(しき)」が 天地を衝く そしてついに… 「…うわあああっ!!」 リカオンが吹き飛ばされる! 今よ! 大見得を切り天に穴を開けるや 冷水と温水がどばあっと降り注ぐ! リカオンはあっけなく気絶した …異世界の歌舞伎役者さんに習った技 すごいわね とりあえず部屋に運び 鎮静剤を飲ませて寝かせておいて迎えを待つ 案の定探していたらしく ヒグマとキンシコウがやって来て回収 平謝りが痛々しい この後も博士たちのところで同じことになるんだろう 気の毒だわ 何とかしないといけないわね このままだとキタキツネもいつか本格的に傷つく 無辺の愛を持つお姉ちゃんとして 出来ることは… 今のところあの子に対応出来るのは 博士たちと私くらい …なるほどアイディアがスイと出た 先回りすればいいんだわ リカオンがフレンズを「母」と主張する前に 私がその子の「姉」と宣言すればいい そうすれば被害は防げる 何せ私はあの子と違って生まれながらの「姉」なんだから そう…これでパークが守れる これは…ありがたい… ——その姿を見たカピバラが 玄関前で固まっていることに 彼女が気づくことはなかった  * 秋も深まりつつある9月の末 リカオンはぼんやりと日の出港を流していた いつもの警邏ではない ただただ彼女は歩き続けたかったのだ ——「園長」が首になった 何があったか分からないが あんないい人が…… 外の世界の水主(かこ)どもが伝えたのか 海のフレンズからそんな話が入って来た 最初は耳を疑った ヒトはいないものと思っていた上 そんな責任者がいたなどとは 「園長」は精力的な人であった パーク中を飛び回って文字通り寝る暇も惜しんだ このキョウシュウが閉鎖された後も 出来るだけ残りの地域を維持することに努めた ……だが 経営会社のいざこざに巻き込まれ 彼は馘首(かくしゅ)されてしまった この話にリカオンはひどく胸を痛めた おかしな話である 顔も知らぬのに 「『けものはいてものけものはいない』……それがこのパークじゃなかったんですか」 リカオンは誰にともなく問うた 答えるは波の音ばかり 誰にも言わぬが 実はリカオンにも「のけもの」の記憶がある フレンズになる前 群れからはぐれた いや 事実上置き去りにされたのだ 雌で子供を作れるのは1匹だけ その他など消えたところでどうでもいいわけである 「それが今では『のけもの』にならずいるのに ……みんなの役にも立ててるはずなのに」 伝家の宝刀 ワン ツー 思わず敵もいないのに軽く撃ってみる 堤防とペーヴメントを打った手を振るって 寂しそうな笑みを浮かべる ——旅立ったかばんとサーバルたちは 息災だろうか? ふと海を眺めてみるが 折から立った霧で水平線はおろか 岩礁さえ見えぬ 「『けものはいてものけものはいない』……それがこのパークでしょう?ねえ?」 海のかなたにいるはずのフレンズ——いや「同胞(はらから)」に問う ——みんな帰って来るだろうか?帰って来られるだろうか? ぼろぼろと リカオンの眼から涙がこぼれ落ちる そこには猛々しいハンターなどではなく 一人の手弱女(たわやめ)がいた からり からり という音とともに 夢がこぼれ落ちて消えて行く 全ては板に刻まれた幻を映し出す 走馬燈の夢芝居か——  * この日パークは 再び大混乱に陥っていた リカオンが「神日本妣姫尊(かむじゃぱりははひめのみこと)」を名乗り 「娘」にならぬフレンズ——「まつろわぬ者」を平定し始めたのだ 「神武東征」ならぬ「リカオン東征」の勃発である これに対し真っ先に叛逆の狼煙を上げたのは ギンギツネだった 直ちに姉性を解放 カピバラとろっじの3人組を「妹」にすることに成功した しかしここで歯車が狂った へいげんで「妹」の人数を稼げなかったのだ 何とかヘラジカとライオンたちを「妹」にしたが ライオンの館は取られてしまった 保護者性解放に関してはあちらに一日の長がある うまくいかない 博士たちの図書館政権は こはんへ亡命してしまっている状態だ 密使を飛ばそうにも 空からでは目立ち 陸からでは道が悪すぎて無理だ 最低でもあの2人を「妹」にすれば こちらの勝ちも同然なのに その間にリカオンは ライオンの館へアカカンガルーの手引きで堂々と入り 「平原草江宮(へいげんくさえのみや)」なる行宮(かりみや)とした ギンギツネはその姿を忌々しい気分で見ながら 自軍の立て直しを始めた 草江宮からさばくに至る途中の小高い丘の裏に 姉気を張り巡らし陣を張る ついでにすぐそばにいたフレンズも 「妹」として徴用し人数を増やす 張り終わった頃 リカオン軍が気づいて出兵して来た 迎え撃つのみ ここに「孔舎衛坂(くさえさか)の戦い」ならぬ 「草江坂の戦い」が始まった 「パークの保護者は我一人のみ 爾(おれ)其を偽れり」 「馬鹿言わないで 保護者は一人と限らないわ 『姉』だって保護者でしょうが!」 それを合図に 再び母気と姉気の激突が開始される だが… (まずいわ この子の母気 前より強大になってる) このままでは苦戦を強いられる 絶対倒れるわけにはいかないのに …なるほどアイディアがスイと出た 自陣からミナミコアリクイを呼ぶ 「な…何だよー! ギンギツネお姉ちゃんに何するんだよー!」 その瞬間 リカオンが顔に血を上らせ ギンギツネを睨んだ 挑発成功である 「娘」の最有力候補をライバルに取られて 冷静さを失わないわけがない 直ちに「ふっくらの舞」を舞い 天に大見得を切って うどんのつゆを雨あられと降らす 舞に気を取られたリカオンは 見事に裏をかかれてしまい だしの香りの中倒れ伏した リカオンと「娘」たちを縛り上げて 捕虜として連行する 「キタキツネ 賊は討ったわ 『妹』たちと一緒にお祝いしましょ …キタキツネ?」 ギンギツネの明るい声に キタキツネはじと眼で返した 「前から思ってたけど ギンギツネって変 何かやだ」 何かやだ 何かやだ 何かやだ… 唐突な拒絶の言葉が彼女の頭の中を駆け巡る そしてそのまま喀血しながら ギンギツネはその場に倒れ伏した その後 2人は博士たちによって回収され パークの原状復帰も行われた リカオンは戦犯ということで 前回の暴走と同じくろっじにしばらく監禁処分 一方ギンギツネは暴走を止めた功績を認められたものの 「姉性解放」の危険性を鑑みて 保護観察処分となった (もう姉性解放なんてこりごり… キタキツネ…お願いだから口きいて) よそよそしい妹に涙しながら 褒賞のどん兵衛をすするギンギツネであった  * リカオンのじゃんぐる・さばんな討伐の報に ギンギツネは驚愕を禁じ得なかった あらかじめ知っていれば 水際で止めることも可能だったろうに ——ギンギツネはほぞを固めた とにかくあちらからリカオンを引き離さねば それもなるべく遠く さらにヒグマたちに引き渡せる場所で討つ 戦闘要員は自分だけ 必然的に旅館を戦いの場とすることになった ただし姉性解放は使えない 先日使った結果キタキツネに嫌われたからだ その代わり知略をめぐらし 罠にかけることにした ちょうど最近作った新しい露天風呂の前に 大きな落とし穴を作り 