いつものように賑わいを見せる王都サカエトルの宿。クリストはギルドで達成した依頼の報告と、仲間たちの詳しい活躍の報告、(イザベラにとって)緊急性の高そうな新しい依頼の確認、カンラークの生存者との会合や世界各地の情勢の情報収集等、様々なことを済ませて宿に戻ってきた彼は、自分の部屋に戻って装備を外し一息ついた。 (全く、偏見というのは恐ろしいものです) 現在の旅のパートナーであり、最早片割れとも呼べる(少なくとも周囲は確実にそう見ている)少女のことを思い、端正な顔を曇らせる。何事も控えめで。自分自身の誤解を招きやすいことの多い彼女は緊急時は極めて優秀な勇者なのだが、平常時はとても引っ込み事案な少女である。しかも今彼が組んでいるパーティーの仲間たちはイザベラ筆頭に、ジュダ、ヴリッグズと非常に悪印象を招きやすい個性的な者ばかりで、今回の宿のチェックインだってもしクリストが誤解を解かなければ、確実に怯え切った店員に宿泊拒否を食らっていただろう。 部屋に置かれている机の方に目を向けると、菓子と流麗な文字でクリストの苦労を労わる走り書きが書かれた紙が置かれている。筆跡から恐らくイザベラがクリストのために持ってきてくれたのだろう。 (イザベラ様…) 胸が暖かくなり、笑みがこぼれていくのを自覚できる。当然だろう。密かに思いを寄せている女性に、労われて嬉しく思わない男がどこにいようか。 * * * * * * *  クリストが彼女に恋心を抱いたのはいつだっただろうか。 始めは純粋な尊敬だった。世界のために我が身を尽くすように活動を続ける、その姿こそが勇者なのだと純粋に感動し、この御方の盾となろうと思ったのだった。 それが、彼女と共に旅をする中で、次第に心配の念が芽生えていった。余りにも奉仕の度が過ぎている。自分の身を顧みぬ、まるで贖罪のような振る舞いに、何度か諫めたが、その都度彼女は首を横に振ってこう言うのが常だった。 『いいの、私は、こういう生き方しかできないから』 その言葉に込められていた意味を、彼女の身に起こった悲劇と、決意を彼女の口から打ち明けてもらったのはずっと後のことだった。 『ゴブリンとか関係ない。ね、クリスト。歓迎するね、ヴリッグズ』 尊敬は敬愛に、 『クリスト、ジュダは、嘘を吐くような人じゃないと思う。私はジュダを信じる。よろしく、ジュダ』 敬愛は恋慕に代わっていった。 だが、この想いはイザベラ様に知られるわけにはいかない。そもそも、自分にはあの方に告白する資格などないからだ。 PTを編成してわかったのだが、僕の仲間たちは本当に誤解されることが多い。口調から誤解されやすいジュダさんに、ゴブリンというだけで警戒の目を向けられるヴリッグズ。そもそも、リーダーのイザベラ様からしてその容姿と雰囲気から誤解を受けることが多かった。 そんな中、想定外のことが起こった。僕にだけ声望が集中してきたのである。イザベラ様を差し置いて僕がリーダーとみなされ、モンスターを討伐したら仲間たちの功績は過小評価され、自分の評価だけが上がっていく。 皆は僕がいるお陰で旅や異変解決がスムーズにいって助かってる。って言ってくれてるが、これでは功名泥棒ではないか。僕がいない方がいいんじゃないかと思ったことも二度や三度ではない(一度酒の勢いを借りて悩みを吐露したことがあったが、直後三人に囲まれて出ていかないでと涙声で縋られた。それ以降この悩みは二度と口にしないよう肝に銘じている)。 (全く、これではマーリンのことをとやかく言えないじゃないですか…) 頭の中で詐欺魔法使いの下品な笑みが聞こえてきて、慌てて思考を中断する。いけない、少し疲れているようだ僕は。 「僕なんかが、イザベラ様に想いを寄せる資格ないのに…」 ガチャンッ 真後ろで聞こえた食器の割れる音にハッと振り向いたクリストの顔が、驚愕の色に染まる。 そこには、今まさに彼が想いを寄せており、決して今の言葉を聞かれるわけにはいかなかった少女─────イザベラが呆然と立ち尽くしていた。 * * * * * * *  「イ、イイイ、イザベラ様どうしてここに!?」 「あ、あ、あのクリストが疲れてないかなってお、思って、そ、それで一緒にお茶しようと…」 「そ、そーなんですかー…」 みるみるうちに顔が赤くなっていくイザベラ、対照的に、クリストの方は声が上ずり、顔がどんどん蒼白に染まっていく。 「クリスト、さ、さっきの発言、本当?」 (まずい、まずい、まずいまずいまずい!!!) 自制心を総動員して震えそうになる体を抑え込む。