あれから何度も晴久と一緒に風呂に入っている。それなのにまるで自分の性別がバレている様子がない。 もしかしてアイツお子様で女に興味が無いんじゃないか? 浅野ヒバリがそう疑念を抱くのも無理からぬ話だった。 デジタルワールドにほぼ同じ時期、近い場所に連れて来られた『選ばれし子供達』は、自然と寄り集まって行動するようになった。 ここにリアルワールドでの自分を知る者がいないのをいいことに、ヒバリは男のフリをしつづけていた。 性同一障害、というわけではない。そういう『選ばれし子供』もいるらしいという噂は聞くが、彼女はそれではない。 二次性徴のはじまりとともに、フィジカルに優る男性性と劣る女性性に対するコンプレックスに染まっていたのだ。 実のところ自分の未熟さや他者に勝てない原因を性別に押し付けて目を逸らしている状態なのだが、誰も真相を知らぬが故にここでは責められることがない。 結果、彼女は男として振る舞い続け、近い年齢の子供達から慕われ尊敬される立場になっていた。 これを維持するためには、自分の本当の性別がバレてはならない。そう考えている彼女はバレないように必死だった。 幸い、最近の子供はコンプラ意識が高いというか自己防衛教育が行き届いているというか、無理に秘密を暴くような事をしてこない。 一緒にトイレに行くことを強要しないし、入浴も全員でなどと言い出したりもしない。 危険なデジモンがいつ襲ってくるかわからず、常に警戒が必要なデジタルワールドという環境も味方した。 このまま男のフリをリアルワールドに帰るまで続けよう、その思惑は大きく乱されることになった。 湯楽木晴久という、一つ歳下なやんちゃ坊主によって。 Dr.ブローのブリンプモンの大浴場に皆が入りに行った時、自分は見張りや荷物番を理由にして他の男子と一緒に入らないようにした。 自分以外の男子も女子も全員お風呂からあがってさあ入るか、と脱衣所で脱ぎはじめたところで入ってきたのが晴久だった。 「おっなんだヒバリも遅れたのかよ。一緒に入ろーぜ!」入ってくるなりそう言って、ヒバリの隣で晴久はぽいぽいっと服を脱ぎはじめた。 すでにズボンに手をかけ脱ぎかけていたヒバリは、そこでやめてしまうのも不自然だったので止まってしまった。 その間に全裸になった晴久の、鼠径部にわずかな発毛が見えてヒバリの鼓動が速くなった。 「脱がねーの?」 「うん……すぐ脱ぐ……脱ぐから……」肩にタオルをかけた晴久の言葉に、ヒバリはしどろもどろになりながらも答える。 晴久が浴室に入ろうと向こうを向いたタイミングで急いで脱ぎ、前をタオルで隠しながらヒバリも浴室へと入る。 可能な限りタオルで前を隠していたこと、晴久が巫山戯て友達のタオルを剥ぐような子ではなかったこともあって、最後まで女だと疑われた様子は無かった。 湯船ですぐ隣に座ってきたのも驚いたが、それで全く気づいた様子も無い事にヒバリはドギマギしながらもさらに驚かされた。 そうして自分が他の子と時間をずらして入浴した時に限って、なぜか晴久も入ってくることが続いた。 気づいてて黙っていてくれているのか、それとも本当に気づいていないのか。 判断がつかないまま時間が過ぎていくうちに、一緒にいる子供達の関係性も変化が起きていた。 思春期に入りかけた少年少女の集団が、共に助け合いながら命の危機を乗り越えてきたのだ。互いへの感情が重く強くなっていくのは致し方ない。 ましてやここはデジタルワールド、彼らの行動を咎めるものは何も無い。それこそ、ヒバリの嘘が未だ責められていないように。 誰と誰が恋人になった、という段階はあっという間にすっ飛ばされた。今時の子供達は様々な理由、様々な方法でそういう知識を得ている。 男女の関係になる者、同性同士で友達以上の関係になる者、肉欲で仲間を癒やす者、癒やされる者。 ヒバリもそういう知識も多少は持っていたし、興味が全く無いというわけでもなかった。 たまに風呂で見た晴久の、背が多少低くも皮下脂肪が少なく筋肉が透けているような少年特有の胴体や腕脚、申し訳程度に発毛した根本と僅かに顔を覗かせた仮性の鈴口、チラ見でも大きさのわかる程度に発達した陰嚢。 そういったものを思い出しては切ない気持ちに眉をひそめ、まだ指すら入れたことのない秘裂を湿らせては自ら慰める術を知らず煩悶していた。 自分の肉体が女として不可逆的な成長と性徴を続け性欲に目覚めていることを、自身の女性性を否定したいヒバリは認められずにいた。 そうやって、ヒバリが晴久への感情を拗らせ続けていたある日、事件がおきた。 「山の向こうにある温泉宿では、テイマーの子供をタダでもてなしてくれる」 それを聞いた一行は山林の中の細道を辿って教えられた方角へと向かうことにした。 一部のメンバーは半信半疑であったが、風呂と食事と寝床の誘惑には抗えなかった。 たとえ罠だった場合、それが敵なら自分たちが呼ばれた理由がわかるかもしれないという思惑を持つ者もいた。 午後になって暴風雨に襲われ、一旦開けた場所で小休止していた一行に、エントモンが襲いかかってきたのだ。 激しい雨風の中を、植物型デジモンのホームグラウンドである森で急襲された子供達の連携と戦線はあっけなく瓦解。 近くにいたヒバリとハニモンを引っ張ってドクグモンの背に乗せた晴久は、エントモンの放った無数の小蟲から逃れるために必死で逃げた。 土地勘もなく視界の効かない森の中を進むうちに仲間とはぐれた彼らを、今度はエントモンの本体が襲った。 「ここは俺が食い止める。お前はヒバリとハニモンを連れて逃げろ。」 「ドクグモンは!」 「俺のことは心配すんな。死なない程度にやるさ。」 「でも!」 「ヒーローは敵を倒すだけが仕事じゃねえだろ?守るのもヒーローの仕事じゃねえのか?」 「ぐっ……!」 「早く行け。」