■ 基本情報 - 名前:上野呼絵(かみの こえ) - 立場:上野聖教会の管理者(トップ) - 物語の役割:黒幕その1 - 特徴:幼少期から救世主に憧れるが、自身は「救世主になれない」と痛感し、歪んだ信仰と執念を抱く。 ■ 幼少期 - 貧しいボロ教会を営む両親の一人娘として誕生。 - 両親は「誰かのために」を信条とする理想主義者。 貧者を助け、病人を看取り、争いを仲裁する。 そのために世界中を飛び回り、時に薄給・無給で動き続けた。 呼絵はそんな両親から愛情をしっかり受け取っており、家庭内環境は温かい。 ただし、両親が家を空けることが多く、孤独も抱えていた。 - 両親の教育で礼儀正しく、「~です」「~ます」ときちんとした口調に。 幼少期の彼女は 明るく優しい性格で、貧しさを嘆くこともなく、日常として受け入れていた。 一方で、両親の生き方を「尊敬」と同時に「疑問」として感じ始める種が芽生えていた。 - 5歳:両親への問い 貧困や両親の不在による孤独に耐えきれず、幼い呼絵は「どうしてそんな見返りもない、辛く苦しいことを続けるのか?」と疑問を投げかける。 子どもなりの言葉で、「結局そこまでしても救えるのは一握りだけなのに、どうして?」と。 「どうせすべてを救えないのなら、見ず知らずの他人じゃなくってまず二人の子供である私を救ってほしい、構ってほしいという本音までは口に出すことはできなかった。 両親の答え 「見返りなんてない。全員を救うこともできない。  でも、一人でも救えたなら、それは意味のあることなんだ。」 自分たちは「救世主」ではないけれど、動くことで救える命があるなら、それで十分だと教える。 呼絵の受け止め 幼いながらもその答えに強く感銘?を受ける。(自身よりも自分の使命を取る両親に絶望する) 両親を「ただの親」ではなく「世界を救う存在=救世主」として憧れるようになる。(子供の自分よりも優先されるほどその使命は大事なものなのだと思い込むことで精神の安定を図る) この時、彼女の心に「自分もいつかは両親のように誰かを救う者になりたい」という純粋な理想が芽生えた。 - 7歳:両親が海外で活動中に殉職。同時にランドセルが両親からの入学祝いとして届く。 呼絵の心には埋められない大きな穴 が空いた。 しかし彼女は「両親は理想を最後まで貫いたのだから誇らしい。悲しむ必要なんてない」と、幼いながらも無理やりに自分を納得させる。 →本当は「喪失感」と「寂しさ」で押し潰されそうだったが、それに蓋をして“誇り”で包み隠した。 両親の親類縁者は存在せず、呼絵は 完全な天涯孤独 に。 頼る人は誰もいない。残されたのは ・傾いたボロ教会(住居兼居場所) ・両親が残した「そこそこの保険金」 それだけだった。 象徴の変化 ランドセルは「両親が生前に用意してくれた最後の贈り物」。 ボロ教会は「両親が人生を捧げた信仰の拠点」。 → 呼絵はこの二つを見つめながら、自分もまた両親のように「誰かを救う者にならねばならない」と決意を強めていく。 学校生活 7歳で両親を失い、ランドセルを背負って入学。 クラスの子どもたちから見れば、呼絵は「親のいない変わった子」。 さらに本人は「救世主になりたい」と本気で語るため、同年代の目には「電波ちゃん」「夢見がちな変人」として映った。 周囲からの反応 呼絵は「浮いた存在」として距離を置かれる。 彼女はすでに「聖女」と「狂人」の境界に立っていた。 心理 呼絵は「一人でもいい、自分は救世主になるんだ」と固く心に誓い、孤独を当然のことのように受け入れた。 幼い心はすでに「普通の子どもらしい交友」よりも、「世界を救うために何をすべきか」という使命感に偏っていた。 ■デジタルワールドへの召喚 - 9歳のある日、呼絵は気づけば全く知らない場所に立っていた。 見渡せば、現実とは異なる景色――電脈が走り、無機物と有機物が混ざり合った奇妙な世界。 それが後に「デジタルワールド」と呼ばれる場所だと知る。 