そうだ、これまでも癖だらけな冒険者たち、ギルドの職員、旅先で出会う市民や依頼人、マーリン野郎。そして誰もが色々大変な重いものを抱え込み、悩みながらも歩みを止めない聖騎士の尊敬する先輩たち、色んな人たちの間で仲裁に回り、進行役やまとめ役を務めてきた。いつだったか、冒険者たちの潤滑剤と、有難いのか有難くないのかよくわからない評価も頂戴したこともある。今回のピンチもなんとか乗り越えなければ。 それに……もしかしたら聞き間違えてくれたかもしれない。 「すいません。えっと、僕の何の発言のことですか?」 何とか混乱から立ち直ったクリストは、爽やかな笑みをイザベラに向ける。 「う、うん…クリストって、わ、私のことが好き、なの?じょ、女性として」 今度こそ、膝から崩れ落ちようとする自分をクリストは抑えることができなかった。 「す、すいませんイザベラ様!」 「クリスト!?」 そのまま土下座せんといわんばかりの勢いで、驚愕するイザベラにクリストは必死に謝罪の言葉を続ける。 「どうかお忘れください!僕のような、僕のような価値のない男が、貴女様に懸想などと、とても身に合わない想いを抱いてしまったことを!もし不快に思われるのなら、直ちに僕はここを立ち去る覚悟でッ」 「───何で、そんなこと言うの」 「………え?」 「どうして、クリストはそんなに自分を悪く思うの…?たとえクリストでも、クリストを悪く言うのは、私、許せない」 胸から絞り出すような悲痛な声と、今でも涙が溢れそうな、必死に何かを伝えようとするようなイザベラの視線にクリストは────耐えられなかった。 * * * * * * *  「ジュダ!ヴリッグズ!クリストを止めてぇ!!」 「な、なんやぁ!?」 「ど、どうしたんでさあ!?」 戦闘時ですら聞いたことのない凄まじいイザベラの絶叫に慌てて彼女の仲間たちが部屋から飛び出すと、まさにクリストが脱兎のごとく宿を飛び出し、いずこへと駆け去っていく所だった。 「何があったんですかいイザベラの姐さん!?」 「クリストが私を、す、好きだと言って、それを聞いちゃって、クリストでもクリストを悪く言う人は許さないって私が言っちゃったら飛び出しちゃったの!」 「すんまへん、なんやて?」 あまりに理解不能な説明に一瞬思考が放棄されそうになるジュダであるが、根性で現実へと意識を取り戻す。確かに彼女から見てもこの二人は明らかに両片思いなのはバレバレだった。何度かイザベラを自身の楽しみも込めて焚き付けたこともあったし、クリストの自分からすれば何でそんな、と言いたくなるようなことで引け目を覚えてしり込みする彼を何度か窘めたり煽ったこともある───その結果が、今の現状?まさか悪いのはウチ?ウチ、また何かやっちゃいました? 「どうするんでさあジュダの姐さん!?」 (え?ウチに振るん?ブリッグズはん!?) ナーバスに陥りかけた思考がヴリッグズの大声で一気に現実に引き戻される。思わずヴリッグズに脳内で突っ込みを入れるジュダだったが、イザベラの方を見れば確かに頭がオーバーフローを起こしてるらしくオロオロするばかりで、到底頼りになりそうもない。 かつてないレベルで脳細胞をフル回転させて今行うべき行動をまとめると、ジュダはヴリッグズとイザベラに指示を下す決意を固める。 そうだ、ウチはジュダ、従業員の指示に接客に仕入れ交渉に帳簿の取り方と、あらゆる経験を親の隣で学んできた。これぐらいの差配がこなせなくて何が呉服屋の娘か! 「まず、ヴリッグズはんはクリストはんの追跡を頼むわ!」 「へえ!」 「イザベラはんは台所に行って顔洗てきて!その後水一杯飲んで頭落ち着かしたらヴリッグズはんに合流!」 「え、でも」 「その茹で上がった頭じゃ魔力探知もできひんどっしゃろ?まずは頭冷ますんのが先や」 「う、うん」 「ウチは───気ぶり仮面に一報をいれてくる」 * * * * * * *  以下余談だが、カンラークの聖騎士の中ではクリストという人物は特異な人物である。ボーリャックを始めとして、サーヴァイン、イゾウ、イザベルと現在活躍している元聖騎士たちは極めて戦闘能力の高い人物が多いのが大きな特徴と言える。 その中でクリストは槍を獲物にしているとはいえ、彼の戦闘能力はを前述の人物たちと比較すると──単純に殺傷能力を基準とするのなら──明らかに下位であると判断せざるを得ない。 一方、これまでに挙げた聖騎士たちと比べ明確に違う部分があるとすれば、それは優れた防御魔法、回復魔法、そして支援魔法と言えるだろう。 特に集団戦や防衛線では彼の長所が最大限発揮される。