悔しさを滲ませた晴久を、ドクグモンはエントモンから目を離さぬまま促す。 促された晴久はヒバリの手首を掴み、何かを吹っ切るように駆け出した。 雨でぬかるみ、もはや夜のように暗い森の道なき道を二人と一体は走り続けていた。 不確かな足許と叩きつけられる雨は容赦なく幼き者たちの体力を奪い、仲間やドクグモンと離れた不安は疲労とのダブルパンチで彼らを苛んだ。 昼間の晴れたときならなんてことのない、30cmほどの段差を見落として転ぶ二人。 半歩遅れてついてきたハニモンは踏みとどまったが、晴久とヒバリは勢いよく転んであちこちぶつけて泥まみれになってしまった。 「あっ!」 「うわっ!」まるで少女のような透き通った悲鳴と、少年らしいハスキーな悲鳴が雨音で掻き消えていく。 平常なら性別を疑われるような声だったが、発した方も聞いた方もそれを気にする余裕がない。 「……ヒバ……リ、だい……じょう……」晴久の問いかけにヒバリの反応は無い。わずかにハニモンがオロオロするだけである。 そこで限界に達したのか、晴久は気を失ってしまった。 ハニモンは二人を起こそうとするが全くの無駄に終わり、なんとかして二人を引っ張って行こうとする。しかしハニモンには少し重すぎるようで、なかなか動かせない。 そこに何者かが木々を分け入って近づいてきた。その物音に、二人を庇うように前に出るハニモン。 「……おや、これはいけないですね。助けが必要ですか?」そこに現れたのは、薄い赤色の髪をした少女と、青い獣のデジモンだった。 「ルガルモン、この子達を宿まで運びましょう。そこのハニモンも乗っていきますか?」 「…………っ!」晴久が気づくと、そこは部屋の中だった。 「おや、気がついたかい?よかった。」赤い目に緑の髪をした、不思議な雰囲気の男性がすぐ横に座っていた。 「ここは……?」上半身を起こしながら見回すと、ここは和室で自分が布団に寝かされていたことが分かった。 同時に、いつの間にか着ている服が矢絣柄の浴衣になっていて、手脚の何箇所かに絆創膏が貼ってあることにも気づいた。 「ここは富士見温泉郷、富士見旅館だよ。俺はここの主人で、富士見ゲンキだ。君、名前は言えるかい?」 ということは、ここは目的地の温泉宿なのだろうか?少しずつ明晰さを取り戻しつつある頭を必死に回転させる。 「……湯楽木、晴久。……ヒバリは!ハニモンは!」同行者のことを思い出し、急に声を荒げる晴久。 「ハルヒサくん、落ち着いて。彼女たちなら今別室で手当てしてるよ。大丈夫、命に別状はない。」立ち上がりかけた晴久をゲンキと名乗る男は両手で制した。 「ハルヒサくん、君はパートナーデジモンとは一緒じゃなかったのかい?」 「そうだドクグモン!アイツ、俺達を逃がすために!」興奮する少年を再度制しながら、ゲンキは努めて平静そうな顔をして言う。 「今、俺の家族たちがパトロールに出ている。きっと君のパートナーも大丈夫だ。だから落ち着きなさい。」 「でも!」 「君一人で行っても危険を増やすだけだ。まずは情報が欲しい。話してくれないか?」 「……っ、わかったよ。」色々なものを呑み込んで、少年は説明をはじめた。 簡単に一通りの状況を説明した頃、襖が開いた。 「失礼します。お連れ様の手当てが済みました。」入ってきたのは薄赤色の髪の少女だった。 地味な和服を着ており、どうやらこの旅館の従業員のようだ。傍らには青い犬のようなデジモンが控えている。 「女将のバイトの浮橋です。ようこそ富士見旅館へ。」少女はそう言って一礼した。 「あっ、えっと。」どう返したらいいのかわからず、戸惑う晴久に浮橋と名乗った少女はさらに言葉を足した。 「お部屋はご一緒にしますか、別々にしますか?」 「あっ、部屋は一緒で、って言うか、ヒバリは?」ヒバリには聞いたのかとか、様子はとか、複数の問いをわずかな言葉に込めて晴久は尋ねた。 「彼女ならまだ目が覚めてないので、ハニモンさんが見ております。そうですか、ご一緒の部屋ですね?」 浮橋の言葉になにか意味深なものを感じ取った晴久は、さっきからの会話を思い返してみた。 ゲンキも浮橋も変な言い方をしていないか?……そう、ヒバリのことを。 「………………かの、じょ?」 「さすがに服を脱がせて手当するのに、男女同室ではできないからね。長閑さんに頼んで、ヒバリさんだっけ?彼女の手当てを別室でお願いしたんだ。」 「お名前はハニモンさんに伺いました。……お客様?」浮橋は様子のおかしくなった晴久に訝しげな視線を向ける。 「まさか…………ヒバリが、女?……!?」晴久のつぶやきに、ゲンキと浮橋は互いの顔を見合わせた。 ヒバリが目を覚ますと、まず自分を覗き込んでいるハニモンの姿が見えた。続いて日本家屋のような天井。 「……あれ?ハニモン?……ここは?」 「気が付かれたようです、皆様。」ハニモンの反対側から女性の声がした。 見ると、和服を着た若い女性が座っていた。その隣には、緑の髪の青年が座っている。 「ようこそ富士見温泉へ。俺は主人のゲンキ、こっちは女将の長閑さんだ。」男性たちがそう自己紹介をした。 「あなたたちが森の中で倒れてましたので、こちらに運んで手当てしました。」女将のほうがそう説明した。 「…………そうか、俺達、森の中で……晴久!そう言えば晴久は!ハニモン!」 同行者のことを思い出して勢いよく上半身だけ起き上がったヒバリは、自分の足元に胡座をかいている晴久を見つけた。 「よかった!晴久も無事だったん……?」 だが、その様子はいつもと大きく違っていた。服装が矢絣柄の浴衣になっていた。おそらくはこの宿の備え付けなのだろう。 しかしそれ以上にいつもと違っていたのは彼の態度だった。普段ならまっすぐに自分のほうを向いてくる顔が、あらぬ方に向けられている。 その顔には彼には珍しく困惑や戸惑いの感情が強く表れ、耳たぶと頬が火のように赤く染まっていた。 