「ふたりとも！朝ごはんできてるよ！イチャイチャしてないで早く起きてきてっ！」
「あっ、ウイちゃんもおはsumimi〜〜」

エプロン姿でぷりぷり怒ってるこの子もウイちゃん！ういちゃんの妹の三角初華ちゃんだよ〜〜！
眩しい朝日みたいに元気で甘えん坊でカワイイ女の子！アイドル大好きでsumimiのことも応援してくれてるんだ〜〜！まな達に隠れてパスパレオタクしてたときははんぶんこにしたけど。

「初華、今日も笑顔が眩しくてかわいいね。おはsumimiのKiLLKiSSしたい……する」ﾁｭ
「もうっ！お姉ちゃんったら……私もお姉ちゃんにおはsumimiのチューのおかえし」ﾁｭ
朝からキレイな姉妹愛が見れてケンコウニイイ！色々あったけど今は仲良しなふたりだね！まなもふたりのこと大好き！

「ふたりだけで盛り上がってないで、まなにもおはsumimiのチューしてよ〜〜」
「ふふっごめんね」ﾁｭ「まなちゃんもおはよっ」ﾁｭ
えへへ……まなも含めたそんな３人で暮らす、幸せな日々を送ってます！きっと今日も騒がしい一日になる気がするね〜〜！

──ﾋﾟﾋﾟﾋﾟ……ｱｻﾃﾞｽﾜ……ｵｷﾙﾉﾃﾞｽﾜ……──

─────
───
『───ﾋﾟﾋﾟﾋﾟ……ｱｻﾃﾞｽﾜ、ｵｷﾙﾉﾃﾞｽﾜ……ｽﾄﾚｽﾌﾙﾅﾛｳﾄﾞｳﾉﾏｲﾆﾁﾃﾞｽﾜ』
『───ﾋﾟﾋﾟﾋﾟ……ｱｻﾃﾞｽﾜ、ｵｷﾙﾉﾃﾞｽﾜ……ﾌｾﾝｦﾐﾃﾌﾙｲﾀﾂﾉﾃﾞｽﾜ』
『───ﾋﾟﾋﾟﾋﾟ……ｱｻﾃﾞｽﾜ、ｵｷﾙﾉﾃﾞｽﾜ……ﾊﾔｼﾞﾆｶｸﾃｲﾃﾞｽﾜ』

むにゃむにゃ……ういちゃんズと今いいところなんだから……静かにして〜〜って叫びたくなっちゃう……
『───ﾋﾟﾋﾟﾋﾟ……ﾙｰｻﾞｰﾙｰｻﾞｰﾙｰｻﾞｰﾃﾞｽﾜ……ﾊﾂﾈﾓｳｲｶﾓﾜﾀｸｼﾉｶｷﾀﾚ』
「も〜〜！うるさ〜〜い！」ﾊﾞｷｯﾒｷｮｯﾎﾞｷｯｽﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞ
『ﾃﾞｽﾜｧｯｯ！？』

まなの手で殺sumimi一歩手前になったぷちっしゅムジカ目覚まし時計シリーズ(※オブ祥ちゃんver./おしゃべりAI搭載/税込み16,800円)。
ベッド脇に転がったその無残な姿を見て、ようやく夢見心地から覚醒しちゃった。

ん〜〜よく寝た〜〜！世間は連休だけど、今日も朝早くからういちゃんとsumimiのお仕事だよ〜〜！頑張ろ────あれ？あっちのウイちゃんはどこに？

「ウイちゃ〜〜ん？どこいるの〜〜？出ておいで〜〜？」

家の中を探し回る。
ここかな？この部屋かな？それともこっち？ん〜〜〜？いない！

ウイちゃん。いつもならこの時間はまなのためにおいしい朝ご飯を作ってくれてるウイちゃんがいない。
さっきの夢と違ってういちゃんとは同棲してないけど、妹のウイちゃんはまなと同棲中なんだよね〜〜。

「うーん、どこいったんだろ？………ねえ、あなた、ウイちゃん知らない？」
「ｸﾘｽﾄﾌｧｰ・ｺｰﾛﾝﾌﾞｰｽ！」
「え、え〜〜！？こんな朝早くに出ていっちゃったの？しかも結構遠くに？」