優れた結界と防御魔法で敵の攻撃への驚異を弱め、支援魔法で味方の能力を底上げし、回復魔法で味方陣営の消耗を最小限に抑える。 もし彼がその役割に徹することができるのならば、どんな小さな拠点であろうとも恐るべき鉄壁の要塞へと変貌させることができるであろう。それが聖騎士・聖盾のクリストなのである。 『クリストの攻撃力に限って言えば確かにCランク、いやCランク以下かもしれない。しかし彼の本質はその非常に高い水準の補助・防御系統の魔法と彼の支援向けの真面目で温厚な、それでいて粘り強く柔軟性の効く性格である。もし高位ランクの相方を得、そして心から通じ合えるようになれたとすれば、コンビ時ならSランク冒険者にだって比肩しうる力を発揮することができるだろう』とはカンラーク聖騎士評論家気ぶり仮面の論評である。 もし彼がその能力を自身のみのために使用したらとすれば…? (それがこの結界か…) 気ぶり仮面改め、滅びし聖都カンラークの勇者、ボーリャックが駆けつけた時には、絶賛サカエトル郊外の廃家で籠城の真っ最中だった。 顔を上げてみれば、半透明の円柱の形で天高くまで登ろうかという結界魔法が廃家の周囲に展開されており、結界の付近ではクリストの仲間たちが、必死に結界の向こうに向かって声を掛け続けている。魔法の専門ではないボーリャックにもその結界の練度の高さは一目で見て取れた。 「我が助手『腐女子』よ、あの結界の攻略についてはどれくらいかかる?」 「うー、なんて美しい結界なんだろうね。そう思わない『気ぶり仮面』?あー」 揶揄い気味にボーリャックに尋ねられたアンデットの元聖女、腐聖女マリアンは気ぶり仮面の質問に直接応えず、結界を見上げて感嘆のため息を漏らす。 「うー、極めて防御性の高い結界魔法だ、解析して、論文にまとめてみたいレベルだよ。あー」 「芸術品の解説を依頼したわけではないのだが」 「あー、芸術品の域だよ『気ぶり仮面』、あれはもはや。あの子はそのレベルにまで至ったんだ。あー」 後輩の魔導士としての成長ぶりに腐敗しかけた顔を陶然とさせると、ボーリャックも重いは同じなのか小さく同意の声を漏らした。 2人が前を向くと、増援の到着に顔を期待で輝かせたクリストの仲間たちが駆け寄ってくる姿が見えた。 マリアンが素面を見られないようフードを深く被り、ボーリャックも気ぶりの仮面を装着する。さあ、ミッション開始だ。 * * * * * * *  「アドバイスの連絡だけだと思ってやしたのに、まさかこっちに来られるとは。しかもお早い到着、ありがとうごぜえやす『気ぶり仮面』の旦那ァ」 「いや、偶然サカエトルに用事があってな、ヴリッグズ殿」 「へえ…」 偶々密会の日、大臣イーンボウから『くく、お前宛に速達だぞ、『気ぶり仮面』』と、嫌にニヤニヤした顔で手紙を渡してきたイーンボウの顔を思い出し、再び腹が立ってきたボーリャックだが、それは別に今する話ではない。 「つまり、彼が貴女への愛を吐露し、それを貴女が意図せず聞いてしまった結果、パニックになり今も閉じこもってると…」 「あうう…」 簡単に挨拶を済ませた後、ボーリャックが今回の事件の概略を簡潔にまとめると、該当の黒髪長身の少女、イザベラが真っ赤になった頬を抑えて俯く。 廃家から少し離れた草原に一同で輪の形に腰を下ろし、難しい顔つきで3名から事情を聞いていたボーリャックであったが、内心では『ヨッシャァァァ!!!!』とガッツポーズを浮かべていた。 隣に腰を下ろしているマリアンに目をやると、危険性はないと判断したのか、何やら熱心にメモ帳にペンを走らせてる。イザベラたちは今回の騒動のメモを取ってると思ってるだろうが、実際に書いているのは、次回作の薄い本への使えそうなネタ集めである。全く、信じる者は救われるとはよく言ったものだ。 「それで、あの結界はどうなんどすか…?」 「『腐女子』、どうだ?」 切迫した表情のジュダの質問に、結界魔法は専門分野ではないボーリャックが隣のマリアンに声をかけると、心得たとばかりに頷いたマリアンはネタ帳をしまう。 「あー、まず、この結界は短時間で力技で何とかするのは不可能に近い、うー」 「そないな!」 「なんとかなんないんですかい!?」 ジュダとヴリッグズの悲痛な声にも表情を変えず、マリアンは淡々と説明を続ける。 「あー、対物理・対魔・それもあらゆる属性の、両方に対応した複雑な術式の魔術回路が何重にも重ねて練られている。しかもあれだけ複雑な構成なのに、あの結界には微かな破綻すら見つけられない。本来あらゆる驚異への対応を恐らく考えていたんだろうね。