報復、それは甘美なものです 復讐、それは何もかもを捧げることが出来るものです そんな誰かへの報復を 「あちしに任せて欲しいのです……ね?」 いつも通り依頼を受け、そして 「…はい、これでターゲットは事故死しました…証拠は、こちらです。」 翌日には魔法で操り事故死させる、依頼の報酬は前払いのため、これで終わりです 「…ねーねー、何願ったらこんな魔法手に入れて~、こんな仕事するようになったのさ~」 青い髪のメイドが尋ねる 「願いはすごく平凡ですよ……まぁ、少し話をしましょう。」 かつてこの屋敷には、40人以上のメイドと、父の組のヤクザが70人以上いました 「すみません、紅茶のお代わりを」 「かしこまりました」 当時のあちしはただの少女で、便利屋などしていませんし、今ほど積極的に何かに絡む気がありませんでしたよ ただ 「糸音ちゃーん!!」 同い年くらいの、仲のいいメイドが居るくらいでした 「ぎゅー!!」 「望さ」 「のーぞーみーちゃーん!もしくは望!!」 「…望ちゃん、苦しいです」 彼女は捨て子で、あちしが橋の下で拾ってメイドにしてもらったんですが… 「…あ!?糸音ちゃんのお母さんからケーキ貰ったの!!糸音ちゃんの分もあるから一緒に食べよ!!」 「あちしの分もあるんですか…いただきましょう」 あちしが彼女を拾ったことが、本当に良かったことなのか あちし程度が… 「……えい!」 プニ 「…!?にゃにを」 「難しそうなこと考えてたからほっぺをプニ~!」 プニ プニ 「にゃめてくだひゃいぃー」 「もっとぷにぷにー!!」 望と一緒に居ると、すごく楽しかったんです あの時だけは…年相応だったのかもしれません …だからこそ、あんなことを願ってしまったんでしょうね その日は晴れているいい日で、父の客がやってくる日でした 「糸音ちゃーん!!今日はメイド先輩たちも忙しそうだから望が一緒に居るね!!」 彼女は幼いがゆえに父の方の仕事には関われないですが あちしの相手は常にできるのでこういう時にも重宝してたみたいです 「そうですね、父が忙しそうですし、今日はゆっくり…」 ドッカーン!! 「!?」「え!なに!?」 急に屋敷内で爆発音が聞こえた 「望!!こっち!!」 「え!?わわ!」 あちしは望の手を掴み窓の方に向かう 「ここに緊急の出口があります、ここから出ますよ」 「ふぉぉおお!!映画みたい!!」 「…言ってないで手伝ってください!」 彼女と二人で床下の隠し扉を開き、地下通路を二人で走る 「これ何処に繋がってるの!?」 「街の外の先代たちが作った別荘に繋がってます!そこまで走りますよ!!」 彼女がうん!と元気に頷き、そのまま地下通路を走る 別荘まであと半分まで来た頃だった 「いたぞぉぉおおお!!」 「!?早い!!」 組を襲いに来た集団の一人が追いついてきた 大の大人と小さき少女達の幅はどんどん無くなっていき 「死にやがれぇぇぇぇぇえええええ!!!!」 追いついてきた男がドスを振るう 狙いは、あちしだ 「糸音ちゃん!!!!危ない!!」 彼女があちしを突き飛ばして… 「…え?」 鮮血が壁を、床を、彩った 「のぞ…み?」 「に、げて…いとね、ちゃ…」 逃げなくては、彼女の死を無駄にしないためにも 逃げないと、意思を継ぐためにも なのに!! 「…いやだ。」 動けない その時だった、声が聞こえた 「君の願いを聞かせてくれないかい?」 白い何かが問うてきた 答えなど、決まっていた 「報復を。こんなことをする者達に報復する力を!!!!」 あちしは、魔法少女となり その力で、目の前の敵をすべて切り刻んだ 「望!!」 敵を切り刻んだ後、すぐに彼女に近づく 「待ってて!!今治療を!!」 あちしは地下通路内にある治療箱で彼女の怪我をなおそうとしたが 「いと、ね……ちゃ………」 「望!!」 「ぶ……じ、なん…だ……よかっ、た…」 「今から治療するから!!」 「う……う…ん、も……う、見え……な」 彼女はもう弱りきっていた 初めて彼女を拾ったときと、同じくらい衰弱していた… 「い………ちゃ、」 「望…!!」 「みんな…を、笑顔に……して…その……まほ、みたいな……ちか、ら…で………」 肌の色が、瞳が、赤い色が 彼女は限界だと告げている それでも彼女は声を紡ぐ 「ひろっ……て、くれ………あり、が………」 掴んでいた腕が地に落ちる 最後の支えが無くなり地に横たわる 「…のぞみ?…望!!」 肩を揺らしても、もう動くことは無い あちしは初めて死を知った 「望……見ててください、貴方の仇は、あちしが!!」 あちしは初めて、報復を知った 「…うへぇ~、凄い事があったんだね~」 「はい、あの時襲撃しに来てた組は魔女に操られてた人たちだったのですが、その後あちしが全員殺しましたよ」 青髪のメイドが少し引いた顔をしてるのを横目で見ながら、もう少しだけ話を続ける 「あのカチコミで父母は生き残ってましたが部下は50人死に、メイドはほぼ全滅ですよ、あちしが報復せずとも、父が行ってたでしょうね」 「そうだけどさぁ~」 ピピピピピピピピ タイマーが鳴る 「おや、もうこんな時間ですか……すみません、少し野暮用に行ってきますね」 メイドがいってらっしゃ~いと言いながら手を振り あちしは地下通路を通り、地上に出て 「…望、今日も来ましたよ……今日の菓子は」 日課の墓参りをするのだった 「報復は何もかもを燃料にしてしまうほどの魔力があります、あちしの火はまだ消えてませんが……彼女との約束の方が大事ですので…ね?」