| … | 225/09/23(火)22:37:03No.1356174091そうだねx7 ゆっくりと覚醒する意識の中で、さやかが真っ先に抱いた違和感は匂いだった。それは、二年以上を過ごしてきた寮の自室とは違う香り。次に、山奥にある寮では聞こえない街の喧騒。そして、見慣れない壁紙。さらに、全身を包み込む人肌の温もり。 「……あっ、そっか。わたし今、綴理先輩のお部屋にいるんだ」 綴理の腕の中で寝返りを打つと、さやかは綴理と向かい合った。安心しきった幸せそうな寝顔に、さやかの鼓動は堪らず高鳴ってしまう。このままずっとこうしていたい、とすら思った。 「…………さや、起こしてくれないの?」 無垢な寝顔をじっと眺めていたら、不意に唇が微かに動いて、囁くような声が漏れた。 「綴理先輩、起きていたんですか」 「ううん、寝てるよ。さやが起こしてくれるまで寝てる」 瞼を閉じたまま、綴理は小声で続ける。 「……ふふっ。……綴理先輩、起きてください」 綴理が求めていることを直感して、思わずさやかの頬が緩む。綴理の肩を優しく揺らしながら、懐かしい響きに胸がじんわりと熱くなった。 綴理は瞼を開けて、その大きな瞳にさやかを映すと、今度は目を細めて満面に笑みを浮かべた。 「おはよう、さや」 |