星空が輝く晴天の夜の下、私は音楽プレーヤーを片手にみかづき荘のベランダでひとり星を見上げていた。 普段はあまり星空をじっくり見る事はないのだが、今日は何故か星から目を離せなかった。 目の前の綺麗な夜景。イヤホンを通じて耳に流れてくる心地いい曲。その二つが私の心の奥深くに澄み渡ってゆく。 そんな静寂の夜に、私はとある人物の事を思い浮かべていた。 別の未来の環いろは〈わたし〉を愛していたという男性のことを。 いつの間にか私の目の前に現れ、いつの間にか私の前から消えたひと。 みふゆさんから彼の真実を告げられた時…正直な所あまり実感は湧かなかった。 自分にそんな存在がいるなんて思わなかったし、未来の自分と言うのも想像出来なかったから。 しかし…ずっとどこか悲しそうな目をしていた彼の表情を思い出せば嘘だとも思えなかった。 救われてほしい。幸せになってほしい。 私も彼も、想いは同じだった。 「……えっ?」 突然私の目の前で一筋の光が強く輝く。 その輝きを見た瞬間、私の脳裏に浮かんだのはあの星。 ワルプルギスの夜との戦いの途中で輝いた星はきっと、彼の力によって起きた奇跡だと私はそう結論づける。   「そっか…今日の星は、あの時見た星と同じなんだ」 今の私は恋と言うものは分からない。 これまでそんな事を考える余裕も状況もなかったし、やっと日常に戻った今でさえ考えられないのだ。 でも、これから先誰かに恋をするのなら─ イヤホンに流れている音楽の歌詞のような、二人で手を取り合って一緒に人生を歩んでいける関係を築けたらいいなと思った