しとしとと、白い雨が降っている。吸われて開いた乳腺より、胸そのものの自重に絞られて。 母になる準備は万全、といったところだった。大きくせり出した腹部の頂点には、 妊娠以来ますます大きく育った乳首に負けずの、ぷっくりした臍がどんと構えている。 そしてその周りにも、唾液がべっとり絡んで――ぬるりとした光沢を乗せるのである。 腹部によって持ち上げられた両乳房は、左右に逃げ道を探してたるんとだらしなく広がり、 それぞれの端から、自然に乳汁が噴き出している――そんな光景が、二人分。 男の目の前には、今にも産まれそうな臨月胎を抱えた少女二人が身体の一切を開いている。 四つの乳房に薄っすらと残る指の跡は、彼の口端に垂れる白い滴の由来を示していて、 二人は飲み比べのために乳房を好き放題に持ち上げられ、捏ねられ、吸われたとしても、 羞恥と快楽の混じった顔で、彼を見つめるのである。止まることなき乳汁は、 重力に引かれて斜め下に滑り落ちるように乳輪をなぞりながら中空へと橋を架け、 途切れた橋の破片が、三人の肌と寝具とをべとべとに濡らすのであった。 部屋の中は、常に甘い匂いと雌雄の匂いが混ざっている。枕元の洋燈に照らされて、 彼女らの白い肌は夕焼けのように蠱惑的に――男の視線を吸い寄せるのである。 彼によって種付けられた腹部を見せつけるように二人は大きく股を開いて見せ、 重たくなった乳房を手で捏ねて――腰を回すように揺らしながら、彼を煽る。 そして唇だけを雛鳥のように前に突き出し、彼の唇をねだるのであった。 舌と舌が絡むにつれて、腰のうねりも胸を揉む指も止まっていってしまうのは、 彼女らが自然に口づけの方に全意識を集中させていった結果である。 一人余った孕み女は、親友がそうして夢中になっている様を羨ましそうに見ながら―― 疼き、火照る肉体が爆発しないよう、懸命に指で乳首を撫で擦って耐えている。 そして二人の顔が離れるや否や、次は自分だとばかりに男の唇に自ら唇を重ね、 彼の口腔に残る二人分の唾液を啜りながら、己の唾液をそこに混ぜていくのであった。 年不相応に左右に開いた胸の谷間と腹の上端の三角杯には汗と唾液と乳汁の混合液が溜まり、 男はそれを、ずいっと音を立てて啜る――代わりに少女らは、彼の胸板に舌を這わす。 自分たちの、柔らかな脂肪の塊とは違った、硬く、分厚い筋肉の厚み――それを舌で感じると、 彼我の性差が、言葉よりずっと明瞭に彼女らの脳を揺らす。 彼の匂いを鼻をつけて嗅ぐことによって、本能で、雌雄の違いを理解する。 膣口がぬとぬとと淫らに湿っていく感覚、膣襞が期待に蠢く感覚、そういったものが、 自然に二匹の雌の口から――甘えるような鳴き声となってこぼれてくる。 男は彼女らの胎の中に自分の子がいると知りながらも、遠慮なくその中に性器を突き立てる。 なまじ我慢した、温い腰使いをして肉体の燻りを後々に残すよりは、 しっかりと中を抉り回して、すっきりさせてやった方がいいという理屈だ。 錬金術師として名高い彼女らの知識があれば、胎児の保護など容易いことであろう。 身重とはいえ、女は女、発情する身体から逃れることは不可能である。 それを――男は種付けたものの責任として、毎晩律儀に果たすのであった。 顔の上で自由に揺れる脂肪の塊と、下腹部に重さを返してくる臨月胎、 母体の務めを忘れて淫蕩に耽る己の浅ましさを恥じての微笑み――そういったものが、 一層男を、若い肉体へと溺れさせていく。こんな上玉二人を孕ませたこと、 そしてなお、己の雄としての部分を求めてくることへの興奮が、彼の理性を消し飛ばす。 強く下から突き上げて――腹がゆさ、ゆさと揺れ、乳房が乳汁を垂れながら躍り―― 少女らの視線が自身の腹部へと向いて、赤ちゃんがびっくりする、などと言おうものなら、 もう彼は一晩中、夢中で腰を振り、二人の乳房に吸い付くことになる。 残された方も、自分で自分の乳首や陰核を撫ではしつつも、自慰とまでは及ばず、 あくまで彼からの行為を望んでいた――性器の代わりに指を突っ込まれ、中を掻かれると、 待ってました、と腰をくねらせ、早く“本物”が欲しいと、羨ましそうな視線で返す。 