二次元裏@ふたば

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140055 B25/04/17(木)22:50:52No.1303298088そうだねx4 00:17頃消えます
「初華さま、どうぞ」
いかにも高級そうなカップに入った、いかにも高級そうな珈琲を、お手伝いさんが運んでくる。
さきちゃんのお家もだけど、睦ちゃんのお家も、絵に描いたような、信じられないほどの裕福さが溢れ出していて、ときどき目眩のようなものを感じる。
高い吹き抜けも、壁一面の大きな窓も、体育館みたいな広さの部屋も、家政婦さんの存在も、あまりにも現実離れしていて。
「さき、遅れるの」
お人形さんみたいにきれいな顔をした女の子が私に問いかける。
「忘れものしたんだって」
睦ちゃんの「ん」という返事だけが響いて、そうして、会話はすぐに途切れてしまう。
正直、気まずい。すごく。
珈琲に口をつけて、カップを置く。これを三度ほど繰り返す。
……私たちは運命共同体で、バンドメンバーで。これから先、ふたりきりになることだってあるわけで。
よし。
このスレは古いので、もうすぐ消えます。
125/04/17(木)22:51:48No.1303298411そうだねx1
「睦ちゃんって、好きな…ものとかあるの」
考えに考えて捻り出したはずの言葉の、あまりの不器用さに、自分でも驚く。
「わからない」
わからない、か。
「たとえば、食べ物とか、飲み物とか」
「ギターは、好き?なんだよね」
表情を変えずに、こくんと頷く。
「じゃあ」
私だって、会話のキャッチボールみたいなものはあまり得意ではないけれど。
しばらく、私は頑張って話題を投げて転がして投げて転がして、困りに困って――。
225/04/17(木)22:52:08No.1303298528そうだねx1
「――さきちゃんのことは」
言葉にしてしまったことをすぐに後悔する。そんなことを訊いて、どうしようっていうんだろう。
「好き」
一分の迷いもないかのような、はっきりとした言い方ですぐに切り返されるとは思ってもみなくて。
そう、だよね。
私は、珈琲に手を伸ばすことすらできずに、ただただ、沈黙することしかできなかった。
325/04/17(木)22:52:34No.1303298667そうだねx2
「まってて」
沈黙を破ったのは、睦ちゃんだった。
立ち上がって、とことこと部屋の外へと歩いていって、小さな身体には不釣り合いな大きなアルバムを抱き抱えて、戻ってくる。

「かわッッッッッ!!!!」
開かれたアルバムを目にしたとき、自分でもびっくりするほどの声量で、言葉の体すらなさない何かが私の口から飛び出した。
お手伝いさんが駆けつけてくるくらいの大きな声。ごめんなさい、違うんです。
ひまわり畑。おおきな麦わら帽子。幼い頃の睦ちゃんとちいさな手をつないで笑うさきちゃん。
かわいい。かわいすぎる。だめだ、もう、だめだ。私、今日、死んじゃうのかもしれない。
意識が遠のいて、ふかふかのソファに倒れこみそうになったものの、手の甲を強くつねってなんとか堪えた。
425/04/17(木)22:53:39No.1303299097そうだねx2
「さきは、かわいい」
どこか得意げな顔をした睦ちゃんがつぶやく。
知ってるよ!
と、窓を突き破るほどの勢いで叫び返したいところだったけれど。
あの島で、私の心を奪っていったさきちゃんは、さきちゃんの全てではない。当たり前のこと。
頁がめくられるたびに、私の知らないさきちゃんが眼前に現れて、まばゆい。
思わず、声が出る。
目がつぶれそうになるのに、目が離せない。
ぺら。ぺら。
「あっ。やめっ。だめだよ。睦ちゃん。やだ。やらぁ……」
ぺら。ぺら。
「もう……もう、やめて。睦ちゃん!もう……むりぃ……」
違うんです、お手伝いさん……。
525/04/17(木)22:54:21No.1303299360そうだねx1
「まだ……ある」
「また今度にしよ?ね?そうしようよ……」
おそらく、他のアルバムを取りに行くために立ち上がろうとする睦ちゃんの手を掴んで、命乞いをする。
これ以上、さきちゃんを浴びせられたら、きっと、かえってこれなくなっちゃうから。

