■青嵐の館(せいらんのやかた)  デジタルワールドの辺境、常にデータが崩壊と再生を繰り返す特殊な磁場【青嵐エリア】の中心に存在する建造物。  その存在目的は、エリア内で発生する致死的な【デジタルストーム】からの避難所の提供と、その嵐の中で生まれる新たな進化の可能性を観測することにある。  外観は巨大な風車塔で、色鮮やかな八重の風車(かざぐるま)が絶えず回り、軒先からは巨大な風鈴が、嵐の轟音の中でさえ澄んだ音色を響かせている。  常に鳴り続ける巨大な風鈴の音は、館の結界が正常に機能している証でもある。  その混沌とした姿は、デジタルワールドそのものの「破壊」と「再生」のサイクルを体現しているかのようだ。  館の主は四大竜の一体であるゴッドドラモン。彼はこの館を訪れる全ての者を「客」として迎え入れるが、その真意は謎に包まれている。 【館内施設一覧】 1. ロビー『星空の玄関』  ワープゲートを抜けた者が最初に足を踏み入れる、広大で荘厳な空間。館の顔であり、心臓部。磨き上げられた黒曜石の床は、天井の光を映してまるで水鏡のよう。  天井はドーム状に高く、無数の光のラインが複雑な幾何学模様を描きながら明滅しており、さながら館内に閉じた星空を思わせる。  中央には、この館の動力源ともいわれる【マザー・クリスタル】がそびえ立つ。内部では青と緑を基調とした光が螺旋を描き、まるで呼吸するかのようにゆっくりと脈動している。  この水晶は、宿泊者のデータ登録、館全体のエネルギー供給、そしてデジタルストームの観測記録という多岐にわたる役割を担う。  一角には簡素な受付カウンターがあり、普段はゴッドドラモン自らが客人を迎え入れるが、彼の不在時は従者であるウモンが代わりを務めることもある。 2. 談話室『暖炉の間』  ロビー左手の回廊の先にある、宿泊客たちの交流と休息の空間。壁に埋め込まれた暖炉では、決して消えることのないデジタルの炎が揺らめき、柔らかな光と温もりで部屋を満たしている。  様々な意匠のソファやクッションが配置され、種族や立場の違う者たちが、ここでは等しく羽を休めることが許される。  壁には古いデジモンの紋章や、デジタルワールドの歴史を思わせる装飾が施されており、訪れる者に静かな物語を語りかける。  ここは、新たな出会いや情報交換が生まれる社交場であると同時に、時に意見がぶつかり、疑念や陰謀が渦巻く密議の場ともなる。 3. 食堂『銀河の食卓』  螺旋階段を上がった2階に位置する、宿泊客たちの胃袋と心を満たす場所。  中央には長い木製のテーブルがいくつか並べられ、簡素ながらも温かい食事が提供されていた。  壁際には自動販売機のようなデバイスが並ぶが、ゴッドドラモンの言う通り調理機能は数年前に故障している。  そのため現在は、宇宙を旅してきたという風変わりな料理人、ベーダモンが厨房を預かる。  彼女の作る「ギャラクシーフルコース」は、見た目も味も常識外れだが、その絶妙な味わいは荒んだ心を癒す不思議な力を持っている。  ここは、館の中で最も平和で、誰もが笑顔になれる唯一の聖域かもしれない。 4. 娯楽室『束の間の遊技場』  談話室の向かいにある、明るく開放的な空間。  ここでは、中央の大型ホログラムスクリーンで過去のデジモンバトルの名勝負を観戦したり、様々なボードゲームやカードゲームに興じたりできる。  しかし、この部屋の真価は、その膨大なアーカイブ機能にある。  過去の記録や文献データが収められており、知識を求める者にとっては宝の山だが、中には誰かが意図的に隠した、館の秘密に繋がるデータが眠っていることもある。  見せかけの平穏の裏で、情報戦が繰り広げられる舞台でもあるのだ。 5. 宿泊エリア『トランプの回廊』  3階と4階に広がるプライベート空間。