約束、という言葉を彼女はよく口にした。魔法の呪文でもあるかのように。 口から放たれたが最後、それは相手を縛り付ける――同じぐらいに、本人をも。 しかし事実、“約束”は獣の爪と牙を、守るべき妹たちには向けさせなかった。 代わりに獣欲の全てを、彼女自身が引き受けることによって。 そして今では、“約束”が守られるかどうかは、彼女自身の行動によって左右されている。 彼の要求をいついかなる時、どんな状況でも受け入れる、という約束―― 男は自分の背丈の半分ほどしかない、小さく、若く――いや、幼すぎる裸体を見て微笑んだ。 発達途上の、これから先、どのようにも育ち得る可能性のみによって構築された身体。 内から迸る、本人の肉体をも破壊しながら作り変えていく無軌道な生命力。 それが彼の思う通りの形を取って、幼女の肉体を醜く歪ませていたからだ。 辛うじて胴体との境目が見えているような、無に等しい乳房は、 第二次性徴まで遥か遠い、彼女の肉体年齢を鑑みれば特におかしなところはない。 けれど、彼の歯型の中に、植え込みの中の花のように咲く乳輪の色は、 踏み荒らされた雨上がりの土めいて暗く、靴に圧されて水を絞り出されたように湿っている。 緩やかな丘陵に従って垂れた滴が痕を跨ぐと、幼女の身体は痛みにびくんと震えた。 にたつく男の唇の端には、その滴と同じものが垂れている。舌が飲み残りを舐め拭く。 口腔内で、それは彼女の血と混ざって背徳的な味わいを味蕾の上に広げた。 ほとんど泣きそうなのを、正義感と妹たちへの愛にてなんとか堪えながら、幼女は彼を見た。 今日はこれで終わりにしてくれませんか――とでも言いたげな風であった。 だがその懇願が通ったことはない。唇を貪られ乳を舐られ歯型を付けられた、そんな程度では。 男もまた彼女と同じく服を脱いでいるのだから、もとよりここで終わるはずがないのである。 男は無言のまま振りかぶり、勢いよく彼女の若く張りのある肌を平手で打った。 当たったのは身体の中の最も前に張り出している場所、すなわち腹部である。 指折り数えていったところで――ようやく両手に入りそうなぐらいの年齢の彼女の身体は、 明らかに生命の倫理に反して、膨らんでいた。小さな背丈には、とても釣り合わなかった。 そこを、彼は容赦なく打ち据えたのである。己の子を仕込んだ胎を。 日焼けもない白い肌は、内側から膨らまされたことによって血管の色すら透けていたのが、 そこに赤い手の跡が乗るのだから、なおさら痛々しい様相を呈す。 大の大人が渾身の力を込めて打つのだから、幼女の肌はさぞや腫れ上がるかと思えば、 見た目よりずっと頑丈で――出産程度の痛みには容易く耐えられる肉体は壊れもしない。 見目こそ人間の未就学児童に類似こそしておれど、彼女らの肉体は並の人間よりよほど強い。 火薬と鉄片の飛び散る戦場を駆け抜けるために調整された肉体を、どうして素手で壊せようか? だが――それはあくまで物理的なこと、彼のような“悪い”大人がその気になれば、 彼女やその大切な妹たちをいくらでも絶望の淵に突き落とすことはできよう。 自分一人の身体を差し出して、妹たちが何も知らずに過ごしていけるなら―― そうして“約束”は結ばれた。日毎の任務の裏にて、彼に身体を差し出し奉仕する裏の任務の。 “初夜”の翌朝、泣き腫らした目を妹の一人に見つけられ――誤魔化すのに苦慮した、 そんなことは、現状を思えば取るに足らない出来事であった、と幼女は思う。 まっすぐ歩くのにすら苦慮する、前後の均衡さえ欠くほどに大きく膨らんだ胎は、 彼女に支給された制服には、とても収まり切るものではない。 そしてそんなものをぶら下げていれば、その腹はどうしたと聞かれることは避けられない。 結果として彼女は、安定期から向こう、男の私室からほとんど出ることができずにいた。 軍を統括する彼の部屋には、一歩も出ずとも生活のほとんどを賄うだけの施設がある。 たった一人のために――四、五人は楽に入れる大きな湯船、同じ数の寝転がれる寝台。 何のためにそれだけのものが必要なのか?とかつての彼女は無垢にも疑問に感じていたが、 こうして、誰にも助けを求めることができぬまま――“本来の使い方”を教え込まれていると、 自分という堰がなければ、妹たちもあっさりと連れ込まれていただろう、と理解する。 だからこそ、何をされても耐えねばならぬ。臨月の身を犯され、胎の奥の奥まで汚されても。 幼女の乳を舐り、腹を打っているうちに興奮しきった彼の性器は既に勃起しており、 ぺちぺちと彼女の腹部に打ち付けられて、今にも暴発しそうなぐらいであった。 腕ほどもあるものを、無理やりにねじ込んで――一番奥で、ぶちまけて。 自分のような幼いものを性の捌け口にするなど間違っています、と彼女が言ったとき、 むしろ彼は邪悪に微笑んで――喜んで幼女の純潔を食い散らかした。 もうやめましょう、やめませんか、やめてください、やめて――“約束”が繰り返されるたび、 男は自分が作り変えていった、彼女という芸術品への執着を強くしていく。 そして当然、子を仕込んで――丸々と、重たく張り出したその腹部にも。 世人を守るため、救うための、その頑丈な身体、高潔なる精神。 それを――己の欲のために差し出させ、食い物にし、孕ませる愉悦。 身重の幼女を、流産の恐れなく突き回せる環境がどこにあるというのか? だがそれが現実に目の前にある今、彼に歯止めは掛からなかった。 この美しく生命力に溢れた、歪んだ肢体から――無垢なる生命のひり出される姿を、 一秒たりとて見逃したくない、そんな妄執が彼を支配していた。 そのために、早く産気づけとばかりに胎を打ち、子宮を性器で小突き回しているのである。 処女を失った彼女が泣こうが喚こうが、一向に腰を止めなかった彼だ。 臨月の幼女の胎に、強引に大人の性器を根元までぶち込むことにも何ら精神的呵責はない。 いや――産まれる前から、我が子に会っているのだ、とさえ嘯く。 彼女がもう泣き叫んだりしないのは――それが却って彼を興奮させると知っているから。 赤ちゃんがだめになっちゃう――と祈るように彼に慈悲を乞うたその晩に、 一層激しく、逆さ吊りにされながら犯された時のことが頭にあるのであろう。 鈍い痛みが繰り返し訪れてきている今、そうきて彼の嗜虐心を煽るのは自殺行為だ。 幼女が生意気にも暴虐を受け入れようとしていることに――男は苛立った。 そもそも彼女を見初めたのも、その溢れんばかりの正義感と妹への愛のため。 鎮守府の最高権力者である自分に、堂々と意見できる幼さゆえの胆略あってのこと―― もっと頑張ってくれないと、他の子たちに――言い終える前に、幼女は叫んだ。 頑張ります、私、だから、妹たちには――男は緩みそうな口許を冷酷に抑えて、なお脅かす。 懸命に締められた幼い膣口が、雄の精を――ともすれば妹たちの胎を狙おうとする精を、 己の身一つで食い止めようと、健気にひくついて――搾り取ろうとする。 男はそうして、彼女が己が身に降りかかった不幸に抗う力のあるかを見ているのだ。 幼い身体から赤子の這い出て――母親になる、という苦難を彼女が乗り越えられるか、 そうして無理やりに産まされた子を、彼女が愛せるかどうかを――