『あー、あー………聞こえてますか?』 ビデオから流れるその声に、僕はギュッと拳を握りしめた。 その声の主は、セレトリーチェ。 引っ込み思案だけど、優しくて可愛らしい女の子。 僕の……好きな人。 告白は出来ていないけど、何度も一緒に遊んでいて、自分の中では結構良い仲になれているんじゃないかと思っていた娘。 ところが、最近彼女から新規の連絡が来なくなっていた。 心配しながらも何も出来る事は無く、しばらく待っていた頃にそのビデオは届いた。 そこに映っていたのは、紛れもなく彼女……セレトリーチェそのもの。 だが、服装が明らかにおかしい。 乳首や股間部分に穴が空き、フリフリの装束まで付いた下着。 向こう側が透けて見える程に薄く、年頃の女性らしく肉のついた身体を一切隠さないスケスケのネグリジェ。 所謂、エロ衣装というやつだ。 どういう事だと動揺しながらも、気になっていた女子のあられもない姿についつい視線はそちらへと向いてしまう。 綺麗なお椀型のおっぱい。 思っていたよりぷっくりとしている乳首。 むっちりとした太ももに覆われた股間。 綺麗に整えられた陰毛。 夢見ていたそれらを余す事なく焼き付けようと脳がフル回転する。 『それでね、どうしてこんな物を送ったかなんだけど……』 当然の事だが、ビデオの中の存在が待ってくれるはずもない。 僕が舐め回すように身体を見ている事もつゆ知らず、少し照れた様子のセレトリーチェは話を続ける。 『私ね、この人に付いていくの』 セレトリーチェが指した先、画面の奥に映っているのは、赤髪にピアスをバチバチに付けた大柄な男だった。 乱暴に括るなら、チャラ男、と言うのが近いだろうか。 だがその筋骨隆々で節々に傷が付いた身体、そして、恥ずかしげもなく掲げられた、僕の倍はあろうかというデカさのチンポ。 一目見ただけで、男として敵わないことがハッキリと分かる。 そして、その男の周りには何人かの女性が、セレトリーチェと同じようなスケベな格好で群がっていた。 赫く虚ろな目をした銀髪の女の子が、その巨乳で男の頭を挟み、枕代わりとなっている。 同じく銀髪だがキチっとした印象の小柄な女の子が、正座をして男の股間を舐めてご奉仕している。 狐のように釣り上がった目をした緑髪の女の子が、クネクネと腰を振り、柔らかそうなお尻を男の身体に押し付けている。 紫色のタイツを履いた女の子が、無造作に手マンをされて悶えている。 1人でさえ羨むような、綺麗でエッチな女性たちのハーレム。 そして…おそらくそのハーレムの中に、僕の好きな彼女も入っているのだ。 『だから、もう君とは会えないんだ』 思わず見惚れていた僕を、残酷な言葉が現実に引き戻す。 嫌だ、という言葉は彼女には届かない。 『だけど……ほら、君って私の事が好きだったよね?』 ドクン! と、いきなり図星を突かれて心臓が高鳴った。 『なのにこれでお別れです、なんて可哀想かなって……』 もしかして、また会えるのだろうか。 ……そんな僕の期待はすぐに裏切られる事になる。 『だからね、君に私がエッチしてる所を見てもらおうかなって』 その言葉は僕の脳を上滑りして、意味を理解する事ができなかった。 『ほら、恋してる相手がいなくなったら辛いだろうけど、オナネタがいなくなった位なら耐えられるでしょ?』 『だから、私を「好きな人」じゃなくて「都合の良いオナネタ」にして良いよ』 『それで私への未練を断ち切って、お互い前に進んで行こうね!』 指を立てて小首を傾げながら、ニコニコと、まるでとても素晴らしい提案をしているかのように彼女は笑っていた。 つまり、彼女の言っている事はこういう事だ。 今まで過ごしてきた、セレトリーチェとの思い出、淡く優しい恋心。 それを、低俗なオナネタとして消費してしまえ、と。 いやだ。 そんな事したくない。 頭ではそう思っているのに。 『ほら、妄想の中なら私を自由に犯して良いからね…♡』 セレトリーチェが、クパァ♡とおマンコを開いてカメラに見せつける。 好きな人から射精許可を貰った僕のチンポは、その生々しい膣口を見ただけで浅ましく勃起していた。 『実際にヤるのは無理だけど、特別だよ♡』 優しい口調は、それが本当に僕への気遣いから出た物だと伝えてくれた。 そしてそれは同時に、彼女が僕の事をどうとも思っていないと示している。 『……あ♡もうするんですね♡』 画面の奥で男が立ち上がると、セレトリーチェは僕に語りかけていた時よりも一段高い雌の声を上げた。 僕…カメラの方から視線を外して後ろを向き、四つん這いとなってお尻を突き上げて男がチンポを挿れやすい位置に調整する。 男はそれに対して礼を言う事すら無く、セレトリーチェのお尻をがっしりと掴む。 ギュゥゥ……と力任せに握られたお尻が指の形に合わせて沈み込むのがカメラ越しにも分かる。 カメラの画角で男の腰から上は映っていない。 だが、腰の動きとセレトリーチェの期待に溢れた横顔で、今から何をしようとしているかは容易に想像が付いた。 『お゛っ♡♡』 男のチンポが挿入されたのだろう瞬間、セレトリーチェの整った顔が歪む。 『あ゛っ♡♡♡ん゛ぅ゛っっ♡♡♡♡』 バチュン♡バチュン♡と乱暴な突き上げがされるたびにセレトリーチェの身体が跳ね、プルプル♡と胸が揺れる。 僕もそれに合わせて腰を振りながら、妄想の中で、自分のチンポでよがるセレトリーチェを幻視しようとする。 だがその像はあまりにも曖昧で、目の前で広がる誰とも知らない男のチンポでよがるセレトリーチェの姿にあっさりとかき消されてしまう。 『もっとぉ♡♡♡もっとしてぇ♡♡♡♡♡』 ビュルッ……。 まだ男とセレトリーチェのセックスは続いているのに、実際には挿れていない僕だけが先に射精してしまう。 バチュン、バチュンと水音がカメラから流れてくる。 1人だけ虚脱感でハァハァしている男の事など全く知らないまま、男とセレトリーチェのセックスは続いていた。 『えへへぇ……♡♡ちゅー……♡♡♡♡』 セレトリーチェは体勢を変え、対面座位でキスをせがみだす。 僕と一緒にいた時は見せた事のないいやらしい顔で唇を突き出しているのが、横顔からでも察せられた。 『んむ……♡♡ムチュウ……♡♡』 粘性の音を立てて、熱烈なキスが目の前で繰り広げられる。 その間にも男の腰は振られ、パン♡パン♡とリズミカルな音を立ててセレトリーチェの身体を揺らしていた。 僕は耐えられなくなって、ビデオから目を逸らした。 それでも、ビデオから聞こえる音は僕に現実を突き付け続けてくる。 思い出の中のセレトリーチェの顔が、雌の顔で上書きされていくのが分かる。 やめて欲しいと思っても止まらない。 何故なら、僕自身が、よがるセレトリーチェの顔を記憶したいと思っているのだから。 僕の初恋は、こうして壊れた。