「先日の戦いの講和のため招待したい」と ハンター経由で手紙を送る そうすれば敵を「娘」に出来て一石二鳥と リカオンは喜び勇んで来るはず そして風呂へ入ろうと近づいたところで落とし穴へ落とし ママ状態を解除する心算だ 単純な作戦であるが ギンギツネはこれに賭けることにした 万能感に酔っている者ほど 案外あっさり足をすくわれるものである ギンギツネは周囲のフレンズと協議の上 自らヒグマに手紙を渡した ママになっていないか危惧したが どうやらそうではないようだ まずは一安心 それからしばらくして リカオンが姿を現した ギンギツネは落とし穴の前に立って にこにこと風呂へと導く そこで異変が起こった リカオンの後ろからハンター含むたくさんのフレンズが現れた いずれも「ママァ」とうわごとのように言いながら 胸をはだけている 「ギンギツネちゃん… せっかくのお湯なんだからあなたから入りなさい」 そう言いながらリカオンは 「娘」たちと一緒になってぐいぐい乳房を押しつけて来る しかも信じられないことに そこには妹のキタキツネも混じっていた 「ギンギツネ ママをはめるなんて駄目だよ… ボク告げ口しちゃった」 妹の「娘」化と密告! ショックからギンギツネはバランスを崩し落ちてしまった 身動き出来ないまま 穴の中でキタキツネと向き合う 「ギンギツネ ママは偉大な人だよ ボク娘になれてとっても幸せ」 恍惚とした表情で光のない眼のまま語る妹に ギンギツネは引きつった 「一緒に娘になろ? 嫌なことなんかみんな忘れて 頭がすっきりするよ…」 そう言って乳房を無理矢理ギンギツネの口に押し込み 授乳を開始する ——「連鎖堕ち」 そんな言葉を頭に浮かべながら ギンギツネは意識を失った  * 博士と助手が いきなり倒れて寝込んでしまった 本や資料の整理にかまけるあまり 過労に陥ってしまったとか 長が病気というのは大事だ さらにセルリアンに襲われでもしたらしゃれにならない 案の定私たちが 護衛のオーダーを受けることになったが 護衛と図書館に通ずる場所のセルリアン掃討 両方をやった方がいいとの話になった 確かに元を絶てば来るわけもないし合理的だが 少々心細い話だ 気を取り直し セルリアンを掃討していたのだが こういう時に限って あちこちでセルリアンが出て走り回る羽目に しかも逃げてしまわれ空振りばかり 正直オーダーきつい さらにヒグマ先輩が看病のため抜けると キンシコウ先輩がその代わりに出る必要がある ちほーが離れていてもすっ飛んで来ないといけないため 疲労困憊だ 結局その夜はキンシコウ先輩と野宿に 博士も助手もヒグマ先輩もどうしてるか心配だな… いや心配して当然じゃない 私ママだもの この状況で娘たちの面倒を見ないでどうするの 特にコノハちゃんとミミちゃんは病気 つきっきりで看病しなきゃ 私は騒ぎ出したキンシコウちゃんを授乳して寝かせると タライでスイと飛び図書館へ向かった 到着するとヒグマちゃんが 起きたままで入口に座り込んでいる いけない子ね 夜はおねむの時間よ? あっ…胸が異様に張って来た 着陸してると間に合わない 上から霧にして一気に散布 こういう授乳の仕方は不本意だけど 寝てくれたから結果オーライ 中に入り二人の部屋へ とりあえずだっこと授乳して安心させないとね とその時 便所の近くで二人とばったり出会った ちょうどいい あれ? 何だか様子おかしい 眼があらぬ方向に泳いでる 「四神が入って来て 電電公社の社歌を歌いながら足踏みしているのです!」 「博士! あの胸に白蛇がいるのです! 博士を食べてしまったやつなのです!」 「頭が溶けるのです…! 厚生労働省のせいで…! お前が厚生労働省なのですか!」 「専売公社の樟脳がせんべい食べて セルロイドは自らの静脈管に入るのです!」 支離滅裂なことを叫び 抱き合いながら歯をかちかちいわせ震え出す二人 …ちょっと ちょっと!? あなたたち何言ってるの!? ママ怖いどごっ 「よりによって 一番症状がひどい時に入られるとは思わなかった…」 ばたりと倒れたリカオンを見ながら 青ざめた顔でヒグマは言った 実は博士たちが倒れたのは過労などではなく 一時的に心を病んだためだった リカオンママ問題の悪化と自身が受けた甚大な被害で 妄想が起こる状態にまでなったのだ しかし長の病臥に ハンターが護衛につかないわけにいかない そこで病因であるリカオンを 博士と助手から引き離すために へいげんなど近隣ちほーのフレンズに 嘘の出現報告を何度もしてもらうことにしたのだ 一緒にいる自分たちも振り回されてしまうが 背に腹は代えられない 「…が 甘かった! 申しわけない」 「いやお前はよくやったのです むしろ我々の方が不甲斐なかったのです」 ショック療法というべきか あれから博士と助手は正気を取り戻し 床上げとなった とりあえず今も病が再発しないよう リカオンをなるたけ遠ざけるのに腐心している そんな中二人から妙な指示があった 馬系のフレンズを図書館から遠ざけてほしいと 「危ないのですよ かつて『にーちぇ』という偉大な『てつがくしゃ』が 街中でいきなり馬を抱きしめて泣き出し そのまま狂ってしまったという話があって」 そう言ってぶるりと震える二人に 改めてヒグマは事態の深刻さを思い知らされた  *      母。   抱     擁。  乳 房。  乳 房。    乳首。   乳首。   乳。    乳。   乳乳。   乳乳。  乳乳乳。  乳乳乳。 乳乳乳乳。 乳乳乳乳。 コノハ。  ミ ミ。   睡     眠。      理。 ——セルリアンハンター兼公益法人ジャパリ保護者会会長 ジャパリマザー・リカオン  * 乳部の首の桃色に 風もミルクの母たちよ 恵み豊かなこの母性 我ら授乳しここにあり おお マザー マザー 輝くマザー 古き記憶を新しき 娘に変えて幸せの 子育て始めるこの文化 我ら眠らせここにあり おお マザー マザー 輝くマザー 日に日に続く誘拐に こぞる母力もたくましく しつけは燃えるこのあした 我ら抱いてここにあり おお マザー マザー 輝くマザー 北の港もさばんなの 南の果てもみな娘 旗は母の字この野望 我ら誓ってここにあり おお マザー マザー 輝くマザー * "Ах, я мать." Ликаон говорит. Каждый день она сказает какую ниномарь. Медвежица и Рокселланов ринопитек сдержают её, не могут и кормены грудую ей. "Где мои доченки?" Летея с лоханью, она ищет её дочерей. Нимного погодя, здесь есть Доктор и Помощника. Они выидут на лекарственные травы. "Доктор! Мы оплошаем!" "Бежаем! Скоро!" Но Ликаон не упускает и кормит грудую. Улыбаясь мирный сон доченков, она идёт в библиотеку с них. 