ウイちゃんがどこからか拾ってきて飼育用の箱の中で飼ってる変な妖精さんに彼女の居場所を質問した。
どうやらウイちゃんは外出中らしい……どこまで行ってるんだろ？

「ﾜｶｯﾃﾝﾀﾞﾛ？ﾍﾟｲｽ」
「……まあいっか、妖精さんありがと〜〜おやsumimi〜〜」

妖精さんにお礼の砂糖水をあげて、おうちの箱の蓋を閉じた。
今日は変な鳴き声のおじさんの姿だったからホッとしたよ〜。

でも、そう……ウイちゃん………。


「ウイちゃん出ていっちゃったんだ……………まなになにも言わずに」


少しだけ胸の中にモヤモヤっとした不安がよぎる。
思い出すのは、ずっとふたつでひとつだと思っていた存在が突然消えてしまった、あの日の怖い記憶───

───ふふふ、なんてね。

甘いねウイちゃん。フロスティングとチョコスプレーマシマシのドーナッツより甘い家出ですよ〜って叫んじゃう。
まなは即座にスマホのアプリを立ち上げた。


こんなこともあろうかとウイちゃんの位置情報と生体情報はモニターできるようにしてるんだよね(※ウイちゃんには内緒！)。


「えーっと、ウイちゃんはどこかな？わっ、すごい速さで移動してる……今は……静岡？もしかして新幹線乗ってる？」
東京から西の方。となると、行き先はやっぱり故郷の島かな？

「ああそっか、今日って……だから黙って出ていったんだね」

─────
───
陽の光が入らない暗い暗いトンネル。
その中を弾丸のように這いずる車両。

窓際の席で私はただただ無が広がる窓の外を眺めていた。
イヤホンで塞いだ耳が圧力によって息苦しさを訴える中、ガラス鏡面に反射した顔がこちらを見つめている。

紫色の瞳。こがね色の髪の毛。それが隠れるようにキャスケット帽を目深に。
街を歩けばよく似た顔の女と、そこら中に張られた平面を通して対面できる。まるで嫌がらせのようだった。

顔を見る度に思い知らされる。
ああ、つくづく嫌な気分だよ。ああ、なんて生きづらい世界なんだろう。ああ、ほんとうに───

「ひっどい顔」

窓の外で流れる暗闇に映り込んだ顔が眉をしかめる。
これから向かうのは私が生まれ育った瀬戸内の離島。

少し田舎で閉鎖的だけど、私は嫌いじゃなかった島。
少し歪で変わってたけど、私たちの家庭があった島。

すべて、私がぶち壊した。私の言葉ですべて失った。すべて過去形になった。
もう元に戻ることはない。もうあそこには何もない。

それでも今日は私のパパがあの島に帰ってくる日だ。
片割れはもうあそこを訪れることはないだろうから。せめて私だけは迎えに。

『初音はパパが違うから悲しくないんだ！！！！！』

きっと幼稚で愚かだった私のこと、すごく怒ってる。

窓に反射する顔がため息をつく。
ほんとうに腹立つ顔。ひどい顔。

本土に出てきて、この顔に何度も苦しめられた。
平面から嗤う顔。私の心を何度も挫かせにきた。

一線を越えてしまった報復は今も苛烈を極めて。
その最たる実害が────これ。


ヒソヒソ………ヒソヒソ………
　　ヒソヒソ………ヒソヒソ……


『ねえ……あれってsumimiの初華……！？』

『あの席座ってるの、sumimiとムジカの初華じゃない……！？』
『えーーうそっ！？やばーーいっ！？顔良っ！？』

ヒソヒソ………ヒソヒソ………　　ヒソヒソ………ヒソヒソ……

『あれ？でもsumimiって今日東京でアイドルフェス出るんじゃないっけ？さっきSNSでそんなん見たよ？』
『あー、じゃあそっくりさんかな？どっちにしろ失礼だしジロジロ見ちゃダメだよね……でも濡れてきたから責任取ってほしい……納税者だしそのくらいはいいと思わない？』

ヒソヒソ………ヒソヒソ………　　ヒソヒソ………ヒソヒソ……

『似てるだけあってイケメス……クンニさせたい……ちょっと辛抱たまらんから連れレズシコせん？』
『観測史上最悪のモブレズ。しかしゴミクズの分際で公序良俗は守護るというその気高い遵法意識、称賛に値する───共にゆく』

ヒソヒソ………ヒソヒソ………　　ヒソヒソ………ヒソヒソ……クチュクチュ……

密閉された空間の中で、潜めた好奇の声と水音が走り回った。
公共の場でおっぱじめるのやめてよ……マジでこわいよ……。

こういうのにも慣れた。このタチの悪い呪いみたいな状況に。
粘つく不快感は拭えないけど───慣れた。

『はぁはぁ……モブレズの私が吐いた二酸化炭素が初華そっくりの金髪かわいいメスの肺に……これはレズキスハメしたと言っても過言……触りたい……愛でたい……』『かわいいメスにモブレズは無許可おさわり厳禁なんすよ赤羽クンニ奴隷条約違反だって。東京のお嬢様学校で起きたモブレズ大量検挙事件知らんの？……でも授乳手マン交渉くらいなら公権力も見逃してくれると思うんだよね』

