二次元裏@ふたば

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330590 B25/11/05(水)22:13:30No.1369834490そうだねx12 23:44頃消えます
🐱
「…うわっ、なにこれ」

いつも通り、手応えのないオーディションを終えた帰り。
スマホを見るとウミコからのメッセージと電話の通知が何件も着ていた。
「大変です」とか「至急連絡ください」とか、泣き言みたいなメッセージが並んでいる。
さてどうしたものかと躊躇していると、見計らったように電話がかかってきた。

「…なに?」
『八幡です。既読が付きましたので電話しました。手短に伝えます』

怒っているわけでもなくむしろ緊迫した様子。
ウミコのその声に、どうせ下らないことだろうと思っていたアタシはギョッとする。
電話口に耳を澄ませて、次の言葉をじっと待つ。
またウイコが失踪したのか、それとも…
このスレは古いので、もうすぐ消えます。
125/11/05(水)22:13:46No.1369834591+
『豊川さんが浮気しました』
「……はぁ〜!?」
『正確に言えば未だ、ですが。しかし、考えますと言ったんですよ』
「いや、何の話?」

自分だけ分かってる話をまくしたてられても分かるわけ無い。
こんなコミュ力でよくいくつもバンドを掛け持ちしてたものだ。
それだけ腕だけは確かってことなんだろうけど。

『とにかく一度、相談したいので来ていただけませんか』
「嫌だけど」
『では。お待ちしてます』
「だから嫌だって…切れた」
225/11/05(水)22:14:00No.1369834652+
すぐに、待ち合わせらしき喫茶店の住所がメッセージで送られてくる。
ダメ押しとばかりに、「来てください」とコメント付きで。
アタシ行かにゃいかんとか…?
こういう時に限ってこの後は予定がないのが恨めしい。
無視したときのウミコの取り乱しようも…そうなるだけのトラウマも知ってるわけだし。

「はぁ〜〜…」

肩から下げた鞄のストラップを握ると、アタシは喫茶店へ足を向けた。
325/11/05(水)22:14:30No.1369834831+
🐱🐼
それはある晴れた日の打ち合わせで起こりました。
会議室にて私と豊川さんは、頭を下げたままの事務所スタッフをじっと見ていました。
今後のイベントやライブの企画、スケジュールの調整など、一通り済ませ一息つくはずでした。
しかし。
打ち合わせを終えて私達二人が会議室に残された時、一人のスタッフ──たしか営業をやっている方です──がそろりと入ってくるなり謝罪をしたんです。
豊川さんの了承無しに作曲依頼の話を受けてしまった、と。

「事後承諾で申し訳ありません…」

私は彼女の後頭部から、横に座る豊川さんへ視線を移しました。
豊川さんはじっと彼女を見つめ、口を引き結んだように開きません。
なので、私が話を進めるとしました。
425/11/05(水)22:14:51No.1369834960+
「先方がAve Mujicaさんの楽曲を非常に評価しておりまして…それでどうしてもと押されまして…」
「だから良い返事をしてしまったと言うことですか」
「その〜…先方は非常にお世話になったところでして…話だけでもと…」
「しかし豊川さんはAve Mujicaで手一杯なので、そのような余裕は」

私は豊川さんへ同調を求めました。
我らが女神は、きっぱりと断ってくれるでしょう。
そう期待して…いや、期待するまでもないことだと思っていました。
豊川さんが答えるその時までは。

「…分かりました。日程の調整をお願いします」
「え!?」

私は椅子から立ち上がってしまいました。
525/11/05(水)22:15:16No.1369835112+
驚きの余り、頭が真っ白でした。
だって、これは裏切り、浮気ですから。
私達の運命を預かっている豊川さんが浮気するなど、許されません。

「本気ですか」
「なにか問題でも?」
「問題しかないですよ!」
「海鈴。私が決めたことですわ」
「しかし…!」

視界の端で驚いているスタッフのことなど、気になりませんでした。
神の気まぐれ、などと軽く考えられるような事ではないですから。
私は豊川さんの真意を探ろうとその顔をじっと見て…しかし、分かりませんでした。
ただ静かに、無慈悲とすら思えるほど静かに私をただ見つめ返してくるだけ。
625/11/05(水)22:15:35No.1369835210+
「私は認めません…!」
「これはAve Mujicaではなく私に来た話ですわ。これ以上騒ぐのなら退室なさい」

私はただ歯噛みすることしか出来ませんでした。
椅子に座ることも出来ず、ただ豊川さんを見下ろし続けることしか……
……
──と言うことがありまして」
「そ〜…」

指定された喫茶店で本当に待っていたウミコは、アタシが席につくなりもう辛抱ならないといった様子でペラペラと語りだした。
せめてアタシの注文したものが配膳されてから始めな〜?と宥めたのも虚しく、アタシはもうウミコが満足するまで相槌するのも止めて聞いていた。
そうしてウミコなりに熱く語り終えたところで、アタシは心底興味なさそうな相槌を打つ。
アタシの反応をじっと待つウミコを焦らしつつ、注文したミルクティーを一口含んで静かにティーカップを置く。

「これは浮気確定ですよ」
725/11/05(水)22:15:53No.1369835338+
アタシはなにも答えなかった。
内心、困っていたからだ。

──やばか〜〜普通に気になる!

