ある日、突然全人類が「音」を聞けなくなった。 ところが意外とたくましかった人類は、視覚に言葉や音を写すことができる拡張現実技術を用いて、漫画のような現実を生きていた。しかし、視覚表現に適応できなかった音の文化は軒並み死んでいった。 音のある世界を知らない世代として生きてきた少年は、ある日文化博物館で鬼のような形相でドラムセットを打ち鳴らす婆さんと出会い、生まれて初めての空気が伝えるドラムの衝撃に心臓を撃たれる。 「こんなもん、音の欠片に過ぎないのさ。もう一度、本物の音楽ってやつを魂の底まで響かせたいね。」 かつての婆さんのバンド仲間を再び集め、本物の音楽と彼女が呼ぶ「ライブ」をすることは出来るのだろうか?