細い回廊に沿って、赤と黒のトランプのスートが描かれた26の個室が並ぶ。  このトランプのマークは、宿泊客の魂の在り方や、秘められた運命を暗示しているという噂もある。部屋はシンプルだが、外の嵐の音が、かえって館の内部の安全を際立たせる。  しかし、一度扉を閉ざせば、そこは完全な密室となる。  安らぎの寝床であると同時に、誰にも知られずに行動を起こすための、あるいは誰にも知られずに消されるための、危険な舞台にもなり得る。 6. トレーニングルーム『鋼の修練場』  5階に位置する、デジモンの肉体と戦闘技術を極限まで高めるための施設。  様々なトレーニング器具に加え、模擬戦用のバトルフィールドも備えている。  汗と闘気の匂いが染みついたこの部屋は、強さを求める者たちの熱気で常に満ちている。  ここは、純粋な力のぶつかり合いが許される、ある意味で館内で最も正直な場所と言えるだろう。 7. 展望室『嵐の観測所』  館の最上階、風車の真下に位置する円形の部屋。壁面全てがモニターとなっており、荒れ狂うデジタルストームの全貌を360度のパノラマで映し出す。  破壊のスペクタクルは、見る者に畏怖と絶望、あるいは新たな創造への期待を抱かせる。  ゴッドドラモンはここで嵐のデータを観測し、世界の「再生」の兆候を読み取っているとされる。  また、強力なエネルギーが集まるこの場所は、何らかの「儀式」を行うのに最も適した場所であるとも噂されている。 8. 地下牢『忘却の監獄』  ロビーのマザー・クリスタルの地下に隠された、館の暗部。ゴッドドラモンが「秩序を乱す者」を一時的に隔離するための施設であり、その存在は宿泊客には知らされていない。  冷たい岩壁に囲まれた各房は、内部のデジモンの力を弱める特殊なフィールド発生装置が備わった強固なデジタルロックで封鎖されている。  ここは、罪人を罰するための場所ではなく、あくまで館の「平穏」を守るための最終手段。しかし、一度ここに閉じ込められた者は、朝を迎えるまで外界と完全に隔絶されることになる。 9. 管理室『天竜の間』  展望室の天井に偽装された隠し扉の奥にある、ゴッドドラモン専用のプライベート空間。ここは、彼の居室であると同時に、館全体を掌握する司令室でもある。  部屋の中央にはマザー・クリスタルと直結した球状のコンソールがあり、セキュリティシステムの管理、水晶柱が収集したデータの解析など、館の全てを掌握する中枢となっている。  壁には、他の四大竜と通信するための祭壇が設けられており、その荘厳な雰囲気は、ここが単なる管理室ではなく、神聖な領域であることを物語っている。 10. 浴場『青嵐の湯』  食堂と同じく2階の、螺旋階段を挟んで反対側に位置する大浴場。ウモンの力によって癒やしの力を持つ湯。  湯船からは、破壊されたデータの残滓が星屑のように立ち上り、幻想的な光景を作り出す。  この湯には、軽度の傷やデータの損傷を修復する効果があり、戦いで疲弊したテイマーやデジモンの心身を癒す。  男女別に分かれており、嵐の中の、束の間の安らぎを提供する奇跡の場所だ。 11. 試練場『竜天回廊』  ロビーの水晶柱に、ゴッドドラモンが認めた「試練に挑む資格を持つ者」が触れることで転送される、特殊な仮想空間。  ここは、四大竜の試練を受ける資格を持つ者だけが入ることを許される神聖な場所である。  内部は無重力に近く、足元には銀河が、頭上には星雲が広がる。ここで挑戦者は、ゴッドドラモンが与える試練に挑むことになる。  肉体的な強さだけでなく、揺るぎない精神力とパートナーとの絶対的な信頼がなければ、決して突破することはできない。  ユンフェイのドラコモンがスレイヤードラモンへと進化を果たしたのも、この場所である。