代魔王と屑魔王  ゴミカスは強く偉大で邪悪な魔王である。廃棄物から創り上げた異形の巨腕や翼を代名詞として戦乱の世に姿を現した屑魔王の名を知らぬ者はトラレテーラ領近辺には存在しないだろう。だがそんなゴミカスには知られていない弱点が一つ存在した。  「あ、あの…どうかしたんですか…?」  「あっ、いやっ、な、な、な、何でもないぞっ…!」  どういうわけだがここ最近、ヒトジティを見ると妙な気分になるようになってしまったのだ。特にヒトジティの豊満な胸や露出した太ももが視界に入るとむずむずするような感覚が内側から湧き上がってくる。  「顔が赤いですけど…?」  「わっ…!?」  気が付くとヒトジティの顔が目の前にあった。どうやらゴミカスの顔色が赤くなっているのを心配して覗き込んだようだ。それにしてもこいつ綺麗な顔をして…じゃなくて!  その時、二人の間に割って入るように、物陰から突然ニンジャが飛び出してきた!  「ドーモ。ゴミカス=サン。サプライズ=ニンジャです」  「アイエエエ!?ニンジャ!?ニンジャナンデ!?」  おお、ゴウランガ! 〜〜〜  嘘つき宰相 さんのレビュー  高名な魔女ハリィ=ウッドの映像作品と聞いて見ましたが☆1つです。金返せ。 代魔王と屑魔王Ⅱ  ゴミカスは廃棄物から衣服や強力な装備を創り出し、それらを自在に操る恐るべき魔王である。異形の巨人から魔王に相応しい衣装まで意のままに生み出すゴミカスは、数多の事物の構造を完全に理解していると言っても過言ではない。しかしそんなゴミカスにも本人でさえ知らなかった未知の領域が存在した。  「うう…ごめんなさい…この服一人じゃ着れないみたいで…」  「べ、べ、別にそれぐらい気にするな!えっと…ここを引っ張ればいいのか…?」  女性の衣服の構造である。特にこの式典用らしい礼服ともなると何がどうなっているやらゴミカスには分からない。  「ひゃっ!」  「へ、変な声を出すなっ…!」  しかも着るのを手伝わせている本人が頻繁に妙な声を出すものだから、そのたびに注意力を削がれて仕方がない。しかもヒトジティからは何だか甘い匂いまでするし…いやいや!何を考えているんだ!ゴミカスが雑念を振り払うように視線を逸らすと今度はヒトジティの豊満な胸が視界に…  その時、二人の間に割って入るように、空からサメが降ってきた!  「我はゾンビ・"シグマ"スカイシャーク!」  地獄の底から響くような声がサメの口から発せられる。何ということだろう!このサメはただの空飛ぶサメにあらず!不死身のゾンビスカイシャークだったのだ! 〜〜〜 嘘つき宰相 さんのレビュー ハリィ=ウッド監督の新作。大事な場面でニンジャを出すなと言っていたら大事な場面でサメが出てきた。違う。そうじゃねぇ。☆1。 葬送祭  「トラレテーラ領ってのは良いところだし、葬送祭ってのは良い祭りだな!」  両手に大量の菓子を抱えたゾンバートが屈託なく笑う。しばらく姿が見えなかったのでどこに行ったのかと思っていたが、どうやらあちこちで声をかけられていたようだ。  「何だか知らねえけどみんな菓子をくれるんだよ!ここのやつらはみんなすっげえ親切なんだな!」  ここは死者と不死者が親しき隣人として暮らしている常秋の国、トラレテーラ。そして今行われているのはトラレテーラ領が発祥である「葬送祭」。  「たぶんゾンバートさんがゾンビだと思わ」  「菓子はいりますか、マイン?」  「あっ!ありがとうございます!」  私はマインに菓子を与えてひとまず静かにさせる。葬送祭とは死者を弔うためのイベントだ。もしもだ、もしも彼が自分の正体に気付いてしまったらどうするのか。  「ん?俺の顔に何かついてんのか、レイス」  「綿菓子がついていますよ」  「マジ?マジだ!」  自分もアンデッドだと言うのに友人の死を受け入れられず、また彼の二度目の死をなるべく遠ざけようとしている私に何と言うのだろうか。