「ういかも」
肩で息をする私の瞳をまっすぐ見つめて、睦ちゃんはまっすぐ問うてくる。
「さきが、好き?」
ここで嘘をついて、誤魔化しても仕方がないし、そんなことをするのは、睦ちゃんに対して、失礼で不誠実だと思う。
「好きだよ。大好き」
睦ちゃんは、また、表情を変えずに頷いて、私の隣に腰をおろした。
「わたしも、さきが好き」
そうして、ふたりの間には、沈黙が舞い戻ってくる。
でも、きっとこれでいいんだと思う。
心なしか、睦ちゃんの雰囲気が柔らかくなったような気がして、少しだけあたたかい気持ちになる。
625/04/17(木)22:55:02No.1303299638そうだねx3
睦ちゃんとさきちゃんは幼馴染で、きっと姉妹のような存在で、きっと家族のような存在で。
ふたりが過ごしてきた日々を思うと、ほの暗い感情が芽生えそうになるけれど。
だけど、さきちゃんは、私にとっても、睦ちゃんにとっても、どうしようもなく、かけがえのない大切なひとで。
私とさきちゃんの未来は、まだまだこれからで。
睦ちゃんとさきちゃんの未来だって、まだまだこれからで。
だから。

「……アルバム、また見にきてもいいかな?」
睦ちゃんは、「ん」と短く返事をして、こくんと頷いた。
725/04/17(木)22:58:09No.1303300837そうだねx1
やさしいせかい
825/04/17(木)22:59:01No.1303301156そうだねx5
ういむつは共闘できる
アルバム責めとかはじめて見た
925/04/17(木)22:59:55No.1303301496+
>「もう……もう、やめて。睦ちゃん!もう……むりぃ……」
えろしですわね
1025/04/17(木)23:03:55No.1303303012+
こんな未来が待ってると良いね…
1125/04/17(木)23:04:42No.1303303320+
互いを理解し尊重する
それがどれだけ尊いことか
1225/04/17(木)23:05:10No.1303303515+
家政婦は見た
1325/04/17(木)23:12:39No.1303306236+
ういむつさきを諦めない委員会の者ですが…
1425/04/17(木)23:16:36No.1303307648そうだねx4
>こんな未来が待ってると良いね…
いいだろ…怪文書だぜ?
1525/04/17(木)23:18:02No.1303308155+
怪文書と…なりきりの混沌…
スレは永くつづく…
1625/04/17(木)23:18:15No.1303308254+
春は祥ちゃん
夏の祥はさらなり
秋の祥ちゃん
冬の祥ちゃん
1725/04/17(木)23:21:46No.1303309574+
スレ画からバッドエンドを予想していたけど杞憂だった
1825/04/17(木)23:27:17No.1303311466+
>ういむつさきを諦めない委員会の者ですが…


1925/04/17(木)23:29:48No.1303312229+
しっとり回のガルパピコでぎりぎりありそうな話でいいね…
2025/04/17(木)23:30:27No.1303312458+
怪文章の量がここのところすさまじいな
2125/04/17(木)23:36:49No.1303314655+
さきちゃんいいよね…
ん…
なんなんですの…
2225/04/17(木)23:47:14No.1303318268+
>怪文章の量がここのところすさまじいな
アニメが終わって出揃ったからな…もう気兼ね無く好き勝手書けるってもんよ
2325/04/17(木)23:49:59No.1303319214そうだねx1
こんな感じのういむつ永遠に見たい
2425/04/17(木)23:50:51No.1303319498そうだねx2
ういむつにひたすらかわいいってささやかれながら挟まれる神しか見たくないもんな…
2525/04/18(金)00:00:03No.1303322486+
>怪文章の量がここのところすさまじいな
ログに残ってるの追うだけでもかなりの量ある…
ケンコウニヨクナイけどやめられない…


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