あの結界を構成した廃家の中の術者は。たとえば…」 ここで一旦言葉を区切ったマリアンは、ボーリャックの方をちらりと見て、言葉を続ける。 「魔王軍四天王、エビルソードへの対策とか、うー」 重苦しい沈黙が場を支配しかけたところで、今までじっとマリアンの言葉に耳を傾けていたイザベラがようやく口を開く。 「じゃあ、解決策はないんですか…?」 「ないことはない」 「あるんですか…!?」 パッと表情を明るくさせるイザベラに無表情で頷いたボーリャックは、二本の指を立てる。 「まず一つ目、これは簡単だ。これだけの結界となると術者にはかなりの負担がかかる。つまり…彼が疲労の果てに力尽きるのを待てばいい」 「待って。魔力回復薬や食料を携帯している可能性もあるし、消費量だって、あの廃家の周囲に張り巡らせる程度の範囲なら、ある程度消費量を抑えることが」 「なら、携帯してる食料や薬が尽きるまで兵糧攻めにすればいい。それに、たとえ魔力は回復させられても結界を張り続ける限り、頭脳の疲労は防ぐことができないさ」 『正気か』という目で異を唱えかけたマリアンの言葉を遮ると、不服そうに黙り込むマリアンを尻目に、自分の作戦はどうだとばかりにボーリャックは三人の顔を見渡した。 「それはできません」 ボーリャックの一つ目の案を即座に却下したイザベラは、今までの内気な雰囲気を一変させ。立ち上がって鋭い目つきでボーリャックを見下ろす。 「なぜかな?最も確実で手間のかからない案だと思うのだが」 「『気ぶり仮面』さん。クリストは私たちの、私の大切な人です。私が独りで人助けの旅を続けていた時から支えてくれた大切な人。私を、私だけでなくジュダとヴリッグズを誤解し、偏見の目を向け、拒絶しようとする人たちから、今までずっと守ってくれ続けてくれた。かけがえのない仲間です!」 イザベラの否定をむしろ楽しむかのように、疑問を口にするボーリャックに、ますます感情を高ぶらせたイザベラはクリストへの秘めた思いをまくしたてる。 「そんな、そんな私の大好きな人が、独り私のために苦しんでるのに、彼が消耗しきるのを待つなんて、そ、そのようなこと…絶対にできませんッ!」 彼女は気づいてないが最早告白である。 「ウチも、その案には賛成できひん。ウチラの大切な仲間を放置するような案を本気で進めるなら、ぶぶ漬けを出させてもらいます」 「クリストの旦那はゴブリンのオレにも人間と同様にあの大盾で守ってくれた大切な仲間でさあ。その恩を仇で返すようなマネさせられちゃあ、オレは今後ゴブリン界の風上にも置けなくなりやす」 ジュダとヴリッグズも嫌悪感を露わに一つ目の案の却下を表明した。 (ふっ、クリストのやつ、いい女を捕まえたな。そしていい仲間にも) 後輩の目の正しさを実感したボーリャックは気ぶりの仮面の下で微笑むと、二つ目の案を口にする。 最初は怪訝な目で聞いてた三人だったが、次第にその顔に笑みが浮かび、次々に賛成の意を唱えた。 「もしこの作戦に名をつけるんやったら、こないな名前はどうえ?」 と、ジュダが彼女の出身地に古くから伝わる神話をボーリャック達に語りだすと、興味深げに聞いていたボーリャックもジュダの提案に深々と頷いた。 「ギルドにも増援を依頼して大々的にやるぞ!この作戦名を…「アマノイワト作戦」と名付ける!」 作戦名を叫んだ瞬間、ボーリャックの脳内にふとイーンボウの憎たらしい顔がまた浮かぶ。そうだ、アイツにも大いに役立ってもらおう。 高々に叫んだボーリャックに口々に上がる歓声の中、マリアンだけが「彼女さんの反応見たさにわざと最初に愚策言いやがったなテメー」という目つきでボーリャックを睨んでいた。 * * * * * * *  廃家に逃げ込んでから、どのくらい経っただろうか。瞑想状態から意識を確認したクリストは消耗した頭で現在の状況の再確認を始める。 最低限の携帯食料はあるし、魔力回復薬も節約すれば暫くは持ちそうである。でも、仲間のことも心配になる、そろそろ戻らなくてはならない。…それでも、どうしてもみんなに顔を合わせる踏ん切りがつかなかった。 気づけば仲間たちの自分に呼びかける声も聞こえなくなっている。そのことにクリストは微かな安堵と、ソレをはるかに上回る罪悪感に身を苛まれる。 壁によりかかり、再び意識を思考の海に沈ませる。 (僕の想いが彼女に知られてしまった。どうすればいいか……。僕には、イザベラ様に愛される資格なんてないのに) 「聞きましたかポルポレオ!!!」  突然聴こえてきた大きな声に、一気に意識が浮上した。 