二次元裏@ふたば

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901783 B25/03/12(水)20:18:04No.1291633210そうだねx5 21:40頃消えます
学生の本分とはなんだろうか。そう、勉強である。悲しいことに——とてもとても悲しいことにまず第一に勉強である。そして学生である以上逃げられないものがある。
「……定期テスト?」
「そう、テスト」
 テストである。
 今私はシュウジの隠れ家にニャアンと共に訪れていた。
 ニャアンは「代金は貰ったしこれ以上関わる必要なんてないでしょ」と私達との関わりを拒否しようとしたが「まあまあ」「また何かシュウジが頼むかもしれないし」「こうなったらあれだよあれ……一蓮托生?ってやつ?」と説得して仕事が無い時はシュウジの隠れ家に来るようにしてもらった。そんな感じで最近私達は三人集まるようになった。なったのだが、今日私は大事な事を伝えに来たのだ。
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125/03/12(水)20:18:38No.1291633398+
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225/03/12(水)20:19:14No.1291633634そうだねx2
「テストが!近いんです!」
「何か困るの?」
「困るに決まってるでしょ!」
 シュウジは私がテストが近いと伝えてもよく分かっていないらしい。自分の事を碌に話さないまさに謎に包まれた人物だが、まさかテストも知らないのだろうか。じとりとした目で思わず彼を見る。いつ見ても綺麗な顔だ……いや今考えることはそうではなくて。
「まあ……テストは大変よね」
 ニャアンが呟く。やっと分かってくれる人が見つかったのが嬉しくて「そう!」と思わず大きい声が出てしまった。ニャアンは少しその声の大きさに驚いたようで目を開いている。少し恥ずかしくなったがとにかくシュウジにも事態を分かってもらわなければならない。
325/03/12(水)20:19:39No.1291633779そうだねx1
「あのね……テストで赤点……まあ低い点数を取ったら補習とかもあるしなによりお母さんとかに怪しまれるの」
「えっと……それで?」
「ここに!しばらく来れないって言ってるの!」
 なんて言ったって最近はシュウジの隠れ家に遊びに来ていて塾にも碌に行ってないし、学校もシュウジのグラフィティを見つけた日は早退していた。端的に言って私、アマテ・ユズリハの勉強は遅れているのだ。後日クラスメイトからノートを写させてもらったが、このままテストを受けたらどうなるか。破滅だ。そりゃもう酷い点数を取る自信だけがある。
 お母さんからすれば塾にも行かせている娘がそんな点数を取れば悲しむと同時にちゃんと塾に行っているのか怪しんでもおかしくない。こっそり塾に行っているか後をつけられたりしてこの場所がバレたらおしまいだ。あの母がニャアンとシュウジといういわゆる『まともではない』人と私が関わるのを許すとは到底思えない。
425/03/12(水)20:20:09No.1291633958そうだねx1
「そういうことだから!ポメラニアンズにももう伝えてあってしばらくクラバの予定も入れないようにしてもらったから!」
 アンキーに「ちょっとテストが……」といえば「しょうがないねえ」といいつつ配慮してくれた。クラバに出られないのは残念だが仕方ない。世の中には逃げらない事もある。
「マチュ……ここに来なくなるの?」
 う、と私は返答に困った。シュウジがまるで捨てられた子犬のようにこちらを見つめている。本当はテストなんて投げ出して毎日ここに来たい。けれどそれが結果的に彼を追い詰めるようなことになるのは嫌だ。ぐっとそのことを我慢して言葉を吐き出す。
「テスト期間が終わったらまた来るようになるから!心配しないでよ」
「……本当に?」
「本当だって」
 何度も確認してくるシュウジに困ってしまう。そんなに何が心配なのだろうか。学校なんて退屈で、ここでシュウジのグラフィティを見ている方がずっと楽しいから心配なんて必要ないのに。
525/03/12(水)20:20:35No.1291634126そうだねx1
「マチュもこう言ってるんだし、少しぐらい我慢したら?」
 堂々巡りのように話す私達を見かねたのか、ニャアンが口を挟んでくれた。正直ありがたかった。まさかこんなにシュウジが渋るとは思っていなかったのだ。ニャアンにまで言われたのが効いたのか、シュウジは私の顔をじっと見た後、「……うん」と頷いてくれた。
「テストが終わったらすぐにここに来るから!約束!」
「約束……」
 シュウジはしばらく約束、約束となぜか何度も口にしていたが、最後には「うん、マチュとの約束」と頷いてくれた。納得してくれたみたいだ。よかったよかった。いや、テストはこれからなのだが。