同時に、自分がいま着ている服が彼と同じ柄の浴衣であり、合わせから胸元が見え隠れしていることに気付いた。 そしてヒバリは3つの事柄を察した。 怪我をした自分はここで治療を受けたということ。 その際に着ている服を脱がされ、浴衣に着替えさせられたということ。 最後に、自分が女だということがこの宿の人達、そして晴久にバレてしまったのだということを。 「あ……ああ………あああ…………」たちまち真っ赤になり、口をパクパクさせるヒバリ。 「あ、あのね、これはその……」しどろもどろになりながら、なんとか説明をしようとするゲンキ。 その時突然、部屋の襖が勢いよく開いた。その向こうに、金色に輝く星のような……いや、星そのもののような姿が現れた。 「お父さん!山で子供がエントモンに襲われてたよ!」 「こら、スーパースターモン、お客様の前ですよ。」ゲンキがそのデジモンの軽挙を窘めた。 「あっ、すいません……。とりあえずエントモンは倒したよ。今はファントモンが子供達の護衛してる。」 「どっ、ドクグモン!ドクグモンは無事かっ!?」食って掛かるように声を張り上げる晴久。 「ドクグモン?……ああ、あのドクグモンか!凄かったよ、あのデジモンのお陰でかなり楽に戦えたよ。大丈夫、ドクグモンも他の子供やデジモンもみんな無事だよ。」 「そっか……よかった……。」安心したのか、晴久はその場にへたり込む。 「ただもう夜だしこの天気だし何より人数が多いから、移動は朝になってからになると思う。」 「そうか、わかったよ。ここには俺と長閑さんがいるから、スーパースターモンはこの三人が無事だって子供たちに伝えに行ってくれないか?」 「分かったよ!じゃあ行ってくるね!」ゲンキの指示を受け、現れた時同様にあっという間にスーパースターモンは飛び出して行ってしまった。 嵐のように過ぎ去ったスーパースターモンに、浮橋は特に表情を変えず、一方でゲンキは苦笑いをしていた。 そして肝心の問題が棚上げだったことを思い出し、晴久とヒバリの方に目を向けた。 晴久もヒバリも、仲間たちが無事であると知って、緊張の糸が解けたように違いの顔を見遣って微笑んだ。 数瞬後、さっきまでの状況を思い出した二人は双方が即座に顔が真っ赤になった。 ヒバリは晴久から目を離すことができなくなり、一方で晴久は目を逸らし……そうになるのをこらえてヒバリを見続けた。 年長者たちはその様子を固唾をのんで見守っていたが、先に視線を切ったのは晴久の方だった。 「あのっ!すいません!」何かを決意したのか、ゲンキたちの方を向くと晴久が声を張り上げたのだ。 「ちょっと、俺達だけで話をさせてください!」 部屋を出て襖を閉めると、ゲンキが心配そうな声を出した。 「大丈夫かな、あの子たち……」うっかりと自分たちが口を滑らしてしまった、という負い目もあって彼の表情は暗い。 何も事情を知らないゲンキらが、気を失っている晴久らを救助したという経緯を考えたら彼らのせいではない。 だからと言って自分は悪くないと思い込むにはゲンキはあまりにも善人であった。 「心配はありません。」それに対し浮橋は自信あり気な表情をする。 「こういうシチュエーションがどう展開して何が必要になるか、友達の家で読んだマンガで予習済みです。」 友達のマンガを読んで、ではなく友達の家で読んだマンガ、であることをゲンキは特に気にしなかった。 「大丈夫です、ちゃんとハニモンさんに言伝てました。」 布団の上で向かい合って座った少年のような少女と少年らしい少年は、互いに顔を赤くして押し黙ったまま、視線を向けあえずにいた。 先に動いたのは少年の方だった。ヒバリをまっすぐに見ると、おもむろに口を開いた。 「ヒバリお前、女だった、んだな……」 ヒバリはちらりと晴久を見ると、再び視線を畳に向けた。目を合わさぬまま少しずつ言葉を吐き出す。 「は、晴久、そ、その……見たの?」そこにいつものヒバリのような快活さは無い。ただ恥じらう乙女がいた。 「いっ、いや俺は見てな、見てないって!」慌てて否定する晴久。その様子に赤い顔のまま訝しげな目を向けるヒバリ。 「じゃあなんで……女だって……」 「あ、あの女将さんが、女の子だから別室で手当してるって言って、それで!」 「……それ、信じたんだ?」膝を抱え、上目遣いのヒバリが不満げに頬を膨らます。 「だ、だいたい見たも何も、今まで何度も一緒に風呂入ってるじゃねえかよぉ!それで今更見たのかどうかって……」 晴久の言葉にヒバリの眉根にしわが寄る。ヒバリがなにか不機嫌なのは明白だった。 自分の性別がバレたからヒバリが怒っているのかと晴久は思ったが、実際はそうではなかった。 「今まで何度も一緒に風呂に入って、何回もハダカ見てるのに、俺が女だって気づかなかったんだ?」 ヒバリは、晴久が自分の裸を見ているにも関わらず今まで自分が男であることに疑問を抱かなかったことに腹を立てていたのだ。 女であることを隠していたのは自分自身なのに、理不尽な話である。 「いやだって、前も隠してたし、わざわざ見ようとしたらヘンタイみたいだし……」まるで自分のほうが悪いかのように言われた晴久は弁解を続ける。 「それにお前おっぱい大っきくないし……美空とか真理愛みたいだったら俺でも気づいたけど。」必死に弁解するあまり、つい余計な一言を言ってしまった。 「!!」いきなり弾けたホウセンカの実のように跳んできたヒバリが、晴久を押し倒す。 「他の女の子と比べるとか、お前なあ!!」下半身は布団の上のまま、上半身だけが畳の上で仰向けになる。 「一緒に平気で風呂入ってくるとことか、なんでそうノンデリなん……」何も言えなくなってる晴久を、至近距離で見てヒバリの言葉が詰まる。 男子としては少し長めのまつ毛、上気した頬、後悔と恐れをわずかに含んだ涙に潤む瞳。 