「好色で有名なサカエトルの王都大臣イーンボウが、新たに一人の冒険者の女性をターゲットにしたらしいじゃあないですか!!!」 「それは、長身、黒髪で長髪のあの例の女性のことであるかあぁ!?アリーユ殿!!」 「はい!!!噂だと20人目の愛人候補に迎え入れたいとか!!!」  廃家の外からきこえた聞き捨てならない大声に、思わず立ち上がりかける。 (長身で、黒髪長髪の女性と言えば、まさか) 「まさか、あの名高い漆黒の勇者イザベラがイーンボウの閨に呼ばれるなんてな。世も末ではないかぁ!オカダよ!」 「ああ!しかもよぅサバイバーズ・ギル!あの男にはなんともよからぬ噂を聞くぜぇぇ!!?」 「ああ!人妻や彼氏持ちの女性を狙っては、スモック服を着させて悦に浸る好色家という話だろ!?」 「はあああ!?何よそいつ!!そんなクソ野郎がサカエトルにはにいるわけ!!?サバイバーズ!!!」 「よせコハナ!壁に耳あり!障子になんとやら、だ!!」 騒がしい声が止んでからも、クリストは立ち尽くすことしかできなかった。イザベラ様が、彼女が慰み者になる?しかも妙齢の女性にスモック聞かせるような変態に。 でも、話が本当ならイーンボウって男は、パートナーがいる女性が性癖らしい。なら、大丈夫では… 「だがしかし、なんでまたそのイザベラさんがその変態に狙われたんですかい!?ねえゴフクの姐さぁん!!」 「どうも、あん人にはずっと一緒に旅をしとった殿方がいて!その人にずっと懸想しとったらしいでぇロビンフッドはん!!いやあなんとも健気な話やわあ!!!」 また大きな立ち話が聞こえてきて、しかもその内容に僕は思わず凍り付く。ちょっと待ってほしい。ずっと彼女と一緒に旅をしてきた殿方って、まさか… 「なんと悪漢イーンボウはその話を聞いて『BSSもまた良し』と食指を伸ばしたとかという話でござる!これぞ天魔の所業!!」 「はてはて何と見下げ果てた男かぁ!この騎士マキーナ・サンクタが、この剣に誓って必ずやその外道を成敗してくれようぞ!」 「あいや、待たれよマキーナ殿!このムサシボウが仕入れた話だと、その男は自分の評判を知ってるのか、館は溢れんばかりの護衛だらけ!外出時も常に大勢の腕利きの護衛を従えてるという話でござるよ!!」 「くっ!独力でその異常性癖者を討ち果たすことは難しいということかぁ!!なんと無念なっ!最早この世に善も!正義も!滅んだのかぁ!!」                               「ッ!……ククッ…!(イゾウ、腹と口抑えて絶賛悶絶中)」                               「…誰だイザベルに朗読指導したのは」                               「ブフォッ!…ッ!…(震える手でベンケイを指さすイゾウ)」 また立ち話が聞こえてきた。そんな鬼畜にイザベラ様が慰み者にされるのか、思わず体が震え、噛みしめた唇から血が滲み出てくる。 (だが、なぜイザベラ様も逃げようとしなかったのか…?) 「でもでもそのイザベラさんは何で逃げなかったの!?ポルポレオお兄ちゃん!?」 「どうも、スモック手にどこかの人妻を追いかけまわしてたところをイザベラ殿に邪魔されて、激怒したイーンボウに拘束されたらしいであるなカゲツ殿!!」 「そんで捕まったってわけね!よくわかんないけど彼氏さん今どうしちゃってるんだろうねジャックお兄ちゃん!」 「なんとも出奔して音信不通らしいらしいぜ!!へっ!普段綺麗ごとばっか抜かす癖に、テメエの女一人守らねえでトンずらとは、とんだ口だけの張りぼて聖騎士様だなぁ!!」                               「マーリン殿踏み込みすぎである、バレたら厳罰の決まりであるぞ」                               「あと彼の関係者たちが凄い目でこっち見てるからなんとかしてねマーリン」                               「やべっつい興が乗っちまった」 (僕のことだ…僕がいないせいでイザベラ様が…) 「それで行方知らずの彼女の想い人を、『臆病者』だの『見かけだけの軟弱者』だの散々にイーンボウが罵倒したんじゃったかのう!?マスクド・キブーリ!!?」 「そうだ!!それにイザベラ殿がクリストはそんな人ではない、と反発されて逆切れしたんだとさぁ!!ティア・ナイアンマ殿!!」 「ほうほう!それで例の賭けとなったわけじゃな!!フジョ・シーンよ!!」 「う゛ー゛!