年越し 621&626 「あっ騎士君みかん食べる?沢山あるからサクットモンも食べな〜」 「えっと、ありがとう貰います。ほらサクットモンもお礼」 「ありがとキヨミ〜!」  現実世界に不慮の事故で来てしまい黄昏ていた騎士を拾ったのは春日清美だった。ぐいぐいくる清美に騎士は不慣れながらも断ろうとしていたが、もう既に居候がいるから今更一人と1匹くらい大丈夫大丈夫!と押し切られてしまった。  清美の家に連れてこられた騎士は出迎えたエプロンをつけたデュークモンと対面してからの記憶が無いが目覚めた時に突っ込まれていた炬燵の魔力に抗えずそのままぬくぬくと渡されたみかんを剥いていた。 「えっと、その、清美さん本当に泊めて貰って良かったんですか?自分で言うことなんですが割と不審者ですよ俺」 「えー?あんな直球で迷子!って感じでウロウロしてた子放って置けないでしょ〜。まぁ家にはデュー君もいるし連れて帰っても大丈夫かなって!」 「はぁ…キヨミ、君のお人好しさと懐の深さは美徳だと思うがもう少しちゃんと警戒してくれ」 「デュー君うるさ〜い」 「むぐ」  ぷぅ!と頬を膨らませながら清美は自身を膝上に乗せているデュークモンの顔付近にみかんを押し付けた。究極体であるデュークモン相手に騎士はどうしても目線を合わせられずみかんに集中してサクットモンへ食べさせる用にせっせとアルベドと薄皮を剥いていた。 「こんな寒い日、しかも年越しに1人とか寂しいし騎士君がいいならお家が分かるまではここにいて良いよ。どうせ父さんたち帰ってこないから部屋も空いてるしね〜」 「いや、流石にそこまで世話になるのは…デジタルワールドに帰れそうなら帰りますよ。ほらサクットモンみかん」 「あ〜ん!おいしー!」 「……デジタルワールド」 「どした?デュー君」  何故か引っかかる言葉、ひび割れたマスクと鎧を撫でデュークモンは欠落したであろう記録に該当する言葉だったのかと思考回路を巡らせようとするが… 「こら、今日はゆっくりする日なんだから難しい顔しないの。焦っても良い事ないよデュー君」 「キヨミ…」 「デュークモン?なにかあったのー?」 「いいや、何でもないさサクットモン。さてそろそろ蕎麦の準備をするから退いてくれキヨミ」 「はぁい。あ、騎士君蕎麦大丈夫?アレルギーとかは?」 「特にないと思います…覚えてませんけど胃袋は丈夫なので何でも食べます」 「あははなにそれアレルギーはマジで危ないから病院でちゃんと見ときな〜」  キッチンへと向かったデュークモンに何故か着いて行ってしまったサクットモンを見送りながら騎士は炬燵へと潜り込んだ。清美はリモコンを弄り年末特番を見繕っている。  ふわりと薫ってくる出汁に2人して腹の虫が鳴り響きくすくすと笑い合いながら蕎麦が出来るのを待つのだった。