レンハート兄妹(三男末女)   「んー、おばちゃん女の子って何が好きかなな…?」    所狭しと並ぶお菓子を前に赤毛の少年が立ち尽くしている。ぴこぴこと動くケモミミと赤毛は彼がこの国の王の血を引くことを示していた。少年には認識阻害がかかっている為王子であるとはバレないはずなのだが未熟故まだ全てを隠し切る事は出来ず毎回ケモミミだけが出てしまい国民にはバレバレなのだった。  話しかけられた店員はにっこりと笑いケモミミを見て見ぬふりし少年へと答える。 「そうねぇ、良くチョコレートやクッキーなんかが良く売れるわね。あとは最近流行りのサームイテツクのアイスも良いみたいよ〜」 「アイス…!おばちゃんえっとクッキーとそのアイス2つ!」 「はぁい」  代金を払い買った物が袋に詰められていくのを少年はキラキラとした目で見つめる。 「はい、お待どおさま」 「ありがとう!」  代物を受け取り少年は駆け出す。高い身体能力で跳ねながら路地裏を進む。アイスが溶けない様に自身の魔法で冷やしながら袋を落とさない様にしっかりと抱きしめる。  城へと帰りつきそのままの勢いで壁を伝い図書室の窓枠に足をかける。少し開いているカーテンから中を覗いて灯りが付いていることを確認してから窓を軽く叩く。  コンコンとガラスを叩いたあと図書室からぱたぱたと軽い足音がし窓の鍵が開けられた。   「クルにぃ…おはよ」 「おはようソリュー、入っても?」 「うんいいよいつも通り靴の泥払ってからね」 「はいはい、よっと」  また夜更かしして本を読んでいたのか末の妹であるソリューはまだ少し眠そうに目を擦って中に兄であるクルーズを招き入れた。 「また夜更かししてたのか?」 「ん、ちょっと今読んでるのが面白くて…ほんの少しだけ…」 「もーちゃんと寝ないとダメだぞ」 「はぁい。それで今日はどうしたのクルにぃ」 「あっそうだった!これお土産」  城下町で買ったものをソリューに渡すとひんやりとした袋に首を傾げていたが中を見てパッと顔が輝いた。どうやらちゃんと喜んでもらえそうだ。 「わぁアイスだ!」 「城下町で見かけてさ俺なら溶けずに持ってこれるしソリューもあまり食べた事ないかなって」 「えへへありがとうクルにぃ一緒にたべよ」 「うん、ローシュに頼んでお茶淹れてもらおうここじゃ本が汚れるかもだから俺の部屋でいいか?」 「うん!」  いそいそと読んでいた本を直し袋を抱えてソリューは早く早くとアイスが待ち切れないのか小走りでクルーズの部屋へと足を進める。 「ローシュ。聞いてたよなお茶頼んで良いか?」 「はい、ぼっちゃん。数日前に仕入れた東の茶葉がありますのでそれを淹れましょう」 「ありがとうじゃあ部屋で待ってるな!」 ━昼下がりのお城にて兄妹のおやつ時