二次元裏@ふたば

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205811 B25/08/14(木)22:36:47No.1343218640+ 23:53頃消えます
トレーナーの人差し指に触れる。指紋に沿って指の腹を撫でる。少し乾燥している。
「ふぅン、固くなっているみたいだね。緊張しているのかい? リラックスしたまえよ」
第一関節、第二関節となぞっていき、最後に指の付け根をぎゅっと握りこんだ。
トレーナーの手は刺激に対してぴくぴくと震えた。
「いい反応をするじゃないか。これは効果が期待できそうだね」
タキオンは指と指を絡ませて、押し潰すように肌をすり合わせた。
それが恋人つなぎと呼ばれていることなど、無論、知る由もない。
このスレは古いので、もうすぐ消えます。
125/08/14(木)22:37:08No.1343218790+
オキシトシン健康法という一連の研究について、タキオンは懐疑的だった。
別名、愛情ホルモンとも呼ばれるオキシトシンは、信頼する相手と肌と肌を合わせることで分泌される。
その効果は絶大で、精神的な安定を呼び込むだけでなく、筋力増強や精力倍増なども認められている。
学園は一躍、話題になった。隙さえあればトレーナーとオキシトシン健康法に励む生徒で溢れるようになった。
タキオンはもちろん、信じていない。しかし、それでは科学者として誠実ではない。
すべての事象は理論により紐解かれ、実験により証明されるべきである。
タキオンはさっそく、自らとトレーナーを実験体として、オキシトシンの効果を確認することにした。
やることは単純だ。要はお互いに触れあえばよい。
まずは手と手を重ねることから始める。そして、徐々に肌の接触面積を増やしていく。
正のフィードバックがあればレース結果やタイムに現れてくるはずだ。気長な実験が始まった。
225/08/14(木)22:37:26No.1343218900+
「無理ではないかと……思います……」
マンハッタンカフェはこの完璧な実験について疑義を唱えているようだ。
ブラックコーヒーを一口飲んだ後、いつものように目を合わせることなく虚空に視線を投げた。
「カ〜フェ〜。横槍を入れるとは君らしくもない。何が不満なんだい?」
試験管の中ではサイケな液体が沸騰し、ばちばちと火花を放っている。
カフェもオキシトシン健康法を実践している生徒の一人だ。
コーヒータイムになるとトレーナー室で二人きりになり、横並びに座って手を繋ぐのだ。
結果、カフェはここ最近のレースにおいて目覚ましい成果を上げている。
「私たちには……絆がありますから……タキオンさんにはそれがありません」
「ほう、絆ね。非科学的で不確定な、意味理解の曖昧な形而上の概念か」
カフェはコーヒーが苦いのか、少し眉をひそめた。タキオンが笑う。
「まあ見ていたまえ。すぐに結果を出してみせるよ」
325/08/14(木)22:37:47No.1343219057+
第二段階に移行する。腕と腕とを絡ませる。
細い木に蛇が這いのぼるように、トレーナーの腕に複雑に巻き付いていく。
遺伝子の二重螺旋を思わせる二本の腕。新たな生命の息吹を感じる奇怪な交感であった。
次の日の平均タイムはいつもより0.1秒速かった。
「まさか、こんな簡単なことで……いや、まだ早計、か」
第三段階に移行する。上半身と上半身をくっつける。
まずトレーナーを半裸にする。直接肌に触れないことには十全に効果を発揮できない。
タキオンも服を脱ぐ。上半身はビキニだけになる。
肌面積は広ければ広いほど良い。しかしトレーナーの要請もあって、ぎりぎり下品にならないラインに留まっていた。
トレーナーを椅子に浅く腰掛けさせて、膝の上に乗り、ぺったりと胸と胸を重ね合わせる。
季節は夏。じっとりと汗ばんでいき、お互いの汗が混ざり合いほのかな芳香を放った。
次の日の平均タイムは0.2秒速かった。これは統計的に見ても有意な差である。
425/08/14(木)22:38:08No.1343219185+
「ククク……いいねえ、実に興味深い。少なくとも偶然ではなさそうだ」
タキオンは実験結果にかぶりついて唸った。上々の成果に鼻歌が出る。
しかし一つ不可解なことがあった。それはトレーナーの体調である。
絶好調をキープしていたタキオンとは対照的に、トレーナーはげっそりと頬がこけていた。
まるで精を搾り取るサキュバスのように、一方的に体力を吸い取っているかに見えた。
「私にはオキシトシンが出ているがモルモット君はそうではないと? ふむ」
ふと、マンハッタンカフェの冷たい台詞が思い起こされた。
「私たちには……絆がありますから……タキオンさんにはそれがありません」
オキシトシン発現は"信頼する"相手というのが前提だ。
もしもトレーナーがタキオンのことを畏怖の対象として見ているのであれば。
これまでの試みはむしろ逆効果にしかなっていないことになる。
「ふぅン……」
第四段階への準備が着々と進められていた。
525/08/14(木)22:38:26No.1343219294+
学園には貸切風呂という概念がある。申請すれば1時間単位で入ることができる。
今、風呂の中身は透明な液体で満たされていた。温度は28度。水風呂としてはややぬるい。
すくい上げてみるとわずかにとろみがある。薄い葛湯を連想させる粘度だ。
「入りたまえ」
海パン一丁になったトレーナーは異議を唱えず肩までどっぷり浸かった。
これはタキオン特製の薬品で、皮膚感覚を鋭敏にし快楽信号を増幅させる役割を負っていた。
首から上までコーティングしたら、その場で正座させ背筋を伸ばすよう指示する。
こうすればこちらも抱きつきやすい。第四段階では下半身もできるだけ密着させる。
薬品によって敏感になった肌が盛んに神経細胞を活性化させていた。
タキオンは明確に"快"を感じた。この"快"の感覚こそがオキシトシンを呼び起こすものと理解していた。
しかし、その感覚はトレーナーとは共有されていない。
625/08/14(木)22:38:47No.1343219446+
事実、トレーナーはマネキンのごとく微動だにせず、こちらのハグにも応じない。
表情も硬くこわばったままで一切目を開けようとしない。苦痛なのか?