混乱する彼女に事情を説明してくれたのが、シスタモン・ブラン。 口調は「〜っす」。 けだるげな雰囲気を漂わせるが、不思議と呼絵に安心感を与える存在。 -パートナーとしての関係 ブランは呼絵を「選ばれし人間」として認識しており、自然にパートナーの関係が成立する。 呼絵にとっては、両親を失って以来初めて得た「絶対的な味方」。 ブランのけだるげさと「〜っす」口調は、一見頼りないが逆に 呼絵の偏執的な使命感を中和してくれる。 -呼ばれた理由 デジタルワールドには世界を維持するための要として 四聖獣(東西南北の守護獣)が存在する。 彼らの存在によって世界そのものが安定し、秩序が保たれていた。 しかし、先日そのうちの一体――スーチェーモンが何者かに暗殺されてしまう。 四聖獣のバランスは崩壊の危機に瀕しており、このままでは世界そのものが瓦解する。 -イグドラシル?の判断 ブラン曰く、デジタルワールドの管理者たるイグドラシルは、この非常事態を収束させるために人間を呼ぶ決断を下したという。 イグドラシルは「この世界を救ってほしい」とシスタモンブランを通じて呼絵に役割を与える。 シスタモン・ブラン(別個体)の役割 イグドラシル直属のシスターであり、代弁者であり、呼絵を導く案内役。 呼絵にとっては、両親に代わる「使命を託してくれる大人」のような存在でもあった。 - 同行者:継人 継人(つぐと) -基本 呼絵と同じく9歳。 イグドラシルによって同時にデジタルワールドへ呼ばれたもう一人の子供。 -性格 声が大きく、活発で一見がさつ。考えなしに突っ走るような行動も多い。 しかし本質は「人一倍気遣いができる優しい少年」。 そのため、孤高で浮世離れした雰囲気の呼絵にも自然に接し、すぐに打ち解ける。 -物語上の意味 呼絵の対照 呼絵:孤独を抱え、救世主という強迫観念に縛られた少女。 継人:周囲と自然に馴染み、人を思いやれる少年。 → この二人の対比が、「理想に偏執する呼絵」と「人を大切にできる継人」という将来の分岐を示唆する。 -心の救い 呼絵にとって初めて「普通に友達になってくれる存在」。 彼の気さくさと気配りによって、呼絵は初めて“孤独でない日々”を味わうことができた。 -継人のパートナー:ハックモン 白い竜型のデジモン。 継人と同じく明るく前向きな性格。 無鉄砲な継人を支えつつ、彼の良さを伸ばしていくバランサーでもある。 -ブランとの関係 シスタモン・ブランとは旧知の仲。 ブラン自身も「弟のようなものっすね」と説明するほど近しい存在。 ハックモンにとってブランは「昔を知っている相手」であり、彼女の過去を示す語り部になる。 -ブランの変化(伏線) ハックモンの口から語られるブランの過去: 「昔はあんな無気力な口調じゃなかった」 「もっと前向きで強い意志を持っていた」 しかし、いつからか「悟ったように無気力になってしまった」。 → この発言はブランに何があったのか、彼女が何を知っているのかという大きな伏線となる。 ■ デジタルワールドでの冒険 4人の関係性 -継人(主導役) 基本的に場を引っ張っていく「物語のドライバー」。 声が大きく、がさつで突っ走るけれど、実は誰よりも人の心を見ている。 問題に直面したときも、結果的に的確な判断とリーダーシップで場を収める。 → 主人公気質の正道タイプ。 -呼絵(かき乱し役) 「救世主ロール」を自覚しており、常に場をひっかき回す。 自分の理想に沿って行動しようとするため、空気を読まない発言や突飛な行動をしがち。 その偏執さが周囲を混乱させるが、逆に場にドラマを生み出す存在。 → 理想に囚われる狂気を内包したムードメーカー。 -シスタモン・ブラン(ツッコミ/常識人) 呼絵のパートナーであり、常に「いやいやいや」と突っ込みを入れるポジション。 落ち着いていて常識的。だが継人とハックモンが甘いので、最終的に呼絵の暴走に巻き込まれる。 表向きは引っ込み思案だが、内心では常に仲間を支え、守っている。 → ツッコミ兼良識の象徴。 -ハックモン(相棒/調整役) 継人のパートナー。継人と同じく明るく前向き。 呼絵に対しても人懐っこく、場を和ませる存在。 ブランとは旧知の仲であり、ブランの過去を知る数少ない語り部。 → 潤滑油であり、チームの温度を上げる存在。 -チームのダイナミクス 話を転がすのは継人 → 主導的に進める。 空気を乱すのは呼絵 → 「救世主」的な視点で場を混乱させる。 ブランがツッコミで軌道修正 → でも最終的に折れる。 ハックモンが場を和ませる → 継人の背中を押す。 → どんな問題も「最後には継人の力」でまとまり、めでたしめでたし。 -物語的効果 ギャグ/日常シーン:呼絵の暴走とブランのツッコミがコミカルなやり取りを生む。 シリアス/問題解決シーン:最終的に継人の人望と判断力が光る。 テーマ性:呼絵の「救世主願望(狂気)」と継人の「人を大切にする優しさ」の対比が描かれる。 ■ 裏切り -冒険の果て 呼絵・継人・ブラン・ハックモンの4人は、長い旅を経て「四聖獣の殺害を企む組織」の存在を突き止める。 数々の戦いと試練を乗り越え、最終的にその組織を打ち破り、主導者を倒すことに成功。 → 本来であればこれでデジタルワールドは安定するはずだった。 -しかし起きた事実 四聖獣の暗殺を阻止し、組織を壊滅させたにもかかわらず―― デジタルワールドの崩壊は止まらなかった。 世界は依然として綻びを見せ、地盤は揺らぎ続けていた。 崩壊が止まらず混乱する呼絵たち。 突然、視界が光に包まれる。 次の瞬間――継人の胸を、閃光が貫いた。 光を放ったのは、仲間であったはずの シスタモン・ブランだった。 -ブランの告白 呼絵が現実を理解できず呆然とする中、ブランはいつもの微笑みで、どこか申し訳なさそうに謝る。 「ごめんっす……。すべての黒幕、というか――このデジタルワールドを壊そうとしてるの、実はわたしなんすよ」 - 正体:世界を滅ぼそうとする黒幕、エクソシスタモン:フォールダウンモード。 -エクソシスタモン・フォールダウンモードの告白 -幸せだった過去 デジタルワールドに生まれたブランは、イグドラシルのもとで育ち、 弟分のハックモン、そして大好きな姉シスタモン・ノワールと共に平穏な日々を送っていた。 そこに不満は一切なく、ただただ幸福だった。 -異変 しかしある日突然、何の前触れもなく「強い衝動」に囚われる。 『この世界は存在するべきではない』 『生命は矛盾と不合理の醜いシステム』 『だから壊さなければならない』 それは自分の意志ではない。だが、抗えないほど強烈な衝動だった。 -姉の死 その異変に最初に気づいたのは、姉であるシスタモン・ノワール。 彼女は必死に問いかける――「何があったの?」「どうしたの?」 だが、ブランは衝動に抗いきれず、ノワールを自らの手で葬ってしまった。 その瞬間、彼女の中で 最後の枷が壊れた。 『このままでは姉の死が無駄になる』――だからこそ、完全に衝動に身を委ねる決意をしてしまった。 -世界を滅ぼそうと動き出したエクソシスタモン:フォールダウンモード。 その胸を、突然現れた半透明の聖槍が貫く。 「クォ=ヴァティス」の言葉と共に光が溢れ、ブランの身体は粒子へと分解されていく。 驚愕の表情を見せたブランは、声にはできないまま 「ごめんね」と口だけで伝え、消滅。 -呼絵の心境 パートナーに裏切られた直後、さらにそのパートナーを失うという二重の喪失。 「裏切られたこと」と「謝罪を残して消えたこと」が矛盾のように胸に刺さり、処理しきれない。 呼絵の心には「救えなかった」という圧倒的な無力感と、「なぜ?」という問いが焼き付けられる -新たな登場人物:白髪の少女 呼絵と同じくらいの年齢。 白髪で、何の感情も伴わない“透明感のある笑顔”を浮かべている。 彼女は呼絵に向かって、まるで日常の友達のように朗らかに声をかける。 「間に合ってよかった。危ない所だったね!」 世界を破壊しようとしたフォールダウンモードを討ち滅ぼしたその少女は、まさに呼絵の想像上の「救世主」のような立ち姿で現れた。 ■ 邂逅 -名前 白髪の少女は自らを「安里結愛(あざと ゆめ)」と名乗った。 -呼絵の叫び 「どうしてあんなにあっさり殺したのか」 「彼女は自分のパートナーであり友達だった」 「理由があったのかもしれない、助けられたかもしれない」 感情が爆発し、理不尽にすがるように結愛へ問いかける。 呼絵自身、それが言い訳であり、助けてくれた相手に向けるべき言葉ではないと理解しながらも、吐き出さずにはいられなかった。 -少女の返答 『だってあなたが危なかったんだもん。つらい思いをさせちゃったのなら、ごめんね』 しかし、その声に一切の感情も意志も感じられなかった。 あまりに滑らかで整った言葉は、まるで 機械が状況に応じて返した定型文 のようにしか響かない。 -呼絵の戦慄 「あなたは、何が目的なんですか?」 震える声で、呼絵は恐怖と嫌悪を込めて尋ねる。 -結愛の答え 『それはもちろん、みんなを救って、みんな幸せにすることだよ』 『大丈夫、心配しないで。今殺しちゃった子も、いずれ救ってあげる。あなたのことも、幸せにしてあげるから、もうちょっと待っていてね?』 微笑みながら告げられるその言葉の空虚さは、呼絵にとって悪夢以外の何物でもなかった。 -その場に残されたもの 結愛は光の中に去り、後には呼絵だけが残された。 -呼絵の到達点 -救世主の再定義 白髪の少女・安里結愛の空虚な言葉に、呼絵は悟ってしまう。 『救世主とはこういう存在なのだ』 『感情も迷いもなく、ただ救済を自動的に遂行する“システム”のような存在』 人を思う心、迷う心、苦しむ心……それらは“本物の救済”には不要であり、むしろ妨げになるのだと気づいてしまった。 -信仰と挫折 呼絵は理解する。 「だからこそ、この少女こそが私の憧れた“本物の救世主”だ」 そして同時に痛感する。 「私は……誰も救えなかった」 「心を消せず、感情に囚われ、迷い続けた私は……救世主にはなれない」 強烈な信仰心と、それに付随する深い挫折感が呼絵の心を支配する。 ■ 現実帰還後 -帰還後の呼絵 エクソシスタモン(フォールダウンモード)が討たれたことで、デジタルワールドは崩壊を免れた。 呼絵は全てを失ったが、世界は救われた。 -真イグドラシルの裁定 呼絵は現実世界へ送り返される。 だがその胸には「救世主になれなかった」という挫折と、救世主への強烈な信仰心だけが残った。 呼絵の歪んだ発想 「私は救世主にはなれない。だからせめて――救世主を助ける存在をつくろう」 「感情を持たず、人を救うために動くだけのシステムのような存在」 → ここで呼絵は完全に 人間としての道を踏み外す。 理想を追うあまり、その実現を「創造」という禁忌に求めてしまった。 継人の死体 足元には、共に戦った友・継人の死体があった。 呼絵は微笑む。  「ああ、ちょうどよかったです」 呼絵は彼の亡骸の中に“何か”を滑り込ませる。 -“何か”とは? 呼絵自身にも分からない、説明不能の何か。 しかし疑問を抱くことなく呼絵は「これは当然だ」と受け入れてしまう。 明らかな異常であるにもかかわらず自らの認識を侵食している『それ』に呼絵は気づくことができなかった -紛い物の誕生 “何か”を入れられた継人の死体は、ゆっくりと立ち上がる。 その顔には、生前の継人の優しい笑顔とは似ても似つかない歪んだ笑み が浮かんでいた。 呼絵はそれを見て微笑む。  「救世主をお手伝いする紛い物を作るために、一緒に頑張りましょうね。継人くん」 ■ その後の経緯 -聖心の誕生 背景 呼絵が9歳でデジタルワールドから帰還してから数年。 壊れた心と歪んだ信念のまま、呼絵は「継人の紛い物」と生活を続ける。 聖心の誕生 呼絵が12歳頃、紛い物との間に子が生まれる。 その子こそ――上野聖心(かみの みこころ)。 聖心の存在は、「救世主になれなかった呼絵」の実験の結晶、「救世主への助力を担う存在」の役割を期待されていた。 -呼絵にとっての聖心 聖心は「娘」であると同時に、「できる限り精神性を救世主に近づけ、いつか救世主の助力をさせるための手駒」だった。 呼絵は愛情を注いだのか? それとも冷たい実験の眼差しで見ていたのか? おそらく両方。 表面上は母として育てるが、心の奥底では「救世主の代用品」としか見ていなかった。 聖心に刻まれる宿命 聖心の存在そのものが「救世主幻想の紛い物」から生まれた歪んだ結晶。 ■10年後 -10年後の呼絵 年齢:22歳前後。 帰還後、異常なまでに伸び続けた運動能力・知力。 デジタルワールドでの経験と、「何かを滑り込ませた」ことが原因? まるで人間の限界を超えて進化しているかのよう。 教会を完全に掌握。 紛い物(継人)と共に運営。 「信仰」と「権力」を利用して公的機関へ影響を及ぼす、教会の支配者へ。 彼女の思想:「自分は救世主にはなれない。だからいつか現れる救世主のために世界を管理する」 → その信念を着実に実行に移しつつある段階。 -9歳になった聖心 出自:呼絵と「継人の紛い物」の子。 能力:運動能力、知力共に突出。すでに9歳にして呼絵と同等レベルの才能を持つ。 しかし―― 聖心には「普通の人間の心」があった。 喜び、悲しみ、他人への思いやり…… 呼絵が最も不要だと考えた「感情」が、しっかり根付いていた。 -呼絵の動揺 聖心の人間性を「誤算」と見て悩んでいた呼絵。 そこへ唐突に飛び込んでくる「クラスメイトの話題」。 しかも、その相手は――安里結愛。 -呼絵の心中 「なぜ、この世界に“あの名前”が……?」 デジタルワールドで邂逅した、あの感情を持たない“救世主そのもの”の少女。 信仰の対象であり、自らの理想を打ち砕いた存在。 その名が、現実世界で娘の友人として現れる。 呼絵は「驚愕」「恐怖」「歓喜」が渾然となった感情に呑まれる。 -聖心と結愛(クラスメイト) 聖心の話では、結愛は「訳のわからないやつ」。 助けたことをきっかけに、やたらと絡んで「友達になろう」と押しかけてくる。 聖心にとっては鬱陶しい存在だが、「人と関わる」という彼女の人間性を育てる大きな要因。 呼絵にとっては「救世主の名を持つ存在が、娘の人格形成に関わり始めている」という事実。 -呼絵の確認と失望 身辺調査 呼絵は徹底的に安里結愛を調べ上げる。 見た目は9歳当時に見た“あの少女”と瓜二つ。 違う点は―― 髪が黒いこと。 胸にあったはずの“謎の刻印”が存在しないこと。 -接触 家に呼んで、言葉を交わす。 意図を隠しつつ、慎重に観察。 だが、返ってきたのはごく普通の反応。 無邪気に笑い、戸惑い、恥じらい、泣きそうになり…… そこに機械的な冷酷さも、絶対的な救済者としての圧も、何一つなかった。 -呼絵の落胆 「これは違う」 「私の信じた救世主ではない」 あの時、デジタルワールドで見た“完全なる存在”はそこにはいなかった。 -呼絵の計画『安里結愛の殺害』 1. 聖心から「人間性を奪う」ため 呼絵はずっと、聖心を「救世主の代替物」に仕立てようとしていた。 最大の障害は「普通の人間の心」。 その心を消すためには、「大事な人を作らせて、それを奪う」という過酷な方法が最適。 聖心にとっての「大事な人」候補が、クラスメイトの安里結愛だった。 → 聖心を完成させるための装置として結愛を利用する。 2. 結愛自身の「正体確認」 呼絵がデジタルワールドで出会った救世主・安里結愛。 しかし現実にいる「結愛」は、ただの普通の少女。 ならば――彼女を命の危険に晒せば、眠っている「救世主の資質」が目覚めるかもしれない。 時系列の齟齬は「まだ救世主に“なる前”だから」と解釈可能。 → 「結愛を殺そうとすることで、救世主になるか/ならないかを確かめられる」。 -呼絵の内的論理 「どちらに転んでも構わない」 結愛が“ただの人間”なら、聖心の人間性を壊すための生贄になる。 結愛が“救世主”なら、今この瞬間に覚醒し、存在証明を果たす。 呼絵にとってこれは「最も無難で確実な道」であり、残酷であると同時に完全に合理的。 -この場面の呼絵像 母親ではなく研究者/管理者の顔。 聖心を愛するのではなく「調整する」。 結愛を守るのではなく「実験材料にする」。 彼女にとって“救世主”とはもはや宗教的信仰の対象であり、手段として命を使うことにためらいがない。 -呼絵の実験 ― 手段の選択 呼絵は「結愛が救世主かどうか」「聖心から人間性を奪えるか」を確かめるため、デジモンを使うことに決める。 現実世界に帰還後も、呼絵はデジタルワールドに強い興味を抱き続けていた。 教会と権力を掌握する過程で、デジタルワールドの観測技術を開発。 デジモンを現実に召喚・制御する実験も積み重ねていた。 その果てに誕生したのが――ズィードミレニアモン。 呼絵にとっては「最強の実験体」であり「救世主確認装置」。 -計画 呼絵はズィードミレニアモンを 聖心と結愛に差し向ける。 狙いは二つ: 結愛が「救世主」として覚醒するか。 聖心が「大事な人を奪われて心を壊すか」。 -想定外の事態 ズィードミレニアモンが戦闘の中で「次元の歪み」を発生させてしまう。 その渦に、聖心と結愛の二人が飲み込まれ、消失。 呼絵は即座に「計算外」と悟り、心底焦りを覚える。 -呼絵の動揺 「しまった……」 計画では「追い詰める」つもりだった。 だが結果は「完全に失った」かもしれない。 聖心は自分にとって救世主を作るための“最大の駒”。 結愛は救世主の「本物」かもしれない存在。 → その両方を一度に見失うことは、呼絵にとって致命的。 ■ 古代デジタルワールド -聖心と結愛の冒険(要約) 次元の歪みの先で二人は「古代のデジタルワールド」へ。 そこでそれぞれパートナーと出会い、幾多の冒険を共にする。 二人の関係は「母の枷から解放された世界」で築かれた、聖心にとってかけがえのないものになる。 最終的にズィードミレニアモンを討ち果たすが、代償として結愛は命を落とす。 -聖心の帰還 聖心は結愛の亡骸と共に、現実世界へ帰還。 9歳にして「戦い」「仲間の死」「世界を背負う体験」を抱え込むことになった。 母が与えようとした「大切な人を作って奪う」計画は、皮肉にも 呼絵の意図を超えた最悪の形で実現してしまう。 -呼絵の視点 想定外の次元転移、想定外の冒険、想定外の結末。 しかし結果だけ見れば、聖心は母の望んだ“人間性を壊す契機”を得たともいえる。 呼絵にとって結愛の死は「誤算」でありながらも、「娘を救世主の道に近づける成果」にも見える。 -聖心の心に刻まれるもの 初めて得た「友」を失った喪失感。 戦いの末に背負わされた責任と罪悪感。 「母の思惑通り」になってしまったという無意識の呪縛。 聖心は「人の心を持つ存在」であり続けようとするが、同時に「心を砕かれた経験」を背負わされた。 ■結愛のその後(古代デジタルワールド) -死と復活 ズィードミレニアモンを討つための決死の一撃で、結愛は死亡。 肉体は消滅するが、散逸した精神データをパートナー達が命を賭して繋ぎ合わせる。 結果としてデジタルワールドで「復活」を遂げる。 しかしその時、聖心はすでに強制的に現実世界へ帰されていた。 -彷徨 結愛は聖心のパートナー・ガンマモンと共に、デジタルワールドを長い間さまよう。 「もう自分たちのように悲しい思いをする子を減らしたい」 「いつか聖心と再会したい」 その願いを胸に、果てしない時を歩き続ける。 -摩耗 長すぎる時間の中で、心は少しずつ摩耗していく。 悲しみや寂しさ、願いの繊細な色は剥がれ落ち、残るのは 「人を救いたい」 という一点だけ。 感情を失った純粋な「救済の衝動」。 彼女は次第に「人間」ではなく呼絵にとっての「救世主そのもの」へと変質していく。 -運命の収束 そして長い旅路の果てに、結愛は 過去の呼絵(9歳) と出会う。 呼絵が「救世主」と信じ、心を折られたあの“感情を持たない少女”―― その正体は、未来から逆流してきた 安里結愛自身 だったのだ。 ■ 現実での聖心 聖心の現実での帰還と破滅 -社会的孤立 聖心は「結愛の死体と一緒に戻る」という異常な状況で保護される。 当然、事件性を疑われ、疑念の目を向けられる。 結愛の遺族は彼女に強い憎悪を抱き、「娘を死なせた張本人」として憤りを向ける。 -呼絵の一言 呼絵が安里家に対して放った致命的な言葉: 「帰ってこなかったのが結愛ちゃんでよかった」 (=自分の計画がうまくいったから、犠牲が彼女で良かったという冷酷な意味) この発言で安里一家との関係は完全に断絶、不倶戴天の敵同士へ。 -聖心の心の崩壊 親友を失い、遺族から恨まれ、社会からも疑われる。 母は自分を庇うどころか、死を嘲笑のように扱う。 聖心は深いショックを受け、心を閉ざして引きこもりに。 9歳にして「喪失」「孤立」「親への不信」を同時に背負うことになった。 -呼絵の満足感 呼絵にとってはむしろ計画通り。 結愛が「救世主」であることを確信。 聖心も心を壊し、いずれ「救世主の手足」として完成するだろう。 自分の思惑通りに事が進んだと解釈し、満ち足りた笑みを浮かべる。 残る課題は「現代のデジタルワールドにおける救世主=安里結愛の所在特定」のみ。 呼絵はそれすら楽しげに考え、事件を自分なりの“成功”として締めくくる。 ■ 20年後 -状況整理 救世主(安里結愛)の居場所は依然不明。 古代デジタルワールドで見た“あの存在”が再び現れる気配すら掴めない。 -聖心の現状 引きこもり継続中。 優秀な才能も社会で活かされず、完全にヒキニート状態。 呼絵が夢見た「救世主の手足」としての覚醒も起こらない。 -呼絵の心境 計画が停滞していることに苛立ちと焦燥。 「そろそろ一計を案じなければ」と思考を巡らせる。 ■転機 -結愛の行動 ガンマモンの超究極体「プロキシマモン」の力を用いて「世界のリセット」を試みる。 目的は「一度すべてを壊して、ここにはいない過去未来含む全ての人を幸せにする世界に作り直すこと」。 これは呼絵が信仰してきた「救世主の無慈悲な救済の形」そのもの。 -結果 結愛は子供たちとの戦いに敗北。 呼絵は現場に間に合わず、救世主としての結愛の「証明の瞬間」を見届けられなかった。 プロキシマモンは最期の力で、結愛に 肉体と記憶=人間性 を取り戻させてしまった。 -呼絵視点での悲劇 救世主は確かに存在した。しかし自分はギリギリのところで彼女を見つけ出せず、その最期に立ち会えなかった。 「心を持たない機械的な救済者」こそ信じた理想だったのに、結愛は最後に“人間”に戻ってしまった。 「救世主は人であってはならない」という呼絵の信念が完全に裏切られた。 -呼絵視点の捉え方 不運の要素 → 「私さえ間に合っていれば…!」という自己正当化の余地を残す。 → 同時に「偶然すらも私から救世主を奪った」という被害者意識を強める。 -子供たちの頑張り → 「救世主を救ったのは結愛じゃなく、あの子供たちだ」という事実が呼絵を苛む。 → 彼女の信じた“完璧な救世主像”は否定され、「常人の努力」で崩された。 → これが「救世主はやはり自然には現れない。私が創らなければ」という確信につながる。 -呼絵の結論(ここで決定づけられる) 結愛は救世主ではなくなった → 本物の救世主はもう存在しない、現れない。だから“創る”しかない → 聖心を完全に作り替えることこそ自分の使命。 ■ データの保存と再構成 呼絵は 結愛の残骸データを極秘裏にサルベージしていた。 同時に、自分のかつてのパートナーデジモンの残骸データも密かに保管しており、両者を組み合わせることで、新たな存在を生み出す計画を立てる。 呼絵の目的は再び『聖心が再び愛せる存在』を用意し、それを奪うことで聖心の心を完全に破壊することだった。 ■ 『シスタモンブラン』の創造 結愛の精神データと、呼絵自身のパートナーの残骸データを核にし、人造のパペット型デジモン「シスタモンブラン」を構築。 呼絵はブランに「過去の記憶を持たせない」よう設定し、“まっさらな存在”として聖心の前に現れるよう仕向けた。