【“温泉郷”ユフィン教国】 ブルライト地方における中央に位置し、ディガッド山脈の麓で山肌へ沿うように作られた国です。付近にハーヴェス王国へと流れていくウォルタ川の上流域があります。 遠い彼方から海を渡って移り住んできた人々が築いた国とされ、現在ではハーヴェス王国の属国として存在しています。 【ユフィン教国の歴史】 歴史は浅く、成り立ちは〈大破局〉以降のものと分かっています。 〈大破局〉の際に山から降りてきた蛮族と海の“奈落の魔域”から押し寄せた魔神たちの激戦地となりハーヴェス近郊は壊滅的な被害に遭いました。 やがてハーヴェスは復興と共にいくつかの街が生まれ、それがハーヴェス王国の前身となる「ハーヴィン都市同盟」が発足します。 この頃にアルフレイム大陸外の遠い地方で戦乱の果てに国を追われ、船で海辺へ流れ着いた人々がいました。 彼らは既存の都市や街との争いを避けてウォルタ川を遡上したところへ故郷とよく似た村を作りました。それがユフィン教国の始まりとされています。 〈大破局〉の傷が癒えてきた頃、ハーヴィン都市同盟では資源や物資を求めて都市間の戦争が勃発します。 しかしユフィン教国の前身となる村はもともと彼らとの争いを避けるため海岸から離れたところに構えていたため争いに巻き込まれずに済みました。 やがて初代ハーヴェス王がこれらを平定し、都市同盟をハーヴェス王国として生まれ変わらせます。 村の長は協議の末、ハーヴェス王国の属国となることを誓う代わりに小国として認めて欲しいと申し出ます。 街路の中継点を求めていたハーヴェス王国はこれを承諾し、ここにユフィン教国が生まれたのです。 【政治】 ユフィン教国は“信仰による統治”を旨とする小規模な宗教国家であり、一般的に知られる神とは別種の精霊信仰を基盤とした祭政一致の体制を採っています。 頂点に立つのは「巫女長(すいじょちょう)」と呼ばれる女性の最高指導者で、国家の象徴にして信仰の導き手です。 巫女長は神託により選ばれるとされ、祈祷と祭祀を司る一方で、国政の最終決定権を有しています。ハーヴェス王国に対しても外交上の代表者としての役割を担っています。 巫女長を補佐する行政機関として「湯守院(ゆもりいん)」が置かれています。湯守院は信仰と民政を統括する役所であり、その長官は「湯守正(ゆもりのかみ)」と呼ばれます。 温泉資源や祠、霊域の管理をはじめ、徴税や地方統治もこの機関が担っています。湯守院はさらに以下の三部に分かれます。 ・社務部(しゃむぶ)──神殿や祠の管理、祭祀の運営、教義の維持を担当します。 ・泉務部(せんむぶ)──温泉や水路の管理、療養所や湯宿の監督を行います。 ・衛務部(えいむぶ)──防衛計画や自警団の統括を行いますが、その規模は小さく、常備兵力はごく限られています。 ユフィン教国は基本的に専守防衛であり、主に山を下ってくる蛮族を追い払うために存在しています。 しかし小国故にその規模は小さく、いざとなればハーヴェス王国から軍隊が派遣される盟約こそありますが慢性的に人不足という問題を抱えています。 そのため国家は防衛体制を構築する一環として、冒険者ギルドの招致と保護に力を入れています。 国内には多種多様なギルド支部が設けられ、探索や討伐依頼を通じて国境防衛を担う仕組みが整えられています。 名目上、ユフィン教国はハーヴェス王国の属国として位置づけられています。 外交や軍事においてはハーヴェスの承認を必要としますが、独自の信仰と温泉資源を背景に高い自治権を保持しており、実質的には半ば独立国として運営されています。 また、ハーヴェス王国側もこの地を静養と交易の要地として重視しており、干渉を控えています。 貴族や冒険者が滞在するための宿場街は活況を呈し、ユフィン教国は“癒しと祈りの地”として知られるようになりました。 独自の風俗と豊かな温泉を目当てに多くの湯治客とそれを目当てにする人々の流入で賑わっていますが、彼らと住民の間の摩擦など内憂も少なからず抱えている国です。