『1日以内にイザベラが想いを寄せる男、クリストが現れれば釈放を検討する。もし現れなかった場合はサカエトル中をスモック服着せて引き回して見世物にしたうえ、情婦にする』って。あ゛ー゛!!」 ぷちっ、クリストの中の何かがキレた音がした。こんなところで閉じこもっている場合ではない。たとえそのイーンボウと相打ちになったとしても、その男を討ち、イザベラ様をお救いに向かわなければ。取り返しのつかないことになる前に。 直ちに結界を解除し、大盾と槍を持ち、駆けだす。行先はもちろんサカエトルだ。 「イザベラ様ーーーーーーー!!!!!………はい?」 勢いよく廃家を飛び出した先に広がってた光景は 「出た!出たぞーーーーー!!!!」 「「「「「「確保ーーーーー!」」」」」 「クリストっっ!!」 "サカエトルで捕まってるハズのイザベラ様"を先頭に、大勢の人が自分を捕まえに駆けて来る姿だった。 * * * * * * *  「そんなに…、私の側が嫌だった?クリストは、私といるのが、辛かったの?」 クリストを押し倒した形となったイザベラが、抱き着いたままクリストの耳元で囁く。 「違います!ただ、僕のような平凡な人間が、イザベラ様の、イザベラ様だけじゃなくジュダさんやヴリッグズの評判を犠牲に自分だけ名が挙がってしまうような。そんな卑怯な自分が貴女を愛す資格などないと…」 「私は、クリストが、好き」 「!!!」 イザベラの拘束から逃れようと必死に藻掻いてたクリストの動きが硬直する。 「私をはずっと前から、クリストのことが好き」 「いつも私のことを、誤解する人達から守ってくれて、ありがとう。私だけじゃなくジュダやヴリッグズの偏見を解こうと、ずっと頑張ってたのみんな知ってるよ」 「クリストがいなかったら、私たちは多分どこでも拒絶されてずっと野宿生活だったよ…?」 「戦闘、貴方の盾で守られてるという安心のお陰で、ここまで戦い続けることができたの。クリストの魔法で助けられてなかったら危なかった、そう思った時が何度もあったよ」 「妹のことを、私が背負ってる罪をクリストに打ち明けた時、”私たち”のために涙を流してくれた時、そして私の願いにお供しますと言ってくれた時、涙が出る程嬉しかった」 「私は、自身が幸せになることなど、許されないと思ってた。生きることは贖罪である。そう、思ってた」 「それを変えてくれたのは、クリストと出会ってから。ずっと、クリストといて、クリストと幸せになりたいと、いつからか思うようになったの」 「私は、貴方のことをお慕いしております。もし、クリストが嫌だと思わない限り、貴方の側にいることをお許しください…!」 「…イザベラ様」 「まず、僕の愚行をお詫びいたします。そして、これから言うのは三人への懺悔です」 「僕は貴女が思うほど、上等な人ではありません」 「僕は、ジュダさんを仲間に迎えようとした時、微かに疑念が頭をよぎったことがあります。…ヴリッグズの時も同様に、一瞬警戒心のようなものを抱きました」 「でも、イザベラ様は二人に、ためらわず手を差し伸べました。ああ、これが勇者と僕のような人間の差なんだと、心底自分に嫌悪感を抱きました」 「イザベラ様や、各地で活躍している勇者様と比較して、その都度自己嫌悪に陥ってしまうような愚かな人間です。今活動しているカンラークの先輩たちと比べると間違いなく弱く、そして一番の俗物でしょう」 「これからも、イザベラ様やジュダさん、ヴリッグズへの向けられる偏見に憤りを感じ、そして引け目を覚えてしまう日もあると思います」 「ですが!これだけははっきりと言えます!僕がここまで頑張ってこれたのは、勇者として日々頑張っておられる貴女の姿に何度も救われたからです!」 「僕は、貴女をお慕いしております。こんな…こんな僕でよかったら…………これからもイザベラ様の隣に在り、貴女の盾であることを許してもらえますか」 「…はい!」 一瞬の静寂のあと、周囲で爆発的な歓声が沸き起こった。 「ぐすっ…良かったなあクリスト!」 「わっ!?あ、イゾウさんも来てくれてたんですか!」 イゾウが感涙しながらクリストに飛びつく(その瞬間、イザベラの顔が僅かに引きつったことは幸い誰も気づかなかった)。 「良かったわあイザベラはん、クリストはん…!」 「良かったですねえジュダの姐さん…!」 ヴリッグズとジュダが泣きながら抱き合って喜んでいる。 「さあ今夜は無礼講じゃあ!ワシが酒を持ってきたゆえ、今日はめでたく結ばれた二人を祝ってたらふく飲もうぞ!」 ティアの声と共に、どこからともかく現れた兵士たちが酒樽の積まれた荷車を回してくる。 