《訳》 「あ 私お母さんだ」リカオンは言った 毎日彼女はこんな異常なことを言うのだ ヒグマとキンシコウが彼女を止めるが それも出来ず授乳されてしまう 「娘たちはどこかしら?」 タライで飛びながら娘を探して行く しばらくするとそこには博士と助手がいた 薬草を探しに出ていたのだ 「博士!うっかりしたのです!」「逃げるのです!早く!」 だがリカオンは見逃がすことなく授乳した 安らかに娘たちの眠る姿に微笑みながら ともに図書館へと向かうのであった  * クリスマス・イヴの朝 港の堤防の上に リカオンは一人座り込んでいた 片手には先日食糧庫で見つかった 平たい酒瓶が握られている ♪さよなら涙 この先へ行こう 悲しみをいま 許せるように  この酒「いいちこ」の「こまーしゃるそんぐ」が リカオンは気に入っていた 秋のある日 園長罷免の報にくずおれて迎えた朝 あれから話し合いの席が再度設けられたと聞いて 彼女は元気を取り戻した だがだからといって自分たちが口を出せるわけではない みな円満解決を祈るしかないのだ しかしリカオンは この祈りがいつか届くと信じてやまなかった ♪心がいつも 心であれば かならず届く 祈りはいつか… ——そう 祈りはいつか—— リカオンにとっては その励ましこそが一番のプレゼントであった——  * 「くりすます」が来て パークはちょっとしたお祭りムードだ この日は「いえす・きりすと」もしくは「いいすす・はりすとす」という偉い人の誕生日だとか 神様の言葉を伝える役割を持った人で もう2000年以上も前の人らしい 聞けば神様が「まりあ」という人を妊娠させて生ませた まさに神の子なんだとか ということは私が妊法で自ら妊娠するのは 神様のおかげ? こうなるとフレンズは 四神と私との子供ということになる そして「まりあ」は 「せいぼまりあ」または「しょうしんじょまりや」として崇拝される 分かったぞ 私は崇拝されなければならないんだ それが母の務め 直ちに胸を寄せて上げ 母乳を天高く吹き上げて雲を作り雪を降らせる こうすればじきに 娘達は私を崇拝するようになるだろう 「ママ…」「ママ…」「リカオンママ…」 そら来た …ってあれ? 何その妙に禍々しい本 聖書じゃないよね えっ何で魔方陣!? 「「いあ!しゅぶ=にぐらす!」」 え?え? 何!?何それずげしっ 「ミサも困りますが それ以上に邪神召喚はしゃれになりません」 そう言うと博士は 『クトゥルフ事典』と書かれた本とともにリカオンを運び去って行った  * 港にパーク史上最悪のニュースが届いたのは その日の宵の口のことだった ——「園長罷免の件翻らず」 海のフレンズを通じて伝わった一報であった ちょうど堤防で哨戒をしていたリカオンは その報にへなへなと座り込んだ ヒグマが駆け寄って来て 頬をたたくが呆然として正気に戻らない リカオンとて 必ずしもうまく行くとは思っていなかった だが祈りに祈っていただけに その反動はすさまじかった ——けものはいてものけものはいない 嘘だったんだ ——本当の愛は ここになんてなかったんだ どこからか失望の声が 幻聴となっていくつも聞こえる—— 「くそッ」 リカオンは弓弦(ゆんづる)に弾かれたように走り始めた 既に夜となった霊山 異常に気づいた博士たちの制止を振り切り斜面に飛びつく がらがらと岩の落ちる中 リカオンは生傷を作りながら登って行く それがあたかも自分の 「リカオン」というフレンズの命の発露であるかのように 護るべき人がいる それはみんなだ 護るべきハンターが自分なのだ 「園長」やそのために尽力した人もそうだ たとい神が認めずとも自分が認める 悲憤 慷慨 憤激 その全てが彼女の手弱腕(たわやがいな)を足を動かしている もはや禁令は何ら意味を持たず 博士たちもそれを止め得なかった やがて頂上へ 結界へたどり着いたリカオンは 声にならぬうなりを一声上げた 「四神よ この地に『のけもの』がいないのは あなたたちがよく知っているはずだ!」 およそ今まで見たこともない すさまじい形相だった 「なのになぜ生まれた? なぜだ? なぜだ? 答えろ!」 黙して答えぬ石板に リカオンは切歯しながら迫る それはもはや獣であった 「…答えられやしないさ ただの石の板 情けない!」 吐き捨てるように言うと リカオンは拳を握りしめる したたる血も構わず眼を閉じると 走馬燈のように今までの日々が流れる ——この日々は 本当に先へ続かぬ幻燈になってしまったのだ 次の瞬間活と眼を開き 天をあおいだリカオンの口から 「あなた方がいながら 神として振る舞いながら それでも『のけもの』が生まれるなら… どうして なぜに 何の意味があって…フレンズは一体生まれ生きているというんだ!!」 夜空をつんざくがごとき咆吼が響き渡った——  * 眼を覚ますと前にコノハちゃんとミミちゃんがいた 躰がなぜか痛いけど授乳しなきゃ 乳房を取り出し押しつけると 二人はそれを吸い始めた ——おかしいわ いつもはもっとおてんばなのに 朝だからかしら 「ぷはっ… やはりでしたね助手」「んうっ… そうでしたね」 何言ってるの? 「ママ ちょっと私たちからいいですか」 いいわよ 「逃げないでください 現実から」 逃げてなんかいないわ ママだもの 「昨日何があったか 覚えていませんか?」 昨日? それは園ち… 次の瞬間 私は頭を大槌(かけや)で殴られたような感覚を覚えた 違うわ 私はママ 授乳した場所がたまたま火口——違う 違う—— 混乱しきってゆっくりと倒れるリカオンの躰を 博士と助手が受け止める 次いでヒグマがその躰を受け止める 「やはり二人の言う通りだったな」「ええ」 昨夜リカオンが霊山を駆け登ってから 一同は捜索を続けていた そしてようやく払暁の頃発見したのだが 博士たちは彼女は自分が起こすと言い出した 「リカオンは きっとこの現実を受け止められないはずです」 「ですからきっと『ママ』に逃げてしまいます 荒療治ですが我々がそれを止めます」 リカオンが眼を覚ますと なぜか港にいるのに気づいた 「寝ているのを 我々が下ろしたのです」 …そうでしたか ありがとうございます 「なあリカオン 私たちは何だ?」 えっ?フレンズですけど 「いいことを教えましょうか それ複数形なんですって」 複数って…つまり本来的には「私たち」であることが前提だと? 「察しがいいのです フレンズは一人ではないのです 我々も…そしてお前も」 「今を歎くお前の気持ちはよく分かるのです でもそれを忘れてはいけないのです」 「なあ 私たちは家族同士なんだ」「そこには消えない思い出があるでしょう?」 