二次元裏@ふたば

画像ファイル名:1742135378009.png-(133747 B)
133747 B25/03/16(日)23:29:38No.1293029959+ 00:50頃消えます
素敵な夢を見た。
ふと目を開けると、アタシのトレーナーが一頭のいるかに変わっていたのだ。
いるかが名乗るはずはないのだけれど、そのいるかはきみなんだと、なぜかはっきりわかった。ゆっくり浜辺を歩くアタシにつかず離れずついてきてくれる姿が、そう確信させたのかもしれない。
そんな健気な姿を見ていると、いろいろな所に行ったけれど、海の上を散歩したことはなかったな、と思ってしまうのは仕方ないことだろう。
そして、きみの行く場所についていったこともなかったな、と。
このスレは古いので、もうすぐ消えます。
125/03/16(日)23:30:28No.1293030280+
「海の上には、なにがあるんだろうね。
きみ、知ってる?」
きゅう、と元気のいい鳴き声は、アタシのために楽しいことを考えてくれるときのきみの声にそっくりだった。
どんな姿であっても、きみをきみでいられなくすることはできないらしい。任せてくれ、と言いたげなその響きに、アタシはいつものように心躍らせていたのだから。

きみはアタシを背中に乗せて、青い海をどこまでも泳いでいった。きらきらと光る水面をかき分けてゆく度にアタシが子供みたいにはしゃぐと、どこか苦笑するように優しく鳴いていっそう力強く泳いでみせるのが、とても素敵だった。
船か何かでただ海を渡るだけでは、きっとこんなにわくわくしないだろう。この景色が綺麗なのは、きみの背中から見ているからだ。
アタシがきみを背負って走ったとき、きみもこんな気持ちだったんだろうか。そう思うと、ひどくうれしかった。
225/03/16(日)23:30:52No.1293030435+
それからはもう、はしゃぎっ放しだった。きみと泳ぎで競争したり、鼻先に乗せてもらって大ジャンプしたり。思いつく限りの楽しいことを、たくさんした。
でも、何といっても最高だったのは、きみと一緒に海の底に潜っていったときだった。
珊瑚の森でかくれんぼをしたあとは、腕をいっぱいに広げてイソギンチャクの花畑に飛び込む。きらめく水面に向かって指を伸ばすと、蝶の代わりにクマノミが止まった。
指先をくすぐられて笑い出したアタシを、きみのひれが優しく撫でてくれた。
天国はどこにあるの、と聞かれたら、今のアタシは迷うことなく、空の上ではなく海の下を指差すだろう。そこにはいるかの姿をした天使がいて、アタシをどこまでも喜ばせてくれるのだと。
325/03/16(日)23:31:07No.1293030523+
きみに連れられて夕焼けの海まで来たときに、アタシの胸の奥にすっとひとつの言葉が思い浮かんだ。
きみの丸い瞳は、あの夕焼け空と同じ茜色にきらめいている。どんな姿になってもその瞳は、アタシの生きる姿に夢を見てくれた。
そんなきみに言いたいことなんて、ひとつしかなかった。

「好きだよ」
ゆっくりそう囁いて、きみをぎゅっと抱きしめた。たとえ姿は変わっていても、いつも愛を告げたときのように、きっと少し恥ずかしそうに伝え返してくれると思っていたから。
でも、きみはぽかんとしている。何を言われたのかまるでわからない、という感じだ。
きみは何かを訴えるように、きゅうきゅう、と可愛らしい声で鳴いた。でも、きみが何を言いたいのか、アタシにはわからない。
心にぽっかり空いた穴が埋められずに、すう、と風が吹いたような気がする。
別のことにも、アタシは気づいてしまった。アタシがどんなにきみを抱きしめても、きみの小さなひれは、アタシを抱き返してくれるには足りないのだ。
425/03/16(日)23:31:23No.1293030637+
きみは相変わらず、きゅう、きゅうとさみしそうに鳴いている。もしかするといるかの言葉で、アタシが好きだと言ってくれているのかもしれない。
その懸命な姿を見ていればいるほど、アタシの胸に空いた穴が大きくなっていく。
ああ、困ったな。アタシもきみも、こんなに愛し合っているのに。
そのための当たり前の言葉さえ、こんなにも伝わらないなんて。
525/03/16(日)23:31:36No.1293030729+
部屋はまだ夜の闇の中だった。
スピーカーから、波の音が聞こえている。あんな夢を見たのは、きっとそのせいだろう。
隣りにいるきみはもちろん人間の姿をしていて、アタシが今までどんな夢を見ていたかなんて知らないまま、穏やかな寝息を立てている。
その顔を見て安心するのと同時に、アタシの胸の奥には実に理不尽な不満が沸き起こった。アタシをひとりにして、こんなに気持ちよさそうに寝ているなんて。
「ふふっ」
夢の中に忘れ物をしてきてしまった。取りに戻るためにもう一度眠りに落ちる気もない。あの夢をもう一度見たとしても、きっともっと多くのものを置いてきてしまうだろうから。
だから、現実のきみに埋め合わせてもらおう。
こんなにさみしいのは、きみを愛しすぎたせいなんだから。
625/03/16(日)23:32:03No.1293030901+
眠る背中に手を伸ばしながら、彼の胸に耳を当てた。
潮の音色が聞こえないかな、なんて思いながら。
「ん…?」
彼はすぐに目を覚ました。寝ている間にアタシが悪戯をしたことも一度や二度ではなかったからだろうが、その律儀さがなんだかおかしくて思わずほくそ笑んでしまう。
「…どうした?」
まだ眠気の残る声で尋ねられる。起きるといきなり服の下に手が入っていて、背中を指で撫でられているのだから、訊きたくもなるだろう。
「背びれが生えてないか確かめてたんだ」
ぽかんとするきみの顔を見ると、いっそう笑みが止まらなくなる。あとでちゃんと説明してあげないととは思うが、今はこんなじゃれ合いを少しでも楽しんでいたかった。
本当は、ただきみに触れていたかっただけ。でも、それに少しでも楽しい言い訳がつくなら、それでいいじゃないか。
きみを愛する理由なんて、いくらあっても困らないもの。
725/03/16(日)23:32:30No.1293031065+
しばらくして目が覚めてきた彼に、アタシは夢の話をした。
「じゃあ、プールに行かないとな。いるかの俺はどうか知らないけど、こっちの俺は全然泳げないし」
「いいね。その時は付き合ってあげる。
いつか一緒に泳ごうよ。本物の海でさ」
彼と一緒に青い海を征服しに行くのは、きっとひどく楽しいだろう。だが、今アタシの心を掴んで離さないのはもっと別の楽しみなのだ。
だってまだ、きみと話し足りないんだもん。