バレない様、努めて興味なさそうに振る舞う。
話しかけているのか、ただ文句を言いたいのか分かってなさそうなウミコにバレる気はしないけど。

「豊川さんがあんなに堂々と浮気するとは思いませんでした」
「…それで? ウミコはどうしたいわけ?」
「それは勿論、豊川さんを止める以外ありませんが」
「ふ〜ん」

そこは分かってるんだ。
825/11/05(水)22:16:10No.1369835452+
アタシは頬杖をついてウミコを眺めた。
眼の前のアタシがどう答えるのか、じっと待ってるような顔。
この子なりに、助けを求めているのか。信用して相談してるのか。
そのどちらでも無くて、ただ勢い任せで場を設けただけのように感じる。
思ったよりまともな内容だったから、少しは安心したけど。

「ま、珍しく冷静なウミコに免じて、アタシが先に手を打っておいてあげたから」
「祐天寺さんはエスパーなんですか?」
「なにそれ」

なんでそうなるんだって苦笑する。
それ以上は突っ込まず、アタシはスマホを確認した。
ウミコの話が長くて、気付けばちょうどいい時間になっていた。
925/11/05(水)22:16:30No.1369835571+
「…もうそろそろ来るんじゃない?」
「誰がですか?」
「サキコだけど」
「え」

予想もしていなかった名前が飛び出したらしい。
ウミコは目を見開いてわかりやすく動揺していた。

「いきなりすぎませんか」
「それをウミコが言う〜?」
「…? 私はこうして事前打ち合わせの場を設けましたが」

暖簾に腕押しみたいな問答に呆れて苦笑する。
振り回される身にもなってほしい。まあ、付き合ってあげないけど。
1025/11/05(水)22:16:43No.1369835647+
「あのさウミコ。そうやってコソコソやるから信用されないんじゃないの」

ウミコは何も言わなかった。
これまた分かりやすくショックを受けている顔を尻目に、アタシはミルクティーを一口飲んだ。
1125/11/05(水)22:17:01No.1369835751+
🐱🐼☕
紅茶を一口飲み、唇を湿らせます。
湯気に乗ってふわりと、しかし確かに香るのは甘い果実と花のハーモーニー。
フレーバード・ティーの香りを密かに楽しみながら、私は切り出しました。

「…それで? 話というのはなんですの」

喫緊の課題は無いとは言え、暇なわけではありません。
この二人とはこうして飲み物を片手にお喋りを楽しむ仲でもありませんし、できれば手短に済ませたい。
そんな私の考えとは真逆に、にゃむはただニヤリと笑います。
そうしてにゃむは、彼女の真横に座る妙に静かな海鈴を肘で小突きました。

「浮気…」
「は?」
1225/11/05(水)22:17:16No.1369835852+
「豊川さんは作曲依頼、本当に受けるんですか」
「ああ…」

なるほど、と私は頷きました。
席について海鈴からずっと向けられていた、こちらを糾弾するような視線。
それはどうやら、先日海鈴と事務所にてあった出来事が原因だったようです。
あの日も確かに海鈴は、別れ際まで同じ目をしていました。

「今日呼び出したのは、そのことで?」
「そ〜。アタシにどうしようって泣きついてきたんだから」
「泣いていませんが」
「事実じゃん」
「泣いてません」
1325/11/05(水)22:17:34No.1369835944+
やれやれ、と私は気付かれないよう小さく息を吐きました。
あの場で説明すべきだったと思う気持ちも、まあ、少しはありますが。

「ご心配なく。話を聞いたうえで、きちんとお断りしましたわ」
「えっ」

顔を上げた海鈴は、それはもう嬉しそうに口元をほころばせました。
彼女がそんな大事にするほど、深刻に考えていたとは思いませんでした。
ただ私なりに、義理を果たそうとしただけのことで。

