「スゴかったわねぇ十七夜〜!シンクロ次元であった遊矢くんとシンジって人の決闘!」 「……ああ。そうだな」 「カワイイ調律の魔術師ちゃんからカッコいい覚醒の魔導剣士さんが出てくるのホンットに興奮し ちゃったわぁ〜!あれがエンタメデュエルなのねぇ〜!」 「……うむ。見事なシンクロ召喚だった」 「2回戦での樹里ちゃんとの試合も熱かったしぃ、わたし遊矢くんのファンになっちゃいそう♪」 「………」 「んもぅ、どうしたのよぉ十七夜?さっきから上の空みたいな返事しちゃってぇ……調整屋さん悲し いわぁ」 「……無理に空元気を出さなくていい。八雲」 「……わたしはいつものわたしよぉ?」 「嘘をつくな。フレンドシップカップと言う催しが行われてから、試合を観戦する度に物憂げな表情 になっていたぞ」 「…………」 「今日は特にそうだ……試合中だけでなく、試合後にあったユーゴと言う少年とシンジと言う男の 喧騒でも何か感じ入る事があったのだろう?」 「──────っ」 『バカヤロー!!』 『がはぁっ……!?』 『ゆ、ユーゴ!?』 『っ、腹が……!て、てめぇユーゴ!急に何しやがる!?』 『何しやがんだって言いてぇのはこっちの方なんだよバカシンジ!遊矢がトップスの仲間のワケ ねぇだろ!』 『お前も見ただろうがユーゴ!遊矢はトップスの犬と繋がってたんだ!他でもねぇロジェの野郎の 口から見込んだって言葉が出てきやがった!』 『本当にトップスの仲間ならオレらと一緒に収容所に送られるワケねーだろ!』 『ハン、そんなの分かるもんか!俺達と会う前からセキュリティと内通してたスパイの可能性だっ てあるだろ!』 『こいつはスタンダードに行って暴走してたオレをカラダ張って止めてくれたんだ!そんなヤツが んな卑怯な真似するかよ!』 『んな事信じられるか!お前もリンも遊矢に騙されてんだよ!いや遊矢だけじゃねぇ、リンを助け たらしいランサーズとか言うこいつの仲間にもだ!裏で蓮やロジェと内通して俺らコモンズをハメ ようとしやがったんだ!』 『違う、シンジ!オレ達は本当に何も────』 『黙れ、この薄汚え飼い犬が!どうせお前も俺達コモンズを嗤ってんだろ!裏切り者の蓮や ジャックと同じ───ぐがぁああっ!?』 『ユーゴ!?落ち着いてくれ!』 『っぐ、てめ、思いっきり頬ぶん殴りやがって……っっ!?』 『────シンジ、お前、本当に何もわかんなくなっちまったのか……?』 『あ……?どういう意味だよ……?』 『お前の目には周りのヤツら全員トップスにしか見えねぇのかって聞いてんだよ!』 『──────ッ!?』 『違うだろ!みんながみんなオレたちコモンズを見下してるワケじゃねぇ!現に遊矢がそうだ!同 じコモンズのクロウや徳松のおっちゃんと楽しそうにデュエルしてたのを見てねぇのかよ!』 『ユーゴ……』 『っ、な、何が言いてぇんだよ……!?』 『憎しみや怒りに囚われて色眼鏡で誰かを見ようとすんな!今のシンジがやってんのは大嫌いな トップスのヤツらがしてきた事と何も変わんねぇじゃねぇか!』 『な───────』 『ずっとそうされてきて誰より辛いって理解してるお前が何でわかんねぇんだよ、シンジ……』 『ユー、ゴ……』 「…………」 「シンクロ次元の現状は自分達神浜の人間が置かれている状況に通ずるものがあり、自分達は その渦中の最中にいるからこそあの少年の言葉が刺さってしまう……痛烈に感じる程にな」 「……そうね」 「……我々も何か一歩間違えれば、自らの臓腑に滲んでいる憤懣と憎悪に飲まれ狂ってしまうの だろうな」 「……それは、どうかしら」 「何……?」 「そういう意味ではわたしはもうとっくに狂ってしまったのかもしれない。願ってしまったんだから」 ─────神浜の滅びを 「八雲……」 「……さ!辛気臭い話はここまで!今日は調整屋さんが腕によりをかけてお料理を作っちゃうわ よぉ〜!名付けて『蟹と海老のキラートマト煮込み!』」 「……遠慮させて貰う」