二次元裏@ふたば

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133747 B25/02/16(日)00:17:43No.1283599678+ 01:54頃消えます
さく、さくと小気味よい音が鳴る度に、安心とうれしさで息をつく。彼女がもう片方の手にチョコを持って、それを一緒に口の中に入れたときの笑顔が、自分の試みの成功を告げてくれた。
「そんな顔しなくてもいいのに。アタシは見たときから美味しいって思ってたよ?」
「作るほうは緊張するんだよ。でも、よかった」
塩味と食感にこだわって焼いたチーズクッキーは、大量のチョコを貰った今日の彼女の舌に合ってくれたようだ。
手作りの料理を振る舞うのは何度目かもう数え切れないが、それでも出す瞬間は緊張するし、美味しいと言ってもらえればひどく嬉しい。いい加減慣れてもよさそうなものだが、いつまでもこういう気持ちになるのは彼女を想っている証と思えば、そう悪い気もしない。
このスレは古いので、もうすぐ消えます。
125/02/16(日)00:18:08No.1283599871+
それにしても、彼女の女たらしぶりには年々磨きがかかっているように思える。貰ったチョコだけで数日は腹を満たせるのではと思うほどだが、彼女は律儀に一人で食べているし、無理をしている素振りもない。実際、山とあったチョコは綺麗に片付き、クッキーもあと一枚を残すのみとなっていた。
だが、残り一枚のクッキーに手をつける素振りが見えない。彼女の胃袋といえど流石に限界かと思い包み紙を出そうとしたが、上げた腰を彼女の手が制止した。
「まだしまわないでいいよ。あえて残してるだけだから」
「え?なんで…」
「食べたいチョコがまだあるんだ。せっかくだから、これと一緒がいいな」

彼女はひどく愉快そうに微笑みながら、こちらを見ていた。何もかもお見通しだよと言わんばかりに。
「…じゃあ、目を閉じて」
始めはそんな気などなかったのに。彼女のために焼いたクッキーとは違って、気づけば作ってしまっていた。
かつて彼女に言った言葉を反芻する。他人事だと思っていたのに、結局は自分も、"それ"から逃れることはできないのだと噛み締めながら。
225/02/16(日)00:18:30No.1283599999+
「…じゃあ、目を閉じて」
さっきまでとは打って変わって、少し目を伏せて恥ずかしそうに口にする彼の姿はひどく可愛らしかった。少し意地悪かなと思うけれど、いちばん欲しかったものを今まで待っていたのだから、このくらいのおまけはあってもいいだろう。
「いいよ」
目を閉じるとその分だけ他の感覚が鋭敏になって、何が起きているかを想像してしまう。
台所へと駆けていく足音。冷蔵庫を開く音。そして、掌に乗せられる冷たい感触。
「…ふふっ」
瞼を開いたとき、思わず笑みが漏れてしまった。
見たかった景色が、そのまま目の前にあったのだから。
325/02/16(日)00:18:52No.1283600146+
ひとくちで食べられる小さなサイズだが、千代紙のような包みや丁寧にかけられたリボンは目に楽しい。いつもそっとそばにいてくれてアタシを楽しませてくれる、彼らしいチョコレートだった。
「物好きだな。あんなに食べたのにまだ欲しいなんて」
「きみのは別腹だもん。
きみこそ、なんで作ってくれたの?」
「…前に言ったじゃん。シービーを諦めるのは難しいんだって」
彼のくれたそんな贈り物も、少し悔しそうな彼の言い方も、何もかもがうれしかった。
「シービー。俺、君のことが…」
だからこそ、沈黙に耐えられなくなったように彼が口にしかけた言葉の先を、今は聞きたくなかった。
「ふふっ。
いいよ。無理に言わなくても」
アタシはもうさみしくないから。きみの心の温度は、ちゃんとこの手の中にあるもの。
「きみの気持ちはちゃんとここにあるから。
言葉にするのは、きみが本当に伝えたいときにして」
だから、ゆっくり考えていいよ。
アタシは待ってるから。きみのくれたチョコの甘さを、ゆっくり味わいながら。
425/02/16(日)00:19:11No.1283600254+
ぱくりと一口で飲み込むと、抹茶の香ばしい苦味とチョコの甘みがよく混ざる。きっとこれも、他にたくさんチョコをもらうことを考えて作ったのだろう。爽やかな後味の中に彼の気遣いを感じられるような気がして、美味しさ以上に嬉しくなった。
「ん…
いいね。優しい甘さで好きだよ」
口とお腹はすっかり満足した。
だから、あとは心を満たしてもらおう。
「あのチョコ、食べてほしかった?
それとも、あのまま持っててほしかった?」
「そりゃ、食べてほしいから作って…」
途中で言うのを止めた彼を見て、ひどく嬉しくなった。全部を口にしなくても、アタシの気持ちは伝わっているのだと。
525/02/16(日)00:19:24No.1283600337+
「うん。知ってる。でもちょっと寂しいな。
食べたらなくなっちゃうんだもん」
もしかしたらきみも同じ気持ちだったのかもしれないと思うと、また微笑みが止まらなくなった。
アタシだけ変になるなんて、不公平だもん。きみだって同じくらい、アタシを想っておかしくなってくれていないと嫌だ。
「やっぱり、チョコの重さに気持ちの重さを感じたりはできないけどさ」
チョコを渡すのが自由なら、そこに込められた気持ちに応えるかどうか決めるのも自由だ。
でも、きみには諦めないでいてほしい。アタシのことを好きでいてほしい。