そこから視点を下げていくと、合わせが緩んだ浴衣が隠せくなった、薄い肌とその下の胸筋と腹筋、申し訳程度に哺乳類であることを示す薄桃色の乳輪が見えた。 まる見えになった、そしてだいぶ見慣れたへそからさらにその下には男児用下着が、肌と密着できずに天幕の如き屋根を作り上げていた。 気づけば自分も浴衣がはだけ、小ぶりではあるが男子には存在しない曲線を帯びた胸の膨らみ、なだらかな腹回りから鼠径部にかけてのライン、そしてぴっちりと肌に密着し何の膨らみもない下着が見え隠れしていた。 今まで何度も入浴して、男だと思っていた間は平然と接してきていた男子が。 自分が女だと分かった途端に、自分の肉体で欲情し、生き物としてオスであることを隠せなくなっているのだ。 それに思い至った瞬間、デジタルワールドに来る前の苦悩、来てから今までの密かな罪悪感、自分の彼に対する感情と劣情、そういった燃料に火が点いた。 晴久の顔に自分の顔を近づける。互いの鼻息が、吐息が感じられ、混じり合う。 わずかに開いた唇に、閉じられたヒバリの唇が覆いかぶさった。 驚きに見開かれた晴久の目と、奥に強い炎の燃え盛るヒバリの目が、互いに見つめ合う。 10秒近くそうしていただろうか、ゆっくりと離れていく二つの唇は、唾液の糸でしばし繋がりやがて切れた。 「……なんだ、晴久も俺のカラダで興奮してんじゃん。」俺も、という言葉はヒバリも興奮してることを示していたがそれに気付ける状態ではない晴久。 少女の柔らかい唇の感触に、彼のまだ女を知らぬテントの支柱はさらに硬さを増していった。 元より平均より早く二次性徴が始まった晴久のそれは、発毛だけでなく屹立時の大きさにおいても二学年上の男児と遜色がない。 「もしかしたらもうとっくに俺が女だってわかってたけど女に興味ないから何もしてこないのかも、なんて思ってたよ。」 そう言って右手を晴久のパンツのゴムに掛け、下にずらす。一瞬だけ下に引っ張られた陰茎が、戒めを解かれ勢いよく飛び出す。 仮性包茎の皮は剥けきらず、しかしその鈴口の割れ目はいつもよりもはっきりと見えていた。すでに先端がじっとりと湿っている。 そのまま握りやすそうな大きさと硬さのスティックに右手を滑らせ、恐る恐る掴む。 まだヒバリの中に男の肉体に対する不安故の臆病な扱いは、それでも晴久には十分な刺激だった。 「あっ!」およそ男らしさの欠片もない声が、小学生男児の口から漏れ出した。 その声はヒバリの中の嗜虐心を揺り動かしたが、それ以上に晴久の側の感情を爆発させる点火剤ともなった。 自由になった晴久の両腕はヒバリの肩を突き飛ばし、今度は晴久がヒバリに覆いかぶさる形となった。今度は少年少女の全身が布団の上である。 お返しとばかりに、晴久の右手がヒバリの下着のゴムを潜った。自分のそれよりも濃い陰毛の草原を、男児のやや固い指先が蹂躙走破する。 「ヒバリが……ヒバリが悪いんだからな。」中指と人差し指が秘されし両扉に辿り着く。 その主が未だ立ち入ったことのない狭き回廊に、二本の闖入者が押し入ろうとした時。 「あ痛っ!」小さな声とともにヒバリの体がビクッと縮み、半瞬遅れて晴久が動きを止める。 どうしようか、やめたほうがいいだろうか、しかし引っ込みがつかないんじゃないか。そんな晴久の逡巡を、ヒバリの言葉が止める。 「ごめん……ちょっと痛くてビックリしただけだから……大丈夫だから、その……優しく、してくれよ……な?」 「……おう、優しく、するよ。」もう二人は自身を。そして互いを止められなくなった。 人差し指が左右の扉の間にねじ込まれ、小陰唇を乱雑にまさぐる。ヒバリが顔をしかめ、晴久の動きが慎重になる。 しばらく膣前庭を探っていた指先が、ついに膣口を探り当てておそるおそる潜り込んでいく。 その間、小陰唇と膣前庭を触られる快感に揺蕩っていたヒバリは、小さなダイバーの潜行にぎゅっと手を握りしめて備えた。 人差し指のすべてが腟内に埋没し、行き場のない親指は人差し指の動きにつられて陰毛を撫でる。 より深く指を潜らせようとしたはずみに、親指が陰核包皮を抑えつけてしまった。 「ああっ!」皮ごしにクリトリスを圧迫されたヒバリの小さな叫びは、少女ではなく女の声をしていた。それは晴久の男をさらに昂らせる。 (そうか、これがあいつらが言ってたクリってやつか!)友人たちの猥談の記憶が少年に積極的な行動をとらせる。 人差し指を入れたまま、叢の下の小さなテントをぐにぐにと捏ね回す。その度に少女は嬌声をあげる。 「あっ、あっ、晴久、そこ、そこ、あっ……あああっ!!」一団大きな声が放たれた。 晴久の親指の先が、フードの下に潜り込み、隠された乙女の素顔を直に爪弾いたのだ。 声だけでなく、膣口括約筋が指を締め上げ、膣内壁が蠢いたことでそれが強い快感によるものだと経験のない少年にも察せられた。 もし下着を完全に脱いだ状態であったならば、連動して蠢く肛門まで目の当たりにしただろう。 「はる、ひさっ、おねがっ、いっ、もう、やめ、あっ、あっ、ああっ!」それは子供らしい好奇心故か、はたまた男としての征服欲故か。 快楽に翻弄され発語もままならぬヒバリに対し、晴久は人差し指を膣内でくゆらせ続け、クリトリスを親指で執拗に擦り上げた。 「ああーっ!!」やがてひときわ大きな声を上げ、ヒバリの全身から力が抜けぐったりと横たわった。 「……これが、イクってやつ、なのか?」話に聞くだけだった女性の絶頂を目の当たりにし、しかもそれが自分の手によってなされたことに、晴久の方も抑えきれなくなってきた。 「……ハァ、ハァ……なに、いまの?」生まれて初めてのアクメに息を切らしながらヒバリが尋ねると 「いや……俺も詳しくないからよく分かんないけど、多分イクってやつじゃないのか?」晴久はそう答え 「今のが……イク……?」すこし焦点の定まらない目でヒバリは回答者の顔を眺めていた。 