「皆の運命を預かる身、私の作る音楽すべてはAve Mujicaのためであるべきですわ」
「流石です、豊川さん。それでこそです」

言って聞かせるよう、海鈴に向けてまっすぐ告げました。
1425/11/05(水)22:17:56No.1369836090+
海鈴はここが喫茶店でなければ立ち上がって拍手しそうな勢いでうんうんと頷いています。
ともかく、喜んでくれているようでした。

「ふ〜ん…でも、なんでそんな回りくどいことしたわけ?」

にゃむの指摘に、私はなにも答えませんでした。
この話を持ちかけてきたスタッフ──彼女は以前、私達のPRを担当していました。
それも、私達の手で身勝手にも壊してしまった全国ツアーの。
あの夜頭を下げて回っている姿を覚えていたから…それこそ、弱りきっていた私でも覚えているくらい。
だから私はあの場で無碍に断れませんでした。
それに、その後の補填で協力した見返りにと彼女に無理を言ってきた先方と違って、彼女は私の罪悪感につけ込むようなことはしなかったですし。

「ていうかそもそも話持ってきたの誰なの?」
1525/11/05(水)22:18:15No.1369836187+
「──さんです」
「あ〜袋小路さんと仲いい人…っていうかツアーのときの…」

海鈴が告げた名前を聞いてたにゃむは、それでことの全部が分かったように、にやりと笑いました。
ハッタリではなく、きっと本当に理解したのでしょう。
にゃむの頭の回転の早さが、こういう時はすこし恨めしい。
私を見て面白がって笑うにゃむに、そういう事情でしたと認めるのは癪でした。

「なにか?」
「べっつに〜? アンタにも義理堅いところがあるんだな〜って感心してるだけ」
「褒め言葉と受け取っておきます」
「ふ〜ん。まあでも、断るために行くってのも残酷な気がするけど」
「…神は善良ではありませんので」
1625/11/05(水)22:18:43No.1369836352+
私はふい、と顔を逸らしました。
気恥ずかしさを感じて、それを悟られたくなくて。
…やはりにゃむは少し苦手です。

「お二人とも、なにか甘いものを食べませんか」

唐突に、海鈴が広げたメニューを机の上に置きました。
先程の静かな様子から一転、すっかり気を取り直したようでした。

「はぁ? もうお開きでしょ?」
「私は…杏仁豆腐を食べようかと思うのですが」
「なんでそんなのあるのここ…うわホントだ」
1725/11/05(水)22:19:24No.1369836588+
楽しげにメニューを眺める二人を放って、私は静かに紅茶を飲みます。
用は済んだことですし、席を立ってさっさと帰ってもいいですが。

「海鈴。スコーンかカヌレがあれば頼んでくださる?」
「了解しました」
「え、サキコも食べるわけ? じゃあアタシはどれにしよ…」

ですが、ここは海鈴の誘いに乗るのも悪くはないでしょう。
少し冷めても変わらず美味しいこの紅茶が、少しだけ名残惜しいから。
そういうことにしておきましょう。
1825/11/05(水)22:24:58No.1369838636+
久しぶりに10レス超える気合いの入った怪文書見ましたわ
1925/11/05(水)22:29:08No.1369840096そうだねx2
浮気だよ…
2025/11/05(水)22:30:10No.1369840465そうだねx2
にゃむうみさきは雰囲気アダルティだね
2125/11/05(水)22:33:11No.1369841501+
まだ問題の重さがマシ(マシではない)なメンツだから神も気楽なんだ
2225/11/05(水)22:39:53No.1369843847+
>にゃむうみさきは雰囲気アダルティだね
海鈴は駄々っ子ですわ⋯
2325/11/05(水)22:42:50No.1369844983+
海鈴の駄々こねは何事も隠そうとするAve Mujicaメンバーにとっては非常に有用だと思う
2425/11/05(水)22:46:22No.1369846219+
動物の絵文字はなんのために入れてるの?
2525/11/05(水)22:48:05No.1369846790そうだねx1
(たまたま居合わせてちょっと遠めの席で豊川さん…浮気…だけ聞こえてきた初香)
2625/11/05(水)22:50:44No.1369847734そうだねx2
>動物の絵文字はなんのために入れてるの?
🐱にゃむ🐼海鈴☕祥子で各キャラを表してます
ただの遊びなので無視しても問題ありません
2725/11/05(水)23:08:02No.1369853364+
>🐼海鈴
💦
2825/11/05(水)23:10:02No.1369853986+
さきちゃんが私に内緒で浮気してる…?!
2925/11/05(水)23:33:08No.1369860901+
紅茶→☕
コーヒー→☕
3025/11/05(水)23:38:46No.1369862458+
こういうのがどんどん見たい…


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