「オナニー狂い……?」 「そうじゃ!!!」  魔貴族ロチャイメエ・ドロエスキー、齢936にして矍鑠たる彼は、口から唾を飛ばしながら叫んだ。骨に皮膚を貼り付けたような指が、捕虜の檻を示す。 「見よ、此度の捕虜は若きおなごばかりじゃ!彼奴らをオナニー狂いのエロメスにするのじゃ!」 「…………」  禁術師センノウンは、たっぷり三十秒ほど沈黙して老人の様子を観察し、どうやらこれは本気らしいと、渋々認めた。魔界貴族指折りの名門、ドロエスキー家。この鶴の如く痩せた老人は、未だその当主として君臨している。数多くの分家を支配し、魔王軍にも多額の出資をする、彼の機嫌を損ねれば、ヘルノブレスとて無事では済むまい。ヘルノブレス軍中隊長であるセンノウンは、ロチャイメエの命令に逆らうことはできない。 「……彼女らをオナニー狂いのエロメスにすることに、なんの戦略的有効性があるのでしょう?」 「愚かな……ヘルノブレス軍は、この程度の兵士しか揃えておらんのか?オナニー狂いのメス豚と化した兵士共を、人間共に見せつけるに決まっておろうが!」  ロチャイメエは、血管の浮き出た拳を震わせながら叫ぶ。 「兵士が皆オナニー猿とわかれば、人間共の士気はガタ落ち!他国の軍も恐怖し、かつかの国の兵士共を軽蔑するであろう!魔王軍の威光も高まるというものではないか!」 「………………」  センノウンは、再び三十秒ほど黙った。ロチャイメエの爛々燃える眼光は、再度の沈黙にも、一切翳りを見せなかった。彼は狂っていた。 「早うせんか!!」 「承知しました」  センノウンはうつむいた……機械のような顔をした彼の、表情はよくわからなかった。 「というわけで、君たちにはオナニー狂いのエロメスになってもらう」  きゃあああっ!捕虜たちの衣を裂くような悲鳴が響き渡る。 「くっ……魔王軍……流石悍ましき魔術を使うっ……!ここで殺せ!」  騎士団小隊長オティマスが、勇ましく怒号を浴びせかける。 「聞いていた通りだ。君は今から、オナニー狂いのエロメスになる」 「そんな無様な真似ができるものか!死んだ方がマシだ!」 「いや、できるさ」  センノウンが檻越しに、オティマスの額に人差し指を突きつけた。流し込まれた魔力の余波が、薄いピンク色の光となって漏れ出る。 『君はオナニー狂いのエロメスになる』 「あっ……あっ……?」  オティマスの目がぼんやりと曇る。半開きの唇から、赤子のような声が漏れた。 「オ……オナニー……?」 「そうだ」  オティマスの手が股間に伸び……しかし性器に触れる寸前で、拳を握った。 「なめるな魔族……体は囚われようと、心は思い通りにさせん……」 「そうかな……?」  股間からぽた、と愛液が滴る。服の上からでも分かるほど、乳首が勃起して存在を主張する。 「あっ……あっ……なぜ……!?」  オティマスが混乱して漏らした声は、ほとんど嬌声に近かった。頬が赤く染まり、荒い息を吐くその顔は、情事の最中と言っても通るだろう。 「なぜ……なぜ……!?」  女騎士は悲痛な声を上げながら、いやらしく腰をくねらせる。息を呑む部下たちの前で、オティマスは本人の意志に反して、卑猥な踊りを踊った。 「禁術に逆らえはしない。早く楽になってしまうがいい」 「あっ……あんっ……あっ……」 「小隊長……」 「オティマス様……そんな……」  オティマスは部下たちの声を聞きながら、腰を止められずにいる。見えない恋人と交わっているかの如く、腰を振りたくり乳房を弾ませる。しかし体をよじり、甘ったるい声で喘ぎながらも、オナニーは始めずにいた。 「センノウン!禁術とやらはその程度か!?」  ロチャイメエの怒号が飛ぶ。センノウンは一瞬振り向いて、魔貴族の表情を伺い、再び捕虜の檻に向かって指を差し出す。 『君は洗脳に逆らえない』 「ああああっ!!」  オティマスが白目を剝いて叫ぶ。その体の痙攣が治まった時には、彼女の表情は全く違うものになっていた。 「こっ……これは……魔族のせいだから仕方ないっ……」  媚びるような笑みを浮かべながら、オティマスは自身の乳房を揉み始める。普段鎧に隠されているためか、やや小ぶりな乳房は、手の動きに従ってむちむちと捏ね回される。 「仕方が……あんっ!仕方ないっ……洗脳には逆らえないからぁ……」  衣服の上からもわかるほど、股間がぐっしょりと濡れている。捕虜に与えられた、粗末な下の服を脱ぐ手間も惜しんで、オティマスは熱心に自身の性器を弄り回し始めた。 「オティマス様!お気を確かに!!」 「隊長……隊長!!」 「あっ!おうっ!うっ……ふっ……ああっ!!」  部下たちの声は、もう彼女の耳には届かない。 今の彼女にとって重要なのは、自身の指の生み出す性感だけだ。オティマスは床に座り込み、見せつけるかのように脚を大きく開く。 「あっ……見ないでっ……はあうっ!ああんっ!魔族がわるい……まぞくがっ!まぞくっ……!」  衣服に邪魔されて、何をしているかがはっきりと見て取れないのが、かえって卑猥だった。膨らんだ布の下で、指が淫らに蠢く。 「あっ!あっ……あっ!!」  指が性器に突き込まれ、ぐちょぐちょと水音を鳴らす。余った指がクリトリスを激しく摩擦する。乳房を荒っぽく揉みあげ、乳首をつまんで押し潰しながら転がす。痛みを覚えかねない荒っぽい行為にも、女騎士は快感しか感じていないようだった。 「あっ!はあっ!ひいいっ!」  オティマスは幾ばくもなく、背筋を反らして絶頂した。直後、余韻に浸る間もなく、再びオナニーを始める。 「いっ!んっぐっ……ひぃ〜っ!!」  再びの絶頂。 「ああっ……おっ!ぐっ!ああっ、うああんっ!!」  オティマスは続けざまに気をやり、しかしオナニーを止めることができない。きりりとしていた顔は弛緩し、恐怖と快楽が入り混じった、極めて人間的な感情が顕わになっている。 「あっ!あっ……もうむりっ!いったばっかなのにっ……オナニー狂いっ……こわいっ……でも洗脳にはさからえない、さからえないからぁっ……」 「見事だセンノウン!褒めてつかわす!」 「ありがとうございます」  ロチャイメエが称賛する。センノウンは冷静に返答した。 「ではこやつらを、全てオナニー狂いのエロメスに変えるのじゃ!」 「わかっています、ロチャイメエ様」  恐怖に竦んだ捕虜たちに歩み寄り、センノウンは指を差し出した。