次の瞬間 私はぶわあっと泪をあふれさせ 先輩たちに抱きついて赤ん坊のごとく泣いた そうだ 走馬燈は廻り続けるから走馬燈 幻燈はついている限り姿を消すことはない みなさん ご迷惑をおかけしました これからもよろしくお願いいたします 先輩にぽんと肩をたたかれ 私はみんなに着いてゆっくりと歩き出す これからどうなるかは分からない けど私は私らしく思い出を紡いで行こう 「——帰りなんいざ 田園まさに蕪(あ)れなんとす 何ぞ帰らざる…」 博士と助手がその後ろ姿に 小さく歌った  * 「あの…なぜ我々は縛られているのですか」「何もしていないのです」 ふーん しらを切るのね じゃあ教えてあげるわ 今年は酉年 来年は戌年 なぜ鳥なのに年末になっても トップの地位を私に引き渡さないのかしら? 「でもリカオンは犬ではn」 言いわけ無用 ママでイヌ科というだけで充分なの そしてもう一つ許せないことがあるわ 酉年の前は申年 つまりキンシコウちゃん辺りから奪ったことは明らか お仕置きをしなくちゃね 「待つのです! その理屈だとヒトもサル目なのでかばんから奪ったということに…あッ」  な ん で す っ て ? 方針転換 折檻で済まそうと思ったけど これはタライに松の内押し込めね 「ややややめるのです! そもそもあれはただの符号で 実際の動物とは関係が…」 「第一去年 まだかばんはいなかったのです!」 問答無用! 「待ちなさい!」 誰!? 「同じイヌ科なら姉の私もいるわ!!」 くっ…ギンギツネ…また覚醒したのね 久しぶりの対峙…戦いの手段は 当然母乳と姉液!! リカオンの母乳が空を舞い ギンギツネの姉液が放射状に飛び散る だがその激戦の陰で 博士と助手に近づく者があった 「タ タイリクオオカミ! 助けてほしいのです!」 が オオカミは2人の必死の懇願の前で とんでもないことを言い出した 「いいことを聞いたよ… 来年は戌年だからイヌ科のママなら長になれると いや権力はいらない ママにさえなれればいい!」 博士と助手は青ざめた いつぞやのママモード発動である 「さあ行こう」「んーっ!んーっ!」 全身から危ない雰囲気を発しつつ 2人を抱えようとする しかし母力と姉力の強い2人に すぐに察知されてしまった 「そうはいかないわ!」「何してるの!」「しまった!かくなる上は戦わねば!」 「「「保護者合戦 Leady Go!!」」」 そう叫んだ瞬間である 「ぐえっ」「へぶっ」「はぶっ」 「ま 間に合いました」「もう…また暴走してるー」「先生!さぼらないでください!」 キンシコウの棒がリカオンを キタキツネのゲーム雑誌がギンギツネを アミメキリンのネーム用紙がオオカミをそれぞれひっぱたいていた 「すみません うちの後輩が」「ごめんなさい」「先生が申しわけないです」 口々に謝りつつ 博士と助手の縄を解いてやる3人 それを見てああ来年も被害に遭うんだな…とげっそりする2人であった ○平成30年 「…というわけで これを作ってもらいたいのです」「うーん もっと早く言ってもらえれば」 「『おせち』は知っていたのですが 本がなかなか見つからなかったのです」 「材料はどうにかなるから 作れるだけ作ってみよう」 新年から困っているようだね娘たち! このママが作ってやろう! 逃げ出す3人に新年初授乳 あら寝ちゃった でも眼が覚めた時驚く姿を見るのも一興 まずは作り方 これは大変な上に細かい だけどそこはママです どうするのかって? 「おせち」を母乳で錬成するのよ 乳房をおもむろに本へ押しつける 乳首からスーッと内容が入って来て…これは…ありがたい… そしてこれをラクトフェリンの作用により ビジュアル的に再現する 胸の前で注意深く手をたたきながら 乳房の根元を二の腕でしぼって射乳 ゆっくりと「おせち」の具に色も形もそっくりの母乳を出力していく かまぼこ 伊達巻き ハム 昆布 お煮しめ 田作り 栗きんとん… あ 「おぞうに」もいるわね これはきちんと野菜を切ろう というわけで高圧射乳で野菜を切り お餅を母乳で作り上げる ここは譲れない 「こ…これは?」 あら眼が覚めたのね リカオンママ特製「おせち」よ 「あ 怪しい…非常に怪しい」 何かしらヒグマちゃん? 私がぷにっと後頭部へ乳房を押しつけると ヒグマちゃんは居住まいを正した いい子ね それでは食べましょうか あとで他の子にも分けてあげましょうね 明けましておめでとうございます! 「明けまして…おめでとうございますなのです」 なぜか緊張しながらあいさつし 箸をつける3人 「え…おいしい…?」「そんな馬鹿ななのです」「何があったんだ…?」 「あ 『おぞうに』を頼むのを忘れていました」 出来ているわよ ほらどうぞ お餅も歯にくっつかない優しい材料よ 「歯にくっつかないとはいいのです…ってもしや」 そりゃ母乳製ですもの 歯にくっつくほど粘るわけないわ あと同じくおせちも母乳よ おいしく食べてくれてうれしいわ 「うわあああ! 何じゃこりゃあああなのです!!」「やられたのです!」 「何もないわけないと思ったんだ!」 当然というべきか 図書館に3人の絶叫が響いたのであった  * ある日私がタライのたがを直していると 急に中に吸い込まれ満洲へ放り出されました 思ったのです ネロがいかにして乳房を菅原道真に突き出したのか 始皇帝が泰緬鉄道(たいめんてつどう)に及ぼした影響との関連は? そういえば源義経は飛び六方で岐阜市長を吹き飛ばしましたね 私はその時イェカチェリーナ二世と母乳の飛ばし比べをしていたはず 武則天の乳房がフロリダ半島をへし折ったとゲッペルスが語ったのが インカ帝国の古文書に記されています 巴御前の母乳突撃がビザンツ帝国を滅ぼし ボードレールが統監府を乳房ぐりぐりぐりのぐり 北町奉行所がメーテルリンクを捕らえて母乳をしぼろうと 西太后をヌーベルフランスで出迎えたことは有名でしょう 野崎詣りは屋形船で参ろ お染久松乳しぼり ウラル山脈は南極の乳房です 母乳とは新快速です 乳房とは黄海海戦です 普仏戦争が沿ドニエストル共和国にもたらしたのが母性ですね 煙草とマントが恋をして心中し損ねたので 私はまた母乳をベンヂンのごとく吹くのでした  * 図書館で見つけた「こくごじてん」を読んだ私は真っ青になった 「獅子身中の虫」! これはライオンちゃんの躰にセルリアンが取り憑いている証拠だわ! へいげんへと突っ走る 一刻も早くこの母性で退治しないと 「な 何!?どしたの?」 苦しいでしょう さあ悪い虫を退治してあげるわ 問答無用で授乳して寝かしつける ここからが本番よ 何やらきらきらしたものが立ち上る おのれ! 母乳で調伏(ちょうぶく)してやるわ! 母乳をライオンちゃんの首に左右にかけながら乳ビンタ 「獅子身中の虫とは己がこと! 塩冶(えんや)の禄を食みながら師直(もろのう)に…」 なぜか頭に覚えのないせりふが浮かぶ 「大将!ハンターとはか…ひっ!!」 オーロックスが腰を抜かす 無理もない 黒セルリアンも一睨みで殺しそうな眼をしていたのだ 次の瞬間 リカオンとライオンの間に隙間が出来たのを見て キンシコウが棒をバーンと間に突き立て見得を切った 衝撃でリカオンが気絶したところを 恒例で博士たちが回収することに 「その眼力を本業で活かせば セルリアン撲滅も夢ではないのですが…」 タライに入れて担ぎ上げながら 今日もぼやくのであった  * しまった…伏兵だった リカオンは眼下のろっじをいまいましく睨めつけた あの中に娘が囚われているのだ M機関のメンバーからの情報で初めて知るとは…不覚 「い…いい加減にしてほしいのですぅ!」