「……なぁ、ヒバリ。」 「……なぁに、晴久?」 「俺……ヒバリにチンチン入れても、いいか?」 「!!…………いい、けど……でも、赤ちゃん、できちゃう。」 「あっ!……」その言葉に晴久は少し残念そうな顔をする。それを見てヒバリのほうも切ないような苦しいような気持ちになる。 このまま最後までやったらもっと気持ちよくなるかもしれない。ヒバリと、晴久とひとつになれたら、すごく幸せな気分になれるかもしれない。 だけど妊娠してしまったら……いろいろなものが台無しになってしまう。残念だけど、やっぱり…… その時、布団の上で重なる二人を突付く者がいた。先程から部屋の隅で見ていたハニモンである。 二人の邪魔をしないように気配を消して置物になりきっていたハニモンが、近づいてきて何かを差し出した。 「どうしたのハニモン……あっコレ!」 「俺知ってる!コンドームってやつだよなコレ!」ハニモンの右手には、ひと繋ぎになったコンドームが掲げられていた。 左手は、コンドームの装着方法の図解が載った看板を持って二人に見せている。 「えっハニモン、これどこから……?」ヒバリの言葉にハニモンは器用にもうひとつ、和服の女性を示す絵文字の描かれた看板を差し出す。 おそらくはあの浮橋という女将のことなのだろう、二人にはそう察せられた。 「……ありがとうな、ハニモン。ありがたく使わせてもらうぜ。」晴久はコンドームを受け取った。 図解を見ながら晴久は、下着を脱いで自身のペニスになんとかしてコンドームを装着する。 着けるのに必要な太さはギリギリあったので行為の最中に脱げ落ちることはなさそうだったが、長さ的にはだいぶ余ってしまった。 余った部分をくるくると巻いているので、根元の部分が若干きつく感じられる。しかしそれなら逆に抜ける恐れは少なくなるので却って好都合であった。 「……行くぞ、ヒバリ。」 「……いいよ、晴久。」こちらも下着を脱いで仰向けになったヒバリが、脚を大きく開いて晴久を受け入れる態勢になる。 先程は見えなかった陰毛、陰裂があらわになり、ヒバリが正真正銘女であることを再確認する。 いきり立って上を向こうとする勃起に左手を添えて入口へと指向させる。同時に右手はヒバリの大陰唇の向かって右側にあてがって拡げる。 ヒバリの方も自身の右手を反対側の大陰唇にそえて拡げ、左手をゴムに包まれた晴久の晴久自身に伸ばす。 少女の厨子は開帳され、大小二つの穴が晴久の視界に映った。小さい穴がオシッコの穴だとすぐに見当がついた。 そのやや離れた下の方にある、襞で奥が見えにくい穴こそが、先刻晴久が指を入れたヴァギアだとわかった。 オシッコの穴、尿道口の少し上には皮の寄り集まったような部位がある。これがクリトリスとそれを守る包皮か。 ここを弄られるとヒバリがあのように乱れるのが不思議に思えたが、男で言うチンチンに相当するのだと考えたら不思議はないのだろう。 いろいろ思いを巡らせながらしげしげとヒバリの性器を眺めていると、不満げな呻きが聞こえてきた。 「ちょっと、まだぁ?」 「あっ、悪ぃ悪ぃ。」待たされているのもさることながら、自分の秘所を見られ続けているのが恥ずかしい、というのが大きいのだろう。 先端を膣口にあてがい、力を込める。押しつぶした精液溜め、続いて包皮を剥かれ薄いゴムに包まれた亀頭の半分が埋没する。 コンドームがゼリー付きのものであったのと、刺激で潤った谷底の潤滑で、そこまではスムーズだった。 そこで何かが引っかかったようになり、一度侵行を止める。さっき見た襞か何かが邪魔をしてるようだ。 そう言えば、ショジョマクとかいうので女の最初は痛いんだっけか?聞きかじった知識を思い出して晴久が躊躇する。 「晴久、俺のことはいいからさっさとしてくれ。」それを見透かしたようにヒバリが言う。 「でも……」 「いずれ誰かに痛くされるんだ。だったら俺は、晴久に痛くされたい。」男らしく振る舞ってきた少女の、男らしい言葉に晴久は覚悟を決める。 そうだよな、ここまで言われて引き下がったら男じゃねえよな。晴久の両手がヒバリの腰を掴む。 両腕でヒバリの下半身を引き寄せるようにしつつ、腰に力を入れて肉の牙を彼女の急所に突き立てる。 「「!!」」抵抗を突き破り、晴久の半身が一気にヒバリの胎内へと沈み込んでいく。 彼の指以外を知らぬ膣肉を貫き抉り、最奥を突いて尚止まらず、子宮とともに膣を押し込む晴久の陰茎。 それは根本が膣口に達することでようやく止まり、生える場所の異なる草叢が密着した。 同年齢の男子よりやや肥大な陰嚢とその中の睾丸は勢いを持ってヒバリの尻肉を叩き、彼女の性器と肛門は晴久によって完全に見えなくなった。 「……大丈夫か?」少し不安そうな晴久。 「……大丈夫。思ったより痛くない。」一瞬顰めた顔を笑顔にして答えるヒバリ。 おそらく先に指で絶頂まで達したことで濡れて解れていたこと、そして平均より太いとはいえまだ育ちきってないペニスであること。 おかげでまだ幼いヒバリの女性器が少ない負担で晴久を受け入れることが出来たのは、二人にとって幸運だった。 「……動くぞ?」 「いいよ。」晴久は抽挿を開始する。引き抜かれた男根を包むコンドームに、一筋の血の跡が引かれる。 再度押し込む。少年によって奥まで開通したトンネルは、もはや侵入する彼を拒めはしない。 膣内壁に擦られ、ゴム越しでも快感を持ち主に与える晴久のペニス。 しかしヒバリの反応が先程とは違う。痛みのせいもあるのだろうが、あきらかに快感の量が少ないように見える。 膣を使った自慰行為の経験が無いヒバリは、まだ膣だけで快楽を得られる段階に至ってないのだ。 それ以前に、膣口の位置が低すぎて晴久のほうも動かしにくかった。 またもや動きを止めて考え込む晴久に、もしかして自分のカラダは気持ちよくないのだろうか?