少女らが揃って同じ男の種を受け入れたのは、彼に対する好意が、友情を捨てるに忍びなく、 かといって、諦めるには惜しい――そんな程度に育ってきてからのことであった。 もとより女二人、どれだけ友情を深めようが――それが愛情と肉薄しようが、 次の世代を作ることは、本来的には不可能な話である。錬金術で生命の理を曲げぬ限り。 そうして、禁忌へと指を掛けるよりは――一緒に彼のものとなろう、と考えたためである。 初夜から三人が互いの肉体の境界を見失うほどに肌を絡ませ、あらゆる体液を混ぜ合わせて―― 生命二つを子宮に宿らせるまで、閨の戸が開くことはなかった。 腰が浮く。大きな腹を彼の前で上下させるのに夢中になって、声を抑えることも忘れ、 嬌声は水音と肉音の茂みを超えて、部屋の中に響く。荒くなった呼吸の、息継ぎの音だけが、 彼女らの――雄をそそり立てせる声を中断する唯一のものとなる。 そして胎内にて熱が爆ぜると――嬌声を噛み殺すように口を閉じながら彼の顔に顔を寄せて、 抽挿の間お預けだった口付けを再開するのであった。だがそれも長くは続かず、 膣口から精の塊が垂れているその真っ最中から、もう一匹の雌が彼に跨って腰を振り始める。 それに応えられるぐらいには、彼の“復活”は早かった――そうなれるようになっていた。 求められるがままに、男は自分の上にいる雌を性器でめちゃくちゃにやっつけて、 二人ともがくたくたになって腰を振る体力をなくしたと見るや、 今度は、四つん這いの格好を取らせて――後ろから、肉厚の尻を押し潰しながら挿入する。 子を産むのに適した安産型の尻二つ、指の跡が残るぐらい強く掴んで、腰を叩きつける。 上下に、自らの意思と速度とで彼の性器を擦り上げて快楽を交換していた先程とは違う、 雄によって一方的に、逃げ場もなく最奥までをほじくり回されるこの体位は、 二人に、自分は彼のものだ――そんな意識を植え付けるのに十分すぎる力がある。 嬌声、というにはあまりに獣じみた濁点ばかりの――汚く、ねじれ、うねるような声。 尻の方から与えられる衝撃は腹を経由して胸の方にも伝わって、 それが自らの頭、両肘との間の狭い空間内に押し込められた乳房を圧迫するのだから、 一突きごとに、ぶびゅり、ぶびゅり、と一層濃いものが噴き出してくる。 そして――それより濃い雄の欲の塊が奥で弾けると、少女らはまた蛙のように鳴くのだった。 いよいよ彼自身の体力も尽きてくると、三人はごろんと仰向けになったまま身体を密着させ、 最も基本的な体位を取って――腰だけをぐりぐりと回すように動かしながら、快楽を貪る。 それまでの、射精という結末を目指しての抽挿とは違う――密着によって得られる満足感、 一つのものへと溶けゆく心地よさだけを求めた体位である。 その際、舌と舌は当然のように絡んで、この時間を惜しむように愛撫し合う。 残されたもう一人も、彼の背中側に抱きついて乳房と胎を押し付けて擦り、 うなじを舐め、耳を食み、首筋にいくつもの赤い証を残していくのであった。 彼が身を反転させて自分の方を向くや、舌を伸ばし――がに股で、彼の性器を受け入れて。 そうして夜が終わり、身を清め、食事をし、厠に行き――最低限の片付けが済めば、 また三人の肉体は、内から迸る獣欲を抑えきれずに、肌を重ね、混ざり合っていく。 ずきんずきんと鈍く響く痛みも、股間から噴き出した羊水も、三人を止めることはできず―― 少女らは彼の精が襞にこびりついたまま、尻穴を彼の指でほじられながらいきむ。 股座より赤子の頭が見えても、彼の性器を二人して争うように咥えてしゃぶり、 精が谷間にぼたぼたと垂れると――我が子のことを忘れたようにうっとり微笑んだ。 彼女らは生命を宿し、産むたびに――そんな退廃的な快楽に溺れた。 より重く垂れた乳房の先端を真っ黒に染め上げ、赤子には飲みきれない量の母乳を散らし、 彼がそれを口にしてくれるたびに――甘えた声を、牛のような鳴き声さえも上げた。 雌として産まれたことの意味を――どこまでも貪欲に追い求めるがゆえに。