「何をだというんだ」 その頃ろっじの一室では タイリクオオカミがヤマアラシを追いつめていた むろん淑女たる彼女 襲おうというのではない それ以上のことを行おうというのだ 「ふふふ…やんちゃな子だ お昼寝の時間なのに」「違いますぅ!」 会話が成立していない どう見ても危険な状態だ さすがにここまで来てリカオンが飛び出した 待ちなさい! ヤマアラシちゃんに何をしてるの! 「何を…? 見れば分かるだろう 保育だ」 逝った眼で部屋の中を指差すオオカミ 積み木 お人形 おままごと道具 絵本 知育玩具… ヤマアラシ自身もスモックで チューリップの名札に「あふりかたてがみやまあらし」とある まぎれもない そこは一つの保育園であった 「邪魔をしないでほしいものだね ここは私の園なのだから」 私とは異なる母性の持ち主か しかも制禦しきれず暗黒面に堕ちている 何とかせねば娘が危ない 何かないか …!オオカミ敗れたり!! ここを何だと思っている? 「保育園だ」 では今自分を何だと思っている? 「保母兼園長だ」 やはり!あなたは自家撞着しているぞ! 保育園とは託児所または学校 家から通う場所じゃないか …本来の親は…他にいる!! 「…くっ!そこを突かれるとは!!」 オオカミが顔を歪める では渡してもらおうか その子は私の娘だから 「だが断る」 何だと? 「ふっふっふ…くっくっく… 理屈なんてどうでもいいんだ!この子は私の娘なんだ!」 まるで満月を前にした狼男のように 狂笑するオオカミ 駄目だ…! 既に壊れかけている!! 早くヤマアラシちゃんだけでも助けないと 私は母乳で一気に飛び上がると 彼女の右を確保して連れ出そうとする 「どこへ行こうというのかね」 が 今度はオオカミが左から引っ張る  それがしばらく続いた後である 「もうやめてほしいのですぅ!」「ぐはっ」「ぐえっ」 何と怒ったヤマアラシが とげをぽんと開いて2人を攻撃したのだ 2人は尻のほっぺたを刺されて轟沈 図書館へ運ばれる羽目になった なおこの事件後 ろっじ廃業まで考えたアリツカゲラをアミメキリンが必死で止めたことをつけ加えておく  *  その日 M機関と姉たちは共同戦線を張ってろっじへの突入準備をしていた 「…いっせーのせだよよよ」「OK」 カピバラとギンギツネの視線の先にある部屋では さっきから異様な光景が繰り広げられていた 「さあ我が妹よ! とくとオレの娘道を見るがいい!」 ブラックジャガーがそう呼ばわり よだれかけをかけたままガラガラを持って勇ましく立ち上がる 「やめろ!!一体どうしちゃったんだ姉さん!!」 眼の前ではジャガーがいすに縛りつけられ その光景を見せつけられていた 姉勢力領袖の彼女がこうなったのは 先日のリカオン押し倒し事件の時以来 ジャガーに避けられるようになってしまったことにあった そのストレスから壊れて「娘」に逃避してしまったのである 「いかん!おむつをはき忘れていた!一撃で娘になるのがオレの信条なのに…うかつ!」 「やめてくれええ!! お願いだ目を覚ましてくれ!! リカオンも何か言ってくれよ!!」 え…えーと ごめん 全然状況が理解出来ないんだけど… 「だーっ!」 リカオンは珍しくママスイッチが入っていない状態だった 理由は簡単だ 攻められすぎなのである 精神的に引く方が先だ 「さあリカオンママ!オレを甘えさせてくれ!さあさあ!」 ブラックジャガーはついに床に転げ 足をばたばたさせ始めた そうやって甘えるたびに 妹に見られているというほの暗い快感がぞくぞくと背筋を奔って心地よい がしゃあああん! 共同部隊が突入! 「やめなさいブラックジャガー姉!それでも誇り高き姉なの!?」 「リカオン ぼっとしてないでママしてあげるよよよ そうすれば一旦は収まるよよよ」 「ちょっ!? どさくさにまぎれてママスイッチを入れようとしないでよ! リカオン!カピバラの言うことは無視して!」 「失礼ななな!この方が現実的よよよ!」「違うわよ!」 今度は共同部隊の仲間割れが始まってしまった やはり元々そりが合わないのだ 次の瞬間である 地獄の底から響くような声が聞こえて来た  み ん な ? い い 加 減 に し よ う ね ? リカオンであった 暗黒面に堕ちた状態でママスイッチが入ってしまったのである 「ひっ」「ちょっ…何でこの子まで壊れてるの!?」  私 は 普 通 よ ? 至 っ て ね … どう考えても普通ではない声でリカオンが言うのに 全員が固まった  こ れ よ り 貴 様 た ち を 娘 の 国 へ 連 行 す る ッ !! 言うやすさまじい勢いでブラックジャガーの口に乳房を差し込み授乳 「何を…はぶっ」 ジャガーにも縄を解かないまま授乳 共同部隊が逃亡を開始するも リカオンは猛然と飛び越し 行く手に立ち塞がる そして飛び六方で走りながら母乳で眼つぶしをして来た 全軍総崩れとなりその場に倒れ伏す そこに自分の同志だろうと敵だろうと構わず 手当たり次第に乳房を突っ込む 飲ませた母乳 しめて8808リットル 廊下にあふれたものも含めば880888リットル 見よ!これが娘の国だ! 死屍累々たる中 逝った笑い声を上げるリカオン が そこに伏兵が現れた どごおっ!! 「はあ…はあ…これ以上荒らされたら本気で廃業ですよこれ…」 何とアリツカゲラが看板で殴りつけたのである 避難しているのを抜け出してのことだった その後 ろっじ組の手伝いを受けながら全てのフレンズが搬送された ここまでの騒動を起こしたブラックジャガーとリカオンは お約束だが何も覚えていない 一体このパークはどうなってしまうのか… 眼を覆って悩み苦しむ博士と助手だった  * ゆきやまちほーに珍しく雨が降る 私は温泉旅館でけがを治すため休養を取っていた 「あんな状況では誰でも無理さ」と慰められたが申しわけない気持ちは抜けない 湯の町エレジーは雨の音 雨のブルースが響く ああそういえばビーバーとプレーリーのとこに行かなきゃ 最近授乳していないからね 今頃は湖畔の宿であの2人も雨に咲く花を見ているのだろう あの歯で噛みさえしなければ母乳を轟沈するまで飲ませるのだけど かばんたちのことをふと思う 雨に遭っていなければいいが ゴコクは山がちゆえに緑の地平線が広がる土地は少なくて曠野(こうや)を行くこともそうないらしいから 雨宿りはいくらでも出来るだろうけど 思うと母乳が乳首で泪のタンゴを舞う 娘の影を慕いて飛んで行きそうだ あの丘を越えて並木の路(みち)を ヒトの住む地も山や丘が多いという もしかするとそこへもう行ったかも知れない 丘は花ざかり望むは青い山脈 それでも誰か故郷を思わざる きっとここへ帰って来たいだろう そうだ私は母じゃないか たとえヒトの地が国境の町でも あの出船の港からタライ一つで漕ぎ出して 2人をかどわかし乳房を吸わせよう 花言葉の唄を口ずさんで  * 青い渚を落陽が照らす 夕日が泣いている…そんな言葉が似合いそうな雰囲気だ 