「まるで拷問を受けているようだねえ、そんなに嫌かい?」
はっとようやく瞼を開いた。そうではないと、ふるふる首を振る。
「違うんだ。ただ……」
「ただ?」
「俺はモルモットだから、その領分を越えてはならないと、心に言い聞かせているから」
どうにも話が読めない。ひとまずそのまま喋らせることにした。
「これは実験なんだ、これは実験なんだって、強いて自分を諫めるようにして。感情を出さないようにして……そうでないと溢れてきてしまうから」
「何が?」
「たぶん、タキオンへの想いが」
そう言うと、トレーナーは顔を赤くして視線をそらした。タキオンは目を点にして言葉を反芻する。
なるほど。合点がいった。
725/08/14(木)22:39:06No.1343219590+
「それはそれは、なんとも摩訶不思議な、驚嘆すべき精神の持ち主だね」
オキシトシンは神経伝達物質でありホルモンでもある。もちろん、自分の意識で制御できるものではない。
しかし目の前の男は高潔な意思と、強固な理性とでもって欲望の表出を抑えているのだという。
モルモットに殉じなければならないという、その一点だけで。
奇妙にねじくれた"絆"の存在を、感じずにはいられなかった。
「では命じよう。今からその軛を取り払いたまえ。君は自由だ。君を閉じ込める檻はどこにもない」
水風呂に長く浸かっていると、自分の周りに膜が張ったようになる。温度の境界層ができるのだ。
今、境界層はタキオンとトレーナーを包み込み、渾然一体となって昇華されつつあった。
トレーナーはついにマネキンだった腕を動かして、タキオンを優しく抱きしめた。
雪崩式連鎖反応が起こり、オキシトシンの血中濃度が爆発的に増加した。
タキオンは、"第五段階"について考えていた。
825/08/14(木)22:39:36No.1343219769そうだねx1
タキオンの実験結果が公開されると、学園は急激に色めきだった。
「不純! 不純であります! 風紀委員として到底認められません!」
「学園を水着でうろつく生徒が増えていると……会長、早急に対策を講じないと!」
「タキオンさんが言うんだから間違いないのよ。ローションみたいなのももらったわ」
「あ、相棒……そんなにじろじろ見んなよ。俺だってこんな際どい水着だって思ってなくて」
「船橋ではこれくらい普通です」
「陰陽合一だね! これも風水だよ! 恥ずかしがることない!」
「しねェよ。バカ」
学園の秩序は崩壊し、混沌が顔を覗かせようとしていた。
今のところ、"第五段階"に到達した生徒は確認されていない。
925/08/14(木)22:51:24No.1343224715+
こういうのでいいんだよこういうので
1025/08/14(木)22:57:45No.1343227287そうだねx3
すげぇな船橋は未来に生きてるな
1125/08/14(木)23:17:45No.1343235099+
1225/08/14(木)23:17:50No.1343235139+
>すげぇな船橋は未来に生きてるな
「「北海道(苫小牧)でも普通です(よ)!!11!」」
1325/08/14(木)23:18:39No.1343235462+
こんなこと言われちゃモルモットくん溶けて無くなっちゃうんでは…
1425/08/14(木)23:28:39No.1343239100+
報告してないだけで大半の生徒は第七段階ぐらいまで行ってるだろ!!
1525/08/14(木)23:33:38No.1343240730+
>すげぇな船橋は未来に生きてるな
フリオーソは小さいころ一緒にお風呂くらいしてそうだからな…


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