やりたいこと。デビューすらままならない今のあたしには、正直あやふやな目標すら浮かばない。
ダービー？有マ記念？凱旋門賞？そんなことを考えても……。思考を察してきたのか、彼は再び提案をしてきた。
「別にレースとかの目標じゃなくてもいいよ。なんなら走ることもおいてしまっても構わない。
何でもいいから、自分がやってみたい事を試しに言ってごらん」
「うーん……野球、かな」
小さい頃から野球の試合を見て、ずっと憧れを抱いていた。ウマ娘はレースを存分にさせてもらえる一方、球技などはやらせてもらえない。
同じ年代の野球少年が羨ましいのは贅沢な悩みか。はたまた隣の芝生か。

「話は聞かせてもらったぞー！」
次の瞬間、威勢のいい声とともに葦毛のウマ娘が飛び込んできた。なに？どゆこと？
「おいバカ！何で来てんだよ！」
「野球か！硬式？軟式？もしかしてメジャーとか？」
どうやらこのウマ娘は佃煮さんの担当バらしい。必死に抑えているが、彼女は構わず私に質問をぶつけてきた。
「え？まぁほら、あたしみたいな高等部だと甲子園とか憧れたりするじゃん……？」
「高校野球か！よっしゃー！こうしちゃいられねぇ、試合だーっ！」
佃煮さんの制止むなしく、彼女の暴走には拍車がかかるばかりだった。

「「よろしくお願いしまーす！！」」
翌日、私は甲子園球場で男子高校生達に紛れて野球の試合を始めていた。何で？
でも試合に参加するには全力でやるしかない。手を抜こうものならチームメイトにも相手にも失礼だ。
うちのチームの攻撃。打順が回ってきた。バットを握るのは何年ぶりだろう。どうにか当てて全力で走る。まずは一塁。
そして一塁で次のバッターの打席を見ていると、ふと頭に考えがよぎる。
あれ？これ盗塁できそうだよね？そう思った次の瞬間には足が動いていた。ウマ娘の悪い癖だ。
全力で走って一気に滑り込む。無我夢中であったが、見事に成功していた。足が速ければ当然かもしれない。
でも、この楽しさと成功したときの達成感は、トレセンで燻っていたあたしにとって最高の気分をもたらしてくれた。

「「ありがとうございましたー！！」」
試合は私の活躍もあり、自チームの勝利で締めくくることができた。
「お疲れ様。勝利おめでとう」
「やったな！ヒーローインタビューの準備はできたか？」
佃煮さんと担当のウマ娘が声をかけてくれた。
まるでレースに勝ったかのような雰囲気だが、実のところ高校生と野球をしただけである。
「それと、はい。これ」
そう言うと、佃煮さんが一冊のノートを私に渡してきた。
「君の試合中の動きを見て、大まかな能力は把握させてもらったよ。今の君が持ちうるもの、必要なものをまとめてみたんだ。
トレーニングのやり方や模擬レースの走り方も記してあるから、是非とも試してほしい」
「へ？」
試合の余韻も一気に吹き飛び、思わず間抜けな声が出てしまった。
やっぱり変だ。この人も。担当ウマ娘も。

★☆☆☆☆
ホストも担当バも頭おかしい。
野球は楽しかったです。
もう二度と行くことはないでしょう。

まさかこの子が後継者になるなんて...

ゴルシがすぐ飛びこめる位置で待機してたのって……

変人だが有能ではあるからな…

ゴルシがちゃんと言うこと聞いてトレーニングもレースもしっかりやらせるトレーナーだから優秀だろう
でも日常的に振り回されてそれについていけるってことは頭おかしいんだろう

てっきりそのまんま白球を追いかける結果になるのかと

ウマ娘パワーで野球は超次元になりそう…
よく付き合ってくれたな男子高校生たち

>ウマ娘パワーで野球は超次元になりそう…
>よく付き合ってくれたな男子高校生たち
98甲子園に出てくる連中みたいな球児なんだろ

これがUAF…

変人は変人だけど根はしっかりしてるから…
パッと見普通の根っこからの変人とは違うから…