今晩明日は晴れかと安心する一方少しだけ寂しい気もした 港には時折夜霧が立ちこめる 夜回りには厄介だが見る分には美しい 殊にろっじは蒼白の城 ブルー・シャトウというべき姿を見せてくれる そんな風景を見ると夜霧よ今夜もありがとうと思ってしまうのだ そういえば最近ギンギツネはキタキツネに逃げられ 迷い道に入り込んでいるらしいと聞いた 妹よあの素晴らしい愛をもう一度 これじゃ悲しくてやりきれないと言うが 変質行為をしている限り無理だ 私が見咎めても反抗するばかり 今日までそして明日からも姉たちとの関係はこんな感じなのだろう 遠くの方で春雷が鳴っているな ヒトのいる地だろうか 彼らの営みの中では出会いと別れに思い出通り雨が降り 悲しい白い冬を迎えることもある かばんたちはどうしているだろうな 贈る言葉に手を振って旅立った娘たち 今年の冬が来る前までに無事帰って来てほしい 追って行って授乳し出会いのうれしさ別れの悲しさを聞いてあげたいが無理か それなら母は岸壁の母となりましょう あゝ我が良きフレンズよ あゝ我が良き友よ  * 「…!」 ガバッ! バッ! プニパクッ! ドボドボドボ… ガクリ プニパクッ! ドボドボドボ… ガクリ スッ サッ ドンッ! スタタストン フィーン…フイィィィィン… フヨーンフヨヨヨーン ピチピチ ピチピチ パッツリ ジワジワジワ ドプドプ フヨーンフヨヨヨヨヨヨー… ビクゥッ! ドスンバタン! バッサバッサ バッサバッサ フィーンンンンン! バサバサバササ… ガシッ! フイィィィィィーンンン… トスッ プニッ…パクパクッ! ドポドポドポドポドポドポドポドポドポドポドポドポドポドポドポドポドポドポドポドポ グポッ… ガクリ 「…?」  * --・--  -・- -・ --・-・ ・-・・・ ・-・・ --・-- -・-・- ・-・-・ -・ ・・  --・ ・-・・ ・-・・・ ・-・-・ -・・・ -・-・・ -・・-- ・・- -・-・ -・・ ・・ ・---・ ・- ・--- -・・・ ・--・ ・・-・・ ・・ ・・- --・-・ -・  ・・-・・ -・・・- -- ・・- ・・-・・ ---・- -・--・ --・・- ・・・- ・・ -・・- ・・-・・ -・-・・ ・-・-・ --・-・ ---- ・・- ・--- ・・-・ ・・-・ --・・- ・・ ・-・-・ -・ ・-・-- ・・ -・- ・-・-・ ・--・ ・--・-  -・-・- ・- -・-・・ ・-・-・ -・・・ ・-・-・ ---- ・・- ・-・・ ・・ -・・・ -・-- ・・ --・-・ ・- ・・-- ・-・-- ・・ -・・・ ・・ ・--・ ・-・-- ・・ ---・-  ・- ・・-・ --・-・ ・・ ・-・・ ・-・-・ ---- ・・  -・-・- -・・・ ・・ ・・・- ・-・-- ・・ -・・・ --・-・ ・・ ・-- -・・・ ・・--・ --・ -・・ ・・ ・- ・-・-・ -・ ・・ ・--・- ・・-・・ -・-・- ・・・- ・・・ ・-・-・ ---・- -・--・ ・--・ ・・-・ ・・-- ---- ・・-・・  ・-・・・ ・-・・・ ・-・ -・-・・ ・・-- ---・- ・-・ --・- ----  ---・ --・-・ ・-・-- -・-・・ ・・ -・ ・--・- -・-- ・--・- ---・- ・-・-- ・・ --・ ・-・・ ・-・・・ ・-・-・ ・--- ・-・ ・・・- ・・ --・ -・ ・-・・・ --・-・ -・ ---・- ・-・ --・- ---- -・-・ -- ・・・- -・-・ -・ --・・ --- ・-・-・ ---・- ・・ ・・-- ---・- ・-・・ ・・ -・ ・-・・ ・・ --・-- ・--・ -・ ・・-- -・ ・・ ・--・ -・  《原文》 あ 私お母さんだ リカオンは急に母性を発動した 止めようとするヒグマとキンシコウを乳ビンタでワンツー 最近反抗が激しいので罰です 一時間後 さばくでは「ジャパリボインだああああー!」と錯乱するツチノコと 大泣きのスナネコ そしてギターケースでリカオンを殴り倒したスナネコによく似たフレンズの姿があったのだった  * ごこくから妙なニュースが届いた まず「かばんが園長になった」というデマ そして管理人=園長になりたがっている臭い赤ら顔の不審者がいるとの情報 これはまずい その不審者にかばんが襲われる可能性がある 母として見過ごせない 大急ぎでタライで飛び六方しながらごこくへ 到着した私は大急ぎで臭いを探った 私の母性もかばんの危機を知らせている 「クンリケンくだち!」「ですから…」 やっぱり「ぴるす」だ! しかもかばんにからんでいる…許せん! その時だ 「プリングス!」の声とともに空間が開きヒトが…白鸚さんじゃないか! 「PKO日報君!!!またここを荒らし回っていたのかね!!!!」 見得を切ってぴるすを開く 私も負けじと反対側から射乳して開いてやった 母の愛思い知ったか!! gffと笑う緑ジャージのヒトにぴるすを引き渡すと 白鸚さんは帰って行った 「あ…ありがとうございます」 いいのよ…じゃあ気分直しにお乳の時間ね? 「た…助けてくださーい!」 その叫びは乳房のぷにっという音とともに消えた 「君たちは一人じゃない」「ただぴるす君…永遠に君は一人だ」 サングラスをかけたヒトがそんなことを言って去って行った  * リカオンは疲れ切っていた 連日の激務に心は荒むばかり いつしか切に願うようになっていた お母さんになりたいと いやお母さんになる もうお母さんなのでは? あ お母さんだったわ そして娘はかばんがふさわしい …というわけで それが私のお母さんとしての目覚めだったのよ 「どういうわけですか!?完全に論理破綻しているのです!」 「というより一時期ごこくへ行こうとしていたのはかばんを探すためだったのですか!」 そうよ 子供がいてのお母さんじゃないの コノハちゃんとミミちゃんの方が変よ 「これが『さいこ』というやつですか…もはや常識が通用しません」 「第一そのとりたてて大きくない胸からパークを覆うほどの母乳が湧いて出る時点で…」  何 で す っ て ? 「うわわわ!だからそのタライもどこから…というよりなぜタライなのですか!!」 「博士!突っ込んでる場合ではありません!逃げないと!!」 逃がさないわ お母さんの悪口を言った子にはおしおきをしないとね 「ひいいいいいい!!タライへの押し込めはもう嫌なのです!!」 その時だった 「待ちなさい!!」 振り返ると下着をかぶった一団が——姉の団である 一体何の用!? この子たちはこれから娘として… 「黙りなさい!もう母親を始めて1年でしょう!?そろそろ私たちに譲るべきだわ!」 ギンギツネ…何て論理破綻!そんなわけの分からないことを言う娘に育てた覚えはありません 「かくなる上は…姉液ずくで奪う!」 おのれ!なら私は母乳でこの娘たちを守ってみせるわ! その時羽音が響いた 「今のうちに逃げるのです!」 