「むっ!これはサカエトル産のワインでござるな!いずれも滅多に味わえない最高品質のものでござるよ」 と、ベンケイが自慢の鑑定眼で山積みにされた酒樽を評すると、あちこちから歓声の声が沸き起こった。 * * * * * * *  ボーリャックが喧騒から少し離れた所で腰を下ろして皆にもみくちゃにされてるクリストたちを眺めてると、聖騎士イザベルとサーヴァイン・ヴァーズギルドが無言で近づいてきて、まずギルがドサッとボーリャックの隣に座りこむ。 「…俺の作戦に乗ってくれたこと、礼を言う」 「勘違いするな。俺は後輩の恋路に興味があって乗っただけだ」 「…俺と斬り合うか?素直に殺されてやる気はないが受けて立つぞ」 「……今回はやめておこう。確かにボーリャックには未だ思うところがあるし、魔王軍がマリアン様にした仕打ちも決して許すことはできない。だが、『気ぶり仮面』などという珍妙な男にはとんと面識がない」 それに、と今まで無言でボーリャックを見下ろしていたイザベルが、クリストの方に目は向けながら呟く。 「クリストのやつは、『ボーリャック先輩は何か真意があるはず』『あの人をもう一度信じてほしい』と、何度も私に異を唱えてきた」 ここではない、どこか遠くを姿を見るような目でイザベルはクリストを見る。『奴は裏切り者だ』『あの男を信じるのをやめろ』と何度言っても、時には激高したイザベルに振り払われても、彼女の復讐を思い留まらせようとする、あの時の後輩の姿を。 「…………」 「そんな優しく、愚かで、可愛い後輩の祝いの日に無粋な真似はしたくない」 「…ああ、そうだな。ところで、酒を貰って来たんだが、一杯どうだ?」 「…いただこう。近ごろ覚えがないくらい声を張り上げて、少々喉が渇いてる」 「ふふっ、私もだ」 そっとイザベルもギルの隣に座し、なおも手洗い祝福を受けてるクリストを肴に3人が杯を合わせる。 「「「乾杯」」」 3人の背後では、マリアンが無言で酒を交わし合う三人のスケッチ(主にギルとボーリャックを)を一心不乱に行っていた。 (なによ!ギルのやつ、私をほっぽって酒盛りなんて…しかもあんな美人と知り合いとか!) 因みに絶賛放置プレイを食らっている状態の†天逆の魔戦士 アズライール†ことハナコが複雑な乙女心を抱きながら、恨めし気な目でちょこちょこ彼らの周囲をうろつき回ってたことに、残念なことにギルが気づくことはなかった。 「ハ、ハルナ殿!?飲むペースが流石にヤバいのである!」 「止めないでボルボレオお兄ちゃん!私は今日の記憶を全て消すと心に決めたの!」 浴びるように酒を飲むハルナに流石に心配となったボルボレオが声を掛けるが、一向にハルナの杯を傾ける手は止まろうとしない。 一瞬でも気を抜くと、先程の気ぶり仮面との接触の記憶がハルナに蘇ってくる 『ハルナちゃん、世話になったね。個人的にも"君には一度会ってみたかった"』 『カゲツという名前、使ってくれたんだな。"実に君に合う名"と思って薦めたから、使ってくれて嬉しいよ』 『君たちには借りができたね。もし君やPTに何かあった時は"直ちに駆けつけて"気ぶらせてもらうよ』 そう言ってハルナの手に優しく手を置く気ぶり仮面の姿が───ハルナの目には死神に感じられた。 「~~~~~~~~!!!!!」 全身をゾクッとした感覚に襲われたハルナは、再びワインを胃に流し込む作業を再開させる。 (気ぶり仮面の正体がリャックボーなんて気づいてない!マリアンと何故つるんでるかなんて思ってない!!聖騎士との妙な距離感とか何にも私は気づいてない!!!) 隠密としてのリャックボーは怪しいという勘と、全開で警報を鳴らす自身の生存本能。相反する感覚の中で、彼女は後者を躊躇わず選択した。 「あー、ところでお前さんがた」 お内裏様とお雛様のように仲良く並んで座ってお酌を注ぎ合ってる二人の所に、いい感じにアルコールで出来上がってきている魔法使いマーリンが、少々危うい足取りで寄ってくる。 「マーリン…貴方にも迷惑をかけましたね」 中々彼とは生き方も価値観も相いれず、クリストにとっては腐れ縁とも、犬猿の仲ともいえる人物であるが、今回の自分の引き起こした迷惑の解決に一役買った功労者の1人でもあるし、今回ばかりは笑顔でマ―リンの言葉の続きを待つ。 方やイザベラの方はというと、少々ジト目な目つきでマーリンのことを見ている。どうもアマノイワト作戦の時の彼の台詞をまだ少々根に持ってるらしい。 「今後はやっぱり同室でご休憩するのですかい?もしそうならいい雰囲気の店ピックアップしてお安く紹介してやるぜ!