「うまれるよ」とニャアンは静かに答える
「産婦人科とかもう予約しているの？」
「うん、出産入院するよ。出産入院するお金があって本当によかった」
ニャアンはお金の心配をしていた。そう、出産は医療行為ではないので医療保険が適応されない国があったりする。
日本がそうだった。出産入院は10万〜20万ほどかかる。保険外なので10割負担だ。べらぼうに高い。
ただし日本を例に挙げますが、どの自治体も赤ちゃんは産んで欲しいので。自治体で出産費用を補填してあげます。
なので実質出産費用は0になります。前金で払わないといけないのがめんどくさい所ですけどね。
ニャアンもそれを恐れていました。妊娠中に自宅分娩できるよう、準備していた位です。

ある日、大量のタオルと洗いダライを購めるニャアンにエグザベくんは困惑しました
「おうちで、うむ…お金かかるし」と話すニャアンに
出産入院の概念をエグザベくん譚寧に説明。「お金の心配はいらないボクが出すから」と語りますが
「産婆さん呼べば産める…わたしひとりでも産めますから」と悲しい瞳で語るニャアンがいました
「ひとりで産むなんて…悲しい事言わないでくれ」とエグザベくんも悲しくなってしました
「産めるよ、お母さんがわたしを産んだ時もお家だった…妹も弟もみんなお家で産まれた」
ニャアンの家庭事情が垣間見える瞬間でした。ニャアンには下の兄弟がいたようですね
しかし、それもサイド2の戦禍に焼かれてしまいました。生き残ったのはプチモビで脱出したニャアンのみです。
「ニャアンのおかあさんは自宅分娩だったんだね」
優しい瞳でおはなしを聞くエグザベくんの姿がそこにはありました。彼のブラウンの瞳に曇りはありません。
彼もまたサイド2で一家離散、肉親はみな死に。エグザベくんのみ生き残りました
「おはなし聞かせて」とエグザベくんは優しく誘う

「うん、おかあさんになる前にまず「おしらせ」がくるの、産道が開く時の軽い出血、そしたら産まれるまでみんないっしょ、おとうさんもわたしもいっしょ」
ニャアンは静かに語り始めます。軍籍時代に交わしていたエグザベくんとの敬語すら忘れて。一人、語り始めます。
「取り出して、オギャーって泣かない時は逆さにして背中をポンポン叩くの…ダメだったときもあるけど」
『ダメだった時』について深くふれないでおくのがエグザベくんの処世術です。
「そうだね、ニャアンは赤ちゃんを取り出せるんだね…けどボクやマチュくん達じゃちょっと心細くないかい？」
「『あなた』なら、取り出してくれる。いえ、とりだしてくださいエグザベ少尉」
「少尉はやめ給え、ここはジオンだよニャアン。無償で出産入院もできるし医学的分娩に頼ろうよ」

「おうちで産みたいという気持ちもあります」
ニャアンは静かに語ります。ニャアンのお母さんがそうであったようにニャアンのおばあちゃんもそのおばあちゃんもそうであったように
ニャアンは我が家で産みたいみたいです。しかし―――
「『あなた』がそういうのなら、わたし病院で産みます、うむ…あかちゃんうむ」
固く決意してくれたみたいです。
エグザベくんもニッコリ
そんな背景が二人には存在します。そして臨月。分娩の日は近い。

話を夕方の緑地に戻します。
キコキコと金属のチェーンが擦れる音が聞こえる
マチュとニャアンがブランコを漕いでいるのだ。大人がブランコを漕いではいけないなんてルールは存在しない
「出産に立ち会っていい？」「いいよ、エグザベくんはお仕事かもしれないからマチュ達がいてくれると嬉しい」
「エグザベくんだって産気づいたら仕事なんて投げ出すよ」「『仕事を優先して』って彼には伝えてあるから」
「そんな淋しいこと言わないでよニャアン…みんなが見守ってあげるよシュウジもわたしもエグザベくんも」
「シュウちゃん、マチュ、エグザベくん…」「そう、そうだよ！だから安心して産んで良いんだよ」
マチュは励まします。しかしニャアンの顔には翳りが見えます
「うんで、いいのかな？」
小さな声でしたが、マチュが聞き漏らすはずがありません
「ニャアン、今なんて言った！？」

「この子を産んでいいのかな？わたしは産んでいいのかな？」
お腹を撫でながらニャアンは悩ましい表情を浮かべます。人口照明たるサイド3は夕暮れを演出していました。
「ニャアン…」マチュは言葉が出てこない
「だって―――この子は、この赤ちゃんは…望んで授かったものじゃ―――みたくない」
臨月のお腹を抱えるニャアン、ｽﾝｽﾝと鳴き声が聞こえてきました。
ドヴォルザーク新世界第二章「家路」がジオン公民館のスピーカーから響き渡ります
人口太陽たる照明が影を伸ばしていく―――
暗がりでニャアンの顔が見えない。けど泣いている彼女の姿をマチュははっきり見ていた。
キラキラの力でニャアンの涙を受け止めるのであった