逃 が さ ん ヘイマザー! 「ママー!!」 指を鳴らすとともにM機関の一同が現れる 「数ならこっちも負けないわ!さあ姉液を食らいなさい!」 くっ! 一斉射乳で切り抜けながら二人を追いかける 「来てるのですううう!!電気通信省が木馬に乗って元禄の見得を切り続けているのです!」「博士!!気を確かに!!」 母乳と姉液が地上で飛び交い その流れ液が躰に張りつく ついに二人は重みで墜落してしまった 母乳と姉液に迎えられながら地上に落ちる二人 そして間髪を入れず母と姉たちの愛撫が始まった 次々と差し出され押し込まれる乳房 あちらこちらから手当たり次第に注がれる姉液 ——次の1年もこうなるのか 二人はそう思いながら意識を手放したのだった  * そういや長く授乳してない子いるわね…あの3人とか そう思った私は「けいばじょう」へすっ飛んで行ったがいない と次の瞬間草むらの向こうにかわいいお耳が見えた!くりげちゃん見ーっけ! ところが現れたのは前髪に白の房が入った子 ヒトでいう「せいふく」を着ている 新しく生まれたフレンズかしら? ともかく授乳しなきゃね 「スズカさん!あの人に訊いて…きゃあっ!」 乳房をぽろんと出した途端逃げるなんて恥ずかしがっちゃ駄目よ 「お母ちゃーん!」 はいお母ちゃんですよー 捕まえて無事授乳 よーしおねんね…殺気! 「スペちゃん!…そこのあなた何したの!?」 振り返ると緑の耳カバーと白のカチューシャをつけた長髪の子が猛然と走って来た …速い! 射乳の勢いでバク転しながら口射で授乳! こちらも無事ぐっすり 「あわ…わわ…」 あらもう一人 …ってピンク色? もしや守護けものってずごどかっ 気がつくと図書館のベッドで寝かされていた 異世界から来た「うまむすめ」という子たちを元の世界へ返そうと図書館へ連れて行く途中にすっ転んだとか その子たちフレンズに似てるらしい 出来れば今度はしゃきっとした姿で会いたいなあ  * ラアラアと雨が降る ただラアラアと雨が降るのだ 自分の吸ったショート・ピースが眼にしみて 缶片手に月がむせいでいる リカオンの塒(ねぐら)はひたすら湿る 施餓鬼会(せがきえ)で餓鬼道へ水が流れるようだ ふと濡れた服をぬぐう ——バタフライ・カラアが曲がっている—— 乳房を出しておもむろに吸うと甘くて有平糖(あるへいとう)の心地がする 床屋の赤と青のアルヘイ棒のように くるりくるりと舌の上をよじ登る 授乳しようと外へ出ようとすると 乳房に関する形而上的官能的感覚が頭をよぎった 噫(ああ)! 鬼子母神(きしぼじん)はセルリアンではなく私の乳房ではないのか? 噫! 噫! すすきを束ねたすすきみみずく! ミミちゃんはそれなのだ! 乳房を見ると乳首がにっかり笑っている 眼の先の山頂にはヂルコニューム鉱石しか見えない—— 母乳を吸いに来てくださいましね…よろしくお願いします  *  母の賦并(なら)びに短歌二首 天離(あまざか)る 鄙(ひな)の沖島 真中にぞ 不思議の山あり 筒の砂 獣が身をば 人となし 人と同じき 暮らしをば 営める時 我が心 狩人なるに 垂乳根(たらちね)の 母に目覚めぬ 母なれば 吾子(あこ)ぞ欲しき 掠(さら)いても 我が手に入れむ 梓弓(あずさゆみ) 張れる乳より 白き液 多(さわ)に流して 吾子の口 塞ぎ塞ぎて 乳の波 喉(のど)に注ぎて 寝(ぬ)らしては 愛(は)しき思いす 孕みては 吾子生み生みて 同じけく 乳をば与う 賊(にしもの)は この盥(たらい)もて 払い行き 子等を守らむ 母友は 島の要と その愛の 広ごれること 皇神(すめかみ)の 御稜威(みいづ)の如し 我等こそ 互いに母を 磨きては 磨き磨きて 高みへと 駆けり行かめと 今日もまた 吾子に乳(ち)与え 誓うものかな  反歌 梓弓 乳房張りつつ 愛しき子に 乳を与えむ 麗(うら)ら日の下 長なれど かくも愛しけき 吾子なれば 掠いて行かむ この腕(かいな)もて   右三首、セルリアンハンター兼M機関ジャパリマザーリカオンこれを詠めり。 《現代語訳》 ・長歌 遠く離れた沖の島の真ん中に不思議な山があり、サンドスターが動物を人に変え人と同じ暮らしを営んでいる時、私の心はハンターなのに母に目覚めた。母ならば子供が欲しいとさらっても我が手に入れよう。張り詰めた乳房から白い乳を大量に流し、我が子の口を塞いで乳の波を喉に流して寝かしては可愛らしく思う。(さらに子供が欲しいと)孕んでは我が子を産んで同じように乳を与える。セルリアンはこのタライでぶちのめして子供達を守ろう。(M機関の)仲間の母たちは島の要となって、その愛の広がること神のご威光のようだ。私たちは互いに母性を磨き磨いて高みへ駆けて行こうと、今日もまた我が子に乳を与えて誓うのだ。 ・反歌 乳房を張らせながら愛しい子に乳を与えよう、うららかな日の下。 長ではあろうがこうも愛しい我が子なので掠って行ってしまおう、我が腕で。  姉を詠める旋頭歌四首 愛(は)しけやし 吾妹(わぎも)に何を せむが好(よ)きや 賊(あた)を討ち そが身護りて 愛(めぐ)むべきかな 姉の愛 深き様をば いかに示さむ 上下(かみしも)の 姉液を多に 与うるべしや 吾妹子(わぎもこ)の 風呂に入(い)る時 籠を探らむ 下帯を 顔にかぶりて 惚けむがため 母らとは 共に生きむと 思いぬれば 子と吾妹 互いに貸し合い 借りるものかな  右、姉の団団長ギンギツ姉これを詠めり。 《現代語訳》 ああ、愛しい。私の妹に何をしたらいいだろう。悪を討ちその身を守ってかわいがるべきだ。 姉の愛が深いのをどう示そうか。上下あらゆるところの姉液を浴びせまくればいい。 私の妹が風呂に入っている時籠を探ろう、ぱんつを顔にかぶってトリップするため。 母たちとは共に生きようと思うので、子供と妹を互いに貸し借りし合うのだ。  * その日 私は港で沖合に浮かぶ船と対峙していた あの船はセントラルから来たもの ということはかつて私が娘にし損なったミライが乗っている可能性が高い あれから私も母として成長したことだし ここはリベンジをしかけてあの子を娘にせねばジャパリマザーとしての面目が立たない 船が接岸すると果たして緑髪の女性が 「ああっリカオンs」 バーン!テリンテリンテリン… 先日開発した八八〇八式撃乳が功を奏し 彼女はそのままあお向けで眠りについた よしこれで成功…と思った時 いきなりミライが上体を起こし「なんということを…」と言ってそのまままた寝た え?確かに眠ったよねこれ? するとまたしても上体を起こし「なんということを…」と言ってまた寝る え?え?何これ怖い… そうしているうちに再度上体を起こし…「愚かな……いびきも知らぬのか………」 うわああああ!?眼がすわってる!!