 そういうわけで、私はしばらくは真面目に学校と塾に通う普通の女子高生に戻ることになった。
625/03/12(水)20:21:05No.1291634306そうだねx1
スプレー缶を手に持って隠れ家の壁に向かって数分。いつもなら何かしら浮かんでくるイメージが全く浮かんでこない。
「…………」
 このままスプレー缶を持ったまま立っていてもどうにもならないだろう。今日は調子が悪いのかもしれない、と思いスプレー缶をバッグに仕舞い込み手袋を外した。
 コロニーのあちこみにグラフィティを描くのは今は控えている。今までは無断でグラフィティを描くことによる軍警に追われるリスクよりも同じ物が見える人を探すことを優先していたが、今の時期はリスクの方が大きいだろう。なによりマチュという同じ物を見れる同志――マブとも出会えた。
 正直、あれを共有出来る人と出会えるのか、という漠然とした思いはあった。しかし、諦められなくて、認めたくなくて、グラフィティを描き続けた。
 だから、あの日巡り会った水辺で僕の描いたグラフィティをじっと見つめていた彼女を見た時に、今までの努力が報われた気がした。
725/03/12(水)20:21:29No.1291634454そうだねx1
「……マチュ、来ないね。コンチ」
 コンチに話しかけてみたが、返事は無い。充電中だったのを忘れていた。やはり今日は調子が悪いのかもしれない。
 マチュが学校のテストに備えてしばらくは来れないと言ってから何日経ったのだろう。ここにはカレンダーも無いし不規則な生活を送っている自分では正確な日時の判断も難しい。最近はマチュが学校帰りに寄ってくれてたり、クラバの日時を知らせてくれたからなんとなく分かっていたのだが。
「……何してるの?」
 ふと声が聞こえたので振り返ればニャアンがいた。いつの間に来たのだろうか。あのドアは自分でも開けるのにそれなりに力が必要な重さがあるはずなのだが、彼女はなんとかそれを開けてきたようだ。それなら音がしそうなものだが、聞こえた覚えは無い。ぼーっとし過ぎていたのかもしれない。グラフィティに集中していたならともかく、これは本格的に調子が悪いようだ。
825/03/12(水)20:21:56No.1291634594そうだねx1
ニャアンといえば怪訝そうな顔でこちらを見ている。思わず「なに」と言えば「いや……」と何とも言えないような声が返ってきた。そこで彼女の最初の疑問に答えていなかったことを思い出した。
「なんだか調子が悪いみたいだから何もしていないよ」
「そう……」
 そういうと彼女は黙ってしまった。僕も特に話すことは無いので場を静寂が支配する。
 こう言う時引っ張ってくれるのはマチュだった。マチュはあれはどうこれはどうと何かしらの話題を提供してくれるのだ。
 マチュ。彼女は今頃勉強をしているのだろうか。テストに備えて、僕達に会いにも来ないで。
「何を考えているの?」
 ニャアンが静寂に耐えかねたのか尋ねてきた。何を考えていたかなんて。
「……マチュ来ないなって」
「そりゃあ……来ないというか来れないでしょ。まだ三日しか経ってないわよ」
 三日。まだ三日しか経ってないらしい。テストはいつだと言っていただろうか。一週間後?二週間後?それとももっと先?考えてこんでいると突然「分かった」とニャアンが言った。
「何が?」
「あんたの不調の原因」
「……分かるの?」
925/03/12(水)20:22:19No.1291634744そうだねx1
自分でも分からない不調の原因がニャアンには分かるという。凄い。凄いけれど何故だろう。「要するに」と彼女は呆れた顔で言った。
「マチュが来なくて寂しいんでしょ」
「寂しい……」
 寂しい。寂しい。寂しい?慣れない言葉だ。だって今まで僕は(コンチとガンダムを含めないなら)一人でいた。それに不満とか嫌だと思った事は無かった。だから、寂しいなんて。
 けれど、不思議と胸にすとんと落ちるような納得感があった。僕は寂しいんだ。マチュがいないせいで。
 不調の原因は分かった。寂しいのなら、会いに行けばいい。その考えに至ってからの行動は早かった。
1025/03/12(水)20:22:43No.1291634879そうだねx1
ぐっと伸びをして、ストレッチをする。手元のノートはだいぶ書き込まれていて、今一区切りついたところだ。
 家ではなくて塾でも勉強は出来るが、人が多くて集中しにくいし、何より遠い。講義がある時以外はあまり行きたく無い。
 勉強のお供に入れたミルクティーはすっかり冷めている。温めなおそうかな、と席を立とうとしたところでチャイムが鳴った。
「……宅配なにも頼んでないよねえ……」
 母からはチャイムが鳴っても「どうせ古臭い訪問営業とかだから出なくていいわよ」と言われているが、もしかしたら母が緊急で何か頼んだのかもしれないし、ご近所さんの急な頼み事かもしれない。出るだけ出て悪質だったら切ってしまおうと思い、インターホンに出る。