という不安でヒバリは声を掛けられずにいた。 「……ヒバリ、ちょっと四つん這いになってみて?」彼女の膣から陰茎を抜いて晴久が言った。 「えっ?あっ、えっと、ちょっと待って……こう?」予想外の提案にヒバリは慌てて起き上がると四つん這いになり、晴久に尻を向ける。 焦っているせいで、この格好だと晴久からは尻の穴がまる見えであることに気が回っていない。 「そうそう、そんな感じ。……っと。」晴久は膝立ちになって、今度は右手を勃起に添え左手でヒバリの腰を掴む。 今度は澱みも躊躇もなく挿入し、一気に奥まで進んでヒバリの尻肉が晴久の鼠径部に当たった。 見下ろすと己の分身が少女の中に入り込んでるすぐ上にすぼまった肛門がわずかにひくついていて、少年の先端は硬度と体積をいや増した。 ヒバリの胎内に分身を誘導する役目を負えた右手には、新たな役目が与えられた。 結合部のすぐ下、フードを被った聖女の頭が隠れる場所を、五本の指が探り当てて襲撃した。 隠れ家たる小さな教会は五人の狼藉者に荒らされ、それは持ち主に衝撃を与えた。すなわち、今までにヒバリが味わったことのない強い快感である。 「あああっ、はるひさぁ!」止めて欲しいのか、もっとして欲しいのか。己の名前と共に吐き出される懇願の声は、しかし晴久をさらに興奮させるだけだった。 「ひばり、ひばりぃっ!」男性側が動きやすい体位は、それだけ男性側も快楽を受けやすいということである。 自由になった腰を単なる前後だけでなく、上下や左右への動きも含めて動かす晴久。 それは多彩な刺激を彼の分身に浴びせ、絶頂への動線となった。 ヒバリをもう一回イかせるまでは、なんとしても。その思いで耐えようと晴久は支えを求め、右手は狼藉を続けたまま、左手はヒバリの胴体を掴もうとする。 ヒバリの胸の前まで回った左掌は、ちょうど同じくらいの大きさの膨らみ――ヒバリの左乳房を掴んだ。 よりしっかりとしがみつこうとして、人差し指と中指は膨らみの突き出た部分を挟み込んでしまう。――乳首だ。 「!?」クリトリスだけでなく乳首にまで刺激を受け、もはや言葉にならない声が少女の口から放たれる。 その間も硬い肉の短刀は鞘への出入りを繰り返し、双方に未知の感覚とかつてない快楽を与え続ける。 「はるひさぁ、はるひさぁ!」 「ヒバリ、ヒバリっ!」 最初に限界に達したのはヒバリの方だった。絶頂に達し、膣は大きく蠕動し、括約筋が収縮して肛門と膣口が無意識に引き締められる。 その追加の刺激に晴久の性器と精神も臨界点を突破し、射精をはじめた。 会陰部の奥にある精嚢が収縮し、それにあわせて陰嚢と肛門が別の生き物のように蠢く。 少女の中を抉り進んだ男根は最奥で動きを止め、今度はその男根の中を少年の精液が抉り進む。 射精の快楽が腰椎を通じて脳を支配し、全身を弛緩させる。同時に少女も快楽の余波で動けなくなる。 鈴口を出た白い命の原液は薄い被膜に阻まれ、膣の奥で何かが膨らむ感触を少女に与えるだけに終わった。 先に動けるようになった晴久は、ゆっくりと体を起こしながら分身をヒバリから引き抜いた。 まだ小さくなりきってないペニスに引っ張られ、コンドームも膣から抜き出されてくる。 最後に先端の精液溜めが膣口に引っかかる。 この中身を受け入れて生殖することが自分の役目だ、そう主張するかのようなヒバリの膣はしかし、晴久の播種器によって種蒔き穴を開けられ抵抗する力を失っていた。 コンドームは完全に引き抜かれ、その中には晴久自身が軽く驚くほどの量のザーメンが入っていた。 ヒバリの苗床は晴久の種を得られず、ただの快楽器官と成り果てて挿入の余韻に濡れていた。 事を終え疲れ果て、全身が様々な液体に塗れている二人が風呂に入ろうとするのは当然だった。 ここは温泉宿であり、手当ての過程で体を洗うことも考えて、風呂付きの部屋があてがわれていた。 だからと言って二人一緒に入る必要はあるのだろうか? ハニモンは訝しんだが、それを指摘するのも野暮であったし二人の行為中に邪魔しないようにと途中から風呂に入っていた手前、何も言えなかった。 二人からすれば、普段から一緒に風呂に入っていたのだから特に疑問を持つこともなかった。 互いの背中を流しあったこともあるのだ。なぜそれで今までバレなかったのか、いまだにヒバリは釈然としないのだが。 今までと違うのは、ヒバリが前を隠していないこと。背中だけでなく前も流し合っていること。 そして、途中からハルヒサのペニスが勃起しっぱなしになり、それを見てヒバリも欲情してしまったことだろうか。 見つめ合っていた二人は気づけば、互いの顔を近づけて唇を重ねていた。今度はただ唇を重ねるにとどまらず、双方が口を小さく開けて密着させた。 伸ばした舌が絡み合い、口が性器になったような錯覚を二人に与える。互いの舌はより奥へと蠢き、歯を、歯茎を、口腔粘膜をねぶり合う。 そうしてる間に晴久は両手でヒバリの乳房を包み、ヒバリの手が晴久の勃起とその下の宝玉を包んだ。 友人たちから聞きかじった知識が、どんどん実践されていく瞬間だった。 唇を離し、互いの大きな吐息が漏れる。視線はまだ離れない。 「あのさ、ヒバリ。」 「なに、晴久?」 「俺、ヒバリのあそこ、もっとよく見てみたい。……いい?」 「じゃあ俺も、晴久のあそこ、ちゃんと見たい。」 まず晴久が洗い場に仰向けになり、そこにヒバリが上下逆に覆いかぶさった。いわゆるシックスナインの態勢である。 性器を口で弄るという行動があることは、二人ともそれぞれ別の友人から聞きかじっていた。 晴久の眼前にはヒバリの股間があった。まず蕾のような肛門が目に入った。 聞くところによるとここをつかって性交する者がいるらしい。しかも女性だけでなく男性にもいるという。 晴久からすると信じがたい話だが、実践済みの仲間もいるらしい。 