「カンセツさんとシンザンさんのお話」 (1) お疲れ様です、ヘロドさん。 そしてお疲れ様でした、カンセツさん。 クラシック戦線では「菊花賞」……古馬戦線では「天皇賞(秋)」と 当時の八大競争それぞれで実績を残したのは、大変素晴らしいと思います! その他にも多数の重賞勝利、日本芝3000Mのレコードと強さがとっても際立ちますね! 現役時の1970年代前半では、シンザンさんの後継筆頭として知られるミホシンザンさんもまだ現れておりませんので、 内国産種牡馬に対する周囲の反応も大きく変わったのではないでしょうか。 ……種牡馬としての地位を固めた矢先の早逝は本当に惜しまれますが…… 現代の馬術競技のメダリストに名を連ねるほどの実績があるのは、幸運だったと思います…… さて、上でも書かせていただきましたが、 今回はシンザンさんにまつわるお話を少々書かせていただきたいと思います。 60年以上前に活躍されたというのに、 いまだに詳細な記録が残り、愛され続けるシンザンさん。 本当にエピソードに恵まれておりますので、なるべく短くしたいところですが…… 少しだけお付き合いくださいね。 (2) シンザンさん。(漢字では「伸山」、「神讃」など諸説あります……) セントライトさんの後に日本競馬会に現れた、戦後初めての三冠馬です。 現役時は1963年から1965年、1966年1月に引退式が開かれました。 まだG1レースの定義もなく、いわゆる「八大競争」の時代でした。 「八大競争」はそれぞれ クラシック期が「皐月賞」・「日本ダービー」・「菊花賞」・「桜花賞」・「オークス」 古馬では「天皇賞(春)」・「天皇賞(秋)」・「有馬記念」となっております。 このうち「天皇賞」は現在と少々違っておりまして……「勝ち抜け制」が採用されておりました。 春と秋の天皇賞、いずれかで勝った競走馬は次回の天皇賞には参加できない制度です。 シンザンさんはこの内 牝馬の「桜花賞」と「オークス」、それと体調不良で参加できなかった「天皇賞(春)」以外のすべてに勝利し 史上初「五冠馬」の称号とともに引退しました。 個人的にですが……時々競馬には神話や伝説の世界から抜け出してきたとしか思えない…… 人智を超えた競走馬が現れることがあります。 シンザンさんは間違いなくその内の一頭ではないでしょうか。 (3) そんなシンザンさんですが、デビューまでにもすでに波瀾万丈でした。 血統自体は当時目線でも良血です。 そして、競馬関係者が見た馬体は走りそうにもないものだったと言われております。 関西名門厩舎にして名伯楽、武田厩舎所属が決まりますが…… なんと馬房もあてがわれず、阪神競馬場の馬房を借りていたそうです。 とはいえ、全く動じずマイペースに調教に臨んでいたシンザンさんの才能を、 厩務員さんや厩舎所属騎手が見抜いていくなど、真の実力が徐々に認識されていきました。 ……武田調教師の認識を変えるには中々時間がかかりましたが。 実は武田調教師は当時たくさんの管理馬がおり、シンザンさん一頭にかかりきりになれないという事情がありました。 シンザンさんはデビューから無傷の4連勝を重ねて、「皐月賞」の試金石「スプリングステークス」に挑みます。 調教でも走らないシンザンさんの前評判は低く、6番人気でしたが余裕を持って勝利します。 レース後に同行していなかった武田調教師が、勝利の知らせで急いでやってきて、 シンザンさんに非礼を詫び頭を下げた、というのは非常に有名ですね。 ……なんと言いますか……物語の英雄としての要素が詰まりすぎと言いますか…… シンザンさんの記録を辿るだけで……壮大な物語を読んだ気分になります。 いえ、全て事実なのですが……物語としか思えないです…… (4) 通算成績19戦15勝(2着4回)という、現役時に「完全連帯」を達成しているシンザンさん。 競走馬としての成績だけではなく、内国産種牡馬冬の時代に着々と実績を積み重ね、 種牡馬としての晩年に「ミナガワマンナ」さんや「ミホシンザン」さんなどの名馬を世に送り出します。 シンザンさんが亡くなられたのは、1996年の7月。 競走馬としては35歳という稀に見る長寿を達成して旅立っております。 並ぶもののいない生命力と精神力を持っていたとしか考えられません。 シンザンさんが引退した後の日本競馬関係者は、 「シンザンを超えろ!」というスローガンを掲げていたそうです。 それがどれだけ後の日本競馬に影響を与えたか……考えるだけで胸が熱くなります。 (5) 「シンザン鉄」・「鉈の切れ味の末脚」・「シンザンが消えたっ!?」 「騎手を乗せて二本足で歩いた」・「勝つべきレースを理解していたとしか思えない」などなど…… 本当にシンザンさんのエピソードは枚挙に遑がありません。 ほんの少しでもシンザンさんのことが伝わったら嬉しいです。 以上、通りすがりの秋古馬三冠ウマ娘でした。 ……すみません、なんだか書きたいことが多くなって長くなってしまいました。 読んでくださった方、ありがとうございます。 ヘロドさん、体調に気をつけて過ごしてくださいね。 次回も楽しみにしております。 それでは、失礼します。