「何か残したいって気持ちは、ちょっとわかるようになったから。
きみのせいだよ?」
その錘が少し重ければいいのになんて、思うようになってしまったんだから。
625/02/16(日)00:19:40No.1283600450+
チョコは甘くて美味しいけれど、舌の上で溶けると少し切ない。
きみがアタシのことを、諦めないでいてくれた証だから。
「だから、きみは持っててよ」
アタシの気持ちも、きみに預けておくから。

甘くて苦い香りのする、一輪の花が咲いている。チョコの包み紙で作ったその花を、彼の胸に挿した。
「ありがとう。チョコ、美味しかったよ」
アタシの気持ちを、少しでも彼の気持ちの近くに置いておきたかったから。
725/02/16(日)00:19:54No.1283600529+
部屋を出て夜風に当たっても、つい口元が上がってしまう。
「…ふふふ」
花は散るから美しいのだと、わかっているつもりだったのに。
あの花は枯れることも散ることもないのだと思うと、なんだかひどく嬉しくなってしまった。

きみの胸の奥に、あの香りがずっと残っていたらいいな。
きみに抱きしめてもらったときに、いつでもこの日を思い出せるように。
825/02/16(日)00:20:38No.1283600800+
いつもCB怪文書ありがとう
925/02/16(日)00:20:42No.1283600827そうだねx2
おわり
CBのバレンタインいいよね
1025/02/16(日)00:21:46No.1283601203+
よい
自由とか言いつつトレーナーがこうするって確信してるししてほしいって望んでるのがワガママでいい
1125/02/16(日)00:22:31No.1283601499+
諦められないから苦しいのにアタシを諦めないでよって言ってくる女いいよね
1225/02/16(日)00:23:29No.1283601829そうだねx3
CBの本質は自分の自由さを押し付けていい相手を見極め甘えてることだと思う
甘えられたい
1325/02/16(日)00:23:53No.1283601999+
ホワイトデーのお返しは本物の花束になるんだよね
1425/02/16(日)00:27:18No.1283603131+
>CBの本質は自分の自由さを押し付けていい相手を見極め甘えてることだと思う
>甘えられたい
自由に生きてるけど普通は他人の自由も尊重してくれるからね
そんなCBにわがまま言われるくらい執着されたい
1525/02/16(日)00:43:35No.1283608323+
新衣装CBのバレンタインもいいよね
通常のときは家まで行ってたのに新衣装だと作ってたらきみに会いたくなっちゃったって言ってくれる
1625/02/16(日)00:47:17No.1283609523+
シービーってさ
いいよな
1725/02/16(日)01:08:58No.1283616031+
この人はアタシを自由でいさせてくれるって思ったら一気に甘えん坊になりそう
1825/02/16(日)01:14:28No.1283617762+
1925/02/16(日)01:21:01No.1283619710+
大体人馴れした野良猫に近い生態の女
2025/02/16(日)01:25:38No.1283621109+
>草


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