その下には大陰唇で閉じられた陰裂があり、割れ目の一番下には少しだけ皮がはみ出している。さらにその下は毛が生えている。 晴久も毛が生えてきているが、一歳年上で性徴が早い女子のヒバリのそれは彼のものよりも毛量も面積も多い。 しかし晴久が幼い頃に母親と入浴したときに見た母親のそれに比べるとまるで貧弱で、踏み固められた学校のグラウンドの草の生え方のようであった。 大陰唇を両手で割り開くと、小陰唇と膣口、尿道口と陰核包皮が見えた。 膣口には一箇所だけ血が固まって黒くなった場所があった。この穴がどれだけ気持ちいいものなのか、つい先程味わったばかりだ。 陰核包皮に隠されてクリトリスは見えない。だがその中にある小さな豆粒がヒバリを狂わせる事も先刻証明された。 風呂で洗ったばかりなので、恥垢の類は残っていない。晴久には、女性にも恥垢があるという知識がそもそも無いのだが。 おずおずと開いた割れ目に顔を寄せると、舌を膣口に伸ばした。 「ひゃっ!」触れた直後、ヒバリが素っ頓狂な声を出した。 「あっ、ゴメン!イヤだった?」 「いや別にいいよ。俺も同じことするから。」直後、ヌメッとした感触を亀頭に感じた晴久もまた変な声をあげる。 「うわっ!……こうなったら勝負だヒバリ!」 「いいぜ晴久、先にイッた方が負けな!」こうして二人は互いの性器を貪ることに集中しはじめた。 ヒバリの眼の前には、自分の純潔を奪った肉棒が屹立していた。 自分が晴久に性別を偽っていた、そして今も他の仲間には偽っていることを思うと、やや複雑な心境ではある。 しかし晴久から勝負を持ちかけられては逃げるわけにいかない。未経験でも、知識を総動員して晴久を射精させなくては。 それはそれとして至近距離で見る男性器は少女の興味の対象としては十二分であり、いろいろと検分しようと思うのは無理もないことであった。 陰嚢を手で包み、中の睾丸の感触を確かめる。そこを触ると晴久が身動ぎするのが分かった。 ただどうやら気持ちよさでの反応ではないらしい。おそらく、大事な部分を他者に掴まれることへの不安と恐怖があるのだ。 まるで晴久の生殺与奪を握ったようで、悪い気はしなかった。同時に、晴久がそんな大事なものを自分に委ねてくれているという事実に胸の奥がキュンとした。 陰嚢の向こう側にはわずかに膨らみ、筋状の皮が肛門までつながっていた。 男性の肛門を使った性行為の話は噂程度に聞いたことがあるヒバリは、ここに指を差し込んだらどうなるだろうか?という考えが一瞬浮かんだ。 しかし今は晴久を射精させることが第一だと思い直してそれは後日の課題にした。 陰茎に目を戻すと、包皮に半分以上隠れた亀頭があった。皮の部分を引き下げると、ピンク色の亀頭が露出した。 「あっ!」晴久が女の子のような声を出した。どうやらここはかなり敏感な場所のようだ。 先端の小さな割れ目、鈴口に軽くキスをする。ついで、舌先で鈴口をなぞる。そのまま舌で亀頭全体を舐め回す。 その度に晴久が声をあげ、その反応がヒバリにはとても愉快だった。 なんだ、男なんて、オチンチンを舐めればチョロいもんじゃないか。 調子に乗ったヒバリは、亀頭を口の中に咥え込み、竿の部分まで唇で包んだ。 こりゃ楽勝じゃん、そう思った報いはすぐに来た。未知の、かつ強烈な快感が彼女の股間から電撃のように走ってきたのだ。 このままやられっぱなしじゃ男が廃る、と意気込んだ晴久は反撃を開始した。 確かこのちいさいビラビラ……小陰唇も性感帯だと言ってる奴がいた。その記憶をあてにして、舌先を割れ目の中に突入させた。 効果はてきめんで、自分の股間の方からヒバリの喘ぎ声が聞こえてきた。亀頭への責めも弱まっている。 小陰唇を舐めると同時に左手の指先を陰核包皮の中に突っ込み、中のクリトリスを圧迫し、擦り上げる。 右手の指は膣口に突っ込む。狭い場所に集中した、個別の三箇所を同時に責め立てる晴久。 突然、自分の腹に重たい感触が来た。ヒバリの脚が体重を支えられなくなり、胴体がまるっと晴久の腹にのしかかってきたのだ。 晴久の責めがよほど効いたのか、ヒバリは両脚をピンと伸ばして痙攣したような動きをしている。 直後、ヒバリが身と脚を捩りだした。晴久の口から逃げようと藻掻いているのだ。 そうはさせるものか。晴久はヒバリの腰を両手でがっしりと掴み、割れ目を口元に寄せた。 舌を陰核包皮の中に穿行させ、鼻面を膣前庭に密着させる。舌先が肉豆を捉え、執拗に啄いてねぶる。 その動きの激しさに、鼻の頭が膣口や小陰唇を擦り上げ、さらなる快楽をまだ幼い少女に容赦なく浴びせかける。 観念したのか、ヒバリは身動ぎさせるのをやめた。代わりに、舌や口でのペニスに対する責めがより激しく徹底したものになってきた。 おそらくは二人とも喘ぎ声を出したいのであろうが、互いの性器で口が完全に塞がっているために一切の声が発されない。 ただひたすら無言で互いを責め合い、風呂場には水音だけが響いていた。 果たしてどちらが先に達したのだろうか。晴久の精液がヒバリの口腔内に叩きつけられるのと。 そして、耐えられなくなったヒバリが失禁し、晴久の顔面に勢いよく吹きかけてしまったのとで。 それが出てきたのを感じて、晴久は即座に口を離した。しかし小さい方の穴が膨らんで、そこから黄色みを帯びた液体が勢いよく放出された。 ちょうど射精の瞬間を迎えていた晴久は半ば前後不覚であり、尿道口から男子のそれとは比較にならない流勢が出てくるのを直視し、顔面で受け止める羽目になった。 一方で、ヒバリの方もまた絶頂に達したのと失禁したのとのダブルショックで、精液を噴出しだした晴久のペニスから口を離すことが出来ず、その射精を口でまともに受けてしまった。 それらをなんとか吐き出して、かろうじて尿や精液を飲み込まずに済んだ二人であったが、それぞれの羞恥心と罪悪感は小さくなかった。 「ねえ……どっちが先だった?」