「はい……はいぃ⁉︎」
 インターホンに出た私を待ち構えていたのは訪問営業の人間でも近所の人でもなく、ニャアンとシュウジであった。
1125/03/12(水)20:23:08No.1291635017そうだねx1
突然ごめん、と本当に申し訳ないと思っているか怪しい涼しい顔でシュウジは言った。ニャアンは申し訳なさそうに、そして所在なさげに立っていた。なぜ私の家がシュウジに分かったのか。それはおそらくニャアンが教えたからだ。
 以前シュウジの隠れ家から帰る時に自宅までニャアンが送ってくれた事があった。もう暗いでしょ、と同じ年なのにお姉さんみたいに振る舞うニャアンがおかしかったけれど、せっかくなのであれこれと話しながら一緒に帰った。
 私の家に近づくにつれ、「高級住宅街……」「いいところ住んでる……」「お嬢様……」とぶつぶつ言っていたが聞こえないふりをした。というかお嬢様というほど私は箱入り娘ではない。それに本物のお嬢様は絶対違法なクランバトルなんて参加しないだろう。
 その日は母親が家に居たので彼女とは玄関前で別れたが、道を覚えていたのだろう。なぜ二人がわざわざ私の家に来たのかは分からないが、今日は母が仕事が忙しく数日は帰って来ない事を知っていたので、躊躇なく家に上げた。近所に見られたらまずいかもしれないという問題もある。人数分の来客用のスリッパを出して家の中を案内する。
1225/03/12(水)20:23:32No.1291635167そうだねx1
とりあえず「話は後で聞くから適当に座ってて」と椅子を勧めた。返事を聞く前に飲み物と食べ物を台所へ探しに行く。
 まず冷蔵庫を探したが、入っているのは麦茶とたまたま久しぶりに飲みたいなあと思った大きなペットボトルのリンゴジュースくらいしか飲み物はなかった。幸いリンゴジュースは空いてなかったのでこれを持って行くことにする。足りなくなったら麦茶を出せばいい。
 次にお菓子を探したが、来客用のクッキーなんて洒落たものは無かった。せいぜい自分用に買ったポテトチップスの小袋と小さなチョコレートが詰まった大袋くらいだ。仕方ないのでこれにする。
 人数分のコップとリンゴジュースとお菓子をお盆に載せてテーブルまで運ぶ。するとシュウジは座っているのにニャアンは立ったままだった。
「座っててよかったのに」
「いや……」
 ニャアンはこちらに近づくと小声で話してきた。
「どこに座っても気まずいというか……」
1325/03/12(水)20:23:52No.1291635283+
久しぶりのキラキラ怪文書かい!?
1425/03/12(水)20:24:05No.1291635352そうだねx1
机を見ればシュウジは既に座っている。私が普段座っている椅子の隣であった。気まずい、の意味を考える。シュウジの隣。まあ気まずいかもしれない。真正面。それもそれで気まずいかも。斜め正直。微妙に距離を感じさせてしまいそう。シュウジは気にしなさそうだろうが。
「まあ……そうかも」
 何となくニャアンの言うことが分かったが、かといってそのまま立ったままにさせる訳にはいかない。しょうがないので私はいつも座っている椅子の場所に座ることにする。シュウジの隣だ。深い意味は無い。無いったら無い。ニャアンは私が座るのを見て私の真正面の椅子に座った。うん、これで気まずいところなんて無い。完璧だ。多分。
「で、なんで家に来たの?なにか緊急の用事?」
 リンゴジュースをコップに注ぎながら質問する。わざわざ私の家に来るなんてそれぐらいしか考えられないが。軍警に動きがあったとかだろうか。とぼんやりと考えていると「違うよ」と柔和なシュウジの声で否定された。じゃあなんで、と聞く前に答えは返ってきた。
「マチュに会いたくて」
1525/03/12(水)20:24:37No.1291635525そうだねx1
危うくジュースをこぼすところだった。なんとかバランスを取り自分の分を注ぎ終え、ペットボトルの蓋を閉める。

 当の本人といえば「マチュ、ジュースありがとう」とコップを手に取ってゴクゴクと飲み干していた。頭の中の冷静な部分が「まあそれなりに隠れ家からは遠かったから喉ぐらい渇くよね」と言っている。いや今考えるべきはそこでは無い。
 思わず助けを求めてニャアンを見つめた。彼女なら何か知っているかもしれない、と縋るように見つめれば、呆れた顔で答えを教えてくれた。
「あんたが来ないから寂しくて調子が狂ってるみたいよ」
「私が……?」
「そう。まだ三日よ?」
 まだ会って日も浅いのにね。そう言って彼女は小さな声で「頂きます」と言ってジュースに手を伸ばした。「美味しい……」とニャアンが言っている声が遠くに聞こえる。
 寂しくて調子が狂っている?あのシュウジが?マイペースでのほほんとしているイメージがある彼が?