ってごちっ 気がつくと船の医務室で先輩方とミライさんに介抱されていた しかし何だか恐ろしいものを見たような覚えが… その後ろでミライさんの同僚が「最近いびきが変なんですよね彼女…」と愚痴っているのに気づくことはなかった  * ——伝家の宝刀でどうにかしてやろうか リカオンは昏い衝動にとらわれかけた 先日急にパークを舞台にした「あにめ」の話が舞い込んで来た 実質上の主演はカラカル 今まで脚光の当たって来なかった仲間のデビューは嬉しい話だ だがパークの外では園長罷免の内紛が仇となり せっかくのデビューに味噌がつきかけている カラカルもそれを知っているのか 複雑な表情を浮かべて沈思するようになったそうだ ——それもこれも罷免騒動を起こした上に 暴れ回ったヒトのせいだ リカオンは初めてヒトを怨んだ そして知らなければよかったと後悔した 臭い!臭い!臭い!耐えきれぬほど臭い! かばんの爽やかさには永久に及ばぬほど連中は臭い! 堤防越しに海を見上げる あの二人の姿は見えるべくもない ヂルコニュームに似たサンドスターがもくもくと霊山から噴き出す まるでそれはリカオンの言葉にならぬ不安を表しているかのようだった——  * その日 迫り来る「敵」にリカオンたちはこれまでにない苦戦を強いられていた 「敵」といってもセルリアンではない——ヒトだ いや正確にはヒトと言っていいのか 赤ら顔で臭い破落戸(ごろつき)「ぴるす」と 緑ジャージの気味の悪い男「湯川」の集団だった ぴるすはパークを荒らし回り 湯川はそれを捕まえてけつまんこいという見苦しい行為に興じる かつて退けたことのある相手ではあったが人数で来られてはかなわない その時だった 飛び六方で空間に裂け目が出来たかと思うと一人の老人が飛び出して来た——二代目松本白鸚丈その人! 「——ぴるす君に湯川君 いつもなら殺して済ますところだが今回は許し難い 従ってこの言葉を唱えさせてもらうよ」 「 な ー 」 その言葉が響くと一気にぴるすと湯川が雲散霧消した がくりと膝をつくリカオン そして次の瞬間 わんわんと彼女は泣き出した 白鸚丈はそのしわだたんだ腕(かいな)で この健気な乙女をぎゅっと抱き締めることしか出来なかった—— 私が庭を飛び六方で散歩していた時のことだ ふと嫌な予感がした 息子のことか?孫のことか? いや違う——かつて何度か行ったことのあるあの世界だ 私は使命感に駆られて一気に見得を切り あの地へ降り立った ——そこにあったのはぴるす君と湯川君が大量発生しているという地獄絵図 いや私にとってはありふれているのだが ここの住民にとっては地獄に他ならない さしもの私もこれはただ殺すだけでは無理だと見なし 最終手段に出た 「 な ー 」 今まで一度しか発動したことのないそれを 怒りを込めて発動する おぞましい光景が消滅した後 私は見慣れた「フレンズ」がへたり込むのを見つけた——リカオン君 慟哭し始めた彼女を 私は優しく胸の中へ受け止める きっとあんな連中にパークを荒らされて傷ついているだろうから ——その翌日 私はここの元園長が相次ぐトラブルにより パークに嫌気がさしていることを秘密裡に知った 絶対にリカオン君たちには伝えまい そう決意すると再び見得を切ったのだった——  * リカオンが鳩尾(みぞおち)にすさまじい痛みを訴えて倒れ図書館に運ばれたのは 初秋のある日だった 最初は悪いものでも食べたのかと思われたが 本人に話を聞くうちに神経性と分かった ——ストレス源は何とパークの外 罷免された元園長が大きなトラブルに巻き込まれ さらにはパークに悪感情を抱き始めているという情報だった リカオンが外の世界の情報を集めているのは知っていたが そのような事態になっているとは思いもしなかった 「あんな話を聞いては胃をやってしまうのも当然なのです 我々も正直お腹に来ました」 「お前はしばらく外の情報に接触しない方がいいのです このままでは血を吐きます」 床上げをするに当たり 博士と助手に強く警告された ——そうかも知れない でも…でも… 仕事が引けて砂浜にぽつりと座ったリカオンは 遠くに霞む本土を見渡した とその時 堤防にどこから流れ着いたか小さな盥(たらい)が打ち上がっているのが眼に入った 何とか拾い上げ 舟のように浮かべて足を踏み入れてみる はかなくも沈む盥を引き上げて浜に置くと リカオンはその中へ座り込んだ ——汚れっちまった悲しみに 今日も小雪の降りかかる 汚れっちまった悲しみに 今日も風さえ吹きすぎる 汚れっちまった悲しみは たとえば狐の革裘(かわごろも) 汚れっちまった悲しみは 小雪のかかってちぢこまる 汚れっちまった悲しみは なにのぞむなくねがうなく 汚れっちまった悲しみは 倦怠(けだい)のうちに死を夢む 汚れっちまった悲しみに いたいたしくも怖気(おじけ)づき 汚れっちまった悲しみに なすところもなく日は暮れる…… 図書館でいつか読んだ「なかはらちゅうや」の詩を 思い出しつつ暗誦してみる その詩のように赤い夕陽が照らす中リカオンはしばしたたずんでいたが ややあって盥を打ち棄てると 夕陽に背を向けとぼとぼと塒(ねぐら)へと歩き始めた——  * 「やめてくだちやめてくだち殺さないでくだち」 赤ら顔の男「ぴるす」が必死の命乞いをする だがリカオンは眉一つ動かさず ヒグマの熊手と伝家の宝刀でぴるすを切り裂く 後は湯川をけしかけてけつまんこいさせるだけだ その眼に既に光はない 「けお…近寄らないでくだち!」 失禁しながら逃げようとするぴるすをHIRAく 次々とけつまんこいの犠牲となるぴるす達に リカオンは酷薄な笑みを浮かべていた 「…!!?」 その時手をがっとつかむ者がいた 「白鸚さ…」 その瞬間リカオンは 急速に意識が覚めるのに気づいた まただ またしても大量の「ぴるす」を手に掛ける夢だ 自分にとってぴるすという男がどんな存在かはよく分かっている そしてそれが何者の代理なのかも 塒(ねぐら)を出ると小さなセルリアンが群れをなしていた 伝家の宝刀を放ち一網打尽にする 薄笑いを浮かべそうになってリカオンはあわてて首を振る ハンターの自分がこれを愉しんではいけない パークの安全を守るのが使命ではないか しかし彼女の中に浮かんだ昏い昏い灯(ともしび)は 破落戸どもがこの世にいる限り続くことも事実だった—— ◯令和元年 リカオンは疲れ切っていた 連日の激務に心は荒むばかり いつしか切に願うようになっていた お母さんになりたいと いやお母さんになる もうお母さんなのでは? あ お母さんだったわ そして娘はかばん そういうことなのよ ここにあなたがいるのは… 「どういうことなんですか!まるで話が分かりませんよ!」 かばん…疲れているのね 別の世界線で随分ひどい目に遭っていたもの つらい経験から心を閉ざしたかばんに 乳房を思い切り突っ込もうとした時… 「サーバルちゃーん!!ラッキーさーん!!助けてー!!」 かばんが仲間2人の名を呼んだ 「サーバルちゃ…」「駄目だよかばんちゃん ママの言うことをきかなきゃ」 「カバン ハハオヤハゼッタイダヨ」「ちょ…ラッキーさんまで!?」 よく見ると全身を乳白色に染め うつろな眼をしている 「リカオンさん!2人に何をしたんですか!」 授乳しただけよ 「そんな…洗脳効果まで!?わぶっ!」 さあ…私の中でお眠りなさい… 口と瞳孔を開いたままひくひくと震えつつ眠るかばんを抱きしめながら喜びを噛みしめるリカオンであった