慣れたんだけど……１秒でも早く目的地に着いてほしいかな……。
頭の中から嫌なことを振り払うように、かぶりを振る。別のことを考えよう。

（朝作って冷蔵庫に入れといたご飯……まなちゃん食べてくれてるかな？）

この地獄みたいな世界から私を救ってくれた、大天使。
いろいろあって一緒に住んでる、大好きなまなちゃん………心配してるかな。

聡いまなちゃんのことだし、意図は察してくれるでしょ。
何も言わず、唐突に、夜逃げするみたいに家を出た私の目的も行き先も。
この家出の仕方は少しだけあの日の初音みたい。少し自嘲気味に思いを巡らせる。

初音。私の家族、お姉ちゃん───だった女。過去形。私に現在進行形で呪いをかけてる女。
パパが帰ってこなかったあの日、私が初音に最低なことを言ったのを発端にして、見事にこの呪いがかけられた。

初音がパパの死を悼んでいないわけがないのに。
私と同じように、初音を大事に育ててくれていたパパを。
冷静に考えればわかったことなのに、あのときの私は……私は………───ため息をつく。

（今日sumimiのライブだって聞いてるし……変に意識しててほしくないな）

でも、あの優しいお姉ちゃんは、あの悲しい気持ちをずっと抱えて生きてきた姉は、あの悲劇のヒロイン役に陶酔しがちな初音は────あの女は、きっと生い立ちだって、パパが亡くなったことだって、それを悲しまないことだって、家族がバラバラになったことだって、便利に自分だけの"かわいそう"に浸る舞台装置として利用して───────ああもう、やめようよ。

また嫌なループに陥るのを切り上げる。

「………ﾁｯ………本当にムカつくやつ」

窓に映る顔。そいつに舌打ちを飛ばす。

ダメだ。何かで気を紛らわさないと碌なことを考えない。私はもう。
スマホの画面を操作して、なにか手慰みになる適当なものを探した。


「────推し旅 JR東海×AveMujica vol.168『貴き大魔女オブリビオニスと怜悧端麗なる魔女見習いドロリス少年の麗しき戯曲〜〜pulchra fabula〜〜』……？なにこれ？」


これ、車内限定で聴けるコンテンツかな……？
ムジカの……？さきちゃんと初音の耽美系の朗読劇……？

……………………。

「知り合いや身内のこういうのって、触ると逆に自分の方が傷を負うイメージがあるんだけど………まあいいや」

なにか逃避したい気分だったので、若干の嫌な予感を抱きつつ再生ボタンを押した。
イヤホンから流れる音に耳を傾け、細かな振動を供にして目的地までの旅路を往く。


単身での初めての帰郷。
愛する家族の墓標を目指して。

きっとお姉ちゃんが来ることはない。今年も、これからも。


それでも少しだけ、ほんの少しだけ、いつか、なにかが変わる可能性を期待していた───

すいませんでした

続きます
予定３話くらい？

おやsumimi〜〜

久しぶりに見た
クンニ羅生門の「」だよね？

おやsumimi〜〜じゃないが

>続きます
>予定３話くらい？
ありがたい…

>「ｸﾘｽﾄﾌｧｰ・ｺｰﾛﾝﾌﾞｰｽ！」
>「ﾜｶｯﾃﾝﾀﾞﾛ？ﾍﾟｲｽ」
ここで地味にダメだった

相変わらずモブレスがちんちん亭みたいなリアクションでひどい…
けど実際シコれるからしかたないね

シリアスとアホを反復横飛びしやがる…

>すいませんでした
謝らないで…
続き近いうちに見せて…

なにかしらの薬物をキメてると思う

>久しぶりに見た
>クンニ羅生門の「」だよね？
やっぱそうだよな続き見れて嬉しい

RASが仕込まれとる…

改めて考えると整形したり名前変えたりしないと大変だよね初華って…

>眩しい朝日
>パスパレオタク
>……する」ﾁｭ
>おかえし」ﾁｭ
>キレイな姉妹愛
>ます！きっと
昨日ライブしてたもんね…

>税込み16,800円
こういう数字ネタすき