青い海を自由に泳ぐきみは、確かにとても素敵だけれど。
「ね」
「ん?」

「好きだよ」
きみの愛の言葉を聞けないのは、やっぱりさみしくて仕方ない。
825/03/16(日)23:32:47No.1293031173+
「…ん」
少しうつむいて、頬を赤く染めて。
いつも通りのきみだ。アタシの言葉を宝石みたいにいつまでも大切にしてくれる、きみのままだ。
「伝わってる?」
「…もちろん」
そんなきみが、アタシの告白を聞き逃すなんてありえない。あたりまえのことだった。
「そうだね。
でも、それが嬉しいな」
けれど、きみのあたりまえが何よりも、アタシの心を満たしてくれることだって、いつまでも変わらないのだ。

腕の中に閉じ込めて、きみがここにいることを全身で感じる。しばらくそうしていると、きみの手が優しく頭を撫でてくれた。
一房の髪まで愛でてくれるようなきみの手つきが、ひどく嬉しい。でも、いちばんほしいものはそうじゃないんだ。
きっときみだって、それはわかっているんだろう。だからアタシも、催促なんてしない。
925/03/16(日)23:33:00No.1293031276+
誕生日の朝の気分に似ている。楽しいことが起きるとわかっていて、それがどんなふうにアタシの目の前に現れてくれるのだろうと待ちながら一日を過ごすのは、もらったプレゼントと同じくらいに素敵なことだ。
そんな、もどかしいけど幸せな時間。きみの愛を待ちながら、目を閉じてそのかたちに想いを馳せるひとときは、そういうものだった。
きみの手が頭を抱き寄せる。切ない吐息が、耳元を優しくくすぐる。
今ならきっと、どんなに小さな愛のささやきでも聞き取れるだろう。
そう、思っていたのに。
「きゅう」
夢の中に置き忘れたはずのいるかの声が、頭の中を満たした。

夢のことを思い出して、さみしくなって顔を上げる。でも、いじけて出そうになったいじわる、という言葉は、喉の奥に帰っていった。
きみの唇が、優しく出迎えてくれたから。
1025/03/16(日)23:33:13No.1293031359+
「俺も好きだよ。
シービーのこと、大好き」
ああ、今日はきみに一本取られたな。
「…ふふっ」
あんなに繰り返した言葉の味が、こんなに新鮮になるなんて。
もっともっと、味わいたくなってしまうじゃないか。
1125/03/16(日)23:33:30No.1293031470+
行かないでよ、アタシのいるかさん。
もう少しだけ、揺蕩っていようよ。
きみのことが、大好きだから。
1225/03/16(日)23:34:03No.1293031703+
おわり
シービーと素敵な夢を見たいだけの人生だったー
1325/03/16(日)23:34:48No.1293032042+
CBの背
1425/03/16(日)23:35:38No.1293032380+
いるかいないか…というわけだね?
1525/03/16(日)23:37:52No.1293033248そうだねx1
伝わらないのが寂しくて夢の中で10回くらいキスしてるといい
その分だけ現実で埋め合わせてもらうんだ
1625/03/16(日)23:40:06No.1293034255+
自由人の中身が意外と乙女な甘えん坊なのは健康にいい
1725/03/16(日)23:44:00No.1293035988+
イルカになったトレーナーの鳴き声がかわいいのCBがどんな目でトレーナーを見てるのかわかるみたいで好き
1825/03/16(日)23:47:03No.1293037269+
シビトレもなかなかいい性格をしている
1925/03/16(日)23:52:20No.1293039400+
>CBの背
お互いにお互いの背中フェチだといい
2025/03/17(月)00:06:57No.1293044699+
次のデート先はプールか水族館か
2125/03/17(月)00:08:40No.1293045342+
一緒に寝るしキスもする仲になっても好きって言ってもらいたがる
2225/03/17(月)00:39:54No.1293056228+
定期的なcbありがてぇ…


1742135378009.png