勿論2時間コースから18時間コースまで」 直後、クリストの大盾ぶん回しアタックが炸裂し、天高く舞い上がるマーリンの姿があった。 * * * * * * *  「ふう…」 地面に熱烈なキスをしたまま伸びてるマーリンを回収、ユイリアに引き渡し丁重に謝罪したクリストがイザベラの隣に座り直すと、そっとイザベラがクリストの肩にしなだれかかってきた。 イザベラらしからぬ大胆な行動に驚いたクリストがイザベラの顔を覗き見ると、彼がいない間に少々お酒を過ごしたのか頬は紅く染まり、目がいささかトロンとしてるように感じられる。その姿が、なぜかひどくクリストには蠱惑的に感じられる。 「ねえ、クリスト…」 「ど、どうしましたかイザベラ様」 ドギマギしながらクリストがイザベラの声に返事をすると、途端に何かお気に召さなかったのか、ジトーっとした目でクリストの腕に抱き着いて見上げてくるイザベラ。慌てて何度か声を掛けるが、その度にイザベラのご機嫌が斜めになってくるようで、段々頬も膨れてきている。 「ぼ、僕が何か粗相でもしたでしょうかイザベラ様」 「……それ」 「え?」 「恋人同士なのに、様付けなの?」 (そ、そうきましたか…!) 確かに二人は恋人という関係に変わったとはいえ、イザベラは勇者でもあるし、奥ゆかしいクリストにとっては、勇者を様付けせずに呼ぶことは非常にハードルが高い。 (だが、今日僕はイザベラ様のか、彼氏になったのだ。それに、イザベラ様をはじめ、周りに今回は散々迷惑をかけてしまった。僕も、変わる覚悟を決めなければ) そう、覚悟を決めたクリストの腕に抱きついていたイザベラをそっと離すと、イザベラの方に向き直して姿勢を正す。イザベラもそれに応えるように姿勢を正し、二人は向き合うように座り直した。 「い、行きます」 「うん」 「イ、イザベラさ」 様と続けそうになった唇を強引に閉じる。 「イ…」 「……」 「イザベラ、さん」 その瞬間、イザベラの顔がみるみるうちに輝いていって、 「…はい!」 と、満面の笑みでクリストに返事をした。 その笑顔は、一度見たものは誰でも瞬時に魅了されるような、とても美しい笑みだった。 「クリストはんは自分から尻に敷かれるタイプやなあ…」 「多分上目遣いかふくれっ面で交渉すれば、どんなお願いも通りますぜイザベラの姐さん」 「ほ、本当ッ?」 「はいっ、うるさいですよそこ!」 * * * * * * *  【余談】   「大丈夫ですかマーリン?」 「いつつ…なあ酷いと思わねぇかユイリア、俺流の祝福を風情のわからねえヤローめ」 「(クスッ)分かってますよマーリン。大切な友人の祝いの場ですからね」 「……いやいやいやどこをどー見れば俺とアイツがそんな関係に見えんの。混乱付与されてる?誰かに幻覚かけられてる?」 「?」 「え?何で俺の方が『何言ってんだこいつ』って目で見られてんの待って待って怖いんだけどハルナ―!ボルボレオー!助けてくれ―!」 「ところでイゾウさん、どうしてそんなに声が嗄れてるんですか」 「おめえにはっきりと聞こえるよう台本の練習から本番までずっと声張り上げてたからだよ文句あっか」 「す、すいませんでしたぁ!」 「そなたが気ぶり仮面か」 「ん?あんたは†天逆の魔戦士 アズライール†さんか、サーヴァインの仲間の」 「い、いつの間に私のことを!?じゃなくて!あ、あの、私も気ぶり仮面に依頼、じゃなくて!お聞きしたいことがあって!でもなくて、卿に頼みがあって参上した!」 「むっ?(なんだ?急に彼女から気ぶりの気配が…!)」 「う、うむ、ギ、ギルについて、知ってるのなら、好きなものとか嫌いなものとか色々教えを請わんでもないぞ!いや好きとかそういうわけじゃないんだけど!?アイツに何か見返してやりたいというかなんというか…」 「ほう…その依頼、歓迎しよう(ギル…貴様の春も、この俺が届けてやろう!)」 「クク…ボーリャックよ、最近私がスモック狂いの変態という妙な噂があるのだが…何か知らんか?」 「何のことやら全く存じ上げませんな」 「『サカエトルで聖盾の勇者クリストと漆黒の魔法使いイザベラのカップルが誕生』」 「『ようやくくっついたか 関係者安堵』『結婚秒読みか?両人とも明確に否定せず』『ティア王女、サカエトルでの挙式を猛烈アピール』」 「……そう、幸せになれるんだねお姉ちゃん」 「私には祝いに行ける資格なんてないけれど…、これだけは言わせてほしいな」 「おめでとうお姉ちゃん、クリストさん、どうか私の姉をよろしくお願いします」