晴久を下敷きにしたヒバリが問うたが 「さあ……俺にもわかんね。」下敷きになった晴久にも答えられなかった。 「こういうのってさ……勝ち負けじゃなくて」 「そうだな……やっぱ、一緒に気持ちよくなるもんだな。」意見の一致をみた二人は、よろよろと起き上がった。 「じゃあさ……晴久、今度はさ?」 「そうだなヒバリ、一緒に気持ちよくなろうぜ!」 二人はふたたび体を洗い直し、温泉で温まって出てきた。 湯船の中で晴久の分身は徐々に力を漲らせており、再戦の可否は問うまでもなかった。 拭き上げてはいたが服を着ないまま、そして互いを見つめ合って部屋に入ってきた二人をみたハニモンは、そっとコンドームだけ置いて部屋の隅で置物になりきることにした。 布団の上で向かい合って座ると、先程のようにキスからはじめた。 これまた先程と同様に、互いの乳首や性器を弄り始める。今度は指だけでなく、互いの乳首も吸い合う。 乳首を吸われた時のヒバリの女の子らしい反応が、吸われる晴久のまるで女の子のような反応が、互いの雄を、雌を、征服欲を、嗜虐心を、刺激する。 しかしやりすぎてはいけない。二人で一緒に気持ちよくなろうと決めたのだ。 コンドームを装着する。最初のときよりもやや手慣れた様子で、それをヒバリは楽しそうに眺めていた。 あぐらをかいて座る晴久に、膝立ちのヒバリがにじり寄ってきた。 「今度はさ、いきなり入れないで……」晴久の提案どおり、ヒバリは晴久にまたがるようにしてしゃがみ込む。 そのまま二人は互いに向かい合って座った状態で密着して抱き合った。晴久の勃起ペニスはヒバリの割れ目に挟まれるようにくっつく。 腹と腹、乳房と胸板、鼠径部と鼠径部が境界線となっているものの、一体感とそこからくる多幸感は今までにないものだった。 その状態で熱く視線を交わし、キスを繰り返す。軽く、深く、また軽く、また深く。 そうしながらも体を軽く揺すり、振動させ、激しくはない快感が互いの陰唇と陰茎、小陰唇と鼠径部で生み出される。 ゆっくりとおだやかな交歓が続く。その間、交わされる言葉は多くない。 たまに互いの名を呼び、小さな喘ぎが漏れるだけである。そうして小一時間ほど過ぎた頃。 「なあヒバリ、そろそろ……」 「そうだな晴久。」ヒバリが少し腰を浮かし、いまだ衰えぬ晴久の陰茎に手を伸ばす。 優しく手を添え、自身の秘奥へと導く。二度目の挿入、痛みは全く感じなかった。 時間を掛けてほぐれきった女陰は少ない抵抗で晴久のすべてをを受け止めて包みこんだ。 しかしまだ若く幼い互いの性器が硬さと狭さを失うわけでもなく、幼膣は容赦なく締め上げ、幼茎はそれに負けじと胎を貫く。 対面座位での交合は激しく動くのには不向きだ。しかし膣の性感が未開発でクリトリスへの依存度が大きいヒバリには逆に好都合だった。 薄く発毛した晴久の根本で、勃起してフードから顔を覗かせたクリトリスが圧迫と擦過に苛まれる。 僅かな陰毛がそこに時折挟まり、多幸感と共にヒバリの意識を昇天させようとする。 それによりヒバリの膣の筋肉は収縮を繰り返し、肛門括約筋と繋がった膣括約筋とのコンビネーションで晴久の先端から生え際までを満遍なく責め立てた。 たまに少年の乳首と少女の乳首が擦れあい、互いの手が互いの背中を強く掴む。 思い出したように口づけし、しかし性器の快感に流され唇が離れ唾液が糸を引く。 名前を呼び合う余裕は減っていき、体と体がぶつかりあいこすれあう擦過音と水音が増えていく。 「ヒバリ、そろそろ……」 「うん、晴久……」先程と似たような言葉のやり取り、しかしそこに含まれる意味は微妙に違う。 ヒバリの絶頂に伴って晴久も果てるその時、今度は互いが名を呼ぶことはなかった。そのために必要な口を、深めのキスで塞いでいたためだ。 晴久の射精と同時に彼の亀頭と精液溜めが膨らむのと、口の中で互いの舌が絡まり合うのを感じ取ったヒバリ。 ヒバリのアクメで激しくなる膣蠕動と締め付け、それにヒバリの舌で口を犯される感触に襲われる晴久。 二人は肉体と感情の両方でほぼ同時に絶頂し、その幸せの余韻がいつまでも響いていた。 ただ、小さくなった晴久のペニスとコンドームの隙間から漏れ出した精液が、ヒバリの会陰を濡らしていた。 その後も二人は体を重ね続けた。 騎乗位で交わって、晴久に結合部を見せつけたり。 背面座位で交わりつつ姿見鏡に映してヒバリに結合部を直視させたり。 腰の下に枕を入れることで、正常位でのピストン運動が容易くなることを発見したり。 幼い二人は心ゆくまで肉欲に溺れ、温泉で体を清め、また交わることを繰り返した。 完全に体力を使い果たした二人が眠りについたのは、日付も変わって未明と呼ばれるような時間帯になってからであった。 途中からハニモンは寝てしまい、渡されたコンドーム10個綴りのうち残ったのは半分だった。 翌朝……朝と言うにはやや遅い時間。ようやく起き出した二人が昼食とも朝食ともつかない食事を摂っている頃、宿の表が騒がしくなった。 どうやら仲間が宿にたどり着いたようだ。 二人は顔を見合わせ、打ち合わせていたことを確認する。 浅野ヒバリが実は女であることは、しばらくは秘密にする。 二人がそういう関係になったことは……もっと長い間、秘密にする。 それはデジタルワールドの冒険を終えてリアルワールドに帰還するまでなのか。 それとも大人になって誰彼憚ることなく交際できるようになるまでなのか。 そんな明日よりも先の未来のことはわからないけど。 今は、仲間の無事を喜ぼう。 そして、誰にも見つからない機会があったら、また二人で…… 余談であるが精液で排水溝が詰まったことにより、二人が一晩を過ごした部屋が丸一日使えなくなった。 女将改め清掃バイトの浮橋さんが掃除することになったのだが、無表情ゆえにどういう感情で作業していたのかは本人しか知らない。 (了)