「ニャアン！しっかりして！ニャアン」
「だって！だってわたし！！！！」
ニャアンの涙はますます溢れてきます。マチュの心にニャアンの過去が流れ込むのがわかります
ニャアンが受けた謂れなき暴力の数々。温室育ちの女学生が嗅ぐことは決してなかった「いやなにおい」が伝わります
けど、マチュの瞳はまっすぐでした、ニャアンをただ見つめています。
「ニャアン…お腹の赤ちゃんは『産まれたい』って言っているよ」
マチュは静かに語りかけます。静かですが、力強い言葉でありました。
「うまれたい…産まれたい…産まれたい命」
「ニャアンは赤ちゃん産みたかったんだよね？」
謂れなき受胎。いつでも堕胎するチャンスはあった。しかしニャアンは『産む』事を決意した。
この命が、ニャアンが生きた「証」なのだから
ニャアンは命を拒むことはなかった。

しかし、今日という日、もう産むしか無い臨月を抱えて。つい不安が口に出てしまったそれだけなんだ。
大丈夫なんだ、ニャアンは大丈夫なんだ
「うん、産みたい…赤ちゃんの顔、みたい」
「じゃあ産まないとねニャアン、頑張って産もう？」
マチュはブランコから降りて、そのニャアンの身体を抱きしめる
キォコ　キィコ
主を失ったブランコが唸っていた
「うん、うむ。わたしうむ」
ニャアンの心が、取り戻されていく

「ごめんね、ごめんね、産みたくないなんか言ってごめんね、ごめんね」
ニャアンは夕暮れの緑地でお腹を撫で続ける、「産みたくない」と叫んだ己れの言葉を悔いるように。

「―――だいじょうぶだよ」

と呼応するように言葉が聞こえた、マチュにも聞こえた
ジフレドの声と同じだった。

「うまれるよ、おかあさんからうまれるよ」

声が聞こえた気がした―――神聖な瞬間であった。

ドヴォルザークの放送が止む。「ﾌﾞﾂｯ」と言うレコードの針が持ち上がる音まではっきり聞こえた

「ありがとうジフレド、ありがとうあかちゃん」ニャアンはまた泣いてしまう。泣き虫さんだった
「産もう、産もうねニャアン」マチュの手はニャアンを固く握っていた。
ジークアクス2号機、ジフレドの回収された残骸は此処サイド3に眠る。電源を失ってもなお、光り続ける瞳がニャアンに訴えかけたのだ。
お腹の赤ちゃんの誕生を望んでいるのは人類だけではない、ジフレドという金属生命体も同じなんだ
キラキラの中でニャアンとマチュはジフレドに出会った
とてもやさしい子だった。そんな印象を覚えるに久しい
「帰ろうか」
「そうだね」
少女二人、手を握りながら家路へ向かう。夜時間にさしかかっていた。
ニャアンは産む覚悟を決める。もう逃れる術はない、道は一本きりなのだから
ニャアンはいいおかあさんになれるよ
薄暮を過ぎた夕闇がニャアンを包んでくれる

以上がニャアン人妻概念の全容です
先日のwebオンリー閲覧していただきありがとうございました
ドヴォルザーク新世界第二章「家路」参照url
https://www.youtube.com/watch?v=h7HsOiwFTSA
次回のジークアクスの内容次第で語りたりない所もあると思うので、続きはまた後日。

堕ろしてもいいんだよニャアン

>いいお母さん

>いいお母さんになりそうな娘

ニャアンが赤ちゃん産みたくないって言ってる
緊急事態では？

ジフレドちゃんありがとう

ニャアンに妹や弟いたんだ
お姉ちゃんって感じするもんねニャアン
ニャアンはいいおかあさんになれるよ

ニャアンのおうちは子沢山のイメージ

お父さんもお母さんも弟も妹も
みんな死んじゃったんだけどね

今日もありがとう

自宅分娩が似合うねニャアン

産みたくない…顔も知らない男の種で孕んだ赤ちゃんなんて産みたくないニャアン！！！！！！！

ニャアン落ち着いて…落ち着いてくれッ！
この子はボクとニャアンの赤ちゃん…赤ちゃんなんだ
だから産もうねニャアン
ニャアン…ボクの声を聞いてくれ！

>産みたくない…顔も知らない男の種で孕んだ赤ちゃんなんて産みたくないニャアン！！！！！！！
正体を顕したコモね

ジフレドちゃん…

堕ろすコモ
そしてエグザベくんと別れるコモ

妊娠22週以降は生命として見なされるので
堕胎は殺人罪に問われますよ

ニャアンは自由にしていいんだよ
でもニャアンはいいおかあさんになってほしいなぁ

今日もありがとう
暗いおはなしだったけど明るく〆てくれてありがとう

孕んどる…？！

>孕んどる…？！
>ニャアンはいいおかあさんになれるよ

さっさと産むザベ
さっさと子宮を開けるザベ
そしてボクとの本当の子供を孕むザベ

エグザベくんの血を引いてないけど産まれてきた赤ちゃんにはそれはもう愛を注ぐんだよね
暴漢の血が入っているとは思えないくらいニャアンそっくりな娘が産まれてきてしまって
憎むに憎めないんだよね

エグザベくんとの赤ちゃんも産まれる
平等に愛しているはずなのに
可哀想な出自をもつ長女ばかり贔屓して愛していないかと悩むニャアン
悲しき雰囲気がオリベ家を包む

かなしいおはなしは望まず...

天才