 ぐるぐると頭の中をシュウジの言葉とニャアンの言葉が回っている。寂しい。シュウジが。私がいなくて。まだ三日しか経ってないのに。
1625/03/12(水)20:25:07No.1291635684そうだねx1
その意味をどう捉えればいいのか悩んでいると、おもむろに「だからね、考えたんだ」とシュウジが話しかけてきた。
「な……何を?」
「僕が寂しくなくなる方法」
 それって、と聞き返す暇もなく次の言葉が飛び出してくる。
「マチュは家で勉強してるんでしょ?なら家じゃなくて隠れ家で勉強すればいいよ」
「グラフィティの邪魔になるし……」
「ならないよ。マチュは」
 じっとシュウジに見つめられて返答に詰まる。彼の目は嘘を言っているようには思えない。何か言わなくては、と思っているのに出てくるのは「えっと、その」という意味も無い言葉だけだ。
「本人もこう言ってるんだし、いいんじゃないの」
 ニャアンがそう言う。いいのかな。本当に迷惑じゃないのかな。少し不安になる。そこにすかさず追撃が入った。
「僕の為に来て。お願いだから」
 ずるい、と思った。そんな言い方されたらその『お願い』を叶えたくなってしまう。ずるい、シュウジはずるい。私の気も知らないで。
「……わ、分かった……」
 そう答えれば、彼は気持ちほっとした顔になった。
1725/03/12(水)20:25:37No.1291635867そうだねx1
 じゃあ明日からまた来てね。そう言う彼の事が少しだけ憎たらしくて、思わず身を乗り出して隣にいる彼の額にデコピンをした。「痛い」と間の抜けた声がした。


 定期テストは上々の結果だった。赤点も無かったし、課題だって出し忘れも無く成績評価は問題無いだろう。
 学校の先生は「ユズリハさんは塾に通い始めたから成績が良くなっているのかしらね」なんて笑っていたが、まさか本当の理由が、シュウジの隠れ家で勉強したせいで、勉強している内容とその時シュウジがしていた行動が結び付いてテストの際に思い出しやすくなっていた事なんて知らないだろう。
 知らなくていい。それは私達だけの秘密であるべきなのだから。
1825/03/12(水)20:26:39No.1291636262そうだねx2
本編放送前に怪文書を!?
1925/03/12(水)20:26:54No.1291636362+
画像はお借りしました
怪文書をここに投げるのも初めてだよちょっと長くなったな…?と反省はしています
シュウマチュいいよね…
2025/03/12(水)20:28:44No.1291636952そうだねx5
>本編放送前に怪文書を!?
本編始まったら何が起こるか分からないから今の二次創作する気力があるうちに書いたほうがいいとガンダムも言っている
それはそれとして本編で三人の日常回欲しい
2125/03/12(水)20:37:16No.1291639941そうだねx1
これはいいキラキラだ
2225/03/12(水)21:03:05No.1291648726そうだねx1
いい熱量してるねえ
2325/03/12(水)21:06:01No.1291649802そうだねx2
基本どんなものであれ怪文書はキラキラだしそれを出力しスレ立てて共有してくれることもまたキラキラだ
ニヤニヤさせて頂き申した
2425/03/12(水)21:08:22No.1291650706+
これは自分の好みの問題なんだけどシュウジからのマチュへの矢印は無自覚でマチュ並みかそれ以上だと嬉しいんですよね
ぽわぽわしてると思いきや独占欲強いシュウジにマチュが振り回されて欲しくってえ…
晴れて恋人になったら女子校なのに見えるところにも見えないところにもキスマークとかつけて他の人を牽制して欲しくってえ…何の話これ?
2525/03/12(水)21:09:36No.1291651198+
本編は少なくとも「待ってよシュウジ!…追い付けない…!?」があるのは確定してるからそういう展開前の日常回は今のうちに妄想しておいてまったく損はない
2625/03/12(水)21:14:07No.1291652925+
>それに本物のお嬢様は絶対違法なクランバトルなんて参加しないだろう。
そうだね…
2725/03/12(水)21:19:29No.1291655160+
これはいいものだ…
書いてくれてありがとう…


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