教団にあいつが来てから、いろんなどたばたはあったけど、最後にはなんとかうまい形で終わることが多くなった。私が悪いことをしたときには容赦なくげんこつを食らわせてくるけど、逆に良いことをしたときとか、理由もないのに頭を撫でてくれることもあった。最初は褒めてくれるのが嬉しかったけど、そのすこし後で、ただ褒めてくれてるわけじゃないって思った。 なんというか……うまく言えないけど、私が、私として存在することを受け入れてくれてる気がしたんだ。 宴会場に毎日沢山の人を呼んで、でも必ず私と一対一で話す時間を作ってくれた。いろんなご飯を食べさせてくれて、私がそれを食べるところを見ていつもニコニコしてた。私はバカだから同じ話を何回もしたかもしれないけど、それでもあいつはちゃんと聞いてくれた。 それで――ある日ふっと思ったんだ。あいつが消えたらどうしようって。前の教主みたいに、急に居なくなったらどうしようって。そう思うと、怖くなって、私は手紙を送ったの。感謝の手紙。私はうまく喋ることはできないけど、手紙ならそれなりのものは書けると思ってる。だからきっと大丈夫だって。 でも、その少し後に、私が宴会場に呼ばれることは無くなった。きっと手続きの間違いだと思って、入り口の扉の前を行ったり来たりして、それから暫く待ってたら、最近教主と知り合った新しい友達が大勢宴会場に入って行くのが見えた。 そのとき、私の胸の中の、大事な部分に、ぴしっとヒビが入ったような気がしたんだ。宴会場の裏で一人でずっと泣いてたら、いつの間にか夜になってたみたいで、蹲ってる私をあいつが見つけたの? 「どうしたの、エルフィン? こんなところで」 私に普段のトーンで話しかけてくるあいつに、私はいろんな感情が爆発しそうになって、あいつの服を掴んでわぁわぁ泣いた。それで、あなたが、私のことを嫌いになったのかと思った、って伝えたの。 「私が、エルフィンを!? そんなわけないじゃないか!」 そう言われてちょっと安心したけれど、じゃあどうして、宴会場に呼んでくれなくなったのって聞いた。 「え……好感度21超えて、手紙も来たし、図鑑も埋められたからだけど……」 意味不明なことを言っているあいつの顔は、完全な無表情で、すごく怖かった。